説明

昇降装置付き車両及び昇降装置

【課題】高い場所に置かれた物品を人の手が届く位置まで適切に降下させ得る昇降装置を備えた車両の提供。
【解決手段】車体の上面1Aに設けられるリンクユニット4を有する。リンクユニット4は、ベースアーム部11,21とスライドアーム部12,22とにより構成される互いに平行な伸縮アーム10,20と、そのベースアーム部11,21を連結するベースリンク40と、このベースリンクに平行してスライドアーム部12,22を連結するサポートリンク41,42と、駆動軸6を中心として車体の上面1A上で上下方向に旋回される原動ブーム8と、駆動軸6に平行な支点軸31を中心として原動ブーム8と同方向に旋回する従動ブーム9とを備える。原動ブーム8の先端にはベースアーム部11が固設され、従動ブーム9の先端にはベースアーム部21が固設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所面に配される物品の揚げ降ろしを容易かつ迅速に行うことのできる昇降装置に係わり、特に車体上面に対し大型の荷物を積み降ろしするのに用いて好適な昇降装置付き車両と昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デッドスペースとされる高所面を各種物品の保管場所として有効利用することが多い。例えば、消防用車両の車体上面に救難梯子や折畳式ボートを載せておき、それらを人命救助に用いることが一般に広く行われている。
【0003】
しかし、高所に物品を載せたり、これを取り出したりするには、その都度高所面まで上り、上と下とで物品の受け渡しをしなければならぬという煩わしさがあり、危険を伴うものでもあった。
【0004】
特に、車体上に救助用の梯子やボートを積載した場合、その使用に緊急を要するにも拘らず、これを迅速に降ろすことができないという問題があった。
【0005】
尚、物品の積み降ろしに昇降装置の利用が考えられるが、従来の昇降装置は油圧などを利用して昇降台を上下方向に直進させるものが一般的であり、この種の昇降装置では昇降台と高所面との間で人的な積み替え作業を必要とする。又、クレーン式のものにしても、人的労力が軽減されるだけで積み降ろしにかかる時間の大幅な短縮は望めず、消防用など急を要するものには適さない。
【0006】
そこで、種々の物品を載せた長尺な荷台がスイングアームの旋回(上下揺動)によって車体上面などの高所面から傾斜状に降下するような昇降装置を先に開発し、実用に供してきた(例えば、特許文献1、2)。
【0007】
【特許文献1】特許第3380199号公報
【0008】
【特許文献2】特開2004−182363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の昇降装置によれば、消防用車両などに適用して救助用の梯子などを車体上面に上がらずして容易かつ迅速に積み降ろしできるという利点を有するものの、積荷の長さなどに対応して荷台の長さを大きくした場合には、スイングアーム(本発明の原動ブームに相当)の長さもそれ相応に大きく設定しなければならない。そして、この場合、スイングアームの旋回半径が大きくなるため、天井の低い屋内や架線下などではスイングアームの旋回中にスイングアームや荷台の上部が天井や架線といった障害物に干渉してしまうという問題があった。
【0010】
この点、特許文献2では、スイングアームが旋回中に伸縮し、その長さが直立姿勢の際に縮小する構成としたことにより上記のような問題を解消することはできたが、スイングアームはその旋回中心が車体の上面部にあって車体の上面上でのみ上下方向に旋回するにすぎないので、スイングアームの長さを大きくしても荷台の長さが短ければ、その荷台で長大な物品を保持することはできないし、荷台の長さに対して車高が高い場合には、物品の取り出しが可能とされる位置まで荷台を降下させることができない。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は高い場所に置かれた物品を人の手が届く位置まで適切に降下させ得る新規な昇降装置とこれを備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、
物品を積み降ろしするための昇降装置を備えた車両であって、前記昇降装置は、車体の上面に設けられるリンクユニットと、このリンクユニットを作動させる駆動源とを含み、前記リンクユニットは、所定の長さを有するベースアーム部と該ベースアーム部の長さ方向に沿って移動可能なスライドアーム部とにより構成されて車体の上面上に起立姿勢で載置される互いに平行な第1伸縮アームおよび第2伸縮アームと、その第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのベースアーム部同士を連結するベースリンクと、このベースリンクに平行して前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部同士を連結するサポートリンクと、前記駆動源により回転駆動される駆動軸を中心として車体の上面上で上下方向に旋回される原動ブームと、この原動ブームの旋回中心を成す前記駆動軸に平行な支点軸を中心として前記原動ブームと同方向に旋回する従動ブームとを具備し、
前記原動ブームの先端に前記第1伸縮アームのベースアーム部が固設されると共に、前記従動ブームの先端に前記第2伸縮アームのベースアーム部が固設され、
前記サポートリンクは、前記ベースリンクと平行状態を保って積み降ろしすべき物品の荷重を支える水平状の支持体を構成し、
前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームは、前記原動ブームの旋回動作により車体上面域内の待機位置と車体上面域外の退出位置との間で互いに平行状態を保ったまま上下反転するよう旋回移動され、前記退出位置では第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部が重力の作用により夫々のベースアーム部から伸び出して下降移動することを特徴とする。
【0013】
又、高所面に設けられるリンクユニットと、このリンクユニットを作動させる駆動源とを含んで成る昇降装置であって、
前記リンクユニットは、所定の長さを有するベースアーム部と該ベースアーム部の長さ方向に沿って移動可能なスライドアーム部とにより構成されて高所面上に起立姿勢で載置される互いに平行な第1伸縮アームおよび第2伸縮アームと、その第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのベースアーム部同士を連結するベースリンクと、このベースリンクに平行して前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部同士を連結するサポートリンクと、前記駆動源により回転駆動される駆動軸を中心として高所面上で上下方向に旋回される原動ブームと、この原動ブームの旋回中心を成す前記駆動軸に平行な支点軸を中心として前記原動ブームと同方向に旋回する従動ブームとを具備し、
前記原動ブームの先端に前記第1伸縮アームのベースアーム部が固設されると共に、前記従動ブームの先端に前記第2伸縮アームのベースアーム部が固設され、
前記サポートリンクは、前記ベースリンクと平行状態を保って揚げ降ろしすべき物品の荷重を支える水平状の支持体を構成し、
前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームは、前記原動ブームの旋回動作により高所面域内の待機位置と高所面域外の退出位置との間で互いに平行状態を保ったまま上下反転するよう旋回移動され、前記退出位置では第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部が重力の作用により夫々のベースアーム部から伸び出して下降移動することを特徴とする。
【0014】
加えて、上記のように構成される昇降装置において、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームの少なくとも一方に、それらの伸縮速度を緩和する緩速用の流体圧シリンダが設けられることを特徴とする。
【0015】
更に、流体圧シリンダは、ヘッド側とボトム側に作動流体が出入りするポートを備えた複動形であって、そのシリンダ部がベースアーム部に固定されると共に、該流体圧シリンダの伸縮ロッド部がスライドアーム部に連結され、ヘッド側とボトム側のポートを連通する管路には流量調整弁が介在されることを特徴とする。
【0016】
又、ベースリンクに取り付けられる揺動自在なロックアームを有し、そのロックアームの先端には、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームが高所面上の待機位置から所定の角変位位置まで旋回移動する間、第2伸縮アームのスライドアーム部の部位又はサポートリンクの部位に係止する掛け金が設けられることを特徴とする。
【0017】
又、リンクユニットは所定の間隔をあけて2つが並列状に設けられ、それらリンクユニットにおける原動ブームの各一端が駆動源により回転駆動される駆動軸に結合されると共に、相対するリンクユニットのサポートリンクには物品を収容するための荷枠が架設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る昇降装置によれば、原動ブームの旋回動作により、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームが車体上面などの高所面域内の待機位置と高所面域外の退出位置との間で互いに平行状態を保ったまま上下反転するよう旋回移動され、退出位置では第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部が重力の作用により夫々のベースアーム部から伸び出して下降移動することから、原動ブームや従動ブームの旋回半径を小さくしながら、スライドアーム部同士を連結するサポートリンクにより支持される物品を高所面から所定の位置まで適切に降下させることができる。
【0019】
加えて、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームの少なくとも一方に、それらの伸縮速度を緩和する緩速用の流体圧シリンダが設けられることから、物品を急速降下させることなくその揚げ降ろし作業を安全に行うことができる。
【0020】
しかも、流体圧シリンダが複動形で、ヘッド側とボトム側のポートを連通する管路に流量調整弁が介在されることから、複雑な回路を構成せずして流体圧シリンダの伸縮速度を制御することができる。
【0021】
又、ベースリンクに取り付けられる揺動自在なロックアームを有し、そのロックアームの先端には、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームが高所面上の待機位置から所定の角変位位置まで旋回移動する間、第2伸縮アームのスライドアーム部の部位又はサポートリンクの部位に係止する掛け金が設けられることから、物品を高所面から降ろすときに従動側の第2伸縮アームに伸長力が作用しても、これにロックアームが抵抗してリンクユニットが不作動状態に陥ることを防止できる。
【0022】
更に、リンクユニットが2つ並列状に設けられ、それらリンクユニットにおける相対するサポートリンクに物品を収容するための荷枠が架設されることから、大型の物品でも荷枠に載せて揚げ降ろしすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る昇降装置を備えた車両(特に消防用車両)を示す部分平面図である。図1において、1は箱形の車体であり、その上面1Aには一方の側面1B側に寄せて物品を積み降ろしするための昇降装置2が装備される。
【0024】
昇降装置2は、高所面である車体上面1Aにあって荷枠3を挟んで前後方向に所定の間隔をあけて並列状に設けられる前後一対のリンクユニット4,4と、それらリンクユニット4,4を作動させる単一の駆動源5とを具備して成るものであり、その駆動源5は一方のリンクユニット4に隣接して設けられる正逆回転可能なモータ5Aと、その回転トルクを増大するための減速機5Bとで構成される。尚、モータ5Aは車体1の後部などに設けられる図示せぬ操作スイッチにより、地上からの遠隔操作で起動・停止を行えるようになっている。又、荷枠3には、上面部と側面部が開閉するコンテナが載せられ、そのコンテナ内に種々の物品(消防用具)が収容されるようになっている。
【0025】
6は駆動源5により正逆に回転駆動される駆動軸であり、この駆動軸6は一端が駆動源5(減速機5B)に結合され、該駆動軸6の両端部は軸受ユニット7により回転自在に支持されている。
【0026】
一方、リンクユニット4は、駆動軸6を中心として車体上面1A上で上下方向に旋回される原動ブーム8をはじめ、この原動ブーム8に連動して該原動ブームと同方向に旋回する従動ブーム9、ならびに原動ブーム8の先端に設けられる第1伸縮アーム10、および従動ブーム9の先端に設けられる第2伸縮アーム20などから構成される連係構造物であり、このうち原動ブーム8はその一端が駆動軸6に固着されて該駆動軸を中心として上下方向に旋回するようになっている。
【0027】
尚、図1において、30は車体上面に固定されるブラケットであり、このブラケット30には従動ブーム9の旋回中心を成す支点軸31が回転自在に支持され、その支点軸31が駆動軸6と平行するようになっている。
【0028】
次に、リンクユニット4の構造について詳しく説明する。尚、2つのリンクユニット4は同じ構造であるから、図2〜図4には一方のリンクユニットのみを示してその構造を説明する。
【0029】
ここに、図2は一方のリンクユニットを示す正面図であり、図3および図4には図2におけるA−A断面およびB−B断面を示す。
【0030】
図2から明らかなように、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20は、互いに平行する状態で車体上面1A上の待機位置に起立姿勢で載置される。特に、本例では第1伸縮アーム10が車体の側面1B側に載置され、第2伸縮アーム20は第1伸縮アーム10よりも車体の側面1Bから隔たる位置に載置されるようにしてある。それら第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20は、所定の長さを有するベースアーム部11,21と該ベースアーム部11,21の長さ方向に沿って移動可能なスライドアーム部12,22とにより構成される。
【0031】
図3および図4で明らかなように、ベースアーム部11,21は、溝型鋼などから成る断面コ字形のベースアーム本体11A,21Aに沿ってリニアガイドブロック11B,21Bを固定することにより構成される一方、スライドアーム部12,22は、溝型鋼などから成る断面コ字形のスライドアーム本体12A,22Aに沿って可動レール12B,22Bを固定することにより構成される。
【0032】
そして、第1伸縮アームを構成するベースアーム部11のベースアーム本体11Aが原動ブーム8の先端に固設されると共に、第2伸縮アームを構成するベースアーム部21のベースアーム本体21Aが従動ブーム9の先端に固設され、ベースアーム部11,21を構成するリニアガイドブロック11B,21Bには、スライドアーム部12,22を構成する可動レール12B,22Bが摺動自在に係合するようにしてある。
【0033】
又、ベースアーム部11,21を構成するベースアーム本体11A,21Aの下部にはブラケット13,23が固設され、そのブラケット13,23の位置でベースアーム部11,21同士がベースリンク40により連結される。一方、スライドアーム部12,22は、先端部と中間部がそれぞれサポートリンク41,42により連結される。特に、ベースリンク40とサポートリンク41,42はそれぞれ平行する平行リンクを構成し、それらの長さは原動ブーム8と従動ブーム9の支点間距離(駆動軸6と支点軸31の中心間距離)に一致される。
【0034】
しかして、駆動軸6を中心に原動ブーム8が上下方向に旋回すると、第1伸縮アーム10、ベースリンク40、サポートリンク41,42、および第2伸縮アーム20を介して従動ブーム9が原動ブーム8と同方向に旋回し、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20は互いに平行状態を保って旋回移動しながら伸縮することが可能とされる。
【0035】
尚、図2〜図4において、50は第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20の伸縮速度を緩和する流体圧シリンダ(油圧シリンダ)であり、この流体圧シリンダ50は本例において原動側の第1伸縮アーム10に取り付けられる。
【0036】
図5から明らかなように、流体圧シリンダ50のシリンダ部51(外胴)は、第1伸縮アーム10を構成するベースアーム部11にブラケット32を介して固定されると共に、該流体圧シリンダの伸縮ロッド部52はスライドアーム部12の先端に連結される。
【0037】
特に、図6に示すように、係る流体圧シリンダ50はシリンダ部51のヘッド側とボトム側に作動流体(作動油)が出入りするポート53,54を備えた複動形の油圧シリンダであり、そのヘッド側とボトム側のポート53,54を連通する管路55には逆止弁付の流量調整弁56が介在される。そして、その流量調整弁56により、第1伸縮アーム10の伸長速度が緩和状態に制御されるようにしてある。
【0038】
尚、図6の流量調整弁56では、第1伸縮アーム10の縮小速度を制御することはできないが、管路55内の抵抗により縮小時の速度も緩和することができる。又、係る流体圧シリンダ50は、第1伸縮アーム10に取り付けることに限らず、第2伸縮アーム20に取り付けたり、第1伸縮アーム10と第2伸縮アーム20の双方に取り付けたりしてもよいが、これを第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20のいずれか一方に取り付けるだけで一方の伸縮速度のみならず他方の伸縮速度も同調的に緩和することができる。
【0039】
又、図5から明らかなように、スライドアーム部12,22の先端部分同士を連結するサポートリンク41(トップリンク)には、L字形の連結金具33を介して荷枠3が固定され、これによりサポートリンク41が揚げ降ろしすべき物品の荷重(本例において荷枠3とこれに載せられるコンテナおよびコンテナ内における収容物の総荷重)を支える水平状の支持体を構成するようになっている。尚、図5において、34は連結金具33をサポートリンク41に固定すべく連結金具33からサポートリンク41にねじ込んだボルトである。ここに、サポートリンク41に物品を支持せしめる構成として、一対のリンクユニット4,4のサポートリンク41,41に桁材を架設し、その桁材に物品をベルトなどで括り付けたり、その桁材からワイヤーロープで物品を吊下げるようにしたりしてもよい。
【0040】
一方、図7において、ベースリンク40にはロックアーム60が揺動自在に取り付けられる。このロックアーム60は、積み降ろしすべき物品の偏荷重に起因してリンクユニット4が不作動状態に陥るのを防止するためのものであり、本例によれば係るロックアーム60が第2伸縮アーム20側でベースリンク40に揺動自在に取り付けられる構成とされる。又、スライドアーム部12,22の中間部分同士を連結するサポートリンク42(中間リンク)には、第2伸縮アーム20との結節ピン42Aに近接してロックピン42Bが設けられる。
【0041】
ここに、ベースリンク40には、第2伸縮アーム20との結節ピン40Aに近接して突片40Bが形成され、その突片40Bにロックアーム60の一端が枢着されると共に、ロックアーム60の先端にはロックピン42Bに係止すべき掛け金61が設けられる。又、ベースリンク40とロックアーム60との間には、掛け金61をロックピン42Bに向けて付勢するための弾性部材62(引張りばね)が掛け渡され、その弾力により第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が車体上面1A上の待機位置(図2に示す位置)にあって、ロックアーム60の掛け金61とロックピン42Bとの係合が維持されるようにしてある。
【0042】
特に、掛け金61は、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が車体上面1A上の待機位置から所定の角変位位置(本例において、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が車体上面1Aに対して直交する状態から30度傾斜する状態)まで旋回移動する間、ロックピン42Bに係止して第2伸縮アーム20の伸長動作を規制するが、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が所定の角変位位置を越えると、ベースリンク40と第2伸縮アーム20との交差角の変化により、図7のようにロックアーム60の掛け金61がロックピン42Bから離脱して第2伸縮アーム20の伸長動作を許容するようになっている。
【0043】
尚、図7において、63はロックアーム60に隣接してベースリンク40に取り付けたストッパであり、このストッパ63は掛け金61がロックピン42Bから外されたときにロックアーム60を押さえてロックアーム60のふら付きを防止する働きをする。又、図7のように、サポートリンク42には、結節ピン42Aとロックピン42Bとの間に円弧状のガイド板42Dが設けられ、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が待機位置に復帰するとき、係るガイド板42Dによりロックアーム60が図7の反時計回りに揺動されて掛け金61がロックピン42Bに確実に係止されるようにしてある。
【0044】
次に、図8に基づいて以上のように構成される昇降装置の動作説明をすれば、図8(A)は第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が待機位置にあって車体上面1A上に起立姿勢で載置されている状態であり、このとき荷枠3は車体上面1Aにより支持される。
【0045】
この状態で、駆動源5を駆動して原動ブーム8を図8の時計回りに旋回させると、図8(B)のように、原動ブームの先端に設けられる第1伸縮アーム10が車体上面1A域外の退出位置側(物品の積み降ろしを行う車体の側面1B側)に旋回移動されると共に、その第1伸縮アーム10にベースリンク40とサポートリンク41,42を介して連結する第2伸縮アーム20がベースアーム部21の下端部を従動ブーム9に支持されながら第1伸縮アーム10と平行状態を保って退出位置側に旋回移動される。
【0046】
ここに、荷枠3は大型物品の積み降ろしも行えるように車体上面1A上にあって第2伸縮アーム20よりも第1伸縮アーム10側に張り出した形態とされるので、これに起因する偏荷重により図8(B)の状態においてサポートリンク41に時計回りのモーメントが作用し、これにより第2伸縮アーム20のスライドアーム部22に伸長力が作用して、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20と、ベースリンク40およびサポートリンク41,42とで作られる平行四辺形が崩れ、スライドアーム部22がベースアーム部21に対して大きな側圧をかけるようになる結果、リンクユニット4が不作動状態になる危険性がある。
【0047】
このため、本例では第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が待機位置から所定の角変位位置に到達するまでの間、図7などに示したロックアーム60により第2伸縮アーム20の伸長動作を規制するようにしたのであり、これによれば積み降ろしすべき物品の重心が第1伸縮アーム10側に偏っている場合でもリンクユニット4を適正に作動せしめることができる。
【0048】
しかして、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20は、互いに平行状態を保ったまま退出位置側に旋回移動され、水平状態を経て図8(C)のように上下が反転され始めるが、ベースリンク40およびサポートリンク41,42は水平状態を維持するので、サポートリンク41に支持される荷枠3は上下反転されることなく水平状態を保って車体上面1A上からその域外まで移送される。
【0049】
図8(D)は、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が退出位置に到達してその上下が完全に反転された状態(倒立状態)であり、この状態では重力の作用により第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20のスライドアーム部12,22がベースアーム部11,21から伸び出して下降移動するが、その伸長速度は図2などに示される流体圧シリンダ50により緩和されるのであり、このため荷枠3は車体の側面1Bに沿って徐々に降下される。そして、荷枠3は地上1メートル付近に停止されるのであり、このとき荷枠3に載せられた図示せぬコンテナの側面(図8における右側の面)を開放して内部から収納物を取り出すことができる。
【0050】
一方、荷枠3を車体上面1Aに積み込む場合には、原動ブーム8を上記とは逆向きに旋回させればよい。尚、図8(D)には第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が鉛直方向に沿って伸長した状態を示しているが、実際には車体上面1Aに設けられる図示せぬ検出器(リミットスイッチ)により従動ブーム9の位置を検出して、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が鉛直状態となる直前に駆動源5が停止され、これによって第1伸縮アーム10、第2伸縮アーム20、ベースリンク40、及びサポートリンク41により、図8(D)における左方に稍傾いた平行四辺形が形成されるようになっている。
【0051】
従って、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20が退出位置にあって原動ブーム8を図8の反時計回りに旋回させた場合にも、リンクユニット4が不作動状態になることなく第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20の旋回移動が行われ、これにより車体上面1A上の定位置に荷枠3を載置することができる。
【0052】
尚、第1伸縮アーム10および第2伸縮アーム20を退出位置から待機位置に復帰させる場合、それら伸縮アーム10,20は伸長状態のまま旋回移動され、車体上面1A上で上下反転が行われると、ベースアーム部11,21の上方に伸び出した状態のスライドアーム部12,22が重力の作用により降下移動してベースアーム部11,21内に入り込むのであり、このとき図7に示したガイド板42Dによりロックアーム60が弾性部材62の付勢力に抗してロックピン42Bから離間する方向に揺動された後、そのロックアーム60が弾性部材62によりロックピン42B側に引き戻され、以ってロックピン42Bに対するロックアームの掛け金61の係止が行われる。
【0053】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記例に限らず、例えば車両として消防用のほか、トラックや貨車などに適用することができる。又、係る昇降装置2は車両の車体上面1Aに設置するほか、棚上や家屋の屋根上に設置して保管用物品の揚げ降ろしに供することもできる。
【0054】
又、リンクユニット4は、2つ並列状に設けることに限らず、単一のリンクユニット4にして、単一のサポートアーム41又は42で物品の荷重を支持する構成とすることもできる。
【0055】
更に、上記例では、ロックアームの掛け金61が係止する部位として、サポートリンク42の一端部にロックピン42Bを設けたが、サポートリンク41や第2伸縮アーム20の部位に掛け金61が係止されるようにしてもよい。但し、揚げ降ろしする物品の配置を工夫することにより、ロックアーム60は省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る昇降装置を備えた車両を示した部分平面図
【図2】同昇降装置を構成するリンクユニットの正面図
【図3】図2におけるA−A断面図
【図4】図2におけるB−B断面図
【図5】リンクユニットの部分拡大図
【図6】流体圧シリンダの概略図
【図7】ロックアームの装置例を示す説明図
【図8】リンクユニットの動作説明図
【符号の説明】
【0057】
1 車体
1A 車体上面(高所面)
2 昇降装置
3 荷枠
4 リンクユニット
5 駆動源
6 駆動軸
8 原動ブーム
9 従動ブーム
10 第1伸縮アーム
11 ベースアーム部
12 スライドアーム部
20 第2伸縮アーム
21 ベースアーム部
22 スライドアーム部
31 支点軸
40 ベースリンク
41,42 サポートリンク
50 流体圧シリンダ
51 シリンダ部
52 伸縮ロッド部
53 ポート(ヘッド側)
54 ポート(ボトム側)
55 管路
56 逆止弁付流量調整弁
60 ロックアーム
61 掛け金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を積み降ろしするための昇降装置を備えた車両であって、前記昇降装置は、車体の上面に設けられるリンクユニットと、このリンクユニットを作動させる駆動源とを含み、前記リンクユニットは、所定の長さを有するベースアーム部と該ベースアーム部の長さ方向に沿って移動可能なスライドアーム部とにより構成されて車体の上面上に起立姿勢で載置される互いに平行な第1伸縮アームおよび第2伸縮アームと、その第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのベースアーム部同士を連結するベースリンクと、このベースリンクに平行して前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部同士を連結するサポートリンクと、前記駆動源により回転駆動される駆動軸を中心として車体の上面上で上下方向に旋回される原動ブームと、この原動ブームの旋回中心を成す前記駆動軸に平行な支点軸を中心として前記原動ブームと同方向に旋回する従動ブームとを具備し、
前記原動ブームの先端に前記第1伸縮アームのベースアーム部が固設されると共に、前記従動ブームの先端に前記第2伸縮アームのベースアーム部が固設され、
前記サポートリンクは、前記ベースリンクと平行状態を保って積み降ろしすべき物品の荷重を支える水平状の支持体を構成し、
前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームは、前記原動ブームの旋回動作により車体上面域内の待機位置と車体上面域外の退出位置との間で互いに平行状態を保ったまま上下反転するよう旋回移動され、前記退出位置では第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部が重力の作用により夫々のベースアーム部から伸び出して下降移動することを特徴とする昇降装置付き車両。
【請求項2】
高所面に設けられるリンクユニットと、このリンクユニットを作動させる駆動源とを含んで成る昇降装置であって、
前記リンクユニットは、所定の長さを有するベースアーム部と該ベースアーム部の長さ方向に沿って移動可能なスライドアーム部とにより構成されて高所面上に起立姿勢で載置される互いに平行な第1伸縮アームおよび第2伸縮アームと、その第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのベースアーム部同士を連結するベースリンクと、このベースリンクに平行して前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部同士を連結するサポートリンクと、前記駆動源により回転駆動される駆動軸を中心として高所面上で上下方向に旋回される原動ブームと、この原動ブームの旋回中心を成す前記駆動軸に平行な支点軸を中心として前記原動ブームと同方向に旋回する従動ブームとを具備し、
前記原動ブームの先端に前記第1伸縮アームのベースアーム部が固設されると共に、前記従動ブームの先端に前記第2伸縮アームのベースアーム部が固設され、
前記サポートリンクは、前記ベースリンクと平行状態を保って揚げ降ろしすべき物品の荷重を支える水平状の支持体を構成し、
前記第1伸縮アームおよび第2伸縮アームは、前記原動ブームの旋回動作により高所面域内の待機位置と高所面域外の退出位置との間で互いに平行状態を保ったまま上下反転するよう旋回移動され、前記退出位置では第1伸縮アームおよび第2伸縮アームのスライドアーム部が重力の作用により夫々のベースアーム部から伸び出して下降移動することを特徴とする昇降装置。
【請求項3】
第1伸縮アームおよび第2伸縮アームの少なくとも一方に、それらの伸縮速度を緩和する緩速用の流体圧シリンダが設けられることを特徴とする請求項2記載の昇降装置。
【請求項4】
流体圧シリンダは、ヘッド側とボトム側に作動流体が出入りするポートを備えた複動形であって、そのシリンダ部がベースアーム部に固定されると共に、該流体圧シリンダの伸縮ロッド部がスライドアーム部に連結され、ヘッド側とボトム側のポートを連通する管路には流量調整弁が介在されることを特徴とする請求項3記載の昇降装置。
【請求項5】
ベースリンクに取り付けられる揺動自在なロックアームを有し、そのロックアームの先端には、第1伸縮アームおよび第2伸縮アームが高所面上の待機位置から所定の角変位位置まで旋回移動する間、第2伸縮アームのスライドアーム部の部位又はサポートリンクの部位に係止する掛け金が設けられることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項6】
リンクユニットは所定の間隔をあけて2つが並列状に設けられ、それらリンクユニットにおける原動ブームの各一端が駆動源により回転駆動される駆動軸に結合されると共に、相対するリンクユニットのサポートリンクには物品を収容するための荷枠が架設されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−237783(P2007−237783A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59594(P2006−59594)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【特許番号】特許第3850434号(P3850434)
【特許公報発行日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(599171729)株式会社佐藤工業所 (3)