説明

昇降装置

【課題】安定した昇降部を有し、高出力で且つ軽量化、小型化を図ることが可能な昇降装置を提供する。
【解決手段】昇降部である構造物2を4本の昇降脚4a〜4dで昇降自在に支持し、各昇降脚4a〜4dに、回転によって伸縮するネジ型シリンダ10、電動モータ7a〜7d及びエンコーダ8a〜8dを設けた。制御装置20は、各エンコーダ8a〜8dからの信号により最も回転速度の遅い電動モータの回転速度を基準値と設定し、その他の電動モータの回転速度を基準値まで下げるように制御する。これにより、各電動モータ7a〜7dを基準値の回転速度で同期して作動させ、4本の昇降脚4a〜4dの変位量を等しくすることができ、安定した昇降動作が実現できる。また、複数の電動モータ7a〜7dを用いているため、高出力であり、装置全体としての軽量化、小型化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置に関し、特に昇降装置の軽量化及び小型化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降部に車両を載置して昇降させるような大型構造物の昇降装置には、一般に、動力源として高出力である油圧式が用いられ、昇降方法としては1軸式が採用されていた。1軸式の昇降装置として、例えば特許文献1では、昇降部を昇降させる駆動部に連結されたエンコーダからの信号により、制御部が昇降部の位置ずれを検出するものが示されている。また、特許文献2では、昇降式プールの可動床の昇降装置として、基礎部材に立設した複数の水圧シリンダで可動床を昇降自在に支持したものが提示されている。
【特許文献1】特開平7−272526号公報
【特許文献2】特開平8−133688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大型構造物の昇降装置においては、安定した昇降部を有し、高出力で軽量、小型であることが求められている。しかしながら、従来の1軸式の昇降方法では、昇降部を安定させる装置が必要となるため大型になり、さらに動力電動機構も大型になるという問題点がある。また、油圧式(あるいは水圧式)の昇降装置は、高出力であるが重量が嵩むという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、安定した昇降部を有し、高出力で且つ軽量化、小型化を図ることが可能な昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る昇降装置は、各々の内部に回転によって伸縮するネジ型シリンダ及びこのネジ型シリンダを回転させる電動モータを有する複数の昇降脚と、複数の昇降脚により昇降自在に支持された昇降部と、各電動モータの回転数を検知する複数のエンコーダと、各電動モータを制御する制御部を備え、制御部は、各エンコーダからの信号により各電動モータの中から最も回転速度の遅い電動モータを検出し、この電動モータの回転速度を基準値としてその他の電動モータの回転速度を基準値まで下げるように制御し、各電動モータを基準値の回転速度で同期して作動させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各電動モータを基準値の回転速度で同期して作動させ、複数の昇降脚の変位量を等しくすることができるため、安定した昇降部が得られ、また、複数の電動モータを用いるため高出力であり、昇降装置全体としての軽量化、小型化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
以下に、本発明を実施するための最良の形態である実施の形態1について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る昇降装置を示す模式図、図2は本実施の形態1に係る昇降装置の昇降脚内部を示す模式図である。本実施の形態1における昇降装置1は、昇降部である構造物2が支持梁3を介して複数の昇降脚4a〜4dにより昇降自在に支持されている。
【0008】
昇降脚4a〜4dは、脚部6a〜6dの上部にギアボックス5a〜5dが配設されたもので、各々の内部に、スクリュー9の回転によって伸縮するネジ型シリンダ10と、スクリュー9を回転させ、ネジ型シリンダ10を伸縮させる電動モータ7a〜7d、さらに各電動モータ7a〜7dの回転数を検知するエンコーダ8a〜8dを備えている。また、各電動モータ7a〜7dは、制御部である制御装置20により制御されている。
【0009】
昇降脚4a〜4dの内部構造について、図2を用いて説明する。なお、4本の昇降脚4a〜4dの内部構造はいずれも同じであるので、ここでは昇降脚4aを例に挙げて説明する。昇降脚4aのギアボックス5a内部には、昇降脚4aを伸縮させる動力源である電動モータ7aと、電動モータ7aの回転数を検知するセンサであるエンコーダ8aが配設されている。これらの電動モータ7a及びエンコーダ8aは、制御装置20(図1)に接続されている。
【0010】
また、昇降脚4aの脚部6a内部には、電動モータ7により回転されるスクリュー9と、スクリュー9の回転により伸縮するネジ型シリンダ10が配設されている。スクリュー9は、電動モータ7aの回転軸を支え、軸を正確且つ滑らかに回転させるベアリング11を有するギア群12を介して電動モータ7aに連結されている。
【0011】
次に、本実施の形態1における昇降装置1の動作について図3を用いて説明する。昇降装置1の操作員が、構造物2を昇降させるためのスイッチを入れると、制御装置20の制御カード13はサーボアンプ14を介して、電動モータ7a〜7dに対して速度指令を送信する。この時の速度指令における速度は、構造物2の用途に応じて適切な速度に予め設定されている。
【0012】
速度指令を受けて起動した電動モータ7a〜7dが速度指令に基づいた回転数で回転すると、ベアリング11を有するギア群12を介して電動モータ7a〜7dにそれぞれ連結された4つのスクリュー9が回転する。この回転により4本のネジ型シリンダ10が伸縮するとともに昇降脚4a〜4dが伸縮し、構造物2が昇降される。
【0013】
さらに、本実施の形態では、4本の昇降脚4a〜4dのそれぞれに電動モータ7a〜7dを配置した4軸式を採用しているため、制御装置20は、各電動モータ7a〜7dの回転速度のばらつきを補正し、所定(基準値)の回転速度で同期して作動させる手段を備えている。各電動モータ7a〜7dに対応したエンコーダ8a〜8dは、各電動モータ7a〜7dの回転数を検知し、その結果を信号として出力し、制御装置20の制御カード13に送信する。
【0014】
制御カード13は、エンコーダ8a〜8dからの信号(カウント数)を読み取り、4つの電動モータ7a〜7dの単位時間当たりの回転数、すなわち回転速度を比較して、4つの電動モータ7a〜7dの中から最も回転速度の遅い電動モータを検出する。さらに、この最も回転速度の遅い電動モータの回転速度を基準値と設定し、その他の電動モータの回転速度を基準値まで下げるように速度指令を出す。
【0015】
速度指令は、制御カード13からサーボアンプ14を介して各電動モータ7a〜7dに送信され、各電動モータ7a〜7dは基準値の回転速度となるように制御される。これらの動作により、各電動モータ7a〜7dは、回転速度のばらつきが補正され、基準値の回転速度で同期して作動するため、4本の昇降脚4a〜4dの変位量が等しくなる。
【0016】
以上のように、本実施の形態1によれば、構造物2を4本の昇降脚4a〜4dで昇降自在に支持した昇降装置1において、各昇降脚4a〜4dに、回転によって伸縮するネジ型シリンダ10、電動モータ7a〜7d及びエンコーダ8a〜8dを設け、制御装置20は
、各エンコーダ8a〜8dからの信号により最も回転速度の遅い電動モータの回転速度を基準値と設定し、その他の電動モータの回転速度を基準値まで下げるように制御するようにしたので、各電動モータ7a〜7dを基準値の回転速度で同期して作動させることができ、4本の昇降脚4a〜4dの変位量を等しくすることができる。
【0017】
また、複数の電動モータ7a〜7dを用いているため、高出力であり、個々の電動モータ7a〜7dの小型化が図られる。さらに、多軸式を採用しているため安定した昇降動作が実現でき、1軸式を採用した時に必要となる昇降部を安定させる装置も不要である。よって、安定した昇降部(構造物)2を有し、高出力で且つ軽量化、小型化を図ることが可能な昇降装置が得られる。
【0018】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係る昇降装置を示す模式図である。図4中、図1と同一、相当部分には同一符号を付している。また、図4では、図1に示す支持梁3及び制御装置20について図示を省略しているが、本実施の形態2における昇降装置1aは、上記実施の形態1における昇降装置1の構成要素を全て備えており、昇降脚の内部構造も昇降装置1と同様であるので説明を省略する(図2参照)。
【0019】
昇降装置1aは、傾斜角θの傾きを有する設置面15に設置され、昇降部である構造物2が4本の昇降脚4a、4b(図4では他の2本の昇降脚4c、4dは図示せず)により昇降自在に支持されている。昇降脚4a、4bの下部には、設置面15に沿うように自由に可動する可動部17が設けられている。本実施の形態2では、昇降脚4a、4bを設置面15に垂直な方向(図中点線A)に対して角度θ分だけ傾斜面上方側に傾け、且つ傾斜面上方側の昇降脚4bを下方側の昇降脚4aよりも傾斜の高低差分短くすることにより、構造物2が水平を保ちながら垂直方向(図中点線B)に昇降される。
【0020】
さらに、昇降装置1aは、構造物2の傾き(傾斜角)を測定する2つの傾斜計16a、16bを備えている。傾斜計16a、16bは、構造物2の水平面上の垂直な2方向の傾きを測定し、測定結果を制御装置(図示せず)に送信する。制御装置は、傾斜計16a、16bによる測定値をもとに構造物2の傾きの有無を検知し、構造物2が水平を保ちながら、垂直方向に昇降するように各電動モータ7a〜7dの位置補正を行う手段を備えている。なお、本実施の形態2では、傾斜計16a、16bをギアボックス5a上面に設けたが、構造物2の傾きが測定可能であればその他の場所でもよく、例えば構造物2の内部または外部に設置してもよい。
【0021】
次に、本実施の形態2における昇降装置1aの動作について図5を用いて説明する。制御装置20は、上記実施の形態1と同様に、各エンコーダ8a〜8dからの信号(カウント数)を読み取り、最も回転速度の遅い電動モータの回転速度を基準値と設定してその他の電動モータの回転速度を基準値まで下げるように制御することにより、各電動モータ7a〜7dを基準値の回転速度で同期して作動させる。
【0022】
さらに、本実施の形態2では、制御装置20の制御カード13は、傾斜計16a、16bによる測定値を読み取り、構造物2の傾きの有無を検知する。傾きが検知された場合には、傾斜計16a、16bによる測定値が「0」、すなわち構造物2の傾きが無い状態となるように、サーボアンプ14を介して各電動モータ7a〜7dに位置指令を出し、位置補正を行う。これにより、同期して作動している4本の昇降脚4a〜4dの変位量が調整され、垂直方向及び水平方向に傾きのない安定した昇降が得られる。
【0023】
以上のように、本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、制御装置20が、傾斜計16a、16bによる測定値をもとに、構造物2の傾きが無い状態と
なるように各電動モータ7a〜7dの位置補正を行うようにしたので、設置面15が傾斜面である場合でも、構造物2は水平を保ちながら垂直方向に安定して昇降することが可能である。
【0024】
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2では、構造物2を4本の昇降脚4a〜4dにより支持したが、昇降脚の本数はこれに限定されるものではなく、構造物2の形状または昇降装置が設置される場所の形状等の種々の事情により適宜決定すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る昇降装置は、昇降部に車両を載置して昇降させるような大型構造物の昇降装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る昇降装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る昇降装置の昇降脚内部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る昇降装置の動作を説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る昇降装置を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る昇降装置の動作を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1、1a 昇降装置、2 昇降部(構造物)、3 支持梁、
4a、4b、4c、4d 昇降脚、5a、5b、5c、5d ギアボックス、
6a、6b、6c、6d 脚部、7a、7b、7c、7d 電動モータ、
8a、8b、8c、8d エンコーダ、9 スクリュー、10 ネジ型シリンダ、
11 ベアリング、12 ギア群、13 制御カード、14 サーボアンプ、
15 設置面、16a、16b 傾斜計、17 可動部、20 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の内部に回転によって伸縮するネジ型シリンダ及びこのネジ型シリンダを伸縮させる電動モータを有する複数の昇降脚と、前記複数の昇降脚により昇降自在に支持された昇降部と、前記各電動モータの回転数を検知する複数のエンコーダと、前記各電動モータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記各エンコーダからの信号により前記各電動モータの中から最も回転速度の遅い電動モータを検出し、この電動モータの回転速度を基準値としてその他の前記電動モータの回転速度を前記基準値まで下げるように制御し、前記各電動モータを前記基準値の回転速度で同期して作動させるようにしたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降装置であって、前記昇降部の傾きを測定する傾斜計をさらに備え、前記制御部は、前記傾斜計による測定値をもとに前記昇降部の傾きの有無を検知し、傾きが検知された場合には、前記昇降部の傾きが無い状態となるように前記各電動モータの位置補正を行う手段を含むことを特徴とする昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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