説明

昇降装置およびその使用方法

【課題】外部エアや電気等の外部動力を要することなく、被昇降物について素早い昇降が可能となるとともに、簡単な構造を実現することができ、低コストでフレキシブルな対応が可能となる昇降装置およびその使用方法を提供すること。
【解決手段】被昇降物を支持するテーブル2と、テーブル2の昇降にともないオイル10が出入するシリンダ室13を有する油圧シリンダ3と、所定の大きさの押上力をテーブル2に対して作用させることで、テーブル2の上昇操作を補助する補助ばね機構4と、シリンダ室13に対してオイル10が流通可能に接続される補助タンク5と、シリンダ室13および補助タンク5に対してオイル10が流通可能に接続され、シリンダ室13に対してオイル10による油圧を供給する手動ポンプ6と、補助タンク5および手動ポンプ6のいずれかを選択的にシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とする手動操作弁7とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の昇降に好適に用いられる昇降装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の物品等を昇降(上下動)させるための昇降装置においては、その作動力として油圧が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、かかる昇降装置においては、油圧が用いられて伸縮する油圧シリンダ部が備えられ、その油圧シリンダ部の伸縮が物品等の昇降に用いられる。こうした油圧が用いられる昇降装置(油圧昇降装置)には、工場や倉庫等において自動車部品等の荷物を棚に上げる際等の、重量物の昇降の際に活用される手動のもの(簡易リフター等と称される)がある。このような油圧昇降装置においては、従来、次のような問題がある。
【0003】
すなわち、油圧昇降装置においては、一般的に、昇降させる対象である重量物等の物品等(以下「被昇降物」という。)を支持し昇降可能に設けられるテーブル等の支持台が備えられる。そして、従来の油圧昇降装置においては、前記のような支持台が被昇降物を支持した状態にあるかないか(支持台上に対する被昇降物の有無)に関らず、支持台が略一定のスピードで動く構造となっている。言い換えると、従来の油圧昇降装置は、その支持台の動くスピードが変更できない構成となっている。
このため、支持台がその上昇過程において被昇降物からの荷重を受け始めたり被昇降物が載置されたりする高さ位置である所定のセット高さに達するまでの動きが、大変遅く感じられる場合がある。
【0004】
従来の油圧昇降装置において、その支持台が略一定のスピードで動くのは、油圧シリンダ部に対して油圧ポンプ等によって供給される圧油の流量が一定であることに基づく。したがって、従来の油圧昇降装置において支持台の動くスピードを変化させるためには、油圧シリンダ部におけるシリンダの断面積の変更や、油圧シリンダ部に対して圧油を供給するための油圧ポンプ等の交換が必要となる。
しかし、このように油圧昇降装置において支持台の動くスピードを変化させるための対応をとることは、装置構造の複雑化を招き、コストアップの原因となる。
【0005】
一方で、工場等で用いられる昇降装置には、支持台の昇降に際して、外部エアや電気等の外部動力が用いられるものがある。こうした外部動力が用いられる構成においては、その外部動力の調整等により、支持台の動くスピードの調整が可能となる。
しかし、外部動力が用いられる構成においては、エアを供給するための配管や電気を供給するための配線等が必要となり、これらが昇降装置に対して連結されることとなる。このため、昇降装置についての移動範囲や移動経路が制約され、持ち運びが簡単等のフレキシブルな対応を可能とする構成の妨げとなる。また、昇降装置に対して外部動力を供給するための設備も必要となる。
【特許文献1】実開昭61−132395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、外部エアや電気等の外部動力を要することなく、被昇降物について素早い昇降が可能となるとともに、簡単な構造を実現することができ、低コストでフレキシブルな対応が可能となる昇降装置およびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
すなわち、請求項1においては、昇降装置であって、被昇降物を支持するとともに昇降可能に設けられる支持台部と、前記支持台部を昇降可能に支持するとともに、該支持台部の昇降にともない液体が出入するシリンダ室を有する液圧シリンダ部と、所定の大きさの押上力を前記支持台部に対して作用させることで、前記支持台部の上昇操作を補助する押上力付与部と、前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能に接続されるとともに、前記液体を貯溜可能に構成されるタンク部と、前記シリンダ室および前記タンク部に対して前記液体が流通可能に接続されるとともに、手動操作可能な操作部材を有し、該操作部材の操作によって前記シリンダ室に対して前記液体による液圧を供給するポンプ部と、前記タンク部および前記ポンプ部のいずれかを選択的に前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とする切換操作部と、を備えるものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載の昇降装置の使用方法であって、前記支持台部を上昇させるに際し、前記タンク部および前記ポンプ部それぞれに対して前記液体を所定量保持させるとともに、前記切換操作部により、前記タンク部を前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とした状態で、前記押上力付与部による補助を用いて、前記押上力が作用した状態の前記支持台部を第一の高さ位置まで上昇させる第一の上昇過程と、前記第一の上昇過程の後、前記切換操作部の切換え操作により、前記ポンプ部を前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とし、前記操作部材の操作によって前記ポンプ部から前記シリンダ室に対して前記液圧を供給することにより、前記支持台部を前記第一の高さ位置よりも高い第二の高さ位置まで上昇させる第二の上昇過程と、を経るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、外部エアや電気等の外部動力を要することなく、被昇降物について素早い昇降が可能となるとともに、簡単な構造を実現することができ、低コストでフレキシブルな対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る昇降装置は、例えば、工場や倉庫等において、自動車部品等の荷物を棚に上げる際等の、重量物(例えば30〜40kg程度の物)の昇降の際に活用される手動の簡易リフターとして用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る昇降装置1は、支持台部としてのテーブル2と、液圧シリンダ部としての油圧シリンダ3と、押上力付与部としての補助ばね機構4と、タンク部としての補助タンク5と、ポンプ部としての手動ポンプ6と、切換操作部としての手動操作弁(コック)7とを備える。昇降装置1は、床面等の所定の支持面50に対して、テーブル2を昇降(上下動)させるものである。
なお、以下の説明においては、図1における上下方向が、本実施形態に係る昇降装置1における上下方向、つまり昇降装置1についての昇降方向となる。
【0013】
テーブル2は、被昇降物を支持するとともに昇降可能に設けられる。
テーブル2は、被昇降物を支持する支持面11を有する。本実施形態では、テーブル2は、板状の部材として構成され、その板面が略水平となる状態で設けられる。そして、テーブル2における上側の面部が支持面11となる。
【0014】
テーブル2は、油圧シリンダ3によって、昇降可能(上下動可能)に設けられる。つまり、テーブル2の支持には、油圧シリンダ3が用いられ、油圧シリンダ3の伸縮とテーブル2の昇降とが同期する。
テーブル2は、油圧シリンダ3に対して連結されるとともに油圧シリンダ3からの押圧力を受ける受面12を有する。本実施形態では、前記のとおり板状の部材として構成されるテーブル2における下側の面部が受面12となる。
【0015】
なお、本実施形態では、支持台部としてのテーブル2が、板状の部材として構成されているが、これに限定されるものではない。支持台部としては、支持面11および受面12を有し、被昇降物を支持するとともに昇降可能に設けられるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0016】
油圧シリンダ3は、テーブル2を昇降可能に支持するとともに、このテーブル2の昇降にともないオイル(作動油)10が出入するシリンダ室13を有する。
油圧シリンダ3は、シリンダケース14と、このシリンダケース14に摺動可能に内装される摺動体15とを有する。油圧シリンダ3においては、摺動体15は、上下方向に摺動する。
【0017】
摺動体15は、ロッド部16とピストン部17とを有する。摺動体15は、そのピストン部17を介してシリンダケース14に対して摺動する。つまり、ピストン部17は、シリンダケース14の内壁に対して摺動可能な形状を有する栓状の部分である。
ロッド部16は、棒状の部分であり、その一端側にピストン部17が設けられる。ロッド部16の他端側は、摺動体15のシリンダケース14に対する摺動にともなってシリンダケース14から出没する部分となる。
【0018】
摺動体15のシリンダケース14に対する上下摺動が、油圧シリンダ3の上下方向の伸縮となる。つまり、シリンダケース14に対して摺動体15が上方に摺動することにより、シリンダケース14から突出するロッド部16の部分が長くなり、油圧シリンダ3が伸長する。また、シリンダケース14に対して摺動体15が下方に摺動することにより、シリンダケース14から突出するロッド部16の部分が短くなり、油圧シリンダ3が短縮する。このような油圧シリンダ3の伸縮にともない、テーブル2が昇降する。
【0019】
すなわち、油圧シリンダ3は、その摺動体15のロッド部16の上端側(ピストン部17が設けられる側と反対側)がテーブル2の受面12に連結されることにより、テーブル2に対して連結される。したがって、シリンダケース14が支持面50に対して支持された状態において、摺動体15がシリンダケース14に対して摺動すること、つまり油圧シリンダ3が伸縮することが、テーブル2が支持面50に対して昇降(上下動)することに対応する。
【0020】
このような構成を有する油圧シリンダ3において、シリンダケース14内であってピストン部17のロッド部16側と反対側(図1において下側)に、前記シリンダ室13が形成される。つまり、シリンダケース14内においてピストン部17の下側に形成される空間が、テーブル2の昇降にともないオイル10が出入するシリンダ室13となる。
したがって、シリンダ室13の容積は、テーブル2の上昇(油圧シリンダ3の伸長)にともなって大きくなり、テーブル2の下降(油圧シリンダ3の短縮)にともなって小さくなる。
【0021】
なお、本実施形態の昇降装置1においては、液圧シリンダ部として油圧シリンダ3が備えられているが、これに限定されるものではない。昇降装置1が備える液圧シリンダ部としては、テーブル2を昇降可能に支持するとともに、このテーブル2の昇降にともない液体が出入するシリンダ室13を有するものであれば、他の液体を作動液とする他の液圧シリンダにより構成されてもよい。
【0022】
補助ばね機構4は、所定の大きさの押上力をテーブル2に対して作用させることで、テーブル2の上昇操作を補助する。
補助ばね機構4は、ばね体18と、このばね体18を支持する支持体19とを有する。
【0023】
ばね体18は、一つの圧縮ばねにより、あるいは複数の圧縮ばねによるユニット体として構成されるものであり、テーブル2の下側(受面12側)に配置される。このばね体18の下側に、支持体19が設けられる。ばね体18は、その伸縮方向(弾性変形する方向)を上下方向とする状態で、テーブル2と支持体19との間にて支持される。つまり、ばね体18は、その上端側がテーブル2の受面12に対して連結された状態あるいは接触した状態となるとともに、下端側が、支持体19に支持された状態となる。
ばね体18は、テーブル2と支持体19との間において、テーブル2と支持体19とを相対的に離間させる方向に弾性力を作用させる。支持体19は、支持面50に対して一定の高さ位置に設けられる。
【0024】
したがって、ばね体18は、テーブル2に対して、受面12を介して上向きの押圧力つまり押上力を作用させる。これにより、補助ばね機構4によって、テーブル2に対して押上力が付与される。
本実施形態では、補助ばね機構4は、テーブル2に対して作用させる押上力が、テーブル2の昇降範囲における略全範囲で略一定となるように構成される。つまり、本実施形態の昇降装置1においては、テーブル2の上下位置に関らず、補助ばね機構4からテーブル2に対して略一定の押上力が常に作用している状態となる。これにより、補助ばね機構4は、作業者の手動等によるテーブル2の上昇操作を補助する。
【0025】
補助ばね機構4によってテーブル2に付与される押上力について、所定の大きさとは、本実施形態では、テーブル2の自重による下降を妨げない程度の大きさとなる。具体的には次のような大きさとなる。
すなわち、昇降装置1は、シリンダ室13に対するオイル10の出入が可能な状態において、テーブル2に対して補助ばね機構4からの押上力より他にテーブル2を上昇させる方向の力が作用していない場合、テーブル2がその昇降範囲(上下動範囲)における下降端まで下降するように構成される。
【0026】
したがって、補助ばね機構4による押上力について、前記のテーブル2の自重による下降を妨げない程度の大きさとは、昇降装置1でのシリンダ室13に対するオイル10の出入が可能な状態におけるテーブル2の自重による下降を妨げない程度の大きさとなる。言い換えると、前記のとおり補助ばね機構4から略一定の押上力がテーブル2に対して付与されている状態においても、テーブル2およびこれに連結されて一体的に構成される摺動体15の重さによって、テーブル2がシリンダ室13からオイル10を押し出しながら前記下降端まで下降するように、補助ばね機構4による押上力の大きさが設定される。
【0027】
なお、本実施形態の昇降装置1においては、押上力付与部として補助ばね機構4が備えられているが、これに限定されるものではない。昇降装置1が備える押上力付与部としては、所定の大きさの押上力をテーブル2に対して作用させることで、テーブル2の上昇操作を補助するものであればよい。押上力付与部としては、例えば、他の弾性体が用いられる構成や、ショックアブソーバが用いられる構成や、エアシリンダや油圧シリンダ等のシリンダ機構等が用いられる構成等であってもよい。
また、補助ばね機構4は、そのテーブル2に対する押上力が調整可能に構成されてもよい。かかる構成は、例えば、ショックアブソーバが用いられる構成において、調整型のショックアブソーバが用いられたり、ショックアブソーバの姿勢(角度)が切換え可能とされたりする構成により実現される。
【0028】
補助タンク5は、油圧シリンダ3のシリンダ室13に対してオイル10が流通可能に接続されるとともに、オイル10を貯溜可能に構成される。
補助タンク5は、オイル10を貯溜するタンク室21を形成するタンクケース20を有する。
【0029】
補助タンク5は、油圧シリンダ3のシリンダ室13に対して、配管等により構成される第一油路22を介して接続される。すなわち、第一油路22により、油圧シリンダ3のシリンダ室13と、補助タンク5のタンク室21とが連通接続される。これにより、補助タンク5が、シリンダ室13に対してオイル10が流通可能に接続される。つまり、油圧シリンダ3と補助タンク5との間において、オイル10は、第一油路22を介してシリンダ室13およびタンク室21間を往来する。
【0030】
補助タンク5は、油圧シリンダ3のシリンダ室13との関係において、タンク室21のシリンダ室13に対する相対的な高さ位置が高くなるように設けられる。そして、タンク室21とシリンダ室13とを連通させる第一油路22は、タンク室21からシリンダ室13へ流れるオイル10について、自重により勢いが付されてシリンダ室13に流れ込むような経路となるように配される。つまり、補助タンク5および第一油路22は、シリンダ室13に対して、タンク室21内のオイル10が、シリンダ室13に導かれるに際して、シリンダ室13に対して有する重力による位置エネルギーが変化した運動エネルギーを持つように構成される。
具体的には、例えば、第一油路22は、その一部が、鉛直方向や、補助タンク5側から油圧シリンダ3側にかけて下るような傾斜方向となるように配される経路となる。
【0031】
また、本実施形態の昇降装置1は、前述したように、シリンダ室13に対するオイル10の出入が可能な状態において、テーブル2がその昇降範囲における下降端まで下降するように構成される。したがって、補助タンク5および第一油路22については、油圧シリンダ3の構成等との関係において、テーブル2の自重による下降を妨げないように、補助タンク5が設けられる高さ位置や第一油路22の経路形状や管径等が設定される。
【0032】
また、昇降装置1においては、シリンダ室13と補助タンク5との接続構成が、テーブル2が上昇させられることによりシリンダ室13において生じる負圧によって、補助タンク5内のオイル10がシリンダ室13に流れ込む構成となっている。つまり、テーブル2が上昇させられることにより、その上昇にともなって容積が大きくなるシリンダ室13において負圧が生じ、その負圧によって補助タンク5内のオイル10が吸い込まれるように、シリンダ室13と補助タンク5とが接続される。
【0033】
なお、本実施形態の昇降装置1は、タンク部としての補助タンク5が油圧シリンダ3のシリンダ室13に対して高い位置に設けられる構成であるが、これに限定されるものではない。昇降装置1が備えるタンク部としては、油圧シリンダ3のシリンダ室13に対してオイル10が流通可能に接続されるとともに、オイル10を貯溜可能に構成されるものであれば、そのシリンダ室13に対する配置位置は特に限定されない。
また、補助タンク5に貯溜される液体は、昇降装置1が備える液圧シリンダ部における作動液となる。したがって、昇降装置1が備える液圧シリンダ部が油圧シリンダ3ではなく他の液圧シリンダにより構成される場合は、補助タンク5には、その液圧シリンダの作動液が貯溜されることとなる。
【0034】
このように、本実施形態の昇降装置1においては、テーブル2と油圧シリンダ3と補助ばね機構4と補助タンク5とを含む構成について、テーブル2が、作業者により(人力により)比較的容易に持ち上がる構成となっている。具体的には、テーブル2は、5[kgf]以下程度の力によって持ち上がる構成とされる。
つまり、本実施形態の昇降装置1においては、テーブル2が作業者により持ち上げることが可能となるように、テーブル2の重量や、油圧シリンダ3の径や、補助ばね機構4による押上力の大きさや、補助タンク5の高さ位置等が設定される。
【0035】
手動ポンプ6は、油圧シリンダ3のシリンダ室13および補助タンク5に対してオイル10が流通可能に接続されるとともに、手動操作可能な操作部材を有し、この操作部材の操作によってシリンダ室13に対してオイル10による油圧を供給する。
手動ポンプ6は、前記操作部材としての操作レバー23と、ポンプ室25を形成するポンプケース24とを有する。手動ポンプ6は、例えば手押しポンプ等のように、手動操作が可能なポンプである。
【0036】
手動ポンプ6は、油圧シリンダ3のシリンダ室13に対して、第一油路22およびこの第一油路22に対して接続される第二油路26を介して接続される。すなわち、第二油路26は、配管等により構成されるものであり、その一端側が第一油路22の中途部に対して接続され、他端側が手動ポンプ6側に接続される。したがって、第一油路22の一部(第二油路26の接続部から油圧シリンダ3側の部分)および第二油路26により、油圧シリンダ3のシリンダ室13と、手動ポンプ6のポンプ室25とが連通接続される。これにより、手動ポンプ6が、シリンダ室13に対してオイル10が流通可能に接続される。
【0037】
また、手動ポンプ6は、補助タンク5に対して、配管等により構成される第三油路27を介して接続される。すなわち、第三油路27により、補助タンク5のタンク室21と、手動ポンプ6のポンプ室25とが連通接続される。これにより、手動ポンプ6が、補助タンク5に対してオイル10が流通可能に接続される。
【0038】
手動ポンプ6は、シリンダ室13に対してオイル10を圧送する。つまり、手動ポンプ6は、第二油路26および第一油路22の一部(第二油路26の接続部から油圧シリンダ3側の部分)を介して、ポンプ室25内のオイル10をシリンダ室13に対して圧送する。これにより、シリンダ室13に対してオイル10による油圧が供給される。そして、手動ポンプ6からのオイル10の圧送が、操作レバー23の操作によって行われる。
【0039】
本実施形態では、手動ポンプ6において、ポンプケース24の一端部から延出される操作レバー23が、ポンプケース24に対して近付く方向に移動するように操作されることが、手動ポンプ6からオイル10を圧送させる操作に対応する(図1中、二点鎖線で示す操作レバー23参照)。
【0040】
なお、昇降装置1が備えるポンプ部としては、シリンダ室13および補助タンク5に対してオイル10が流通可能に接続されるとともに、手動操作可能な操作部材を有し、この操作部材の操作によってシリンダ室13に対してオイル10による油圧を供給するものであれば、本実施形態の手動ポンプ6に限定されるものではない。
また、手動ポンプ6がシリンダ室13に対して供給する液圧は、昇降装置1が備える液圧シリンダ部における作動液によるものとなる。したがって、昇降装置1が備える液圧シリンダ部が油圧シリンダ3ではなく他の液圧シリンダにより構成される場合は、手動ポンプ6は、その液圧シリンダの作動液による液圧をシリンダ室13に対して供給することとなる。
【0041】
手動操作弁7は、補助タンク5および手動ポンプ6のいずれかを選択的にシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とする。
【0042】
手動操作弁7は、第一油路22に対する第二油路26の接続部に設けられる。つまり、第一油路22の中途部に手動操作弁7が設けられ、この手動操作弁7を介して、第二油路26が第一油路22に対して接続された状態となる。
【0043】
手動操作弁7により、補助タンク5および手動ポンプ6のシリンダ室13に対する接続状態について、少なくとも次の二つの状態が切り換えられる。すなわち、油圧シリンダ3のシリンダ室13と補助タンク5のタンク室21とが連通した状態(以下「第一の状態」という。)と、油圧シリンダ3のシリンダ室13と手動ポンプ6のポンプ室25とが連通した状態(以下「第二の状態」という。)である。
なお、以下では、第一油路22について、手動操作弁7よりも油圧シリンダ3側を「第一シリンダ側油路22a」とし、同じく補助タンク5側を第一タンク側油路22b」とする。
【0044】
したがって、手動操作弁7の切換えにともなう第一の状態においては、手動操作弁7を介する第一シリンダ側油路22aと第一タンク側油路22bとが連通状態となり、第一シリンダ側油路22aおよび第一タンク側油路22b(つまり第一油路22)を介して、シリンダ室13とタンク室21とが連通した状態となる。これとともに、手動操作弁7を介する第一シリンダ側油路22aと第二油路26とが非連通状態となり、第一シリンダ側油路22aおよび第二油路26を介するシリンダ室13とポンプ室25との間の連通が遮断された状態となる。
つまり、この第一の状態においては、補助タンク5および手動ポンプ6のうち、補助タンク5が、シリンダ室13に対してオイル10が流通可能となる。また、この第一の状態が、本実施形態の昇降装置1において、前述した、シリンダ室13に対するオイル10の出入が可能な状態に対応する。
【0045】
また、手動操作弁7の切換えにともなう第二の状態(図1中、二点鎖線で示す手動操作弁7参照)においては、手動操作弁7を介する第一シリンダ側油路22aと第二油路26とが連通状態となり、第一シリンダ側油路22aおよび第二油路26を介して、シリンダ室13とポンプ室25とが連通した状態となる。これとともに、手動操作弁7を介する第一シリンダ側油路22aと第一タンク側油路22bとが非連通状態となり、第一シリンダ側油路22aおよび第一タンク側油路22b(つまり第一油路22)を介するシリンダ室13とタンク室21との間の連通が遮断された状態となる。
つまり、この第二の状態においては、補助タンク5および手動ポンプ6のうち、手動ポンプ6が、シリンダ室13に対してオイル10が流通可能となる。
【0046】
手動操作弁7としては、一般的な手動操作3ポート切換弁としての構成を有するもの等が用いられる。
なお、昇降装置1が備える切換操作部としては、補助タンク5および手動ポンプ6のいずれかを選択的にシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とするものであれば、その構成は特に限定されるものではなく、適宜の弁機構が用いられる。
【0047】
以上の構成を備える本実施形態の昇降装置1の使用方法について、図2を加えて説明する。なお、以下の説明においては、テーブル2がその昇降範囲における下降端に位置する状態(図2(d)参照)を、本実施形態の昇降装置1についての「初期状態」とする。
【0048】
本実施形態の昇降装置1の使用方法は、昇降装置1の初期状態から、テーブル2が上昇させられるに際し、第一の上昇過程と第二の上昇過程とを経るものである。以下、各上昇過程について、具体的に説明する。
【0049】
第一の上昇過程においては、補助タンク5および手動ポンプ6それぞれに対してオイル10が所定量保持させられるとともに、手動操作弁7により、補助タンク5がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされた状態で、補助ばね機構4による補助が用いられ、補助ばね機構4による押上力が作用した状態のテーブル2が第一の高さ位置まで上昇させられる。
【0050】
すなわち、昇降装置1の初期状態においては、補助タンク5および手動ポンプ6それぞれに対して、所定量のオイル10が保持させられる。つまり、補助タンク5については、そのタンク室21内に所定量のオイル10が貯溜された状態となり、手動ポンプ6については、そのポンプ室25内に所定量のオイル10が収容された状態となる。
【0051】
そして、第一の上昇過程では、昇降装置1の初期状態において、手動操作弁7の操作により、第一の状態、つまり油圧シリンダ3のシリンダ室13と補助タンク5のタンク室21とが連通し、補助タンク5がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされる。かかる状態から、作業者の手動により、補助ばね機構4による押上力が作用した状態のテーブル2が、第一の高さ位置まで上昇させられる。
【0052】
図2(a)に示すように、テーブル2が作業者の手動によって上昇させられることにより、テーブル2は、作業者による人力と、補助ばね機構4からの押上力とにより上昇することとなる。つまり、補助ばね機構4による補助が用いられる。
ここで、テーブル2の上昇にともない、補助タンク5内のオイル10が、油圧シリンダ3における負圧力および第一油路22において受ける重力の作用によって、シリンダ室13に流れ込む(矢印A1参照)。
【0053】
すなわち、テーブル2の上昇にともない、これに連結される油圧シリンダ3の摺動体15が上昇し、シリンダ室13の容積が大きくなり、シリンダ室13において負圧が生じる。これにより、シリンダ室13と第一油路22を介して連通する補助タンク5のタンク室21内のオイル10が吸い出される。タンク室21内から吸い出されたオイル10は、第一油路22を介してシリンダ室13に導かれる。ここで、第一油路22は、前述したように、タンク室21からシリンダ室13へ流れるオイル10について、自重により勢いが付されてシリンダ室13に流れ込むような経路となるように配される。
これらのことから、第一油路22を介してシリンダ室13に導かれるオイル10は、負圧力および重力の作用によって、シリンダ室13に流入する。
【0054】
そして、図2(b)に示すように、作業者の手動によってテーブル2が上昇させられることは、テーブル2が第一の高さ位置(支持面11の高さ位置についての符号h1参照)となるまで行われる。
ここで、テーブル2の高さ位置について第一の高さ位置は、テーブル2がその上昇過程において重量物等の被昇降物からの荷重を受け始めたり被昇降物が載置されたりする高さ位置であり、いわゆるテーブル2についての被昇降物セット高さに対応する。以下では、このテーブル2について第一の高さ位置を「被昇降物セット高さ」という。
【0055】
このように、テーブル2が、被昇降物セット高さに達するまでが、第一の上昇過程となる。続いて、第二の上昇過程が行われる。
【0056】
第二の上昇過程においては、前述した第一の上昇過程の後、手動操作弁7の切換え操作により、手動ポンプ6がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされ、操作レバー23の操作によって手動ポンプ6からシリンダ室13に対して油圧が供給されることにより、テーブル2が被昇降物セット高さよりも高い第二の高さ位置まで上昇させる。
【0057】
すなわち、第二の上昇過程では、図2(b)に示すように、第一の上昇過程によってテーブル2が被昇降物セット高さに達した後、手動操作弁7が切り換えられることにより、第二の状態、つまり油圧シリンダ3のシリンダ室13と手動ポンプ6のポンプ室25とが連通し、手動ポンプ6がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされる。
これにより、手動ポンプ6のシリンダ室13に対する経路が有効となる。かかる状態から、手動ポンプ6によって、テーブル2が第二の高さ位置まで上昇させられる。
【0058】
すなわち、図2(c)に示すように、操作レバー23が操作されることによって(矢印A2参照)、手動ポンプ6のポンプ室25内のオイル10が、シリンダ室13に対して圧送される(矢印A3参照)。つまり、操作レバー23の操作にともなう手動ポンプ6のポンプ作用によって、ポンプ室25内のオイル10がポンプケース24から送り出され、第二油路26および第一シリンダ側油路22aを介して、シリンダ室13内に対して圧送される。
これにより、シリンダ室13に対して油圧が供給され、油圧シリンダ3における摺動体15が上昇し、テーブル2が上昇させられる。
【0059】
このような手動ポンプ6からのシリンダ室13に対するオイル10の圧送によるテーブル2の上昇に際しては、次のような作用が得られる。
すなわち、手動ポンプ6からのシリンダ室13に対するオイル10の圧送に際しては、シリンダケース14内(シリンダ室13内)に既にオイル10が入っている。このため、手動ポンプ6から送り出されるオイル10がシリンダケース14内(シリンダ室13内)に流れ込むとともに、すぐにテーブル2が上昇する(被昇降物が持ち上げられる)こととなる。つまり、シリンダケース14内に既にオイル10が入っている状態の油圧シリンダ3に対する油圧の供給にともなうテーブル2の上昇は、シリンダケース14内にオイル10が入ってない状態(例えばテーブル2が下降端にある状態)の油圧シリンダ3に対する油圧の供給にともなうテーブル2の上昇(初期動作)にくらべて、第一シリンダ側油路22a内等にもオイル10が入っている分、テーブル2の上昇がスムーズとなる。言い換えると、シリンダケース14内に既にオイル10が入っている状態においては、操作レバー23による手動ポンプ6の操作とテーブル2の上昇と間におけるポンプ動力について良好な伝達性が得られる。
【0060】
そして、図2(c)に示すように、手動ポンプ6によってテーブル2が上昇させられることは、テーブル2が第二の高さ(支持面11の高さ位置についての符号h2参照)となるまで行われる。
ここで、テーブル2の高さ位置について第二の高さは、テーブル2上の被昇降物が他の場所に搭載される高さ位置等の目的の高さ位置であり、昇降装置1により被昇降物が持ち上げられるに際しての目的の高さに対応する。以下では、このテーブル2についての第二の高さ位置を「被昇降物搭載高さ」という。
【0061】
このように、テーブル2が、被昇降物セット高さから被昇降物搭載高さに達するまでが、第二の上昇過程となる。
【0062】
第二の上昇過程の後、テーブル2の下降に際しては、手動操作弁7の切換え操作により、再度、補助タンク5がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされる。
【0063】
すなわち、図2(d)に示すように、テーブル2上の被昇降物が他の場所に搭載される等して、テーブル2が被昇降物を支持していない状態(フリーの状態)において、手動操作弁7が切り換えられ、補助タンク5がシリンダ室13に対してオイル10が流通可能な状態とされる。かかる状態においては、テーブル2が、その自重によって下降端(支持面11の高さ位置についての符号h0参照)下降する。
これにともない、シリンダ室13内のオイル10が、補助タンク5に戻る(矢印A4参照)。
【0064】
すなわち、テーブル2の自重による下降にともない、これに連結される油圧シリンダ3の摺動体15が下降し、シリンダ室13内のオイル10が押し出されて排出される。シリンダ室13から排出されたオイル10は、第一シリンダ側油路22aおよび第一タンク側油路22b(つまり第一油路22)を介して補助タンク5のタンク室21内に導かれる。
【0065】
また、補助タンク5に戻されたオイル10のうち、補助タンク5からのオーバーフロー分は、手動ポンプ6に戻される(矢印A5参照)。つまり、補助タンク5からオーバーフローするオイル10は、タンク室21から、第三油路27を介して手動ポンプ6のポンプ室25内に導かれる。
【0066】
以上のように、本実施形態の昇降装置1においては、テーブル2の昇降についての作動力が、所定量のオイル10を、油圧シリンダ3、補助タンク5、および手動ポンプ6間で循環させることにより得られるため、外部エアや電気等の外部動力が不要となる。そして、外部動力無しで、被昇降物を上昇させるのに必要なストロークのみ油圧によってテーブル2を上昇させることで、被昇降物を上昇させるに際して素早い動作が可能となる。
【0067】
つまり、昇降装置1においては、テーブル2の上昇過程について、下降端から被昇降物セット高さまではテーブル2が作業者の手によって持ち上げられ(第一の上昇過程)、テーブル2が、被昇降物を載せた状態で、被昇降物セット高さから必要な搭載高さである被昇降物搭載高さまで、手動ポンプ6によるポンプ動力が活用されて持ち上げられる(第二の上昇過程)。つまりは、昇降装置1においては、手動ポンプ6を作動させる前に、補助タンク5が用いられることで、ポンプ動力に加えて手動によるテーブル2の上昇が可能となる。
【0068】
これにより、従来は支持台(本実施形態におけるテーブル2)がその昇降範囲において略一定のスピードでしか動かせなかったリフターが、本実施形態の昇降装置1のような構成においては、簡易な構造により、低コスト化が図れるとともに、テーブル2の上昇について二段階のスピードによる素早い動きが可能となる。
【0069】
また、外部エアや電気等の外部動力が不要となることから、昇降装置1についての移動範囲や移動経路が制約されることなく、持ち運びが簡単等のフレキシブルな対応を可能とする構成が実現できる。
具体的には、例えば、昇降装置1が、台車等に載せられた状態で用いられることにより、昇降装置1について範囲や経路が制限されることのない移動が可能となり、現場の状況に応じたフレキシブルな対応が可能となる。
【0070】
以上のように、本実施形態の昇降装置1によれば、外部エアや電気等の外部動力を要することなく、被昇降物について素早い昇降が可能となるとともに、簡単な構造を実現することができ、低コストでフレキシブルな対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇降装置の構成を示す図。
【図2】昇降装置の使用方法についての説明図。
【符号の説明】
【0072】
1 昇降装置
2 テーブル(支持台部)
3 油圧シリンダ(液圧シリンダ部)
4 補助ばね機構(押上力付与部)
5 補助タンク(タンク部)
6 手動ポンプ(ポンプ部)
7 手動操作弁(切換操作部)
10 オイル(液体)
13 シリンダ室
23 操作レバー(操作部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被昇降物を支持するとともに昇降可能に設けられる支持台部と、
前記支持台部を昇降可能に支持するとともに、該支持台部の昇降にともない液体が出入するシリンダ室を有する液圧シリンダ部と、
所定の大きさの押上力を前記支持台部に対して作用させることで、前記支持台部の上昇操作を補助する押上力付与部と、
前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能に接続されるとともに、前記液体を貯溜可能に構成されるタンク部と、
前記シリンダ室および前記タンク部に対して前記液体が流通可能に接続されるとともに、手動操作可能な操作部材を有し、該操作部材の操作によって前記シリンダ室に対して前記液体による液圧を供給するポンプ部と、
前記タンク部および前記ポンプ部のいずれかを選択的に前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とする切換操作部と、
を備える昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降装置の使用方法であって、
前記支持台部を上昇させるに際し、
前記タンク部および前記ポンプ部それぞれに対して前記液体を所定量保持させるとともに、前記切換操作部により、前記タンク部を前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とした状態で、前記押上力付与部による補助を用いて、前記押上力が作用した状態の前記支持台部を第一の高さ位置まで上昇させる第一の上昇過程と、
前記第一の上昇過程の後、前記切換操作部の切換え操作により、前記ポンプ部を前記シリンダ室に対して前記液体が流通可能な状態とし、前記操作部材の操作によって前記ポンプ部から前記シリンダ室に対して前記液圧を供給することにより、前記支持台部を前記第一の高さ位置よりも高い第二の高さ位置まで上昇させる第二の上昇過程と、
を経ることを特徴とする昇降装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−249092(P2009−249092A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96631(P2008−96631)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(505034418)株式会社 タイコー (9)