説明

早期設置型仮設住宅

【課題】簡素な構造で、強度や耐久性を向上させることができ、部品点数を増やすことなく、災害などの緊急必要時に、短時間で容易に組立てて、直ちに使用することができ、組立作業性、緊急対応性に優れ、コンパクトでありながら十分な生活空間を確保することができ、中長期間使用しても快適に過ごすことができる機能性に優れた早期設置型仮設住宅。
【解決手段】下部構造体と上部壁部と突出構造体と天井部で形成される居住部と、居住部の外方に突出して着脱自在に連設され移動時に分解されて下部構造体の中空部に収容される増設部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や火災等の災害発生時における被災者等の仮設住宅、自衛隊員やボランティア等の宿泊施設、救護施設、会議室等に好適な早期設置型仮設住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易住宅として、軽量鉄骨で骨組みを組立て、各種合板で壁を形成する形式の仮設住宅等がある。このような仮設住宅は、現場で一から組立てなければならず、10人近い大工によっても15〜20日の工期を要し、数万戸の仮設住宅を建設するには、メーカーの専門指導員または大勢の熟練した大工が何カ月もかかって組立てる必要がある。また、内装工事には熟練した大工を必要とし、多数の被災者が居住できる集合型の仮設住宅を組立てるには5トンクレーン等の大型建設機械を多数必要とし、多大な労力を費やしているという問題点があった。
さらに、従来の簡易住宅は、プラスターボードや合板等で隣家と区切られているだけなので、隣家の生活音が筒抜けとなり、防音性に欠け、プライバシーが守れず、精神的な苦痛を受け易く、居住性に欠けるという問題点があった。
このような問題点を解決するために、本願出願人は鋭意研究を重ね、組立式の簡易住宅を完成させた。
本願出願人が出願した(特許文献1)には、「床面部と下部壁背面部と下部壁側面部とを有する下部壁部と、床面部の前端部に連結され前部側に膨出状に突出した突出正面部と、下部壁背面部の上端部に連結された背面部と、各々の下部壁側面部の上端部に連結された側面部と、突出正面部及び背面部並びに側面部の上部に覆設された天井面部と、床面部と突出正面部及び下部壁背面部と背面部並びに下部壁側面部と側面部を回動自在又は脱着自在に連結する折畳み連結部を備えた簡易住宅」が開示されている。
また、同じく(特許文献2)には、「上面と一方の側面に開口を形成し、三方の側面と床面を備えた第1の箱体と、第1の箱体の開口を形成する一方の側面に対向する開口を形成し、上面と三方の側面と床面を備えて配置される第2の箱体と、第1の箱体の三方の側面の上部にそれぞれ配設される側部と、これらの側部上面の開口に覆設される屋根部とを有し、第1の箱体およびの第2の箱体のそれぞれの床面は枢軸部を介して連結され、第2の箱体は、枢軸部を基軸に第1の箱体の一方の側面に形成された開口から床面側に横倒可能に形成されることを特徴とする組立式簡易住宅」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−283405号公報
【特許文献2】特開2008−184801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)(特許文献1)及び(特許文献2)は、不使用時に部分的に分解して、コンパクトに折畳み、生活に必要な設備を収納して搬送することができ、移設が容易で、輸送効率性、保管性に優れると共に、設置場所を選ばず、狭い敷地に並設することができ、施工性に優れ、再使用することができ、量産性、省資源性に優れるものであった。
(2)しかし、(特許文献1)のように蝶番を多用するものは、構造が複雑で、接合強度や剛性が不足し易く、側面部を立てただけでは十分な固定ができず、不安定で、組立作業性、耐久性に欠けるという課題を有していた。
特に、左右の側面部を蝶番により交互に折り畳む構造の場合、左右の下部壁側面部の高さが異なるため、天井面部を直接、載置することができず、左右の下部壁側面部にそれぞれ天井係合部を設ける必要があり、余計な出っ張りが搬送時の邪魔になり易く、取扱い性に欠けるという課題を有していた。
(3)また、(特許文献2)のように分割した側部同士を柱材で連結するものは、部品点数が多く、組立及び分解の作業が煩雑で、施工性に欠けるという課題を有していた。
(4)さらに、(特許文献1)及び(特許文献2)は、いずれも生活スペースが狭く、中長期間の使用には不向きであるという課題を有していた。特に、冬期は、居住者の身体から発散する汗だけでも結露が発生することがあり、快適性に欠けるという課題を有していた。
(5)以上のようなことから、構造及び組立方式の簡素化、居住スペースの拡大、強度及び耐久性の向上などが強く要望されていた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、簡素な構造で、強度や耐久性を向上させることができ、部品点数を増やすことなく、災害などの緊急必要時に、短時間で容易に組立てて、直ちに使用することができ、組立作業性、緊急対応性に優れ、コンパクトでありながら十分な生活空間を確保することができ、中長期間使用しても快適に過ごすことができる機能性に優れた早期設置型仮設住宅の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の早期設置型仮設住宅は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の早期設置型仮設住宅は、床部と前記床部の三方に立設された下部壁部とを有し側面開口部と上面開口部が形成された下部構造体と、前記下部構造体の各々の前記下部壁部の上端部に回動自在又は着脱自在に連結される上部壁部と、前記下部構造体の前記床部の前記側面開口部側の端部に回動自在に連結された延設床部と前記延設床部の前端部に立設された玄関壁部と前記玄関壁部の両側部で前記延設床部に立設された延設壁部と前記玄関壁部及び前記延設壁部の上部に覆設された延設屋根部とを有し起立時に前記下部構造体の前記側面開口部と対向する連通開口部が形成された突出構造体と、前記上部壁部と前記突出構造体で囲まれる天井開口部に着脱自在に覆設される天井部と、を有し、移動時に前記下部構造体の中空部に前記上部壁部及び前記突出構造体を収容し、前記下部構造体の前記上部開口部に前記天井部で蓋をして搬送可能な早期設置型仮設住宅であって、前記下部構造体と前記上部壁部と前記突出構造体と前記天井部で形成される居住部と、前記居住部の外方に突出して着脱自在に連設され移動時に分解されて前記下部構造体の前記中空部に収容される増設部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)下部構造体と上部壁部と突出構造体と天井部で形成される居住部と、居住部の外方に突出して着脱自在に連設される増設部を有するので、増設部をトイレや物置などの収納スペースとして多目的に利用することにより、居住部のスペースを有効に利用して、十分な生活空間を確保することができ、中長期間使用しても快適に過ごすことができ、機能性に優れる。
(2)増設部が、居住部の外方に突出して着脱自在に連設されるので、共用トイレ等の設置等で不要な時や十分な設置スペースが確保できない時には、居住部に影響を与えることなく、簡単に取り除くことができ、汎用性、設置自在性に優れる。
(3)増設部が、移動時に分解されて下部構造体の中空部に収容されるので、搬送時のコンパクト性に優れると共に、設置時に、別途、資材等を調達することなく、その場で容易に組立てて増設することができ、施工性に優れる。
【0007】
ここで、下部構造体、上部壁部、突出構造体、天井部、増設部の各部は、木材、アルミニウム、鋼材、繊維強化プラスチック(FRP)、不燃性の熱可塑性プラスチック(FRTP)などで形成することができる。
下部構造体の下部壁部、上部壁部、突出構造体の玄関壁部や延設壁部、増設部の壁面は、内壁材と外壁材の間にウレタンフォーム等の発泡樹脂、グラスウール,ロックウール,珪酸アルミナウール等の断熱材、遮音材などを挟んだ構造が好適に用いられる。これにより、強度及び断熱性を高めると共に居住性を高めることができる。また、夏期や冬期の冷暖房効果を高め、省エネルギー性に優れると共に、防音性を高めることができ、プライバシーの保護を向上できる。
外壁材や内壁材をFRPやFRTPで形成した場合、軽量かつ強固で耐久性に優れ、輸送時の取扱いが容易であると共に、仮に破損した場合も補修が容易である。清掃作業も簡便で、また清掃時や輸送・設置時に傷等が付き難く、繰り返し利用することができ、再利用性を向上させることができ、省資源性に優れる。
【0008】
下部構造体の下部壁部と、上部壁部とは、蝶番等の回動自在の継ぎ手で回動自在に連結することや、ダボ継ぎ手や凹状部と凸状部による挟み込み構造等で着脱自在に連結することができる。蝶番等を用いれば組立て及び折畳みが容易になり、組立て作業性に優れ、ダボ継ぎ手や挟み込み構造等を用いれば構造がさらに簡単になり、量産性に優れる。特に、居住部を直方体状に形成する場合、長手方向と平行に配置される左右一対の上部壁部は、面積が大きくなり、質量も増加するので、構造が簡単で固定安定性に優れるダボ継ぎ手で連結することが好ましい。この場合、分解時に、下部構造体の下部壁部と、上部壁部を完全に分離することができるので、左右の下部壁部の高さを揃えることができ、直接、天井部を覆設することが可能で、別途、天井係合部を設ける必要がなく、量産性、取扱い性に優れる。
また、短手方向に配置される後部(背面部)の上部壁部は軽量なので、組立て及び折畳みが容易な蝶番で連結してもよい。
【0009】
三方の上部壁部や突出構造体には、適宜、窓を配設することができる。窓を複数配設した場合、様々な方向から吹く風を居住部の内部に取り込んで風通しを良くすることができ、湿気を防ぎ、乾燥性を高めて、カビの発生を防ぐことができる。また、窓を大きくすることや、1つの上部壁部に複数の窓を設けることにより、開放感を得ることができ、中長期の利用性に優れる。また、大きな窓は、緊急時の非常口としても利用でき、安全性を高めることができるほか、エアコンを取り付けることにより、室内の環境を快適に保つと共に、居住スペースを有効利用することができる。尚、1つの上部壁部に2つの窓を設ける場合、外開き窓を左右対称に配置することにより、風が通り易くなり、換気を行うことができる。また、左右の上部壁部の内、いずれか一方のみに窓を設けた場合、隣接する早期設置型仮設住宅の間でプライバシーを保護することができるので、多数の早期設置型仮設住宅を並設することができ、設置スペースを有効利用することができる。
【0010】
突出構造体の玄関壁部には玄関扉が配設される。また、突出構造体の内部には、予め流し台、シャワー室、電気温水器などの設備を備え付けることができ、組立工数を低減できると共に、組立後に直ちに利用することができ、機能性に優れる。給水設備としては、流し台の蛇口やシャワー設備等へ接続された給水管の途中に小型の給水ポンプを配設し、外部の貯水タンクや水道等から給水するものが好適に用いられる。なお、給水管や給水ポンプは流し台の下側空間や突出構造体の延設床部の下面等に沿って配設される。また、排水設備としては、流し台やシャワー室の排水口等に接続された排水管を用いる。
給電設備としては、太陽電池により発電する太陽光発電部や外部の商用電源等の電気配線から電力を供給するための受電部を設けることが好ましい。商用電源等が使用できない間は、室内の照明、換気扇、給水ポンプ、電気温水器、エアコン、その他の電化製品に必要な電力を昼間の内に太陽光発電部で発電して供給すると共に、余剰電力を蓄電池に蓄えて夜間の使用に備えることができる。尚、太陽電池パネルは天井部の上面に敷設することができる。商用電源が復旧したときは受電部から電力が供給されるが、太陽光発電部を併用することにより、電力不足に備えることができる。
尚、居住部の内壁部には、予め蓄電池、電線、コンセント或いはスイッチ等を有する電源部が配設されており、電源部には太陽光発電部や受電部から電力が供給される。
【0011】
増設部の形状や大きさは、下部構造体の中空部に、突出構造体と共に収容可能な範囲で、適宜、選択することができる。また、増設部は、適宜の形状、大きさ、部材に分解することができるが、なるべく組立状態に近い状態に分解することにより、部品点数の増加を防ぎ、分解や組立の工数を低減することができ、施工性に優れる。尚、増設部はボルトなどの螺子止めにより組立てや取付けを行うものが好ましい。組立、分解、着脱の作業を繰り返し行うことができると共に、固定安定性に優れるためである。
増設部は様々な用途に用いることができるが、トイレを設置することが好ましい。トイレを増設部に設けることにより、居住部の空間を有効に利用することができ、快適性に優れるためである。尚、トイレに設置する便器はポータブル型でもよいし、据え置き型にして地面に埋設等したタンクに直接、汚物を排出するようにしてもよい。
また、増設部を物置として使用することにより、居住部の収納スペースを減らして生活空間を有効利用することができる。
尚、増設部にはトイレと物置を並設することもできるし、共同トイレが整備され、戸別にトイレを備える必要がなくなった後は、大容量の物置として使用することにより、生活空間の拡大を図ることもできる。
【0012】
居住部には、その他の生活に必要な設備として、調理台、コンロ、テーブル、ベッド、収納部などを設置することができるが、これらも予め下部構造体の中空部に収容して搬送できることが好ましい。特に、テーブルやベッドなどは、組立式や折り畳み式とすることにより、搬送時や不使用時に収納スペースをとることがなく、使用時には配置を選択することができ、設置自在性に優れる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記増設部が、前記突出構造体に連設される構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)増設部が、突出構造体に連設されるので、下部構造体や上部壁部には、増設部を連設するための開口を設けたり、加工を施したりする必要がなく、耐久性、量産性に優れると共に、分解して移動する際に、突出構造体、増設部、その他の設備などを下部構造体及び天井部で確実に覆って保護することができ、搬送性に優れる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記突出構造体が、前記玄関壁部に形成された開口部を有し、前記増設部が、前記開口部を介して前記突出構造体と連通するように前記玄関壁部の前方に突出して配設される構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)突出構造体が、玄関壁部に形成された開口部を有し、増設部が、開口部を介して突出構造体と連通するように玄関壁部の前方に突出して配設されるので、増設部が居住部の側方に突出することがなく、玄関壁部前方のスペースを有効に利用することができ、省スペース性、設置自在性に優れる。
(2)増設部が、玄関壁部に形成された開口部を介して突出構造体と連通していることにより、居住部から開口部を通って増設部に出入りすることができるので、増設部を利用する際に、居住部の外(屋外)に出る必要がなく、使用性に優れる。
【0015】
ここで、増設部は、運搬時には、反転させて突出構造体内に収納することができる。このとき、組立用工具、生活備品等を増設部の内部に収納することができ、増設部全体が収納庫としての役割を果たすので、収納の効率性、搬送性に優れる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記突出構造体の前記玄関壁部に面して前記突出構造体の前記延設床部に回動自在又は着脱自在に連結され前記増設部と並設されるバルコニー部を有する構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)突出構造体の玄関壁部に面して突出構造体の延設床部に回動自在又は着脱自在に連結され増設部と並設されるバルコニー部を有することにより、増設部のみが居住部から突出することがなく、玄関壁部前方のスペースに増設部及びバルコニー部を配置することができ、設置スペースの有効利用性に優れる。
(2)バルコニー部を有することによって住宅としてのイメージを与え、玄関ポーチとしての役割を果たすことができる。
ここで、突出構造体と増設部の床部やバルコニー部と増設部の床部は、必要に応じて、角材やC型鋼などの連結補強部で連結してもよい。これにより、突出構造体やバルコニー部と増設部を一体化することができ、増設部の床部の剛性を高めて、耐久性を向上させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記上部壁部と前記突出構造体の前記玄関壁部及び前記延設壁部の少なくともいずれか1以上に窓枠が取り付けられる窓枠用開口部が形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)上部壁部と突出構造体の玄関壁部及び延設壁部の少なくともいずれか1以上に窓枠が取り付けられる窓枠用開口部が形成されていることにより、組立時に下部構造体の下部壁部の上端部に上部壁部を立設した後や突出構造体を起立させた後に、窓枠用開口部に容易に窓枠を取り付けることができ、組立作業性に優れる。
(2)上部壁部や突出構造体の玄関壁部及び延設壁部に窓枠用開口部のみが形成されており、窓枠や窓が取り付けられていないので、分解時(折り畳み時)や組立時に、突出構造体を回動させたり、上部壁部を持ち運んだり、積み重ねたりする際に、窓ガラスが割れるおそれがなく、梱包作業を省略することができ、分解時及び組立時の作業性、安全性に優れる。
(3)上部壁部や突出構造体の玄関壁部及び延設壁部に窓枠用開口部のみが形成されており、上部壁部や突出構造体の表面に窓枠や窓などの突起がないので、突出構造体を下部構造体の中空部の中に折畳み、下部壁部から取り外した上部壁部を下部構造体の中空部の中に効率的に積み重ねて収容することができ、搬送時に、収容した部材同士が接触する等して傷付いたり、窓ガラスが割れたりするおそれがなく、安全性、搬送性に優れる。
【0018】
ここで、窓枠用開口部の形状、大きさ、数、配置などは、適宜、選択することができる。窓枠用開口部の外周には、窓枠を螺子止めなどによって固定するための窓枠固定部を設けることが好ましい。窓枠の取付け、取外しを繰返し行うことができ、窓枠固定の確実性、安定性に優れるためである。
尚、全ての窓枠を後付けにする必要はなく、収納時や組立時に破損する可能性の低い窓枠は、取付けたままでもよい。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記下部構造体の前記下部壁部の上端側に開口して形設された雌螺子部と、前記雌螺子部の位置に対応して前記天井部に穿設された貫通孔と、前記雌螺子部の位置に対応して前記下部構造体の前記下部壁部の下端側に形設された雄螺子挿通部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)下部構造体の下部壁部の上端側に開口して形設された雌螺子部と、雌螺子部の位置に対応して天井部に穿設された貫通孔と、雌螺子部の位置に対応して下部構造体の下部壁部の下端側に形設された雄螺子挿通部と、を有することにより、折り畳んだ複数の早期設置型仮設住宅をトラックなどの荷台に積載して搬送する際に、上方の下部構造体の雄螺子挿通部から挿通した雄螺子を、下方の下部構造体の上部開口部に覆設した天井部の貫通孔を通して、下方の下部構造体の雌螺子部に螺合することができるので、上下の早期設置型仮設住宅同士を確実に連結して固定し、荷崩れなどを防止することができ、搬送時の安全性に優れる。
【0020】
ここで、雌螺子部としては、下部壁部の上端側にナットを埋め込んだものが好適に用いられる。また、雄螺子挿通部としては、雄螺子を挿通することができればよいが、金属製の板材などに挿通孔を形成したものが好適に用いられる。一組の雌螺子部,貫通孔,雄螺子挿通部は、折り畳んだ状態の複数の早期設置型仮設住宅を積み上げた際に、鉛直方向に一直線状に並ぶように配置されていればよく、数や配置間隔などは適宜、選択することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記下部構造体の前記下部壁部の上端部と前記上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有し、前記下部壁部の上端部からの前記ダボ継ぎ手の突出量がそれぞれ異なる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)下部構造体の下部壁部の上端部と上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有することにより、下部壁部と上部壁部を簡便かつ確実強固に固定することができ、施工性、固定安定性、耐久性に優れる。
(2)下部構造体の下部壁部の上端部と上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有し、下部壁部の上端部からのダボ継ぎ手の突出量がそれぞれ異なることにより、上部壁部を吊り下げながらダボ継ぎ手で連結する際に、突出量の大きなダボ継ぎ手から順番に一本ずつダボ継ぎ手が差し込まれて連結されるので、位置合わせが容易で、スムーズに連結作業を行うことができ、施工性に優れる。
【0022】
ここで、複数のダボ継ぎ手の突出量がそれぞれ異なっていれば、同時に複数のダボ継ぎ手が差し込まれることがなく、ダボ継ぎ手が一本ずつ差し込まれるので、位置合わせが容易でスムーズに連結作業を行うことができる。よって、複数並んだダボ継ぎ手の突出量は一方から他方に向かって一直線状に並んでいる必要はなく、例えば、両端側の突出量が大きく、中央部の突出量が小さくてもよいし、逆に両端側の突出量が小さく、中央部の突出量が大きくてもよいし、全くランダムでもよい。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記天井部が、天板部と、前記天板部の外周を囲繞する周壁部と、を有し、前記周壁部の内周面が、前記天板部側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至7の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)天井部が、天板部と、天板部の外周を囲繞する周壁部と、を有し、周壁部の内周面が、天板部側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成されていることにより、上部壁部と突出構造体で囲まれる天井開口部或いは下部構造体の上部開口部に天井部を覆設する際に、天井部の周壁部の内周面が、上部壁部や突出構造体の外周面或いは下部構造体の外周面に引っ掛かることなく、スムーズに蓋をすることができ、細かな位置合わせが不要で、使用時或いは搬送時に、天井開口部或いは上部開口部を天井部で確実に閉塞して、内部を保護することができ、組立及び分解の作業性、搬送時の信頼性に優れる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅であって、前記下部構造体の底部に形成されたフォーク挿通部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至8の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)下部構造体の底部に形成されたフォーク挿通部を有するので、折り畳んだ状態でフォークリフトを利用して、トラックの荷台などに容易に積み卸しすることができ、積み卸し作業の効率性、省力性に優れる。
【0025】
ここで、フォーク挿通部は下部構造体の底部に形成されるが、下部構造体の三方に立設された下部壁部の少なくとも1つの下端部を切り欠いて形成することができる。このときフォークリフトのフォークの上面が下部構造体の床部の下面に当接するようにフォーク挿通部を形成することにより、早期設置型仮設住宅を安全かつ確実に支持して積み卸し作業を行うことができる。フォーク挿通部の数や配置は、早期設置型仮設住宅や使用するフォークリフトの大きさなどに応じて、適宜、選択することができる。
尚、下部構造体の床部を下面側から補強する補強材を設ける場合、フォーク挿通部の位置を避けるように配置することにより、フォークリフトのフォークとの干渉を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の早期設置型仮設住宅によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)増設部をトイレや物置などの収納スペースとして多目的に利用することにより、居住部のスペースを有効に利用して、十分な生活空間を確保することができ、中長期間使用しても快適に過ごすことができる機能性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)下部構造体や上部壁部に増設部を連設するための開口を設けたり、加工を施したりする必要がなく、耐久性、量産性に優れ、分解して移動する際に、突出構造体、増設部、その他の設備などを下部構造体及び天井部で確実に覆って保護することができる搬送性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)増設部が居住部の側方に突出することがなく、玄関壁部前方のスペースを有効に利用することができる省スペース性、設置自在性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)増設部のみが居住部から突出することがなく、玄関壁部前方のスペースに増設部及びバルコニー部を配置することができる設置スペースの有効利用性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)組立時に下部構造体の下部壁部の上端部に上部壁部を立設した後や突出構造体を起立させた後に、窓枠を容易に取り付けることができ組立作業性に優れると共に、分解時(折り畳み時)、組立時、搬送時などに部材同士が接触する等して傷付いたり、窓ガラスが割れたりするおそれがなく、安全性、搬送性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)複数の早期設置型仮設住宅をトラックなどの荷台に積載して搬送する際に、上下の早期設置型仮設住宅同士を確実に連結して固定し、荷崩れなどを防止することができる搬送時の安全性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)下部壁部と上部壁部を簡便かつ確実強固に固定することができる施工性、固定安定性、耐久性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)上部壁部と突出構造体で囲まれる天井開口部或いは下部構造体の上部開口部に天井部を覆設する際に、天井部の周壁部の内周面が、上部壁部や突出構造体の外周面或いは下部構造体の外周面に引っ掛かることなく、スムーズに蓋をすることができ、細かな位置合わせが不要で、使用時或いは搬送時に、天井開口部或いは上部開口部を天井部で確実に閉塞して、内部を保護することができる組立及び分解の作業性、搬送時の信頼性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至8の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)折り畳んだ状態でフォークリフトを利用して、トラックの荷台などに容易に積み卸しすることができる積み卸し作業の効率性、省力性に優れた早期設置型仮設住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1の早期設置型仮設住宅の全体斜視図
【図2】実施の形態1の早期設置型仮設住宅の要部断面平面図
【図3】実施の形態1の早期設置型仮設住宅の折畳み状態を示す斜視図
【図4】折畳み状態の早期設置型仮設住宅の要部断面側面図
【図5】上部壁部連結工程を示す側面図
【図6】上部壁部組立工程を示す要部断面側面図
【図7】(a)バルコニー部取付工程と連結補強部取付工程を示す要部正面図 (b)バルコニー部取付工程と連結補強部取付工程を示す要部断面平面図
【図8】突出構造体回動工程を示す要部断面側面図
【図9】突出構造体回動工程後の状態を示す要部断面平面図
【図10】実施の形態2の早期設置型仮設住宅の全体斜視図
【図11】実施の形態2の早期設置型仮設住宅の要部断面平面図
【図12】(a)実施の形態2の早期設置型仮設住宅の下部壁部の要部拡大側面図(b)折畳み状態の実施の形態2の早期設置型仮設住宅同士を上下で連結した状態を示す部分断面拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の早期設置型仮設住宅の実施の形態について説明する。尚、本発明の技術的範囲は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
実施の形態1の早期設置型仮設住宅について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1の早期設置型仮設住宅の全体斜視図であり、図2は実施の形態1の早期設置型仮設住宅の要部断面平面図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1の早期設置型仮設住宅、2は早期設置型仮設住宅1の居住部、3は床部4と、床部4の両側部及び後部の三方に立設された下部壁部5a,5b,5cで形成された居住部2の下部構造体、6a,6bは左右の下部壁部5a,5bの上端部に着脱自在に連結された居住部2の上部壁部、6cは後部の下部壁部5cの上端部に回動自在に連結された居住部2の上部壁部、6dは下部構造体3の前方に形成された側面開口部、6eは下部構造体3の上方に形成された上面開口部、6fは上部壁部6a,6b,6cの下端部に配設され下部壁部5a,5b,5cと上部壁部6a,6b,6cとの連結部を覆って水の浸入を防ぐ水切り部、6gは下部壁部5a,5b,5cと上部壁部6a,6b,6cを外側面で連結するパッチン錠を用いた連結具、7は下部構造体3の側面開口部6d側に連設された居住部2の突出構造体、8は下部構造体3の床部4の側面開口部6d側の端部に回動自在に連結された突出構造体7の延設床部、9は延設床部8の前端部に立設された突出構造体7の玄関壁部、9aは玄関壁部9の略中央部に配設された玄関扉、10a,10bは玄関壁部9の両側部で延設床部8に立設された突出構造体7の左右の延設壁部、10cは下部構造体3の側面開口部6dと対向する突出構造体7の連通開口部、11は玄関壁部9及び延設壁部10a,10bの上部に覆設された居住部2の延設屋根部、12は上部壁部6a,6b,6cと突出構造体7で囲まれた居住部2の天井開口部、13は天井開口部12に着脱自在に覆設された居住部2の天井部、13aは天井部13の天板部、13bは天板部13の外周を囲繞する天井部13の周壁部、13cは天井部13の天板部13aに形成された天窓部、13dは天井部13の天板部13aに敷設された太陽電池パネル、14は突出構造体7の玄関壁部9に面して突出構造体7の延設床部8に連結された早期設置型仮設住宅1のバルコニー部、15はバルコニー部14に装設された手摺り部、16は突出構造体7の延設屋根部11に連設されバルコニー部14を覆う庇部、30は突出構造体7及びバルコニー部14の側部で居住部2の外方に突出して連設された早期設置型仮設住宅1の増設部、40は下部構造体3,突出構造体7,バルコニー部14,増設部30の要所に固設されこれらを支持する伸縮自在なジャッキ形式の脚部である。
【0037】
図2中、20aは上部壁部6aに形成され引き違い窓21aの窓枠が固定される窓枠用開口部、20bは上部壁部6cの両側部に左右対称に配設される外開き窓21bの窓枠が固定される窓枠用開口部、21cは上部壁部6cの幅方向中央部に配設される引き違い窓21cの窓枠が固定される窓枠用開口部、22a,22bは居住部2の後部側の両側部にそれぞれ着脱自在及び移動自在に配設された上下二段の組立式ベッド、23は居住部2の後部側の組立式ベッド22a,22bの間に着脱自在に配設されたテーブル、24は居住部2の左側部に折畳み式ベッド22aと並べて着脱自在に配設された机や棚などの台部、25は居住部2の右側部に折畳み式ベッド22bと並べて着脱自在に配設された洋服などの収納部、26は着脱式の間仕切り25aを介して収納部25の隣に着脱自在に配設されコンロなどが載置される調理台、27は調理台26と隣接するように突出構造体7の右側部に備え付けられ電気温水器が設置される流し台、27bは流し台27の側方に位置するように玄関壁部9に形成された窓枠用開口部27aに窓枠が固定された窓、28は突出構造体7の左側部に流し台27と向かい合わせに備え付けられたシャワー室、28aはシャワー室28の折れ戸、28cは玄関壁部9に形成された窓枠用開口部28bに窓枠が固定されたシャワー室28の窓、29は引き違い窓21aに取り付けられるエアコン、30aは居住部2の外(屋外)にバルコニー部14に面して配設された増設部30の出入口、30bは増設部30の床部、31は増設部30の中に形成されたトイレ部、31aはトイレ部31に設置されたポータブル型などの便器、31b,31cはトイレ部31の左右の側壁、32は増設部30の中にトイレ部31と連設して形成され複数の棚が着脱自在に配設される物置部、32a,32bは物置部32の左右の側壁、33aはトイレ部31の左右の側壁31b,31cと物置部32の左右の側壁32a,32bを固定するボルトとナットを用いた固定具、33bは増設部30のトイレ部31の側壁31b及び物置部32の側壁32aと突出構造体7の延設壁部10bを固定するボルトとナットを用いた固定具である。
【0038】
引き違い窓21a,外開き窓21b,引き違い窓21c,窓27b,28cの窓枠は、それぞれ上部壁部6a,6c,玄関壁部9に形成された窓枠用開口部20a,20b,20c,27a,28bの外周に螺子止めによって着脱自在に固定される
組立式ベッド22a,22bの最下段は収納スペースとして使用できる。尚、組立式ベッド22a,22bは、必ずしも二段にする必要はなく、一段のみでもよい。また、テーブル23を取外し、一段の組立式ベッド22a,22bをくっつけてダブルベッドとして使用することもできる。尚、左右の組立式ベッド22a,22bの床板を支持する脚部が床部4に立設されている場合は、テーブル23を取外し、左右の組立式ベッド22a,22bの床板のみを90度回転させ、左右の脚部の間に渡設するようにすれば、簡単にダブルベッドにすることができる。
また、調理台26の下には冷蔵庫を設置することができる。
居住部2の内部のレイアウトは本実施の形態に限定されるものではなく、適宜、選択することができるが、流し台27及びシャワー室28は突出構造体7に予め据え付けておくことで組立作業性に優れる。
【0039】
以上のように構成された実施の形態1の早期設置型仮設住宅の組立方法について説明する。
図3は実施の形態1の早期設置型仮設住宅の折畳み状態を示す斜視図であり、図4は折畳み状態の早期設置型仮設住宅の要部断面側面図であり、図5は上部壁部連結工程を示す側面図であり、図6は上部壁部組立工程を示す要部断面側面図であり、図7(a)は連結補強部取付工程を示す要部正面図であり、図7(b)は連結補強部取付工程を示す要部断面平面図であり、図8は突出構造体回動工程を示す要部断面側面図であり、図9は突出構造体回動工程後の状態を示す要部断面平面図である。
図3中、1aは折畳み状態の早期設置型仮設住宅である。
図4中、3aは下部構造体3の中空部、13eは天板部13a側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成された周壁部13bの内周面、50aは突出構造体7の後部の下部壁部5cの上端部に上部壁部6cを回動自在に連結する蝶番、50bは下部構造体3の床部4の側面開口部6d側の端部に突出構造体7の延設床部8を回動自在に連結する蝶番である。
【0040】
図4に示すように、折畳み状態の早期設置型仮設住宅1aでは、突出構造体7は下部構造体3の中空部3aの中に折畳まれている。また、下部構造体3の後部の下部壁部5cの上端部に回動自在に連結された上部壁部6cが下部構造体3の中空部3aの中に略水平方向に折畳まれ、その下方に分解された増設部30のトイレ部31が収容されている。トイレ部31の空間部には冷蔵庫やエアコン20a、分解された収納部25などが収容される。また、上部壁部6cとトイレ部31との間やトイレ部31と突出構造体7との間には分解したバルコニー部14、組立式ベッド22a,22bの部材などが収容される。さらに、突出構造体7の流し台27とシャワー室28との間の空間部(図2参照)には分解された増設部30の物置部32が収容されている。また、折畳まれた上部壁部6c及び突出構造体7の上には、下部構造体3の左右の下部壁部5a,5bから取り外された上部壁部6a,6bが載置されている。そして、上部壁部6a,6bの上には、下部構造体3の上面開口部を覆うように天井部13が覆設されている。また、脚部40は取り外している。
引き違い窓21a,外開き窓21b,引き違い窓21c,窓27b,28cは、窓枠と共に上部壁部6a,6c,玄関壁部9から取外し、中空部3aの空きスペース等に収容することができる。上部壁部6a,6c,玄関壁部9には窓枠用開口部20a,20b,20c,27a,28bのみが形成されており、表面に突起がないので、上部壁部6a,6cや玄関壁部9をその他の部材などと共に効率的に積み重ねて収容することができる。また、搬送時に、部材同士が接触する等して傷付いたり、窓ガラスが割れたりするおそれもないため、梱包作業を省略することができる。
尚、分解したり折畳んだりした各部材や設備は、振動等による破損等を確実に防止するために、必要に応じて、梱包材で覆ったり、積み重ねてバンド等で固定したりしてもよい。
早期設置型仮設住宅1aの横幅は、4tトラックや10tトラックの荷台に積載できる最大限の大きさとすることにより、生活空間を最大限に広げることができ、快適性に優れる。本実施の形態では、4tトラックに2個、10tトラックに6個積める大きさとすることにより、輸送の効率性を向上させている。
尚、下部構造体3の下部壁部5a,5bや天井部13の周壁部13bなどに着脱自在のフックなどを配設することにより、早期設置型仮設住宅1aの積み下ろしや天井部13の取り付け、取り外しを容易に行うことができ、作業性に優れる。
【0041】
図3の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1aを組立てる(展開する)には、まず、下部構造体3の要所に脚部40を取り付けて設置場所に設置し、水準器等を確認しながら脚部40を伸縮させて床部4が水平となるようにする。
次に、上部壁部連結工程を行う。
図5は上部壁部連結工程を示す側面図である。
図5中、51a,51b,51c,51dは下部壁部5aの上端部からの突出量がそれぞれ異なるように配設されたダボ継ぎ手である。
まず、天井部13を取り外し、下部構造体3の両側部の下部壁部5a,5bの上端部に突出量がそれぞれ異なるダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dを配設する。次に、クレーンにより上部壁部6a,6bをそれぞれ吊り上げ、ダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dにより下部壁部5a,5bと上部壁部6a,6bを連結する。このとき、ダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dの突出量がそれぞれ異なっているので、同時に複数のダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dが差し込まれることがなく、ダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dが一本ずつ差し込まれるので、位置合わせが容易でスムーズに連結作業を行うことができる。
尚、複数並んだダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dの突出量は一方から他方に向かって一直線状に並んでいる必要はなく、ランダムでもよい。
図5では、上部壁部6aの窓枠用開口部20aに引き違い窓21aが取付けられた状態で下部壁部5aと上部壁部6aの連結を行ったが、引き違い窓21aは、下部壁部5aと上部壁部6aを連結した後に、所望のタイミングで取り付けることができる。
【0042】
次に、上部壁部回動工程を行う。
図6において、下部構造体3の後部の下部壁部5cに蝶番50a(図4)によって回動自在に連結された上部壁部6cを起立させる。その後、下部壁部5cと上部壁部6cの外側面の要所をパッチン錠を用いた連結具6gで連結する。これにより、上部壁部6cが下部構造体3の内側に倒れることを確実に防止できる。
本実施の形態では、上部壁部6cを下部壁部5cに回動自在に連結したが、上部壁部6a,6bと同様に、ダボ継ぎ手などを用いて上部壁部6cと下部壁部5cを着脱自在に連結してもよい。
尚、前述の下部壁部5a,5bと上部壁部6a,6bはダボ継ぎ手51a,51b,51c,51dにより連結されているので、下部壁部5a,5bが倒れることはないが、下部壁部5a,5bと上部壁部6a,6bの外側面の要所も同様に連結具6gで固定した。
また、下部壁部5a,5b,5cの上面と上部壁部6a,6b,6cの下面との間には、防水用のスポンジテープなどを挟着して居住部2の内部への冷気や水の浸入を防止した。
【0043】
次に、バルコニー部取付工程と連結補強部取付工程を行う。
図7中、52は突出構造体7の延設床部8の底面とバルコニー部14の底面との間に渡設され突出構造体7の延設床部8とバルコニー部14を底部で連結するC型鋼などを用いた連結補強部、53a,53bはそれぞれ突出構造体7の延設床部8の底面及びバルコニー部14の底面と増設部30の床部30b(図2参照)の底面との間に渡設され突出構造体7及びバルコニー部14と増設部30を底面側で支持するための連結補強部である。尚、この状態では、上部壁部6cの窓枠用開口部20b,20cや玄関壁部9の窓枠用開口部27a,28bには、窓は取付けられていない。
まず、バルコニー部取付工程において、予め下部構造体3の中空部3aに収納されているバルコニー部14を取り出し、連結補強部52により突出構造体7の延設床部8とバルコニー部14を底部で連結する。
次に、連結補強部取付工程において、突出構造体7の延設床部8及びバルコニー部14の底部に連結補強部53a,53bの一端側を固定し、他端側を突出させる。
【0044】
次に、突出構造体回動工程を行う。
図8において、下部構造体3の床部4の前端部に回動自在に連結された突出構造体7を起立させ、要所に脚部40を取り付ける。また、庇部16を外方に回動させる。さらに、図9に示すように、バルコニー部14には手摺り部15を設置する。
次に、増設部組立設置工程を行う。
まず、下部構造体3の中空部3aに予め収納していたトイレ部31及び物置部32を取り出し、固定具33aで連結し、増設部30を組立てる(図2参照)。
次に、図9において、連結補強部53a,53bの突出部分に組立てた増設部30を載置して床部30bと固定する。これにより、図2に示したように、突出構造体7の延設床部8及びバルコニー部14と増設部30の床部30bを容易に連結することができる。尚、増設部30の床部30bの要所には脚部40を取り付ける(図2参照)。また、増設部30のトイレ部31の側壁31b及び物置部32の側壁32aと突出構造体7の延設壁部10bを固定具33bで固定する(図2参照)。
【0045】
次に、天井部覆設工程を行う。
天井部13の天板部13aに太陽電池パネル13dを敷設した後、天井部13の各隅部のフック(図示せず)にクレーンの係止部を連結して吊り下げ、上部壁部6a,6b,6cと突出構造体7で囲まれた天井開口部12に天井部13を覆設する(図2参照)。
このとき、図4に示したように、天井部13の周壁部13bの内周面13eが天板部13a側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成されているので、上部壁部6a,6b,6cや突出構造体7の外周面に引っ掛かることなく、スムーズに設置することができる。
【0046】
最後に、居住部2の内部に各種設備などの設置を行う。
図9において、下部構造体3の中空部3aに予め収容されている冷蔵庫、コンロ、エアコン20a等の設備を図2に示したように所定の位置に設置すると共に、組立式ベッド22a,22b、テーブル23、台部24、収納部25、間仕切り25a、調理台26等の部材を組立図に従って組立て、図2に示したように所定の位置に設置する。また、上部壁部6cの窓枠用開口部20b,20cに外開き窓21bや引き違い窓21cを取付け、玄関壁部9の窓枠用開口部27a,28bに窓27b,28cを取付ける。このようにして、早期設置型仮設住宅1が完成する。
早期設置型仮設住宅1を折畳む場合は、上述した組立て作業と逆の手順で作業を行う。
尚、上部壁部6cの窓枠用開口部20b,20cや玄関壁部9の窓枠用開口部27a,28bに外開き窓21b,引き違い窓21c,窓27b,28cを取付ける作業は、突出構造体回動工程,増設部組立設置工程,天井部覆設工程などの後に、適宜、行うことができる。
【0047】
以上のように構成された実施の形態1の早期設置型仮設住宅によれば、以下の作用を有する。
(1)下部構造体と上部壁部と突出構造体と天井部で形成される居住部と、居住部の外方に突出して着脱自在に連設される増設部を有するので、増設部をトイレや物置などの収納スペースとして多目的に利用することにより、居住部のスペースを有効に利用して、十分な生活空間を確保することができ、中長期間使用しても快適に過ごすことができ、機能性に優れる。
(2)増設部をトイレとして使用した場合、臭いが居住部の内部にこもり難く、衛生的で、中長期の利用性に優れる。
(3)増設部が、居住部の外方に突出して着脱自在に連設されるので、共用トイレ等の設置等で不要な時や十分な設置スペースが確保できない時には、居住部に影響を与えることなく、簡単に取り除くことができ、汎用性、設置自在性に優れる。
(4)増設部が、移動時に分解して下部構造体の中空部に収容可能であるので、搬送時のコンパクト性に優れると共に、設置時に、別途、資材等を調達することなく、その場で容易に組立てて増設することができ、施工性に優れる。
(5)増設部が、突出構造体に連設されるので、下部構造体や上部壁部には、増設部を連設するための開口を設けたり、加工を施したりする必要がなく、耐久性、量産性に優れると共に、分解して移動する際に、突出構造体、増設部、その他の設備などを下部構造体及び天井部で確実に覆って保護することができ、搬送性に優れる。
(6)増設部が、屋外に面して配設された出入口を備えるので、増設部にトイレを設置することにより、トイレの使用時に他の居住者に気を遣う必要がなく、トイレの臭いが居住部の中に侵入することを確実に防止でき、狭い居住部の中でも快適に過ごすことができ、中長期の使用性に優れる。
(7)増設部が、屋外に面して配設された出入口を備えるので、増設部に物置を設置することにより、収納物の出し入れの際に、他の居住者の邪魔になることがなく、落ち着いて生活することができ、快適性に優れる。
(8)突出構造体の玄関壁部に面して突出構造体の延設床部に回動自在又は着脱自在に連結されるバルコニー部を有し、バルコニー部と増設部の床部が連結されることにより、バルコニー部を介して突出構造体と増設部を一体化し、増設部の床部の剛性を高めることができ、増設部の組立作業性、耐久性に優れる。
(9)バルコニー部を有することによって住宅としてのイメージを与え、玄関ポーチとしての役割を果たすことができる。
(10)増設部の出入口が、バルコニー部に面して配設されていることにより、敷地に降りることなく、玄関からバルコニー部を通って増設部に直接出入りすることができ、使用性に優れる。
(11)突出構造体の延設床部と増設部の床部を底面側で連結する連結補強部を備えることにより、突出構造体と増設部を強固に固定して増設部の床部を確実に補強することができ、耐久性に優れる。
(12)上部壁部や突出構造体の玄関壁部に窓枠が取り付けられる窓枠用開口部が形成されていることにより、組立時に下部構造体の下部壁部の上端部に上部壁部を立設した後や突出構造体を起立させた後に、窓枠用開口部に容易に窓枠を取り付けることができ、組立作業性に優れる。
(13)上部壁部や突出構造体の玄関壁部に窓枠用開口部のみが形成されており、窓枠や窓が取り付けられていないので、分解時(折り畳み時)や組立時に、突出構造体を回動させたり、上部壁部を持ち運んだり、積み重ねたりする際に、窓ガラスが割れるおそれがなく、梱包作業を省略することができ、分解時及び組立時の作業性、安全性に優れる。
(14)上部壁部や突出構造体の玄関壁部に窓枠用開口部のみが形成されており、上部壁部や突出構造体の表面に窓枠や窓などの突起がないので、突出構造体を下部構造体の中空部の中に折畳み、下部壁部から取り外した上部壁部を下部構造体の中空部の中に効率的に積み重ねて収容することができ、搬送時に、収容した部材同士が接触する等して傷付いたり、窓ガラスが割れたりするおそれがなく、安全性、搬送性に優れる。
(15)下部構造体の下部壁部の上端部と上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有することにより、下部壁部と上部壁部を簡便かつ確実強固に固定することができ、施工性、固定安定性、耐久性に優れる。
(16)下部構造体の下部壁部の上端部と上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有し、下部壁部の上端部からのダボ継ぎ手の突出量が一端側から他端側に向けて高さが順次低くなることにより、上部壁部を吊り下げながらダボ継ぎ手で連結する際に、突出量の大きなダボ継ぎ手から順番に一本ずつダボ継ぎ手が差し込まれて連結されるので、位置合わせが容易で、スムーズに連結作業を行うことができ、施工性に優れる。
(17)天井部が、天板部と、天板部の外周を囲繞する周壁部と、を有し、周壁部の内周面が、天板部側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成されていることにより、上部壁部と突出構造体で囲まれる天井開口部或いは下部構造体の上部開口部に天井部を覆設する際に、天井部の周壁部の内周面が、上部壁部や突出構造体の外周面或いは下部構造体の外周面に引っ掛かることなく、スムーズに蓋をすることができ、細かな位置合わせが不要で、使用時或いは搬送時に、天井開口部或いは上部開口部を天井部で確実に閉塞して、内部を保護することができ、組立及び分解の作業性、搬送時の信頼性に優れる。
(18)組立図に従って簡単に短時間で施工でき、緊急時の組立の迅速性に優れる。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態2の早期設置型仮設住宅について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図10は実施の形態2の早期設置型仮設住宅の全体斜視図であり、図11は実施の形態2の早期設置型仮設住宅の要部断面平面図である。
図10において、実施の形態2の早期設置型仮設住宅1Aが実施の形態1と異なるのは、下部壁部5a,5b,5cと上部壁部6a,6b,6cを外側面で連結する連結具6gが省略されている点と、下部構造体3の底部に形成されたフォーク挿通部17を備えている点と、トイレとして使用される増設部30が突出構造体11と連通するように玄関壁部9の前方に突出してバルコニー部14と並設されている点である。
【0049】
図10中、18は下部壁部5bのフォーク挿通部17の下端部に長尺状の金属板を渡設して形成された雄螺子挿通部、18aは雄螺子挿通部18の長手方向中央部に形成された雄螺子の挿通孔である。尚、図10では、下部構造体3の下部壁部5bの下端部のみに形成したフォーク挿通部17や雄螺子挿通部18を示しているが、下部構造体3の下部壁部5a,5cの下端部にもフォーク挿通部17や雄螺子挿通部18が形成されている。
図11中、7aは突出構造体7の玄関壁部9に形成されシャワー室28と増設部30を連通させる開口部、30cは増設部30に形成された窓、33cは増設部30の外周部を玄関壁部9に着脱自在に螺子止め固定するボルトなどの固定具である。
【0050】
実施の形態2の早期設置型仮設住宅1Aは、実施の形態1の早期設置型仮設住宅1と、増設部30の取付位置が異なるだけで、その他の組立方法は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。尚、実施の形態1の早期設置型仮設住宅1よりも、バルコニー部14や増設部30が小さいので、連結補強部52,53a,53bを取付ける連結補強部取付工程を省略することもできる。
【0051】
次に、実施の形態2の早期設置型仮設住宅1Aのフォーク挿通部及び雄螺子挿通部について説明する。
図12(a)は実施の形態2の早期設置型仮設住宅の下部壁部の要部拡大側面図であり、図12(b)は折畳み状態の実施の形態2の早期設置型仮設住宅同士を上下で連結した状態を示す部分断面拡大側面図である。
図12(a)中、4aは下部構造体3の床部4を下面側から補強する補強材である。フォーク挿通部17の位置を避けるように補強材4aを配置することにより、フォーク挿通部17に挿通されるフォークリフトのフォークとの干渉を防ぎながら、床部4を効果的に補強することができる。また、フォークリフトのフォークの上面が下部構造体3の床部4の下面に当接するように、下部壁部5a(5b,5c)の下端部を切り欠いてフォーク挿通部17を形成することにより、折り畳み後の早期設置型仮設住宅を安全かつ確実に支持して積み卸し作業を行うことができる。
尚、フォーク挿通部17の数や配置は、早期設置型仮設住宅1Aや使用するフォークリフトの大きさなどに応じて、適宜、選択することができる。
【0052】
図12(b)中、1bは上下に積み重ねられた折畳み状態の実施の形態2の早期設置型仮設住宅、34は下方の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bの下部構造体3の下部壁部5a(5b,5c)の上端側に埋設されたナットを用いて形設された雌螺子部、35は雌螺子部34の位置に対応して下方の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bの天井部13の天板部13aに穿設された貫通孔、36は上方の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bの下部壁部5a(5b,5c)の雄螺子挿通部18の挿通孔18aから挿通され、下方の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bの天板部13aの貫通孔35を通して、下方の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bの下部壁部5a(5b,5c)の雌螺子部34に螺合され、上下の折畳み状態の早期設置型仮設住宅1bを連結するボルトを用いた雄螺子である。
これにより、上下の早期設置型仮設住宅1b同士を確実に連結して固定することができ、搬送時や倉庫での保管時の荷崩れなどを防止することができる。
尚、一組の雌螺子部34,貫通孔35,雄螺子挿通部18の挿通孔18aは、折り畳んだ状態の複数の早期設置型仮設住宅1bを積み上げた際に、鉛直方向に一直線状に並ぶように配置されていればよく、数や配置間隔などは適宜、選択することができる。
また、雄螺子36は、早期設置型仮設住宅1bを組立てて使用する際に、上部壁部6a(6b,6c)と天井部13の固定に使用することができる。尚、折り畳んで(分解して)搬送する時に下部壁部5a(5b,5c)と天井部13を螺着する際或いは組立てて使用する時に上部壁部6a(6b,6c)と天井部13を螺着する際に、パッキンを用いることにより、天板部13aの貫通孔35から雨水などが浸入することを防止することができる。
【0053】
以上のように構成された本発明の実施の形態2の早期設置型仮設住宅によれば、実施の形態1で得られる(1),(3)乃至(5),(9),(12)乃至(18)の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)突出構造体が、玄関壁部に形成された開口部を有し、増設部が、開口部を介して突出構造体と連通するように玄関壁部の前方に突出して配設されるので、増設部が居住部の側方に突出することがなく、玄関壁部前方のスペースを有効に利用することができ、省スペース性、設置自在性に優れる。
(2)増設部が、玄関壁部に形成された開口部を介して突出構造体と連通していることにより、居住部から突出構造体の開口部を通って増設部に出入りすることができるので、増設部を利用する際に、居住部の外(屋外)に出る必要がなく、使用性に優れる。
(3)突出構造体の玄関壁部に面して突出構造体の延設床部に回動自在又は着脱自在に連結され増設部と並設されるバルコニー部を有することにより、増設部のみが居住部から突出することがなく、玄関壁部前方のスペースに増設部及びバルコニー部を配置することができ、設置スペースの有効利用性に優れる。
(4)下部構造体の下部壁部の上端側に開口して形設された雌螺子部と、雌螺子部の位置に対応して天井部に穿設された貫通孔と、雌螺子部の位置に対応して下部構造体の下部壁部の下端側に形設された雄螺子挿通部と、を有することにより、折り畳んだ複数の早期設置型仮設住宅をトラックなどの荷台に積載して搬送する際に、上方の下部構造体の雄螺子挿通部から挿通した雄螺子を、下方の下部構造体の上部開口部に覆設した天井部の貫通孔を通して、下方の下部構造体の雌螺子部に螺合することができるので、上下の早期設置型仮設住宅同士を確実に連結して固定し、荷崩れなどを防止することができ、搬送時の安全性に優れる。
(5)下部構造体の底部に形成されたフォーク挿通部を有するので、折り畳んだ状態でフォークリフトを利用して、トラックの荷台などに容易に積み卸しすることができ、積み卸し作業の効率性、省力性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、簡素な構造で、強度や耐久性を向上させることができ、部品点数を増やすことなく、災害などの緊急必要時に、短時間で容易に組立てて、直ちに使用することができ、組立作業性、緊急対応性に優れ、コンパクトでありながら十分な生活空間を確保することができ、衛生的で、中長期間使用しても快適に過ごすことができる機能性に優れた早期設置型仮設住宅の提供を行って、地震や火災等の災害発生時における被災者等の仮設住宅、自衛隊員やボランティア等の宿泊施設、救護施設、会議室等としての利用を図ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 早期設置型仮設住宅
1a,1b 折畳み状態の早期設置型仮設住宅
2 居住部
3 下部構造体
3a 中空部
4 床部
4a 補強材
5a,5b,5c 下部壁部
6a,6b,6c 上部壁部
6d 側面開口部
6e 上面開口部
6f 水切り部
6g 連結具
7 突出構造体
7a 開口部
8 延設床部
9 玄関壁部
9a 玄関扉
10a,10b 延設壁部
10c 連通開口部
11 延設屋根部
12 天井開口部
13 天井部
13a 天板部
13b 周壁部
13c 天窓部
13d 太陽電池パネル
13e 内周面
14 バルコニー部
15 手摺り部
16 庇部
17 フォーク挿通部
18 雄螺子挿通部
18a 挿通孔
20a,20b,21c,27a,28b 窓枠用開口部
21a,21c 引き違い窓
21b 外開き窓
22a,22b 組立式ベッド
23 テーブル
24 台部
25 収納部
26 調理台
27 流し台
27b,28c,30c 窓
28 シャワー室
28a 折れ戸
29 エアコン
30 増設部
30a 出入口
30b床部
31 トイレ部
31a 便器
31b,31c,32a,32b 側壁
32 物置部
33a,33b,33c 固定具
34 雌螺子部
35貫通孔
36雄螺子
40 脚部
50a,50b 蝶番
51a,51b,51c,51d ダボ継ぎ手
52,53a,53b 連結補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部と前記床部の三方に立設された下部壁部とを有し側面開口部と上面開口部が形成された下部構造体と、前記下部構造体の各々の前記下部壁部の上端部に回動自在又は着脱自在に連結される上部壁部と、前記下部構造体の前記床部の前記側面開口部側の端部に回動自在に連結された延設床部と前記延設床部の前端部に立設された玄関壁部と前記玄関壁部の両側部で前記延設床部に立設された延設壁部と前記玄関壁部及び前記延設壁部の上部に覆設された延設屋根部とを有し起立時に前記下部構造体の前記側面開口部と対向する連通開口部が形成された突出構造体と、前記上部壁部と前記突出構造体で囲まれる天井開口部に着脱自在に覆設される天井部と、を有し、移動時に前記下部構造体の中空部に前記上部壁部及び前記突出構造体を収容し、前記下部構造体の前記上部開口部に前記天井部で蓋をして搬送可能な早期設置型仮設住宅であって、
前記下部構造体と前記上部壁部と前記突出構造体と前記天井部で形成される居住部と、前記居住部の外方に突出して着脱自在に連設され移動時に分解されて前記下部構造体の前記中空部に収容される増設部と、を備えたことを特徴とする早期設置型仮設住宅。
【請求項2】
前記増設部が、前記突出構造体に連設されることを特徴とする請求項1に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項3】
前記突出構造体が、前記玄関壁部に形成された開口部を有し、前記増設部が、前記開口部を介して前記突出構造体と連通するように前記玄関壁部の前方に突出して配設されることを特徴とする請求項2に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項4】
前記突出構造体の前記玄関壁部に面して前記突出構造体の前記延設床部に回動自在又は着脱自在に連結され前記増設部と並設されるバルコニー部を有することを特徴とする請求項3に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項5】
前記上部壁部と前記突出構造体の前記玄関壁部及び前記延設壁部の少なくともいずれか1以上に窓枠が取り付けられる窓枠用開口部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項6】
前記下部構造体の前記下部壁部の上端側に開口して形設された雌螺子部と、前記雌螺子部の位置に対応して前記天井部に穿設された貫通孔と、前記雌螺子部の位置に対応して前記下部構造体の前記下部壁部の下端側に形設された雄螺子挿通部と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項7】
前記下部構造体の前記下部壁部の上端部と前記上部壁部の下端部を連結する複数のダボ継ぎ手を有し、前記下部壁部の上端部からの前記ダボ継ぎ手の突出量がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項8】
前記天井部が、天板部と、前記天板部の外周を囲繞する周壁部と、を有し、前記周壁部の内周面が、前記天板部側から下端側に向かって外方に拡開したテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅。
【請求項9】
前記下部構造体の底部に形成されたフォーク挿通部を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の早期設置型仮設住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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