説明

日射反射率改良のための顔料添加剤

たとえば、塗料に配合された際に、全日射反射率を著しく増加する顔料添加剤剤および得られた顔料が記載されている。また、前記顔料を使用した組成物、および関連する方法も記載されている。その顔料は、酸化鉄および/または酸化クロムから、添加剤として一以上のリン酸塩化合物を用いて形成される。


【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2010年2月19日に出願された米国仮出願番号61/306,080の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
ここに開示される実施態様は、顔料と顔料添加剤の分野に向けられる。
【背景技術】
【0003】
顔料は、特定の波長の光を選択的に反射または吸収することによって、特定の色を呈している。白色光は、光の可視スペクトルの全てがおおよそ同程度に混じり合っている。白色光が着色顔料に衝突すると、顔料の電子構造に相互作用し、いくつかの波長が吸収される。これらの相互作用は、顔料の化学的性質や結合によって決定される。吸収されなかった波長は観察者の方向へと反射し、この反射された可視光スペクトルが色の発現を引き起こす。例えば、ウルトラマリンは青色光、典型的には波長400〜500nmを反射し、可視光の他の波長を吸収している。
【0004】
顔料の外観は、光源のスペクトルにも依存する。太陽光は、高い色温度、極めて均一なスペクトルを有し、白色光の基準と見なされている。蛍光灯などの人工光源は、スペクトル中のある領域に大きな山を有し、他の領域に深い谷を有する傾向にある。このような条件下で見ると、顔料は異なる色を示すかもしれない。
【0005】
色を数値で表わすために用いられる色空間では、その光源を特定しなければならない。研究室での色測定では、特に断りのない限り、D65光源、または太陽光と同程度の色温度である”昼光6500K”のもとで行なわれたものと推定される。
【0006】
彩度や明度といった他の色特性は、他の物質、一般的な顔料添加剤によって調整することができる。純粋な顔料化学品へと添加されるバインダやフィラーも、それ自身の反射または吸収パターンを有しており、最終的なスペクトルに影響を及ぼし得る。同様に、顔料/バインダ混合物においては、光の中の個々の光線が、顔料分子に衝突できなかったり、そのまま反射されてしまったりするかもしれない。光源から離脱したこれらの光は、結果として生じる色の彩度に影響する。純粋な顔料は、非常にわずかな白色光の離脱を許すのみであり、高い彩度の色が得られる。しかし、少量の顔料を相対的に多量の白色バインダと混合すると、白色光の多量の離脱により、彩度が減じられた淡い外観を呈する。
【0007】
顔料粒子は、その物性を選択的に変更するために、被覆したり、あるいは一以上の添加剤と混ぜ合わせることができる。この点で特に注目を集めている顔料が、二酸化チタン、TiOである。この顔料の注目すべき点は、塗料から日焼け止め、食品用着色剤までといった、その応用範囲の広さである。二酸化チタンなどの顔料の物性、典型的には光学特性を改良するため、非常に多くの添加剤や処理剤が記述されてきた。これらの処理剤の多くに、リンやリン酸アニオンが用いられている。米国特許2,817,595号には、特定のリン化合物の存在下での含水二酸化チタンの焼成による改良された二酸化チタン顔料の調製方法が記述されている。米国特許3,330,798号には、二酸化チタン粒子上へのリン酸アルミニウムの析出が記述されている。米国特許3,926,660号には、二酸化チタン顔料上への金属リン酸塩の沈殿が記述されている。米国特許3,946,134号は、顔料粒子上への特定のリン酸塩錯体による防護皮膜の形成に関する。米国特許4,052,224号には、二酸化チタン顔料のリン化合物による処理が記述されている。米国特許4,239,548号には、リン酸ラジカルを含む一以上の皮膜を有する二酸化チタン顔料が記述されている。米国特許4,461,810号には、リン酸イオンなどの各種アニオンで被覆した二酸化チタン粒子が記述されている。米国特許5,114,486号には、二酸化チタンなどの金属酸化物顔料のリン酸亜鉛による処理が記述されている。米国特許5,942,281号には、二酸化チタン顔料へのリン酸アルミニウムによる被覆処理が記述されている。米国特許6,342,099号は、リン酸塩化合物の多重析出により被覆された二酸化チタン顔料に関する。
【0008】
二酸化チタン以外の顔料の物理的特性の改善についても努力が傾けられている。WO98/38256号には、特定の酸化物又はリン酸塩が被覆された各種無機顔料が記述されている。米国特許6,261,691号には、金属リン酸塩の層を含む粉末被覆粒子が記述されている。
【0009】
酸化鉄顔料は、セラミックへの応用、特につや出し加工において広く用いられている。多くの金属酸化物が、イングレーズにおいて、高温での焼結の後、発色する。天然の酸化鉄顔料は、オークルと呼ばれる。ローシエンナ、バーントシエンナ、アンバーといった多くの伝統的な塗装色は、酸化鉄顔料による。酸化鉄(III)が一般的に用いらている。鉄顔料は化粧料分野においても広く用いられる。これらは、非毒性、耐湿性、非滲出性であると考えられている。通常、酸化鉄(III)顔料は黒色、酸化鉄(II)顔料は赤色あるいは赤褐色である。酸化クロム顔料も、塗料、インク及びガラスにおいて広く用いられている。酸化クロムは、大抵の場合CICPグリーン17のような緑色を与える。
【0010】
鉄又はクロムをベースとした顔料粒子の物性を変更するための処理について、少数の個別の開示が知られている。例えば、米国特許2,419,094号には、クロム鉄鉱(Cr・FeO)のようなクロム含有顔料に対してリン酸製剤を添加することが記述されている。主に二酸化チタン顔料の処理に向けられたものであるものの、米国特許3,767,455号は、酸化クロム又は酸化鉄顔料をリン酸塩で被覆してもよいことを報告している。
【0011】
ロシア特許2236391号には、コンクリート材や屋根ふき材のような建築材料に用いられる”着色強度”の改善されたグレインが記述されている。このグレインは、リン酸塩バインダによる皮膜と、酸化鉄や酸化クロムのような顔料とを含んでいる。米国特許7,060,126号には、有用な光学特性を備えた多層つや出し顔料が記述されている。この”つや出し顔料”は、酸化鉄や酸化クロムのような各種金属酸化物を有する外部”(B)”層を備えた金属粒子である。また、最外”(C)”層には、”リン酸塩−含有であってもよい”FeまたはCrが含まれていてもよい。
【0012】
多くの点で満足のいくものであるとはいえ、知られる限りにおいて、先行技術は、鉄またはクロムをベースとした顔料の光学特性、特に、これらの顔料の日射反射率を改善するための特定の処理戦略を提供してはいない。このため、鉄またはクロムをベースとした顔料を用いて、より優れた製品または応用を実現することが可能な、これらの顔料の改良をもたらすことは有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許2,817,595号
【特許文献2】米国特許3,330,798号
【特許文献3】米国特許3,926,660号
【特許文献4】米国特許3,946,134号
【特許文献5】米国特許4,052,224号
【特許文献6】米国特許4,239,548号
【特許文献7】米国特許4,461,810号
【特許文献8】米国特許5,114,486号
【特許文献9】米国特許5,942,281号
【特許文献10】米国特許6,342,099号
【特許文献11】WO98/38256号
【特許文献12】米国特許6,261,691号
【特許文献13】米国特許2,419,094号
【特許文献14】米国特許3,767,455号
【特許文献15】ロシア特許2236391号
【特許文献16】米国特許7,060,126号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来型のシステムに関する前記困難性や欠点は、以下に示す本願顔料、組成物および方法によって解消される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一の態様において、本発明は、改良された日射反射率を示す黒色の顔料を提供する。この顔料は、有効量のリン酸塩の存在下に形成された材料を含んでいる。この材料は、次式を有する固溶体状に形成されている;(CrFeMe,ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、xはゼロ以上1以下、yはゼロ以上1以下、zはゼロ以上0.3未満である。この材料は、プレスされたカップ状で、波長1300〜1600nmの光に対して、リン酸塩の併用によって改良された平均反射率を示す。
【0016】
他の態様において、本発明は、改良された日射反射率を示す茶色または緑色の顔料を提供する。この顔料は、有効量のリン酸塩の存在下で形成された、次式を有する固溶体状の材料を含んでいる;(CrFeMe,ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、xはゼロ以上1以下、yはゼロ以上1以下、zはゼロ以上0.3未満である。この材料は、プレスされたカップ状で、波長400〜600nmの光に対して25%未満の平均反射率を示す。この材料は、プレスされたカップ状で、波長1300〜1600nmの光に対して50%を超える平均反射率を示す。
【0017】
さらに他の態様において、本発明は、改良された日射反射率を示す顔料を形成するための方法を提供する。この方法は、酸化鉄および酸化クロムの少なくとも一つを含む顔料前駆体組成物を調製する工程を備える。また、この方法は、有効量のリン酸塩を前記前駆体組成物中に添加する工程も備える。この方法は、さらに、前記前駆体組成物およびリン酸塩を少なくとも1500°Fまで加熱し、二次組成物を形成する工程を備える。また、この方法は、前記二次組成物を冷却することにより顔料を形成する工程を備える。この顔料は、次式を有する固溶体状に形成された材料を含んでいる;(CrFeMe,ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、xはゼロ以上1以下、yはゼロ以上1以下、zはゼロ以上0.3未満である。
【0018】
当然のことながら、本発明は、他のあるいは異なる実施態様とすることも可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明を逸脱したものを除くすべてのさまざまな事項において変更が可能である。したがって、図面および記載は、説明のためのものと見なされ、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、各種の鉄−高含有顔料における全日射反射率とリン酸鉄添加率とを対比したグラフである。
【0020】
【図2】図2は、各種のクロム−高含有顔料における全日射反射率とリン酸鉄添加率とを対比したグラフである。
【0021】
【図3】図3は、焼成された単独の酸化鉄・酸化クロム顔料試料のそれぞれにおける全日射反射率とリン酸鉄添加率とを対比したグラフである。
【0022】
【図4】図4は、黄色鉄と酸化クロムを含む顔料における全日射反射率とリン酸鉄添加率とを対比したグラフである。
【0023】
【図5】図5は、酸化鉄と本願においてクロムBと呼ぶ特定の等級の酸化クロムとを含む顔料における全日射反射率とリン酸鉄添加率とを対比したグラフである。
【0024】
【図6】図6は、リン酸鉄添加剤の量を変化させて得られたFeとCrのモル比が1:1である顔料の平均反射率値のグラフである。
【0025】
【図7】図7は、リン酸鉄添加剤の量を変化させて得られたFeとCrのモル比が1:5である顔料の平均反射率値のグラフである。
【0026】
【図8】図8は、リン酸鉄添加剤の量を変化させて得られたFeとCrのモル比が5:1である顔料の平均反射率値のグラフである。
【0027】
【図9】図9は、クロム−Aとして指定される特定の等級の酸化クロムと、様々な量のリン酸鉄添加剤とにより得られた顔料の平均反射値率値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい実施態様の顔料は、700〜2500nm、好ましくは1300〜1600nmの間の波長の光を比較的高い割合で反射し、250〜700nm、好ましくは400〜600nmの間の波長の光を比較的低い割合で反射するという、改良された日射反射率の特性を示す。これらの特有の反射特性によって、好適な顔料は、選択的に赤外線(IR)放射を反射する一方で、可視スペクトルの光をあまり反射しないようにすることができる。このため、顔料は望ましい外観及び色を維持しつつ、IR放射を大量に反射する。
顔料
【0029】
本発明は、酸化鉄と酸化クロムの一方または両方に由来し、非常に優れた特性、すなわち改良された日射率を示す顔料を提供するものである。本発明によれば、酸化鉄と酸化クロムのうち少なくとも1つを含む顔料が、有効量の1つ以上のリン酸塩化合物、好ましくはリン酸鉄を使用して形成される。
【0030】
好ましくは、顔料は、酸化鉄と酸化クロムとを含む。酸化鉄は、様々な異なる構造のものであってよく、FeO,酸化鉄(II);Fe,酸化鉄(II、III);Fe,酸化鉄(III);FeOOH(またはFe・HO),酸化鉄一水和物(黄色酸化鉄としても知られる);またはこれらの組み合わせなどがある。好ましくは、酸化鉄の構造はFe,酸化鉄(III)である。酸化クロムの構造は、一般的にはCr,酸化クロム(III)である。しかし、その他のクロムの酸化物として、酸化クロム(II)(CrO)、二酸化クロム(酸化クロム(IV))(CrO)、三酸化クロム(酸化クロム(VI)(CrO)なども考えられる。特定の用途では、本明細書において「クロム−A」や「クロム−B」として指定されている、特定の等級の酸化クロムを使用することができる。クロム−AはCrの小さい結晶の等級であり、クロム−BはCrの大きい結晶の等級である。
【0031】
好適な実施態様の顔料は、特定のモル比率のFeとCrから得られる。典型的には、好適な実施形態の顔料は、FeとCrを、Fe:Crモル比として、例えば、約10:1〜約1:10、より好適には約9:1〜約1:9の範囲で含む。5:1〜1:5のモル比の範囲が、多くの用途にとって最も好ましい。特定の用途に応じて、Fe:Crが、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、1:2、1:3、1:4、1:5のモル比に相当する量のFeとCrを用いることが望ましいかもしれない。本明細書に表される全てのモル比は、特に明記しない限り、鉄(Fe)対クロム(Cr)のモル量に関するものである。
【0032】
好適な顔料は、一般的な粒子サイズの微粒子形状であり、約0.5〜約2μmが最も好ましいが、約0.2〜約10μmであってもよい。
【0033】
好ましくは、顔料を構成する物質が、化学式(CrFeMeを有する固溶体状であり、ここで、x+y+z=1で、nは電気的中性とするために必要な酸素の数であり、Meは少なくとも1つの金属であり、xはゼロ以上1以下、yはゼロ以上1以下、zはゼロ以上0.3未満である。これは、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z<0.3と表すこともできる。zは、0.2未満であることが好ましく、0.1未満であることが最も好ましい。これらの顔料は、色素顔料製造業者協会(CPMA)によりDCMA3−05−3または3−06−7として指定され得る。この顔料は、また、少量の遊離酸化クロムも含んでいてもよい。本明細書に詳しく記載されているように、好適な顔料組成は、酸化鉄と、酸化クロムと、一以上の任意成分とから形成され、FeとCrの混合物とは対照的に、固溶体状である。
【0034】
他の態様において、本発明は、化学式(ZnNiMnMe)(CrFeMe)Oを有する固溶体を含む顔料を提供するものであり、ここで、a+b+c+d=1、x+y+z=1で、nは電気的中性とするために必要な酸素の数であり、Meは、0.3未満のdと0.3未満のzである少なくとも1つの追加金属である。好ましくは、Meは0.1未満のdと0.1未満のzである。特定の用途においては、Meが0.03未満のdと0.03未満のzであることが好ましいかもしれない。これらの顔料は、色素顔料製造業者協会(CPMA)によりDCMA13-33-7、13-36-7、13-37-7、13-41-9、13-48-7、13-50-9または13-51-7として指定され得る。
【0035】
本発明の顔料は、通常、本明細書に記載されるようなリン酸塩を添加した、酸化鉄及び酸化クロムとの組み合わせから形成される固溶体を含むことが望ましいが、本発明には、リン酸塩を添加した、酸化クロムまたは酸化鉄のいずれかよりなる顔料も含まれる。つまり、本発明には、主に酸化クロムを含み、本明細書に記載されるようなリン酸塩を添加して形成された顔料も含まれる。また、本発明には、主に酸化鉄を含み、本明細書に記載されるようなリン酸塩を添加して形成された顔料も含まれる。特定の用途においては、酸化クロムか酸化鉄のいずれか一方と一以上の任意成分とから実質的になる顔料とすることが望ましいかもしれない。好適な実施態様の顔料における基本的、物質的な特性、すなわち、本明細書に記載された色特性や増加した日射反射率特性に悪影響を及ぼさない限り、このような任意成分の配合を行うことができる。
【0036】
本発明によれば、酸化鉄と酸化クロムの原料から作られる顔料に対し、特にそれら顔料の形成中か形成前に、一以上のリン酸塩化合物、好ましくはリン酸鉄を添加することによって、得られる顔料粒子の特性、特に顔料の全日射反射率が大きく改善されることが見出された。リン酸鉄は、FePO,リン酸鉄(III);Fe(PO,リン酸鉄(II);またはこれらの組み合わせなど、いくつかの構造をとり得る。好ましくは、リン酸鉄はFePOである。商用グレードのFePOの標準的な粒径と表面積は、3.2μm(中央値)、4.0μm(平均値)、10.5m/gである。当然のことながら、これらは単に粒径と表面積の一般的な値にすぎない。FePOの他のグレードでは異なる値を示すことが知られている。本発明の顔料は、幅広いリン酸塩源を用いて作ることができる。
【0037】
本発明による顔料、より具体的には、顔料を形成するための前駆体組成に添加するリン酸塩の量は、得られる顔料及び/またはその顔料を利用する製品において要求される特性によって異なるかもしれない。好ましくは、顔料前駆体材料と組み合わせるリン酸塩添加剤の量を、本明細書では「有効量」という。この量は、本明細書に記載されるように、顔料前駆体材料と組み合わされ、混ぜ合わされ、加熱された際のリン酸塩の量をいい、リン酸塩を添加しない顔料に比べ、得られた顔料の反射率の増加をもたらす。具体的には、この反射率は全日射反射率の用語で表現されており、このことは当業者において明らかである。典型的には、リン酸塩の「有効量」とは、顔料前駆体または前駆体組成物の重量に対して、約0.05%〜約5%のPOを示す。しかしながら、本発明が、顔料前駆体組成物中にリン酸をより多くまたは少なく用いる場合も含むことは言うまでもない。例えば、顔料前駆体組成物の0.01%POという少量のリン酸塩量の使用が可能であると考えられる。また、5%POよりも大幅に多い量、例えば顔料前駆体組成物の重量に対して20%POまでの使用が可能であると考えられる。
【0038】
リン酸鉄(オルトリン酸鉄粉末、FePOとして商業的に入手可能である)は、入手時の状態で使用することができる。当然のことながら、このような材料は、幅広い異なる供給業者や様々な供給源から入手することができ、本発明に用いることができる。リン酸鉄粉末は、好ましくは、出発物質(最終的な顔料でない)としてのFe、Crと、標準粒子径0.50μm(中央値)、0.57μm(平均値)、表面積12.8m/gの赤色酸化鉄;、標準粒子径0.54μm(中央値)、0.57μm(平均値)、表面積16.9m/gの黄色酸化鉄;、標準粒子径1.27μm(中央値)、1.40μm(平均値)、表面積5.05m/gのクロム−A;、標準粒子径1.96μm(中央値)、2.16μm(平均値)、表面積2.34m/gのクロム−B;とともに、ブレンダーを用いて混合される。物理的混合が行われる。これらの粒子径と表面積の値は、当然のことながら、単に一般的なものである。本発明は、出発物質としての他のグレードのFeとCrの使用を含んでいる。物理的混合プロセスは、少なくともリン酸塩に関連する材料の一部が、酸化鉄と酸化クロム粒子の領域内に存在し、望ましくはそれとともに密接に混ざるような、適切な混合とせん断である。混合の後、酸化鉄と酸化クロムの原材料とリン酸塩添加剤は、固相反応を受けるように高温で加熱される。好ましい実施態様の方法に関しては、本明細書中により詳しく記載されている。
【0039】
リン酸塩がこの固相反応を起こすことで、本明細書に記載されるような、より大きな赤外線(IR)反射または日射反射を持つ顔料が生成されると考えられる。リン酸塩が得られた顔料粒子の表面上にあるのか、FePOの分離した粒子となっているか、あるいは他のリン酸塩含有結晶または非晶性組成となっているのかはわかっていない。リン酸塩添加剤は、顔料や顔料前駆体と反応しない非晶相として存在し得ると考えられる。得られた顔料におけるX線回折(XRD)分析では、1)リン酸塩が非晶形であること、2)それらは顔料結晶構造中に組み込まれていないことを示唆している。走査型電子顕微鏡(SEM)もXRDの結果を支持している。
【0040】
上記のリン酸鉄の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、一以上の他のリン酸塩化合物を、粒子の形成に用いられる上記の顔料粒子または前駆体物質に添加することができる。このような他のリン酸塩化合物の好ましい例としては、これらに限定されるものではないが、リン酸アルミニウムやメタリン酸アルミニウムなどのアルミニウムのリン酸塩、リン酸アンモニウムのアンモニウムのリン酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。リン酸アルミニウムはAlPOであり、多くの商業的供給源から幅広く入手可能である。リン酸クロムはCrPOである。メタリン酸アルミニウムはAl(POである。リン酸アンモニウムは(NHPOである。また、(NHHPOであるリン酸水素ジアンモニウム(またはリン酸ジアンモニウム)や、NH・HPOであるリン酸二水素アンモニウム(またはリン酸モノアンモニウム)などの他のアンモニウムベースのリン酸塩も使用できると考えられる。
【0041】
本発明には、色素顔料製造業者協会(CPMA)に指定されるような特定の顔料に関するいくつかの追加の望ましい態様も含まれる。これらの顔料には、処方に応じてCrとFeOを含むことのできるグリーン17、レッド101/102、ブラウン33、およびブラック30がある。
【0042】
特に、本発明は、これらの顔料のそれぞれのクラスに対応し、本明細書に記載のリン酸塩添加剤を受け入れることのできる、様々な好ましい態様の顔料組成物を提供する。「グリーン17」として指定された顔料のクラスは、無機顔料であるクロムグリーン−ブラックへマタイトとして知られており、主として酸化クロム(III)からなる結晶へマタイトの高温焼成反応生成物である。この顔料は、一般化学式Crを有している。その組成には、Al、Fe、またはMnなどの調整物質のいずれか1つあるいはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。このクラスの顔料は、リン酸塩添加剤を使用して形成することで、得られた顔料に改善された日射反射率特性を与えることができる。
【0043】
「レッド101」として指定された顔料のクラスは、無機顔料である鉄ブラウンへマタイトとして知られており、主として酸化鉄(III)からなる結晶へマタイトの高温焼成反応生成物である。この顔料は、一般化学式Feを有している。その組成には、Cr、FeO、MnまたはNiOなどの調整物質のいずれか1つあるいはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。このクラスの顔料は、リン酸塩添加剤を使用して形成することで、得られた顔料に改善された日射反射率特性を与えることができる。
【0044】
「ブラウン33」として指定された顔料のクラスは、無機顔料である亜鉛鉄クロマイトブラウンスピネルとして知られており、様々な量の酸化亜鉛(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化クロム(III)が、均一にイオン的に混ざり合って、スピネル型の結晶母体を形成している高温焼成反応生成物である。この顔料は、一般化学式(Zn,Fe)(Fe,Cr)を有している。その組成には、Al、NiO、Sb5、SiO2、SnOまたはTiOなどの調整物質のいずれか1つあるいはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。このクラスの顔料は、リン酸塩添加剤を使用して形成することで、得られた顔料に改善された日射反射率特性を与えることができる。
【0045】
「ブラック30」として指定された顔料のクラスは、無機顔料であるクロム鉄ニッケルブラックスピネルとして知られており、様々な量の酸化クロム(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化ニッケル(II)が、均一にイオン的に混ざり合って、スピネル型の結晶母体を形成している高温焼成反応生成物である。この顔料は、一般化学式(Ni,Fe)(Cr,Fe)を有している。その組成には、CuO、MnOまたはMnなどの調整物質のいずれか1つあるいはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。このクラスの顔料は、リン酸塩添加剤を使用して形成することで、得られた顔料に改善された日射反射率特性を与えることができる。
【0046】
前述のように、様々な好ましい実施態様の顔料は、得られた結晶構造内に一以上の調整物質を含んでいてもよい。例えば、下記表1に示されるように、へマタイト構造を示す顔料は一以上の調整物質を含んでいてもよい。
表1
ヘマタイト結晶構造を有する好適な実施態様の顔料に使用するための調整物質
【表1】


また、下記表2に記載されるように、スピネル構造を示す顔料は一以上の調整物質を含んでいてもよい。
表2
スピネル結晶構造を有する好適な実施態様の顔料に使用するための調整物質
【表2】

【0047】
特定の結晶構造を示す顔料が本明細書中に参考として示されている。例えば、特定の顔料が、へマタイト結晶構造を示すものとして本明細書に記載されている。他の顔料が、スピネル結晶構造を示すものとして本明細書に記載されている。当然のことながら、「へマタイト結晶構造」という用語は、酸化鉄の一つである鉱物へマタイトによって典型的に示される結晶構造である。ヘマタイトは、菱面体晶(六方晶)系で結晶化し、コランダムと同じ結晶構造を持っている。「スピネル結晶構造」という用語は、立方(等軸)晶系で結晶化する鉱物のクラスの結晶構造をいい、酸化物陰イオンは立方格子に密に充填するように配列され、陽イオンは格子の八面体と四面体位置の一部または全部を占めている。
方法
【0048】
本発明は、また、本明細書に記載の顔料を製造するための様々な方法を提供する。好ましい態様において、この方法には、酸化鉄と酸化クロムの少なくとも1つ、好ましくは両方を含む顔料前駆体組成物の調製工程が含まれる。酸化鉄および/または酸化クロムは、本明細書に記載されるどのような形態であってもよい。所定量のリン酸塩化合物は、第二組成物を形成するための前駆体組成物に添加される。好ましいリン酸塩化合物の量は、添加されるリン酸塩の有効量である。前記のように、リン酸塩の有効量は、一般的に、約0.05%〜約5.0%である。好ましいリン酸塩化合物は、鉄のリン酸塩、アルミニウムのリン酸塩、アンモニウムのリン酸塩と、それらの組み合わせから選ばれる。これら化合物は、それぞれ、本明細書に記載の形態とすることができる。このため、例えば、前駆体組成物に有効量のリン酸塩を与えるために、リン酸鉄FePOがリン酸塩化合物として使用されるとすると、約0.1%〜約8%のリン酸鉄(前駆体組成物の重量に基づく)が、有効量のリン酸塩、すなわち約0.05%〜約5.0%のPOを与えるために添加される。
【0049】
以上の構成成分は、任意で微粉末に粉砕された後、好ましくは適切な割合で混合される。粉砕の細かさは重要ではないが、平均粒径が約0.2μm〜約5μmであることが好ましい。市販の標準顔料グレードの金属酸化物粉末と前駆体は、一般的に、混合前の付加的な微粉砕なしで使用することができる。混合は乾燥状態で行うことができ、あるいは粉末を溶液中で混合し、乾燥させ、もし粒子の凝集を解砕する必要があれば再度粉砕を行なうこともできる。
【0050】
第二組成物は、少なくとも約1500°Fの温度まで加熱され、これにより改善された顔料が形成される。一般的に、加熱は約1750°F〜約2400°Fの温度で、約0.5〜48時間行われる。しかし、本発明の実施には広い範囲の温度と時間が使用でき、当然のことながら、本発明にかかる固溶体を形成するために使用される温度と時間が十分である限り、温度と時間は重要ではない。
【0051】
多くの場合、本発明により形成された固溶体を、加熱の後に、粉砕あるいは磨砕する必要はない。しかし、より小さい平均粒子径が望まれる場合や、特定の用途において、わずかな粒子凝集をも厳格に回避することが要求される場合、付加的に固溶体の粉砕または磨砕を行うことができる。加熱は、反応物を窯の中に置いたるつぼに収容したり、または他の反応物の加熱に適した装置へと配置することによって行なうことができる。加熱は、回転か焼炉またはその他の連続焼成方法を用いて行うこともできる。
【0052】
何らかの特定の理論に制限されることを望むものではないが、特に、顔料物質の結晶構造の形成の際に一以上のリン酸塩化合物が存在することで、IR吸収成分の量または特性の度合いが減少し、これによって日射反射率が増加すると考えられる。例えば、顔料物質中に特定の成分が存在することによって、IR放射が吸収され得ると考えられる。これと別に、あるいはこれに加えて、IR放射は、得られた顔料物質の結晶構造中の特定の構造的特性、つまり欠陥によって吸収され得る。顔料物質形成中のリン酸添加剤の存在は、本明細書に実証されているように、顔料物質のIR反射率の著しい改善という驚くべき結果をもたらす。さらに、最終顔料物質中のリン酸塩の存在がIR反射の改善をもたらすにもかかわらず、このような顔料物質は、リン酸塩剤の存在下において形成されるかまたは結晶化された後、顔料物質から全てのリン酸塩を取り除くために、十分に処理もしくは洗浄されたとしても、同様に改善されたIR反射特性を示すと考えられる。通常、これらのIR反射率の改善は、改良全日射反射率の用語を用いて表される。
反射率
【0053】
本発明の顔料は、改善された反射率や反射特性を示す(本明細書において、「反射率」と「反射」の用語は互いに置き換えて用いることもできる)。このような改善は、例えば、赤外線(IR)反射率の改善、または日射反射率(さらに具体的には、全日射反射率(TSR))の改善によって確認することができる。当業者において明らかなように、全日射反射率は、紫外、可視、近赤外領域で反射されたエネルギー量を、入射太陽エネルギーの総量で割った値である。一般的に、好ましい実施形態の顔料は、少なくとも1%の改良全日射反射率を示し、より好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも4%、最も好ましくは少なくとも5%である。これらの各種の割合による改善はすべて、本明細書に記載のリン酸塩添加剤の非存在下で形成された、対応する顔料に対するものである。
【0054】
前述のように、好ましい実施態様の顔料は、顔料が、700〜2500nm、好ましくは1300〜1600nmの波長の光を比較的高い割合で反射し、一方で、250〜700nm、好ましくは400〜600nmの波長の光を比較的低い割合で反射するような改良全日射反射率を示す。
【0055】
化学式(CrFeMeを有する顔料は、特有の反射特性を持つ。IRスペクトルの光に関しては、好ましくは、顔料が700〜2500nmの波長の光に対して平均で45%を超える反射を示す。より好ましくは、顔料が700〜2500nmの波長の光に対して平均で50%を超える反射を示す。より好ましくは、顔料が1300〜1600nmの間の波長の光に対して平均で45%を超える反射を示す。最も好ましくは、顔料が1300〜1600nmの間の波長の光に対して平均で50%を超える反射を示す。
【0056】
可視スペクトルの光に関しては、好ましくは、化学式(CrFeMeを有する顔料が、250〜700nmの波長の光に対して平均で40%未満の反射を示す。より好ましくは、顔料が250〜700nmの波長の光に対して平均で30%未満の反射を示す。最も好ましくは、顔料が250〜700nmの波長の光に対して平均で20%未満の反射を示す。特定の用途においては、400〜600nmの波長の光のリダイレクション、すなわち反射について、顔料が平均20%未満、より好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満の反射を示す。
【0057】
各種の実試験の結果において詳細に説明されるように、これらの各種反射測定は、顔料物質がプレスされたカップ状で行われた。この試験方法は、本明細書においては、Sliwinskiらの米国特許6,174,360号に詳述されている「ドライプレストパウダー」(DPP)試験方法と呼ぶ。他の試験技術は、本明細書の試験結果に詳しく記載されており、顔料のアルキドメラミン(AM)塗料系への配合もある。
【0058】
上記の日射反射率特性を示す本発明の顔料を使用することによって、大幅なエネルギーコスト削減を達成することができる。具体的には、塗料やコーティングの日射反射率の度合いは多くの要因によるものであるが、一般的な多くの建築用途において、全日射反射率のたった1%の増加によって、年間として著しい節減がもたらされる。赤外線反射顔料を含む金属屋根材が記載されたケーススタディが、Cool Metal Roofing Coalition of Pittsburgh,PA(ピッツバーグ
クール金属屋根連合,PA)より入手可能な「クール金属屋根材ケーススタディ」に提供されている。
【実施例】
【0059】
本発明の様々な態様と利点のさらなる評価のために、各種のモル比のFeまたはFeOOHの形態の酸化鉄とCrの形態の酸化クロム、各種の量のFePOの形態のリン酸鉄とに由来する顔料の反射特性を評価するための一連の調査を実施した。別の一連の調査では、酸化鉄、酸化クロムと、各種の量のメタリン酸アルミニウムAl(POとに由来する顔料の評価を行った。また、さらに別の一連の調査では、酸化鉄、酸化クロムと、各種の量のNHPOの形態のリン酸アンモニウムとにより形成される顔料を評価した。これらの調査結果を図1−5に示す。また、本明細書に記載のリン酸塩添加剤を用いて形成された顔料の反射率における特有の効果について評価するため、追加の評価を実施した。顔料の反射率は、可視スペクトルと赤外(IR)スペクトルの両方を含む光の波長の範囲にわたって測定された。これらの調査結果を図6−9に示す。
【0060】
原料として、赤色酸化鉄(Fe)、黄色酸化鉄(FeOOH)、酸化クロム(Cr)を使用した。FeとCrの組み合わせのため、(Fe:Cr)のモル比(1:1〜5:1)の粉末とモル比(1:1〜1:5)の粉末とを、それぞれ別々に計量した。それぞれのモル比のFe‐Crに、リン酸鉄(オルトリン酸鉄、FePO)を加え、0%〜8.0重量%の範囲の他の金属または非金属リン酸塩を、特定の原料バッチに加えた。各種の原料バッチを計量した後、オスタライザーブレンダーを使用して2分間実験混合した。混合の後、均一化してから、個々の原料バッチをコージライトのるつぼに入れ、1500°F〜2000°Fの範囲の温度で、空気中で焼成した。50gの焼成顔料を水と一緒に試料粉砕機に入れ、メカニカルロールラックで30分間粉砕した。粉砕後、ろ過により顔料を水から分離した。顔料から水を分離した後、顔料を乾燥皿に置き、300°Fの乾燥炉の中で約2時間乾燥した。乾燥後、試験顔料を着色目的でチタニアに対して1:4で混ぜ合わせた顔料とし、硬質ポリ塩化ビニル(RPVC)樹脂中で評価した。当分野において知られているように、樹脂は2本ロールミルを用いて分散した。
【0061】
ティントカラーの試験のため、着色の目的で顔料をチタニアに対して1:4で混ぜ合わせた試験顔料として、硬質ポリ塩化ビニル(RPVC)樹脂中で評価した。当分野において知られているように、樹脂は2本ロールミルを用いて分散した。
【0062】
マストーンカラーの評価のため、顔料をアルキドメラミン塗料で試験した。塗料溶剤中での顔料の分散を助けるためにガラスビーズを用い、メカニカルシェーカーで30分間混合した。30分間の振動の後、ペイントストレーナーを通じた重力ろ過により、分散物をガラス媒体から分離した。その後、顔料をレネタ試験紙上に引き下ろし、200°Fの乾燥炉で45分間乾燥した。乾燥後、色と全日射反射率を測定した。測定された日射反射率は、ASTM試験番号E903に準じて示した。
【0063】
全日射反射率について、顔料は、2つの方法のうちのいずれかによって試験および評価した。第一の方法は、アルキドメラミン(AM)塗料系のマストーンカラー、つまり希釈されていない色である。この試験方法を用いた試験結果を図1−5に示す。第二の方法は、SliwinskiらのUS特許6,174,360号に記載されている媒体不使用(または媒体に依存しない)の「ドライプレストパウダー」(DPP)全日射反射率試験方法である。この特許に記載されているように、乾燥した顔料試料は、波長2.5μmのラブスフェア社製RSA−PE−19反射分光アクセサリを備えたパーキン社製ラムダ19分光光度計を使用し、プレスによってきれいに揃えられたカップ状の粉末試料として測定した。試験結果を図6−9に示す。
【0064】
以下に示す実施例1−7では、それぞれ特定の顔料組成物をアルキドメラミン塗料系に配合した。
【0065】
実施例1 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを処理顔料粒子の製造のために添加し、上記の塗料に配合し、さらに全日射反射率を測定した。これらの試験では、顔料は、Fe:Crのモル比が1:1のFeとCr前駆体に由来している。この前駆体に、原料バッチの中で各種の量のFePOを添加し、本明細書に記載のとおりに処理した。具体的には、顔料前駆体組成物の重量に対して0.1〜8%の重量範囲のリン酸鉄を使用した。この量は、本明細書に記載のとおり有効量のリン酸を与えるものである。この顔料をアルキドメラミン塗料系に配合した。表3に、塗料試験のために測定されたマストーンカラーと全日射反射率値を示す。実施例1の結果は、1:1のプロットとして図1に示されている。リン酸塩含有化合物を含まないコントロール顔料は、21.8%の全日射反射率を示した。これは図1に記載されている。以下の表は、添加によって、添加剤を用いずに調整したコントロール(0.00FePOで示される)と同程度の色特性を維持しつつ、より高い割合のTSRが達成できることを示している。
表3
FeとCrの金属モル比が1:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−8.0%である、AM法で試験された色および反射率
【表3】

【0066】
実施例2 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比2:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。表4に、これらの処理顔料を用いた塗料試験で測定した反射率値を示す。実施例2の結果は、「1:2」と指定されたプロットとして、図1に示されている。
表4
FeとCrの金属モル比が2:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−8.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表4】

【0067】
実施例3 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比3:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。表5に、これらの処理顔料を用いた塗料組成物について測定した反射率値を示している。実施例3の結果は、「1:3」と指定されたプロットとして、図1に示されている。
表5
FeとCrの金属モル比が3:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−8.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表5】

【0068】
実施例4 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比5:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。下記表6に、この顔料を用いた塗料組成物について測定した反射率値を示す。実施例4の結果は、「1:5」と指定されたプロットとして図1に示されている。
表6
FeとCrの金属モル比が5:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−4.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表6】

【0069】
実施例5 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:2の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。表7に、この処理顔料を用いた塗料組成物について測定した反射率値を示す。実施例5の結果は、「2:1」と指定されたプロットとして、図2に示されている。リン酸塩含有化合物を含まないコントロール顔料は、おおよそ23.4%の全日射反射率を示した。これは図2に示されている。
表7
FeとCrの金属モル比が1:2、リン酸鉄の添加重量%が0.0−2.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表7】

【0070】
実施例6 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:3の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。下記表8に、この顔料を用いた塗料組成物について測定した反射率値を示す。実施例6の結果は、「3:1」と指定されたプロットとして図2に示されている。
表8
FeとCrの金属モル比が1:3、リン酸鉄の添加重量%が0.0−2.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表8】

【0071】
実施例7 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:5の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。表9に、処理顔料を用いた塗料組成物について測定した反射率値を示す。実施例7の結果は、「5:1」と指定されたプロットとして図2に示されている。
表9
FeとCrの金属モル比が1:5、リン酸鉄の添加重量%が0.0−2.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表9】

【0072】
実施例8−9では、リン酸鉄を使用する代わりに、メタリン酸アルミニウム、Al(POを各種の異なる量で使用した。実施例8では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:5の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のAl(POを用いた。実施例8の結果は、表10に示され、「5:1、Al(PO」と指定されたプロットとして図2に示されている。
表10
FeとCrの金属モル比が1:5、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)の添加重量%が0.0−4.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表10】

【0073】
実施例9 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のAl(POを添加した。実施例9の結果は、表11に示され、「1:1、Al(PO」と指定されたプロットとして図2に示されている。
表11
FeとCrの金属モル比が1:5、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)の添加重量%が0.0−8.0%である、AM法で試験された色と反射率
【表11】

【0074】
実施例10−11では、リン酸鉄やメタリン酸アルミニウムを使用する代わりに、リン酸二水素アンモニウム、NHPOを使用した。実施例10では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比1:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のNHPOを用いた。実施例10の結果は、表12に示され、「1:1、NHPO」と指定されたプロットとして図1に示されている。本明細書に記載のリン酸塩を添加することによって、得られた顔料中の溶解性Crの含有量が著しく減少することは重要である。本明細書に示される試験結果は、リン酸鉄の添加が水溶性クロムの減少のために用いられ得ることも示唆している。実施例については表12を参照。
表12
FeとCrの金属モル比が1:1、リン酸アンモニウム(NHPO)の添加重量%が0.0−8.0%
【表12】

【0075】
実施例11 この試験では、FeとCrとを、それぞれFe:Crモル比5:1の割合で含む顔料を使用した。各種の異なる量のNHPOを添加した。実施例11の結果は、表13に示され、「1:5、NHPO」と指定されたプロットとして図1に示されている。
表13
FeとCrの金属モル比が5:1、リン酸アンモニウム(NHPO)の添加重量%が0.0−8.0%
【表13】

【0076】
実施例1−11の結果は、鉄―クロム顔料に特定のリン酸塩含有化合物を特定の割合で配合することによって、全日射反射率の著しい改善を達成できることを示している。一般に、鉄−高含有顔料は、添加剤としてリン酸鉄を使用した場合、全日射反射率の改善は5%以上にまで及び得る。つまり、特定の日射反射率を示す酸化鉄と酸化クロムを含むコントロール顔料は、本明細書に記載のリン酸塩化合物の配合によって、処理顔料の日射反射率がさらに5%台まで、典型的には、少なくとも1%、多くの場合2%〜3%の範囲で増加し得る。もしこれら各種顔料が、例えば、塗料やその他の塗料処方に配合されると、これらの日射反射率の増加は、大きなエネルギーコストの削減につながる。
【0077】
クロム−高含有顔料では、リン酸鉄を添加するときの日射反射率の改善がさらに劇的になり得る。例えば、約2%までの範囲のリン酸鉄の濃度を使用した場合、顔料の日射反射率は約6.5%台以上まで増加できる。この改善は顕著である。クロム−高含有顔料の改善は、対応するリン酸塩添加剤なしの顔料と比較して、典型的には、少なくとも1%、通常、少なくとも2%〜3%である。繰り返しになるが、これらの日射反射率の増加は、大きなエネルギーコストの削減につながる。
【0078】
実施例12−13では、Feを使用する代わりに、FeOOH(黄色鉄)をCrとともに使用した。各種の異なる量のリン酸鉄FePOを使用した。実施例12では、FeOOHとCrとを、それぞれFe:Crモル比5:1の割合で使用した。実施例12の結果は、表14に示され、「CrFe=1:5」と指定されたプロットとして図4に示されている。
表14
FeOOH(黄色鉄)とCrの金属モル比が5:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−2.0%
【表14】

【0079】
実施例13では、FeOOHとCrとを、Fe:Crのモル比がそれぞれ1:5の割合で使用した。実施例13の結果は、表15に示され、「CrFe=5:1」と指定されたプロットとして、図4に示されている。
表15
FeOOH(黄色鉄)とCrの金属モル比が1:5、リン酸鉄の添加重量%が0.0−2.0%
【表15】

【0080】
実施例14では、FeとCrとを、Fe:Crのモル比がそれぞれ1:1の割合で使用した。各種の異なる量のリン酸鉄、FePOを添加した。表16のデータは、添加剤が顔料の色を劣化することなくIR反射率を改善することを示している。表16のRPVCティントカラーの結果は、色が常に工業許容範囲の許容内であることを示している。このデータは添付図面には示されていない。
表16
FeとCrの金属モル比が1:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−8.0%
【表16】

【0081】
他の実施例では、異なるグレードの酸化クロム(クロム−B)を使用した。実施例15では、FeとCr(クロム−B)とを、Fe:Crのモル比がそれぞれ1:1の割合で使用した。各種の異なる量のFePOを添加した。実施例15の結果は、表17に示されている。同様の結果が、Fe:Crのモル比が1:2,1:5の顔料においても確認された。
表17
FeとCrの金属モル比が1:1、リン酸鉄の添加重量%が0.0−8.0%
【表17】

【0082】
実施例16 この実施例では、成分単独、すなわち酸化鉄(III)、Fe、または酸化クロム(III)、Crを、各種の異なる量のリン酸鉄(III)添加剤、FePOと組み合わせ、この材料を1700°Fまたは1900°Fまで加熱した。それぞれの試料の全日射反射率を図3に示す。2%までのリン酸鉄が加えられた酸化クロムでは、通常、酸化クロム粒子の日射反射率が改善していることが確認できる。しかしながら、酸化鉄へのリン酸鉄の添加は、約0.5%までのリン酸鉄濃度において、わずかに日射反射率が上昇するものの、その後、濃度が高くなるにつれて日射反射率は減少し、悪影響を及ぼす。このため、酸化鉄と酸化クロムとの両者を含む顔料の日射反射率が増加すること、本明細書に記載のリン酸塩添加剤の配合によって本明細書に記載された範囲で増加することは、注目すべきかつ驚くべきことである。
【0083】
実施例17 クロム−Aグリーンのような他の顔料について、FePO添加剤を添加して試験した。この顔料もまた、日射反射率の著しい改善を示した。この改善されたIR特性を図9に示す。この曲線では、色が規定される可視領域では僅かな反射の違いが生じているのみであるのに対し、IR領域では著しい反射の増加が生じていることが確認できる。
【0084】
以上のデータ及び試験結果は、比較的少ない顔料の色の変化とともに、顔料のIR特性の比較的大きな変化を達成できることを示している。これは、特に、L*、a*、およびb*値から容易に算出することのできる比較DE値より明らかである。
【0085】
他の一連の試験では、各種の顔料組成物が、本明細書に記載されるようにして調製された。反射率の値は、DPP法によって得た。これらの試験は、本発明にしたがって、好ましくは、光を異なる程度で反射および/または反射しない光の特定の領域、または波長の特定の範囲を明らかにする。
【0086】
実施例18 この試験では、リン酸塩添加材としてFePOを0%、1%または2%用いた3種の顔料組成物を調製した。これらの顔料組成物は、Fe:Crモル比で1:1の割合のクロム−Aと赤色酸化鉄とから形成した。反射率の試験結果は図6に示されている。
【0087】
図6より、リン酸鉄の存在下で形成された組成物は、リン酸添加剤の非存在下で形成された組成物と、可視スペクトル、すなわち250〜700nm、特に400〜600nmの範囲で、ほぼ同一の曲線を示した、しかし、IRスペクトルの光、すなわち700〜2500nm、好ましくは1300〜1600nmの範囲では、リン酸鉄を1%または2%用いて形成した顔料は、リン酸鉄の非存在下で形成した顔料、すなわち0%顔料よりも、著しく大きな反射率の値を示した。特に、波長1500nmにおいては、リン酸鉄非存在下で形成した顔料が約48%の反射率(および23.22%のTSR)を示したのに対して、リン酸鉄の存在下で形成した顔料は添加剤1%で約72%の反射率(および28.43%のTSR)、添加剤2%で約76%の反射率(および29.08%のTSR)を示した。このデータは、本発明にかかる好ましい実施態様の顔料組成物における非常に優れたIR反射特性及び安定な色質を実証している。
【0088】
実施例19 この実施例では、Fe:Crモル比で1:5の割合のクロム−Aと赤色酸化鉄と、リン酸鉄FePOを0%、1%または2%とから、顔料組成物を形成した。顔料の形成後、DPP法にしたがって反射率を測定した。測定された反射率の値は図7に示されている。
【0089】
図7を参照すると、IR領域での反射の著しい改善が明らかであり、その上、リン酸塩を用いて形成された顔料の色質は、可視領域において、リン酸塩不使用の場合とほぼ同一であることが確認できる。特に、波長1500nmにおいては、リン酸鉄非存在下で形成した顔料が約44%の反射率を示したのに対して、リン酸鉄1%または2%を用いて形成した顔料は、それぞれ約57%および約55%の反射率を示した。先と同様に、これらもIR反射率の著しい改善である。
【0090】
実施例20 この調査では、Fe:Crモル比で5:1の割合のクロム−Aと赤色酸化鉄と用いて2種の顔料組成物を調整した。1つの組成物は、リン酸鉄FePOを0.5%用いて調製し、他の組成物はリン酸添加剤を不存在下で調製した。これらの組成物についてDPP法により反射率を測定した結果が、図8に示されている。
【0091】
図8には、わずかに少量のリン酸塩添加剤、すなわち0.5%FePOの存在下で形成した顔料が、リン酸塩添加剤なしで形成された対応する顔料に対して可視スペクトルでほぼ同一の色特性を維持しつつ、IR特性が著しく改善していることが示されている。
【0092】
実施例21 この試験では、クロム−Aとして指定されるタイプの酸化クロムを用いていくつかの顔料を調整した。クロム−Aを入手時の状態で含む第一の試料を、DPP法にしたがって試験した。クロム−Aを入手時の状態で含む他の試料は、リン酸塩添加剤の不存在下で焼成した後、試験した。他の2つの試料は、クロム−Aと、0.5%又は1%リン酸鉄FePOとの組み合わせで調製し、試験した。
【0093】
この試験の結果は図9に示されている。4つのすべての試料が、優れた色の安定性を示しており、可視光スペクトル、すなわち250〜700nm、好ましくは400〜600nmにおいて、ほぼ同一の色特性を示している。赤外領域、すなわち750〜2500nm、好ましくは1300〜1600nmにおける各試料の反射特性に関し、リン酸塩の非存在下で加熱された試料は、実際に、入手状態(およびリン酸塩添加剤不使用)で試験された試料と比べて、反射率の減少を示した。0.5%および1%のリン酸鉄を用いて形成した2つの試料は、図9に示されるように、IR特性の顕著に優れた改善を示した。
【0094】
少なくとも酸化鉄および酸化クロムのうちの1つに由来する顔料にリン酸塩を添加することで、他の高価な添加剤を用いることなしに、得られる顔料の全日射反射率が増加する。好ましい実施態様の顔料を塗装した建築物から反射される太陽光がより多いと、冷房などの空調に必要なエネルギーコストが少なくなることから、非常に有益である。さらに、この顔料およびこの顔料を含む組成物の使用によって、建築物の塗装膜、金属屋根、自動車の内装及び外装、ビニール製羽目板などの製品劣化が少なくなる。
【0095】
他の顔料および顔料ファミリーにおいても、リン酸塩添加剤の配合によって、日射反射率の改善を実現できると考えられる。加えて、リン酸塩添加剤は、AlやMnのような幅広い範囲の調整剤とともに、多くの異なる顔料および顔料種において、添加及び使用することができると考えられる。リン酸塩の添加の範囲は、約0.05%〜約5.0重量%である。しかし、当然のことながら、得られる顔料または顔料化材料において、本発明に記載される特徴的な反射特性を示す限り、本発明には、より少ない量、より多い量のリン酸塩添加剤の使用も含まれる
【0096】
顔料への添加剤の配合に関する付加的な背景技術情報は、Sliwinskiらの米国特許6,174,360号に説明されている。
【0097】
本技術の将来的な応用及び開発により、他の多くの利点が明らかとなるに違いない。
【0098】
本明細書に記載されるすべての特許、出願公開、標準、および論文は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0099】
以上に記載したとおり、本発明は、従来の顔料および塗膜に関連する多くの問題を解決するものである。しかし、当然のことながら、本発明の原理および添付の請求項に示された範囲を逸脱しない限り、当業者は、本発明の特性を説明するために本明細書に記載および図示された詳細、材料および処方を様々に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された日射反射率を示す黒色顔料であって、該顔料が、
有効量のリン酸塩の存在下で形成された、下記式を有する固溶体状の材料を含み、
(CrFeMe
ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z<0.3である;
前記材料が、プレスされたカップ状で、波長400〜600nmの光に対して20%未満の平均反射率を示し;
前記材料が、プレスされたカップ状で、波長1300〜1600nmの光に対して40%を超える平均反射率を示す
ことを特徴とする顔料。
【請求項2】
前記顔料が、リン酸イオンを含むことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項3】
前記zが、0.2未満であることを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項4】
前記材料が、波長400〜600nmの光に対して15%未満の平均反射率を示すことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項5】
前記材料が、波長400〜600nmの光に対して10%未満の平均反射率を示すことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項6】
前記材料が、波長400〜600nmの光に対して5%未満の平均反射率を示すことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項7】
前記材料が、波長1300〜1600nmの光に対して45%を超える平均反射率を示すことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項8】
前記材料が、波長1300〜1600nmの光に対して50%を超える平均反射率を示すことを特徴とする請求項1記載の顔料。
【請求項9】
改良された日射反射率を示す茶色または緑色顔料であって、該顔料が、
有効量のリン酸塩の存在下で形成された、下記式を有する固溶体状の材料を含み、
(CrFeMe
ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z<0.3である;
前記材料が、プレスされたカップ状で、波長400〜600nmの光に対して25%未満の平均反射率を示し;
前記材料が、プレスされたカップ状で、波長1300〜1600nmの光に対して50%を超える平均反射率を示す
ことを特徴とする顔料。
【請求項10】
前記材料が、波長400〜600nmの光に対して20%未満の平均反射率を示すことを特徴とする請求項9記載の顔料。
【請求項11】
前記材料が、波長400〜600nmの光に対して15%未満の平均反射率を示すことを特徴とする請求項9記載の顔料。
【請求項12】
前記材料が、波長1300〜1600nmの光に対して55%を超える平均反射率を示すことを特徴とする請求項9記載の顔料。
【請求項13】
改良された日射反射率を示す顔料を形成する方法であって、該方法が、
酸化鉄および酸化クロムの少なくとも一つを含む顔料前駆体組成物を調製する工程、
有効量のリン酸塩化合物を前記前駆体組成物中に添加する工程、
前記前駆体組成物およびリン酸塩化合物を少なくとも1500°Fまで加熱し、二次組成物を形成する工程、
前記二次組成物を冷却することにより、下記式を有する固溶体状の材料を含む顔料を形成する工程、
(CrFeMe
ここで、x+y+z=1,nは電気的中性とするために必要な酸素の数、Meは少なくとも一つの金属で、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z<0.3である;
を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記加熱が、約1750°F〜約2400°Fの温度で、約0.5〜約48時間行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−520532(P2013−520532A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554052(P2012−554052)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/025399
【国際公開番号】WO2011/103399
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(503468695)フエロ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】