説明

昇降移動式張り出し足場

【課題】作業をすべき所定の場所までスムーズに移動させてそこで固定することができるとともに、作業台に張り出し部を備えかつ作業台と張り出し部の高さを広範囲に手際よく変更することを可能とする昇降移動式張り出し足場を提供し、もって外壁または建物の外周において高所の作業を効率的かつ安全におこなうことができるようにする。
【解決手段】接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基台フレームと、複数段の昇降自在な水平フレームと、作業台と、作業台と床面において面一となる張り出し部を備えることを特徴とする昇降移動式張り出し足場。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の施工工事、内装及び外装工事、補修工事等に使用される張り出し足場であって、張り出し足場を昇降移動式にすることによって、その作業性と安全性を向上してなる昇降移動式張り出し足場に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建築現場や補修現場等で、外壁または建物の外周において高所の作業を行う場合は、上部の張り出し部に足場板を架け渡した枠組み足場を外壁または建物の外周に沿って配置させ、枠組み足場の張り出し足場板の上で作業者に作業させる方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−126958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような張り出し足場板を架け渡した枠組み足場を組み立てる作業をする場合は、外壁または建物の外周の外側に張り出し足場板を固定配置させ、その固定配置された張り出し足場板の上に作業者が載った状態で手摺りを取り付ける作業をすることになるため、枠組み足場から作業者が身を乗り出して作業をする場合があり、作業がしづらいとともに危険であるという問題があった。
【0005】
更に、このように外壁または建物の外周の外側に張り出し足場板を固定配置してなる張り出し足場においては、作業者が容易にかつ安全に作業できる範囲は極めて狭い。したがって、張り出し足場板を一旦固定配置してなる張り出し足場の作業範囲から水平方向に外れる場所で作業をしようとすると、張り出し足場板を別の場所に配置し直すという手間がかかった。また、この張り出し足場は高さも固定されているため、張り出し足場板を一旦固定配置してなる張り出し足場の作業範囲から上下方向に外れる場所で作業をしようとする場合にも、同じ場所であるにもかかわらず、張り出し足場板の高さを変更するために張り出し足場板を配置し直すという手間がかかった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み、作業をすべき所定の場所までスムーズに移動させてそこで固定することができるとともに、作業台に張り出し部を備えかつ作業台と張り出し部の高さを広範囲に手際よく変更できる張り出し足場を提供し、もって外壁または建物の外周において高所の作業を効率的かつ安全におこなうことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、作業をすべき場所にスムーズに移動させて固定することができるとともに、作業台に張り出し部を備えかつ作業台と張り出し部の高さを広範囲に手際よく変更できる張り出し足場を開発すべく、種々検討を重ねた。その結果、次の(a)〜(g)の知見を得た。
【0008】
(a) 張り出し足場を所定場所に容易に移動させることができるようにするためには、接地面に車輪を備える矩形の基台フレーム(枠体)の上に作業台を設置し、さらに作業台には張り出し部を連結することによって、張り出し足場を形成すればよい。そして、張り出し足場を所定場所に固定するためには、たとえば、接地面にブレーキロック付き車輪を備えるとともにアウトリガーでさらに固定すればよい。
【0009】
そして、作業台の平面形状としては、たとえば長方形を採用し、その上で、適宜、その長方形の作業台の短辺又は長辺に別途張り出し部を面一となるように連結して、張り出し足場を形成すればよい。
【0010】
作業台に連結する張り出し部は、作業台とは別に形成して、所定場所に移動した後に作業台に連結して用いてもよいが、張り出し部を作業台側に折り畳み可能になるように連結してもよい。たとえば、ヒンジ構造を介して張り出し部を回動可能に接続してもよい。回動方向としては、上方と下方のいずれでもよいが、上方に回動すると張り出し部を作業台上に収納できるからより好ましい。
【0011】
建物内部の天井には、コンクリートやH形鋼からなる梁が形成されていることが多く、天井に近い高所で作業を行う場合には、これらの梁が邪魔をして、張り出し足場を作業すべき場所まで移動することができないことがあるが、張り出し部を取り外し可能または折り畳み可能にすると、建物内部の天井に近い高所で作業を行う場合であっても、天井に設けられた梁を避けて、張り出し足場を作業すべき場所まで移動することが可能となる。
【0012】
(b) 作業範囲が広い場合には、所定場所に一旦固定した張り出し足場の張り出し部の上に作業者が載っても、作業者の手が届かないために、柱や壁などの側面において作業できない個所が残ることがあり得る。この場合には張り出し足場を一旦固定した場所から、作業者の手が届く所定場所まで張り出し足場を移動し、そこで固定した後に作業すればよい。このとき、張り出し部を一旦取り外すか又は上方若しくは下方に回動してから張り出し足場を移動してもよいが、張り出したまま移動してもよい。
【0013】
そして、所定場所に固定した張り出し足場をその都度移動するのが面倒である場合には、張り出し足場を複数台用意し、これを水平方向に連結することによって広い作業台を形成してもよい。こうすれば、所定場所に固定した張り出し足場を移動することなく、広い作業範囲をカバーすることができる。
【0014】
たとえば、張り出し足場を複数台用意し、作業現場までこの張り出し足場を1台ずつ移動させ、作業現場において複数台の張り出し足場を水平方向に連結すればよい。また、このように複数台の張り出し足場が連結した状態でその全体を水平方向に移動させたのち、所定位置で固定することもできる。
【0015】
複数台の張り出し足場を水平方向に連結する手段としては、たとえば、隣接する張り出し足場の基台フレームの間を連結部材で連結すればよい。あるいは、隣接する張り出し足場の基台フレームの間を連結する連結部材の間をさらに筋交で連結してもよい。
【0016】
そして、複数台の張り出し足場を水平方向に連結する位置としては、たとえば、張り出し足場の作業台が長方形の場合には、隣接する張り出し足場の作業床の長辺同士を向かい合わせて少なくとも2台を連結するか、隣接する張り出し足場の作業床の短辺同士を向かい合わせて少なくとも2台を連結するか、あるいは、隣接する張り出し足場の作業床の長辺同士を向かい合わせるとともに短辺同士を向かい合わせて少なくとも3台を連結してもよい。さらに、隣接する張り出し足場の作業床の長辺同士又は短辺同士を直接に向かい合わせる代わりに、布板を介して向かい合わせてもよい。
【0017】
(c) 次に、作業台の高さの変更については、作業台を長さ可変の支柱で支えるのではなく、スライダークランクを介して複数段の水平フレーム(枠体)を順に積み重ね、フレーム間に設けられたスライダークランクを伸縮させることによって、作業台の高さの変更をすれば、張り出し足場の作業台の高さを広範囲にかつ手際よく変更できる。なお、フレーム(枠体)の段数とフレーム間に設けられるスライダークランクの段数は、格別に規定するものではないが、2〜4段程度とするのが好ましく、実用的でもある。
【0018】
なお、X字形のスライダークランクは折り畳みと伸張ができるものであり、そのX字形のスライダークランクの一部又は全部を手動で伸縮することによって、作業床の昇降を可能とし、そしてその高さを段階的に固定することが可能である。また、スライダークランクを伸張した後のフレーム間に設けられた作業台への昇降用タラップに支柱の役割を持たせることができる。したがって、スライダークランクを伸張した後のフレームの高さを固定することができ、もって作業台の高さを固定することができる。
【0019】
(d) すなわち、接地面に車輪を備える矩形の基台フレーム(枠体)の上に、一段又は複数段の水平フレーム(枠体)をX字形のスライダークランクを介して順に積み重ね、そして、昇降用タラップ(梯子)を備えることによって、作業をすべき場所までスムーズに移動させて固定することができるとともに、作業台の高さを広範囲にかつ手際よく変更できる昇降移動式の足場を形成することができる。
【0020】
なお、作業台は、最上段の水平フレームを作業台フレームとして用いて設置してもよいし、最上段の水平フレームの上に別の作業台フレームを設けて設置してもよい。このように設置された作業台の四隅に、長さ可変の手摺り柱を立設し、そして、隣接する手摺り柱の間には手摺りバーを取り付け、さらに四辺の上に巾木を取り付ければ、作業台の組み立てが完成する。作業台の組み立ては、移動前に行っても良いし、移動後に行っても良い。建物内部の天井には、コンクリートやH形鋼からなる梁が形成されていることが多く、天井に近い高所で作業を行うときには、これらの梁が作業台の手摺りバーや手摺り柱に干渉することがあるが、このときはこれらの梁に干渉する手摺りバーや手摺り柱を外したり又は短くすることで対処できる。なお、最上段の水平フレームの上に別の作業台フレームを設けた場合には、昇降移動式の足場の保管・運搬時には、手摺柱等を含めて作業台の全体を水平フレームから取り外すことができる。
【0021】
そして、上述したとおり、その長方形の作業台には、面一となるように張り出し部を連結することにより、昇降移動式張り出し足場を形成することができる。このような昇降移動式張り出し足場は、垂直方向の伸縮が可能であるため、その高さを低くして保管や運搬をすることができる。
【0022】
このように、作業をすべき所定の場所までスムーズに移動させて固定した上で、所定の高さまで伸張した昇降移動式張り出し足場において、作業者が高所で作業をすることになる。したがって、作業者の高所からの墜落を防止するために、作業台には手摺が必要となる。作業台の手摺は、所定場所まで移動する前に予め昇降移動式張り出し足場に取り付けておいても良いが、所定場所まで移動した後に取り付けても良い。この場合、手摺の取付は昇降移動式張り出し足場を垂直方向に収縮した状態、すなわち、作業台が低所にある状態で安全に手摺の取付作業をした後、昇降移動式張り出し足場を垂直方向に伸張することによって、作業者が高所で安全に作業をすることができる。
【0023】
(e) また、このような昇降移動式張り出し足場は垂直方向の伸縮が可能であるため、昇降移動式張り出し足場を保管する際には、その高さを低くすることによって、高さ方向の収納スペースを節約することができる。また、作業台を水平フレームから取り外し可能とすることによって、収納時の高さを低減することができる。さらに、作業台と水平フレームを、矩形の基台フレームから取り外し可能とすることによっても、収納時の高さを低減することができる。そして、昇降移動式張り出し足場の作業床を折り畳み可能にすることによって、幅方向の収納スペースを節約することもできる。
【0024】
(f) このような昇降移動式張り出し足場は、張り出し部の重みとその張り出し部に作業者が載ったときの重みで重心が基台フレーム上から外れる場合があり、張り出し足場全体が転倒するおそれがある。したがって、その転倒防止機構を設けるのが好ましい。
【0025】
転倒防止機構としては、基台フレーム上への重りを設置することによって、ウェイトバランスを取ることができる。または、張り出し足場を設置する場所に天井がある場合には、基台フレームまたは水平フレームに、長さ可変の天井突っ張り材を取り付けて、この突っ張り材の上端部を天井に突っ張らせてもよい。このとき、この突っ張り材の上端部には、緩衝材付きのジャッキベースを取り付けるのが好ましい。
【0026】
(g) また、昇降移動式張り出し足場の作業台には張り出し部が連結されるが、張り出し部の負荷とその張り出し部に作業者が載ったときの負荷に耐えて、張り出し部を下方から支持することができる長さ可変の斜材を、基台フレームと張り出し部との間に斜めに設置するのが好ましい。
【0027】
長さ可変の斜材としては、斜材を内筒と外筒からスライド可能に構成し、固定ピンで止めることによって所定長さに調節することができるものが好ましい。
【0028】
本発明に係る、作業をすべき場所までスムーズに移動させて固定することができるとともに、作業台の高さを広範囲にかつ手際よく変更できる昇降移動式張り出し足場は、これらの知見に基づいて完成したものであり、本発明は次の(1)〜(5)の昇降移動式張り出し足場を要旨とする。
【0029】
(1) 接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基台フレームと、複数段の昇降自在な水平フレームと、作業台と、作業台と床面において面一となる張り出し部を備えることを特徴とする昇降移動式張り出し足場。
【0030】
(2) 張り出し部が作業台の端面に対して回動可能であることを特徴とする、上記(1)の昇降移動式張り出し足場。
【0031】
(3) 転倒防止機能を有することを特徴とする、上記(1)又は(2)の昇降移動式張り出し足場。
【0032】
(4) 張り出し部を下方から支持することができる長さ可変の斜材を、基台フレームと張り出し部との間に斜めに設置することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの昇降移動式張り出し足場。
【0033】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの昇降移動式張り出し足場を水平方向に複数台連結してなる昇降移動式張り出し足場。
【発明の効果】
【0034】
本発明の昇降移動式張り出し足場は、作業をすべき所定の場所までスムーズに移動させてそこで固定することができるとともに、作業台に張り出し部を備えかつ作業台と張り出し部の高さを広範囲に手際よく変更することを可能とするので、高所の作業を効率的かつ安全におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る昇降移動式張り出し足場の一例であり、上から1段目と2段目のスライダークランクを伸張した状態を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図、そして、(c)が平面図である。
【図2】図1の昇降移動式張り出し足場のスライダークランクをすべて垂直方向に伸張した状態を示す正面図である。
【図3】図1の昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んだ状態を示す正面図である。
【図4】図1の昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んだ上で作業台の手摺り柱を短くした状態を示す正面図である。
【図5】図1の昇降移動式張り出し足場を、建物内部の天井に近い高所で作業を行う場合の作業例を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
【図6】図1の昇降移動式張り出し足場を用いて作業した後、コンパクトに折り畳んだ状態の昇降移動式張り出し足場を示す正面図である。
【図7】本発明に係る昇降移動式張り出し足場の他の例であり、図1の昇降移動式張り出し足場を2台平行に並べ、その間に布板を介して連結したものであって、2つの作業台と2つの張り出し部と1つの布板によって、コの字形の作業面を形成している。上から1段目と2段目のスライダークランクを伸張した状態を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が平面図、そして、(d)が手摺配置図(平面図)である。
【図8】図7の昇降移動式張り出し足場を、建物内部の天井に近い高所で作業を行う場合の作業例を示す。(a)が正面図、(b)が手摺配置図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を用いて、本発明に係る昇降移動式張り出し足場を説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明に係る昇降移動式張り出し足場の一例であり、(a)が正面図、(b)が右側面図、そして、(c)が平面図である。ここでは、上から1段目と2段目のスライダークランクを伸張した状態を示す。
【0038】
この昇降移動式張り出し足場は、接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基台フレーム5と3段の昇降自在な水平フレーム40からなり、さらに、張り出し部20を作業台60と床面において面一になるように備えるものである。ここでは、張り出し部20は、作業台60の床の短辺とヒンジ構造67を介して上方に回動可能に接続されているので、張り出し部20は作業台60の床面の上に収納することができるようになっている。
【0039】
さらに、この昇降移動式張り出し足場は、張り出し足場全体が転倒することを防止するために、転倒防止機構が設けられている。
【0040】
すなわち、基台フレーム5に重り8を載置するとともに、長さ可変の天井突っ張り材30を、基台フレーム5または水平フレーム40に取り付けることによって、この突っ張り材30の上端部を、緩衝材付きのジャッキベース75を介して天井に突っ張らせることができる。この例では、上から2段目の水平フレーム40に突っ張り材30の下端部が取り付けてある。
【0041】
矩形の基台フレーム5の四隅には基台フレームの支柱7が立設され、その下端部にはブレーキロック付き車輪6が取り付けられている。また、基台フレームの各支柱7の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、基台フレームの各支柱7を軸として水平方向に回動しうるように設置されている。この昇降移動式張り出し足場の移動は、車輪6のブレーキロックを外し、ジャッキベース75を持ち上げた状態のまま、昇降移動式張り出し足場を水平方向に押すことによってなされる。そして、所定の場所まで移動した後、車輪6のブレーキロックを掛けるとともに、ジャッキベース75を接地させることで所定の場所で固定することができる。
【0042】
矩形の基台フレーム5の上には、昇降自在な矩形状の水平フレーム40が3段設けられ、各フレーム間には、2本の斜材を交叉し軸着してなるX字形のスライダークランク50が縦方向に2列立設されている。
【0043】
この例では、基台フレーム5は最下段の水平フレームを兼ねているが、基台フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けてもよい。基台フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けた場合には、基台フレーム5と水平フレームとを分離できる。したがって、昇降移動式張り出し足場の移動・運搬の際には、水平フレームを含む上部部材を基台フレームから取り外すことができるので、作業が楽になるとともに、保管の際にはそのスペースを有効に使うことができる。
【0044】
この昇降移動式張り出し足場の昇降は、各フレーム間に設けられたX字形のスライダークランク50の2本の斜材を水平方向にスライドさせることによってなされる。すなわち、X字形のスライダークランクが上方向に伸張したときは、その上側の水平フレームが上昇し、逆に、X字形のスライダークランクが下方向に収縮したときは、その上側の水平フレームが下降する。
【0045】
ここで、昇降移動式張り出し足場を上昇させるときは、各フレーム間に設けられたX字形のスライダークランク50を上方向に伸張させた後に、各フレームの両端面において、それぞれ立設可能に取り付けられた長材70と横材71からなる支柱で上部の水平フレームを支持することによって水平フレームの高さを固定する役割を果たすとともに、この支柱は作業台60への昇降用タラップとしての役割を担うことになる。
【0046】
逆に、昇降移動式張り出し足場を下降させるときは、上下のフレームの間の両側面にそれぞれ立設可能に取り付けられた、長材70と横材71からなる支柱を内側に押し倒すことによって上部の水平フレーム40の支持を外し、X字形のスライダークランク50を下方向に収縮させる。そして、その後、留め具52を上方に回動させて内側に固定することによって、上側の水平フレーム40をその高さで固定することができる。
【0047】
なお、この昇降移動式張り出し足場においては、最上段の水平フレーム40の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、隣接する手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられ、さらに四辺の上には巾木64が取り付けられて、作業台60の組み立てが完成する点は同じであり、その作業台の組み立ては、移動前に行っても良いし、移動後に行っても良い。
【0048】
この例では、この昇降移動式張り出し足場の最上段の水平フレーム40は作業床用フレームを兼ねているため、最上段のX字形のスライダークランク50を上方向に伸張した後に最上段の水平フレーム40を支持するための支柱69の長材70は、最上段の水平フレーム40の下部に設けられた横部材41を介して最上段の水平フレーム40を支持することによって最上段の水平フレーム40を所定高さで固定する。
【0049】
なお、最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けることができるが、この場合には、最上段のX字形のスライダークランク50を上方向に伸張した後に最上段の水平フレーム40を支持するための支柱69の長材70は、最上段の水平フレーム40を直接支持することによって最上段の水平フレーム40を所定高さで固定することができるので、最上段の水平フレーム40の下部に横部材41を設ける必要はない。
【0050】
作業者は、この昇降移動式張り出し足場を所定の場所まで移動させ、その場所でこの昇降移動式張り出し足場を固定した後、作業台の床面上に収納された張り出し部20を反対方向に回動することによって外方に展開し、次いで、各段のX字形のスライダークランク50の伸張作業をすることによって、最上段の水平フレーム40を所定高さまで上昇させる。すなわち、所定高さに対応してスライダークランク50の伸張作業を行う段数を決め、必要な段数分だけスライダークランク50の伸張作業を行う。この図1においては、最下段のスライダークランク50は折り畳んだまま、上から1段目と2段目のスライダークランク50をそれぞれ伸張することによって、作業台60と張り出し部20の床面を所定の高さまで上昇させる。なお、最上段の水平フレーム40の所定高さとは、作業者が作業台60および張り出し部20の上で作業すべき場所の高さに応じて決定される。その後、各フレーム間の支柱69をフレーム間に立てかけることによって、水平フレーム40の高さを固定する。
【0051】
その後、張り出し部20を下方から支持する斜材21をその長さを調節しながら、基台フレーム5と張り出し部20の下面との間に固定した後、向かって左方のフレーム間の支柱69(昇降用タラップでもある)を登って作業台に上がり、内装及び外装工事等の作業をすることになる。
【0052】
図2は、この昇降移動式張り出し足場の水平フレームのすべてを垂直方向に伸張した状態を示す正面図である。すなわち、3段のスライダークランク50のすべてを伸張させた状態が、作業台60と張り出し部20の高さの最高レベルとなる。この状態で、作業者が作業台60および張り出し部20の上に載って、建物の内外壁の高い場所における作業をすることができる。
【0053】
図3は、この昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んだ状態を示す正面図である。すなわち、3段のスライダークランク50のすべてを折り畳んだ状態であり、この状態が作業台60と張出部20の高さの最低レベルとなる。この状態で、作業者が作業台60および張り出し部20の上に載って、建物の内外壁の比較的低い場所における作業をすることができる。なお、この高さを保ったままで、別の作業すべき場所まで移動することが可能であるし、一般建築物内の扉の幅の通り抜けやエレベーターへの積載をすることが可能である。
【0054】
図4は、この昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んだ上に、さらに作業台の手摺り柱を短くした状態を示す正面図である。
【0055】
図4に示すように作業台の手摺り柱を短くしたり、あるいはさらに手摺りバーを取り外したりすることができるので、建物内部の天井が低かったり、天井にコンクリートやH形鋼からなる梁が形成されていて、この昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んでも、作業台の手摺り柱や手摺りバーが干渉する場合であっても、この昇降移動式張り出し足場を設置することができる。また、一般建築物内の扉やエレベーターが低くて、昇降移動式張り出し足場を垂直方向に折り畳んだだけでは扉の通り抜けやエレベーターへの積載をすることができない場合であっても、この昇降移動式張り出し足場を設置することができる。
【0056】
このように、この昇降移動式張り出し足場は、スライダークランクを伸縮させるだけで、作業台の高さを広範囲にかつ手際よく変更することができる。また、作業台の手摺り柱を短くしたり、あるいはさらに手摺りバーを取り外したりすることができるので、さらに昇降移動式張り出し足場全体の高さを低くすることができる。なお、この例ではスライダークランクは3段であるが、その段数は格別限定されるものではない。作業すべき場所の高さに応じて、スライダークランクを2段以下または4段以上の段数としてもよい。
【0057】
図5は、この昇降移動式張り出し足場でもって、建物内部の天井に近い高所で作業を行う場合の作業例を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
【0058】
図にみるごとく、この昇降移動式張り出し足場は、天井29に梁31が設けられていても、その梁31を避けて設置することができるので、作業をすべき場所までスムーズに移動させて固定することができる。ここでは、作業台の上部の手摺りバーを一部取り外すことによって、梁31との干渉を避けている。
【0059】
図6は、この昇降移動式張り出し足場を用いて作業した後、コンパクトに折り畳んだ状態を示す正面図である。
【0060】
この昇降移動式張り出し足場は、作業台形成部材はその床面を形成するフレームを除いて、すべて取り外すことができる。すなわち、手摺り柱62、手摺りバー63および巾木64を取り外した上で、張り出し部20を上方に回動させて作業台60の床面上に折り畳んで載置することができる。
【0061】
その結果、昇降移動式張り出し足場をさらにコンパクトに折り畳むことができるので、倉庫等に保管する際にも、そのスペースを有効に使うことができる。
【0062】
なお、最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けた昇降移動式張り出し足場の場合には、昇降移動式張り出し足場の運搬ないし保管時には、作業床を含めて作業台60の全体も取り外すことができる。また、基台フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けた場合には、基台フレーム5と水平フレームとを分離できるので、昇降移動式張り出し足場の移動・運搬の際には、水平フレームを含む上部部材を基台フレームから取り外すことができるので、作業が楽になるとともに、保管の際にはそのスペースをさらに有効に使うことができる。
【実施例2】
【0063】
図7は、本発明に係る昇降移動式張り出し足場の他の例であり、図1の昇降移動式張り出し足場を2台平行に並べ、その間に布板を介して連結したものであって、2つの作業台と2つの張り出し部と1つの布板によって、コの字形の作業面を形成している。上から1段目と2段目のスライダークランクを伸張した状態を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が平面図、そして、(d)が手摺配置図(平面図)である。
【0064】
この連結された昇降移動式張り出し足場を構成するそれぞれの昇降移動式張り出し足場は、実施例1で説明したものと基本的には同じである。したがって、図7においては、図1〜6において既に示した部材については、符号を付すのを省いたものもある。
【0065】
すなわち、接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基台フレーム5と3段の昇降自在な水平フレーム40からなり、さらに、張り出し部20を作業台60と床面において面一になるように備えるものである。ここでは、張り出し部20は、作業台60の床の短辺とヒンジ構造67を介して上方に回動可能に接続されているので、張り出し部20は作業台60の床面の上に収納することができるようになっている。
【0066】
さらに、この昇降移動式張り出し足場は、張り出し足場全体が転倒することを防止するために、転倒防止機構として、基台フレーム5に重り8を載置するとともに、長さ可変の天井突っ張り材30を、基台フレーム5または水平フレーム40に取り付けることによって、この突っ張り材30の上端部を、緩衝材付きのジャッキベース75を介して天井に突っ張らせることができるようになっている。この例では、上から2段目の水平フレーム40に突っ張り材30の下端部が取り付けてある。
【0067】
なお、ここでは図1で示した拡幅部を有しない昇降移動式張り出し足場を2台用いたが、作業すべき場所の立体形状に応じて、そのうちの1台または2台を拡幅可能な作業台を有する昇降移動式張り出し足場に代えてもよい。
【0068】
なお、拡幅可能な作業台を有する昇降移動式張り出し足場を用いる場合には、作業台を拡幅可能とするために、最上部の水平フレーム40の上に設置される作業台60の床面が、1個の水平の本体部と、この本体部のそれぞれの側方に設けられた2個の拡幅部から構成し、そして、本体部と拡幅部の間にヒンジ構造を設け、拡幅部はこのヒンジ構造を介して、本体部に対して上方に回動可能に接続すればよい。また、当て材を拡幅部の基部の下部に設置することで、拡幅部が本体部より下方に回動しないようにすることができる。
【0069】
この昇降移動式張り出し足場を折り畳んだ状態でそれぞれ作業現場まで移動させ、作業現場において2台の昇降移動式張り出し足場を、並行に並べて、布板25を介して水平方向に連結して昇降移動式張り出し足場を所定の高さに組み立てても良いし、2台の昇降移動式張り出し足場を、並行に並べて、所定の高さに組み立ててから布板25を介して水平方向に連結しても良い。
【0070】
なお、布板としては、仮設足場等の足場板として知られる布板(床付き布枠)のうち、適宜、昇降移動式張り出し足場の作業場所の立体形状に見合った長辺と短辺を有するものを使用すればよい。布板25には、その両端に掴み金具(図示せず)が取り付けられているから、これを張り出し部または作業台の枠に掴ませることによって、布板25を2台の昇降移動式張り出し足場の間に設けることができる。
【0071】
図8は、この連結した昇降移動式張り出し足場でもって、建物内部の天井に近い高所で作業を行う場合の作業例を示す。(a)が正面図、(b)が手摺配置図(平面図)である。
【0072】
図8(a)にみるごとく、この連結した昇降移動式張り出し足場は、天井29に梁31が設けられていても、手摺柱62や手摺バー63並びに天井突っ張り材30を矢印方向に下降する又は取り外すことによって、その梁31を避けて設置することができるので、作業をすべき場所までスムーズに移動させて固定することができる。
【0073】
また、図8(b)にみるごとく、この連結した昇降移動式張り出し足場は、2つの作業台と2つの張り出し部と1つの布板によって、コの字形の面一の作業面を形成しているので、作業者は作業すべき場所に容易にアクセスすることができる。
【0074】
そして、この連結した昇降移動式張り出し足場は、実施例1と同様に、作業台形成部材はその床面を形成するフレームを除いて、すべて取り外すことができる。すなわち、手摺り柱62、手摺りバー63および巾木64を取り外した上で、張り出し部20を上方に回動させて作業台60の床面上に折り畳んで載置することができる。その結果、昇降移動式張り出し足場をコンパクトに折り畳むことができるので、一般建築物内の扉の幅の通り抜けやエレベーターへの積載が可能となる。また、倉庫等に保管する際にも、そのスペースを有効に使うことができる。
【0075】
さらに、実施例1と同様に、最上段の水平フレーム40とは別に作業床用のフレームを設けた昇降移動式張り出し足場を連結した場合には、昇降移動式張り出し足場の運搬ないし保管時には、作業床を含めて作業台60の全体も取り外すことができる。また、基台フレーム5とは別に最下段の水平フレーム40を設けた場合には、基台フレーム5と水平フレームとを分離できるので、その昇降移動式張り出し足場の移動・運搬の際には、水平フレームを含む上部部材を基台フレームから取り外すことができるので、作業が楽になるとともに、保管の際にはそのスペースを有効に使うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、作業をすべき所定の場所までスムーズに移動させてそこで固定することができるとともに、作業台に張り出し部を備えかつ作業台と張り出し部の高さを広範囲に手際よく変更することを可能とする昇降移動式張り出し足場を提供するので、外壁または建物の外周において高所の作業を効率的かつ安全におこなうことができる。
【符号の説明】
【0077】
5 基台フレーム
6 ブレーキロック付き車輪
7 基台フレームの支柱
8 重り
10 作業者
20 張り出し部
21 斜材
22 固定ピン
25 布板
29 天井
30 天井突っ張り材
31 梁
40 水平フレーム
41 水平フレームの横部材
50 X字形のスライダークランク
51 ピン
52 留め具
60 作業台
62 手摺り柱
63 手摺りバー
64 巾木
67 ヒンジ構造
69 フレーム間の支柱(昇降用タラップ)
70 フレーム間の支柱の長材
71 フレーム間の支柱の横材
75 ジャッキベース
76 アウトリガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に車輪を備えるとともに所定場所に移動かつ固定可能な矩形の基台フレームと、複数段の昇降自在な水平フレームと、作業台と、作業台と床面において面一となる張り出し部を備えることを特徴とする昇降移動式張り出し足場。
【請求項2】
張り出し部が作業台の端面に対して回動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の昇降移動式張り出し足場。
【請求項3】
転倒防止機能を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の昇降移動式張り出し足場。
【請求項4】
張り出し部を下方から支持することができる長さ可変の斜材を、基台フレームと張り出し部との間に斜めに設置することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の昇降移動式張り出し足場。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の昇降移動式張り出し足場を水平方向に複数台連結してなる昇降移動式張り出し足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−281159(P2010−281159A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136791(P2009−136791)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】