説明

易開封性容器およびその製造方法

【課題】シール強度のバラツキを十分に抑制できると共に、高い密封性および易開封性を併せ持った易開封性容器を提供すること。
【解決手段】開口部の周縁にフランジ部25を有する容器本体2を備え、前記フランジ部に現れる容器本体2の表面層21と蓋材3のシール層31が環状にヒートシールされ、前記容器本体2および前記蓋材3のシール部26のうちの少なくともいずれか一方が界面剥離または凝集破壊することで、蓋材3が開封可能とされる易開封性容器であって、ヒートシールする第1のヒートシール工程によって前記容器本体1のフランジ部25上面に蓋材3を重ね、前記フランジ部25上面に対して、第1の環状シール盤を前記蓋材3上部から押圧し、前記フランジ部25の前記第1の環状シール盤の内周縁が接する位置の近傍に、瘤状の樹脂溜まり部6を形成し、その樹脂溜まりがある特定の形状となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性容器およびその製造方法に関し、より詳しくは、食品類などの容器に好適に用いることができる易開封性容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品類の包装形態としては、開口部周縁にフランジ部を設けた容器本体の内部に収納した後、かかる容器本体のフランジ部とフィルム状の蓋材とをヒートシールして密封包装した蓋付き容器が広く用いられている。
このような蓋付き容器においては、容器の内部に収納される食品類を安全に保存するという観点から、高い密封性が要求される。また、蓋材を開封する場合には蓋材を容器本体から簡便に剥離可能とするという観点から、易開封性も要求される。
【0003】
このような蓋付き容器としては、例えば、容器本体のフランジ部の内周側および外周側に樹脂溜まり部を形成したもの(特許文献1および特許文献2参照)、容器本体のフランジ部の内周側に樹脂溜まり部を形成したもの(特許文献3および特許文献4参照)、容器本体のフランジ部の内周側および外周側に樹脂溜まり部を形成し、外周側の樹脂溜まり部を押し潰してなるもの(特許文献5および特許文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−213171号公報
【特許文献2】特開平2−67125号公報
【特許文献3】特開2005−271972号公報
【特許文献4】特開2006−206128号公報
【特許文献5】特開平2−219766号公報
【特許文献6】特開平2−219767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の蓋付き容器であっても、外周側の樹脂溜り部の影響により易開封性は未だ十分なものではない。また、特許文献1および特許文献2に記載の蓋付き容器においては、シール強度にバラツキがあるため、多列系のシール設備では安定して生産できないという問題もある。また、特許文献3および特許文献4に記載の蓋付き容器においては、シール強度にバラツキがあるため多列系のシール設備では安定して生産できないという問題がある。さらに、特許文献5および特許文献6に記載の蓋付き容器であっても、外周側の樹脂溜まり部が押し潰されている影響により易開封性は未だ十分なものではない。
そこで、本発明は、開封時におけるヒゲの発生およびシール強度のバラツキを十分に抑制できると共に、高い密封性および易開封性を併せ持った易開封性容器、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような易開封性容器およびその製造方法を提供するものである。
すなわち、表面層と表面下層を少なくとも有する積層体からなり、開口部の周縁にフランジ部を有する容器本体と、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有する蓋材とを備え、前記フランジ部の前記表面層と前記蓋材の前記シール層とを環状にヒートシールし、前記容器本体および前記蓋材のシール部のうち少なくともいずれか一方が界面剥離または凝集破壊することで、蓋材が開封可能とされる易開封性容器であって、前記フランジ部上の前記シール部の内周側に、前記容器本体の表面層、前記表面下層および前記蓋材の前記シール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が、下記数式(F1)で表される条件を満たすように形成されていることを特徴とする易開封性容器である。
0.25 ≦ A/B ≦ 1.2 ・・・(F1)
(数式(F1)中、Aは前記樹脂溜り部において、前記フランジ部の前記表面下層の表面から前記シール層の表面までの高さ寸法を示し、Bは前記樹脂溜り部において、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の根元から、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の最内側到達点までの幅寸法を示す。)
【0007】
本発明の易開封性容器においては、前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体とを含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
本発明の易開封性容器においては、前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体とを含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
本発明の易開封性容器においては、前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、低密度ポリエチレン系樹脂と、メタロセン系ポリプロピレン系樹脂とを含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0008】
本発明の易開封性容器の製造方法は、表面層と表面下層を少なくとも有する積層体からなり、開口部の周縁にフランジ部を有する容器本体と、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有する蓋材とを備え、前記フランジ部の前記表面層と前記蓋材の前記シール層とを環状にヒートシールし、前記容器本体および前記蓋材のシール部のうち少なくともいずれか一方が界面剥離または凝集破壊することで、蓋材が開封可能とされる易開封性容器の製造方法であって、前記フランジ部上の前記シール部の内周側に、前記容器本体の表面層、前記表面下層および前記蓋材の前記シール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が、下記数式(F1)で表される条件を満たすように形成することを特徴とする方法である。
0.25 ≦ A/B ≦ 1.2 ・・・(F1)
(数式(F1)中、Aは前記樹脂溜り部において、前記フランジ部の前記表面下層の表面から前記シール層の表面までの高さ寸法を示し、Bは前記樹脂溜り部において、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の根元から、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の最内側到達点までの幅寸法を示す。)
【0009】
本発明の易開封性容器の製造方法においては、前記樹脂溜まり部を、内周縁にR加工されて断面が曲線状の曲面部が形成され、外周縁に前記内周縁から上方に向かってテーパーが形成された環状シール盤を用いて、前記容器本体のフランジ部上面に重ねた前記蓋材の上方から押圧する第1のヒートシール工程で行うことにより形成することが好ましい。
このような場合において、前記樹脂溜まり部を、前記第1のヒートシール工程の後に、さらに、平坦なシール面を有する環状シール盤または曲面状のシール面を有する環状シール盤を用いて、前記容器本体のフランジ部上面に重ねた前記蓋材の上方から押圧する第2のヒートシール工程を行うことで形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール強度のバラツキを十分に抑制できると共に、高い密封性および易開封性を併せ持った易開封性容器、並びにその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における易開封性容器を示す図であって、(A)は蓋材で密封された状態、(B)は開封開始部から蓋材を開封した状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態における易開封性容器の開封開始部近傍を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における第1のヒートシール工程を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態における第1のヒートシール工程において第1の環状シール盤をフランジ部に押圧した後の状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における第1の環状シール盤を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における第2のヒートシール工程において第2の環状シール盤をフランジ部に押圧した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の易開封性容器が初期開封された状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の易開封性容器が完全に開封された状態を示す部分断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の易開封性容器が初期開封された状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の易開封性容器が完全に開封された状態を示す部分断面図である。
【図11】易開封性容器の評価試験においてサンプルを採取した位置を示す模式図であって、(A)は開封強度の評価用サンプルを採取した位置、(B)シール強度はの評価用サンプルを採取した位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(易開封性容器1の構成)
図1は、本発明の易開封性容器1の一態様を示した概略図であり、図1(A)は蓋材3で密封された状態、図1(B)は開封開始部4から蓋材3を開封した状態をそれぞれ示している。また、図2は、図1の開封開始部4近傍の部分断面図である。
【0013】
易開封性容器1は、容器本体2およびフィルム状の蓋材3を備えている。容器本体2は、開口部24に対して蓋材3を載置して、容器本体2の開口部24の周縁に配設されたフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして、環状のシール部26(後述する第1の環状シール盤7および第2の環状シール盤8で形成されるシール部262と後述する第2の環状シール盤8で形成されるシール部261)が形成され、図1(A)に示すように、易開封性容器の1内部が密封状態とされる。
一方、密封状態の易開封性容器1を開封するには、図1(B)に示すように、易開封性容器1の隅角に設けられた開封開始部4において蓋材3を上部(図1(B)の矢印方向)に引き上げるようにすれば、易開封性容器1が簡便に開封される。
【0014】
(容器本体2の構成)
容器本体2は、図2に示すように、表面層21、表面下層22および基材層23の3層からなる積層体である。また、容器本体2は、所定の深さを有する略長方形のトレー形状であって、略長方形状の開口部24を有し、開口部24の周縁には、外側に張り出すようにフランジ部25が配設されている。
【0015】
ここで、本実施形態においては、容器本体2の表面層21が凝集破壊される凝集剥離により開封される。このような凝集剥離にすれば、開封時においてヒゲが発生して外観不良にならないという点で好ましい。
表面層21の構成材料としては、凝集破壊のしやすさやヒートシール性の観点から、ポリプロピレン系樹脂と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体とを含有する樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体とを含有する樹脂組成物、あるいは、ポリプロピレン系樹脂と、メタロセン系ポリプロピレン系樹脂と、低密度ポリエチレン系樹脂とを含有する樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0016】
容器本体2を構成する表面下層22は、表面層21の下に、当該表面層21に隣接されて配される層であり、構成材料としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのオレフィン系樹脂の材料;ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂の材料;これらの混合材料を用いることができる。
容器本体2を構成する基材層23は、容器本体2の外部に現れる層であり、構成材料としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのオレフィン系樹脂の材料;ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂の材料;およびこれらの混合材料を用いることができる。基材層23は、単層であっても積層体であってもよい。基材層23が積層体である場合には、ガスバリア性の観点から、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの樹脂材料からなるガスバリア層、あるいは、アルミ蒸着などで形成されたガスバリア層をさらに備えていてもよい。
【0017】
(蓋材3の構成)
蓋材3は、本実施形態にあっては、易開封性容器1の外部に現れる外層32と、容器本体2の表面層21とヒートシールされるシール層31からなるフィルム状の積層体である。
シール層31の構成材料としては、容器本体2の表面層21が凝集破壊して剥離する開封態様で、このような表面層21を構成する樹脂として前記樹脂組成物を採用する場合においては、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレンなどを用いることができる。
【0018】
外層32の構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ナイロンフィルム(O−Ny)などを用いることができる。
【0019】
なお、このような表面層21を容器本体2に採用し、またシール層31を蓋材3に採用して両者をヒートシールした場合においては、両層21,31が融着する一方、開封の際には、応力に対して弱い容器本体2の表面層21が凝集剥離して、開封が良好に行われることになる。
【0020】
(樹脂溜まり部6の構成)
樹脂溜まり部6は、容器本体2の表面層21の樹脂溜まり61、表面下層22の樹脂溜まり62、および蓋材3のシール層31樹脂溜まり63が集まって形成されている。
そして、樹脂溜まり部6は、下記数式(F1):
0.25 ≦ A/B ≦ 1.2 ・・・(F1)
で表される条件を満たすように形成されていることが必要である。前記数式(F1)で表される条件を満たすことにより、得られる易開封性容器1において、開封時におけるヒゲの発生およびシール強度のバラツキを十分に抑制することができる。
【0021】
前記数式(F1)において、A(図2参照)は前記樹脂溜り部において、前記フランジ部の前記表面下層の表面から前記蓋材のシール層の表面までの高さ寸法を示し、B(図2参照)は前記樹脂溜り部において、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の根元から、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の最内側到達点までの幅寸法を示す。
また、前記数式(F1)における(A/B)の値が0.25未満では、開封時におけるヒゲの発生を十分に抑制することができず、他方、1.2を超えると、シール強度・密封性のバラツキを十分に抑制することができない。さらに、開封時におけるヒゲの発生およびシール強度のバラツキとのバランスという観点から、前記数式(F1)における(A/B)の値は、0.3以上0.8以下であることがより好ましい。
【0022】
(易開封性容器1の製造方法)
易開封性容器1の製造方法は、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜まり部6を形成することができる方法であれば特に制限されないが、例えば、以下説明する方法により易開封性容器1を効率よく製造することができる。
【0023】
(第1のヒートシール工程)
図3は、本実施形態における第1のヒートシール工程を示す模式図である。また、図4は、第1のヒートシール工程において第1の環状シール盤7をフランジ部25に押圧した後の状態を示す部分断面図である。
第1のヒートシール工程においては、図3および図4に示すように、容器本体2のフランジ部25に蓋材3を重ね合わせ、蓋材3の上部から、加熱状態の環状シール盤7を図3の矢印方向に押圧することにより実施され、これにより、容器本体2のフランジ部25に現れた表面層21と蓋材3のシール層31がヒートシールされる。
【0024】
そして、第1のヒートシール工程においては、図4に示すように、フランジ部25上に有るシール部26の内周縁近傍(図4のXの位置)に、容器本体2の表面下層22、表面層21および蓋材3のシール層31が、容器本体2の開口部24方向に押し出されるようにして、瘤(こぶ)状の樹脂溜まり部6が形成される。
図4に示すように、樹脂溜まり部6は、容器本体2の表面層21の樹脂溜まり61、表面下層22の樹脂溜まり62、および蓋材3のシール層31樹脂溜まり63が集まって形成されている。
【0025】
また、本発明においては、フランジ部25上面にある環状のシール部26の内周縁近傍(図4のXの位置)の全周に前記した樹脂溜まり部6があって、開封開始部4にある環状のシール部26の外周縁はフラットであるか、あるいは、内周縁近傍Xにある樹脂溜まり部6より小さい樹脂溜まりしかなければよい。
【0026】
図5は、第1の環状シール盤7を示す部分断面図である。
第1のヒートシール工程において用いる第1の環状シール盤7は、フランジ部上面に対して、内周縁にR加工が施され、外周縁が第1の環状シール盤7の先端(図5の先端73)より遅れて蓋材3に当たるようにされた形状の第1の環状シール盤7であり、具体的には、境界A(環状シール盤7の先端73でもある)を介して、外周縁側には、断面が傾斜状となる傾斜面部71が、また、内周縁側には、R加工されて断面が曲線状の曲面部72が連続して形成されている。
【0027】
このうち、第1の環状シール盤7の外周縁側に形成される傾斜面部71における、図4のようにフランジ部25に対して内周縁から外周縁に向かって形成されることとなる角度(θ)は環状シール盤7の巾Wによって異なるが、2°から20°までの範囲、より好ましくは3°から15°までの範囲に設定することが好ましい。
この傾斜面部71の角度が2°より小さいと、第1のヒートシール時に押圧した場合であっても、図4に示すような樹脂溜まり部6が、シール部26の外周縁近傍にも形成され易くなり、得られた容器1の開封時におけるシール部26外側で抵抗が大きくなり、易開封性容器1の開封を円滑に行うことが困難となる。一方、傾斜面部71の角度が20°を超えると、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、シール時若しくは開封時に蓋材3が切断されてしまう場合があり、易開封性が損なわれるおそれがある。
【0028】
また、第1の環状シール盤7に内周縁側に形成される曲面部72に施されるR加工としては第1の環状シール盤7の巾寸法Wによって異なるが、曲率半径R(単位:mm)が、0.2以上第1の環状シール盤7の巾寸法の0.5倍以下であることが好ましく、0.4以上第1の環状シール盤7の巾寸法の0.4倍以下であることがより好ましい。Rが前記下限未満では、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、シール時若しくは開封時に蓋材3などが切断されてしまう場合がある。他方、曲率半径Rが前記上限を超えると、第1のヒートシール時に押圧した場合であっても、フランジ部25のシール部26の内周縁近傍Xに樹脂溜まり部6が形成されにくくなる。
【0029】
ここで、第1の環状シール盤7に対して、これら傾斜面部71および曲面部72は、境界Aが第1の環状シール盤7の断面巾方向に対して内側寄り(内周縁寄り)となるように形成されることが好ましい。境界Aが第1の環状シール盤7の断面巾方向に対して内側であれば、第1の環状シール盤7の内周縁側に曲面部72、当該シール盤7の外周縁側に傾斜面部71が形成されていることも相俟って、第1のヒートシールに際して第1の環状シール盤7の外周縁側より先端73が先に蓋材3と接すること(第1の環状シール盤7の外周縁が先端73より蓋材3に遅れて接すること)が確実になされ、先に接した内周縁側の開口部24側に対して樹脂溜まり部6が、内側に選択的に形成されることになる。
【0030】
なお、第1の環状シール盤7は、図1に示すような周状のシール部26を一体的に形成させるため、傾斜面部71と曲面部72を環状に連続して形成した環状シール盤(シールリング)とすることが好ましい。
【0031】
図5に示した形状の第1の環状シール盤7を用いて、容器本体2のフランジ部25と蓋材3をヒートシールする場合には、先ず、第1の環状シール盤7における傾斜面部71と曲面部72との境界Aに対応する先端73が蓋材3に接し、その後、境界Aの内周縁側に形成された曲面部72が蓋材3の内側に向かって、また、境界Aの外周縁側に形成された傾斜面部71が蓋材3の外側に向かって押圧していく。これにより、容器本体2の表面層21と表面層21と隣接する表面下層22の樹脂成分は、前記の境界Aの下部から容器本体2の内側に押し出され、フランジ部25の第1の環状シール盤7の内周縁が接する位置の近傍、すなわち、容器本体2のシール部26の内周縁近傍Xに盛り上がった瘤状の樹脂溜まり61,62を形成し、また、蓋材3のシール層31も追随して樹脂溜まり63を形成して、これらが樹脂溜まり部6を形成した状態で、容器本体2のフランジ部25に現れた表面層21と、蓋材3のシール層31とがヒートシールされ、両者が融着されることになる。
【0032】
第1のヒートシール工程におけるシール条件は、ヒートシールされる材料の種類などに応じて適宜決定すればよい。シール温度としては、通常、160℃から240℃までの範囲とすればよい。シール圧力としては、通常、150kg/cmから350kg/cmまでの範囲(15000kPaから35000kPaまでの範囲)とすればよい。シール時間としては、通常、0.5秒間から4.0秒間までの範囲とすればよい。
【0033】
このような第1のヒートシール工程により、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜り部6を形成できる場合はよいが、例えば、連続生産を行った場合のように、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜り部6を安定して形成できない場合がある。そのため、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜り部6をより安定して形成するという観点から、以下説明する第2のヒートシール工程を行うことがより好ましい。
【0034】
(第2のヒートシール工程)
図6は、本実施形態の第2のヒートシール工程において第2の環状シール盤8をフランジ部25に押圧した後の状態を示す部分断面図である。
第2のヒートシール工程においては、蓋材3の上部から、加熱状態の第2の環状シール盤8を押圧することにより実施され、これにより、容器本体2のフランジ部25に現れた表面層21と蓋材3のシール層31がさらにヒートシールされる。
【0035】
第2のヒートシール工程においては、図6に示すように、フランジ部25上に有るシール部26の内周縁近傍に形成された樹脂溜まり部6が押し潰される。このようにして、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜り部6をより安定して形成することができる。
【0036】
第2のヒートシール工程において用いる第2の環状シール盤8は、図1に示すような周状のシール部26を一体的に形成させるため、平坦なシール面または曲面状のシール面を環状に連続して形成した環状シール盤(シールリング)であればよい。
【0037】
第2のヒートシール工程においては、フランジ25外周縁からの夾雑物進入を防ぐために、樹脂溜り部からフランジ25の外側端部にかけてヒートシールができるようにシール面が平坦な環状シール盤であることがより好ましい。
【0038】
第2のヒートシール工程におけるシール条件は、ヒートシールされる材料の種類などに応じて適宜決定すればよい。シール温度としては、通常、120℃から200℃までの範囲とすればよい。シール圧力としては、通常、150kg/cmから250kg/cmまでの範囲(15000kPaから25000kPaまでの範囲)とすればよい。シール時間としては、通常、0.5秒間から4.0秒間までの範囲とすればよい。
【0039】
(易開封性容器1の開封)
図7は、本実施形態の易開封性容器1が初期開封された状態を示した断面図であり、図8は、本実施形態の易開封性容器1が完全に開封された状態を示した断面図である。なお、ここでいう「初期開封された状態」とは、凝集剥離された剥離面が樹脂溜まり部6まで達していない状態を指す。
【0040】
前記のようにして、容器本体2のフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして得られた本実施形態の易開封性容器1を開封開始部4から開封するために、図7に示すように、蓋材3に対して図7の矢印方向に力Fがかかった場合には、容器本体2の表面層21の凝集剥離が進行する。
また、この凝集剥離が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、表面層21の凝集剥離は、表面層21と隣接する表面下層22に形成された樹脂溜まり62の形状に沿って進行されることになる。
【0041】
そして、表面層21の凝集剥離が、シール部26の内周縁近傍(切断位置にもなる)Xにまで達したら、蓋材3のシール層31に形成された樹脂溜まり63の形状に追随するようにして、容器本体2の表面層21の樹脂溜まり61が切断されることにより、易開封性容器1における容器本体2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
【0042】
(本実施形態の効果)
前記したような第1実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
易開封性容器1が、開口部24の周縁にフランジ部25を配設する容器本体2と、この容器本体2のフランジ部25と蓋材3が環状にヒートシールされてなるので、高い密封性が維持されると共に、容器本体2の表面層21が凝集破壊することで、蓋材3が開封可能とされるため、容器本体2の表面層21とこの表面層21に隣接する表面下層22とを界面剥離させる態様と比較して、初期開封強度も安定し、開封がスムースに進行される。また、開封時に、樹脂溜まり部6にある表面層21が伸びて、易開封性容器1の開封外観が悪くなるという問題の発生を防止することができる。
【0043】
また、フランジ部25のシール部26の内周縁近傍Xには、容器本体2の表面層21、この表面層21に隣接する表面下層22および蓋材3のシール層31の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部6が形成されているので、高密封性を確保できる。さらに、この樹脂溜まり部6は、前記数式(F1)で表される条件を満たしているため、易開封性容器1におけるシール強度のバラツキを十分に抑制できる。また、第1のヒートシール工程により前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜まり部6を形成することができない場合には、第2のヒートシール工程において樹脂溜まり部6を押し潰してもよい。このようにすれば、例えば、連続生産により第1のヒートシール工程のみでは、前記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜まり部6を安定して形成できない場合にも、易開封性容器1におけるシール強度をより安定的に高めることができる。
【0044】
また、第1のヒートシールと同時に瘤状の樹脂溜まり部6を形成させるための第1の環状シール盤7として、フランジ部25上面に対して、内周縁に断面が曲線状の曲面部72が形成され、外周縁側に傾斜面部71を形成したものを用いているので、樹脂溜まり部6が、特にシール部26の内周縁近傍Xに選択的に形成させ、逆に外周縁近傍には形成されないようにできる。また、第1のヒートシール時に、前記樹脂溜まり部6の、付け根近傍の容器外周側で、蓋材3のシール層31または容器本体2の表面層21を切断することを防げるため、蓋材3が途中でちぎれて易開封性を損なうという問題を回避することができる。
【0045】
さらには、製造に際しては第1の環状シール盤7および第2の環状シール盤8の位置決めも厳密でないため、生産性も良好であり、高品質の易開封性容器1を低コストで提供することができる。
【0046】
[第2実施形態]
前記した第1実施形態の易開封性容器1は、容器本体2と蓋材3が開封するに際し、容器本体2の表面層21が凝集剥離して開封される態様を示すものであった。
これに対して、第2実施形態の易開封性容器1aは、図9および図10に示すように、容器本体2と蓋材3が開封するに際して、蓋材3のシール層31が凝集剥離するという点において、第1実施形態と相違する。
なお、本実施形態においては、前記した第1実施形態と同一構造および同一部材については、同一符号を付すと共に、その説明は省略または簡略化している。
【0047】
図9は、本実施形態の易開封性容器1aが初期開封された状態を示した断面図であり、図10は、本実施形態の該易開封性容器1aが完全に開封された状態を示した断面図である。
図9および図10に示すように、易開封性容器1aを構成する蓋材3のシール層31が凝集破壊して、蓋材3が剥離するようにする場合には、シール層31を構成する材料としては、スチレングラフトプロピレン樹脂、接着性ポリオレフィン樹脂などを使用することができる。また、容器本体2の表面層21としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;これらを混合したものなどを使用することができる。
【0048】
このようなシール層31を蓋材3に採用し、表面層21を容器本体2に採用して両者をヒートシールした場合にあっては、両層21,31が融着する一方、開封の際には、応力に対して弱い蓋材3のシール層31が凝集破壊して、開封が良好に行われる。
【0049】
第2実施形態の易開封性容器1aを開封開始部4から開封するには、図9に示すように、蓋材3に対して図9の矢印方向に力Fがかかるようにすると、蓋材3のシール層31の凝集剥離が進行していくことになる。そして、開封が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、シール層31の凝集剥離は、当該シール層31とヒートシールされた容器本体2の表面層21に形成された樹脂溜まり61の形状に沿って進行されることになる。
蓋材3のシール層31の凝集剥離がシール部26の内周縁近傍(切断位置にもなる)Xにまで達した後は、シール層31の樹脂溜まり63が切断されることにより、易開封性容器1における容器本体2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
【0050】
この第2実施形態によれば、前記第1実施形態により奏される効果と略同等の効果を奏することができる。
【0051】
[他の実施形態]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0052】
例えば、前記した実施形態のうち、第1実施形態では、容器本体2の表面層21が凝集剥離する態様を、また、第2実施形態では、蓋材3のシール層31が凝集剥離する態様をそれぞれ示したが、本発明にあっては、開封に際し、容器本体2の表面層21と蓋材3のシール層31の両層が凝集破壊されて開封される場合も含む。更には、容器本体2の表面層21と、表面下層22が同一部材である場合でも、前記同一部材が蓋材3のシール層31とヒートシール可能で、蓋材3を開封する際に、蓋材3のシール層31が凝集破壊する場合は、前述した本発明の効果が期待できるため、本発明に含まれる。
このような場合、図7から図10までの図では、表面層21と表面下層22は、別層のように見えるが同一部材で、便宜的に、表面下層22の凝集破壊される部分(フランジ部25の表面)を表面層21と示した、と見ることもできる。
【0053】
また、凝集剥離される容器本体2の表面層21や蓋材3のシール層31の構成材料も、前記した実施形態で示した例の他、例えば、表面層21はポリプロピレンとエチレン・メタクリル酸共重合体やエチレン・テトラシクロドデセン共重合体とを混合したもの、シール層31は飽和共重合ポリエステル系樹脂を使用することができる。

【0054】
なお、本発明の易開封性容器の製造方法を実施して図1および図2に示される構成の易開封性容器を製造する場合においては、場合により、環状シール盤7の内周縁が接する位置に対応する部分に形成される樹脂溜まり部6の他、第1の環状シール盤7の外周縁が接する位置に対応する部分に樹脂溜まりが形成されてもよい。このような場合、外周縁に形成される樹脂溜まりより、内周縁に形成される樹脂溜まりの方が大きくなるため、良好な易開封性と高密封性が維持されることとなる。
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
下記の材料および方法を用いて、全体形状を図1、また、開封開始部の断面構成を図2に示す本発明の易開封性容器を製造した。
【0057】
ディストリビューター方式共押出し多層シート製造装置を用いて、下記に示す表面層21/表面下層22/基材層23をこの順で備える、厚さが600μmの積層体を成形した。
表面層21:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)70質量%と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(日本ポリエチレン社製、製品名「レクスパール ET220X」)30質量%とを混合したものからなる層(厚み:20μm)
表面下層22:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)80質量%と、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、製品名「HE−30」)20質量%とを混合したものからなる層(厚み:100μm)
基材層23:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)からなる層(厚み:150μm)/接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三菱化学社製、製品名「モディックAP P604」)からなる層(厚み:5μm)/エチレンビニルアルコール(EVOH、クラレ社製、製品名「エバールJ」)からなる層(厚み:30μm)/接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三菱化学社製、製品名「モディックAP P604」)からなる層(厚み:5μm)/ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)からなる層(厚み:300μm)をこの順で備える積層体
【0058】
次に、この積層体を用いて、プラグアシスト真空成形により、大きさが130mm×150mm×30mmのフランジ付の容器本体2を成形した。なお、この容器本体2は、開口部24に対して巾15mmのフランジ部25を有し、略長方形のトレー状となるように形成されている。
【0059】
このようにして得られた容器本体2の開口部24周縁のフランジ部25に対して、下記に示す外層32/シール層31をこの順で備える多層フィルムを蓋材3として載置した。
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学製、製品名「テックバリア」、厚み:12μm)/ポリアミド(製品名「ナイロン」)からなる層(厚み:15μm)をこの順で備える積層体
シール層31:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、出光ユニテック社製、製品名「LS700C」、厚み:60μm)
【0060】
そして、シール盤として、傾斜面部71と曲面部72が全周に形成された下記の第1の環状シール盤(シールリング)を使用して、下記の第1のシール条件により、蓋材3および容器本体2のフランジ部25に対して第1のヒートシールをした。
(第1の環状シール盤の仕様)
シール巾:3mm
シール面における傾斜角度θ(傾斜面部71):6°
シール面におけるR加工(曲面部72)の曲率半径R:1.0mm
(第1のシール条件)
シール温度:220℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0061】
次に、シール盤として、下記の第2の環状シール盤(シールリング)を使用して、下記の第2のシール条件により、蓋材3および容器本体2のフランジ部25に対して第2のヒートシールをして、易開封性容器を得た。なお、第2のヒートシール工程後における、フランジ部25の表面下層22の表面を基準としたときの樹脂溜り部の高さA(図2参照)と、樹脂溜り中の表面層に隣接する層の根元(突出部)から、樹脂溜り中の表面層に隣接する層の最内側到達点までの距離B(図2参照)を測定した。そして(A/B)の値を算出し、表1に示す。
また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2の環状シール盤の仕様)
シール巾:10mm
シール面の形状:フラット
(第2のシール条件)
シール温度:200℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0062】
[実施例2]
第2のヒートシール工程における第2のシール条件を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例2においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2のシール条件)
シール温度:120℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0063】
[実施例3]
第2のヒートシール工程における第2のシール条件を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例2においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2のシール条件)
シール温度:180℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0064】
[実施例4]
第2のヒートシール工程における第2のシール条件を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例2においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2のシール条件)
シール温度:150℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0065】
[実施例5]
第2のヒートシール工程における第2の環状シール盤として下記のものを使用した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例3においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2の環状シール盤の仕様)
シール巾:10mm
シール面の形状:曲面状
シール面の曲面の曲率半径R:50mm
【0066】
[実施例6]
蓋材3として、下記に示す外層32/シール層31をこの順で備える多層フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例4においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学製、製品名「テックバリア」、厚み:12μm)/ポリアミド(製品名「ナイロン」)からなる層(厚み:15μm)をこの順で備える積層体
シール層31:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)70質量%と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(日本ポリエチレン社製、製品名「レクスパール ET220X」)30質量%とを混合したもの(PP系樹脂)からなる層(厚み:60μm)
【0067】
[実施例7]
第2のヒートシール工程における第2の環状シール盤として下記のものを使用した以外は実施例4と同様にして、易開封性容器を得た。なお、実施例5においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2の環状シール盤の仕様)
シール巾:10mm
シール面の形状:曲面状
シール面の曲面の曲率半径R:50mm
【0068】
[比較例1]
第2のヒートシール工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、比較例1においては第2のヒートシール工程を行わなかったことから、第1のヒートシール工程後における(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂を表1に示す。
【0069】
[比較例2]
第2のヒートシール工程における第2の環状シール盤として下記のものを使用した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、比較例2においては、樹脂溜まり部6にもローレットにより凹凸が形成されていたため、第2のヒートシール工程後における、フランジ部25の表面下層22の表面を基準としたときの樹脂溜り部の高さAを測定できなかった。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2の環状シール盤の仕様)
シール巾:10mm
シール面:ローレット
【0070】
[比較例3]
第2のヒートシール工程における第2のシール条件を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、易開封性容器を得た。なお、比較例3においても(A/B)の値を算出し、表1に示す。また、蓋材3のシール層31を構成する樹脂、並びに第2のヒートシール工程におけるシール温度およびシール盤のシール面の形状を表1に示す。
(第2のシール条件)
シール温度:220℃
シール圧力:200kg/個
シール時間:1.2秒
【0071】
[易開封性容器の評価]
実施例1から実施例5まで、および比較例1から比較例3までで得られた易開封性容器について、開封強度、シール強度、内圧強度および開封時の開封外観を以下に示す方法により評価し、得られた結果を表1に示す。
【0072】
(開封強度)
図11(A)に示すように、容器1の隅角(開封開始部)を15mm巾に切断して試験サンプルとし、このサンプルを、フランジ部の外側(フランジ部の外周縁側)から内側(容器本体の開口部側)(図11(A)の矢印方向)へオートグラフ引張試験機を用いて、135°剥離で300mm/minの条件で開封強度(単位:kgf/15mm)を測定した。なお、試験は、n=6で行い、その平均値を算出した。
【0073】
(シール強度)
図11(B)に示すように、容器1の4辺を15mm巾に切断して試験サンプルとし、フランジ部の内側から外側(図11(B)の矢印方向)へ、オートグラフ引張試験機を用いて、180°剥離で300mm/minの条件でシール強度(単位:kgf/15mm)を測定した。なお、試験は、n=12で行い、その最小値を算出した。
【0074】
(内圧強度)
易開封性容器に加圧空気を0.8L/minから1.2L/minまでの範囲の送風量で注入し、当該容器が破裂したときの圧力(単位:MPa)を測定した。なお、試験は、n=5で行い、その平均値および最小値を算出した。
【0075】
(開封外観)
開封後の開封開始部の外観を目視で評価した。評価内容は、開封開始部の外観が全体的に良好の場合を「良」、開封開始部の外観についてヒゲの発生などがほとんど気にならない程度である場合を「ほぼ良」、開封開始部の外観について全体が悪い場合を「悪」とした3段階で評価した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示した結果から明らかなように、下記数式(F1)で表される条件を満たす樹脂溜まり部が形成されている易開封性容器(実施例1から実施例7までにより得られた易開封性容器)は、開封強度が適度な範囲内であり、開封外観も良好であることから、開封時におけるヒゲの発生を十分に抑制できると共に、高い密封性および易開封性を併せ持つものであることが確認された。また、実施例1から実施例7までにより得られた易開封性容器は、シール強度および内圧強度の平均値および最小値のいずれもが十分に高いことから、シール強度のバラツキを十分に抑制できるものであることが確認された。
特に、蓋材のシール層の材質をLLDPEとした実施例1〜5は、PP系樹脂とした実施例6、7と比べて、ヒゲが発生しにくく、開封外観が良好であることが確認された。
一方、第2のヒートシール工程を行っていない場合(比較例1)には、連続生産を行った際、シール強度が不十分になるものがあった。また、第2のヒートシール工程においてシール面の形状がローレットのシール盤を用いた場合(比較例2)には、ローレットシールでのランダムな潰れ跡によって、樹脂溜まり部からヒゲが発生しており、開封開始部の開封外観が悪かった。さらに、第2のヒートシール工程において樹脂溜まり部を潰し過ぎた場合(比較例3)には、蓋材のシール層の材質をLLDPEとしたにもかかわらず、樹脂溜まり部からヒゲが発生すると共に蓋材のデラミネーションが発生しており、開封開始部の開封外観が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の易開封性容器の製造方法により得られる易開封性容器は、食品類などの容器に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1a…易開封性容器
2…容器本体
21…表面層
22…表面下層
23…基材層
24…開口部
25…フランジ部
26…シール部
3…蓋材
31…シール層
32…外層
4…開封開始部
6…樹脂溜まり部
61…樹脂溜まり(容器本体2の表面層21)
62…樹脂溜まり(容器本体2の表面下層22)
63…樹脂溜まり(蓋材3のシール層31)
7…第1の環状シール盤
71…傾斜面部
72…曲面部
73…先端
8…第2の環状シール盤
A…境界
X…シール部の内周部近傍(切断位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と表面下層を少なくとも有する積層体からなり、開口部の周縁にフランジ部を有する容器本体と、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有する蓋材とを備え、
前記フランジ部の前記表面層と前記蓋材の前記シール層とを環状にヒートシールし、前記容器本体および前記蓋材のシール部のうち少なくともいずれか一方が界面剥離または凝集破壊することで、蓋材が開封可能とされる易開封性容器であって、
前記フランジ部上の前記シール部の内周側に、前記容器本体の表面層、前記表面下層および前記蓋材の前記シール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が、下記数式(F1)で表される条件を満たすように形成されていることを特徴とする易開封性容器。
0.25 ≦ A/B ≦ 1.2 ・・・(F1)
(数式(F1)中、Aは前記樹脂溜り部において、前記フランジ部の前記表面下層の表面から前記シール層の表面までの高さ寸法を示し、Bは前記樹脂溜り部において、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の根元から、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の最内側到達点までの幅寸法を示す。)
【請求項2】
前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、
前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体とを含有する樹脂組成物から形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の易開封性容器。
【請求項3】
前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、
前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体とを含有する樹脂組成物から形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の易開封性容器。
【請求項4】
前記容器本体の表面層が凝集破壊することで前記蓋材が開封可能とされ、且つ、
前記容器本体の表面層が、ポリプロピレン系樹脂と、低密度ポリエチレン系樹脂と、メタロセン系ポリプロピレン系樹脂とを含有する樹脂組成物から形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の易開封性容器。
【請求項5】
表面層と表面下層を少なくとも有する積層体からなり、開口部の周縁にフランジ部を有する容器本体と、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有する蓋材とを備え、
前記フランジ部の前記表面層と前記蓋材の前記シール層とを環状にヒートシールし、前記容器本体および前記蓋材のシール部のうち少なくともいずれか一方が界面剥離または凝集破壊することで、蓋材が開封可能とされる易開封性容器の製造方法であって、
前記フランジ部上の前記シール部の内周側に、前記容器本体の表面層、前記表面下層および前記蓋材の前記シール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が、下記数式(F1)で表される条件を満たすように形成することを特徴とする易開封性容器の製造方法。
0.25 ≦ A/B ≦ 1.2 ・・・(F1)
(数式(F1)中、Aは前記樹脂溜り部において、前記フランジ部の前記表面下層の表面から前記シール層の表面までの高さ寸法を示し、Bは前記樹脂溜り部において、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の根元から、前記樹脂溜り部中の前記表面下層の最内側到達点までの幅寸法を示す。)
【請求項6】
前記樹脂溜まり部を、内周縁にR加工されて断面が曲線状の曲面部が形成され、外周縁に前記内周縁から上方に向かってテーパーが形成された環状シール盤を用いて、前記容器本体のフランジ部上面に重ねた前記蓋材の上方から押圧する第1のヒートシール工程で行うことにより形成することを特徴とする請求項5に記載の易開封容器の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂溜まり部を、前記第1のヒートシール工程の後に、さらに、平坦なシール面を有する環状シール盤または曲面状のシール面を有する環状シール盤を用いて、前記容器本体のフランジ部上面に重ねた前記蓋材の上方から押圧する第2のヒートシール工程を行うことで形成することを特徴とする請求項6に記載の易開封性容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−195157(P2011−195157A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62105(P2010−62105)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】