説明

映像処理装置及びその制御方法

【課題】任意視点映像データを含む映像コンテンツデータの再生時に任意視点映像の視点を移動させる操作をユーザが行った場合に再生中の任意視点映像において生じる視点移動を区域毎に制御する。
【解決手段】視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを再生可能な映像処理装置であって、複数の映像データに基づいて生成されるユーザに指定された任意の視点での任意視点映像データを取得する取得手段と、ユーザに指定された視点での任意視点映像データを再生する制御を行う再生手段と、ユーザに視点を移動させる指示を入力させる入力手段と、視聴可能エリア、視聴可能エリア内に定められる区域、及び区域毎に定められる視点移動レベルの情報を取得する手段と、視点を移動させる指示が入力された場合に、再生中の任意視点映像に映る区域の視点移動レベルに基づいて、再生中の任意視点映像の視点を移動させる視点移動手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ視点をユーザが指示できる任意視点映像に対応した映像処理装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送が開始され、デジタル放送を受信可能なテレビ(デジタルテレビ)が普及している。現在、本格的なデジタル放送時代を迎え、様々な次世代放送システムの研究・開発が多数行われている。その中のひとつとして、カメラ視点をユーザが自由に指示できる任意視点映像を含む映像コンテンツの放送、受信、及び再生システムが注目されている。
【0003】
任意視点映像は、複数の異なる視点(視点位置及び視線方向)の映像データに基づいて生成される、ユーザに指定された任意の視点での映像を視聴することができる映像である。複数の異なる視点の映像データは、例えば複数のカメラで撮影された映像データや、複数の視点からのアニメーション映像データやCG映像データなどが考えられる。任意視点映像を含む映像コンテンツを再生可能な映像処理装置により、ユーザは、実際にはカメラの存在しない視点にカメラを置いて撮影したかのような映像を視聴することができる。
【0004】
任意視点映像では、ユーザが設定した視点によっては、撮影機材や制作スタッフなど番組制作者が視聴者に見せたくないものが写ってしまう場合がある。また、被写体に近すぎる視点や地面の下に潜ってしまう視点など、任意視点映像の生成がそもそも困難な視点が指定されることも考えられる。
【0005】
特許文献1には、任意視点映像の視点位置及び視線方向を制限又は許可する情報を映像データに付加して伝送又は記録するシステムが記載されている。このシステムによれば、任意視点映像において、番組制作者にとって視聴者に見せたくないものが写ってしまう位置や視線方向にユーザが仮想カメラを位置させたり向けたりすることを禁止するように、番組制作者側にて設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―195091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の技術は、任意視点映像を含む映像コンテンツにおいて、制作者側の意図により視聴者による視聴を禁止したい被写体が存在する視聴禁止エリアや視聴者による視聴を許容する被写体が存在する視聴可能エリアを設定する場合において有効である。
【0008】
ところで、任意視点映像を含む映像コンテンツにおいては、制作者側の意図として、視聴可能エリア内で、視聴者によく見て欲しい区域(範囲)や、逆にそれほど重要でない区域が存在することが考えられる。
【0009】
例えば、テレビショッピング番組において、商品の映像は視聴者によく見て欲しいが司会者の映像はそれほど重要ではないという番組制作意図がある場合、スタジオ内で商品が陳列されている区域はよく見て欲しい区域、司会者がいる区域は重要ではない区域となる。同様に、テレビショッピング番組を任意視点映像で視聴するユーザにとっても、商品の
映像は、司会者やスタジオセット等よりも、詳細に様々な視点から見たいという要求があることが考えられる。
【0010】
上記特許文献1の技術では、視聴可能エリア内の区域毎の重要度に応じて任意視点映像の表示(再生)を制御することは想定されていない。
【0011】
本発明は、任意視点映像データを含む映像コンテンツデータの再生時に任意視点映像の視点を移動させる操作をユーザが行った場合に再生中の任意視点映像において生じる視点移動を区域毎に制御することができる映像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを再生可能な映像処理装置であって、
映像コンテンツデータに含まれる視点が異なる複数の映像データに基づいて生成される、ユーザに指定された任意の視点での任意視点映像データを取得する取得手段と、
前記ユーザに指定された視点での任意視点映像データを再生する制御を行う再生手段と、
ユーザに、前記再生手段が再生中の任意視点映像において視点を移動させる指示を入力させる入力手段と、
映像コンテンツデータから、前記再生手段が再生可能な任意視点映像に映る被写体の存在範囲を示す視聴可能エリアの情報と、視聴可能エリア内に定められる一又は複数の区域の情報と、区域毎に定められる、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の度合を示す視点移動レベルの情報と、を取得する手段と、
再生中の任意視点映像に映る区域を特定する特定手段と、
入力手段において視点を移動させる指示が入力された場合に、前記特定手段により特定される区域に定められる視点移動レベルに基づいて、再生中の任意視点映像の視点を移動させる視点移動手段と、
を有する映像処理装置である。
【0013】
本発明は、視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを再生可能な映像処理装置の制御方法であって、
映像コンテンツデータに含まれる視点が異なる複数の映像データに基づいて生成される、ユーザに指定された視点での任意視点映像データを取得する取得工程と、
前記ユーザに指定された視点での任意視点映像データを再生する制御を行う再生工程と、
ユーザに、前記再生工程で再生中の任意視点映像において視点を移動させる指示を入力させる入力工程と、
映像コンテンツデータから、前記再生工程で再生可能な任意視点映像に映る被写体の存在範囲を示す視聴可能エリアの情報と、視聴可能エリア内に定められる一又は複数の区域の情報と、区域毎に定められる、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の度合を示す視点移動レベルの情報と、を取得する工程と、
再生中の任意視点映像に映る区域を特定する特定工程と、
入力工程において視点を移動させる指示が入力された場合に、前記特定工程により特定される区域に定められる視点移動レベルに基づいて、再生中の任意視点映像の視点を移動させる視点移動工程と、
を有する映像処理装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、任意視点映像データを含む映像コンテンツデータの再生時に任意視点映像の視点を移動させる操作をユーザが行った場合に再生中の任意視点映像において生じる視点移動を区域毎に制御することができる映像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係るデジタル放送受信装置の接続構成例を示す図
【図2】実施例に係るデジタル放送受信装置の機能ブロック構成例を示す図
【図3】任意視点映像の再生処理シーケンスを示す図
【図4】任意視点映像の視聴可能エリアデータ取得処理のシーケンスを示す図
【図5】任意視点映像の視聴可能エリアの一例を示す図
【図6】任意視点映像の視聴可能エリアデータのデータ構造例を示す図
【図7】視聴可能エリアの各区域の視点移動レベル取得処理シーケンスを示す図
【図8】任意視点映像の区域指定の一例を示す図
【図9】任意視点映像の任意視点移動レベルデータのデータ構造例を示す図
【図10】視点移動レベルに応じて視点移動度を決定する処理のフローチャート
【図11】視点移動度設定メニューのGUIの一例
【図12】視点移動レベルに対応する視点移動度の可変幅の一例
【図13】任意視点映像の視点情報を取得する処理のフローチャート
【図14】視点移動度に応じて任意視点移動を制御する処理のフローチャート
【図15】視点移動度に応じた任意視点視聴時の視点移動の一例を示す図
【図16】視点移動ボタン長押し時に実行される処理のフローチャート
【図17】視聴可能エリアの区域と視点移動レベルを設定する処理のフローチャート
【図18】視点移動レベル設定メニューのGUIの一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に図面、フローチャート、及びシーケンス図を参照して、この発明を実施するための最良の形態を説明する。実施例1では、デジタル放送受信装置がデジタル放送波により放送映像を受信し、インターネット経由により任意視点映像を生成するための任意視点映像生成用データ(任意視点映像データ)を取得する例を説明する。
【0017】
放送映像は、任意視点映像ではない通常の標準的な番組映像であり、ユーザが任意視点映像での番組視聴を選択しなかった場合や、任意視点映像に非対応のデジタルテレビで番組を視聴する場合に表示される映像である。任意視点映像生成用データは、複数の異なる視点で撮影された映像データや、該映像データからユーザの指定する任意の視点での映像を生成するために必要な各種データ(カメラ位置、視線方向、画角などの情報を格納するデータ)を含む。なお、任意視点映像生成用データは、複数の異なる視点の映像データであれば、カメラで撮影された映像データに限らず、アニメーション映像データやCG映像データ等でも良い。
【0018】
本実施例では、放送映像データが放送により送信され、任意視点映像データが通信(インターネット)により送信(配信)される構成を例に説明するが、任意視点映像データも放送により送信されても良い。本実施例における「デジタル放送番組データ」は、本発明における、任意視点映像データを含む映像コンテンツデータの一例である。本発明における任意視点映像データを含む映像コンテンツデータは、放送により送信されるデータに限らず、例えば録画機器に蓄積された映像コンテンツデータや、DVDやBD等のメディアに記録された映像コンテンツデータ等も含む概念を表すものとする。従って、本発明における映像処理装置も、デジタル放送受信装置に限らず、DVDレコーダやHDDレコーダ等の録画機器、DVDプレーヤやBDプレーヤ等の再生機器、パーソナルコンピュータ(PC)やPC用拡張ボードや拡張機器等を含む概念である。
【0019】
なお、本実施例ではカメラの視点(位置及び視線方向)や撮影エリアなどが二次元座標系で表現及び特定される場合を例に説明するが、それに限定する必要はない。
【0020】
図1は、本実施例におけるデジタル放送受信装置を含む各種機器の接続構成例を示した図である。
デジタル放送受信装置100は、PCやDVDプレーヤなどの家電機器を含むネットワーク接続可能な各種機器102とローカルエリアネットワーク101を介して接続され、互いに通信可能となっている。このローカルエリアネットワーク101に繋がったデジタル放送受信装置100は、ルータ103を介してインターネット104への接続が可能である。デジタル放送受信装置100と各種機器102やルータ103との接続形態としては、無線LAN等を含む各種の有線及び/又は無線による接続形態を取り得る。
また、デジタル放送受信装置100は、アンテナ105からデジタル放送波を受信し、デジタル放送番組の再生(表示)が可能である。特に、デジタル放送受信装置100は、視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを含むデジタル放送番組データを再生可能である。
【0021】
図2は、本実施例におけるデジタル放送受信装置及びデジタル放送を放送する放送局のシステム構成例を示した図である。
【0022】
放送局250は、放送カメラ240で撮影した放送映像を、デジタル放送送信システム241によりデジタル放送波に変換し、送信する。放送局250は、複数の固定カメラ252で撮影した映像データやそれに基づき任意視点映像を作成するための種々のデータ(任意視点映像生成用データ)を、任意視点映像生成用データサーバ251に格納する。任意視点映像生成用データサーバ251は、任意視点映像生成用データを、クライアント(デジタル放送受信装置100)からの要求に応じて、インターネット104経由で、クライアントへ配信する。
【0023】
デジタル放送受信装置100は、テレビの基本機能、任意視点映像データの再生機能、視聴可能エリアの取得機能、視点移動レベルの取得機能、視点移動度の決定機能、及び視点移動度に応じた任意視点の移動制御機能、の各種機能を実現するブロックを有する。
【0024】
放送映像を受信するテレビ基本機能ブロックについて説明する。
図2において、アンテナ105により受信されたデジタル放送波は、チューナ部210に入力される。チューナ部は、デジタル放送波を復調してトランスポートストリームデータ(以下、TSと記す)を生成する。TSには、複数チャンネル分の映像データ、音声データ、及び番組情報データ等が多重化されている。
【0025】
チューナ部210は、前記TSを、デスクランブラ211を経て、データ分離部212へ出力する。データ分離部212は、前記TSの中から、リモコン201により選択された番組の音声データ、映像データ及び番組情報データを取り出し、それぞれを音声デコード部213、映像デコード部214、番組情報デコード部215へ出力する。
【0026】
音声デコード部213は、データ分離部212から入力された音声データに対して復号化処理を施し、音声制御部219へ出力する。
音声制御部219は、音声データに対して、D/A(Digital/Analog)変換処理等を施し、音声出力部221へ出力する。
【0027】
映像デコード部214は、データ分離部212から入力された映像データに対して、MPEG等の復号化処理を施し、復号した映像データを映像処理部217に出力する。
番組情報デコード部215は、データ分離部212から入力された番組情報データから所望の情報を取得し、番組情報処理216、映像処理部217、及びGUI(Graphic User Interface)処理部218へ出力する。
【0028】
番組情報データには、SI(Service Information)データ、PSI(Program Specific Information)データが含まれている。
映像処理部217は、映像デコード部214から入力された映像データと、番組情報デコード部215から入力された番組情報とに基づいて、映像データに対し映像調整処理を施し、調整した映像データを表示制御部220へ出力する。
【0029】
表示制御部220は、映像処理部217、GUI処理部218から入力された映像データや画面データをリモコン201からの操作に応じて切り替えたり、合成するなどしたりして、表示部222へ出力する。ユーザがリモコン201を操作すると、リモコン201は操作に応じた信号を送信し、受光部202がリモコン201からの信号を受信する。システム制御部226は、受光部202が受信した信号に基づき、各機能部に対し動作指令を出す。
【0030】
デジタル放送受信装置100は、選局に関わる処理を行う選局処理部223、時間に関わる処理を行う時間処理部224、メモリ管理に関わる処理を行うメモリ管理部225を有する。
システム制御部226は、各構成要素を統括的にコントロールする。
【0031】
次に、任意視点映像作成用データを放送局のサーバから取得し、任意視点映像を再生(生成)する処理(任意視点映像再生処理)について説明する。
図3は、本実施例における任意視点映像再生処理についてのシーケンス図である。図3は、任意視点映像をデジタル放送受信装置100内で生成する処理を示す。
【0032】
デジタル放送受信装置100は、インターネット104経由で、放送局250の任意視点映像生成用データサーバ251と接続する。なお、任意視点映像生成用データを保持(保存)する任意視点映像生成用データサーバ251は、放送局250内にある必要はなく、放送局250外にあってもかまわない。「任意視点映像生成用データ」とは、デジタル放送受信装置100がユーザの指定した視点の任意視点映像を生成するために必要なデータである。任意視点映像生成用データには、例えば、複数の固定カメラ252により撮影された映像データ、各固定カメラの視点情報(設置位置、視線方向、画角など)のデータなどが含まれる。任意視点映像生成用データには、これら以外のデータが含まれても良いし、逆に、ここに例示的に列挙したデータを全て含んでいる必要もない。
【0033】
図2、図3において、デジタル放送受信装置100の任意視点情報処理部232は、リモコン201(入力手段)からのユーザの視点移動指示(S300)を受けて、移動先の視点の任意視点映像生成用データ取得要求を作成する(S301)。
【0034】
任意視点情報処理部232は、作成した移動先の視点の任意視点映像生成用データ取得要求を要求データ処理部231、通信制御部227を経て放送局250の任意視点映像生成用データサーバ251に送信する(S302)。
【0035】
任意視点映像生成用データサーバ251は、デジタル放送受信装置100から受信した任意視点映像生成用データ取得要求を解析し(S303)、複数の固定カメラ252による映像データや撮影データ等から任意視点映像生成用データを作成する(S304)。ここで、任意視点映像生成用データは、固定カメラにより撮影される映像データから特別に
作成したデータでもよいし、複数の固定カメラ252により撮影される映像データ及び視点情報でもよい。
【0036】
任意視点映像生成用データサーバ251は、作成した任意視点映像生成用データをデジタル放送受信装置100へ送信する(S305)。
【0037】
デジタル放送受信装置100内の受信データ解析部230は、通信制御部227を経て、任意視点映像生成用データサーバ251から送信された任意視点映像生成用データを受信・解析し(S306)、解析結果を任意視点情報処理部232に出力する。
【0038】
任意視点情報処理部232は、入力された任意視点映像生成用データをもとにユーザの指定した視点での任意視点映像データを生成し(S307)、表示制御部220へ出力する。
【0039】
表示制御部220は、入力される任意視点映像データ、又は必要に応じてGUI処理部218から入力されるGUIと合成した映像データを、表示部222へ出力し、任意視点映像を表示する(S308)。
【0040】
以上の処理の繰り返しにより、デジタル放送受信装置100は、ユーザの指示した視点の任意視点映像データを再生(生成、合成)し表示することができる(再生手段)。
本実施例では、デジタル放送受信装置100の外部に設置される任意視点映像生成用データサーバ251から取得した任意視点映像生成用データを用いて、デジタル放送受信装置100が、ユーザに指定された視点の任意視点映像データを生成する例を説明した。
しかしながら、ユーザに指定された視点の任意視点映像データを生成する機能部がデジタル放送受信装置100に備わっている必要はかならずしも無い。例えば、任意視点映像生成用データサーバ251と同様に、デジタル放送受信装置100の外部に、任意視点映像データを生成する装置を配置し、デジタル放送受信装置100は、該外部装置で生成された任意視点映像データを通信等で取得するようにしても良い。その場合、デジタル放送受信装置100は、ユーザに指定された視点の情報をインターネット104等の通信手段により外部の任意視点映像生成装置に送信する。外部の任意視点映像生成装置は、デジタル放送受信装置100から受信した視点情報に基づき、当該視点の任意視点映像データを生成し、デジタル放送受信装置100へ送信する。
【0041】
次に、任意視点映像の視聴可能エリアをサーバから取得する処理について説明する。
図4は、本実施例における任意視点映像の視聴可能エリアのデータをサーバから取得する処理(視聴可能エリアデータ取得処理)についてのシーケンス図である。
【0042】
図5は、本実施例における任意視点映像の視聴可能エリアの概要図である。「視聴可能エリア」とは、デジタル放送受信装置100により再生可能な任意視点映像に映る被写体の存在範囲を示す。例えば、図5に示すようなスタジオ収録番組であれば、任意視点映像の収録が行われるスタジオ内の、任意視点映像により視聴可能な領域(範囲)を表す。「視聴可能エリア」は、図5に示すスタジオ内のうち、複数の固定カメラ252によって撮影された映像データから生成可能な任意視点映像に映り得るエリアである。
【0043】
図5において、視聴可能エリアは、5つの点(座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)、及び(x5、y5))を頂点とする領域であるが、これは一例である。視聴可能エリアは、番組によって、或いは番組内のシーンによって、変化する場合もある。
【0044】
図6は、本実施例における任意視点映像の視聴可能エリアデータのデータ構造例である
。視聴可能エリアデータは、指定座標数データと、指定座標数分の座標データにより構成される。「指定座標数」とは、本実施例では、視聴可能エリアの頂点の数を表す。図5に例示する視聴可能エリアは5つの頂点を有する領域であるので、指定座標数=5である。「指定座標数データ」とは、指定座標数の値を格納するデータである。
【0045】
図2、図4において、デジタル放送受信装置100の任意視点情報処理部232は、リモコン201からの任意視点映像番組の選局指示(S400)を受けて、視聴可能エリアデータの取得要求を作成する(S401)。
【0046】
任意視点情報処理部232は、作成した視聴可能エリアデータの取得要求を要求データ処理部231、通信制御部227を経て放送局250の任意視点映像生成用データサーバ251に送信する(S402)。
【0047】
任意視点映像生成用データサーバ251は、デジタル放送受信装置100から受信した視聴可能エリアデータ取得要求を解析し(S403)、視聴可能エリアデータを作成する(S404)。
【0048】
任意視点映像生成用データサーバ251は、作成した視聴可能エリアデータをデジタル放送受信装置100へ送信する(S405)。
【0049】
デジタル放送受信装置100の受信データ解析部230は、通信制御部227を経て、任意視点映像生成用データサーバ251から送信された視聴可能エリアデータを受信・解析し(S406)、解析結果を任意視点情報処理部232に出力する。
【0050】
任意視点情報処理部232は、入力された視聴可能エリアデータを視点エリア情報管理部234に保存する(S407)。
【0051】
前記視点エリア情報管理部234に保存された視聴可能エリアデータにアクセスすることで、視聴可能エリアの情報を取得することができる。以上の処理を実行する任意視点情報処理部232は、本発明の「取得手段」として機能している。
視点エリア情報管理部234に保存された視聴可能エリアは、例えば図5に示すように、座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)、(x5、y5)を線で囲んだ領域である。
【0052】
前記視聴可能エリアデータ取得処理にて取得した視聴可能エリア内の各区域における視点移動レベルをサーバから取得する処理(視点移動レベルデータ取得処理)について説明する。
【0053】
「視点移動レベル」とは、ユーザが視点移動指示を入力したときの視点移動の度合を視聴可能エリア内の各区域において相対的に定義したものであり、番組制作者側(放送局)が任意視点映像データに付随させて送信するデータである。視点移動レベルとは、ユーザが、視聴する任意視点映像の視点を移動させる指示を入力する操作を行った場合に、デジタル放送受信装置100が再生中の任意視点映像において当該ユーザ操作に応じて視点を移動させる際の、視点移動量の度合いである。視点移動量は、視点位置の移動距離や視線方向の角度変化量などである。任意視点映像の視点移動指示をデジタル放送受信装置100に入力するための操作は、例えば、ユーザがリモコンのボタンを押下するなどにより行うことができる。視点移動レベルとは、ユーザによる視点移動操作に応じて生じる、再生中の任意視点映像における視点移動(任意視点映像に映る範囲の変化)の感度と言うこともできる。
【0054】
例えば、リモコンの視点移動指示入力用ボタンをユーザが1回押下した場合に、視点移動レベルが小さい区域では視点が小さく移動し、視点移動レベルが大きい区域では視点が大きく移動するように、再生中の任意視点映像において視点が変化させられる。つまり、同一の視点移動操作を行った場合でも、実際に再生中の任意視点映像において生じる視点移動量が、視点移動レベルに応じて異なる。視点移動レベルは、番組制作者が決定することができる。つまり、視聴可能エリア内の区域毎に視点移動レベルを設定することにより、1単位の視点移動操作(例えばボタン1回押下)に応じて任意視点映像において生じる視点移動量を、視聴可能エリア内の区域毎に異ならせることができる。
【0055】
例えば、番組制作者側で視聴者によく見てもらいたいと考えている、例えば重要な被写体が存在するエリアでは、番組制作者は、視点移動レベルを小さく設定することができる。再生中の任意視点映像に当該エリアが写っているときは、ユーザが視点移動ボタンを操作して視点を移動させると、再生中の任意視点映像の視点は少しずつ移動していくことになるので、ユーザに、当該エリアに存在する被写体を重点的に見てもらうことができる。
【0056】
逆に、番組制作者側で、それほど重要でない被写体が存在するエリアでは、番組制作者は、視点移動レベルを大きく設定することができる。再生中の任意視点映像に当該エリアが写っているときは、ユーザが視点移動ボタンを操作して視点を移動させると、再生中の任意視点映像の視点は大きく移動することになるので、当該エリアに存在する被写体が映る任意視点映像が再生される機会が減ることになる。
【0057】
視点移動レベルの情報は、放送局が、放送波及び/又はインターネット等を介した通信手段により、任意視点映像番組データ(TS)に付随させて及び/又は独立に、デジタル放送受信装置100に提供する。視点移動レベルは、例えば1〜5の5段階で示される。
【0058】
「視点移動量」は、例えば、移動前の視点の任意視点映像に写る領域(移動前視聴エリア)と、移動後の視点の任意視点映像に写る領域(移動後視聴エリア)と、の距離や重なり度合(例えば面積など)に基づいて算出できる。移動前視聴エリアと移動後視聴エリアとの距離とは、例えば、移動前視聴エリアと移動後視聴エリアの代表点(例えば中央の座標や最も左上の座標など)の間の距離とすることができる。移動前視聴エリアと移動後視聴エリアとの重なり度合が大きい場合、視点がそれほど移動しないことを表し、重なり度合が小さい場合、視点が大きく移動することを表す。視点移動量の定義や算出方法は上記の例示に限らない。
【0059】
図7は、本実施例において、視聴可能エリア内の各区域における視点移動レベルデータをサーバから取得する処理(視点移動レベルデータ取得処理)についてのシーケンス図である。
【0060】
図2、図7において、デジタル放送受信装置100の任意視点情報処理部232は、リモコン201からの任意視点映像番組選局指示(S700)を受けて、視点移動レベルデータ取得要求を作成する(S701)。
【0061】
任意視点情報処理部232は、作成した視点移動レベルデータ取得要求を要求データ処理部231、通信制御部227を経て放送局250の任意視点映像生成用データサーバ251に送信する(S702)。
【0062】
任意視点映像生成用データサーバ251は、デジタル放送受信装置100から受信した視点移動レベルデータ取得要求を解析し(S703)、視点移動レベルデータを作成する(S704)。
【0063】
任意視点映像生成用データサーバ251は、作成した視点移動レベルデータをデジタル放送受信装置100へ送信する(S705)。
【0064】
デジタル放送受信装置100の受信データ解析部230は、通信制御部227を経て、任意視点映像生成用データサーバ251から送信された視点移動レベルデータを受信・解析し(S706)、解析結果を任意視点情報処理部232に出力する。
【0065】
任意視点情報処理部232は、入力された視点移動レベルデータを視聴可能エリアの各区域データと関連付けて視点エリア情報管理部234に保存する(S707)。
【0066】
前記視点エリア情報管理部234に保存された視点移動レベルデータにアクセスすることで、視聴可能エリアの各区域に応じた視点移動レベルを取得することができる。以上の処理を実行する任意視点情報処理部232は、本発明における「取得手段」として機能している。
【0067】
図8は、本実施例における、視聴可能エリア内の視点移動レベルが設定された区域の一例である。図8の例では、座標(x11、y11)、(x12、y12)、(x13、y13)、(x14、y14)に囲まれた領域を区域1、座標(x21、y21)、(x22、y22)、(x23、y23)、(x24、y24)に囲まれた領域を区域2とする。
【0068】
例えば、この任意視点映像番組はテレビショッピング番組であり、区域1は司会者がいるエリア、区域2は商品が陳列されたエリアである。番組製作者は、視聴者に、司会者よりも商品をより詳細に見てもらいたい場合に、区域1の視点移動レベルを大きい値に設定し、区域2の視点移動レベルを小さい値に設定することができる。
【0069】
図9は、本実施例における視点移動レベルデータのデータ構造例である。視点移動レベルは、視聴可能エリア内の各区域の情報と関連付けて記載される。図9は、図8に例示した、視点移動レベルが設定された各区域及び各区域の視点移動レベルの情報を格納する視点移動レベルデータの一例である。視点移動レベルデータのデータ構造は、視聴可能エリア内の区域の情報と、区域に関連付けられた視点移動レベルの情報と、を格納できれば、図9に例示する構造に限らない。
【0070】
視点移動レベルに応じて視点移動度を決定する処理について説明する。
図10は、本実施例において視点移動レベルに応じて視点移動度を決定する処理(視点移動度決定処理)についてのフローチャートである。
図11は、本実施例においてユーザが視点移動度の設定を行うための設定メニューのGUIの一例である。
【0071】
視点移動度管理部233は、前記視点移動レベルデータ取得処理により視点エリア情報管理部234に保存された視点移動レベルデータを取得する(S1001)。
【0072】
視点移動度管理部233は、前記取得した視点移動レベルデータから基準視点移動レベルを取得する(S1002)。
【0073】
「基準視点移動レベル」とは、特に視点移動レベルが設定されていない区域の任意視点映像の再生時に、ユーザが視点移動指示ボタンを押下した場合に、デフォルトで適用される視点移動レベルである。図11の例では、基準視点移動レベルは5段階のうちの中央値である「レベル3」に設定されている。
【0074】
視点移動度管理部233は、前記取得した視点移動レベルデータから基準視点移動レベルに対応づけられた視点移動度(基準視点移動度)を取得する(S1003)。
【0075】
「視点移動度」とは、ユーザが視点移動ボタンを押下したときに、再生中の任意視点映像において生じる視点移動の移動加減(移動量)であり、前記取得した視点移動レベル毎に規定されている。視点移動レベル毎の視点移動度は、デジタル放送受信装置100により設定され、記憶されるデータである。視点移動度は、具体的には、操作ボタンを押下したときの視点移動距離(ピクセル)、視点移動角度、視点移動速度など、である。
【0076】
「基準視点移動度」は、基準視点移動レベル(図11の例では「レベル3」)に対してデフォルトで設定された視点移動度である(図11の例では「6」)。
【0077】
視点移動度管理部233は、前記取得した視点移動レベルデータから区域数(Nとする。図8の例ではN=2)を取得する(S1004)。
【0078】
視点移動度管理部233は、i番目の区域(区域(i)とする。i=1、2、・・・、N)における視点移動レベルを、前記取得した視点移動レベルデータ(図9の「移動レベル」に格納された値)から取得する。視点移動度管理部233は、取得した視点移動レベルと、図12に示す、各視点移動レベルと視点移動度とを対応づけたテーブルと、に基づき、取得した視点移動レベルに応じたデフォルトの視点移動度を取得する。この処理をステップS1004で取得した区域数分行う(S1005、S1006)
図12は、各視点移動レベルに対応する視点移動度の範囲を規定したテーブルである。図12に示すように、1つの視点移動レベルに対し、所定範囲内に含まれる複数の視点移動度を対応づけることもできる。1つの視点移動レベルに対し1つの視点移動度を対応づけることもできる。
図12に示す視点移動レベルと視点移動度との対応を規定したテーブルにおいて、1つの視点移動レベルに対し複数の視点移動度が対応づけられている場合は、各視点移動レベルに対してデフォルトの視点移動度が設定されているようにしても良い。図12の例では、所定の範囲1〜2に含まれる複数の視点移動度が対応づけられている視点移動レベル1に対応するデフォルトの視点移動度は1、同様に視点移動レベル3に対応するデフォルトの視点移動度は7、というように設定されているようにしても良い。
また、視点移動レベルと視点移動度との対応づけは、図12に示すようなテーブルに限らない。例えば、視点移動レベルnに対応する視点移動度は、視点移動レベルn+1に対応する視点移動度より小さく且つ視点移動レベルn−1に対応する視点移動度より大きい値になるように設定されていれば良い。
【0079】
視点移動度管理部233は、ステップS1006で取得した視点移動度をそれぞれの区域における視点移動度として保存する(S1007)。
【0080】
以上の処理により、デジタル放送受信装置100は、取得した視聴可能エリア内の各区域における視点移動レベルに応じた視点移動度を決定する。以上の処理を実行する視点移動度管理部233は、本発明における「取得手段」として機能している。
【0081】
図11の例では、区域1(司会者エリア)では、視点移動レベル4、視点移動度10、区域2(商品陳列エリア)では、視点移動レベル1、視点移動度2に設定されているが、図12に示すように、視点移動度は視点移動レベルに応じてある範囲内で可変にできる。例えば、図12の例では、例えば視点移動レベル3に対応する視点移動度は、5〜8の値が設定可能である。
【0082】
決定した視点移動度に応じた視点移動制御は、現在再生(表示)している任意視点映像
の視点情報を取得する処理と、現在の視聴区域の視点移動度に基づき、ユーザ操作に応じて視点移動を制御する処理とで構成される。
【0083】
現在表示している任意視点映像の視点情報を取得する処理について説明する。
図13は、本実施例における、現在再生(表示)している任意視点映像の視点情報を取得する処理(現在視点情報取得処理)についてのフローチャートである。
【0084】
図13において、任意視点情報処理部232は、システム制御部226から現在の再生状態(デジタル放送映像再生中、任意視点映像再生中、外部入力映像再生中など)を取得する(S1201)。
【0085】
取得した現在の再生状態が任意視点映像再生中の場合(S1202のYes)、任意視点情報処理部232は、要求データ処理部231、通信制御部227を経て、任意視点映像生成用データサーバ251から任意視点映像の視点情報を取得する(S1203)。
【0086】
取得した任意視点映像の視点情報が、既に保存してある視点情報に対し差異があった場合(S1204のYes)、任意視点情報処理部232は、任意視点映像の視点情報を更新する(S1205)。
【0087】
デジタル放送受信装置100において任意視点映像データを含む番組データが再生されている間、一定時間おきに(例えば1秒間隔)以上の処理を繰り返し行う。これにより、任意視点情報処理部232は、現在再生している任意視点映像の視点情報を取得することが可能となる。
【0088】
次に、現在の再生(表示)している任意視点映像に映っている区域の視点移動度に応じて視点移動を制御する処理(視点移動処理)について説明する。
図14は、本実施例における視点移動処理についてのフローチャートである。図14のフローチャートで表される視点移動処理は、ユーザがリモコンの視点移動ボタンを押下してデジタル放送受信装置100に対し、現在再生(表示)中の任意視点映像の視点を移動させる指示が入力された場合に、実行される。
【0089】
任意視点情報処理部232は、前記現在視点情報取得処理により、現在再生している任意視点映像の視点情報を取得する(S1301)。
【0090】
任意視点情報処理部232は、前記視点移動レベルデータ取得処理により、前記取得した現在再生している視点の任意視点映像に対応する区域(再生中の任意視点映像に映っている区域)の視点移動レベルを取得する(S1302)。
前記現在視点情報取得処理により取得した現在再生している(表示している)任意視点映像の視点の情報に基づき、任意視点情報処理部232は、当該任意視点映像に映る区域を特定する。ここで、「任意視点映像に映る区域」とは、例えば番組(映像)が収録されるロケーション(スタジオや舞台など)において、任意視点映像により視聴可能なエリア(範囲)をいう。任意視点映像に映る区域は、番組収録がされるロケーションの情報や任意視点映像の視点(仮想カメラの視点)の情報に基づき特定することができる。ロケーションの情報は、例えば、スタジオの形状、広さ、スタジオセットや出演者などの大きさや配置位置の座標などである。任意視点映像の視点の情報は、例えば、視点位置、視線方向、画角、ズーム倍率、焦点距離などである。この処理を実行する任意視点情報処理部232は、本発明における「特定手段」として機能している。
【0091】
任意視点情報処理部232は、前記視点移動度決定処理により、前記特定した現在再生中の任意視点映像に映っている区域に定められている視点移動レベルに応じた視点移動度
を決定する(S1303)。図8に示すように、視聴可能エリア内の一部の区域について視点移動レベルが定められている場合、前記特定した任意視点映像に映る区域と、視点移動レベルが定められた区域とが共通部分を有するときに、当該視点移動レベルに基づき視点移動度を決定しても良い。或いは、前記特定した任意視点映像に映る区域に、視点移動レベルが定められた区域が含まれる場合に、当該視点移動レベルに基づき視点移動度を決定しても良い。また、前記特定した任意視点映像に映る区域に、異なる視点移動レベルが定められた複数の区域が含まれる場合は、前記特定した任意視点映像に映る区域との共通部分の大きさが最大の区域に定められた視点移動レベルに基づき視点移動度を決定しても良い。或いは、この場合、複数の異なる視点移動レベルのうち最も小さい値又は最も大きい値に基づき、視点移動度を決定するようにしても良い。
【0092】
任意視点情報処理部232は、前記決定した視点移動度を、移動先の視点の任意視点映像作成用データ取得要求と供に任意視点映像生成用データサーバ251に送信し、視点移動度に応じた移動先の視点の任意視点映像生成用データを取得する(S1304)。
【0093】
任意視点情報処理部232は、取得した移動先の視点の任意視点映像生成用データを元に、任意視点映像再生処理を行う(S1305)。
【0094】
以上により、前記視点移動度決定処理により決定した視点移動度に応じた視点移動処理を実現する。以上の処理を実行する任意視点情報処理部232が、本発明における「視点移動手段」として機能している。
【0095】
図15は、図8、図9、図11及び図12に例示した任意視点映像を含む番組(スタジオ収録のテレビショッピング番組)において、本実施例における視点移動度に応じた視点移動制御が行われた場合の、視点移動の一例を示す図である。
【0096】
図11に示すように、区域1は出演者エリアであり、視点移動レベルは4に設定され、区域2は品物エリアであり、視点移動レベルは1に設定されている。図12に基づき、視点移動レベル4に対応する視点移動度は10に設定されるとともに、視点移動レベル1に対応する視点移動度は2に設定される。
図15に示すように、視点移動度が10に設定された区域1と、視点移動度が2に設定された区域2では、ユーザによる視点移動操作に対して再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の仕方が異なる。同じリモコン操作を行った場合でも、任意視点映像に区域1が映っているときより区域2が映っているときの方がより細かく視点を移動させることが出来る。そのため、ユーザは区域2に存在する被写体に関しては種々の視点からより詳細に見ることができる。例えば、興味のある商品を様々な角度から見ることができる。映像コンテンツデータの制作者は、ユーザに詳細に見てほしい被写体やユーザにとって詳細に見たいという要求があると考えられる被写体が存在する区域の視点移動レベルの値を小さく設定することにより、当該区域における視点移動度が小さくなるようにできる。
【0097】
本実施例では、視点移動レベルデータを放送局から取得する例を説明したが、デジタル放送受信装置側で視点移動レベルデータを作成してもよい。例えば、デジタル放送受信装置100が、再生(表示)中の映像を解析して被写体(出演者や物体)の密度(空間周波数)を検出し、密度が高いエリア(細かい被写体が多く映っているエリア)に対して高い視点移動レベル及び視点移動度を割り当ててもよい。
【0098】
また、本実施例では、任意視点映像作成用データをインターネット経由で放送局のサーバから取得する構成例を説明したが、任意視点映像作成用データは放送映像データとともにTSに多重化されてもよい。また、本実施例ではデジタル放送受信装置100においてユーザの指定した視点の任意視点映像を合成(生成)する例を説明したが、視点情報を元
に放送局のサーバその他のデジタル放送受信装置100の外部の装置で任意視点映像を生成する構成でもよい。その場合、デジタル放送受信装置100は、インターネット等の通信手段を介して、外部装置で生成された任意視点映像データを取得する。
【0099】
本実施例のデジタル放送受信装置100によれば、番組制作者が視聴可能エリア内の区域毎に設定した視点移動レベルに応じて、ユーザが視点を移動させる操作を行った際に再生中の任意視点映像において生じる視点移動が制御される。従って、任意視点映像の視聴中にユーザが視点を移動させる場合に、番組制作者の意図に沿わない視点移動をしてしまうことを抑制できる。
【0100】
(実施例2)
本実施例では、前記実施例1において、任意視点映像の再生時にユーザが視点移動ボタンを長押しした場合に実行される視点移動制御について説明する。
【0101】
実施例1では、視点移動の指示をデジタル放送受信装置100に送信(入力)するための操作ボタンが、ユーザにより1回(1単位)操作された場合に、再生(表示)中の任意視点映像に生じさせる視点の移動量を、視聴中(表示中)の区域によって異ならせた。
【0102】
リモコン等に設けられる操作ボタンをユーザが押下し続けた場合(長押しした場合)、当該操作ボタンの1回の押下に対応付けられた指示が連続的に装置に送信(入力)されるように構成されていることが多い。
本実施例では、視点移動の指示送信(指示入力)に割り当てられた操作ボタンが長押しされた場合に、連続的な視点移動指示を送信(入力)することができるようリモコン201及びデジタル放送受信装置100が構成されているものとする。
【0103】
視点の連続的な移動とは、再生中の任意視点映像に対して、カメラの視線方向を変化させるパン操作やチルト操作、カメラの位置を移動させるドリー操作、ズーム操作などを行った場合に撮影される映像と同様の変化をもたらすような、視点の移動である。
【0104】
図16は、本実施例における、ユーザが視点移動ボタンを長押しして連続的な視点移動指示を入力した場合に、再生中の任意視点映像に映っている区域の視点移動度に応じて任意視点映像の再生を制御する処理についてのフローチャートである。
【0105】
任意視点情報処理部232は、視点移動ボタンが押下状態かどうかを判定する(S1501)。
【0106】
前記視点移動ボタンの状態が押下状態の場合(S1501のYes)、前記現在視点情報取得処理により、現在再生している任意視点映像の視点の情報を取得する(S1502)。
【0107】
任意視点情報処理部232は、前記視点移動レベルデータ取得処理により、前記取得した現在再生している視点の任意視点映像に映る区域を特定し、当該区域に定められた視点移動レベルを取得する(S1503)。
【0108】
任意視点情報処理部232は、前記視点移動度決定処理により、前記特定した現在再生中の任意視点映像に映る区域に定められている視点移動レベルに応じた視点移動度を決定する(S1504)。
【0109】
任意視点情報処理部232は、前記決定した視点移動度を、移動先の視点の任意視点映像生成用データ取得要求と供に任意視点映像生成用データサーバ251に送信し、視点移
動度に応じた任意視点映像再生処理を行う(S1505)。
【0110】
以上の一連の処理が終了した後、任意視点情報処理部232は再度、視点移動ボタンの押下状態を判定し、押下状態でなかったら(S1501のNo)、処理を終了する。
【0111】
以上の処理を視点移動ボタンが押下状態の場合に連続して行うことによって、視点移動ボタンが長押しされた場合に、再生(表示)中の任意視点映像に映っている区域に設定された視点移動レベルに応じた連続的な視点移動処理を行うことができる。
【0112】
本実施例によれば、ユーザが視点移動ボタンを長押しして連続的な視点移動の指示を入力した場合に、視点移動レベルとして小さい値が設定された区域では、視点移動が細かくなる(視点移動速度が遅くなる)。一方、視点移動レベルとして大きい値が設定された区域では、視点移動が粗くなる(視点移動速度が速くなる)。つまり、本実施例では、視点移動レベルは、任意視点映像の再生時にユーザが視点を連続的に移動させる指示を入力した場合に、該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の速度の度合を示す。
【0113】
従って、番組制作者は、視聴者によく見てもらいたい被写体が存在する区域に対し小さい視点移動レベルの値を設定することができる。ユーザが、例えば、仮想カメラに対しパン操作を行って番組収録スタジオ内を見渡すべく、視点移動ボタンを長押しした場合、小さい視点移動レベルが設定された区域では、他の区域よりも、パン速度が遅くなる。よって、番組制作者が視聴者によく見てもらいたい被写体を、ユーザによく見せることができる。
【0114】
(実施例3)
本実施例では、前記実施例1において、任意視点映像の再生時に、視聴可能エリア内の区域とその視点移動レベルを受信機(デジタル放送受信装置100)で設定する例について説明する。
【0115】
実施例1及び2では、視聴可能エリア内に設定された区域の情報と、区域毎に設定された視点移動レベルの情報が、放送局からインターネットや放送波によりデジタル放送受信装置100へ提供される例について説明した。つまり、視聴可能エリア内のどの区域をどの視点移動レベルに設定するかは、放送局側すなわち番組制作者が決定し、デジタル放送受信装置100は当該番組制作者による設定に従って動作する。これにより、番組制作者の意図に沿った任意視点映像の視聴体験をユーザに提供できるという効果を奏した。
【0116】
これに対し本実施例では、視聴可能エリア内のどの区域をどの視点移動レベルに設定するかを、ユーザ側が決定できる構成例について説明する。
図17は、本実施例において視聴可能エリア内の区域とその視点移動レベルを受信機で設定する処理についてのフローチャートである。
図18は、本実施例において視聴可能エリア内の区域とその視点移動レベルを設定するための設定メニューのGUIの一例である。
【0117】
ユーザは、視点移動レベルを設定したい区域が再生中の任意視点映像に映っているときに、視点移動レベル設定要求をデジタル放送受信装置100に送信する。視点移動レベル設定要求の送信は、例えば、リモコンに設けられる専用ボタンを押下することにより実現することができるが、これに限定されない。
【0118】
視点移動レベル設定要求を受信した任意視点情報処理部232は、前記視点移動レベル取得処理により取得された視点移動レベルデータから、視点移動レベルの最小値及び最大値を取得する(S1601、S1602)。
【0119】
また、任意視点情報処理部232は、現在表示している任意視点映像に映っている区域の座標を求め(S1603)、視点移動レベル設定の対象となる区域を決定する(S1604)。
【0120】
その後、任意視点情報処理部232は、視点移動レベル設定メニューの表示を行い(S1605)、ユーザに視点移動レベルの設定操作を行わせる。
【0121】
ユーザは表示された視点移動レベル設定メニューにより、指定した区域(現在再生中の任意視点映像に映っている区域)の視点移動レベルを設定する(S1606)。このとき、設定できる視点移動レベルの範囲は、前記取得した視点移動レベルの最小値及び最大値によって制限される。
【0122】
ユーザが視点移動レベル設定メニューにより、視点移動レベルを設定した場合、任意視点情報処理部232は、視点エリア情報管理部234の視点移動レベルデータを更新する(S1607)。以上の処理を実行する任意視点情報処理部232、ユーザの入力を受け付けるリモコン201、視点移動レベル設定メニューのGUIを構成するGUI処理部218が、本発明における「設定手段」として機能している。
【0123】
本実施例のデジタル放送受信装置によれば、ユーザは、任意視点映像を視聴しながら、例えば、よく見たい区域に対して小さい視点移動レベルを設定したり、逆に、自分にとって関心が低い区域に対して大きい視点移動レベルを設定したりできる。これにより、ユーザは、自分の興味などに応じて、任意視点映像の視点移動を行うことができるので、より一層快適な任意視点映像の視聴体験を提供することが可能になる。
【0124】
以上述べた実施例では、ユーザが視点移動をデジタル放送受信装置100へ入力するための操作を行う手段は、リモコン201に設けられる視点移動ボタンだが、ユーザが視点移動指示を入力する入力手段これに限らない。例えばタッチパッド、ジョグダイヤル、カーソルキー、ジョイスティックなどにより入力手段を構成することもできる。
【符号の説明】
【0125】
100 デジタル放送受信装置、201 リモコン、232 任意視点情報処理部、233 視点移動度管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを再生可能な映像処理装置であって、
映像コンテンツデータに含まれる視点が異なる複数の映像データに基づいて生成される、ユーザに指定された任意の視点での任意視点映像データを取得する取得手段と、
前記ユーザに指定された視点での任意視点映像データを再生する制御を行う再生手段と、
ユーザに、前記再生手段が再生中の任意視点映像において視点を移動させる指示を入力させる入力手段と、
映像コンテンツデータから、前記再生手段が再生可能な任意視点映像に映る被写体の存在範囲を示す視聴可能エリアの情報と、視聴可能エリア内に定められる一又は複数の区域の情報と、区域毎に定められる、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の度合を示す視点移動レベルの情報と、を取得する手段と、
再生中の任意視点映像に映る区域を特定する特定手段と、
入力手段において視点を移動させる指示が入力された場合に、前記特定手段により特定される区域に定められる視点移動レベルに基づいて、再生中の任意視点映像の視点を移動させる視点移動手段と、
を有する映像処理装置。
【請求項2】
視点移動レベルは、視点位置の移動距離の度合及び視線方向の角度の変化量の度合の少なくとも一方を示す請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
入力手段は、ユーザに、前記再生手段が再生中の任意視点映像において視点を連続的に移動させる指示を入力させ、
視点移動レベルは、区域毎に定められる、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を連続的に移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の速度の度合を示し、
視点移動手段は、入力手段において視点を連続的に移動させる指示が入力された場合に、前記特定手段により特定される区域に定められる視点移動レベルに基づいて決定される移動速度で、再生中の任意視点映像の視点を連続的に移動させる請求項1又は2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
ユーザに、視聴可能エリア内に一又は複数の区域を設定させるとともに、区域毎に、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の度合を示す視点移動レベルを設定させる設定手段を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項5】
ユーザに、視聴可能エリア内に一又は複数の区域を設定させるとともに、区域毎に、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を連続的に移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の速度を示す視点移動レベルを設定させる設定手段を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項6】
視点が異なる複数の映像データを含む映像コンテンツデータを再生可能な映像処理装置の制御方法であって、
映像コンテンツデータに含まれる視点が異なる複数の映像データに基づいて生成される、ユーザに指定された視点での任意視点映像データを取得する取得工程と、
前記ユーザに指定された視点での任意視点映像データを再生する制御を行う再生工程と、
ユーザに、前記再生工程で再生中の任意視点映像において視点を移動させる指示を入力させる入力工程と、
映像コンテンツデータから、前記再生工程で再生可能な任意視点映像に映る被写体の存在範囲を示す視聴可能エリアの情報と、視聴可能エリア内に定められる一又は複数の区域の情報と、区域毎に定められる、その区域が映る任意視点映像の再生時にユーザが視点を移動させる指示を入力した場合に該再生中の任意視点映像において生じる視点の移動の度合を示す視点移動レベルの情報と、を取得する工程と、
再生中の任意視点映像に映る区域を特定する特定工程と、
入力工程において視点を移動させる指示が入力された場合に、前記特定工程により特定される区域に定められる視点移動レベルに基づいて、再生中の任意視点映像の視点を移動させる視点移動工程と、
を有する映像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−109719(P2012−109719A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255830(P2010−255830)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】