説明

日照計の緯度調整装置

【課題】緯度調整後の傾きを防止することができる日照計の緯度調整装置を提供する。
【解決手段】日照計10に一体的に設けられたホルダ20と、ホルダ20を所定軸O周りに回転自在に保持するスタンド30と、所定軸Oに対応する位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第1の固定部40と、第1の固定部40と別途独立して設けられ、所定軸Oと離間した位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第2の固定部50と、を有する日照計の緯度調整装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日照計の緯度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日照計は、直射光が地表を照射する日照時間を測定するものであり、直径約10cmの透明なガラス玉で直達光を集光し、あらかじめ時間目盛りの印刷された紙を焦がすカンベル・ストークス日照計や、小穴をあけた円筒内に感光液を塗った紙を巻いて、穴から入った太陽光で感光させるジョルダン式日照計が古くから使用されてきた。現在の日照の定義である直達日射量0.12kW/m(しきい値)はカンベル・ストークス日照計と直達日照計と直達日射量の比較から定めたものである。
これらの型の日照計は、記録紙や感光紙の特性が測定精度に影響すること、日照の有無の判断に個人差が入りやすいこと、日没後に紙を交換しなければならないといった難点がある。
日照の定義が定量的に定められた現在では、これらに代わり各種の光電式日照計が開発され使用されるようになってきている。
【0003】
従来の光電式日照計としては、例えば、下記特許文献1に記載のようなものがある。すなわち、この日照計は、脱空気泡硬質ガラスよりなり、その内部が機密構造であり不活性ガスが充填されている円筒形のガラスドームと、その内部に固定された正三角形の断面を有する三角柱とを備えている。三角柱の二側面および頂面にはそれぞれ光電変換素子として太陽電池が取付けられている。ここで、二側面に設けられた太陽電池は、東西面における太陽電池の日の出から日の入までの直達光を感知するために取付けられており、頂面に設けられた太陽電池は、北半球の場合には北面の散乱光を感知するためにフードの内部に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−72572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日照計は、正確な測定を行うために、その設置点における緯度に応じ、所定角度で地面に対して傾いて設置されている。上記従来の光電式日照計は、例えばホルダに把持され、そのホルダが、地面に対して垂直に立設したスタンドに対して所定軸周りに回転自在に保持されている(特許文献1、図7参照)。そして、日照計の緯度調整の際には、所定軸周りにホルダを傾かせて、日照計の仰角を所定角度に調整した後、その所定軸に対応する位置において、スタンドに対しホルダをローレットねじやボルト等で固定している。
【0006】
ところで、上記従来の光電式日照計においては、外気とガラスドーム内部との温度差によって湿気分が凝縮され、ガラスドーム内部の表面全体に微細な水滴が付着することによって、直達光の一部が微細な水滴を通過する際に散乱するため、ガラスドーム内部における乾燥剤の補充や交換、あるいは、ケーブルコネクタの緩みを確認する等といったメンテナンスが定期的に行われる。
しかしながら、ホルダの固定は、回転軸1点での固定であり、上記メンテナンス作業を行うと、過大なトルクが軸に簡単にかかってしまう。このトルクによって、日照計が緯度調整後の角度から傾いてしまうと、正確な測定ができなくなる虞がある。また、日照計は、高所に設置される場合が多く、緯度調整が度々必要となると、作業上不都合である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、緯度調整後の傾きを防止することができる日照計の緯度調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、日照計に一体的に設けられたホルダと、上記ホルダを所定軸周りに回転自在に保持するスタンドと、上記所定軸に対応する位置において、上記スタンドに対し上記ホルダを固定する第1の固定部と、上記第1の固定部と別途独立して設けられ、上記所定軸と離間した位置において、上記スタンドに対し上記ホルダを固定する第2の固定部と、を有する日照計の緯度調整装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ホルダに対して所定軸周りにトルクが加わっても、所定軸から離間した第2の固定部において、そのトルクを小さな力で効率よく受けることができるため、第1の固定部に過大なトルクが簡単にかかることがない。したがって、緯度調整後、メンテナンス作業等によって日照計が容易に傾いてしまうことを防止することができる。
【0009】
また、本発明では、上記第2の固定部は、上記ホルダに螺合すると共に上記スタンドを押圧する押しねじを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、スタンドに押圧する押しねじの摩擦力によって、スタンドに対してホルダを固定することができる。
【0010】
また、本発明では、上記第1の固定部は、ねじ部材を有しており、上記第2の固定部の押しねじ及び上記第1の固定部のねじ部材は、同一の工具でねじ回し可能な溝あるいは穴をそれぞれ有しているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第1の固定部におけるねじ回しと、第2の固定部におけるねじ回しとを、同一の工具で共通して行えるため、固定作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緯度調整後の傾きを防止することができる日照計の緯度調整装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における日照計の緯度調整装置を示す図である。
【図2】図1に示す日照計の緯度調整装置を左側方から視た図である。
【図3】本発明の別実施形態における日照計の緯度調整装置を示す図である。
【図4】図3に示す日照計の緯度調整装置を左側方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態における日照計の緯度調整装置について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態における日照計の緯度調整装置1を示す図である。図2は、図1に示す日照計の緯度調整装置1を左側方から視た図である。
【0014】
本実施形態の日照計10は、回転式日照計であり、緯度調整装置1によって、主軸11を地軸と平行となるよう、その設置点における緯度分だけ傾けて設置されている。主軸11は、その先端に反射鏡12を備えている。この主軸11は、円筒状のガラスドーム14の内部において、本体部13に設けられた不図示の駆動源により、その軸周りに回転する構成となっている。
【0015】
ガラスドーム14を通過した直達光(図1において点線で示す)は、反射鏡12によって、ガラスドーム14の端部にある不図示の光センサに向かって反射される。そして、光センサは、直達光の強さに応じてパルス状の信号を出力する。この光センサの信号は、本体部13及びケーブル15を介して外部に出力される。このケーブル15は、ガラスドーム14と逆側において、本体部13に対し、ケーブルコネクタ16を介して接続されている。
【0016】
ケーブルコネクタ16の近傍には、ガラスドーム14内部の湿気分を吸収する乾燥剤を収容する乾燥剤ボックス17が設けられている。乾燥剤ボックス17は、ローレットねじ構造を有し、本体部13に対して着脱自在に設けられている。したがって、乾燥剤を交換する場合には、ローレットねじを回して乾燥剤ボックス17を本体部13から取り外し、乾燥剤の補充や交換を行うこととなる。
【0017】
緯度調整装置1は、上記構成の日照計10に一体的に設けられたホルダ20と、ホルダ20を所定軸O周りに回転自在に保持するスタンド30と、所定軸Oに対応する位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第1の固定部40と、第1の固定部40と別途独立して設けられ、所定軸Oと離間した位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第2の固定部50と、を有している。
【0018】
ホルダ20は、本体部13と一体構造となっている。このホルダ20には、所定軸O周りに、緯度調整用目盛21が付されている。
スタンド30は、地面に対して垂直に立設されている。スタンド30は、その先端部31において、ホルダ20を所定軸O周りに回転自在に保持し、緯度調整用目盛21に対応する目盛り合せ32が付されている。
【0019】
図2に示すように、スタンド30の先端部31は板状となっており、ホルダ20は先端部31を板厚方向両側で挟み込む構成となっている。第1の固定部40は、この板厚方向においてホルダ20と先端部31とを締め付け固定するねじ部材41を有する。ねじ部材41は、スタンド30に対するホルダ20の回転軸(所定軸O)としても機能する。このねじ部材41は、ローレットねじ42と、六角ボルト43と、によって構成されている。
【0020】
六角ボルト43は、緯度調整用目盛21が付された側から挿入され、ホルダ20と先端部31とを挿通し、その逆側に配置されたローレットねじ42に螺合している。図1に示すように、六角ボルト43の頭部には、六角レンチ(工具)でねじ回し可能な六角穴(穴)44が設けられている。第1の固定部40における固定作業は、一方の手でローレットねじ42を押さえ、他方の手で六角レンチを持ち、六角穴44に挿入して六角ボルト43をねじ回しして締め付けることで行われる。
【0021】
第2の固定部50は、ホルダ20に螺合すると共にスタンド30を押圧する押しねじ51(止めねじ、イモネジとも称される)を有する。押しねじ51は、図1に示すように、第1の固定部40が所定軸Oに対応する位置においてスタンド30に対しホルダ20を固定するのに対し、所定軸Oから離間した位置、より詳しくは、所定軸Oと交差する回転半径方向において所定距離だけ離間した位置においてスタンド30に対しホルダ20を固定する構成となっている。
【0022】
本実施形態の押しねじ51は、所定軸Oからの距離を稼ぐべく、ホルダ20の緯度調整用目盛21が付された円弧状の外縁部に対応する位置に設けられている。押しねじ51は、六角ボルト43と同様に、緯度調整用目盛21が付された側からホルダ20に螺入し、その先端がスタンド30の先端部31の一方の板面に圧接する構成となっている(図2参照)。押しねじ51には、六角レンチ(工具)でねじ回し可能な六角穴(穴)52が付されている。
【0023】
第2の固定部50における固定作業は、六角レンチを持ち、六角穴52に挿入して押しねじ51をねじ回しして、押しねじ51の先端をスタンド30に押し付けることによって行われる。すなわち、第2の固定部50では、押しねじ51の押し付けによる摩擦力によって固定が行われる。なお、六角ボルト43の六角穴44と、押しねじ51の六角穴52とは、同一の形状及び同一のサイズであり、同じ六角レンチを共通して使用することによってねじ回し可能な構成となっている。
【0024】
続いて、上記構成の日照計の緯度調整装置1による作用について説明する。
【0025】
日照計10は、屋外に設置されているため、定期的なメンテナンス作業が必要となる。このメンテナンス作業として、例えば、ガラスドーム14内部に微細な水滴が付着することを防止するための乾燥剤の補充や交換、また、ケーブル15を介した出力信号の伝送を行うためのケーブルコネクタ16の緩みの確認等の作業が行われる。ここで、乾燥剤ボックス17の取り付けや取り外し、あるいは、ケーブルコネクタ16の緩み確認のためにケーブル15を持つと、ホルダ20を所定軸O周りに傾かせようとするトルクが生じる。
【0026】
このトルクによって、日照計10が緯度調整後の角度から傾いてしまうと、正確な測定ができなくなる虞がある。この対策として、本実施形態の緯度調整装置1は、所定軸Oに対応する位置において固定する第1の固定部40とは別途独立し、所定軸Oと離間した位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第2の固定部50を備えている。メンテナンス作業の際に、ホルダ20に対して所定軸O周りにトルクが加わると、第2の固定部50にも力が加わる。ここで、第2の固定部50は、所定軸Oから離間して配置されているので、そのトルク(回転モーメント)を、押しねじ51のねじ一本の小さな力で、当該所定軸Oから離間した位置において、効率よく受けることが可能となる。
【0027】
このため、第1の固定部40に過大なトルクが簡単にかかることがなく、例えば、六角ボルト43が緩んでしまうといったことがなくなる。したがって、緯度調整後、メンテナンス作業等によって日照計10が容易に傾いてしまうことを防止することができる。また、作業者も、メンテナンス作業の都度、高所において緯度調整を行う必要がなくなり、作業の煩わしさを解消することができる。
【0028】
また、本実施形態では、第1の固定部40の六角ボルト43と、第2の固定部50の押しねじ51は、同一の六角レンチでねじ回し可能な六角穴44、52をそれぞれ有しているため、第1の固定部40におけるねじ回しと、第2の固定部50におけるねじ回しとを、同一の工具で共通して行える。したがって、第2の固定部50を追加して設けたとしても、緯度調整時における固定作業が煩わしくなることはない。また、六角穴44、52は、それぞれホルダ20の緯度調整用目盛21が付された同一側にあるので、固定作業の作業性を向上させることができる。
【0029】
したがって、上述の本実施形態によれば、日照計10に一体的に設けられたホルダ20と、ホルダ20を所定軸O周りに回転自在に保持するスタンド30と、所定軸Oに対応する位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第1の固定部40と、第1の固定部40と別途独立して設けられ、所定軸Oと離間した位置において、スタンド30に対しホルダ20を固定する第2の固定部50と、を有する日照計の緯度調整装置1を採用することによって、ホルダ20に対して所定軸O周りにトルクが加わっても、所定軸Oから離間した第2の固定部50において、そのトルクを小さな力で効率よく受けることができるため、第1の固定部40に過大なトルクが簡単にかかることがない。したがって、緯度調整後、メンテナンス作業等によって日照計10が容易に傾いてしまうことを防止することができる。
したがって、本実施形態では、緯度調整後の傾きを防止することができる日照計の緯度調整装置1が得られる。
【0030】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0031】
例えば、図3及び図4に示すような形態を採用してもよい。
図3は、本発明の別実施形態における日照計の緯度調整装置1を示す図である。図4は、図3に示す日照計の緯度調整装置1を左側方から視た図である。
【0032】
日照計10は、高所に設けられることが多いので、固定作業において六角レンチ等の工具を落とさないようにする工夫として、図3に示すように、スタンド30に六角レンチ100を引掛けることが可能な掛止部33,34を設けてもよい。
また、押しねじ51が、ホルダ20から誤って外れないようにする工夫として、図4に示すように、ホルダ20に板部材60を一枚追加して、押しねじ51の挿入方向において係止可能とさせる構成を採用してもよい。
【0033】
この場合、板部材60に、押しねじ51の六角穴52だけ露出させるような孔61を設けることが好ましい。すなわち、孔61の径は、六角穴52の外接円の径より大きく、押しねじ51のねじ山の外径よりも小さく設定すればよい。
また、板部材60が、ホルダ20の緯度調整用目盛21に被さる場合には、板部材60に緯度調整用目盛21を付せばよい。
【0034】
また、上記実施形態では、同一の工具でねじ回しを行うべく、六角ボルト43と押しねじ51に、それぞれ六角穴44,52を設ける形態について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものでは無く、例えば、プラスドライバーやマイナスドライバー等の工具を用いる場合には、ねじ回しのために+(プラス)溝や−(マイナス)溝等を設ける形態であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…緯度調整装置、10…日照計、20…ホルダ、30…スタンド、40…第1の固定部、41…ねじ部材、44…六角穴(穴)、50…第2の固定部、51…押しねじ、52…六角穴(穴)、O…所定軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日照計に一体的に設けられたホルダと、
前記ホルダを所定軸周りに回転自在に保持するスタンドと、
前記所定軸に対応する位置において、前記スタンドに対し前記ホルダを固定する第1の固定部と、
前記第1の固定部と別途独立して設けられ、前記所定軸と離間した位置において、前記スタンドに対し前記ホルダを固定する第2の固定部と、
を有することを特徴とする日照計の緯度調整装置。
【請求項2】
前記第2の固定部は、前記ホルダに螺合すると共に前記スタンドを押圧する押しねじを有することを特徴とする請求項1に記載の日照計の緯度調整装置。
【請求項3】
前記第1の固定部は、ねじ部材を有しており、
前記第2の固定部の押しねじ及び前記第1の固定部のねじ部材は、同一の工具でねじ回し可能な溝あるいは穴をそれぞれ有していることを特徴とする請求項2に記載の日照計の緯度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68468(P2013−68468A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206068(P2011−206068)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)