説明

昇降式足場装置

【課題】足場部の傾き修正を作業者の操作なしに自動で行うことができる昇降式足場装置を提供する。
【解決手段】本発明の昇降式足場装置は、第1タワー1と、第1タワー1に並設された第2タワー2と、第1タワー1に沿って昇降自在に設けられた第1昇降部11と、第2タワー2に沿って昇降自在に設けられた第2昇降部12と、第1昇降部11及び第2昇降部12に連結された足場部3と、第1昇降部11を昇降させる第1モータ13と、第2昇降部12を昇降させる第2モータ14と、第1昇降部11の高さ位置を検出する第1エンコーダ17と、第2昇降部12の高さ位置を検出する第2エンコーダ18と、第1エンコーダ17及び第2エンコーダ18の出力差に基づいて、第1モータ13及び第2モータ14のオン、オフ動作を制御する制御部36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル等の建築工事において高所作業時の作業床として用いられる足場装置に関し、特に作業床が昇降移動可能な昇降式足場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、例えばビル等の建築工事において建築物に沿うようにして設けられ、高所作業時の作業床として用いられる。近年では、仮設足場として作業床が上下方向に昇降移動することが可能な昇降式足場装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2597946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記昇降式足場装置の中には、例えば2本のタワーを備え、これらのタワー間に作業床を有する足場部が連結され、この足場部が水平状態を維持したまま昇降するものが知られている。すなわち、この昇降式足場装置は、地盤に例えば2本のタワーが所定の間隔を隔てて並設され、各タワーに沿って昇降可能な昇降部がそれぞれ備えられている。各昇降部は、例えばモータの回転駆動によって昇降される。そして、足場部は、両昇降部間に設けられるとともに、各昇降部の側方方向に延びて設けられている。
【0005】
この昇降式足場装置によれば、各昇降部がともに昇降されるので、足場部がほぼ水平を維持したまま上昇及び下降する。これにより、足場部に搭乗している作業者は、足場部が所定の高さまで上昇すると、所定の高さ位置で高所作業を行うことができる。
【0006】
しかしながら、この昇降式足場装置では、各昇降部はそれぞれモータの回転駆動によって昇降されるため、各モータの回転速度にばらつきがあると、足場部がいずれかの方向に傾く場合がある。足場部が傾いた状態では、それに搭乗している作業者の作業に支障をきたしたり、高所作業に使用する工具等が足場部から落下したりするおそれがある。
【0007】
そこで、従来の昇降式足場装置では、足場部の傾きを例えばリミットスイッチで検出するようにし、リミットスイッチで傾きを検出したときに、例えば作業者が足場部の傾きを手動で修正するようにしている。具体的には、昇降式足場装置では、リミットスイッチが傾きを検出すると、昇降部の昇降を強制的に停止させる。その後、作業者が足場部を昇降させるための操作入力可能な操作ボックス等を操作して、いずれか一方のモータのみを回転駆動させてそのモータが備えられた昇降部のみを昇降させる。これにより、足場部の傾きはほぼ水平状態になるように修正される。そして、作業者は、傾きが修正された状態で操作ボックスを操作して足場部の昇降を再開させる。
【0008】
このように、この昇降式足場装置では、足場部の傾きをリミットスイッチで検出しているため、リミットスイッチがそれを検出した場合には、作業者が操作ボックス等を用いて足場部の傾きを修正する操作と、足場部の昇降を再開させる操作とを行う必要がある。そのため、作業者は、リミットスイッチで傾きが検出されるたびに上記操作を行わなければならず、作業者にとっては非常に煩わしく手間であった。また、このような傾きの修正操作及び昇降再開操作のために足場部の昇降時間が実質的に延びることから、全体の作業時間に遅延を生じさせるといった問題点があった。
【0009】
また、足場部の傾きをリミットスイッチで検出する場合、例えばリミットスイッチが接触タイプのものであれば、ある一定の角度の傾きしか検出することができない。したがって、このリミットスイッチでは、傾きの検出精度が悪く、足場部が傾いた場合の安全装置的な用途に限定される。また、傾き検出角度を変更したいときには、リミットスイッチの取付け状態を変更したり、異なる傾き角度を検出するリミットスイッチに入れ替えたりしなければならず、作業コストや部品コストが発生するといった不都合があった。
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、足場部の傾き修正を作業者の操作なしに自動で行うことができ、足場部の傾斜検出角度を容易に変更することのできる昇降式足場装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって提供される昇降式足場装置は、上下方向に延びた第1タワー部と、前記第1タワー部に所定の間隔を隔てて並設され、上下方向に延びた第2タワー部と、前記第1タワー部に沿って昇降自在に設けられた第1昇降部と、前記第2タワー部に沿って昇降自在に設けられた第2昇降部と、前記第1昇降部及び前記第2昇降部に略側方方向に連結された足場部と、前記第1昇降部に設けられ、この第1昇降部を昇降させるための第1駆動手段と、前記第2昇降部に設けられ、この第2昇降部を昇降させるための第2駆動手段と、前記第1昇降部が昇降されることによる前記第1昇降部の高さ位置を検出するための第1高さ検出手段と、前記第2昇降部が昇降されることによる前記第2昇降部の高さ位置を検出するための第2高さ検出手段と、前記第1高さ検出手段及び前記第2高さ検出手段の出力差に基づいて、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段のオン、オフ動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の昇降式足場装置においては、前記制御手段は、前記第1昇降部及び前記第2昇降部の昇降時に前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段をそれぞれオン動作させ、前記第1高さ検出手段及び前記第2高さ検出手段の出力差が予め設定された第1設定値に達したとき、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段のうちいずれか一方の駆動手段をオフ動作させ、前記出力差が予め設定された前記第1設定値より小の第2設定値に達したとき、前記いずれか一方の駆動手段をオン動作させるとよい。
【0013】
本発明の昇降式足場装置においては、前記第1タワー部に沿って上下方向に延びた第1ラックと、前記第2タワー部に沿って上下方向に延びた第2ラックと、前記第1ラックに歯合され、前記第1駆動手段の回転軸に取付けられた第1ピニオンと、前記第1ピニオンに所定の間隔を隔てて前記第1ラックに歯合された第2ピニオンと、前記第2ラックに歯合され、前記第2駆動手段の回転軸に取付けられた第3ピニオンと、前記第3ピニオンに所定の間隔を隔てて前記第2ラックに歯合された第4ピニオンとを備え、前記第1高さ検出手段は、前記第2ピニオンの回転軸に取付けられており、前記第2高さ検出手段は、前記第4ピニオンの回転軸に取付けられているとよい。
【0014】
本発明の昇降式足場装置においては、前記第1高さ検出手段は、前記第2ピニオンの回転数をパルスに変換して前記制御手段に出力するパルスエンコーダであり、前記第2高さ検出手段は、前記第4ピニオンの回転数をパルスに変換して前記制御手段に出力するパルスエンコーダであるとよい。
【0015】
本発明の昇降式足場装置においては、前記第1設定値及び/又は前記第2設定値を設定変更可能な設定入力手段をさらに備えるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の昇降式足場装置によれば、第1タワー部及び第2タワー部の各高さ位置を第1高さ検出手段及び第2高さ検出手段によって検出するので、例えば足場部の昇降中に高さ位置の差を検出することにより、足場部の傾きを検出することができる。そして、検出された高さ位置の差に基づいて第1駆動手段及び第2駆動手段をオン、オフ動作させることにより、例えば、いずれか一方の駆動手段をオフ動作させると、他方の駆動手段はオン動作を継続しているので、足場部をほぼ水平状態に修正することができる。
【0017】
このように、本昇降式足場装置では、足場部の昇降中に自動的に足場部の傾きが修正されるので、足場部に傾きが生じた場合に作業者が操作ボックス等を用いて傾きを修正したり昇降動作を再開させたりするといった手間を生じさせることがない。また、これらの操作のための無駄な作業時間を省くことができる。したがって、作業者の作業性を向上させた利便性の高い昇降式足場装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、足場部に傾きが生じている場合に、算出された高さ位置の差が第1設定値に達したときいずれか一方の駆動手段をオフ動作させ、上記高さ位置の差が第2設定値に達したとき当該駆動手段をオン動作させる。そのため、例えば第1設定値を傾き始めたときの値とし、第2設定値をほぼ水平状態であるときの値に設定しておけば、作業者に大きな傾きを感じさせずに足場部をほぼ水平状態に維持したままで昇降させることができる。
【0019】
また、本発明によれば、第1ラックには第1ピニオン及び第2ピニオンがそれぞれ歯合され、第1ピニオンには第1駆動手段の回転軸が取付けられ、第2ピニオンの回転軸には第1高さ検出手段が取付けられている。そのため、第1高さ検出手段は、第1駆動手段の回転軸に接続されてその回転数を取得するのではなく、第1ラックに歯合されて回転する第2ピニオンの回転数を取得する。したがって、第1高さ検出手段は、高さ位置を検出するための回転速度が低速となり、部品の長寿命化を図ることができる。また、第1駆動手段(例えばモータ)の回転数ではなく、直接的に第2ピニオンの回転数を検出することにより確実にかつ精度よく高さ位置を検出することができる。
【0020】
また、本発明によれば、第1高さ検出手段及び第2高さ検出手段は、それぞれパルスエンコーダによって構成されているため、第2ピニオン及び第4ピニオンの回転数を正確に検出することができ、その回転数を入力する制御手段は、高さ位置を正確に算出することができる。
【0021】
また、本発明によれば、第1設定値又は第2設定値を設定変更可能な設定手段が備えられているので、例えば足場部の傾き検出角度を変更したいときには、従来の構成のようにリミットスイッチを用いた場合に比べ、作業コストや部品コストを発生させることなく、傾斜検出角度を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の昇降式足場装置の正面図である。
【図2】第1モータと第1エンコーダの配置関係を示し、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図3】制御盤及び操作ボックスの正面図である。
【図4】昇降式足場装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】傾き調整制御を示すフローチャートである。
【図6】傾き調整制御を示すタイミングチャートの一例である。
【図7】足場部が上昇している場合の傾き状態を示し、(a)は第1モータ及び第2モータがオン動作しているとき、(b)は第2モータのみがオン動作しているとき、(c)は第1モータ及び第2モータがオン動作しているときの図である。
【図8】足場部が下降している場合の傾き状態を示し、(a)は第1モータ及び第2モータがオン動作しているとき、(b)は第1モータのみがオン動作しているとき、(c)は第1モータ及び第2モータがオン動作しているときの図である。
【図9】モニタ部の表示例を示し、(a)は第1昇降部及び第2昇降部の高さ位置を表示している場合、(b)は第1昇降部及び第2昇降部の高さ位置の差を表示している場合、(c)は規定値幅の値を変更する場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る昇降式足場装置(以下、単に「足場装置」という)を示す正面図である。この足場装置は、例えば建築工事の高所作業において作業床として用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。
【0025】
足場装置は、図1に示すように、2本のタワーを備えている。すなわち、足場装置は、所定の高さを有する第1タワー1と、所定の間隔を隔てて並設された第2タワー2と、両タワー1,2に支持された昇降移動可能な足場部3とを備えている。第1タワー1及び第2タワー2は、ほぼ同様の構成とされている。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
【0026】
各タワー1,2は、これを地盤Gに対して支持するためのベース部4をそれぞれ有している。ベース部4は、略平板状に形成されている。ベース部4の角部には、複数のジャッキ機構5が設けられている。ジャッキ機構5は、それぞれの高さを調整することにより、ベース部4を水平状態に維持するものである。ベース部4には、アウトリガー機構6が設けられている。アウトリガー機構6は、ベース部4から放射状に延びた複数の部材からなる。ベース部4には、図示しない移動用車輪が設けられ、移動用車輪は、各タワー1,2を建築現場の所定位置に移動させるものである。
【0027】
第1及び第2タワー1,2は、外形が略直方体の枠状に形成された枠部材7が複数個連接された構成とされている。具体的には、第1及び第2タワー1,2は、ベース部4の中央部において最下段の枠部材7が取付けられ、その枠部材7の上方に他の枠部材7が積み重ねられて構成される。
【0028】
第1タワー1の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第1ラック8が設けられている。第1ラック8は、長尺状に形成され、図2(b)に示すように、その一方側端面に複数のピニオン(後述)が歯合される歯合部8aが形成されている。なお、第1ラック8は、枠部材7が積み重ねられるとき、直線状になるように連接される。同様に、第2タワー2の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第2ラック9が設けられている。第2ラック9は、第1ラック8と同様の構成とされている。
【0029】
第1タワー1には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第1昇降部11が設けられている。第1昇降部11は、高さ方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。第1昇降部11は、図略のガイドローラを介して枠部材7の外表面に沿って昇降される。また、第2タワー2には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第2昇降部12が設けられている。第2昇降部12は、第1昇降部11と同様の構成とされている。
【0030】
第1昇降部11には、図1及び図2に示すように、これを昇降させるための第1モータ13が取付けられている。第1モータ13は、誘導モータとされ、その回転駆動を停止可能なブレーキ機構が備えられている。なお、第1モータ13は、実際には並設された2つのモータによって構成され、一方のモータが故障した場合等にも他方のモータを使用できるといった非常時の安全性を考慮したものとされている。よって、以下の説明では、2つのモータを総称して第1モータ13と呼称する。
【0031】
一方、第2昇降部12には、これを昇降させるための第2モータ14が取付けられている。第2モータ14は、第1モータ13と同様の構成とされている。第2モータ14も、第1モータ13と同様に2つのモータによって構成され、2つのモータを総称して第2モータ14と呼称する。
【0032】
図2に示すように、第1モータ13の回転軸13aには、第1ピニオン15が取付けられている。この第1ピニオン15には、第1ラック8の歯合部8aが歯合されている。第1モータ13が回転駆動されると、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動し、第1昇降部11が第1タワー1の枠部材7に沿って昇降移動される。
【0033】
また、第1ラック8には、第1ピニオン15に所定間隔隔てて第2ピニオン16が歯合され、この第2ピニオン16の回転軸16aには、第1エンコーダ17が取付けられている。この第1エンコーダ17は、パルスエンコーダとされ、第2ピニオン16の回転数を検出して後述する制御部36に出力するものである。
【0034】
すなわち、第1モータ13が回転駆動されると、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動するとともに、第1ラック8と第2ピニオン16とが協動し、第2ピニオン16が回転する。第1エンコーダ17は、この第2ピニオン16の回転数を検出する。第2ピニオン16が1回転当りに第1ラック8の歯合部8aに沿って移動する距離(高さ)は予め決まっているので、制御部36は、第1エンコーダ17の出力に基づいて第1昇降部11の移動距離(高さ)を算出することができる。
【0035】
このように、第1エンコーダ17は、第1モータ13の回転軸13aに接続されるのではなく、第2ピニオン16の回転軸16aに直接的に接続され、第2ピニオン16の回転数、すなわち第1昇降部11の移動距離(高さ)を検出する。そのため、第1エンコーダ17は、高さ位置を検出するための回転速度が低速となり、部品の長寿命化を図ることができる。また、第1モータ13の回転数ではなく、直接的に第2ピニオン16の回転数を検出することにより確実にかつ精度よく第1昇降部11の移動距離(高さ)を検出することができる。
【0036】
なお、第1エンコーダ17は、第1モータ13の回転軸13aに接続されていないので、第1昇降部11を昇降させるための駆動手段としては、モータ以外のものを適用することができる。
【0037】
また、図示していないが、同様に、第2タワー2の第2モータ14の回転軸には第3ピニオンが取付けられ、第3ピニオンには第2タワー2の第2ラック9の歯合部が歯合されている。第2モータ14が回転駆動されると、第3ピニオンと第2ラック9とが協動し、第2昇降部12が第2タワー2の枠部材7に沿って昇降移動される。
【0038】
さらに、第2ラック9には、第4ピニオンが歯合され、この第4ピニオンの回転軸には、第2エンコーダ18(後述)が取付けられている。この第2エンコーダ18も、第1エンコーダ17と同様にパルスエンコーダとされ、第4ピニオンの回転数を検出して、後述する制御部36に出力する。これにより、制御部36では、第2エンコーダ18の出力に基づいて第2昇降部12の移動距離(高さ)を算出することができる。
【0039】
第1昇降部11及び第2昇降部12のそれぞれの上部には、図示しない上限リミットスイッチ37(後述)が設けられている。上限リミットスイッチ37は、第1タワー1及び第2タワー2の上限位置にそれぞれ設けられたストッパ19によってオン動作される。この構成により、上限リミットスイッチ37によって第1昇降部11及び第2昇降部12の上限位置がそれぞれ検出され、第1昇降部11及び第2昇降部12の上昇が規制される。
【0040】
また、第1昇降部11及び第2昇降部12のそれぞれの下部には、後述する下限リミットスイッチ38が設けられている。下限リミットスイッチ38は、第1タワー1及び第2タワー2の下部にそれぞれ設けられたストッパ20によってオン動作される。この構成により、下限リミットスイッチ38によって第1昇降部11及び第2昇降部12の下限位置がそれぞれ検出され、第1昇降部11及び第2昇降部12の下降が規制される。なお、この下限リミットスイッチ38における検出位置(下限位置)は、作業者が足場部3に搭乗する際の高さ位置とされている。
【0041】
図1に戻り、第1昇降部11には、それを覆うようにかつ前後方向(図1において紙面の手前又は奥行き方向)に水平移動自在な第1水平移動部21が設けられている。また、第2昇降部12には、それを覆うようにかつ前後方向に水平移動自在な第2水平移動部22が設けられている。第1及び第2水平移動部21,22は、足場部3を前後方向に移動させるためのものである。第1及び第2水平移動部21,22は、それぞれ前後方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。第1及び第2水平移動部21,22は、図略の移動機構によって移動自在とされている。
【0042】
足場部3は、第1及び第2水平移動部21,22の側方に略水平方向に延びて設けられている。足場部3は、略直方体の枠状に形成された本体部3aと、本体部3aの上面に配された作業床(図略)と、作業者の転落を防止するための手摺3bとを有している。
【0043】
足場部3は、第1及び第2水平移動部21,22の間に設けられた中間部24と、第1水平移動部21の左方向に延びた第1側方部25と、第2水平移動部22の右方向に延びた第2側方部26とによって概略構成されている。第1側方部25には、左方向に進退自在とされた第1進退部27が設けられている。また、第2側方部26には、右方向に進退自在とされた第2進退部28が設けられている(図1は、第1進退部27及び第2進退部28がそれぞれ進出した状態を示している。)。
【0044】
なお、第1水平移動部21の周囲には、中間部24と第1側方部25とを結ぶ第1補助部29が設けられ、第2水平移動部22の周囲には、中間部24と第2側方部26とを結ぶ第2補助部30が設けられている。これら第1補助部29及び第2補助部30が設けられることにより、足場部3の作業床は、右端に配される第1進退部27から左端に配される第2進退部28にわたってほぼ面一とされる。したがって、足場部3に搭乗した作業者は、第1進退部27から第2進退部28に一旦足場部3から降りることなく移動することができる。
【0045】
第1及び第2タワー1,2には、足場部3の中間部24、第1側方部25及び第2側方部26を担持支持するための担持機構31が設けられている。また、第1側方部25及び第2側方部26の手摺3bには、制御盤32がそれぞれ設けられている。
【0046】
制御盤32には、後述する制御部36が内装されている。制御盤32の前面には、図3に示すように、モニタ部33及び非常停止ボタン34が設けられている。モニタ部33は、タッチパネルを有する液晶表示器によって構成され、後述するように、第1昇降部11及び第2昇降部12の高さ位置を表示したり、傾き検出角度を任意の角度に調整したりする際に用いられる。非常停止ボタン34は、緊急時に第1及び第2昇降部11,12の昇降を停止するために押下されるものである。
【0047】
2つの制御盤32のうちいずれか一方の制御盤32には、操作ボックス35(図3参照)が接続されている。操作ボックス35は、足場部3の上昇及び下降等の昇降動作を作業者が操作入力するためのものである。操作ボックス35は、切替スイッチ35a、上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cを備えている。
【0048】
切替スイッチ35aは、3方向切替スイッチであり、上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cの押下操作が有効となるタワーを切り替えるものである。すなわち、切替スイッチ35aのつまみを左側に切り替えると第1タワー1で上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cが有効となり、つまみを右側に切り替えると第2タワー2で上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cが有効となり、つまみを中央に切り替えると第1及び第2タワー1,2で上昇及び下降スイッチ35b,35cが有効となる。
【0049】
上昇スイッチ35bは、第1昇降部11及び/又は第2昇降部12を上昇させるためのものであり、下降スイッチ35cは、第1昇降部11及び/又は第2昇降部12を下降させるためのものである。なお、上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cは、押下した場合にのみ制御部36に操作信号が伝達されるモーメンタリ型のスイッチとされる。
【0050】
上記のように、切替スイッチ35aが中央位置において上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cが操作されることにより、第1昇降部11及び第2昇降部12がともに昇降移動される。第1昇降部11及び第2昇降部12には第1水平移動部21及び第2水平移動部22を介して足場部3が連結されているため、足場部3が全体的に昇降移動される。
【0051】
図4は、本足場装置の電気的構成を示す図である。この足場装置では、制御盤32に例えばシーケンサからなる制御部36が備えられている。制御部36には、モニタ部33及び非常停止ボタン34が接続されている。制御部36は、モニタ部33に対して表示すべき表示データを送出するとともに、モニタ部33からのタッチパネルによる操作信号に基づいて各種のデータ処理を行う。制御部36は、非常停止ボタン34からの押下信号が入力されると、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を強制的に停止させるよう制御する。
【0052】
制御部36には、第1モータ13、第2モータ14、第1エンコーダ17及び第2エンコーダ18が接続されている。制御部36は、第1モータ13及び第2モータ14に対して所定のタイミングで駆動信号をそれぞれ送出する。これにより、第1モータ13及び第2モータ14は、この駆動信号に応じて独立にオン、オフ動作する。
【0053】
制御部36には、第1エンコーダ17及び第2エンコーダ18からそれらの検出値(パルス数)がそれぞれ入力される。制御部36は、第1及び第2エンコーダ17,18からの検出値が入力されると、その検出値を高さ位置データに変換し、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置を算出する。
【0054】
また、制御部36は、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置の差、すなわち足場部3の傾き度合いを算出する。そして、足場部3の高さ位置の差が予め定める規定値幅(例えば7cm)を超えた場合には、第1モータ13又は第2モータ14のオン、オフ動作を制御し、足場部3の傾き度合いを調整する。すなわち、制御部36は、後述する傾き調整制御(図5及び図6参照)に示すように、足場部3の昇降中に、足場部3が左右いずれかの方向に傾きかけた場合、その傾きを是正して足場部3がほぼ水平状態になるように調整する。
【0055】
制御部36には、操作ボックス35が接続され、操作ボックス35からの操作信号が入力される。具体的には、切替スイッチ35aによる切替信号、上昇スイッチ35b及び下降スイッチ35cによる操作信号が入力される。制御部36は、それらの切替信号及び操作信号に基づいて第1モータ13及び/又は第2モータ14をオン、オフ動作させ、これにより、例えば第1及び第2昇降部11,12を昇降させたり停止させたりする。
【0056】
制御部36には、第1及び第2昇降部11,12の上限リミットスイッチ37並びに第1及び第2昇降部11,12の下限リミットスイッチ38がそれぞれ接続される。制御部36は、上限リミットスイッチ37がストッパ19によってオン動作されたことの検出信号が入力されると、足場部3をその高さ以上、上昇させないように第1及び第2モータ13,14を停止させる。また、制御部36は、下限リミットスイッチ38がストッパ20によってオン動作されたことの検出信号が入力されると、足場部3をその高さ以下、下降しないように第1及び第2モータ13,14を停止させる。
【0057】
次に、制御部36における傾き調整制御について、図5に示すフローチャート、図6に示すタイミングチャート並びに図7及び図8に示す足場部3の傾き状態の変位図をそれぞれ参照して、より詳細に説明する。
【0058】
まず、制御部36は、作業者が操作ボックス35を介して上昇操作(上昇スイッチ35bを押下)したかあるいは下降操作(下降スイッチ35cを押下)したかの判別を行う(S1)。具体的には、制御部36は、上昇スイッチ35bからの上昇操作信号を受けたか、あるいは下降スイッチ35cからの下降操作信号を受けたかの判別を行う。
【0059】
まず、作業者が上昇操作した場合の制御について説明する。制御部36は、上昇スイッチ35bによる上昇操作信号を受けると(S1:「上昇」)、第1タワー1の第1モータ13及び第2タワー2の第2モータ14に対してそれぞれ正転方向に駆動するための駆動信号を送出する。これにより、第1モータ13及び第2モータ14は、正転方向にそれぞれ回転駆動される(S2)。
【0060】
第1タワー1では、第1モータ13が回転駆動されると、第1モータ13に枢軸された第1ピニオン15が回転する。そして、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動することにより、第1昇降部11が第1タワー1に沿って上昇する。同様に、第2タワー2では、第2モータ14が回転駆動されると、第2モータ14に枢軸された第3ピニオン(図略)が回転する。そして、第3ピニオンと第2ラック9とが協動することにより、第2昇降部12が第2タワー2に沿って上昇する。このように、第1及び第2昇降部11,12が上昇すると、それにともなって第1及び第2昇降部11,12に第1及び第2水平移動部21,22を介して連結された足場部3が上昇する(図7の(a)参照)。
【0061】
また、第1タワー1では、第1昇降部11が上昇すると、第1ラック8に歯合された第2ピニオン16が回転する。これにより、第2ピニオン16に枢軸された第1エンコーダ17から制御部36に対して検出値が出力される。また、第2タワー2では、第2昇降部12が上昇すると、第2ラック9に歯合された第4ピニオン(図略)が回転する。これにより、第4ピニオンに枢軸された第2エンコーダ18から制御部36に対して検出値が出力される。
【0062】
制御部36は、第1及び第2エンコーダ17,18の出力値を監視しており、第1及び第2エンコーダ17,18の出力値に基づいて、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2をそれぞれ算出する。次いで、制御部36は、算出された高さ位置H1,H2からそれらの差(H1−H2、H1>H2)、すなわち足場部3の傾き度合いを求める。そして、制御部36は、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置の差が予め定める規定値幅W(例えば7cm)を超えたか否かを判別する(S3)。すなわち、制御部36は、第1タワー1側が第2タワー2側より高くなるように傾き始めているか否かを検出する。ここで、規定値幅Wとは、足場部3がいずれかの方向に傾き始めた状態を検出するために予め設定された幅の値である。
【0063】
ステップS3において第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えた場合(S3:YES)、第1モータ13をオフ動作させる(S4、図6のt1参照)。すなわち、制御部36は、第1タワー1側が第2タワー2側より高くなるように傾き始めているとして(図7の(b)参照)、第1タワー1側の上昇を停止させる。第1モータ13がオフ動作された場合、この状態では、第2モータ14はオン動作を継続しているので、第2タワー2側が上昇する。これにより、足場部3の傾き度合いが是正され、足場部3はほぼ水平状態になるように変位する。
【0064】
次いで、制御部36は、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が0に到達したか否かを判別する(S5)。高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が0に到達したと判別した場合(S5:YES)、オフ動作していた第1モータ13をオン動作させる(S6、図6のt2参照)。これにより、第1及び第2モータ13,14がともに回転駆動されるので、足場部3はほぼ水平状態で上昇され(図7の(c)参照)、処理はステップS3に戻る。
【0065】
なお、ステップS5において第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2の差が0に到達したか否かを判別することに代えて、高さ位置H1,H2の差が所定の許容値幅以内に達したか否かを判別するようにしてもよい。許容値幅とは、足場部3がほぼ水平状態にあり、その傾き度合いが許容される幅の値を示す。すなわち、オフ動作していた第1モータ13をオン動作させるタイミングは、高さ位置の差がちょうど0になったときではなく、ある程度の許容値幅以内になったときとされてもよい。
【0066】
ステップS3において高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えていない場合(S3:NO)、ステップS7に進み、第1及び第2昇降部11,12の出力値H2,H1の差(H2−H1、H2>H1)が規定値幅Wを超えたか否かを判別する。すなわち、第2タワー2側が第1タワー1側より高くなるように傾き始めているか否かを検出する。
【0067】
ステップS7において高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が規定値幅Wを超えた場合(S7:YES)、第2モータ14をオフ動作させる(S8、図6のt3参照)。すなわち、制御部36は、第2タワー2側が第1タワー1側より高くなるように傾き始めているとして、第2タワー2側の上昇を停止させる。第2モータ14がオフ動作された場合、この状態では、第1モータ13はオン動作を継続しているので、第1タワー1側が上昇する。これにより、足場部3の傾き度合いが是正され、足場部3はほぼ水平状態になるように変位する。
【0068】
次いで、高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が0に到達したか否かを判別する(S9)。高さ位置H2,H1の差が0に到達したと判別した場合(S9:YES)、オフ動作していた第2モータ14をオン動作させる(S10、図6のt4参照)。これにより、第1及び第2モータ13,14がともに回転駆動されるので、足場部3はほぼ水平状態で上昇され、処理はステップS3に戻る。
【0069】
ステップS3において高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えておらず(S3:NO)、かつ高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が規定値幅Wを超えていない場合(S7:NO)、すなわち、足場部3がほぼ水平状態を維持したまま良好に上昇している場合、上限リミットスイッチ37がオン動作したか否かを判別する(S11)。つまり、第1タワー1又は第2タワー2において上限リミットスイッチ37が設置された高さ位置まで足場部3が上昇したか否かを判別する。
【0070】
上限リミットスイッチ37がオン動作しない場合(S11:NO)、制御部36は、上昇スイッチ35bからの操作信号が入力されなくなったか否かの判別を行う(S12)。すなわち、作業者が上昇スイッチ35bを押下しなくなったか否かが判別され、上昇スイッチ35bが押下され続けていると判別した場合(S12:NO)、ステップS3に戻る。一方、上昇スイッチ35bが押下されていないと判別した場合(S12:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S13)。これにより、足場部3の上昇が停止される。
【0071】
また、ステップS11において、上限リミットスイッチ37がオン動作されたと判別された場合も(S11:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S13)。これにより、足場部3は、作業者によって上昇スイッチ35bが押下され続けている場合であっても、上昇が強制的に停止される。
【0072】
このように、足場部3の上昇中に、足場部3の傾き度合いが所定の規定値幅Wを超えた場合には、高い方のタワー側に設置されているモータの駆動を停止し、傾き度合いを是正するといった傾き調整制御が行われる。したがって、足場部3に傾きが生じた場合に作業者が操作して傾きを修正するといった手間や、その操作のための無駄な作業時間を省くことができる。また、この傾き調整制御は、足場部3が上昇している間に自動的に足場部3の傾きが調整される。したがって、作業者の作業性を高めることができる。
【0073】
次に、作業者が下降操作した場合の制御について説明する。ステップS1において、制御部36は、下降スイッチ35cからの下降操作信号を受けると(S1:「下降」)、第1モータ13及び第2モータ14に対してそれぞれ逆転方向に駆動するための駆動信号を送出する。これにより、第1及び第2モータ13,14は、逆転方向にそれぞれ回転駆動される(S14)。
【0074】
第1及び第2モータ13,14が逆転方向に回転駆動すると、第1及び第2昇降部11,12が下降する。第1及び第2昇降部11,12が下降すると、それにともなって足場部3が下降する(図8の(a)参照)。
【0075】
次いで、制御部36は、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2の差(H1−H2、H1>H2)が規定値幅Wを超えたか否かを判別する(S15)。すなわち、制御部36は、第2タワー2側が第1タワー1側より低くなるように傾き始めているか否かを検出する。ステップS15において高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えた場合(S15:YES)、第2モータ14をオフ動作させる(S16)。制御部36は、第2タワー2側が第1タワー1側より低くなるように傾き始めているとして(図8の(b)参照)、第2タワー2側の下降を停止させる。第2モータ14がオフ動作された場合、第1タワー1側が下降する。これにより、足場部3の傾き度合いが是正され、足場部3がほぼ水平状態になるように変位する。
【0076】
次いで、高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が0に到達したか否かを判別する(S17)。高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が0に到達したと判別した場合(S17:YES)、オフ動作していた第2モータ14をオン動作させる(S18)。これにより、第1及び第2モータ13,14がともに回転駆動されるので、足場部3はほぼ水平状態で下降され(図8の(c)参照)、処理はステップS15に戻る。
【0077】
ステップS15において高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えていない場合(S15:NO)、ステップS19に進み、高さ位置H2,H1の差(H2−H1、H2>H1)が規定値幅Wを超えたか否かを判別する。すなわち、制御部36は、第1タワー1側が第2タワー2側より低くなるように傾き始めているか否かを検出する。
【0078】
ステップS19において高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が規定値幅Wを超えた場合(S19:YES)、第1モータ13をオフ動作させる(S20)。制御部36は、第1タワー1側が第2タワー2側より低くなるように傾き始めているとして、第1タワー1側の下降を停止させる。第1モータ13がオフ動作された場合、第2タワー2側が下降する。これにより、足場部3の傾き度合いが是正され、足場部3はほぼ水平状態になるように変位する。
【0079】
次いで、高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が0に到達したか否かを判別する(S21)。高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が0に到達したと判別した場合(S21:YES)、オフ動作していた第1モータ13をオン動作させる(S22)。これにより、第1及び第2モータ13,14がともに逆転方向に回転駆動されるので、足場部3はほぼ水平状態で下降され、処理はステップS15に戻る。
【0080】
ステップS15において高さ位置H1,H2の差(H1−H2)が規定値幅Wを超えておらず(S15:NO)、かつ高さ位置H2,H1の差(H2−H1)が規定値幅Wを超えていない場合(S19:NO)、すなわち、足場部3がほぼ水平状態を維持したまま良好に下降している場合、下限リミットスイッチ38がオン動作したか否かを判別する(S23)。つまり、第1及び第2タワー1,2において下限リミットスイッチ38が設置された高さ位置まで足場部3が下限したか否かを判別する。
【0081】
下限リミットスイッチ38がオン動作しない場合(S23:NO)、制御部36は、下降スイッチ35cからの操作信号が入力されなくなったか否かの判別を行う(S24)。すなわち、作業者が下降スイッチ35cを押下しなくなったか否かが判別され、下降スイッチ35cが押下され続けていると判別した場合(S24:NO)、ステップS15に戻る。一方、下降スイッチ35cが押下されていないと判別した場合(S24:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S13)。これにより、足場部3の下降が停止される。
【0082】
また、ステップS23において、下限リミットスイッチ38がオン動作されたと判別された場合も(S23:YES)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S13)。これにより、足場部3は、作業者によって下降スイッチ35cが押下され続けている場合であっても、下降が強制的に停止される。
【0083】
このように、足場部3が下降中の場合であっても、傾き度合いを是正するといった傾き調整制御が行われる。したがって、この場合も、足場部3に傾きが生じた場合に作業者が操作して傾きを修正するといった手間や、その操作のための無駄な作業時間を省くことができる。
【0084】
なお、本足場装置における制御盤32のモニタ部33においては、制御部36が第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2を検出することができることから、例えば図9(a)に示すように、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2を表示させることができる。また、制御部36は、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置H1,H2の差を算出することができることから、図9(b)に示すように、高さ位置H1,H2の差を表示させることができる。
【0085】
また、本足場装置においては、モニタ部33がタッチパネルによって構成されていることから、例えば規定値幅Wの値(傾き検出角度)を作業者が任意の値に変更することができる。すなわち、例えば作業者が規定値幅Wの値を修正する旨を入力すると、図9(c)に示すように、制御部36は、モニタ部33に現状の規定値幅Wの値を表示させるとともに、Wの値を増加させる増加スイッチ33a、Wの値を減少させる減少スイッチ33b、及びWの値を確定させる確定スイッチ33cをそれぞれ表示させる。そして、作業者が各スイッチ33a,33b,33cを操作して規定値幅Wの値を変更すると、制御部36は変更された規定値幅Wを記憶し、これを次回の傾き調整制御に用いる。
【0086】
このように、傾き検出角度としての規定値幅Wの値を任意に設定することができるので、例えば足場部3の傾き検出角度を変更したいときには、従来の構成のようにリミットスイッチを用いた場合に比べ、作業コストや部品コストを発生させることなく、傾き検出角度を容易に変更することができる。また、モニタ部33によって上記した許容値幅を変更するようにしてもよい。
【0087】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態では、第1及び第2タワー1,2、足場部3、第1及び第2昇降部11,12並びに制御盤32等の構成は、適宜設計変更可能である。また、第1及び第2昇降部11,12の高さ位置を検出するものとしては、上記した第1及び第2エンコーダ17,18に限るものではない。
【0088】
また、本発明の足場装置では、上記した傾き調整制御の他に、例えば足場部3の本体3a上に設置され、足場部3の傾きを直接的に検出する傾きセンサが別途設けられていてもよい。そして、この傾きセンサは、例えばエンコーダ17,18の故障時の安全装置として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 第1タワー
2 第2タワー
3 足場部
8 第1ラック
9 第2ラック
11 第1昇降部
12 第2昇降部
13 第1モータ
14 第2モータ
15 第1ピニオン
16 第2ピニオン
17 第1エンコーダ
18 第2エンコーダ
32 制御盤
33 モニタ部
35 操作ボックス
36 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びた第1タワー部と、
前記第1タワー部に所定の間隔を隔てて並設され、上下方向に延びた第2タワー部と、
前記第1タワー部に沿って昇降自在に設けられた第1昇降部と、
前記第2タワー部に沿って昇降自在に設けられた第2昇降部と、
前記第1昇降部及び前記第2昇降部に略側方方向に連結された足場部と、
前記第1昇降部に設けられ、この第1昇降部を昇降させるための第1駆動手段と、
前記第2昇降部に設けられ、この第2昇降部を昇降させるための第2駆動手段と、
前記第1昇降部が昇降されることによる前記第1昇降部の高さ位置を検出するための第1高さ検出手段と、
前記第2昇降部が昇降されることによる前記第2昇降部の高さ位置を検出するための第2高さ検出手段と、
前記第1高さ検出手段及び前記第2高さ検出手段の出力差に基づいて、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段のオン、オフ動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1昇降部及び前記第2昇降部の昇降時に前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段をそれぞれオン動作させ、
前記第1高さ検出手段及び前記第2高さ検出手段の出力差が予め設定された第1設定値に達したとき、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段のうちいずれか一方の駆動手段をオフ動作させ、
前記出力差が予め設定された前記第1設定値より小の第2設定値に達したとき、前記いずれか一方の駆動手段をオン動作させる、請求項1に記載の昇降式足場装置。
【請求項3】
前記第1タワー部に沿って上下方向に延びた第1ラックと、
前記第2タワー部に沿って上下方向に延びた第2ラックと、
前記第1ラックに歯合され、前記第1駆動手段の回転軸に取付けられた第1ピニオンと、
前記第1ピニオンに所定の間隔を隔てて前記第1ラックに歯合された第2ピニオンと、
前記第2ラックに歯合され、前記第2駆動手段の回転軸に取付けられた第3ピニオンと、
前記第3ピニオンに所定の間隔を隔てて前記第2ラックに歯合された第4ピニオンと
を備え、
前記第1高さ検出手段は、前記第2ピニオンの回転軸に取付けられており、
前記第2高さ検出手段は、前記第4ピニオンの回転軸に取付けられている、請求項1または2に記載の昇降式足場装置。
【請求項4】
前記第1高さ検出手段は、前記第2ピニオンの回転数をパルスに変換して前記制御手段に出力するパルスエンコーダであり、
前記第2高さ検出手段は、前記第4ピニオンの回転数をパルスに変換して前記制御手段に出力するパルスエンコーダである、請求項3に記載の昇降式足場装置。
【請求項5】
前記第1設定値及び/又は前記第2設定値を設定変更可能な設定入力手段をさらに備える、請求項2ないし4のいずれかに記載の昇降式足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−162970(P2012−162970A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36414(P2011−36414)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000167233)光洋機械産業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】