説明

映像表示装置

【課題】大型の映像表示部を備えた映像表示装置において,その表示映像が広角の複数の方向の視点から見られる場合に,各視点から視認される映像が極力本来の映像(矩形状の映像)に近い形状の映像となるように,視点の方向ごとの遠近効果を見込んだ映像補正を行うこと。
【解決手段】視差バリア5により定まる複数の視野方向ごとに個別の映像を液晶ディスプレイ4に表示させるマルチビュー機能を備え,液晶ディスプレイ4の前方に存在する人の顔の位置を,カメラ9による撮像画像に基づき検出し,その検出位置に応じて,メイン制御回路8が各視野方向における基準の視点の位置を設定し,映像処理回路2が,マルチビュー表示させる映像を,その映像に対応する視野方向における前記基準の視点から表示位置までの距離が近い部分ほど小さくなるよう変形補正(矩形映像から台形映像への変形補正)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示部に複数の映像各々を複数の視野方向ごとに個別に表示させるマルチビュー表示機能を備えた映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイを備えた映像表示装置には,ディスプレイ(映像表示部)の前面に形成された視差バリアを備え,その視差バリアにより定まる複数の視野方向ごとに個別の映像をディスプレイに表示させるマルチビュー機能を備えるものがある。
前記視差バリアは,ディスプレイにおける画素ごとに,その画素を視認できる方向を予め定められた複数の方向(視野方向)のいずれかに制限するものである。そして,マルチビュー機能を備えた映像表示装置は,各視野方向に対応する画素群により1つの映像を構成することにより,視野方向ごとに個別の映像をディスプレイに表示させる。一般に,マルチビュー機能は,前記視野方向が,ディスプレイの右斜め前方と左斜め前方の2方向であるデュアルビュー機能,或いはディスプレイの右斜め前方と正面方向と左斜め前方の3方向のいずれかであるトリプルビュー機能のいずれかである場合が多い。
なお,マルチビュー機能を備えた映像表示装置は,例えば特許文献1,特許文献2及び特許文献3等に示されている。
また,特許文献4や特許文献5には,カメラによる撮像画像に基づいて,顔面及びその向きを簡単かつ精度良く検出する技術が示されている。
また,特許文献6には,カメラによる撮像画像に基づいて自動車のドライバーの顔の特徴点及び顔の向きを検知し,その検知結果に基づいて自動車のミラーの角度を調節する装置が示されている。
一方,昨今の薄型の映像表示装置(液晶表示装置等)は,大型化が進み,店舗内や待合室等の多人数が集まる場所に設置されること等により,多数の人によって広角範囲の方向から表示映像が見られることも多い。
【特許文献1】特開2004−279932号公報
【特許文献2】特開2004−302409号公報
【特許文献3】特開2004−139056号公報
【特許文献4】特開2001−101429号公報
【特許文献5】特開2006−259900号公報
【特許文献6】特開2002−274265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,大型の映像表示装置による大きな表示映像は,表示部の斜め前方からそれを見た場合,視点から映像の各部分の表示位置までの遠近の差が大きいため,視点に近い部分ほど大きく見える(視点から遠い部分ほど小さく見える)遠近効果が顕著となる。
例えば,108型の映像表示部(横幅が2.4m,高さが1.35mの矩形状)の表示領域全体に表示された映像を見る視点が,その映像表示部の横方向の端部から正面方向に2m離れ,高さ方向における中央の位置にある場合を考える。
この場合,視点から表示映像の上辺を見るときの最大の仰角(映像表示部における視点に最も近い側の横方向の端部に対する仰角)が約18.6°,最小の仰角(映像表示部における視点に最も遠い側の横方向の端部に対する仰角)が約12.2°となり,1.5倍以上もの仰角の差が生じる。
その結果,本来の表示映像は矩形状の映像であるのに対し,表示部の斜め前方の視点から視認される映像は,全体として大きく歪んだ台形状の映像ととなり,視聴者に違和感を感じさせてしまうという問題点があった。特に,プレゼンテーション等の際にグラフや物体の形状を表示部に表示させつつデータ比較や形状比較を行う場合に,表示映像が台形状に歪むことによって正しい比較判断が妨げられるという問題があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,大型の映像表示部を備えた映像表示装置において,その表示映像が広角の複数の方向の視点から見られる場合に,各視点から視認される映像が極力本来の映像(矩形状の映像)に近い形状の映像となるように,視点の方向ごとの遠近効果を見込んだ映像補正を行う機能を備えた映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため,本発明に係る映像表示装置は,次の(1)〜(4)に示す各構成要素を備えている。
(1)映像表示部(液晶ディスプレイ等)。
(2)前記映像表示部の前面に形成された視差バリア。
(3)前記視差バリアにより定まる複数の視野方向ごとに個別の映像を前記映像表示部に表示させるマルチビュー制御手段。
(4)前記マルチビュー制御手段が前記映像表示部に表示させる前記個別の映像を,当該個別の映像に対応する前記視野方向における基準の視点から表示位置までの距離が近い部分ほど小さくなるよう変形補正(矩形映像から台形映像への変形補正)を行う映像サイズ補正手段。
本発明によれば,前記映像サイズ補正手段により,前記視野方向から視認される映像が極力本来の映像(矩形状の映像)に近い形状の映像となるように,前記視野方向ごとの前記基準の視点から見た遠近効果を見込んだ映像補正(矩形映像から台形映像への変形補正)を行うことができる。
【0005】
また,本発明に係る映像表示装置が,次の(5)及び(6)に示す各構成要素をさらに備えることが考えられる。
(5)前記映像表示部の前方に存在する人の位置を検出する位置検出手段。
(6)前記位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定する視点自動設定手段。
これにより,本発明に係る映像表示装置とその映像を見る人との実際の位置関係に応じた映像補正を行うことができる。
例えば,前記位置検出手段が,次の(5−1)及び(5−2)に示す各構成要素を備えることが考えられる。
(5−1)前記映像表示部の前方を撮像する撮像手段。
(5−2)前記撮像手段の撮像画像に対する画像処理によって前記映像表示部の前方に存在する人の顔の位置を検出する顔位置検出手段。
この場合,前記視点自動設定手段が,前記顔位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定する。
前記撮像手段及び前記顔位置検出手段は,比較的安価な普及品により容易に実現できる。例えば,前記撮像手段は,CCDカメラ等の安価で小型のカメラによって実現できる。また,前記顔位置検出手段は,昨今のデジタルカメラや生体認証装置等に搭載され,画像に含まれる人の顔の像(顔の位置及び顔の特徴量)を高精度で自動認識する処理を実行する画像処理素子によって実現できる。
その他,前記位置検出手段が,次の(5−3)及び(5−4)に示す各構成要素を備えることも考えられる。
(5−3)リモート操作器から出力される無線信号を受信する無線信号受信手段。
(5−4)前記無線信号受信手段による受信信号に基づいて前記映像表示部の前方に存在する前記リモート操作器の位置を検出するリモート操作器位置検出手段。
この場合,前記視点自動設定手段が,前記リモート操作器位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定する。
なお,前記無線信号としては,赤外線信号や超音波信号等が考えられる。
また,本発明に係る映像表示装置が,操作入力手段を通じた入力情報に基づいて前記基準の視点の位置を設定する視点手動設定手段を具備することも考えられる。
これにより,本発明に係る映像表示装置の設置現場において前記基準の視点の位置を設定することができ,その結果,当該映像表示装置とその映像を見る人との位置関係に応じた映像補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,大型の映像表示部を備えた映像表示装置において,その表示映像が広角の複数の方向の視点から見られる場合に,各視点から視認される映像が極力本来の映像(矩形状の映像)に近い形状の映像となるように,視点の方向ごとの遠近効果を見込んだ映像補正を行うことができる。その結果,視聴者は,その視野方向にかかわらず,違和感を感じることなく本来の形状の映像を見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の第1実施形態に係る映像表示装置Xの主要部の構成を表すブロック図,図2は映像表示装置Xにおける視差バリアと液晶ディスプレイとの関係を簡略して表した図,図3は液晶ディスプレイの表示映像及び視聴者の視点の位置関係を表す図,図4は映像表示装置Xにおける視野方向ごとの表示映像を模式的に表した図,図5は本発明の第2実施形態に係る映像表示装置X’における視点位置検出方法の説明図である。
【0008】
まず,図1に示すブロック図を参照しつつ,本発明の第1実施形態に係る映像表示装置の一例である映像表示装置Xの主要部の構成について説明する。
図1に示すように,映像表示装置Xは,映像信号入力部1,映像処理回路2,液晶駆動回路3,液晶ディスプレイ4,視差バリア5,バックライト光源6,リモコン信号の受光部7,メイン制御回路8,カメラ9,画像処理部10及びリモート操作器11等を備えた液晶表示装置である。
前記映像信号入力部1は,複数の映像信号を入力するインターフェースである。以下,この映像信号入力部1を通じて入力される映像信号を入力映像信号と称する。
また,前記映像処理回路2は,前記入力映像信号に基づいて,動画における1コマの画像を構成する各画素の3原色(R,G,B)それぞれの映像輝度(画素階調)を表すフレーム信号を順次生成し,そのフレーム信号を前記液晶駆動回路3に伝送する回路である。
【0009】
前記液晶駆動回路3は,前記映像処理回路2から所定周期で順次伝送されてくる前記フレーム信号に基づいて,そのフレーム信号に対応する1フレーム分の映像(1コマの画像)を前記液晶ディスプレイ4に順次表示させる回路である。これにより,前記液晶ディスプレイ4(映像表示部の一例)は,前記入力映像信号に基づく映像(動画)を表示する。
前記バックライト光源6は,複数の冷陰極管からなる光源を備え,前記液晶ディスプレイ4をその背面側から照明するものである。前記バックライト光源6は,複数の冷陰極管及びLEDを含むものである場合や,複数のLEDからなる場合もある。
【0010】
前記リモート操作器11は,ユーザ(映像を見る人)により操作される操作部(操作ボタン)を備え,その操作部に対する操作内容を表す情報を含む赤外線信号を出力するものである。
また,前記受光部7は,前記リモート操作器11から出力される赤外線信号を受信(受光)し,受信信号に含まれる情報(前記操作部に対する操作内容を表す情報)を抽出し,抽出情報を前記メイン制御回路8に伝送する素子である。
また,前記メイン制御回路8は,演算手段であるMPU81及び不揮発性メモリであるEEPROM82等を備え,前記MPU81が不図示のROMに記憶された制御プログラムを実行することにより,当該映像表示装置Xが備える各構成要素の制御処理を実行するものである。
例えば,前記メイン制御回路8は,前記受光部7から伝送されてくる情報に応じて(即ち,前記リモート操作器11に対する操作に応じて)前記映像処理回路2を制御することにより,前記液晶ディスプレイ4に表示させる映像の内容を変更する処理や,前記画像処理部10から伝送されてくる情報に基づいて前記EEPROM82の記録情報を更新する処理等を実行する。
【0011】
また,前記視差バリア5は,前記液晶ディスプレイ4の前面に沿って形成されている。
図2は,前記視差バリア5と前記液晶ディスプレイ4との関係を簡略して表した図(平面図)である。
前記液晶ディスプレイ4は,2次元に配列された画素により画面を構成し,各画素は,予め複数の(ここでは,3つの)グループに区分されている。各グループの識別符号をA,B,Cとした場合,図2に示す例では,各画素は,水平方向において「A,B,C,A,B,C,A,B…」と周期的に3つのグループに区分されている。
そして,前記視差バリア5は,前記液晶ディスプレイ4の前方におけるパネルに向かって右側寄りの方向からの視点(以下,視点Aという)から前記液晶ディスプレイ4を見た場合に,Aグループ以外のグループ(B,Cグループ)の画素に対する視野を遮る。
また,前記視差バリア5は,前記液晶ディスプレイ4の正面前方からの視点(以下,視点Bという)から前記液晶ディスプレイ4を見た場合に,Bグループ以外のグループ(A,Cグループ)の画素に対する視野を遮る。
また,前記視差バリア5は,前記液晶ディスプレイ4の前方におけるパネルに向かって左側寄りの方向からの視点(以下,視点Cという)から前記液晶ディスプレイ4を見た場合に,Cグループ以外のグループ(A,Bグループ)の画素に対する視野を遮る。
このように,前記視差バリア5は,前記液晶ディスプレイ4における画素ごとに,その画素を視認できる方向を予め定められた3方向(視野方向)のいずれかに制限するものである。
なお,以下,前記Aグループの画素群による表示映像を主として視認可能な視野方向を視野方向A,前記Bグループの画素群による表示映像を主として視認可能な視野方向を視野方向B,前記Cグループの画素群による表示映像を主として視認可能な視野方向を視野方向Cと称する。これら複数の視野方向A〜Cは,それぞれ所定の幅(範囲)を有している。
【0012】
そして,映像表示装置Xは,各視野方向に対応する画素群(Aグループの画素群,Bグループの画素群又はCグループの画素群)により1つの映像を構成することにより,視野方向ごとに個別の映像を同時に前記液晶ディスプレイ4に表示させるトリプルビュー機能(マルチビュー機能の一例)を備えている。
即ち,前記メイン制御回路8は,前記リモート操作器11においてトリプルビュー表示操作(例えば,トリプルビュー表示ボタンの押下操作)が行われたことを検知すると,前記映像処理回路2に対し,トリプルビュー用フレーム信号を生成及び出力するよう指令を出力する。また,前記メイン制御回路8は,前記映像処理回路2に対し,前記トリプルビュー用フレーム信号の生成及び出力の指令とともに,映像補正情報も出力する。その映像補正情報は,トリプルビュー表示状態における2つの視野方向(視野方向A及び視野方向C)から視認される映像が,極力本来の映像(矩形状の映像)に近い形状の映像となるように,前記視野方向ごとに予め設定された基準の視点Poから見た遠近効果を見込んだ映像補正(矩形から台形への変形補正)を行う基礎となる情報である。前記映像補正情報の具体例については後述する。
【0013】
また,前記映像処理回路2は,前記メイン制御回路8からの指令に応じて,前記映像信号入力部1を通じて入力される複数の前記入力映像信号に基づいて,視野方向ごとに(視野方向A〜Cそれぞれについて)個別の映像を前記液晶ディスプレイ4に表示させるための前記トリプルビュー用フレーム信号を生成するとともに,その信号を前記液晶駆動回路3に出力する。
その際,前記映像処理回路2は,前記液晶ディスプレイ4にトリプルビュー表示させる3つの映像のうち,ディスプレイ正面方向に対して斜めの視野方向A,Cに対応する2つの映像を,その映像(個別の映像それぞれ)に対応する前記視野方向における基準の視点Poから表示位置までの距離が近い部分ほど小さくなるよう変形補正(映像信号の補正)し,補正後の映像に対応する前記トリプルビュー用フレーム信号を生成する。ここで,前記映像処理回路2は,前記メイン制御回路8から取得した前記映像補正情報に基づいて映像の変形補正を行う。
以上に示したように,前記メイン制御回路8及び前記映像処理回路2は,前記視差バリア5により定まる複数の視野方向ごとに個別の映像を前記液晶ディスプレイ4に表示させ(前記マルチビュー制御手段の一例),その際,各視野方向における遠近効果を見込んだ映像補正(映像の変形補正)を行う。その具体例については後述する。
なお,前記映像処理回路2は,前記メイン制御回路8からの指令に従って,視野方向ごとに個別の映像を前記液晶ディスプレイ4に表示させるための前記トリプルビュー用フレーム信号を生成及び出力するか,或いは視野方向にかかわらず1つの映像を前記液晶ディスプレイ4に表示させるためのフレーム信号であるシングルビュー用フレーム信号を生成及び出力するかを切り替える。
【0014】
前記カメラ9は,前記液晶ディスプレイ4の前方を撮像する撮像手段であり,例えば,CCDカメラ等である。このカメラ9は,前記液晶ディスプレイ4の前方に存在する人の顔を撮像するために設けられたものである。
前記画像処理部10は,前記カメラ9の撮像画像(画像データ)に対する画像処理によって前記液晶ディスプレイ4の前方に存在する人の顔の位置(即ち,人の位置)を検出する素子であり,顔位置検出手段の一例である。検出された顔の位置は,前記メイン制御回路8に伝送される。なお,前記画像処理部10は,前記液晶ディスプレイ4の前方に存在する人の位置を検出する手段の一例である。
【0015】
例えば,前記画像処理部10は,前記撮像画像における左右方向(水平方向)の中央の一定範囲(前記視野方向Bに対応する範囲)の両外側の範囲(即ち,前記視野方向A,Cそれぞれに対応する範囲)それぞれの画像について,人の顔の位置(前記カメラ9を基準とした方向及び距離)を検出する。
ここで,前記カメラ9による撮像画像から人の顔の像の位置を検出(特定)する画像処理アルゴリズムの例は,前記特許文献4〜6等に示され,各種のアルゴリズムが既に周知であるのでここではその内容の説明を省略する。なお,前記カメラ9は,前記画像処理部10における顔の位置検出処理のアルゴリズムに応じて,1つ又は複数設けられる。
なお,前記カメラ9による撮像及び前記画像処理部10による顔位置検出は,前記メイン制御回路8が,前記受光部7から伝送されてくる視点設定指令情報に応じて(即ち,前記リモート操作器11に対する視点設定要求の操作(例えば,視点設定ボタンの押下操作)に応じて)前記カメラ9及び前記画像処理部10を制御することによって実行される。
そして,前記メイン制御回路8は,前記画像処理部10による顔の位置の検出位置の情報を取得し,その検出位置(前記視野方向A,Cそれぞれに存在する顔の位置)を,前記視野方向A及び前記視野方向Cそれぞれにおける基準の視点Poの位置として設定する(主メモリへの記録)。なお,前記メイン制御回路8が,人の検出位置(顔の検出位置)に応じた前記基準の視点Poの位置を設定する視点自動設定手段の一例である。
さらに,前記メイン制御回路8は,設定した前記基準の視点Poの位置に基づいて前記映像補正情報を算出し,その映像補正情報を前記EEPROM82に記録(保存)する。
【0016】
以下,図3を参照しつつ,前記映像補正情報の具体例について説明する。
以下,矩形状の映像面(液晶ディスプレイ4の画面)全体に表示される補正前の映像(元の映像)をg0,その補正前の映像g0を変形補正して得られる補正後の映像をg1と称する。
また,矩形状の前記映像面における4つの頂点(即ち,前記補正前の映像g0の4つの頂点)のうち,ある視野方向(図3の例は視野方向C)における前記基準の視点Po(前記画像処理部10により検出された顔の位置)に近い方の下側頂点及び上側頂点をそれぞれPbn及びPtn,前記基準の視点Poに遠い方の下側頂点及び上側頂点をそれぞれPbf及びPtfとする。
また,前記補正後の映像g1における前記基準の視点Poに近い方の下側の頂点及び上側の頂点をそれぞれPbn’,Ptn’とする。なお,前記補正後の映像g1における前記基準の視点Poに遠い方の下側の頂点及び上側の頂点は,前記補正前の映像g0における前記基準の視点Poに遠い方の下側の頂点Pbf及び上側の頂点Ptfと同じである。
【0017】
前記基準の視点Poから前記補正前の映像g0を見た場合,遠近効果によって頂点Pbfへの仰角と頂点Pbnへの仰角との間,及び頂点Ptfへの仰角と頂点Ptnへの仰角との間に差が生じる。このため,前記基準の視点Poから見た前記補正前の映像g0は,台形状に歪んでいるように見えてしまう。
一方,頂点Pbfへの仰角と頂点Pbn’への仰角とが等しく,かつ,及び頂点Ptfへの仰角と頂点Ptn’への仰角とが等しくなるように映像補正を行えば,前記基準の視点Poから見た前記補正後の映像g1は,本来の形状である矩形状に見える。
従って,前記メイン制御回路8は,頂点Pbfへの仰角と頂点Pbn’への仰角とが等しく,かつ,及び頂点Ptfへの仰角と頂点Ptn’への仰角とが等しくなるように,頂点Pbfから頂点Pbn’への補正量である下側頂点補正量ΔB(高さ方向の変位量)と,頂点Ptfから頂点Ptn’への補正量である上側頂点補正量ΔT(高さ方向の変位量)とを,前記映像補正情報として算出する。
【0018】
例えば,前記基準の視点Poを基点としたときの距離を以下のように定義する。
Ly:前記映像面に垂直な方向におけるその映像面までの距離。
Lxn:前記映像面の横幅方向における前記基準の視点Poに近い方の映像面の下側頂点Pbnまでの距離。
Lxf:前記映像面の横幅方向における前記基準の視点Poに遠い方の映像面の下側頂点までの距離。
Lzb:前記映像面の高さ方向における前記映像面の下辺までの距離。
Lzt:前記映像面の高さ方向における前記映像面の上辺までの距離。
ここに定義した各距離は,前記映像面の横幅W(頂点Pbnから頂点Pbfまでの長さ),及び前記映像面の高さH(頂点Pbnから頂点Ptnまでの長さ)等の既知の寸法と,前記基準の視点Poの位置(前記画像処理部10による顔の検出位置)とに基づいて導き出すことができる。
そして,前記下側頂点補正量ΔB及び前記上側頂点補正量ΔTは,例えば,次の(a)式により算出できる。
【数1】

この(a)式は,幾何学的に簡易に導くことができる式である。
なお,前記(a)式における前記下側頂点補正量ΔB及び前記上側頂点補正量ΔTは,長さを表す数値であるが,その長さを前記液晶ディスプレイ4における映像の画素数に換算した数値を前記映像補正情報とすることが望ましい。
【0019】
そして,前記映像処理回路2は,前記映像補正情報ΔB,ΔTに基づいて,矩形状の前記補正前の映像g0を台形状の映像へ変形補正し,その補正後の映像g1を前記液晶ディスプレイ4に表示させるための前記トリプルビュー用フレーム信号を生成及び出力する。
図4は,トリプルビューの表示状態における視野方向ごとの表示映像を模式的に表した図である。
図4(a)に示すように,前記液晶ディスプレイ4の左斜め前方が視点となる前記視野方向Aに対応する補正後の映像g1aは,向かって右側の辺が縮小された台形状の映像となる。その補正後の映像g1aは,前記視野方向Aにおける前記基準の視点Poから見れば,矩形状の映像として目に映る。
また,図4(c)に示すように,前記液晶ディスプレイ4の右斜め前方が視点となる前記視野方向Cに対応する補正後の映像g1cは,向かって左側の辺が縮小されることによって圧縮された台形状の映像となる。その補正後の映像g1cは,前記視野方向Cにおける前記基準の視点Poから見れば,矩形状の映像として目に映る。
なお,映像の圧縮処理は,一部の画素を間引く処理,或いは複数の画素の信号値を集約して1つの画素の信号値に変換する処理等が考えられる。
【0020】
図4(a),(c)に示すように,前記メイン制御回路8及び前記映像処理回路2は,トリプルビュー機能により液晶ディスプレイ4に表示させる映像を,矩形状の前記補正前の映像g0から,各映像に対応する前記視野方向A,Cにおける前記基準の視点Poから表示位置までの距離が近い部分ほど小さくなるような台形状の映像(前記補正後の映像g1)へ変形補正する(前記映像サイズ補正手段の一例)。
一方,図4(b)に示すように,前記液晶ディスプレイ4の正面方向が視点となる前記視野方向Bに対応する映像としては,前記補正前の映像g0がそのまま表示される。
その結果,異なる方向から同時に映像を見る複数の視聴者は,その視野方向にかかわらず,違和感を感じることなくほぼ本来の形状(矩形状)の映像を見ることができる。
【0021】
以上に示した第1実施形態では,映像補正の基準となる前記基準の視点Poの位置が,撮像画像に対する画像処理によって検出した顔の位置に応じて設定される例を示した。
これに対し,前記基準の視点Poの位置を,前記リモート操作器11から出力される無線信号の受信結果(受信信号)に基づいて検出する実施形態(以下,第2実施形態という)も考えられる。
以下,図5を参照しつつ,本発明の第2実施形態に係る映像表示装置X’について説明する。
【0022】
映像表示装置X’は,前記映像表示装置X(図1及び図2参照)が備える構成要素のうち,前記カメラ9及び前記画像処理部10以外の全ての構成要素を備えている。
さらに,映像表示装置X’は,前記液晶ディスプレイ4の周囲の複数の位置(例えば,3箇所)に配置され,前記リモート操作器11から出力される赤外線信号(無線信号の一例)を受光し,その受光レベル(受光部に到達した赤外線信号の強度)を前記メイン制御回路8に出力する複数の赤外線受光部12a,12b,12cを備えている。なお,これら赤外線受光部12a〜12cは,前記リモート操作器11から出力される無線信号を受信する無線信号受信手段の一例である。また,前記リモート操作器11における操作内容を検出するための前記受光部7と兼用されてもよい。
【0023】
前記赤外線受光部12a〜12cの受光レベルは,前記リモート操作器11から前記赤外線受光部12a〜12cまでの距離に応じたレベルとなる(距離が長いほど低レベルとなる)。映像表示装置X’においては,前記EEPROM82に,受光レベルと前記リモート操作器11までの距離との対応関係を表す受光レベル・距離対応情報が予め記憶されている。
そして,前記メイン制御回路81は,前記赤外線受光部12a〜12cの受光レベルと前記受光レベル・距離対応情報とに基づいて,前記リモート操作器11から前記赤外線受光部12a,12b,12cまでの距離La,Lb,Lcを特定し,その距離La,Lb,Lcから前記リモート操作器11の位置を検出(算出)する。
さらに,前記メイン制御回路8は,前記リモート操作器11の検出位置が,予め定められた前記視野方向A,Cそれぞれに対応する範囲のいずれにあるかを判別し,その視野方向(判別結果)について,前記リモート操作器11の検出位置又はその検出位置を予め定められたシフト量だけ修正した位置を,その視野方向における前記基準の視点Poとの位置として設定する(主メモリへの記録)。
なお,前記シフト量は,人が前記リモート操作器11を操作する場合におけるその人の目の位置と前記リモート操作器11の位置との位置ずれを想定した量である。
【0024】
さらに,前記メイン制御回路8は,設定した前記基準の視点Poの位置に基づいて,前記映像表示装置X(第1実施形態)と同様にして前記映像補正情報を算出し,その映像補正情報を前記EEPROM82に記録(保存)する。その映像補正情報は,前記映像表示装置X(第1実施形態)と同様に,前記映像処理回路2による映像補正に用いられる。
なお,前記メイン制御回路8による前記リモート操作器11の位置検出は,前記メイン制御回路8が,前記受光部7から伝送されてくる視点設定指令情報に応じて(即ち,前記リモート操作器11に対する視点設定要求の操作(例えば,視点設定ボタンの押下操作)に応じて)実行される。
このような映像表示装置X’も,本発明の実施形態の一例である。
また,前記リモート操作器11に超音波発信器が,映像表示装置の本体側に複数の超音波受信器及びその受信信号の検波回路がそれぞれ設けられ,その検波回路により検出される超音波(無線信号の一例)の出力時点から受信時点までの時間に基づいて,前記メイン制御回路8が,前記リモート操作器11の位置検出を行うこと等も考えられる。この場合,超音波の出力時点は,超音波と同時に出力されるリモコン信号(赤外線信号)が前記受光部7により受光された時点を検出すること等により検出できる。
また,前記液晶ディスプレイ4の前方に存在する人の位置を検出する手段としては,映像表示装置の本体に設けられた反射型の位置検出センサ(赤外線センサや超音波センサ等)等も考えられる。
【0025】
また,前記メイン制御回路8が,操作入力手段の一例である前記リモート操作器11を通じた入力情報に基づいて,前記基準の視点Poの位置を設定することも考えられる(前記視点手動設定手段の一例)。
例えば,前記視野方向A及び前記視野方向Cそれぞれについて,前記基準の視点Poと前記映像面との間の位置関係を表す距離Ly,Lxn,Lxf,Lzb,Lztを前記入力情報とし,その入力情報と前記(a)式とに基づいて前記基準の視点Poの位置を設定すること等が考えられる。
また,前記映像処理回路2が,前記視野方向A及び前記視野方向Cそれぞれについて,予め想定される固定の前記基準の視点Poに応じた前記変形補正を行うことも考えられる。
また,前記映像表示装置Xは,前記映像面の左斜め前方,正面方向,右斜め前方の3方向に対応する3つの映像を同時に表示するトリプルビュー表示を行う例を示したが,前記映像面の左斜め前方及び右斜め前方の2方向に対応する2つの映像を同時に表示するデュアルビュー表示を行うものや,複数の視野方向が上下方向に区分されるマルチビュー表示を行うもの等も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は,マルチビュー機能を備えた映像表示装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る映像表示装置Xの主要部の構成を表すブロック図。
【図2】映像表示装置Xにおける視差バリアと液晶ディスプレイとの関係を簡略して表した図。
【図3】液晶ディスプレイの表示映像及び視聴者の視点の位置関係を表す図。
【図4】映像表示装置Xにおける視野方向ごとの表示映像を模式的に表した図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る映像表示装置X’における視点位置検出方法の説明図。
【符号の説明】
【0028】
X,X’:映像表示装置
1 :映像信号入力部
2 :映像処理回路
3 :液晶駆動回路
4 :液晶ディスプレイ
5 :視差バリア
6 :バックライト光源
7 :受光部
8 :メイン制御回路
9 :カメラ
10:画像処理部
11:リモート操作器
12a,12b,12c:赤外線信号受光部
g0:補正前の映像
g1:補正後の映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示部と,該映像表示部の前面に形成された視差バリアと,該視差バリアにより定まる複数の視野方向ごとに個別の映像を前記映像表示部に表示させるマルチビュー制御手段とを備えた映像表示装置であって,
前記マルチビュー制御手段が前記映像表示部に表示させる前記個別の映像を,当該個別の映像に対応する前記視野方向における基準の視点から表示位置までの距離が近い部分ほど小さくなるよう変形補正する映像サイズ補正手段を具備してなることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記映像表示部の前方に存在する人の位置を検出する位置検出手段と,
前記位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定する視点自動設定手段と,
を具備してなる請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記位置検出手段が,
前記映像表示部の前方を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段の撮像画像に対する画像処理によって前記映像表示部の前方に存在する人の顔の位置を検出する顔位置検出手段と,を具備し,
前記視点自動設定手段が,前記顔位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定してなる請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記位置検出手段が,
リモート操作器から出力される無線信号を受信する無線信号受信手段と,
前記無線信号受信手段による受信信号に基づいて前記映像表示部の前方に存在する前記リモート操作器の位置を検出するリモート操作器位置検出手段と,を具備し,
前記視点自動設定手段が,前記リモート操作器位置検出手段の検出位置に応じた前記基準の視点の位置を設定してなる請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
操作入力手段を通じた入力情報に基づいて前記基準の視点の位置を設定する視点手動設定手段を具備してなる請求項1に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192552(P2009−192552A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29854(P2008−29854)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】