説明

映像表示装置およびその制御方法

【課題】 エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 周波数測定部18は、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数を測定する。記憶部15は、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数と、入力映像信号Vinの解像度と、電源部が映像信号処理部4に供給する映像信号処理を施すのに必要な最低限の電力としての所定の電圧Vxとに関するデータテーブルを記憶している。解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した前記周波数に応じて記憶部15のデータテーブルから解像度を識別する。制御部16は、前記解像度に応じて記憶部15のデータテーブルから所定の電圧Vxを選定する。制御部16は、電源部10が映像信号処理部4の映像コンバータ5およびビデオスケーラ6に供給する電力として、電源部10に所定の電圧Vxを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された映像信号を表示部に表示する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータのコンピュータ画像を表すRGB信号や、ビデオレコーダやテレビジョン受信機からのコンポジット信号として外部機器から入力される映像信号に、入力映像信号で表される映像を拡大および縮小する処理(以降、スケーリングという)などを施すことにより、備え付けの表示部の解像度などに合わせた映像信号としてから、表示部で表示する映像表示装置が知られている。このような映像表示装置を備えた機器としては、プロジェクタや、液晶テレビ、プラズマテレビなどが挙げられる。
【0003】
例えば、プロジェクタの場合、入力されたアナログ映像信号の同期信号の周波数を測定し、入力された映像の解像度を識別する。ここで、プロジェクタの表示部である液晶ライトバルブの解像度は既知であるので、液晶ライトバルブの解像度と、入力映像信号の解像度の比率を求めることができる。続いて、入力映像信号の解像度をプロジェクタの表示部である液晶ライトバルブの解像度に一致させるために、入力映像信号の解像度と液晶ライトバルブの解像度の比率に合わせて映像信号をスケーリングする。このような、プロジェクタが、例えば、以下の特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/20477号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のスケーリングを施すとき、スケーリングを施す映像信号処理部の消費電力は、入力映像信号の解像度にほぼ比例しており、入力映像信号の解像度が高くなると消費電力は増加する。これは、入力映像信号の解像度が高くなると、映像信号処理を施す情報量が増えるため、基準クロックの速さを上げて処理する必要があり、また、基準クロックが速くなるのに比例して映像信号処理部の消費電力も増えるからである。しかしながら、特許文献1を含む従来の映像表示装置においては、このような入力映像信号の解像度と、スケーリングを施す映像信号処理部の消費電力の関係については考慮されていない。よって、映像信号処理部に常に一定の電力が供給されているため、エネルギー利用効率が悪く、また、入力映像信号の解像度が低く基準クロックが遅いときには過剰な電力が供給された状態となっているため、余分な電力は熱エネルギーとして発散している。このように、映像信号処理部が慢性的に発熱する構成となっているため動作が不安定となり、安定した映像を得ることが困難であるという問題を有している。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の映像表示装置によれば、入力された映像信号を表示部に表示する映像表示装置であって、入力映像信号の解像度を識別する解像度識別部と、少なくとも入力映像信号で表される映像を拡大および縮小することによって、入力映像信号の解像度を表示部の解像度に一致させる処理を含む、入力画像信号を表示部にて表示するのに適した信号に処理する映像信号処理部と、少なくとも映像信号処理部に所定の電力を供給する電源部と、解像度識別部、映像信号処理部、電源部とを制御する制御部とを、備え、制御部は、入力映像信号の解像度に応じて、電源部の供給する電力に関する値を所定の値に設定することを特徴とする。
【0008】
前述した通り、映像信号処理部がスケーリングを施すときの消費電力は、入力映像信号の解像度に比例しており、入力映像信号の解像度が高くなると消費電力は増加する。よって、入力映像信号の解像度が解れば、映像信号処理部が映像信号にスケーリングを施す際に必要な最低限の消費電力をあらかじめ把握することができる。この構成によれば、解像度識別部は入力映像信号の解像度を識別し、制御部は解像度識別部が識別した入力映像信号の解像度に応じて、少なくとも映像信号処理部に供給する電源部の電力に関する値を所定の値に設定する。
【0009】
ここで、映像信号処理部に供給する所定の電力に関する値を、あらかじめ把握している必要最低限の電力とすることにより余分なエネルギー消費を防ぐことができる。また、映像信号処理部に過剰な電力が供給されている場合は、余分な電力は熱エネルギーとなって慢性的に発散されるが、必要最低限の電力が供給されているため余分な発熱を抑えることができる。よって、発熱を抑えられることから、映像信号処理部の動作は安定し、安定した映像が得られる。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明の映像表示装置の好ましい態様は、入力映像信号の同期信号の周波数と、入力映像信号の解像度と、電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶する記憶部と、入力映像信号の同期信号の周波数を測定する周波数測定部とをさらに備え、解像度識別部は、周波数測定部が測定した周波数に応じて記憶部のデータテーブルから解像度を識別し、制御部は、解像度識別部が識別した解像度に応じ、記憶部のデータテーブルから電力に関する所定の値を選定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、記憶部は入力映像信号の同期信号の周波数と、入力映像信号の解像度と、電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶している。ここで、電源部が供給する所定の電力とは、映像信号処理部が映像信号にスケーリングを施す際に必要な最低限の電力のことである。また、入力映像信号の解像度は、入力映像信号に含まれる同期信号の周波数により識別できる。ここで、周波数測定部は、入力映像信号の同期信号の周波数を測定する。解像度識別部は、周波数測定部が測定した入力映像信号の同期信号の周波数に応じて記憶部のデータテーブルから解像度を識別する。
【0012】
これにより、制御部は、解像度識別部が識別した解像度に応じ、記憶部のデータテーブルから映像信号処理部が必要な最低限の電力に関する所定の値を選定することができる。従って、記憶部のデータテーブルにより、入力映像信号の解像度および映像信号処理部が必要な最低限の電力に関する所定の値を簡便に選定することができる。
【0013】
また、本発明の映像表示装置の好ましい態様は、入力された映像信号を表示部に表示する映像表示装置であって、入力映像信号の同期信号の周波数から解像度を識別する解像度識別部と、少なくとも入力映像信号で表される映像を拡大および縮小することによって、入力映像信号の解像度を表示部の解像度に一致させる処理を含む、入力画像信号を表示部にて表示するのに適した信号に処理する映像信号処理部と、少なくとも映像信号処理部に所定の電力を供給する電源部と、解像度識別部、映像信号処理部、電源部とを制御する制御部とを、備え、制御部は、入力映像信号の同期信号の周波数に応じて、電源部の供給する電力に関する値を所定の値に設定することを特徴とする。
【0014】
入力映像信号の解像度は、入力映像信号に含まれる同期信号の周波数により識別できる。さらに、電源部が映像信号処理部に供給する所定の電力は、入力映像信号の解像度に応じて、映像信号にスケーリングなどの処理を施すために必要な最低限の値としてあらかじめ把握されている。よって、入力映像信号に含まれる同期信号の周波数から、電源部の供給する電力に関する所定の値を導出することができる。この構成によれば、制御部は、入力映像信号の同期信号の周波数に応じて、電源部の供給する電力に関する値を所定の値に設定する。よって、映像信号処理部に供給する所定の電力は、あらかじめ把握している必要最低限の電力となっていることから余分なエネルギー消費を防ぐことができる。また、映像信号処理部に過剰な電力が供給されている場合は、余分な電力は熱エネルギーとなって慢性的に発散されるが、必要最低限の電力が供給されているため余分な発熱を抑えることができる。よって、発熱を抑えられることから、映像信号処理部の動作は安定し、安定した映像が得られる。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の映像表示装置の好ましい態様は、入力映像信号の同期信号の周波数と、入力映像信号の解像度と、電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶する記憶部と、入力映像信号の同期信号の周波数を測定する周波数測定部とをさらに備え、解像度識別部は、周波数測定部が測定した周波数に応じて記憶部のデータテーブルから解像度を識別し、制御部は、周波数測定部が測定した周波数に応じ、記憶部のデータテーブルから所定の電力に関する値を選定することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、記憶部は入力映像信号の同期信号の周波数と、入力映像信号の解像度と、電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶している。ここで、電源部が供給する所定の電力は、映像信号処理部が映像信号にスケーリングを施す際に必要な最低限の電力のことである。また、入力映像信号に含まれる同期信号の周波数から、電源部の供給する電力に関する所定の値を導出することができる。ここで、周波数測定部は、入力映像信号の同期信号の周波数を測定する。解像度識別部は、周波数測定部が測定した入力映像信号の同期信号の周波数に応じて記憶部のデータテーブルから解像度を識別する。
【0017】
制御部は、周波数測定部が測定した周波数に応じて記憶部のデータテーブルから映像信号処理部が必要な最低限の電力に関する所定の値を選定する。従って、記憶部のデータテーブルにより、入力映像信号の解像度および映像信号処理部が必要な最低限の電力に関する所定の値を簡便に選定することができる。
【0018】
また、本発明の映像表示装置の好ましい態様によれば、所定の電力は、電源部が供給する所定の電圧値により管理されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電源部が供給する電力は、所定の電圧値により管理される。所定の電圧は、映像信号処理部に用いられているビデオプロセッサの定格範囲内の所定の電圧値となっている。定格範囲内の所定の電圧値が供給されている状態で、流すことができる電流量の上限はビデオプロセッサごとに決まっている。よって、電圧と電流の積として求められる電力は、供給する電圧値により管理することができる。また、電源部は、例えばDC/DCコンバータや、3端子レギュレータなどを備えることにより、簡便に複数の値を含む所定の電圧値を供給することができる。従って、電源部は、所定の電圧値を簡便に供給できる。さらに、所定の電圧値により電力を管理することができる。
【0020】
また、本発明のプロジェクタの好ましい態様は、前記映像表示装置を備えることを特徴とする。この構成によれば、プロジェクタは、入力映像信号の解像度に応じて映像信号処理部に必要最低限の電力を供給することにより、エネルギー利用効率が良く安定した映像が得られる映像表示装置を備えている。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られるプロジェクタを提供することができる。
【0021】
また、本発明の映像表示装置の制御方法における好ましい態様は、入力された映像信号の解像度を入力映像信号の同期信号の周波数から識別する解像度識別工程と、所定の電力を供給する電源部に、解像度識別工程にて測定された入力映像信号の同期信号の周波数に応じた所定の電力に関する値を設定する電力値設定工程と、入力映像信号で表される映像が、映像を表示する表示部に適した映像となるように、入力映像信号に少なくともスケーリングを含む処理を施す映像信号処理工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、解像度識別工程では、入力された映像信号の解像度を入力映像信号の同期信号の周波数から識別する。電力値設定工程では、電源部に、解像度識別工程にて測定された入力映像信号の同期信号の周波数に応じた所定の電力に関する値を設定する。ここで、電源部が供給する所定の電力は、映像信号処理工程にて入力映像信号にスケーリングなどの処理を施す際に必要な最低限の電力のことである。映像信号処理工程では、入力映像信号で表される映像が、映像を表示する表示部に適した映像となるように、入力映像信号に少なくともスケーリングを含む処理を施す。
【0023】
これにより、映像信号処理工程にてスケーリングなどの処理を施す際に消費される電力は必要最低限の電力となっている。よって、余分なエネルギー消費を防ぐことができる。また、映像信号処理を施すときに過剰な電力が供給されている場合は、余分な電力は熱エネルギーとなって慢性的に発散されるが、必要最低限の電力が供給されているため余分な発熱を抑えることができる。よって、発熱を抑えられることから、映像信号処理は安定した状態で行われ、安定した映像が得られる。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態の映像表示装置を適応したプロジェクタの概略構成図である。プロジェクタ50は、ランプ1が放射した光を、赤色光、青色光、緑色光の光の3原色成分に分離し、各色光毎に表示部としての各色光用液晶ライトバルブ2にて映像信号に応じて変調した後、再度合成してスクリーンSCに投写するいわゆる液晶3板式のプロジェクタである。ここでは、まず、プロジェクタ50の概略構成について説明し、続いて、スケーリングについて説明する。そして最後に、映像信号処理部に供給する電力制御の方法ついて説明する。
【0026】
プロジェクタ50は、映像表示装置40を備えている。映像表示装置40は、映像信号処理部4と、電源部10と、記憶部15と、制御部16などから構成されている。映像信号供給装置3は、例えば、パーソナルコンピュータやテレビジョン受信機など、外部から映像信号を供給する装置であり、プロジェクタ50の図示しない外部接続端子に接続されている。映像信号供給装置3からの入力映像信号Vinは、アナログ映像信号であり、例えば、パーソナルコンピュータのコンピュータ映像を表すRGB信号や、テレビジョン受信機からのコンポジット信号としてプロジェクタ50に供給される。以降、映像信号供給装置3としてパーソナルコンピュータが接続され、コンピュータ映像を表すRGB信号が入力映像信号Vinとして入力されている状態について説明する。なお、映像信号供給装置3としてのパーソナルコンピュータからは、RGB信号Vinと共に、同期信号SYNCが後述するビデオスケーラ6に供給されている。
【0027】
映像信号処理部4は、入力映像信号Vinに所定の映像処理を施すことにより、表示部としての液晶ライトバルブ2に適した映像信号Doutを生成する。映像信号処理部4は、映像コンバータ5と、ビデオスケーラ6、フレームメモリ7、フィルタ8とから構成されている。映像コンバータ5は、アナログ入力映像信号VinをA/D変換し、デジタル映像信号Dinとしてビデオスケーラ6に送る。ビデオスケーラ6は、デジタル映像信号Dinを1フレーム毎にフレームメモリ7に書き込み、所定の条件で読み出すことにより入力映像信号Vinの解像度を表示部としての液晶ライトバルブ2の解像度に一致させ、映像信号Dscとしてフィルタ8に送る。フレームメモリ7は、RGB信号を記憶するためのメモリプレーンを有している。フィルタ8は、入力映像信号Vinの階調を液晶ライトバルブ2で表示するのに適した階調に変換するγ補正などの処理を施し、映像信号Doutとして液晶ライトバルブ2を駆動する液晶パネル駆動部9へ送る。なお、スケーリングなどの映像信号処理部4が施す映像信号処理の詳細については後述する。また、周波数測定部18は、映像信号処理部4に含まれており、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数を測定する。
【0028】
電源部10は、スイッチング電源11と、DC/DCコンバータ12、DAコンバータ13などから構成されている。スイッチング電源11は、AC電源14からの交流電圧をコンセント(図示せず)から導き、内蔵するAC/DC変換部(図示せず)により変圧、整流および平滑することにより直流電圧を生成し、さらに、前記直流電圧がリップルを含んでいるためPWM(Pulse Width Modulation)制御を施し、安定化した基本直流電圧を得ている。電源部10は、前記基本直流電圧を、DC/DCコンバータ11などにより各部が必要とする電圧値に変換して各部に動作電力を供給している。また、プロジェクタ50においては、放電型のランプ1を点灯させるために、高電圧を生成するイグナイタ回路などを含む専用電源部がさらに必要であるが、発明の本旨ではないので説明を省略する。
【0029】
DC/DCコンバータ12は、スイッチング電源11が供給する基本直流電圧から所定の電圧Vxを生成することができる。所定の電圧Vxは、複数の値に設定することができる。複数の値の中から、どの電圧値を生成するかは、DAコンバータ13からの入力電圧によって決まる。DAコンバータ13が生成する電圧値は、後述する制御部16による設定値によって決まる。DC/DCコンバータ12が生成した所定の電圧Vxは、映像信号処理部4の、映像コンバータ5と、ビデオスケーラ6に供給されている。
【0030】
記憶部15は、例えばEEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリから構成されている。記憶部15には、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数と、入力映像信号Vinの解像度と、電源部10が供給する所定の電力に関する値としての所定の電圧Vxとに関するデータテーブルが格納されている。データテーブルに格納されている情報は、設計段階であらかじめ把握することが可能である。また、記憶部15には、前記データテーブル以外にも関係各部を制御するソフトウエアプログラムや、γ補正に関するパラメータなどの映像信号処理に関する諸データなどがあらかじめ格納されている。
【0031】
制御部16は、CPUから構成されており内部に解像度識別部17を備えている。解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した同期信号SYNCの周波数のデータを受け取り、記憶部15のデータテーブルを参照し、入力映像信号Vinの解像度を識別する。なお、解像度識別部17の機能は、制御部16が記憶部15に格納されているソフトウエアプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
続いて、スケーリングについて図2と図1を用いて説明する。図2は、スケーリングについての説明図である。図2の左側に示すように、映像信号供給装置3としてのパーソナルコンピュータで生成される映像には、種々の解像度(640ドット×400ライン、640ドット×480ライン、800ドット×600ライン、1024ドット×768ライン、1600ドット×1200ライン等)のものがある。一方、表示部としての液晶ライトバルブ2の解像度は一定であり、図2の例では800ドット×600ラインである。そこで、映像信号処理部4のビデオスケーラ6は、入力映像信号Vinに、入力映像信号Vinで表される映像を拡大または縮小する処理を施すことによって、液晶ライトバルブ2の解像度に一致した映像信号Dscを生成する。さらに、映像信号処理部4のフィルタ8により、γ補正などの処理を施し、映像信号Doutとして液晶ライトバルブ2を駆動する液晶パネル駆動部9へ送る。これにより、入力映像信号Vinをプロジェクタ50に入力すれば、液晶ライトバルブ2の画面一杯、すなわちスクリーンSC一杯にその映像を表示することができる。これがスケーリングの概要である。
【0033】
続いて、スケーリングの具体的な流れについて図1と、図3を用いて詳細に説明する。図3は、映像信号処理の流れを示すタイミングチャートである。まず、入力映像信号の解像度を識別して、フレームメモリ7に書き込む流れについて説明する。一水平走査分のアナログ映像信号が入力される場合には、水平同期信号HSYNCと、入力映像信号としてのアナログRGB信号Vinが入力されることになる。水平同期信号HSYNCは、映像信号供給装置3としてのパーソナルコンピュータからビデオスケーラ6に供給される同期信号SYNCに含まれている。同期信号SYNCには、水平同期信号HSYNCと、垂直同期信号(図示せず)とが含まれている。
【0034】
A/Dコンバータからなる映像コンバータ5は、RGB信号VinにA/D変換を施しデジタル映像信号Dinを出力する。これは、RGB信号Vinを液晶ライトバルブ2で表示するためには、スケーリングやγ補正などの映像処理を施す必要があるが、これらの映像処理を施すときには数値化されたデジタル信号が好ましいためである。映像コンバータ5が、RGB信号VinにA/D変換を施すためには、サンプリングクロックSCLK1が必要である。図3には、このサンプリングクロックSCLK1の出力タイミングが示されている。映像コンバータ5は、サンプリングクロックSCLK1の立ち上がりのタイミングでRGB信号Vinをサンプリングし、デジタル信号に変換する。
【0035】
サンプリングクロックSCLK1は、ビデオスケーラ6内のPLL(Phase Locked Loop)回路19で生成される。PLL回路19は、同期信号SYNCの周波数をN倍することによってサンプリングクロックSCLK1を生成する。水平同期信号HSYNCがビデオスケーラ6に入力される前段階で、周波数測定部18は、水平同期信号HSYNCの周波数を測定する。解像度識別部17は、バスラインおよびCPUアクセスコントローラ(図示せず)を介して周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数のデータを受け取り、記憶部15のデータテーブルを参照し、入力映像信号Vinの解像度を識別する。
【0036】
ここで、映像信号供給装置3としてのパーソナルコンピュータから出力される同期信号SYNCの周波数などは、RGB信号Vinの解像度によって、または、同一の解像度においても、パーソナルコンピュータの種別や製造メーカによって若干異なっていることがある。例えば、VGA(640ドット×480ライン)という同一の解像度においても、A社のコンピュータは一水平走査期間が800ドットの出力周期で構成されるのに対しB社では810ドットで構成されるものがある。
【0037】
図3の例では、ta〜tbの期間、水平同期信号HSYNCのパルスが出力される。そして、水平同期信号HSYNCのパルスがtbで立ち上がった時点から、所定のバックポーチ102の時間が経過した時点tcから、一水平走査分のRGB信号Vinが出力されることになる。ここでは、640画素分のアナログ映像信号が出力される。そして、teのタイミングでRGB信号Vinの出力が終了し、tfのタイミングで一水平走査分の信号出力が終了する。よって、ta〜tfの一水平走査のトータル時間は、640画素分のアナログ映像信号の出力周期に対応させて考えると800ドット分の時間となる。従って、入力映像信号Vinから、正確にデジタル信号をサンプリングするためには、ta〜tfの間に、800個のサンプリングクロックSCLK1を出力する必要がある。
【0038】
このため、記憶部15のデータテーブルには、想定される全てのパーソナルコンピュータの種別や製造メーカごとの、同期信号周波数、解像度、サンプリングクロックSCLK1についての相関データが格納されている。図4は、記憶部15のデータテーブルTを示している。例えば、図3の例において、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数が31.5kHzであったとする。解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数31.5kHzに基づき、記憶部15のデータテーブルを参照し、RGB信号Vinの解像度をNo3に示す640ドット×480ライン(VGA)であると識別する。
【0039】
図4には、サンプリングクロックSCLK1についての記載はないが、実際のデータテーブルにはクロック数800個を得るために、水平同期信号HSYNCの倍率に関するパラメータNが格納されている。また、図4には記載していないが、解像度を認識するために、上述の同期信号周波数の他、シンクタイプ(シンク・オン・グリーン、水平垂直が合成された同期信号、水平垂直が分離された同期信号などの種別)や同期信号の極性などを使用することもある。制御部16は、引き当てられた倍率に関するパラメータNをPLL回路19に設定する。これにより、RGB信号Vinの解像度に応じたサンプリングクロックSCLK1を生成することができる。
【0040】
図3および図1に戻る。ビデオスケーラ6は、RGB信号VinとサンプリングクロックSCLK1との位相を合わせるために水平シグナル信号HSIGおよび周波数参照信号FREFを生成し、PLL回路19に入力する。HSIGは、水平同期信号HSYNCのHとLのレベルが反転した水平シグナル信号である。周波数参照信号FREFは、水平同期信号HSYNCの立ち下がりの時点taから一水平走査周期800ドットに対応したサンプリングクロック数が出力される周期を持つ信号である。PLL回路19は、水平シグナル信号HSIGおよび周波数参照信号FREFを用いて、水平同期信号HSYNCの立ち下がりに、最初の出力パルスが完全に同期するようにその位相を合わせる。
【0041】
このようにして、一水平走査分のRGB信号VinがサンプリングクロックSCLK1に同期してサンプリングされる。ビデオスケーラ6は、各ドット位置(水平方向アドレス)についてはサンプリングクロックSCLK1、走査線位置(垂直方向アドレス)については水平同期信号HSYNC、各フレーム(各フィールド)については垂直同期信号VSYNCに、それぞれ同期させて1フレームごとにデジタル映像信号Dinをフレームメモリ7に書き込む。
【0042】
さらに、ビデオスケーラ6は、液晶ライトバルブ2の解像度に合わせた読み出し用の信号として、サンプリングクロックSCLK2、水平同期信号HSYNC2、垂直同期信号VSYNC2(いずれも図示せず)を生成する。入力映像信号Vinの拡大率および縮小率は、サンプリングクロックSCLK2、水平同期信号HSYNC2、垂直同期信号VSYNC2により調整することが可能である。ビデオスケーラ6は、サンプリングクロックSCLK2、水平同期信号HSYNC2、垂直同期信号VSYNC2に同期して、フレームメモリ7から映像信号を読み出し、液晶ライトバルブ2の解像度に合致したデジタル信号Dscを生成する。なお、このようなスケーリングについては、本出願人による特開平9−114443号に詳しく記載されている。
【0043】
前述のスケーリングを施すとき、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6の消費電力は、入力映像信号Vinの解像度に比例している。図5(a)は、入力映像信号を読み込むときの基準クロックの速さと、消費電力の大きさとを表すグラフである。図5(a)と図1を用いて説明する。基準クロックとしてのサンプリングクロックSCLK1は、入力映像信号Vinの解像度が高くなると処理する情報量が増えるため速くなる。このため、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6に供給電圧として定電圧V3を印可したときの消費電力量は、線Dに示す通り、サンプリングクロックSCLK1が速くなると増加し、遅くなると減少する。また、基準クロックの速さに拘わらず、常に定電圧V3が供給されているため、総じて消費電力が大きく、入力映像信号Vinの解像度が低く基準クロックが遅いときには過剰な電力が供給された状態となっているため、余分な電力は熱エネルギーとして発散している。このため、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6は慢性的に発熱しており、動作が不安定になることもある。
【0044】
続いて、映像信号処理部に供給する電力制御の方法ついて説明する。図6は、本実施形態における電力制御のフローチャートである。図6と、図1を用いて説明する。プロジェクタ50は、電源スイッチが投入されており、関係各部の初期化動作が終了した映像信号の入力待ち受け状態に設定されている。ステップS1では、映像信号供給装置3としてのパーソナルコンピュータから、入力映像信号としてのRGB信号Vinが映像コンバータ5に、また、同期信号SYNCがビデオスケーラ6にそれぞれ供給される。ステップS2では、周波数測定部18は水平同期信号HSYNCの周波数を測定する。周波数測定部18は、水平同期信号HSYNCを都度測定しており、水平同期信号HSYNCの変化を検出することができる。
【0045】
ステップS3では、解像度識別部17が、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数の変化の有無を検出している。ここでは、入力待ち受け状態から同期信号SYNCが入力されているので、水平同期信号HSYNCの周波数の変化が有ったこととなりステップS4へ進む。また、映像を投写している途中など水平同期信号HSYNCの周波数の変化が無い場合は、後述する電源電圧選定および設定ステップS4、S5を飛ばしてステップS6へ進む。ステップS4では、解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数のデータを受け取り、記憶部15のデータテーブルTを参照し、RGB信号Vinの解像度を識別する。さらに、制御部16は、解像度識別部17が識別したRGB信号Vinの解像度に基づき、記憶部15のデータテーブルTを参照し、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給する所定の電圧Vxの値を選択する。
【0046】
図4を加えて説明する。例えば、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数が31.5kHzであったとする。解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した水平同期信号HSYNCの周波数31.5kHzに基づき、図4に示す記憶部15のデータテーブルTを参照し、RGB信号Vinの解像度をNo3に示すVGAであると識別する。さらに、制御部16は、解像度識別部17が識別したRGB信号Vinの解像度に基づき、記憶部15のデータテーブルTを参照し、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給する所定の電圧Vxの値V1を選択する。なお、図4に示す通り、本実施形態においては、入力映像信号の解像度に応じて所定の電圧Vxの値をV1〜V3の3段階に設定している。
【0047】
なお、前述したとおり、記憶部15のデータテーブルTに格納されている入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数、入力映像信号Vinの解像度、電源部10が供給する所定の電力としての所定の電圧Vxなどのデータは設計段階であらかじめ把握されているものである。よって、ステップS4において、制御部16は、解像度識別部17によりRGB信号Vinの解像度が識別される前であっても、水平同期信号HSYNCの周波数を把握できれば、記憶部15のデータテーブルTを参照して映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給する所定の電圧Vxの値を選択することも可能である。制御部16は、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数、または入力映像信号Vinの解像度のどちらか一方が把握できれば、記憶部15のデータテーブルTから、所定の電圧Vxを選択することができる。
【0048】
ここで、所定の電圧Vxの値と消費電力の関係について図5(b)と図4とを用いて説明する。図5(b)は、入力映像信号を読み込むときの基準クロックの速さと、供給電圧としての所定の電圧値を変化させたときの消費電力の大きさを表すグラフである。図4において、所定の電圧値は入力映像信号の解像度に応じて設定値が段階的に設定されている。No1に示す解像度が640ドット×400ラインのときは、所定の電圧Vxの値はV1となる。また、No2〜3における解像度がVGA(640ドット×480ライン)のときは、所定の電圧Vxの値はV1となる。同様に、No4における解像度がSXGA(800ドット×600ライン)のときは、所定の電圧Vxの値はV2となる。No5の解像度がXGA(1024ドット×768ライン)およびNo6の解像度がUXGA(1600ドット×1200ライン)のときは、所定の電圧Vxの値はV3となる。
【0049】
所定の電圧V1〜V3は、解像度の高さに比例して電圧値が高くなるように設定されている。例えば、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6を構成するビデオプロッセッサ(図示せず)の定格電源電圧値がDC3〜6Vであったとする。この場合、所定の電圧V1〜V3は、V1を3V、V2を4.5V、V3を6Vに設定する。入力映像信号の解像度がVGAと低いときには、処理する情報量が少ないので基準クロックとしてのサンプリングクロックSCLK1を遅くすることができる。よって、供給電圧としての所定の電圧V1を3Vとしても十分に処理ができる。また、所定の電圧V1(3V)は、ビデオプロッセッサの定格電源電圧範囲の最低電圧であり、過剰な電力が供給されないため余分な電力の熱エネルギーによる発散が少なく、ビデオプロッセッサの発熱を抑えられる。
【0050】
同様に、入力映像信号の解像度がSVGAのときには、処理する情報量に応じて最低限必要な所定の電圧V2(4.5V)を供給する。さらに、解像度が上り、XGAおよびUXGAの入力映像信号のときには、処理する情報量も増えるのでビデオプロッセッサの持つ最大の処理能力を発揮できる定格電源電圧範囲の最大電圧V3(6V)を供給する。このように、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6には、入力映像信号の解像度が低いときには低い電圧値が供給され、入力映像信号の解像度が高いときには高い電圧が供給される。これにより、図5(b)に示すように、基準クロックの速さに拘わらず供給電圧をV3の定電圧に設定した場合の消費電力を示す線Dと比較して、斜線部Eで示す部分の消費電力を低く抑えることができる。また、斜線部Eで示す部分の電力分に相当する熱エネルギーによる発散を減らすことができる。
【0051】
ステップS5では、制御部16が、ステップS4で選定された、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給する所定の電圧、例えばV1をDAコンバータ13へ設定する。DAコンバータ13は、制御部16により設定された所定の電圧V1に応じた電圧を生成し、DC/DCコンバータ12へ供給する。DC/DCコンバータ12は、DAコンバータ13からの電圧に応じて、所定の電圧V1を生成し、映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給する。このようにして、DC/DCコンバータ12から映像コンバータ5およびビデオスケーラ6へ供給される電源電圧としての所定の電圧Vxは、入力映像信号の解像度に応じて、V1〜V3の3段階の電圧として供給される。
【0052】
ステップS6では、PLL回路19により、同期信号SYNCの周波数をN倍することによってサンプリングクロックSCLK1を生成する。ステップS7では、映像コンバータ5により、RGB信号VinをサンプリングクロックSCLK1と、水平シグナル信号HSIGおよび周波数参照信号FREFにて同期を取って、A/D変換し、デジタル映像信号Dinを生成する。ステップS8では、ビデオスケーラ6により、デジタル映像信号Dinにスケーリングを施し、液晶ライトバルブ2の解像度に合致したデジタル映像信号Dscを生成する。ステップS9では、フィルタ8により、デジタル映像信号Dscに所定の映像処理、例えばγ補正や、液晶ライトバルブ2に固有の輝度むらなどに起因する色むら補正などの処理を施し、デジタル映像信号Doutを生成する。
【0053】
ステップS10では、フィルタ8により、デジタル映像信号Doutが液晶パネル駆動部へ出力される。液晶パネル駆動部9は、デジタル映像信号Doutを液晶ライトバルブ2に供給する。これにより、液晶ライトバルブ2は、RGB各色光用の液晶ライトバルブごとにデジタル映像信号Doutに応じた映像を映し出す。ランプ1から投写された白色光は、色分離光学系(図示せず)でRGB各色光成分に分離され、RGB各色光ごとに各色光用の液晶ライトバルブ2にて映像信号Doutに応じて変調され、合成光学系(図示せず)で合成されて、スクリーンSC一杯にフルカラーの投写映像を映し出す。
【0054】
上述した通り、本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)解像度識別部17は入力映像信号Vinの解像度を識別し、制御部16は解像度識別部17が識別した入力映像信号Vinの解像度に応じて、映像信号処理部4の映像コンバータ5およびビデオスケーラ6に供給する電源部10からの電力に関する値を所定の値に設定する。電源部10が映像信号処理部4の映像コンバータ5およびビデオスケーラ6に供給する所定の電力は、あらかじめ把握されており、映像信号処理部4が映像信号Vinにスケーリングを施す際の、入力映像信号Vinの解像度に応じた最低限必要な消費電力となる。
【0055】
よって、映像信号処理部4に供給する所定の電力を、必要最低限の電力とすることにより余分なエネルギー消費を防ぐことができる。従って、消費電力を低減できる。また、映像信号処理部4に過剰な電力が供給されている場合は、余分な電力は熱エネルギーとなって慢性的に発散されるが、必要最低限の電力が供給されているため余分な発熱を抑えることができる。よって、発熱を抑えられることから、映像信号処理部4の動作は安定し、安定した映像が得られる。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置40を提供することができる。
【0056】
(2)記憶部15は入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数と、入力映像信号Vinの解像度と、電源部10が供給する所定の電圧Vxとに関するデータテーブルTを記憶している。周波数測定部18は、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数を測定する。入力映像信号Vinの解像度は、入力映像信号Vinに含まれる同期信号SYNCの周波数により識別できる。解像度識別部17は、周波数測定部18が測定した入力映像信号Vinの同期信号の周波数に基づいて、記憶部15のデータテーブルから解像度を識別する。制御部16は、解像度識別部17が識別した解像度に応じ、記憶部15のデータテーブルTから映像信号処理部4が必要な最低限の電力に関する所定の電圧Vxを選定する。また、制御部16は、入力映像信号Vinの同期信号SYNCの周波数、または入力映像信号Vinの解像度のどちらか一方が把握できれば、記憶部15のデータテーブルTから、所定の電圧Vxを選択することができる。
【0057】
電源部10が映像信号処理部4の映像コンバータ5およびビデオスケーラ6に供給する所定の電圧Vxの値は、映像信号処理部4が映像信号Vinにスケーリングを施す際の、入力映像信号Vinの解像度に応じた最低限必要な消費電力から導出されており、あらかじめ把握することができる。従って、記憶部15のデータテーブルにより、入力映像信号Vinの解像度および映像信号処理部4が必要な最低限の電力に関する所定の電圧Vxを簡便に選定することができる。
【0058】
さらに、電源部10が供給する電力は、所定の電圧Vxにより管理されている。所定の電圧Vxは、映像信号処理部4に用いられているビデオプロセッサの定格範囲内の所定の電圧V1〜V3となっている。定格範囲内の所定の電圧V1〜V3が供給されている状態で、流すことができる電流量の上限はビデオプロセッサごとに決まっている。よって、電圧と電流の積として求められる電力は、供給する電圧V1〜V3により管理することができる。また、電源部10は、DAコンバータ13およびDC/DCコンバータ12を備えることにより、簡便に複数の値を含む所定の電圧V1〜V3を供給することができる。従って、電源部10は、所定の電圧V1〜V3を簡便に供給できる。さらに、所定の電圧V1〜V3により電力を管理することができる。
【0059】
(3)プロジェクタ50は、入力映像信号Vinの解像度に応じて映像信号処理部4に必要最低限の電力を供給することにより、エネルギー利用効率が良く安定した映像が得られる映像表示装置40を備えている。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られるプロジェクタ50を提供することができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0061】
(変形例1)図5(b)と、図1を用いて説明する。前記実施形態の所定の電圧V1〜V3は、3段階の電圧値に限定するものではない。複数の段階、または、リニアに電圧値が変化することとしても良い。前記実施形態では、所定の電圧はV1〜V3の3段階に設定されているが、2段階以上の複数段階の電圧設定があれば同様に消費電力を抑えることができる。例えば、V1と、V3の2段階であったとしても、基準クロックの速さに拘わらず供給電圧をV3の定電圧に設定した場合の消費電力を示す線Dと比較して、前記実施形態のときの斜線部Eよりも範囲は少なくなるが消費電力を低く抑えることができる。
【0062】
また、所定の電圧値を段階的に設定するのではなく、基準クロックの速さに応じて、映像信号処理部4が必要とする最低電圧値を結ぶ線に沿ってリニアに変化するように設定しても良い。これにより、映像信号処理部4には常に必要最低限の電力が供給されることになるので、エネルギー利用効率が良い。さらに、余分な電力が印加されていないので発熱も少なく、安定した動作が確保できる。従って、安定した映像が得られる。
【0063】
(変形例2)図1を用いて説明する。前記実施形態の映像信号処理部4は、映像コンバータ5と、ビデオスケーラ6と、フィルタ8とから構成されているが、これに限定するものではない。ビデオスケーラ6の内部にフィルタ8を設けることとしても良い。さらに、フィルタ8を含むビデオスケーラ6と、映像コンバータ5とを、1つのビデオプロセッサとして構成しても良い。前記実施形態では、ビデオスケーラ6にて生成したデジタル信号Dscをフィルタ8に送り、フィルタ8にて所定の映像処理を施すことによりデジタル信号Doutを生成する構成となっている。
【0064】
例えば、ビデオスケーラ内部に、ビデオスケーラ内部でフレームメモリ7から映像信号を読み出すときに、1ラインずつの映像信号を交互に書き込む2つのFIFOバッファを設け、2つのFIFOバッファの内、書き込みの行われていない方のバッファに所定の映像処理を施すこととする。これにより、ビデオスケーラ6の内部でフィルタ8の働きを取り込むことができる。また、映像信号処理部4は、映像コンバータ5と、ビデオスケーラ6のみの構成となり構成を簡素化できる。
【0065】
また、フィルタ8を含むビデオスケーラ6と、映像コンバータ5とを、1つのビデオプロセッサとして構成することにより、さらに、映像信号処理部4の構成を簡素化できる。映像信号処理部4の構成が簡素化されることにより、映像信号処理部4へ供給する所定の電圧Vxは、1つのビデオプロセッサの定格のみ考慮すれば良いので設定が簡単になる。また、電源部10の構成も単一出力で良いので簡素化できる。さらに、映像信号処理部4および電源部10の構成が簡素化されることにより、部品点数が減り、また、実装工数も削減することができる。よって、小型化が可能となり、また、製造コストも抑えることができる。
【0066】
(変形例3)前記実施形態では、周波数測定部18を、映像信号処理部4の内部に設けているが、この構成に限定するものではない。図1を用いて説明する。周波数測定部18は、制御部16の解像度識別部17内に設ける構成とすることもできる。周波数測定部18は、CPUから成る制御部16の内部カウンタ(図示せず)を用いて、記憶部15に格納されているソフトウエアプログラムを実行することにより実現できる。この構成によれば、解像度識別部17内の周波数測定部18は、バスラインおよびCPUアクセスコントローラ(図示せず)を介して水平同期信号HSYNCの周波数を測定することができる。
【0067】
(変形例4)前記実施形態および各変形例による映像表示装置およびその制御方法に関する技術は、外部に設けられたスクリーンに映像を投写する投写型のプロジェクタに限定されるものではない。入力される映像信号にスケーリングなどを施すことにより、備え付けの表示部の解像度などに合わせた映像信号に変換してから、表示部で表示する映像表示装置であれば適応できる。例えば、投写型のプロジェクタとほぼ同様な光学系を備え、同一個体内に設けられた透過型スクリーンに背面から投写画像を投写するリアプロジェクタに適用することもできる。また、前記実施形態のプロジェクタの空間光変調部は、透過型の液晶ライトバルブを用いる構成としたが、これに限定するものではない。例えば、反射型液晶表示装置や、ティルトミラーデバイスを用いる構成としても良い。さらに、液晶テレビ、プラズマテレビ、などにも適応することができる。また、外部からの映像信号を無線通信により入力することを想定すると携帯電話を含むPDA(Personal Digital Assistance)にも適応が可能である。
【0068】
前記実施形態および各変形例から把握できる請求項に記載されている以外の技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
【0069】
入力された映像信号の同期信号を測定する周波数測定工程と、所定の電力を供給する電源部に、前記入力映像信号の同期信号の周波数と、前記入力映像信号の解像度と、前記電源部が供給する所定の電力に関するデータとを有する記憶部のデータテーブルから、前記周波数測定工程にて測定された前記入力映像信号の同期信号の周波数に応じた所定の電力に関する値を設定する電力値設定工程と、前記記憶部のデータテーブルから、前記周波数測定工程にて測定した周波数に応じた前記入力映像信号の解像度を識別する解像度識別工程と、前記解像度識別工程で識別した前記入力映像信号の解像度に応じて、前記入力映像信号で表される映像が、映像を表示する表示部に適した映像となるように、前記入力映像信号に少なくともスケーリングを含む処理を施す映像信号処理工程とを含むことを特徴とする映像表示装置の制御方法。
【0070】
この方法によれば、周波数測定工程では、入力映像信号の同期信号を測定する。電力値設定工程では、映像信号処理工程に電力を供給する電源部に、記憶部のデータテーブルから、周波数測定工程にて測定された入力映像信号の同期信号の周波数に応じた所定の電力に関する値を設定する。ここで、電源部が供給する所定の電力とは、映像信号処理工程にて入力映像信号にスケーリングなどの処理を施す際に必要な最低限の電力のことである。解像度識別工程では、記憶部のデータテーブルから、周波数測定工程にて測定された入力映像信号の同期信号の周波数に応じた入力映像信号の解像度を識別する。映像信号処理工程では、解像度識別工程で識別した入力映像信号の解像度に応じて、入力映像信号で表される映像が、映像を表示する表示部に適した映像となるように、入力映像信号に少なくともスケーリングを含む処理を施す。
【0071】
これにより、映像信号処理工程にてスケーリングなどの処理を施す際に消費される電力は必要最低限の電力となる。よって、余分なエネルギー消費を防ぐことができる。また、映像信号処理を施すときに過剰な電力が供給されている場合は、余分な電力は熱エネルギーとなって慢性的に発散されるが、必要最低限の電力が供給されているため余分な発熱を抑えることができる。よって、発熱を抑えられることから、映像信号処理は安定した状態で行われ、安定した映像が得られる。従って、エネルギー利用効率が良く、安定した映像が得られる映像表示装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】一実施形態のプロジェクタの概略構成図。
【図2】スケーリングについての説明図。
【図3】映像信号処理の流れを示すタイミングチャート。
【図4】記憶部のデータテーブル図。
【図5】(a)は基準クロックと消費電力との相関を示すグラフ。(b)は基準クロックと供給電圧と消費電力との相関を示すグラフ。
【図6】電力制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0073】
1…ランプ、2…表示部としての液晶ライトバルブ、3…映像信号供給装置、4…映像信号処理部、5…映像コンバータ、6…ビデオスケーラ、7…フレームメモリ、8…フィルタ、9…液晶パネル駆動部、10…電源部、11…スイッチング電源、12…DC/DCコンバータ、13…DAコンバータ、14…AC電源、15…データテーブルを記憶する記憶部、16…制御部、17…解像度識別部、18…周波数測定部、19…PLL回路、40…映像表示装置、50…プロジェクタ、Vin…入力映像信号、SYNC…同期信号、Vx…所定の電力としての電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号を表示部に表示する映像表示装置であって、
前記入力映像信号の解像度を識別する解像度識別部と、
少なくとも前記入力映像信号で表される映像を拡大および縮小することによって、前記入力映像信号の解像度を前記表示部の解像度に一致させる処理を含む、前記入力画像信号を前記表示部にて表示するのに適した信号に処理する映像信号処理部と、
少なくとも前記映像信号処理部に所定の電力を供給する電源部と、
前記解像度識別部、前記映像信号処理部、前記電源部とを制御する制御部とを、備え、
前記制御部は、前記入力映像信号の解像度に応じて、前記電源部の供給する電力に関する値を所定の値に設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記入力映像信号の同期信号の周波数と、前記入力映像信号の解像度と、前記電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶する記憶部と、
前記入力映像信号の同期信号の周波数を測定する周波数測定部とをさらに備え、前記解像度識別部は、前記周波数測定部が測定した周波数に応じて前記記憶部の前記データテーブルから前記解像度を識別し、
前記制御部は、前記解像度識別部が識別した解像度に応じ、前記記憶部の前記データテーブルから前記所定の電力に関する値を選定することを特徴とする請求項1項記載の映像表示装置。
【請求項3】
入力された映像信号を表示部に表示する映像表示装置であって、
前記入力映像信号の同期信号の周波数から解像度を識別する解像度識別部と、
少なくとも前記入力映像信号で表される映像を拡大および縮小することによって、前記入力映像信号の解像度を前記表示部の解像度に一致させる処理を含む、前記入力画像信号を前記表示部にて表示するのに適した信号に処理する映像信号処理部と、
少なくとも前記映像信号処理部に所定の電力を供給する電源部と、
前記解像度識別部、前記映像信号処理部、前記電源部とを制御する制御部とを、備え、
前記制御部は、前記入力映像信号の同期信号の周波数に応じて、前記電源部の供給する電力に関する値を所定の値に設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
前記入力映像信号の同期信号の周波数と、前記入力映像信号の解像度と、前記電源部が供給する所定の電力とに関するデータテーブルを記憶する記憶部と、
前記入力映像信号の同期信号の周波数を測定する周波数測定部とをさらに備え、前記解像度識別部は、前記周波数測定部が測定した周波数に応じて前記記憶部の前記データテーブルから前記解像度を識別し、
前記制御部は、前記周波数測定部が測定した周波数に応じ、前記記憶部の前記データテーブルから前記所定の電力に関する値を選定することを特徴とする請求項3項記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記所定の電力は、前記電源部が供給する所定の電圧値により管理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の映像表示装置を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
入力された映像信号の解像度を入力映像信号の同期信号の周波数から識別する解像度識別工程と、
所定の電力を供給する電源部に、前記解像度識別工程にて測定された前記入力映像信号の同期信号の周波数に応じた所定の電力に関する値を設定する電力値設定工程と、
前記入力映像信号で表される映像が、映像を表示する表示部に適した映像となるように、前記入力映像信号に少なくともスケーリングを含む処理を施す映像信号処理工程とを含むことを特徴とする映像表示装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−38981(P2006−38981A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215319(P2004−215319)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】