説明

早期脳発達のための乳児用調乳

授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物、総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸および総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%アラキドン酸を含む乳児用調乳が開示される。この調乳は代表的には、少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、少なくとも約150mg/Lのリン脂質および少なくとも約2.5%が脂質結合シアル酸としてのものである少なくとも約70mg/Lの総シアル酸をも含み、これらはいずれも、完全もしくは部分的に強化乳清タンパク質濃縮物から提供されるものである。前記乳児用調乳を誕生から最初の2から4ヶ月の間、好ましくは唯一の栄養源として投与することで、乳児での脳の発達、神経遊走および認知発達を加速する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化乳清タンパク質濃縮物、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸の特定の組み合わせを含むことで、人乳の自然の組成により近づけ、乳児における早期脳発達を加速する乳児用調乳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、市販の乳児用調乳は、若年期に補助または唯一の栄養源を提供することを目的として用いられるのが一般的である。これらの調乳は、成長期の乳児の栄養的ニーズを満足する上での広範囲の栄養素を含み、通常脂肪、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルおよび至適な乳児の成長および発達に役立つ他の栄養素などを含む。
【0003】
市販の乳児用調乳は、人乳の組成および機能にできるだけ近づくように設計されている。米国では、連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)は、乳児用調乳を「人乳を模倣するものであること、または人乳の完全もしくは部分的代替物として好適であることを理由として、乳児向けの食品として単独で特殊な食事に使用されることを謳っているまたはそれが説明されている食品」と定義している(FFDCA201(z))。
【0004】
FFDCA規則下での市販の乳児用調乳は、米国において非免除乳児用調乳に製剤されるべき基本的栄養素によって規定されている。これらの栄養素には、調乳100kcal当たり、タンパク質(1.8から4.5gの少なくとも栄養的にカゼインに等価)、脂肪(3.3から6.0g)、リノール酸(少なくとも300mg)、レチノール等価物としてのビタミンA(75から225mcg)、ビタミンD(40から100 IU)、ビタミンK(少なくとも4.0mcg)、ビタミンE(少なくとも0.7 IU/gリノール酸)、アスコルビン酸(少なくとも8.0mg)、チアミン(少なくとも40mcg)、ボフラビン(少なくとも60mcg)、ピリドキシン(調乳中にタンパク質15mcg/gを含む少なくとも35.0mcg)、ビタミンB12(少なくとも0.15mcg)、ナイアシン(少なくとも250mcg)、葉酸(少なくとも4.0mcg)、パントテン酸(少なくとも300.0mcg)、ビオチン(少なくとも1.5mcg)、コリン(少なくとも7.0mg)、イノシトール(少なくとも4.0mg)、カルシウム(少なくとも50.0mg)、リン(少なくとも25.0mgで、カルシウム/リンの比が1.1から2.0である)、マグネシウム(少なくとも6.0mg)、鉄(少なくとも0.15mg)、ヨウ素(少なくとも5.0mcg)、亜鉛(少なくとも0.5mg)、銅(少なくとも60.0mcg)、マンガン(少なくとも5.0mcg)、ナトリウム(20.0から60.0mg)、カリウム(80.0から200.0mg)および塩素化物(55.0から150.0mg)などがある。
【0005】
厳しい規制管理があっても、市販の乳児用調乳は現在でもなお、人乳と組成面でも機能面でも同一ではない。人乳において、ほぼ200種類の異なる化合物が同定されており、そのうちの100を超えるものが、通常は人乳中で有意な量で認められず、市販の調乳では全く認められない。そのような化合物には、各種の免疫グロブリン類、酵素、ホルモン、ある種のタンパク質、ラクトフェリン、ガングリオシド類、リン脂質(スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール)などがある。これらの材料のうちの多くが人乳に特有のものである、あるいは牛乳や市販の乳児用調乳を製造するのに用いられる他のタンパク質源に低い濃度でのみ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6080787号(カールソン(Carlson)ら
【特許文献2】米国特許第6495599号(アウエスタッド(Auestad)ら)
【特許文献3】米国特許第6365218号(ボルシェル(Borschel))
【特許文献4】米国特許出願第20030118703A1号(グエン(Nguyen)ら)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ladisch S. and Gillard B. (1985) A. solvent partition method for microscale ganglioside purification. Anal. Biochem. 146: 220−231
【非特許文献2】Williams M and McCluer R (1980), The use of Sep−PakTM C18 cartridges during the isolation of gangliosides, J. Neurochem, 35: 266−269
【非特許文献3】Gazzotti G., Sonnion S., Ghidonia R (1985), Normal−phase high−performance liquid chromatographic separation of non−derivatized ganglioside mixtures. J Chromatogr. 348:371−378
【非特許文献4】Miller, E.R., Ullrey, The pig as model for human nutrition, Annu Rev Nutr 1987; 7: 361−82
【非特許文献5】Pond WG et al., Perinatal Ontogeny of Brain Growth in the Domestic Pig. PSEBM 2000, 223: 102−108
【非特許文献6】Ladisch and Gillard, 1985, A solvent partition method for microscale ganglioside purification, Anal. Biochem., 46: 220−231
【非特許文献7】Williams and McCluer, 1980, The use of Sep−PakTM C18 cartridges during the isolation of gangfiosides, J. Neurochem. 35: 266−269
【非特許文献8】Svennerholm. L., 1957, Quantitative estimation of sialic acid: A colorimetric resorcinol−hydrochloric acid method, Biochem. Biophys. Acta., 24: 604−611
【非特許文献9】Gazzotti, Sonnino, Ghidoni, 1985, Normal−phase high−performance liquid chromatographic separation of non−derivatized ganglioside mixtures. J Chromatogr. 348:371−378
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、人乳中で認められる天然成分をさらに多く含むことで、母乳栄養児が現在享受している栄養的利益のうちのより多くのものを提供できるようにする新たな乳児用調乳が、現在も必要とされている。
【0009】
本発明は、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、リン脂質、ガングリオシド類、ラクトフェリンおよびシアル酸などの人乳中に固有に認められる特定の濃度および種類の化合物を含む乳児用調乳に関するものである。これらの特定の成分およびこれらの乳児用調乳での相当する濃度のため、本明細書に記載の乳児用調乳の栄養素プロファイルは、従来の乳児用調乳よりも人乳との類似性が高い。
【0010】
しかしながら、これらの調乳は人乳で認められる天然成分により近いだけでなく、これらの調乳は、誕生から最初の3から4ヶ月間の神経芽細胞遊走をも加速可能であることで、乳児における脳および認知発達の加速を助ける乳児用調乳が得られることが発見された。興味深いことに、神経芽細胞遊走に対する効果は、早期乳児期時のみで認められたことから(本明細書に記載の動物試験を参照)、この早期乳児期におけるこれら調乳の特定の使用の重要性が強調される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明の第1の実施形態は、授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物ならびに総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸および総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%のアラキドン酸を含む乳児用調乳に関するものである。この調乳は授乳基準で少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、少なくとも約150mg/Lのリン脂質および少なくとも約2.5%を脂質結合シアル酸とする少なくとも約70mg/Lの総シアル酸をも含み、これらのいずれも完全もしくは部分的に、強化乳清タンパク質濃縮物から提供され得る。
【0012】
本発明の第2の実施形態は、授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物、総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸および総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%のアラキドン酸を含む乳児用調乳を経口投与する段階を有する、誕生から最初の2から4ヶ月の間の神経芽細胞遊走を加速する方法に関するものである。この調乳は、少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、少なくとも約150mg/Lのリン脂質および少なくとも約2.5%を脂質結合シアル酸として含む少なくとも約70mg/Lの総シアル酸をも含むことができ、これらのいずれも完全もしくは部分的に、強化乳清タンパク質濃縮物から提供され得る。
【0013】
本発明の第3の実施形態は、授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物、総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸および総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%のアラキドン酸を含む乳児用調乳を経口投与する段階を有する、特に誕生から最初の2から4ヶ月の間における乳児の認知発達を加速する方法に関するものである。この調乳は、少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、少なくとも約150mg/Lのリン脂質および少なくとも約2.5%を脂質結合シアル酸とする少なくとも約70mg/Lの総シアル酸をも含むことができ、これらのいずれも完全もしくは部分的に、強化乳清タンパク質濃縮物から提供され得る。
【0014】
これらの調乳が人乳で認められる天然成分により近づけるだけでなく、これらの調乳が早期乳児期の神経芽細胞遊走をも加速することで、乳児における脳および認知発達の加速を助ける乳児用調乳が得られることが発見された。興味深いことに、神経芽細胞遊走に対する効果は、早期乳児期時のみで認められたことから(本明細書に記載の動物試験を参照)、誕生から最初の2から4ヶ月間におけるこれら調乳の特定の使用の重要性が強調される。
【0015】
神経芽細胞遊走に対する効果は、強化乳清タンパク質濃縮物を、より高レベルのドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸と組み合わせて、同一組成で用いた場合のみ起こり、より低濃度のドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸では、選択された動物モデルで神経芽細胞遊走に有意な影響はないことも発見された。
【0016】
神経芽細胞遊走に対する効果は、乳児用調乳が、本明細書で定義の最小閾値を超えるレベルの強化乳清タンパク質濃縮物を含む場合にのみ起こることも発見された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1.1】本明細書に記載の動物試験での組織学的測定のためのブタ脳切片を示す図である(実験1)。
【図1.2】ヘマトキシリン:エオシンで染色した上皮下領域を示す図1.1のブタ脳切片の拡大図である(相対的に濃く染色されているドットは核であり、神経芽細胞は上皮下領域から白質に遊走する。)(実験1)。
【図1.3】核カウントのための図1.2の拡大ブタ脳切片からの領域1、2および3を示す図である(領域1は梁下束、神経芽細胞遊走および増殖領域であり;領域2は神経芽細胞凝集物を回避する遊走領域であり;領域3は梁下束に隣接する白質である。)(実験1)。
【図2】ここに記載の試験期間の間、異なる飼料(A、B、C)を与えた仔ブタでの梁下束の領域1、領域2および領域3についての核カウントに相当する3つのグラフを含む図である(データは平均±SDであり、a:p<0.05で開始時と有意差があり;b:p<0.05で8から9日と有意差があり;:p<0.05で飼料Aと有意差がある。)(実験1)。
【図3.1】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束での、H&Eで染色された数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【図3.2】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束に隣接する白質での、H&Eで染色された数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【図3.3】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束でのBrdU陽性細胞の数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【図4.1】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束に隣接する白質での、BrdU陽性細胞の数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【図4.2】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束でのKi67陽性細胞の数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【図4.3】異なる飼料(A、B、C)またはブタ乳を与えた仔ブタの梁下束に隣接する白質での、Ki67陽性細胞の数に相当するグラフを含む図である(実験II)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、強化乳清タンパク質濃縮物、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸の特定の組み合わせを含むものであり、これらのそれぞれについて下記で詳細に説明する。
【0019】
本明細書で使用される「乳児」という用語は、約年齢が約1歳以下の個人を指し、0ヶ月から約4ヶ月齢の乳児、約4から約8ヶ月齢の乳児、約8から約12ヶ月齢の乳児、誕生時2500g未満の低出生体重児および約37週妊娠期間未満、代表的には約26週から約34週の妊娠期間で生まれた早期産児を含む。
【0020】
本明細書で使用される「授乳での」という用語は、別段の断りがない限り、乳児への直接経口投与に好適な液体調乳を指し、この調乳は即時投与液体、再生粉末または希釈用濃縮物である。
【0021】
本明細書で使用される「乳児用調乳」という用語は、別段の断りがない限り、補助栄養源、主栄養源または唯一の栄養源として乳児に経口投与するのに好適な脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含む製剤を指し、その例には再生用粉末、希釈用濃縮物および即時投与用液体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の乳児用調乳を特徴付けるのに用いられる本明細書で使用される全ての成分範囲は、別段の断りがない限り、授乳基準において乳児用調乳の重量を基準としたものである。
【0023】
本明細書で使用される全てのパーセント、部および比率は、別段の断りがない限り、組成全体の重量基準である。列挙された成分に関するそのような全ての重量は活性レベルに基づいたものであり、したがって、別段の断りがない限り、市販の材料に含まれる可能性がある溶媒や副生成物は含まない。
【0024】
本発明の乳児用調乳は、本明細書に記載の場合による成分もしくは特定の必須成分や構成要素を実質的に含まないものであることもできるが、ただし、残りの調乳はなお、本明細書に記載の必要な成分や構成要素を全て含むものである。この文脈においておよび別段の断りがない限り、「実質的に含まない」という用語は、選択された組成物が、機能する量に満たない量の場合による成分、代表的には0.1重量%未満であって0重量%を含むそのような場合による成分もしくは選択された必須成分を含むことを意味する。
【0025】
別段の断りがあるまたは言及が行われている文脈によって逆の内容が明瞭に示唆されていない限り、本発明の単数での特徴または限定についての言及はいずれも、相当する複数の特徴または限定を包含するものであり、その逆も当てはまる。
【0026】
別段の断りがあるまたは言及が行われている文脈によって逆の内容が明瞭に示唆されていない限り、本明細書で使用される方法およびプロセスの組み合わせはいずれも、いかなる順序で行っても良い。
【0027】
本発明の方法および成分を含めた組成物は、本明細書に記載の本発明の必須の要素および限定、ならびに栄養調乳用途において有用な本明細書その他で記載の別のもしくは場合による成分、構成要素もしくは限定を含むまたはこれらから成るまたは本質的にこれらからなるものであることができる。
【0028】
強化乳清タンパク質濃縮物
本発明の乳児用調乳は、乳児用調乳中でのガングリオシド、リン脂質およびシアル酸の供給源として、選択されたレベルの強化乳清タンパク質濃縮物を含むものである。調乳中でのこのようなガングリオシド、リン脂質およびシアル酸の全てまたは一部は、強化乳清タンパク質濃縮物によって提供されるものであって良い。
【0029】
乳児用調乳における強化乳清タンパク質濃縮物のレベルは、授乳基準で約6.5g/L調乳を超えるものでなければならない。このような濃度は、授乳基準で、約6.5から約10.9g/L、例えば約6.6から約8.5g/L、さらに例えば約6.7から約7.3g/L調乳の範囲であり得る。
【0030】
本発明の乳児用調乳で使用される強化乳清タンパク質濃縮物は、高濃度の乳脂肪球皮膜物質を有するものである。乳脂肪球皮膜物質は、ウシその他の哺乳動物乳中のトリアシルグリセロール豊富乳脂肪球を囲む膜および膜関連物質である。乳脂肪球皮膜物質中で確認されている化合物の多くが、市販の乳児用調乳中よりもかなり高い濃度で人乳中に存在する。このような物質が強化された乳清タンパク質濃縮物を乳児用調乳に加えることで、得られる調乳は、人乳と組成がより類似するようになり、特にガングリオシド、リン脂質およびシアル酸の人乳濃度に関してそうなる。
【0031】
本明細書で使用される「強化乳清タンパク質濃縮物」という用語は、別段の断りがない限り、少なくとも約3%、より代表的には少なくとも約5重量%のリン脂質(そのうち、少なくとも約20重量%がスフィンゴミエリン);少なくとも約0.5%、代表的には少なくとも約1.2重量%のシアル酸;および少なくとも約0.05%、代表的には少なくとも約0.1重量%のガングリオシドを有する乳清タンパク質濃縮物を指す。濃縮物からの少なくとも約2から5重量%のシアル酸が脂質に結合している。
【0032】
本発明での使用に好適な強化乳清タンパク質濃縮物の入手源には、強化成分のレベルが上記のものである乳清タンパク質濃縮物などがあり、その例には、LACPRODAN(登録商標)MFGM−10、すなわち濃縮物の重量基準で、6.5%リン脂質、0.2%ガングリオシド、1.80%シアル酸(総脂肪酸の重量基準で少なくとも2.5%が脂質結合シアル酸)および1.5%ラクトフェリンを含むアルファ・フード・イングレディエンツ(Arfa Food Ingredients, Denmark)から入手可能な乳清タンパク質濃縮物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0033】
強化乳清タンパク質濃縮物は好ましくは、乳児用調乳中における総リン脂質、ガングリオシドおよびシアル酸のうちの約10%から100%、例えば約50%から約100%、さらには例えば約50%から約90%、さらに例えば約60%から約85%を与える。後者の化合物は、哺乳動物乳その他の好適な供給源からの単離化合物として個別に加えることができるが、そのような化合物の全てではなくともほとんどが強化乳清タンパク質濃縮物によって提供されることが好ましい。
【0034】
シアル酸
本発明の乳児用調乳は、授乳基準で、少なくとも70mg/L、例えば約90mg/Lから約4000mg/L、さらに例えば約190mg/リットルから約2000mg/L、さらに例えば約300mg/Lから約900mg/Lの濃度でシアル酸を含み、重量基準で少なくとも2.5%、例えば約2.6%から約10%、例えば約2.7%から約5%のシアル酸が脂質結合している。シアル酸の一部または全てが、本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物によって提供されるものであり得る。
【0035】
乳児用調乳の脂質結合シアル酸成分は、最も代表的には、本質的に脂質結合シアル酸を含むガングリオシドの形態である。従って、下記に記載されている本発明のガングリオシド成分は、本発明の脂質結合シアル酸成分の主要もしくは唯一の供給源であることができる。
【0036】
本明細書で使用される「シアル酸」という用語は、別段の断りがない限り、シアル酸誘導体を含む、全ての複合型および非複合型のシアル酸を指す。従って、本発明の乳児用調乳におけるシアル酸には、遊離のシアル酸、タンパク質結合シアル酸、脂質結合シアル酸(ガングリオシドなど)、炭水化物結合シアル酸およびこれらの組み合わせもしくは誘導体などがあり得る。本明細書に記載の全てのシアル酸濃度は、タンパク質、脂質、炭水化物その他のシアル酸構造に結合した複合体を除く、シアル酸化合物もしくは部分自体の重量パーセントに基づいたものである。
【0037】
乳児用調乳で使用されるシアル酸源は、別個の成分として加えたり、得ることができる。しかしながら、より代表的には、シアル酸は主として、乳清タンパク質濃縮物成分からの、好ましくは本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物からの固有の成分として提供される。さほど好ましくはないが、シアル酸は別個の成分として乳児用調乳から得たり、乳児用調乳に加えても良く、この場合、加えられるシアル酸は、他の成分からの固有のシアル酸と組み合わせて、乳児用調乳中における総シアル酸含有量を得る。
【0038】
個々の化合物もしくは部分として、シアル酸は炭素数9個のアミノ糖であり、その構造は、化学文献に容易に記載されている。N−アセチルノイラミン酸に関して他の一般に認められている名称には、シアル酸;o−シアル酸;5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロソン酸;5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトヌロソン酸;アセノイラミン酸;N−アセチル−ノイラミネート;N−アセチルノイラミン酸;NANA;NANA、Neu5Ac;およびNeuSAcなどがある。
【0039】
好適なシアル酸源は、天然もしくは合成のいずれであっても良く、40を超える天然の現在確認されているシアル酸誘導体のいずれかを含み、これらには遊離シアル酸、オリゴ糖結合体(例:シアリルオリゴ糖)、脂質結合体(すなわち、糖脂質)、タンパク質結合体(すなわち、糖タンパク質)およびこれらの組み合わせなどがある。
【0040】
本発明での使用に好適なシアル酸には、天然であるか合成であるかを問わず、一般に人乳で認められるシアリルオリゴ糖などがあり、これらの最も豊富な二つのものは3′シアリルラクトース(3′SL、NeuNAcα2−3ガラクトースβ1−4グルコース)および6′シアリルラクトース(6’SL、NeuNAcα2−6ガラクトースβ1−4グルコース)である。他の好適なシアリルオリゴ糖には、より大きい人乳その他のより複雑なオリゴ糖に結合した1以上のシアル酸分子を含むものなどがある。
【0041】
本明細書で使用される他の好適なシアル酸には、乳児用調乳での使用にやはり好適である相当する糖脂質などがあり、これらには脂肪酸、スフィンゴシン、グルコース、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミンおよびN−アセチルノイラミン酸分子を含むシアル酸含有糖脂質のようなガングリオシド類などがある。これらのシアル酸化合物は、シアリル化されていることが知られている人乳中で一般に認めらていれるいくつかの糖タンパク質(例:κ−カゼイン、α−ラクトアルブミン、ラクトフェリン)のうちのいずれか1以上を含むこともできる。
【0042】
本明細書での使用に好適なシアル酸源には、人乳および牛乳などの哺乳動物乳もしくは乳製品の単離物、濃縮物または抽出物などがある。本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物のように、牛乳が本発明での使用に好ましい入手源である。
【0043】
本発明での使用に好適なシアル酸の個々の入手源には、アルファ・フード・イングレディエンツ(デンマーク)から入手可能なラクプロダン(Lacprodan)CGMP−10(4.2%シアル酸を含むカゼイノグリコマクロペプチド)およびダビスコ・フーズ・インターナショナル(Davisco Foods International, Eden Prairie, Minnesota, USA)から入手可能なバイオピュア・グリコマクロペプチド(Biopure glycomacropeptide)(7から8%のシアル酸含有)などがある。
【0044】
乳児用調乳は、シアル酸源としてグリコマクロペプチドを含むことができるが、この調乳は好ましくは、グリコマクロペプチドの含有率がかなり低下されている。グリコマクロペプチドは、牛乳タンパク質カゼイン分子の一部である。スキムミルク中では、ごく微量の遊離グリコマクロペプチドが認められるが、乳清タンパク質濃縮物は、比較的高い量の遊離グリコマクロペプチドを含む。グリコマクロペプチドが、乳児によっても、さらには他のシアル酸源によっても耐容されないことが認められている。従って、乳清タンパク質濃縮物を用いて製造された乳児用調乳は、比較的高いグリコマクロペプチド含有率を有するが、乳児による耐容性も低いものと考えられる。この文脈において、「実質的に低下」という用語は、乳児用調乳が好ましくは、授乳基準で遊離グリコマクロペプチドとして、調乳の重量基準で0.5%未満、例えば0.4%未満、および例えば0.35%未満、さらには例えば0パーセントを含むことを意味する。従来の乳児用調乳は代表的には、チーズ乳清からの代表的な乳清タンパク質濃縮物からの固有成分として、0.6から0.8%のグリコマクロペプチドを含む。
【0045】
ガングリオシド
本発明の乳児用調乳は、オリゴ糖鎖に連結された1以上のシアル酸(n−アセチルノイラミン酸)を有するグリコスフィンゴ糖脂質(セラミドおよびオリゴ糖)からなる化合物群である1以上のガングリオシドを強化濃度で含むこともできる。ガングリオシドの一部または全体は、本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物によって提供され得る。
【0046】
ガングリオシドは、哺乳動物細胞の原形質膜の通常の成分であり、ニューロン膜で特に豊富である。これは、疎水性部分であるセラミドおよび親水性部分である1以上のシアル酸分子を含むオリゴ糖鎖を含む酸性スフィンゴ糖脂質である。ガングリオシドのオリゴ糖部分は、ガングリオシドの分離およびこれらの個々の物質としての認識についての基準を構成する異なる化学構造を有する。最も一般的なガングリオシドのセラミド部分は、C18およびC20の誘導体が多い不均一な脂肪酸組成を有する。
【0047】
ガングリオシドは、それぞれモノ、ジおよびトリシアロガングリオシドを指すM、DおよびTの呼称を用いて呼ばれることが最も一般的であり、1、2、3などの数字は薄層クロマトグラフィーでのガングリオシドの移動順を指す。例えば、モノシアロガングリオシド類の移動順序は、GM3>GM2>GM1である。塩基性構造内での変化を示すのに、さらに下付文字を加え、例えばGM1、GD1などとする。
【0048】
本発明の乳児用調乳は、少なくとも約5mg/L、例えば約7mg/Lから50mg/L、さらに例えば約10から約30mg/Lのガングリオシドを含むことができる。これらのガングリオシド濃度は、人乳で認められるものと類似しており、人乳は代表的には少なくとも約3mg/Lのガングリオシド、より代表的には約3mg/Lから約30mg/Lのガングリオシドを含む。乳児用調乳で用いられるこれらのガングリオシドは代表的には、ガングリオシド類であるGD3、O−アセチル−GD3およびGM3のうちの1以上、より代表的には全てを含む。これらのガングリオシドは一般に、本発明における乳児用調乳中の総ガングリオシドの少なくとも約80重量%、より代表的には少なくとも約90重量%を占める。
【0049】
本発明で使用される好適なガングリオシド源には、人乳および牛乳などの哺乳動物乳または乳製品の単離物、濃縮物または抽出物などがある。本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物など、牛乳が、本発明で使用される好ましいガングリオシド源である。
【0050】
本発明での使用に好適な個々のガングリオシド源には、フォンテラ(Fonterra, New Zealand)から入手可能なガングリオシド500(>0.5%GM3および<1.0%GD3)およびガングリオシド600(>1.2%GD3)などがある。
【0051】
本発明の乳児用調乳の定義に関してのガングリオシド濃度は、下記に記載のガングリオシド法に従って測定される。
【0052】
リン脂質
本発明の乳児用調乳は、強化濃度のリン脂質を含むことができる。このような濃度は、従来の乳児用調乳で認められるものより高く、人乳で認められるものと同様である。リン脂質の一部または全てが、本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物によって提供されて良い。
【0053】
本発明での使用に好適なリン脂質には、牛乳その他の哺乳動物の乳汁で一般に認められるものなどがある。好ましいリン脂質には、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンおよびこれらの組み合わせなどがある。最も好ましいものは、5種類全てのリン脂質の組み合わせであり、特にはスフィンゴミエリンが総リン脂質の少なくとも20重量%を占めるような組み合わせである。
【0054】
本発明の乳児用調乳でのリン脂質濃度は、少なくとも約150mg/L、例えば約200mg/Lから約600mg/L、さらに例えば約250から約450mg/Lであることができる。比較のため、人乳は一般に、約163から約404mg/Lのリン脂質を含み、スフィンゴミエリンは総リン脂質の約51%を占める。
【0055】
本発明での使用に好適なリン脂質源には、人乳および牛乳などの哺乳動物乳または乳製品の単離物、濃縮物または抽出物などがある。本明細書に記載の強化乳清タンパク質濃縮物など、牛乳が本発明での使用に好ましいリン脂質源である。
【0056】
他の好適なリン脂質源には、大豆、例えば大豆レシチンなどがある。しかしながら、本発明の乳児用調乳は、好ましくは、大豆源からのリン脂質は実質的に含まないものとする。乳児用調乳は、また好ましくは、卵リン脂質を実質的に含まないものとする。この文脈では、「実質的に含まない」という用語は、乳児用調乳が0重量%を含めて0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の大豆または卵リン脂質を含むことを意味する。
【0057】
本発明での使用に好適な個々のリン脂質源には、フォンテラ(ニュージーランド)から入手可能なリン脂質濃縮物600(>18.0%スフィンゴミエリン、>36.0%ホスファチジルコリン、>9.0%ホスファチジルエタノールアミン、4.0%ホスファチジルセリン)などの牛乳由来の入手源などがある。
【0058】
ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸
本発明の乳児用調乳はさらに、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸またはこれらの供給源を含むものであり、この調乳は少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸および少なくとも約0.25%のアラキドン酸を含まなければならない。これらの2つの多価不飽和脂肪酸は、人乳でも認められる。
【0059】
従って、本発明の乳児用調乳は、アラキドン酸を含むものでなければならず、これの最小濃度は、調乳中で総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%、好ましくは少なくとも約0.3%、より好ましくは少なくとも約0.4%でなければならない。乳児用調乳中のアラキドン酸濃度は、調乳中の総脂肪酸の約2.0重量%以下、例えば約1.0重量%以下、さらに例えば約0.6重量%以下の範囲であることができる。
【0060】
本発明の乳児用調乳は同様に、ドコサヘキサエン酸を含むものでなければならず、これの最小濃度は、調乳中で総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%、好ましくは少なくとも約0.14%、より好ましくは少なくとも約0.15%でなければならない。乳児用調乳中のドコサヘキサエン酸濃度は、調乳中の総脂肪酸の約1.0%重量以下、例えば約0.5重量%以下、さらに例えば約0.25重量%以下の範囲であることができる。
【0061】
アラキドン酸および/またはドコサヘキサエン酸の一部の好適な供給源の例としては、魚油、卵由来油、乳脂肪、菌類油、藻類油、他の単細胞油およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。これらの組成物は好ましくは、卵由来油を実質的に含まないものであり、このことはその文脈において、そのような卵由来油の重量基準で0%を含む約0.05%未満であることを意味する。
【0062】
アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸は、乳児が使用するのに好適な形態で調乳に加えることができ、それには乳児への投与時または投与後にこのような遊離脂肪酸源を他の形で提供することができる化合物もしくは材料などがあり、例えばリン脂質および多価不飽和脂肪酸のグリセリドエステル(モノ、ジ、トリ)などがある。多価不飽和脂肪酸およびそれの供給源については、米国特許第6080787号(カールソン(Carlson)ら)および米国特許第6495599号(アウエスタッド(Auestad)ら)に記載されており、これらの記載は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の定義に関して、アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸のリン脂質源は、本明細書で前述したリン脂質成分としては含まれない。
【0063】
これらの脂肪酸は、米国特許第6495599号(アウエスタッドら)にも記載されており、この記載は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
他の栄養素
本発明の乳児用調乳は、脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよびミネラルを含み、これらはいずれも、対象となる乳児または所定の乳児群の栄養上のニーズを満足する種類および量で選択される。
【0065】
多くの異なる入手源および種類の炭水化物、脂肪、タンパク質、ミネラルおよびビタミンが知られており、本発明における基本調乳で用いることができるが、ただし、このような栄養素は特定の製剤中で添加される成分と適合性のものであり、さもなければ乳児用調乳での使用に好適なものである。
【0066】
本発明での使用に好適な炭水化物は、単純もしくは複合の、乳糖を含有するまたは乳糖を含まないまたはこれらの組み合わせであることができ、例としては加水分解、無処理、天然および/または化学修飾されたコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー、ショ糖、コーンシロップ、コーンシロップ固体、米またはジャガイモ由来の炭水化物、グルコース、果糖、乳糖、高果糖コーンシロップならびにフラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)およびこれらの組み合わせなどの消化可能なオリゴ糖などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明における調乳での使用に好適なタンパク質には、加水分解、部分加水分解および非加水分解もしくは無処理のタンパク質もしくはタンパク質源などがあり、牛乳(例えば、カゼイン、乳清、人乳タンパク質)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、米、トウモロコシ)、野菜(例えば、大豆)またはこれらの組合せなどの公知であるまたはさもなければ好適な供給源由来のものであることができる。
【0068】
本発明で使用されるタンパク質は、乳児用調乳での使用に関して公知であるまたはさもなければ好適な遊離アミノ酸を含みまたは遊離アミノ酸によって完全もしくは部分的に置き換わっていても良く、これらのアミノ酸の例には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、カルニチン、アスパラギン酸、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、タウリン、チロシン、バリンおよびこれらの組合せなどがあるが、これらに限定されるものではない。これらのアミノ酸は、最も代表的にはL型で使用されるが、相当するD−異性体も、栄養的に等価であれば使用可能である。ラセミ混合物または異性体混合物も使用可能である。
【0069】
本発明における調乳で使用するのに好適な脂肪には、ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、紅花油、高オレイン酸紅花油、藻類油、MCT油(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、パーム油およびパーム核油、パームオレイン、カノーラ油、魚油、綿実油ならびにこれらの組合せなどがある。本発明の乳児用調乳には、授乳基準で約1重量%未満、例えば0重量%を含む約0.2重量%未満の乳脂を含む実施形態などがある。
【0070】
調乳での使用に好適なビタミン類および同様の他の成分には、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、これらの塩および誘導体ならびにこれらの組み合わせなどがある。
【0071】
基本調乳での使用に好適なミネラルには、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、クロム、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、クロライドおよびこれらの組み合わせなどがある。
【0072】
本発明の乳児栄養調乳は好ましくは、対象となる消費者もしくはユーザー群に関する関連の乳児用調乳ガイドラインに従って栄養素を含むものであり、このガイドラインの例としては、乳児調乳法21U.S.C.セクション350(a)があろう。調乳で使用する上で好ましい炭水化物、脂質およびタンパク質濃度を、下記の表に示してある。
【0073】
【表1】

【0074】
乳児用調乳は、調乳100kcal当たり、ビタミンA(約250から約750IU)、ビタミンD(約40から約100IU)、ビタミンK(約4μmより多い)、ビタミンE(少なくとも約0.3IU)、ビタミンC(少なくとも約8mg)、チアミン(少なくとも約8μg)、ビタミンB12(少なくとも約0.15μg)、ナイアシン(少なくとも約250μg)、葉酸(少なくとも約4μg)、パントテン酸(少なくとも約300μg)、ビオチン(少なくとも約1.5μg)、コリン(少なくとも約7mg)およびイノシトール(少なくとも約2mg)のうちの1以上を含むこともできる。
【0075】
乳児用調乳は、調乳100kcal当たり、カルシウム(少なくとも約50mg)、リン(少なくとも約25mg)、マグネシウム(少なくとも約6mg)、鉄(少なくとも約0.15mg)、ヨウ素(少なくとも約5μg)、亜鉛(少なくとも約0.5mg)、銅(少なくとも約60μg)、マンガン(少なくとも約5μg)、ナトリウム(約20から約60mg)、カリウム(約80から約200mg)、クロライド(約55から約150mg)およびセレン(少なくとも約0.5mcg)のうちの1以上を含むこともできる。
【0076】
乳児用調乳はさらに、フルクト多糖(fructopolysaccharides)を含むことができ、その濃度は授乳基準で調乳の約5重量%以下の範囲、例えば約0.05%から約3%、さらに例えば約0.1%から約2%の範囲であることができる。これらのフルクト多糖は、長鎖(例:イヌリン)、短鎖(例:FOSまたはフルクト多糖)またはこれらの組み合わせであることができ、混合物は多様な鎖長の構造を有しており、ほとんどの場合、約2から約60のDP(重合度)を有する。
【0077】
乳児用調乳はさらに、組成物の物理的、化学的、美的または加工上の特性を変えることができ、対象の乳児もしくは乳児群で用いた場合に医薬成分または追加の栄養成分として役立ち得る他の場合による成分を含むことができる。多くのそのような場合による成分は、公知でありまたはさもなければ栄養製品での使用に好適であり、本発明の乳児用調乳で使用することもでき、そのような適宜材料は、本明細書に記載の必須材料と適合性であり、さもなければ乳児用調乳での使用に好適である。
【0078】
このような場合による成分の例としては、追加の酸化防止剤、乳化剤、緩衝剤、着色剤、香味剤、ラクトフェリン、別のアルファラクトアルブミン、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、プロバイオティクス、プレバイオティクスおよび関連誘導体、増粘剤ならびに安定剤などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
使用方法
本発明はさらに、本明細書に記載の乳児用調乳を製造し、次に、生まれてから最初の2ヶ月の間、好ましくは最初の4ヶ月の間、乳児にこの調乳を投与するまたはこの調乳を投与するよう介護者に指示することで、乳児における脳発達を加速させる方法に関するものでもある。
【0080】
本発明はさらに、本明細書に記載の乳児用調乳を製造し、次に、生まれてから最初の2ヶ月の間、好ましくは最初の4ヶ月の間、乳児にこの調乳を投与するまたはこの調乳を投与するよう介護者に指示することで、神経遊走を加速させる方法に関するものでもある。
【0081】
本発明はさらに、本明細書に記載の乳児用調乳を製造し、次に、生まれてから最初の2ヶ月の間、好ましくは最初の4ヶ月の間、乳児にこの調乳を投与するまたはこの調乳を投与するよう介護者に指示することで、視覚発達を加速させる方法に関するものでもある。
【0082】
本発明はさらに、本明細書に記載の乳児用調乳を製造し、次に、生まれてから最初の2ヶ月の間、好ましくは最初の4ヶ月の間、乳児にこの調乳を投与するまたはこの調乳を投与するよう介護者に指示することで、認知発達を加速させる方法に関するものでもある。
【0083】
本発明はさらに、本明細書に記載の乳児用調乳を製造し、次に、生まれてから最初の2ヶ月の間、好ましくは最初の4ヶ月の間、乳児にこの調乳を投与するまたはこの調乳を投与するよう介護者に指示することで、乳児に対して唯一の供給源、補助または主要栄養素を与える方法に関するものでもある。
【0084】
本発明の方法はいずれも、誕生から最初の2から4ヶ月の間での乳児用調乳の選択使用に関するものであるが、理解すべき点として、そのような方法に別の投与を含めることで、最初の2から4ヶ月期間以後に、乳児に対して、9から12ヶ月までの間、同じ調乳での授乳を継続しても良い。しかしながら、本発明の効果を実現するためには、誕生から最初の2から4ヶ月の間での投与はやはり行うべきであり、そのような投与をその期間をかなり超えて延長するとしても行うべきである。
【0085】
本発明の方法の文脈において、乳児用調乳は、単一、主要または補助栄養を提供することができるが、単一栄養源であることが好ましい。粉末の実施形態において、各方法は、水系媒体、最も代表的には水もしくは人乳で粉末を再生して(または介護者に対して再生するよう指示して)、所望のカロリー密度を形成する段階を有することもでき、その後にそれを乳児に経口もしくは非経口的に与えることで、所望の栄養を提供する。粉末は、一定量の水または人乳などの他の好適な流体で再生して、約1回の授乳に好適な容量および栄養プロファイルを得る。
【0086】
本発明の乳児用調乳は、最も代表的には授乳基準で約19から約24kcal/液量オンス、より代表的には約20から約21kcal/液量オンスのカロリー密度を有する。
【0087】
ガングリオシド分析法
本発明で使用されるガングリオシド濃度は、下記の分析方法に従って測定される。
【0088】
総脂質を、ラクプロダン(Lacprodan)MFGM−10または乳児用調乳サンプルから、クロロホルム:メタノール:水の混合物で抽出する。ガングリオシドを、ジイソプロピルエーテル(DIPE)/1−ブタノール/水相分配およびC−18カートリッジによる固相抽出の組み合わせによって総脂質抽出物から精製する。精製ガングリオシド中の脂質結合シアル酸(LBSA)を、レゾルシノールとの反応によって分光光度的に測定する。LBSAに変換係数を掛けることで、サンプル中のガングリオシドの量を得る。この係数は、ガングリオシド単位およびシアル酸単位の分子重量比から得られる。ガングリオシドは異なる分子量およびシアル酸残基数を有する化合物のファミリーであることから、HPLC分離を用いて個々のガングリオシド分布を測定することで、この変換係数をより正確に計算する。
【0089】
標準
・ウシ脳からのジシアロガングリオシドGD1a、最低95%(TLC)、シグマ(SIGMA)参照番号G−2392。
・ウシ脳からのモノシアロガングリオシドGM1、最低95%(TLC)、シグマ参照番号G−7641。
・ウシバターミルクからのジシアロガングリオシドGD3アンモニウム塩、最低98%(TLC)、カルバイオケム(Calbiochem)参照番号345752またはマトレヤ(Matreya)参照番号1503。
・牛乳からのモノシアロガングリオシドGM3アンモニウム塩、最低98%(TLC)、カルバイオケム参照番号345733またはマトレヤ参照番号1504。
・大腸菌からのN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NANA)、最低98%シグマ、参照番号A−2388。
【0090】
供給者が濃度を保証しないのが普通であることから、ガングリオシド標準は真の標準とは見なされない。そのため、濃度はレゾルシノール法によって測定されるLBSAとして計算される。ガングリオシドの種類に応じて、標準をクロロホルム:メタノール(C:M)1:1(体積比)で1から2.5mg/mLの理論濃度まで希釈する。少量サンプル10、20および40μLを取り、N気流下に乾燥させ、下記の説明する方法に従って測定する(LBSAの測定)。3つの少量サンプルの平均濃度を、LBSAとして表されるガングリオシド標準の濃度と見なす。ガングリオシド濃度は、分子量比から得られる変換係数をLBSAに掛けることで得られる(変換係数:
【0091】
【数1】

式中、n=シアル酸単位数である)。
【0092】
【表2】

【0093】
手順
脂質抽出:脂質抽出物は次のように得る。調乳1gまたはラクロプロダン(Lacprodan)MFGM−10 100mgのサンプルを、丸底ガラス製遠心管(調乳には50mL管およびラクロプロダンMFGM−10には10mL管)中に秤量する。サンプル1g当たりクロロホルム:メタノール:水(C:M:W)50:50:10(体積比)25mLを加え、渦攪拌および超音波処理を1分間交互に行うことで、サンプルを完全に分散させる。15分ごとに1分の浴超音波パルスを用いて、激しく継続的な渦攪拌(2000rpm)を行いながら、室温で45分間にわたって管を温置する。サンプルを遠心する(1500×g、10分間、15℃)。上清を40mL円錐底ガラス遠心管に移し、N下に37℃での乾燥を開始させる。一方で、ペレットについて、連続的渦攪拌(2000rpm)および7.5分ごとに1分間の浴超音波パルスを行いながら、室温て15分間にわたり、1g当たりC:M:W 12.5mLによって再抽出する。遠心後、上清を40mL管中で最初のものと合わせ、溶媒留去を続ける。ペレットをC:M1:1(体積比)で洗浄し、超音波パルスは5分ごととして、前記と同じ条件で10分間温置する。遠心後、上清をさらに、40mL管に加え、溶媒留去する。
【0094】
ガングリオシド画分を、ラディシュら(Ladisch S. and Gillard B. (1985) A. solvent partition method for microscale ganglioside purification. Anal. Biochem. 146: 220-231)が記載しているジイソプロピルエーテル(DIPE)/1−ブタノール/水相分配の組み合わせによって総脂質抽出物から精製する。これに続いて、ウィリアムスらの報告(Williams M and McCluer R (1980), The use of Sep-PakTM C18 cartridges during the isolation of gangliosides, J. Neurochem, 35: 266-269)に記載の方法に変更を加えたものに従って、C−18カートリッジによる固相抽出を行う。
【0095】
ジイソプロピルエーテル/1−ブタノール/水系NaCl分配:DIPE/1−ブタノール60:40(体積比)4mLを、乾燥させた脂質抽出物に加える。サンプルを渦攪拌および超音波処理して、脂質抽出物の微細懸濁液とする。0.1%NaCl水溶液2mLを加え、管について、2分間にわたって渦攪拌と15秒パルスでの超音波処理を交互に行い、遠心する(1500×g、10分間、15℃)。境界相を除去しないように注意を払いながら、パスツールピペットを用いて、上層の有機相(中性脂質およびリン脂質を含有)を注意深く除去する。ガングリオシドを含む下層の水相を、最初の容量の有機溶媒で2回抽出する。容量が最初の容量の約半分に減るまで(ほぼ2mL)、30から45分間にわたり、37℃でN気流下に、サンプルを部分的に溶媒留去する。
【0096】
逆相C−18カートリッジによる固相抽出(SPE):500mgC−18カートリッジを、24ポートライナーSPE真空多岐管に取り付け、メタノール5mL、C:M2:1(体積比)5mLおよびメタノール2.5mLの3回の連続洗浄で活性化させる。次に、カートリッジを0.1%NaCl水溶液:メタノール60:40(体積比)2.5mLで平衡とする。部分的に溶媒留去した下側の相の容量を測定し、水で1.2mLとし、メタノール0.8mLを加える。次に、これを遠心して(1500×g、10分間)、不溶物を除去し、C−18カートリッジに2回乗せる。SPEカートリッジを蒸留水10mLで流して塩および水溶性汚染物を除去し、30秒間真空乾燥する。ガングリオシドをメタノール5mLおよびC:M2:1(体積比)5mLで溶離し、N気流下に乾燥させ、C:M 1:1(体積比)2mLに再度溶解させる。サンプルおよび溶媒を重力によってカートリッジを通過させるまたは強制的に1から1.5mL/分の流量で弱い減圧を行う。ガングリオシドを分析まで−30℃で保存する。総ガングリオシドを、LBSAとして測定する。少量サンプル500μLを10mLガラス製遠心管に入れ、N下に乾燥させ、レゾルシノールアッセイによって測定する(3)。
【0097】
LBSAの測定:レゾルシノール試薬1mLおよび水1mLを加える。管にキャップを施し、沸騰水浴で100℃にて15分間加熱する。加熱後、管を氷浴水で冷却する。酢酸ブチル:ブタノール85:15(体積比)2mLを加え、管を1分間激しく振盪し、750×gで10分間遠心する。上側の相を取り、分光光度計にて580nmで測定する。NANAの標準溶液(0、2、4、8、16、32および64μg/mL)を同様にして処理し、それを用いて、サンプル中のシアル酸濃度を計算する。
【0098】
レゾルシノール試薬は次のように調製する。レゾルシノールの2%脱イオン水溶液10mL、0.1M硫酸銅0.25mL、濃塩酸80mLに水を加えて100mLとする。試薬は日光から保護して毎日調製する。
【0099】
HPLCによるガングリオシドの分離:フェノメネックス(Phenomenex)からのルナ(Luna)−NHカラム、5μm、100Å、250×4.6mm(参照番号00G−4378−EO)を用い、ウォーターズからのデュアル吸光度検出器(Dual Absorbance Detector)を搭載したアライアンス(Alliance)2690装置でのHPLCによって、ガングリオシドを分離する。それを、文献(Gazzotti G., Sonnion S., Ghidonia R (1985), Normal-phase high-performance liquid chromatographic separation of non-derivatized ganglioside mixtures. J Chromatogr. 348:371-378)の方法に従って、各種容量比および張度でのアセトニトリル−リン酸緩衝液の溶媒系を用いて、室温で溶離する。2つの移動相での勾配を用いる。
溶媒A:アセトニトリル−5mMリン酸緩衝液、pH5.6(83:17)。この緩衝液は、NaHPO・HO 0.6899gを水1リットルに加えて調製し、pHを5.6に調節する。
溶媒B:アセトニトリル−20mMリン酸緩衝液、pH5.6(1:1)。この緩衝液は、NaHPO・HO 2.7560gを水1リットルに加えて調製し、pHを5.6に調節する。
【0100】
下記の勾配溶離プログラムを用いる。
【0101】
【表3】

【0102】
サンプルを、上記で説明した方法に従って、液相抽出し、分配し、固相抽出する。サンプルのC:M1:1溶液2mLからの0.5mLの少量サンプルを窒素下に溶媒留去し、水0.150mLに溶かす。完全に再生させるため、サンプルを渦攪拌および超音波処理する。最終溶液をHPLCバイアルに移す。注入容量は、サンプルおよび標準について30μLである。
【0103】
GD3およびGM3標準を、レゾルシノール法によって測定し、真の濃度を上記の方法に従って計算する。GD3およびGM3を含む4つの標準溶液ならびにブランクを、水で調製する。較正標準の濃度は、GD3に関して約0から0.5mg/mL、GM3に関して0から0.2mg/mLの範囲とした。各組の標準の正確な濃度は、標準の純度に応じて変わり得る。
【0104】
例えば新たなカラムに関して、システムを調整する都度、1組の標準を注入する。10回の測定ごとに中間濃度の標準一つを注入することで、システムの適正な性能をチェックする。内挿濃度が理論濃度の95%から105%の間にない場合、新たな較正セットを注入し、以後の計算に用いる。
【0105】
製造方法
本発明の乳児用調乳は、乳児用調乳その他の調乳の製造および調合に好適な公知であるまたはさもなければ有効な技術によって製造することができる。いずれか所定の調乳を得る上でのそのような技術およびそれの変法は、本明細書に記載の調乳の製造における乳児栄養の製剤または製造の業界での当業者であれば、容易に決定および使用するものである。
【0106】
本発明の乳児用調乳の製造方法は、水および1以上の下記の成分:炭水化物、タンパク質、脂質、安定剤、ビタミンおよびミネラルを含むことができる1以上の溶液からスラリーを形成する段階を含むことができる。このスラリーを、乳化、均質化および冷却する。得られた乳濁液に、各種の他の溶液、混合物その他の材料を加えてから、加える途中、または加える前に、別の加工を行うことができる。この乳濁液を、さらに希釈、安定化および包装することで、即時授乳液または濃縮液を形成することができるまたはそれを安定化してから、処理し、再生可能な粉末(例:スプレー乾燥品、乾燥混合品、凝集品)として包装することができる。
【0107】
乳児用調乳製造に関しての他の好適な方法は、例えば米国特許第6365218号(ボルシェル(Borschel))および米国特許出願第20030118703A1号(グエン(Nguyen)ら)(これらの記載は、参照によって本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【実施例】
【0108】
実験1
本試験の目的は、対照調乳または強化濃度のガングリオシド、リン脂質およびシアル酸ならびに多様な濃度のアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸を含む2つの異なる調乳のうちの一方のいずれかを与えた新生仔ブタでの成績効果を比較することにある。
【0109】
背景
新生仔ブタは、ヒト臨床試験の設計および実施に先だって、栄養介入を評価するための適切なモデルを構成する。この好適性は、仔ブタの消化器生理がヒト新生児のものと類似している点にある。このモデルは、乳児用調乳の耐容性を予測する上で有用な手段である(Miller, E.R., Ullrey, The pig as model for human nutrition, Annu Rev Nutr 1987; 7: 361-82)。さらに、ヒトの場合のように、仔ブタ脳の急成長は、出生前後期から誕生後早期の範囲で起こり、このことによっても、本動物モデルは非常に有用となる(Pond WG et al., Perinatal Ontogeny of Brain Growth in the Domestic Pig. PSEBM 2000, 223: 102-108)。考慮すべき非常に重要な時期は、受胎後70から140日である(誕生は、受胎後112から113日当たりで起こる)。本試験は、3つの被験調乳の効果の生物学的評価を提供するよう設計されており、これらの調乳のうちの一つは従来の乳児用調乳対照である。
【0110】
要約
本試験からのデータは、新生仔ブタにおいて12から13日齢で有意な神経遊走を示している。仔ブタにおけるこの時期は、ヒト乳児での3から4ヶ月に相当するものと考えられる(Miller, E.R., Ullrey, The pig as model for human nutrition, Annu Rev Nutr 1987; 7: 361-82)。
【0111】
実験計画
本試験は長期試験であり、実験飼料A、BまたはCを与える3つの仔ブタ群(表2参照)を含み、授乳8から9日、15から16日および29から30日後の3回の屠殺を行う。試験開始時に屠殺した別の群を、基準として用いる。本試験は2つの実験に分かれている。本試験における仔ブタは、認定された農場から供給される。
【0112】
本試験における2つの実験のうちの第1の実験では、33頭の条件を合わせた家畜の仔ブタ(4から5日齢)を、27から30℃で適応前処置した部屋で、ステンレス製の飼育ケージ(ケージ当たり動物2頭)にて飼育する。動物には、栄養上の要件に従って、調整ブタ飼料を1日4回与える。3日間の馴致期間後、仔ブタ3頭を屠殺する。これらの動物を屠殺する時点を、本試験における「時間ゼロ」と見なす。残りの仔ブタは、体重および同腹仔によってペアとし、3つの群に分け(それぞれ、n=10.n=10およびn=10)、やはり下記の飼料を1日4回与える。
・飼料A:アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories, Columbus, Ohio, USA)から入手可能なシミラック(Similac;登録商標)アドバンス(Advance;登録商標)乳児用調乳と同様(総脂肪酸の重量基準で0.4%のアラキドン酸、0.15%のドコサヘキサエン酸、ならびに従来の乳清タンパク質濃縮物)、
・飼料B:総調乳脂肪酸の重量基準で0.4%のアラキドン酸および0.15%のドコサヘキサエン酸、ならびに授乳基準で7.1g/L調乳のレベルでの強化乳清タンパク質濃縮物を含む本発明の乳児用調乳、
・飼料 C:アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸濃度が低く(それぞれ総調乳脂肪酸の重量基準で0.2%および0.1%)、強化乳清タンパク質濃縮物を授乳基準で7.1g/L調乳のレベルで含む以外は飼料Bと同様の乳児用調乳。
【0113】
飼料A、BおよびCについては、新生仔ブタの特殊な要件に対して、微量栄養素(ミネラルおよびビタミン)に関しての調整を行う。下記の表に、標準ブタ飼料ならびに飼料A、BおよびCの組成を示してある。
【0114】
【表4】

【0115】
【表5】

【0116】
いずれの飼料も一旦製造したら、直ちに使用するまたは不活性雰囲気の缶の中で4℃にて保存し、24時間以内に用いる。飼料は粉末形態であり、調整ブタ飼料の場合には水で再生して18.8重量%とし、飼料A、BおよびCの場合には12.85重量%とする。再生した液体飼料はケージの餌入れに注ぐ。残った液体を除去して測定し、餌入れを洗浄してから、次の飼料を投入する。
【0117】
各群について、3または4頭の仔ブタを、対照(飼料A)または実験調乳(飼料BおよびC)による給餌開始から8から9日、15から16日および29から30日に屠殺する。
【0118】
本試験の第2の実験では、44頭の雄家畜仔ブタ(4から5日齢)を、第1の実験に記載のものと同じ種類のケージおよび同じ部屋で個別に飼育する。給餌プロトコールは同じであり、馴致期間後に4頭の仔ブタを屠殺して、基準群を完成する。仔ブタの残りのものは、体重および同腹仔でペアとし、飼料A,BおよびCを与える3つの群に分ける(それぞれ、n=13、n=13およびn=14)。各群にはさらに1もしくは2頭の仔ブタを含めることで、中止の場合の代わりとする。
【0119】
飼料摂取および体重増を、各仔ブタについてそれぞれ1日4回および2週間に2回記録する。
【0120】
適切な時点で、終夜絶食後にケタミン/ドムトル(Domtor)で各仔ブタに麻酔を施し、頸静脈穿刺での致死的放血によって屠殺する。その後に、脳の組成および組織学を評価する。
【0121】
サンプル製造
仔ブタは終夜絶食させ、麻酔下に頸静脈穿刺によって放血させて屠殺する。トリカリウムEDTA(2.7mmol/L)を抗凝血剤として用いて採血を行い、1500×gで4℃にて10分間遠心する。
【0122】
頭蓋を開け、脳を摘出し、秤量する。左半球を切開し、緩衝させた4%ホルムアルデヒドpH7.4およびエタノール中にて70℃で1週間浸漬させて組織学的分析に供する。右半球は−80℃で保存して生化学分析に供する。全眼を摘出する。左眼球もホルムアルデヒドに浸漬する。2時間後、その眼球の前極をメスによって分離し、眼球は再度ホルムアルデヒド中で18時間維持する。右眼球を切開し、網膜を摘出し、秤量する。血漿、右半球および網膜は、分析まで−80℃で保存する。
【0123】
血漿の脂肪酸組成
血漿サンプルを、レページ(Lepage)およびロイ(Roy)(6)の方法によってメチル化し、ガス液体クロマトグラフィーによって分析する。血漿200ミクロリットル(μL)に、内部標準としてのペンタデカン酸(0.04mg/サンプル)、メタノール:ヘキサン(4:1)の混合物2mLおよび塩化アセチル0.2mLを加える。管にキャップを施し、100℃で1時間加熱する。これらを氷浴で冷却し、6%KCO 5mLを加え、1500×gで10分間遠心する。ヘキサン上層3μLを、水素炎イオン化検出器および長さ60m、内径0.32mm、層厚0.2μmのキャピラリーSP2330カラム(スペルコ(Supelco))を取り付けたヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)6890クロマトグラフィー装置に注入する。分割比1:40で、キャリアガスとしてヘリウム流量1mL/分を用いる。温度プログラミングは、165℃で3分間、2℃/分で195℃まで昇温、2分間維持、3℃/分で211℃まで昇温、10分間維持からなるものとした。注入部および検出器の温度は250℃である。脂肪酸は、それらの保持時間を信頼性のある標準(シグマ(Sigma))のものと比較することで確認する。結果は、各脂肪酸メチルエステルについての面積もしくは濃度の正規化されたパーセントとして表す。
【0124】
脳組成
右半球は、ハイドルフ(Heidolph)ホモジナイザーで均質化する。均質化した大脳1gを、ウルトラツラックス(ultraturrax)で1分間にわたり、PBS 15mLとともにさらに均質化し、PBSで希釈して100mLとする。ヘキスト(Hoechst)試薬との反応およびモレキュラー・プローブス(Molecular Probes)キットF−2962を用いる蛍光定量法によって、小分けサンプル10μLにおいて3連でDNAの含有量を測定する。
【0125】
マイクロプレートで測定するよう変更して、シグマ(Sigma)キットTP0300を用いてローリー法によって1g/100mLホモジネートの1:4希釈液で、タンパク質含有量を求める。すなわち、3連でのサンプルまたは標準20□Lを96ウェルのマイクロプレートに入れる。水80μLおよびローリー試薬100μLを加え、混合しながら20分間温置する。フォリン−ショカルトー(Folin-Ciocalteau)試薬50μLを加え、混合しながら30分間温置する。吸光度を690nmで測定する。
【0126】
コレステロールは、サンプルを有機溶媒で抽出した後に分光測光−比色法によって測定する。均質化した脳200mgを、ハイドルフ・ホモジナイザーで水1mL中にてさらに均質化する。サンプルに、ヘキサン:イソプロパノール(3:2)5mLを加え、1分間渦攪拌し、5分間超音波処理し、4℃で1500×gにて10分間遠心する。上層を回収し、下層は溶媒3mLで再抽出する。上層を回収し、最初のものと合わせ、N気流下に溶媒留去する。抽出物をクロロホルム3mLに溶かし、20μLを2連で取ってコレステロール分析に供する。溶媒を留去し、イソプロパノール100μLを加える。供給者の説明に従い、ランドクス(Randox)キットnCH201を用いてコレステロール測定を行う。コレステロール較正線を0.25から2mg/mLで用いる。
【0127】
ホモジネート40mgを用い、内部標準は用いずに、血漿について上記で説明の方法に従って、脂肪酸組成を測定する。結果は、各脂肪酸メチルエステルについての正規化した面積パーセントとして表す。
【0128】
ガングリオシド含有率は、抽出、分配および脂質精製後に脂質結合シアル酸(LBSA)としてのHPLCおよび分光測定の両方によって測定する。均質化した脳の一部(1.250g)を、クロロホルム:メタノール(C:M)1:1(体積比)19mLで抽出し、混合物を4℃で45分間攪拌し、4℃で1500×gにて10分間遠心する。上清を回収し、ペレットを、それぞれ18mLおよび12mLの溶媒混合物で再抽出する。その3つの上清を集め、溶媒混合物で50mLとし、20mLずつの2つの小分けサンプルを取り、−30℃で終夜温置する。温置後、サンプルを遠心し、上清を回収し、N気流下に乾燥させる。ジイソプロピルエーテル(DIPE)/1−ブタノール/水相分配の組み合わせ(ラディッシュらの報告(Ladisch and Gillard, 1985, A solvent partition method for microscale ganglioside purification, Anal. Biochem., 46: 220-231)に記載)と、それに続くC−18カートリッジによる固相抽出(ウィリアムスらの報告(Williams and McCluer, 1980, The use of Sep-PakTM C18 cartridges during the isolation of gangfiosides, J. Neurochem. 35: 266-269)の方法に変更を加えたものによる)によって、総脂質抽出物からガングリオシドを精製する。
【0129】
DIPE/1−ブタノール60:40(体積比)40mLを乾燥脂質抽出物に加える。サンプルを渦攪拌し、超音波処理して、脂質の微細懸濁液を得る。0.3%NaCl水溶液2mLを加え、管を2分間で15秒ずつ渦攪拌と超音波処理を交互に行い、遠心する。上の有機相(中性脂質およびリン脂質を含む)を、境界相を除去しないように注意しながら、パスツールピペットを用いて注意深く除去する。ガングリオシドを含む下層の水相を、最初の容量の有機溶媒で2回抽出する。容量が最初の容量の約半分に減るまで(ほぼ2mL)、30から45分間にわたり、37℃でN気流下に、サンプルを部分的に溶媒留去する。
【0130】
500mgC−18カートリッジを、24ポートライナーSPE真空多岐管に取り付け、メタノール5mL、C:M2:1(体積比)5mLおよびメタノール2.5mLの3回の連続ディッシュ(dish)で活性化させる。次に、カートリッジを0.3%NaCl水溶液:メタノール60:40(体積比)2.5mLで平衡とする。部分的に溶媒留去した下側の相の容量を測定し、水で1.2mLとし、メタノール0.8mLを加える。次に、それを遠心して不溶物を除去し、C−18カートリッジに2回乗せる。SPEカートリッジを蒸留水10mLで流して塩および水溶性汚染物を除去し、30秒間真空乾燥する。ガングリオシドをメタノール5mLおよびC:M2:1(体積比)5mLで溶離し、N気流下に乾燥させ、C:M 1:1(体積比)1mLに再度溶解させる。ガングリオシドを分析まで−30℃で保存する。総ガングリオシドを、LBSAとして測定する。少量サンプル50μLを10mLガラス製遠心管に入れ、N2下に乾燥させ、レゾルシノールアッセイ(Svennerholm. L., 1957, Quantitative estimation of sialic acid: A colorimetric resorcinol-hydrochloric acid method, Biochem. Biophys. Acta., 24: 604-611)によって測定する。
【0131】
レゾルシノール試薬1mLおよび水1mLを加える。管にキャップを施し、沸騰水浴で100℃にて15分間加熱する。加熱後、管を氷浴水で冷却する。酢酸ブチル:ブタノール85:15(体積比)2mLを加える。管を1分間激しく振盪し、750×gで10分間遠心する。上側の相を取り、分光光度計にて580nmで測定する。2から64 g/mLのNANAの標準溶液を同様にして処理し、それを用いて、サンプル中のシアル酸濃度を計算する。
【0132】
レゾルシノール試薬は次のように調製する。レゾルシノールの2%脱イオン水溶液10mL、0.1M硫酸銅0.25mL、濃塩酸80mLに水を加えて100mLとする。試薬は日光から保護して毎日調製する。
【0133】
精製脂質抽出物の残り150mcgを、HPLCによるガングリオシド分析に用いる。フェノメネックス(Phenomenex)からのルナ(Luna)−NHカラム、5μm、100Å、250×4.6mmを用い、ウォーターズからのデュアル吸光度検出器(Dual Absorbance Detector)を搭載したアライアンス(Alliance)2690装置でのHPLCによって、ガングリオシドを分離する。
【0134】
ガングリオシドを、各種容量比および張度でのアセトニトリル−リン酸緩衝液の溶媒系を用いて、室温で溶離する(文献(Gazzotti, Sonnino, Ghidoni, 1985, Normal-phase high-performance liquid chromatographic separation of non-derivatized ganglioside mixtures. J Chromatogr. 348:371-378)の方法に従って)。2つの移動相での勾配を用いる。
・溶媒A:アセトニトリル−5mMリン酸緩衝液、
・溶媒B:アセトニトリル−20mMリン酸緩衝液、pH5.6(1:1)。
【0135】
下記の勾配溶離プログラムを用いる。
【0136】
【表6】

【0137】
0から0.4mg/mLのGD3溶液を較正標準として用い、ウシ脳溶液を用いて、ガングリオシドの分類を確認する。
【0138】
網膜組成
網膜は、ウルトラツラックスで1分間にわたり、C:M1:1(体積比)3.5mLで均質化し、45分間渦攪拌し、遠心する。上清を回収し、ペレットを溶媒混合物2mLで2回再抽出する。3つの上清を集め、N下に乾燥させる。抽出物をクロロホルム1mLに溶かし、100μL小分けサンプルを取って、脂肪酸およびリン脂質の分析に供する。抽出液の残りを再度乾燥させ、脳サンプルの場合と同じ分配および精製の手順を行う。
【0139】
精製した抽出物をC:M1:1 1mLに溶かす。0.5mLをレゾルシノール法によって測定し、0.5mLをHPLCによるガングリオシド分析に用いる。
【0140】
脂肪酸組成を、血漿について上記で説明した方法に従って、100μLの小分けサンプルで測定する。結果は、各脂肪酸メチルエステルについての正規化した面積パーセントとして表す。
【0141】
網膜サンプルのリン脂質含有量は、各種容量比およびイオン強度でのアセトニトリル−リン酸緩衝液という溶媒系を用いるスフェリソルブ(Spherisorb)シリカカラム、5μm、150×4.6mmでのHPLCによって測定する。
【0142】
2つの移動相での勾配を用いる。
溶媒A:アセトニトリル.
溶媒B:アセトニトリル−5mMリン酸緩衝液、pH5(80:20)。
【0143】
下記の勾配溶離プログラムを、55℃でのカラム操作で用いる。
【0144】
【表7】

【0145】
100μL小分けサンプルのうちの20μLを、システム(ウォーターズからのデュアル吸光度検出器(Dual Absorbance Detector)を搭載したアリアンス2690)に注入する。検出は、201nmで行う。ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)およびスフィンゴミエリン(SM)の複数の化合物較正標準を、0.2から5mg/mLで用いる。ホスファチジルイノシトールは、汚染物としてPEを含んでいたことから、別個に注入する。同じ濃度範囲を用いる。
【0146】
脳および眼球の組織学的分析
脳の各半球を、横方向に切り取って、厚さ50mmの試料とする。予備分析後、中央ブロック(脳の大きさに従って4、5または6)を定量用に選択する。
【0147】
最小長さ5mmの視神経のサンプルを横方向に切り取り、緩衝ホルマリン中で3時間固定し、リン酸緩衝液(pH7.4)で4から6℃にて保存する。
【0148】
眼球を正面で切り取って3個の試料とし、ラベル表示し、パラフィンに包埋する。一連の切片は、後の染色用に全パラフィンブロック製とする。
【0149】
ミクロトームでの一連の切断および通常のスライドグラスおよび免疫組織化学的方法用の特殊なスライドグラス上に乗せた後、これらをヘマトキシリン−エオシン、過ヨウ素酸シフ(PAS)反応およびクリューバー−バレラ・ルクソール・ファスト・ブルー(Kluver-Barrera Luxol Fast Blue)の従来の染色法によって染色する。免疫組織化学的染色を、従来の染色法で用いたものと同じ一連の試料からの組織切片についても行う。下記のマーカーを用いる。
【0150】
モノクローナル抗体S100タンパク質Ab−1。S100は、カルモジュリンおよびトロポニンCなどのカルシウム結合タンパク質のファミリーに属する。S100タンパク質は、皮膚でのランゲルハンス細胞およびリンパ節の副皮質での指状突起細胞などの抗原提供細胞でも発現され、星状膠細胞を染色する。使用する免疫原は、精製ウシ脳S100タンパク質(動物種反応性:ヒト、ウシ、ラットおよびマウス)である。
【0151】
モノクローナル抗体抗神経核(NeuN)。NeuN(またはニューロン核)はほとんどのニューロン細胞種と反応する。発達的には、免疫反応性は最初に、ニューロンが有糸分裂後となって間もなく認められる。増殖帯では、染色は認められていない。免疫組織化学的染色は主としてニューロンの核に局在しており、細胞質では染色は相対的に軽い。動物種反応性:ヒト、マウス、ラット、ブタ、フェレット、ひよこおよびサンショウウオ。
【0152】
モノクローナル抗体bcl−2。bcl−2α腫瘍タンパク質の発現は、プログラム細胞死(アポトーシス)を阻害する。動物種反応性:ヒトおよびブタ。
【0153】
梁下束および隣接する白質からの他のものの画像30個をMTV−3アダプターを取り付けたオリンパスBH−2顕微鏡(20ワット)(オリンパス光学株式会社、東京、日本)に接続された白黒ソニーXC−ST500CEビデオカメラ(ソニー社、東京、日本)でキャプチャーする。パワー20×および60×の対物レンズ・オリンパスPLCN60X(60X/0.80)を用いることで、全体の倍率は600倍となった。画像処理は、ビジログ(Visilog)6.0ソフトウェア(Noesis S. A. Courteboeuf, France)を用いて行う。
【0154】
結果
中止
実験1:群Aからの仔ブタ1頭は誕生時に非常に小さく、残りの仔ブタに成長が追いつかない。群Cのブタ1頭は、登録から10日後に死亡している。群Cの別のブタ1頭は、実験終了後に確認された雌である。結果的に、29から30日での群Aにおけるnは4ではなく3であり、同動物齢での群Cのnは4ではなく2である。
【0155】
実験2:仔ブタ1頭が馴致期間中に死亡している。群Bの別の仔ブタ1頭が、登録から6日後に死亡している。群Aの2頭のブタおよび群Bにおける1頭は、誕生児に非常に小さく、残りの仔ブタのように成長しないことから、試験から除外している。
【0156】
結果的に、各時間点および群について仔ブタ7頭の完全試験目的が、29から30日での群A(n=6)を除く全ての群で満足されている。
【0157】
体重および飼料摂取
体重および飼料摂取の発達は3つの異なる飼料群で非常に類似している。実験期間にわたって、群間で体重発達に差はない。飼料摂取は、16日と28日の間の期間のみで、群AおよびBより群Cの方が有意に高い。それ以外の期間では、群間に差はない。摂取を累積飼料摂取として表すと、群間に差はない。同様に、体重g数/摂取100kcalとして計算される飼料効率の発達は、3群において同様である。異なる時間間隔を考慮する場合、または全試験期間にわたり、群間に差はない。
【0158】
血漿の脂肪酸組成
いずれの脂肪酸も、8から9日で減少する傾向があり、それ以後授乳29から30日まで経時的に増加した。これは、下痢および/または順応の問題発生のために試験の最初の1週間で調乳摂取低下が生じたためであると考えられる。長鎖多価不飽和脂肪酸に関しては、各時間点で群間に有意差はない。しかしながら、群Cでは、調乳の組成が似ている試験の終了後に、これら脂肪酸の濃度が最低であった。
【0159】
脳組成
脳におけるタンパク質、DNAおよびコレステロールの含有量は、タンパク質重量、細胞数(DNA)およびミエリン形成(コレステロール)の指数として測定される。いずれの時間点でも、群間に有意差はない。しかしながら、これらのデータから結論付けることができるいくつかの証拠がある。脳においてDNAの量は増えなかったが、タンパク質は増加傾向にあり、脳での細胞密度が試験期間中において仔ブタでは同様であること、および脳の成長の結果として細胞増殖が起こることが示された。コレステロールはいずれも組織1g当たりで増加しており、脳全体を考えると、これは、少なくとも実験計画で考慮した試験期間中においてミエリン形成が生じることを意味している。
【0160】
脂肪酸組成に関しては、いずれの時間点においても、脂肪酸濃度に群間で有意差はない。試験群においては経時的に若干の傾向があり、16:0および20:4n−6の低下およびジメチルアセタール、18:1n−9および18:2n−6の上昇がある。
【0161】
臓器当たりで示される総ガングリオシドおよび脂質結合シアル酸(LBSA)濃度には、経時的にも群間でも変化はなかったが、特に低濃度のガングリオシドについては高いばらつきが認められる。しかしながら、LBSAおよびガングリオシドの総含有量は、3つの群いずれにおいても経時的に増加した。従って、LBSAおよびガングリオシドは脳成長の関数として脳で上昇しており、組織1g当たりについては経時的に濃度上昇は起こらない。
【0162】
網膜組成
授乳群間で、網膜の脂肪酸組成に有意差はない。22:6n−3のパーセントが経時的に上昇した以外は、脂肪三パーセントの時間的経過に関しては、脳と同様の傾向が網膜でも認められる。この結果は、網膜発達におけるこの脂肪酸の重要な役割と一致するものである。
【0163】
網膜におけるLBSAの含有量、総ガングリオシドおよび主要ガングリオシドの種類に関して、各群内で、いかなる時点または時間の中でも、群間に有意差はない。リン脂質および主要な個々の種類、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)の総含有量についても同じことが当てはまる。有意差がないにも拘わらず、これらの重要な脂質が経時的に増加する傾向があり、群Bでは授乳1週間後に含有量が相対的に高いことが認められていることは、やはり注目すべきことである。
【0164】
脳の組織学
ニューロン遊走ならびに中枢神経系の発達および成熟を評価する。脳の肉眼的および顕微鏡的分析で、肉眼的病変(出血、虚血領域、奇形または腫瘍性病変)も疾患の徴候も示されなかった。
【0165】
通常の組織学的技術を用いて、梁下束および隣接する白質の特定の領域における総細胞数を定量する。神経芽細胞が上衣細胞のすぐ背後のいくつかの層を通過して移動および分化することから、この領域を選択している(図1.1および1.2参照)。梁下束の3つの異なる領域で核カウントを行う(図1.2および1.3を参照する)。
領域1:側脳室に隣接する遊走および増殖領域、
領域2:上衣細胞での神経芽細胞凝集を回避する領域1(図1.3参照)、
領域3:梁下束の隣の白質。
【0166】
領域1では、飼料群とは無関係に、授乳8から9日に核数にピークがある。このピークは主として、この時点で群Bにおいて核数が相対的に大きいためであるが(図2)、他の群との差は統計的有意差には達していなかった(群Cに対してp=0.108)。これは、側脳室の境界の隣にある染色された核の凝集のためにである可能性があり、これによって測定にばらつきが生じたものである。凝集核の領域が回避されると(領域2での測定)、小さいばらつきで同じパターンが得られることから、群Bでの核数は他の群の場合より大きく、群Aとは統計的に有意差がある。領域3では差は認められない。
【0167】
結論
脳におけるタンパク質、DNAおよびコレステロールの含有量については、いずれの時間点でも群間に有意差はない。経時的な脳タンパク質およびコレステロール含有量の増加は、試験期間中に起こった脳の成長およびミエリン形成の正常なプロセスを反映したものである。
【0168】
網膜の脂肪酸組成は脳で認められたものと同様の傾向に従っていて群間に有意差はなく、経時的に上昇した22:6n−3以外は脂肪酸パーセントの時間経過は同様であった。脂質結合シアル酸、ガングリオシドおよびリン脂質の総網膜含有量ならびに個々のガングリオシドおよびリン脂質について、いずれの時点でも、そして各群内の時点間でも有意差はない。有意差がないにも拘わらず、これら全ての脂質の含有量が群Bにおいて授乳8から9日で相対的に高いことが認められることは、指摘すべき重要な点である。実際、群A、BおよびC間で実験計画を分け、8から9日で一元配置ANOVAを行うと、群Bにおいて、総リン脂質および脂肪酸、ならびにホスファチジルエタノールアミンおよび20:4n−6および22:6n−3脂肪酸の含有量が相対的に高いことに関して、有意差が認められる。
【0169】
梁下束および隣接する白質の選択された領域、すなわち神経芽細胞遊走の領域における総細胞数の脳組織学的分析では、群Bにおいてより高い核数が検出される。この一時的効果は、ラクプロダンMFGM−10と相対的に高レベルのアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の両方を含む飼料Bを与えた動物での授乳8から9日(誕生後12から13日)での神経芽細胞遊走の割合が相対的に高いためである。
【0170】
上記の結論2および3に記載の結果は、神経および視覚の発達に対して飼料B(ラクプロダンMFGM−10と相対的に高レベルのアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の両方を含む)が効果を有する可能性を示唆している。やはりラクプロダンMFGM−10を含む群Cや同じレベルのアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸を含む群Aでは、これらの効果は認められないという事実は、アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸が少なくとも飼料Bで用いられたレベルである場合に限り、両方の成分(ラクプロダンMFGM−10とアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸)の相乗効果があることを示した。これは、神経遊走および神経突起成長における飼料B成分(ガングリオシド、リン脂質、n−アセチルノイラミン酸およびならびに高いアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸濃度(特に、ガングリオシドおよびドコサヘキサエン酸))の原因的役割を示唆している。
【0171】
実験2
第2の動物試験は、この試験で下記の飼養の成績効果を比較する以外は、実験1で用いたものと同様のプロトコールで行う。
・飼料A(群A):総調乳脂肪酸の重量基準で0.4%のアラキドン酸および0.2%のドコサヘキサエン酸ならびに授乳基準で6.4g/L調乳のレベルでの強化乳清タンパク質濃縮物を含む本発明の乳児用調乳、
・飼料B(群B):アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories, Columbus, Ohio, USA)から入手可能なシミラック(Similac;登録商標)アドバンス(Advance;登録商標)乳児用調乳(総脂肪酸の重量基準で0.4%のアラキドン酸、0.15%のドコサヘキサエン酸および従来の乳清タンパク質濃縮物)、
・飼料C(群C):ブリストル−マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb;タイ)から入手可能なエンファラク(Enfalac;商標名)1タイ乳児用調乳(総調乳脂肪酸の重量基準で0.65%のアラキドン酸および0.35%のドコサヘキサエン酸ならびに従来の乳清タンパク質濃縮物)、
・対照群投与ブタ乳。
【0172】
要約
試験からのデータは、ブタ乳を与えた新生仔ブタにおいて14から16日齢で有意な神経増殖を示している。
【0173】
これらのデータはさらに、低レベルの強化乳清タンパク質濃縮物(授乳基準で6.4g/L)を含む調乳は、相対的に高いレベルの強化乳清タンパク質濃縮物(授乳基準で7.1g/L)を用いる第1の試験(実験1)で示された神経芽細胞遊走加速を再現するには不十分であることも示している。
【0174】
実験計画
本試験は長期試験であり、実験飼料A、BまたはCを与える3つの仔ブタ群(表4参照)を含み、授乳7から8日および14から15日後の2回の屠殺を行う。ブタ乳栄養の仔ブタの別の群を試験に基準として含める。ブタ乳群における動物は動物齢を合わせることで、実験試料を与えた動物の屠殺時点が同時になるようにする。ブタ乳群からの動物は、試験開始時、14から16日齢後、23から24日齢後に屠殺する。
【0175】
家畜仔ブタ60頭(3から4日齢)を、認定された農場から供給される。ブタ乳基準群からの仔ブタ8頭を屠殺する。仔ブタ48頭を体重、同腹仔および性別でペアとし、3つの群に分ける(それぞれ、n=16、n=16およびn=16)。残りの仔ブタ4頭は、その3つの群に無作為に割り当てる(群Aに1頭、群Bに1頭、群Cに2頭)。
【0176】
仔ブタは、27℃で適応前処置した部屋で、ステンレス製の飼育ケージにて飼育する。動物には、栄養上の要件に従って、3日間にわたり、調整ブタ飼料を1日4回与える。3日間の馴致期間後、仔ブタには3種類の実験飼料のうちのいずれかを1日4回与える。動物に最初に実験飼料を与えた時点を、本試験における「時間ゼロ」と見なす。
【0177】
下記の表に、標準ブタ飼料ならびに飼料A、BおよびCの組成を示してある。
【0178】
【表8】

【0179】
【表9】

【0180】
いずれの飼料も一旦製造したら、直ちに使用するまたは不活性雰囲気の缶の中で4℃にて保存し、24時間以内に用いる。飼料は粉末形態であり、飼料A、BおよびCの場合には水で再生して12.85重量%とする。再生した液体飼料はケージの餌入れに注ぐ。残った液体を除去して測定し、餌入れを洗浄してから、次の飼料を投入する。
【0181】
各群について、8頭の仔ブタを、対照(飼料BおよびC)または実験調乳(飼料A)による給餌開始から7から8日および14から15日に屠殺する。
【0182】
結果
中止
各群からの4頭の仔ブタが死亡している。群Aにおける仔ブタのうちの1頭および群Bにおける仔ブタのうちの1頭が、馴致期間中に死亡している。群Bからの仔ブタ1頭が非常に小さく、残りの仔ブタのように成長しなかったことから、この仔ブタは除外している。
【0183】
結果的に、7から8日の時点では、群Aのnは7であり、群Bのnは8であり、群Cのnは8である。14から15日の時点では、群Aのnは6であり、群Bのnは4であり、群Cのnは6である。
【0184】
体重および飼料摂取
体重および飼料摂取の発達は3つの異なる飼料群で非常に類似している。実験期間にわたって、群間で体重発達に差はない。摂取を累積飼料摂取として表すと、群間に差はない。体重g数/摂取100kcalとして計算される飼料効率の発達は、7日と14日の間の期間のみで、群AおよびBと比較して群Cの方が高いが、有意差はない。0日と6日の間の期間については高い変動性が認められるが、群間に差はない。
【0185】
脳の組織学
通常の組織学的技術を用いて、梁下束および隣接する白質の特定の領域における総細胞数を定量する。
【0186】
梁下束に隣接する白質において、いかなる時間点でも群間に有意差はない(図3.2、図4.1および図4.3)。梁下束におけるH&E染色細胞数に、いかなる時間点でも群間に有意差はない(図3.1)。しかしながら、ブタ乳群において14から16日齢で、梁下束でのBrdUおよびKi67染色細胞の量が相対的に高い(図3.3および図4.2)。ブタ乳群と群Bの間の差は、BrdU陽性細胞に関して、有意差である。
【0187】
結論
特に下記の所見に基づくと、実験1および2からのデータからは、強化乳清タンパク質濃縮物、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸のある一定の組み合わせの間での相乗的関係が示唆される。
【0188】
実験1は、強化乳清タンパク質濃縮物(授乳基準で7.1g/L)、ドコサヘキサエン酸(0.15%)およびアラキドン酸(0.4%)を含む乳児用調乳(飼料B)は神経芽細胞遊走を加速することを示している。
【0189】
実験1は、強化乳清タンパク質濃縮物(授乳基準で7.1g/L)および相対的に低い濃度のドコサヘキサエン酸(0.1%)およびアラキドン酸(0.2%)を含む乳児用調乳(飼料C)は神経芽細胞遊走を加速しないことを示している。
【0190】
実験2は、ドコサヘキサエン酸(0.2%)およびアラキドン酸(0.4%)ならびに相対的に低いレベルの強化乳清タンパク質濃縮物(授乳基準で6.4g/L)を含む乳児用調乳(飼料A)は神経芽細胞遊走を加速しないことを示している。
【0191】
実験2はさらに、ドコサヘキサエン酸(0.15%)およびアラキドン酸(0.4%)を含むが、強化乳清タンパク質濃縮物を含まない乳児用調乳(飼料B)は神経芽細胞遊走を加速しないことを示している。
【0192】
従って、両方の実験の結果は、強化乳清タンパク質濃縮物、ドコサヘキサエン酸およびアラキドン酸の一定の組み合わせは、調乳中でのこれらの個々の濃度は本明細書で定義の閾値レベルを超えているとき、神経芽細胞 遊走を加速させることを示している。逆に、これらの実験は、これらの成分であるDHA/ARAおよび強化乳清タンパク質濃縮物が、単独で使用した場合に、調べたパラメータについては有効ではないことも示している。
【0193】
実施例
下記の実施例は、本発明の範囲に含まれる具体的な実施例を代表するものであり、そのそれぞれは例示のみを目的として提供されているものであり、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、これらの多くの変形形態が可能であることから、本発明の限定と解釈されるべきではない。例示されている量は、別段の断りがない限り、組成物の総重量に基づいた重量パーセントである。
【0194】
粉末乳児用調乳
下記のものは、乳児での調乳の使用方法を含めた本発明の粉末調乳実施形態である。各調乳における成分を、以下の表に挙げてある。
【0195】
【表10】

【0196】
例示のものはそれぞれ、少なくとも2つの別個のスラリーを作ることで、同様にして製造することができ、これらのスラリーはその後混合し、加熱処理し、標準化し、溶媒留去し、乾燥し、包装する。
【0197】
最初に、オイル混合槽で、窒素条件下に、高オレイン酸ヒマワリ油、大豆油およびやし油を合わせ、次にパルミチン酸アスコルビル、βカロテン、ビタミンADEKおよび混合トコフェロールを加えることで、オイルスラリーを調製する。槽を20分間攪拌し、QA分析を行う。QAクリアランス後であって加工直前に、ARAオイルおよびDHAオイルを、オイル混合槽に加える。得られたオイルスラリーを、他方の調製スラリーと混合するまで、室温(<30℃)で中程度の攪拌下に保持する。
【0198】
連続攪拌プロセスで35から45℃にて、約40%の流体スキムミルク中でオイル混合スラリーを合わせ、次に強化乳清タンパク質濃縮物を加えることで、スキムミルク−オイルスラリーを調製する。このオイル−タンパク質スラリーを加熱して65から70℃とし、15.4から19.0MPa(154から190バール)/2.5から4.5MPa(25から45バール)で2段階で均質化し、冷却して3から6℃とし、プロセスサイロ中で保存する。
【0199】
乳糖およびスキムミルク粉末を60から75℃で約60%の流体スキムミルクに溶かすことで、スキムミルク−炭水化物スラリーを調製する。このスラリーを約2分間にわたって可溶化槽中で攪拌下に保持してから、プレート熱交にポンプ送りし、そこで冷却して3から6℃とし、プロセスサイロに運び、そこでスキムミルク−オイルスラリーと混合する。
【0200】
塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよびクエン酸カリウムを室温で水に溶かすことでミネラルスラリー1を調製し、最低5分間攪拌下に保持する。ミネラルスラリー1をプロセスサイロに加える。
【0201】
リン酸三カルシウムおよび炭酸カルシウムを40から60℃で水に溶かすことでミネラルスラリー2を調製し、最低5分間攪拌下に保持する。ミネラルスラリー1をプロセスサイロに加える。ミネラルスラリー2をプロセスサイロに加える。
【0202】
オリゴ果糖を40から60℃で水に溶かすことでオリゴ果糖スラリーを調製し、最低5分間攪拌下に保持する。オリゴ果糖スラリーをプロセスサイロに加える。
【0203】
バッチをプロセスサイロで最低45分間攪拌してから、サンプルを分析試験用に採取する。品質管理試験の分析結果に基づいて、適切な標準化プロセスを行う。
【0204】
クエン酸カリウムおよびアスコルビン酸を室温で水に溶かすことでビタミンCスラリーを調製し、最低5分間攪拌下に保持する。ビタミンCスラリーをプロセスサイロに加える。
【0205】
クエン酸カリウム、水溶性ビタミンプレミックスおよびイノシトールを40から60℃で水に溶かすことで水溶性ビタミン−イノシトールスラリーを調製し、最低5分間攪拌下に保持する。水溶性ビタミン−イノシトールスラリーをプロセスサイロに加える。
【0206】
クエン酸カリウムおよび硫酸第一鉄を室温で水に溶かすことで硫酸第一鉄スラリーを調製し、最低5分間攪拌下に保持する。
【0207】
ヌクレオチド−コリンプレミックスを室温で水に溶かすことでヌクレオチド−コリンスラリーを調製し、最低5分間攪拌下に保持する。ヌクレオチド−コリンスラリーをプロセスサイロに加える。
【0208】
最終バッチをプロセスサイロ中にて最低60分間攪拌してから、分析試験用にサンプルを採取する。品質管理試験の分析結果に基づいて、適切なビタミンCおよびpH補正を実施することが可能であると考えられる。最終バッチを3から6℃で中程度の攪拌下に保持する。
【0209】
7日以内の期間待機した後、得られた混合物を90から96℃まで前加熱し、110から130℃で3秒間加熱する。加熱した混合物をフラッシュ冷却器に通すことで、温度を93から97℃に下げ、エバポレータに通すことで所望の固体を得る。次に、生成物を加熱して75から78℃とし、スプレー乾燥塔にポンプ送りする。得られた粉末生成物を回収し、バルク粉末サイロ中で保存し、品質試験を行う。最終生成物を好適な容器に入れる。プロセス中および最終生成物段階の両方での微生物試験および分析試験用にサンプルを採取する。
【0210】
別法
例示のものはそれぞれ、少なくとも2つの別個のスラリーを作ることで、同様にして製造することができ、これらのスラリーは、その後混合し、加熱処理し、標準化し、乾燥し、乾燥混合し、包装する。
【0211】
最初に、約80%のスキムミルク粉末を脱塩水に60から85℃で溶かし、次にクエン酸カリウムおよび水酸化カリウムを加えることで、スキムミルク−ミネラルスラリーを調製する。得られた混合物のpHを、水酸化カリウムまたはクエン酸を用いて7.7から8.7に調節する。
【0212】
残りのスキムミルク粉末および塩化マグネシウムを、前記の混合物に加える。得られた混合物のpHを、水酸化カリウムまたはクエン酸を用いて6.7から7.2に調節する。
【0213】
別の槽中で、塩化コリンおよびイノシトールを脱塩水に室温で溶かすことで、新たなスラリーを調製する。得られたスラリーをスキムミルク−ミネラルスラリーと合わせ、後に別の成分と混合するまで、1時間以内の期間にわたり、60から65℃で中等度の攪拌下に保持する。
【0214】
別の槽中、タウリンを脱塩水に70℃で溶かすことで、新たなスラリーを調製する。得られたスラリーをスキムミルク−ミネラルスラリーと合わせ、後に別の成分と混合するまで、1時間以内の期間にわたり、60から65℃で中等度の攪拌下に保持する。
【0215】
強化乳清タンパク質濃縮物をスキムミルク−ミネラルスラリーに加え、次に乳糖およびオリゴ果糖を加える。スラリーを最低30分間プロセスサイロ中で攪拌してから、分析試験用にサンプルを採取する。得られた混合物のpHを水酸化カリウムまたはクエン酸を用いて6.5から7.1に調節する。
【0216】
オイルプロセス槽で、窒素条件下に、高オレイン酸ヒマワリ油、大豆油およびやし油を合わせ、次にビタミンADEK、βカロテン、混合トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ARAオイルおよびDHAオイルを加えることで、オイルスラリーを調製する。得られたオイルスラリーを、後にタンパク質−炭水化物−ミネラルスラリーと混合するまで6時間以内にて、室温で中程度の攪拌下に保持する。
【0217】
30分以上で6時間以内の期間にわたって待機した後、タンパク質−炭水化物−ミネラルスラリーを70から80℃で脱気し、さらに加熱して84から86℃とする。プロセスのこの時点で、オイルスラリーを50から80℃でオンラインにて注入する。最終混合物を冷却して68から72℃とし、二段ホモジナイザーによって、第1段階では14.5から15.5MPa(145から155バール)、第2段階では3.0から4.0MPa(30から40バール)で乳化させる。加熱した混合物をプレート冷却器に通すことで、温度を3から5℃まで下げ、プロセスサイロで保存する。
【0218】
下記の成分を処理した混合物に加えることで、ミネラル溶液およびアスコルビン酸溶液を別個に調製する。ミネラル溶液は、クエン酸、硫酸マンガン、セレン酸ナトリウムおよび硫酸亜鉛という成分を十分な量の脱塩水に攪拌下で加えることで調製する。アスコルビン酸溶液は、成分を溶解させるだけの量の脱塩水にアスコルビン酸を加えることで調製する。処理した混合物を48時間以内で、3から5℃で中等度の攪拌下に保持する。分析試験用にサンプルを採取する。
【0219】
冷却した混合物を69から73℃で加熱し、6.0から7.0/3.0から4.0MPa(60から70/30から40バール)で均質化し、スプレー乾燥塔に送る。その基本粉末生成物を回収し、バルク粉末容器中で保存する。微生物試験および分析試験用にサンプルを採取する。
【0220】
相当する分析試験および微生物試験が完了した後、基本粉末生成物を、残りの成分との乾燥混合に供する。最終粉末生成物を得るのに必要な残りの成分の量を決定し、自動重量システムに入力する。そのシステムは、乾燥混合プレミックスの全ての成分を秤量する(乳糖、炭酸カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、水溶液プレミックス、ヌクレオチドシチジン5−1リン酸、ヌクレオチドウリジン5−1リン酸二ナトリウム、ヌクレオチドグアノシン5−1リン酸二ナトリウム、ヌクレオチドアデノシン5−1リン酸、硫酸銅および第三リン酸カルシウム)。基本粉末生成物および乾燥混合プレミックスを混合機に運搬する。混合物を、20分以内の期間で攪拌下に保持する。
【0221】
混合が完了した後、最終生成物を包装機に運搬し、好適な容器に入れる。微生物試験および分析試験用にサンプルを採取する。
【0222】
例示の調乳(実施例1から4)は、本発明の粉末調乳実施形態の例であるが、これらに限定されるものではない。各調乳は、使用前に水で再生して約19から約24kcal/液量オンスの範囲のカロリー密度としてから、誕生から最初の2ヶ月間を含む誕生から最初の4ヶ月間にわたり、唯一の栄養源として乳児に与える。それらの調乳は、乳児における神経遊走、脳の発達および認知発達を加速する上で役立つ。
【0223】
液体乳児用調乳
実施例1から4を従来の手段によって変えることで、本発明の即時投与液体調乳実施形態(実施例5から8)を形成する。実施例5から8の成分は、それぞれ実施例1から4で列記した成分リストに相当する。
【0224】
例示の調乳(実施例5から8)は、本発明の液体調乳実施形態の例であるが、これらに限定されるものではない。各調乳は、約19から約24kcal/液量オンスの範囲のカロリー密度に調節する。その最終調製された調乳を、誕生から最初の2ヶ月間を含む誕生から最初の4ヶ月間にわたり、唯一の栄養源として乳児に与える。それらの調乳は、乳児における神経遊走、脳の発達および認知発達を加速する上で役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物、
(B)総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸、および
(C)総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%のアラキドン酸
を含む乳児用調乳。
【請求項2】
前記調乳が、少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、少なくとも約150mg/Lのリン脂質および少なくとも約70mg/Lの総シアル酸を含み、前記シアル酸の少なくとも約2.5%が脂質結合シアル酸としてのものである、請求項1に記載の乳児用製剤。
【請求項3】
ガングリオシド、リン脂質およびシアル酸の前記組み合わせの約50重量%から100重量%が強化乳清タンパク質濃縮物からのものである、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項4】
前記脂質結合シアル酸が、前記総シアル酸の約2.7重量%から約5重量%を占める、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項5】
授乳基準で、(A)約7mg/Lから約50mg/Lのガングリオシド、(B)約200mg/Lから約600mg/Lのリン脂質および(C)約90mg/Lから約250mg/Lのシアル酸を含む、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項6】
総脂肪酸の重量基準で約0.4%から約2.0%のアラキドン酸および約0.15%から約1.0%のドコサヘキサエン酸を含む、請求項1に記載の乳児用調乳。
【請求項7】
前記総リン脂質が少なくとも20重量%のスフィンゴミエリンを含む、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項8】
前記リン脂質が、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリンを含む、請求項7に記載の乳児用調乳。
【請求項9】
前記調乳が、授乳基準で約0.5重量%未満の遊離グリコマクロペプチドを含む、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項10】
前記乳児用調乳が、大豆リン脂質、卵リン脂質およびこれらの組み合わせを実質的に含まない、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項11】
前記調乳が約0.2重量%未満の乳脂を含む、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項12】
前記乳児用調乳が粉末である、請求項1に記載の乳児用調乳。
【請求項13】
前記乳児用調乳が即時授乳用液体である、請求項1に記載の乳児用調乳。
【請求項14】
授乳基準で、少なくとも約190mg/Lの総シアル酸を含み、該シアル酸の少なくとも約2.5重量%が脂質結合シアル酸としてのものである、請求項2に記載の乳児用調乳。
【請求項15】
(A)
(i)授乳基準で少なくとも約6.5g/Lの強化乳清タンパク質濃縮物、
(ii)総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.13%のドコサヘキサエン酸、および
(iii)前記総脂肪酸の重量基準で少なくとも約0.25%のアラキドン酸
を含む乳児用調乳を製造する段階、
(B)生まれてから最初の2ヶ月の間、乳児に前記調乳を投与するまたは前記調乳を投与するよう介護者に指示する段階
を有する乳児での脳の発達を加速する方法。
【請求項16】
前記乳児用調乳が、授乳基準で、
(A)少なくとも約5mg/Lのガングリオシド、
(B)少なくとも約150mg/Lのリン脂質、および
(C)少なくとも約70mg/Lの総シアル酸を含み、前記シアル酸の少なくとも約2.5%が脂質結合シアル酸としてのものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記調乳を、誕生から最初の4ヶ月の間投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ガングリオシド、リン脂質およびシアル酸の前記組み合わせの約50重量%から100重量%が前記強化乳清タンパク質濃縮物からのものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質結合シアル酸が、前記総シアル酸の約2.7重量%から約5重量%を占める、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記乳児用調乳が、授乳基準で、(A)約7mg/Lから約50mg/Lのガングリオシド、(B)約200mg/Lから約600mg/Lのリン脂質および(C)約90mg/Lから約250mg/Lのシアル酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記調乳が総脂肪酸の重量基準で、約0.4%から約2.0%のアラキドン酸および約0.15%から約1.0%のドコサヘキサエン酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記総リン脂質が少なくとも20重量%のスフィンゴミエリンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記リン脂質が、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記調乳が、約0.2重量%未満の乳脂を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記調乳が、約0.5重量%未満の遊離グリコマクロペプチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記乳児用調乳が、大豆リン脂質および卵リン脂質を実質的に含まない、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記乳児用調乳が、授乳基準で、少なくとも約190mg/Lの総シアル酸を含み、該シアル酸の少なくとも約2.5重量%が脂質結合シアル酸としてのものである、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
生まれてから最初の4ヶ月の間、乳児に請求項1に記載の乳児用調乳を唯一の栄養源として投与するまたは投与するよう介護者に指示する段階を有する、乳児での神経遊走を加速させる方法。
【請求項29】
生まれてから最初の4ヶ月の間、乳児に請求項1に記載の乳児用調乳を唯一の栄養源として投与するまたは投与するよう介護者に指示する段階を有する、乳児での視覚発達を加速させる方法。
【請求項30】
生まれてから最初の4ヶ月の間、乳児に請求項1に記載の乳児用調乳を唯一の栄養源として投与するまたは投与するよう介護者に指示する段階を有する、乳児での認知発達を加速させる方法。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図1.3】
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【図2】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図3.3】
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【図4.1】
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【図4.2】
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【図4.3】
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【公表番号】特表2009−542227(P2009−542227A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518587(P2009−518587)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072541
【国際公開番号】WO2008/005869
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】