説明

映像装置の回転機構及び表示システム

【課題】映像装置の回転機構に関して、簡易的な構造で組立バラツキやギアの回転力や衝撃などによるセンサーのメモリー誤差を防ぐ技術を提供する。
【解決手段】固定金具7が図示で左端部が取付ボス8の上面に接するものの、右端部は上に浮いた状態にある。その結果、適正姿勢の状態と比較して、圧縮バネ6が圧縮された状態となっている。このとき圧縮バネ6が適正に圧縮することで、ギアプレート3とメモリーセンサー4の噛み合い強さは常に一定荷重に保持される。その結果、ギアプレート3やメモリーセンサー4の取り付けバラツキが発生しても常に一定荷重の噛み合いとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像装置の回転機構及び表示システムに係り、回転位置を保持する機能を有する映像装置の回転機構及びそのような回転機構を有する表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の映像機器本体を回転させ、視聴したい任意の向きにメモリーできる機能を備えた回転機構がある。特に、プロジェクターでは、遠くへ投射する程、一度記憶させたメモリー位置を高精度に保持することが必要である。業務用プロジェクターでは100〜200インチの大型スクリーンを使用するため、非常に高精度のメモリー位置検出が要求される。従来は、高価で高精度のセンサーを使用したり、センサー取り付け部の高精度な取り付けが必要であった。
【0003】
位置精度を高くするための技術として様々なものが提案されている。例えば、特許文献1では、記録紙に異常負荷がかかると、自動的にレリーズ手段が作動させて、紙ジャムを未然に防ぎ、モータの脱調や、記録紙の送り穴の破損を防ぎ確実な紙送りの可能なプリンタを提供する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、加熱ローラに加圧ローラを圧接する定着装置において、加圧ローラの荷重を可変させて記録媒体の皺の発生を防止する技術がある(例えば、特許文献2参照)。具体的には、プリンタ等のトナー定着装置の皺(しわ)発生防止のために、その駆動装置は、カムの回転によって圧縮スプリングを圧縮させ駆動ギアを備えた加圧レバーを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−276720号公報
【特許文献2】特開2007−25571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プロジェクターの回転及びその回転量をギアで制御する場合、製造コストの観点から、メモリー位置検出手段としてセンサー先端にギアを有し、ギアに連動して出力する出力電圧が変化する小型電子メモリーセンサーを用いることがある。この小型電子メモリーセンサーは、センサー先端ギアと相手方のギアの噛み合いが強くなるとメモリー値が変化したり、落下などの衝撃により軸が変形するなど繊細な構造となっている。その結果、高精度のメモリー位置検出を実現することが難しく、対策のための技術が求められていた。
【0006】
特許文献1に開示の技術は、プリンタの紙送り機構に関するもので、側板に設けた減速歯車と紙送り歯車との軸間を保持することができるが、映像装置の回転機構に適用することは難しく別の技術が求められていた。また、特許文献2に開示の技術は、複写機、プリンタ等のトナー定着装置の皺(しわ)発生防止のための駆動装置に関し、カムの回転によって圧縮スプリングを圧縮させ駆動ギアを備えた加圧レバーを移動させることで、所望の目的を達成しているが、この技術についても、映像装置の回転機構に適用することが難しく、別の技術が求められていた。
【0007】
本発明は以上のような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転を検知する回転検出センサーを備え、固定された映像装置を所望の方向に回転させる回転機構であって、前記回転検出センサーを、前記映像装置を回転させるギアプレートの軸が固定されている構造体に取り付けるセンサー取付構造を有し、前記回転検出センサーは、前記センサー取付構造に固定されたときに、前記ギアプレートに噛み合うギアを備え、前記ギアプレートの回転に伴って回転する前記ギアの回転位置に応じた電圧値を出力するポテンショメータであって、前記センサー取付構造は、バネを介して、前記回転検出センサーを固定する。
また、前記センサー取付構造は、前記ギアプレートの軸が固定されている前記構造体に設けられた二つのボスに、前記回転検出センサーに設けられビス穴を有する二つの固定部を、前記ボスと前記固定部の間に前記バネを圧縮状態として、前記回転検出センサーを固定してもよい。
また、前記回転検出センサーは、前記ギアが配置される側と反対側で前記センサー取付構造に固定されてもよい。
本発明の表示システムは、前記回転機構と前記回転機構によって回動可能に固定された投射型の映像装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易的な構造で組立バラツキやギアの回転力や衝撃などによるセンサーのメモリー誤差を防ぐことができる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る、電動回転ユニットが映像機器に取り付けられた状態を示す図である。
【図2】実施形態に係る、電動回転ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る、電動回転ユニットの内部構造を示す平面図である。
【図4】実施形態に係る、メモリーセンサーの内部構造を示す平面図である。
【図5】実施形態に係る、ギアプレートとセンサーギアのギア噛み合い部を示す図である。
【図6】実施形態に係る、センサー取付構造によるメモリーセンサーの取り付け状態を示す図である。
【図7】実施形態に係る、センサー取付構造を模式的に示す図である。
【図8】実施形態に係る、適正姿勢状態でギアプレートとセンサーギアとが噛み合っている状態を示す図である。
【図9】実施形態に係る、偏りがある姿勢状態でギアプレートとセンサーギアとが噛み合っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
本実施形態の概要は、次の通りである。プロジェクター等の映像装置を所望の方向に回転させる回転機構(電動回転ユニット)は、リニアタイプのポテンショメメータの一種である小型電子メモリーセンサーを有する。この小型電子メモリーセンサーの取り付け構造に、バネを介した取り付け構造を採用し、ダンパー機能を持たせることにより、ポテンショメータから伸びるギアと相手方のギア(ギアプレート)を噛み合わせて取り付ける。この構成では、バネの圧縮量や弾性特性を調整することで、バラツキや回転時の負荷を任意の荷重に設定することが可能とする。その結果、メモリー値の検出ズレを少なくすることが出来る。また、落下などの衝撃荷重に対しても任意の荷重以上はセンサーが逃げていくことから、センサーの変形などによる性能不良を防ぐことが出来る。以下、詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電動回転ユニット2が映像機器1に取り付けられた状態を示している。電動回転ユニット2の映像機器1が取り付けられていない側が、所定のアングル等を介して天井に固定される。電動回転ユニット2が水平(左右)に回転することで、映像機器1は左右に向きを自由に向けることができる。
【0014】
図2は、電動回転ユニット2の内部構造を示す斜視図である。図示では、天井に取り付けられる側を露出して示している。また、図3は、電動回転ユニット2の平面図である。なお、本実施形態の特徴は、回転位置の検出技術にあるので、一般的な構成(電源部やモータ、入出力端子等)等の図示や説明については適宜省略する。
【0015】
図示のように、電動回転ユニット2において、映像機器1と同じ回転をするギアプレート3がモータ駆動等によって回転すると、メモリーセンサー4(回転検出センサー)のセンサーギア4aとギアプレート3との噛み合いにより、メモリーセンサー4の出力値をもとに回転後任意の位置に停止させ、かつ、その位置を記憶させることが出来る。
【0016】
図4は、メモリーセンサー4の内部構造図である。図示のように、メモリーセンサー4は、略筒状の筐体20の内部に設けられたネジ(ボールネジ)4cおよび圧着端子4bと、筐体外部にネジ4cの一方の端部に前記ネジ4cを軸として固定するセンサーギア4aと、を有する。センサーギア4aは、メモリーセンサー4がセンサー取付構造10に設置されたときに、ちょうどギアプレート3と噛み合う。そして、ギアプレート3の回転に伴いメモリーセンサー4のセンサーギア4aが回転すると、ネジ4cに螺着している圧着端子4bがネジ4cをスライドすることにより、出力電圧がリニアに変化する。これを細分化し、アドレス数値化することにより、回転位置をメモリーできる構造となっている。
【0017】
なお、メモリーセンサー4は、センサーギア4aが設けられる側と反対側には、検出値(出力値)を取り出すとともに電源電位を供給する入出力用端子部9を備える。さらに、入出力用端子部9を挟むように、電動回転ユニット2の筐体20(又は筐体20と一体に固定されている構造部分)に固定する為に用いる固定金具7が設けられている。本実施形態では、メモリーセンサー4は、後述の取付ボス8に固定される。
【0018】
図5は、ギアプレート3とメモリーセンサー4(センサーギア4a)のギア噛み合い部に着目して示した図である。このときギアプレート3やメモリーセンサー4の製造バラつきにより、噛み合い量が変わることにより、ギアの外れやメモリーセンサー4への当たりが強くなることにより、メモリー値がずれるなどの問題が発生していた。
【0019】
図6がセンサー取付構造10を示す図である。また、図7がセンサー取付構造10の取り付け部の断面形状である。図示のように、センサー取付構造10では、段付きビス5に圧縮バネ6を介して固定金具7が取付ボス8に取り付けられる。また、取付ボス8と一体に形成されているセンサー保持枠15によって、メモリーセンサー4の本体部分のギアプレート3側の位置が規制される。段付きビス5は、ストップ片5bの位置で取付ボス8に取り付けられストップする。段付きビス5の締結強さを調整することによって、段付きビス5のビス頭と固定金具7に挟まれた圧縮バネ6の荷重を任意に設定することができ、その結果、固定金具7を任意の荷重で常に押し付けることができる。また、センサーギア4aと反対側で取付ボス8に取り付けられるので、ダンパー機能の調整幅を十分に確保できる。
【0020】
図8は、適正姿勢状態でギアプレート3とセンサーギア4aとが噛み合っている状態を示す図である。図9は、偏りがある姿勢状態でギアプレート3とセンサーギア4aとが噛み合っている状態を示す図である。なお、メモリーセンサー4の姿勢状態がわかりやすいように、取付ボス8は破線で示している。図8に示す適正姿勢状態では、固定金具7は取付ボス8の上面に全体にわたって平行に接している。一方、図9に示す偏りのある姿勢状態では、固定金具7が図示で左端部が取付ボス8の上面に接するものの、右端部は上に浮いた状態にある。つまり、メモリーセンサー4が図示左側(ギアプレート3側)に傾いた様になっている。その結果、適正姿勢の状態と比較して、圧縮バネ6が圧縮された状態となっている。
【0021】
このとき圧縮バネ6が適正に圧縮することで、ギアプレート3とメモリーセンサー4の噛み合い強さは常に一定荷重に保持される。その結果、ギアプレート3やメモリーセンサー4の取り付けバラツキが発生しても常に一定荷重の噛み合いとなり、ギアプレート3とセンサーギア4aとの噛み合わせの外れやメモリーセンサー4への当たり強さによるメモリー値ズレ、脱調を防ぐことができる。
【0022】
映像機器1、特にプロジェクターでは、遠くへ投射するためメモリー位置の精度が必要であるが、本実施形態のような簡易的な構造で組立バラツキやギアの回転力や衝撃などによるメモリーセンサー4のメモリー誤差を防ぐことができる。
【0023】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0024】
1 映像機器
2 電動回転ユニット
3 ギアプレート
4 メモリーセンサー
4a センサーギア
4b 圧着端子
4c ネジ
5 段付きビス
5b ストップ片
6 圧縮バネ
7 固定金具
8 取付ボス
9 入出力用端子部
10 センサー取付構造
15 センサー保持枠
20 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転を検知する回転検出センサーを備え、固定された映像装置を所望の方向に回転させる回転機構であって、
前記回転検出センサーを、前記映像装置を回転させるギアプレートの軸が固定されている構造体に取り付けるセンサー取付構造を有し、
前記回転検出センサーは、前記センサー取付構造に固定されたときに、前記ギアプレートに噛み合うギアを備え、前記ギアプレートの回転に伴って回転する前記ギアの回転位置に応じた電圧値を出力するポテンショメータであって、
前記センサー取付構造は、バネを介して、前記回転検出センサーを固定する
ことを特徴とする回転機構。
【請求項2】
前記センサー取付構造は、前記ギアプレートの軸が固定されている前記構造体に設けられた二つのボスに、前記回転検出センサーに設けられビス穴を有する二つの固定部を、前記ボスと前記固定部の間に前記バネを圧縮状態として、前記回転検出センサーを固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転機構。
【請求項3】
前記回転検出センサーは、前記ギアが配置される側と反対側で前記センサー取付構造に固定されることを特徴とする請求項2に記載の回転機構。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかの回転機構と、
前記回転機構によって回動可能に固定された投射型の映像装置と、
を備えることを特徴とする表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−105001(P2013−105001A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248416(P2011−248416)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】