説明

映像音声再生システムおよびこれを構成する映像音声同期再生装置

【課題】 再生する映像と音声とが精度よく同期するように、映像信号に対する同期した音声信号への正確な遅延時間を、特別なハードウェアを追加することなく求めて設定することができる映像音声再生システムを提供する。
【解決手段】 映像音声同期再生装置が、音声信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行う遅延同期回路と、等時間間隔で出現する音声信号を含む試験音声信号、および、等時間間隔で出現する音声信号と同一タイミングで出現する映像信号を含む試験映像信号、をそれぞれ出力する試験信号出力回路と、を有する。制御回路が、リモートコントローラーから送信された遠隔送信信号に基づいて、試験音声に対応する第1キー操作時間と、試験映像に対応する第2キー操作時間と、をそれぞれ繰り返し検出し、遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号を映像として再生するモニターと、映像信号に同期した音声信号を音声として再生する映像音声同期再生装置(AVセンター)ならびにスピーカーと、から構成されて、映像と音声とを同期させて再生する映像音声再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映画等の音声信号が同期した映像信号を含むコンテンツを再生する場合に、AVセンター(映像信号、音声信号を再生処理するAVアンプ、AVセレクター、コントローラー、等の機器をいう。)ならびにスピーカーから再生された音声に対し、例えば、液晶ディスプレイを内蔵したモニターで再生された映像が、モニターでの映像変換処理や、映像信号の伝送処理による遅延により遅れることがある。映像音声再生システムの構成によっては、再生音声に対する再生映像の遅延は、約30〜100msecになる場合があり、その結果、視聴者は、映像と音声の再生タイミングが一致しない違和感を覚えるという問題がある。
【0003】
従来には、この問題を解消するために、映像音声同期再生装置で映像信号に同期した音声信号を遅延させる信号処理が行われる。例えば、映像音声再生システムが、同期したMPEG−2ビデオ信号ならびにATSCオーディオ信号を再生するDVDプレーヤーと、DVDプレーヤーからの再生信号が入力されるAVセンターと、AVセンターに接続するモニターと、AVセンターの増幅回路に接続する複数のスピーカーと、から構成される場合には、AVセンターは、いわゆる「リップシンク」もしくは「AV Sync」と呼ばれる、オーディオ信号を遅延させる信号処理を行い、約0〜300msecの範囲で遅延時間を設定できるものがある。また、映像音声再生システムがHDMI(High−Definition Multimedia Interface)や、IEEE1394(i−Link)規格といったネットワークを介して接続される場合には、ネットワークでの伝送時間の遅延が発生する場合があり、これを含めたリップシンク処理が行われる場合がある(特許文献1)。
【0004】
また、従来には、等時間間隔で発光する光源ならびに音源を用いて、発光状況および音声の発生状況を、テレビジョンカメラおよびマイクロホンによりそれぞれ撮像および収音し、映像と音声の時間差検知用のそれぞれ映像信号および音声信号を発生させるように構成して遅延の時間差を求め、再生された映像と音声の同期を実現しようとするものがある(特許文献2)。特に、特許文献2の発明の場合には、等時間間隔で発光する光源や、等時間間隔で音声を発生する音源により、人間が記憶する等時間間隔のテンポ・タイミングを利用するので、精度のよい遅延時間の設定が可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−344898号公報 (第1図)
【特許文献2】特開平10−145645号公報 (第3図)
【0006】
しかしながら、従来の方法では、精度の良い映像と音声の同期を実現するために遅延時間を検出するための特別な構造や装置が必要であった。特許文献2の発明の場合でも、光源からの発光状況と音源からの音声発生状況とを、テレビジョンカメラおよびマイクロホンで撮像および集音することを予定しており、具体的な調整方法としては、実現困難な場合がある。例えば、民生用の映像音声再生システムで、映像信号と音声信号の同期をとるために、カメラやマイクといった特別なハードウェアを追加することは、コスト面で制約がある場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像音声再生システムおよびこれを構成する映像音声同期再生装置に関し、再生する映像と音声とが精度よく同期するように、映像信号に対する同期した音声信号への正確な遅延時間を、特別なハードウェアを追加することなく設定することができる映像音声再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像音声再生システムは、映像信号を映像として再生するモニターと、映像信号ならびに映像信号に同期した音声信号を出力する映像音声同期再生装置と、映像音声同期再生装置から出力された音声信号を音声として再生するスピーカーと、映像音声同期再生装置の制御回路へ操作されたキーに基づく遠隔送信信号を送信するリモートコントローラーと、を備え、映像音声同期再生装置が、音声信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行う遅延同期回路と、等時間間隔で出現する音声信号を含む試験音声信号、および、等時間間隔で出現する音声信号と同一タイミングで出現する映像信号を含む試験映像信号、をそれぞれ出力する試験信号出力回路と、を有し、制御回路が、リモートコントローラーから送信された遠隔送信信号に基づいて、試験音声に対応する第1キー操作時間と、試験映像に対応する第2キー操作時間と、をそれぞれ繰り返し検出し、第1キー操作時間および第2キー操作時間の平均値がそれぞれ一定範囲値内に収まった場合に、平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、遅延時間を遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値に設定する。
【0009】
好ましくは、本発明の映像音声再生システムは、試験信号出力回路が出力する試験音声信号が、等時間間隔で繰り返し出現する予告音信号と、予告音信号に続いて等時間間隔で出現する第1キー操作指示音信号と、を含み、試験信号出力回路が出力する試験映像信号が、予告音信号と同一タイミングで繰り返し出現する予告映像信号と、予告映像信号に続いて等時間間隔で出現する第2キー操作指示映像信号と、を含み、制御回路が、第1キー操作指示音信号が出力されてから最初にリモートコントローラーからの遠隔送信信号を検出するまでの時間を、第1キー操作時間とし、第2キー操作指示映像信号が出力されてから最初にリモートコントローラーからの遠隔送信信号を検出するまでの時間を、第2キー操作時間とする。
【0010】
好ましくは、本発明の映像音声再生システムは、制御回路が、第1キー操作時間および第2キー操作時間をそれぞれ繰り返して算出する場合に、記憶する最近m回の第1キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を平均第1キー操作時間として算出し、記憶する最近n回の第2キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を平均第2キー操作時間として算出し、これらの平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、遅延時間を遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値に設定する。
【0011】
さらに好ましくは、本発明の映像音声再生システムは、試験信号出力回路が、試験音声信号を出力して第1キー操作時間を検出する場合に試験映像信号を停止し、試験映像信号を出力して第2キー操作時間を検出する場合に試験音声信号を停止し、遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値を設定する遅延設定モードを有する。
【0012】
また、本発明の映像音声再生システムは、試験信号出力回路が、試験音声信号および試験映像信号を同時に出力し、設定された遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値により、試験音声信号および試験映像信号が同期しているかを確認する遅延確認モードを有する。
【0013】
また、本発明の映像音声同期再生装置は、映像音声再生システムを構成する遅延同期回路、試験信号出力回路、制御回路、ならびに、増幅回路を含み、リモートコントローラーを備える。
【0014】
以下、本発明の作用について説明する。
【0015】
本発明の映像音声再生システムは、少なくとも、映像信号を映像として再生するモニターと、映像信号ならびに映像信号に同期した音声信号を出力する映像音声同期再生装置と、映像音声同期再生装置から出力された音声信号を音声として再生するスピーカーと、映像音声同期再生装置の制御回路へ操作されたキーに基づく遠隔送信信号を送信するリモートコントローラーと、から構成される。リモートコントローラーは、AVセンターに代表される映像音声同期再生装置に付属する場合が多い遠隔操作装置であり、視聴者は、リモートコントローラーにより、視聴位置から映像音声再生システム全体をも遠隔操作することができる。
【0016】
映像音声同期再生装置は、音声信号の増幅回路の他に、その動作を制御する制御回路と、音声信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行う遅延同期回路と、を含む。なお、映像音声再生システムでは同期する音声に比べて映像が遅延することが多いので、本発明の遅延同期回路においては、音声信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行うとしているが、同期する映像に比べて音声が遅延するような場合には、もちろん、本発明の遅延同期回路は、映像信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行うものを含む。
【0017】
映像音声同期再生装置は、さらに、等時間間隔で出現する音声信号を含む試験音声信号、および、等時間間隔で出現する音声信号と同一タイミングで出現する映像信号を含む試験映像信号、をそれぞれ出力する試験信号出力回路を含む。試験音声信号は、等時間間隔で繰り返し出現する予告音信号と、予告音信号に続いて等時間間隔で出現する第1キー操作指示音信号と、を含み、試験映像信号は、予告音信号と同一タイミングで繰り返し出現する予告映像信号と、予告映像信号に続いて等時間間隔で出現する第2キー操作指示映像信号と、を含む。つまり、映像音声同期再生装置が出力する試験信号は、試験音声信号も試験映像信号も、等時間間隔で繰り返し出現する予告信号と、予告信号に続いて等時間間隔で出現してリモートコントローラーのキーを押し下げて操作するように視聴者に意図させるキー操作指示信号と、を含むものになっており、かつ、試験音声信号と試験映像信号とは、それぞれが同一タイミングで、言い換えると、それぞれが同じテンポで出現するものになっている。
【0018】
視聴者は、本発明の映像音声再生システムを介して等時間間隔で繰り返し出現する予告信号を提示されると、等時間間隔に基づくテンポを記憶する。視聴者が記憶されたテンポにしたがって、予告信号の後に等時間間隔で出現するキー操作指示信号に対応してリモートコントローラーのキーを押し下げて操作すると、視聴者がキー操作指示信号が提示されたと知覚したタイミングで、遠隔送信信号がリモートコントローラーから映像音声同期再生装置の制御回路に送信され、制御回路はこれを検出する。
【0019】
具体的には、試験音声信号の第1キー操作指示音信号にしたがって視聴者がリモートコントローラーを操作すると、遠隔操作信号が映像音声同期再生装置の制御回路に送信され、試験音声に対応する第1キー操作時間が検出される。また、試験映像信号の第2キー操作指示音信号にしたがって視聴者がリモートコントローラーを操作すると、同様に遠隔操作信号が映像音声同期再生装置の制御回路に送信され、試験映像に対応する第2キー操作時間が検出される。制御回路は、第1キー操作指示音信号が出力されてから最初にリモートコントローラーからの遠隔送信信号を検出するまでの時間を、第1キー操作時間とし、第2キー操作指示映像信号が出力されてから最初にリモートコントローラーからの遠隔送信信号を検出するまでの時間を、第2キー操作時間とする。
【0020】
視聴者は、繰り返し提示される試験音声、試験映像でテンポを記憶するので、キー操作指示信号に対応するタイミングで何回かリモートコントローラーのキーを操作していると、キーを操作するテンポが安定する。したがって、制御回路は、第1キー操作時間および第2キー操作時間をそれぞれ繰り返し検出しているうちに、キーを押し下げて操作するテンポが安定して、第1キー操作時間および第2キー操作時間の平均値がそれぞれ一定範囲値内に収まることを検出し、それぞれ平均第1キー操作時間および平均第2キー操作時間を算出する。
【0021】
平均第1キー操作時間および平均第2キー操作時間は、映像音声再生システムの音声再生系の遅延時間と、映像再生系の遅延時間とそれぞれ含んでおり、一方で、遠隔操作信号が制御回路に送信される系における共通の遅延時間を含んでいる。したがって、制御回路は、平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、この遅延時間を遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値に設定することにより、スピーカーによる再生音声に対するモニターでの映像変換等を原因とする映像の遅延を解消し、映像と音声とを同期させることができる。
【0022】
より好ましくは、映像音声同期再生装置の制御回路は、第1キー操作時間および第2キー操作時間をそれぞれ繰り返して算出する場合に、記憶する最近m回の第1キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を平均第1キー操作時間として算出し、記憶する最近n回の第2キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を平均第2キー操作時間として算出する。なお、mおよびnは、それぞれ2以上の整数であり、異なっていても等しくてもよい。視聴者は、繰り返し提示される試験信号でテンポを記憶し、キー操作指示信号に対応するタイミングで何回かリモートコントローラーのキーを押し下げて操作するので、次第にキーを押し下げて操作するテンポは安定してくる。したがって、制御回路は、安定したテンポが反映した平均化された平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間とを利用して、遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値を設定することで、精度の高い映像と音声との同期が実現される。
【0023】
本発明の映像音声再生システムでは、映像音声同期再生装置に付属する場合が多いリモートコントローラーを利用することにより、映像音声同期再生装置の制御回路が、試験信号に対する平均第1キー操作時間および平均第2キー操作時間を検出し、これらの時間差を試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値に設定する。したがって、カメラやマイクといった特別なハードウェアやコストを追加することなく、正確な遅延時間を求めて設定することができる。
【0024】
また、映像音声再生システムは、遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値を設定する遅延設定モードとして、試験信号出力回路が試験音声信号を出力して第1キー操作時間を検出する場合に試験映像信号を停止し、試験映像信号を出力して第2キー操作時間を検出する場合に試験音声信号を停止するモードを有する。一方で、遅延確認モードとして、試験音声信号および試験映像信号を同時に出力し、設定された遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値により、試験音声信号および試験映像信号が同期しているかを確認するモードを有する。
【0025】
すなわち、遅延設定モードでは、等時間間隔で繰り返し出現する試験音声信号、または、試験映像信号のいずれか一方のみを視聴者に提示して、視聴者がリモートコントローラーのキーを押し下げて操作するテンポをそれぞれ安定させることができ、より正確に映像と音声との同期させることができる。また、遅延確認モードでは、等時間間隔で繰り返し出現する試験音声信号、および、これに同期する試験映像信号を同時に視聴者に提示して、映像と音声とが同期しているかを確認することが容易になる。
【発明の効果】
【0026】
映像音声再生システムおよびこれを構成する映像音声同期再生装置は、映像信号に対する同期した音声信号への正確な遅延時間を、特別なハードウェアを追加することなく求めて設定することができ、再生する映像と音声とを精度よく同期させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の映像音声再生システムは、映像信号に対する同期した音声信号への正確な遅延時間を、特別なハードウェアを追加することなく求めて設定するという目的を、映像信号を映像として再生するモニターと、映像信号ならびに映像信号に同期した音声信号を出力する映像音声同期再生装置と、映像音声同期再生装置から出力された音声信号を音声として再生するスピーカーと、映像音声同期再生装置の制御回路へ操作されたキーに基づく遠隔送信信号を送信するリモートコントローラーと、を備え、映像音声同期再生装置が、音声信号を遅延して映像信号と音声信号との同期処理を行う遅延同期回路と、等時間間隔で出現する音声信号を含む試験音声信号、および、等時間間隔で出現する音声信号と同一タイミングで出現する映像信号を含む試験映像信号、をそれぞれ出力する試験信号出力回路と、を有し、制御回路が、リモートコントローラーから送信された遠隔送信信号に基づいて、試験音声に対応する第1キー操作時間と、試験映像に対応する第2キー操作時間と、をそれぞれ繰り返し検出し、第1キー操作時間および第2キー操作時間の平均値がそれぞれ一定範囲値内に収まった場合に、平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、遅延時間を遅延同期回路の音声遅延回路の遅延設定値に設定するようにして、実現した。
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態による映像音声再生システムおよびこれを構成する映像音声同期再生装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の好ましい実施形態による映像音声再生システム100について説明する図である。映像音声再生システム100は、DVDプレーヤー1と、DVDプレーヤー1からの再生信号が入力されるAVセンター2と、AVセンター2に接続するモニター装置3と、AVセンター2の増幅回路に接続する複数のスピーカー41〜45と、AVセンター2を遠隔操作するリモートコントローラー5、から構成される。映像音声再生システム100は、視聴位置10に位置する(図示しない)視聴者に対して、モニター装置3から映像Vを、周囲に配置されたスピーカー41〜45から後述するそれぞれの音声を再生し、DVDプレーヤー1で再生される記録媒体(DVDディスク)に記録された映像音声コンテンツを再生する。リモートコントローラー5は、視聴者が視聴位置10で操作し、AVセンター2に遠隔操作信号を赤外線送信する。
【0030】
ここで、複数のスピーカー41〜45は、視聴位置10からモニター装置3が配置される方向を正面として、正面方向にセンタースピーカー41と、左前方方向に左スピーカー42と、右前方方向に右スピーカー43と、左後方方向に左サラウンドスピーカー44と、右後方方向に右サラウンドスピーカー45と、を含んでおり、いわゆる5チャンネルサラウンド音場を再生する。正面方向のセンタースピーカー41からはセンターチャンネル音声Cが再生され、他のスピーカー42〜45からもそれぞれ左チャンネル音声、右チャンネル音声、左サラウンドチャンネル音声、右サラウンドチャンネル音声が再生される。なお、図1においては、明示しているAVセンター2とセンタースピーカー41との接続線を除いて、AVセンター2と他のスピーカー42〜45との接続線は、図面の簡略のために省略している。また、以下においては、特に説明しない限り、音声再生の説明は、代表的にセンターチャンネル音声Cを再生する場合について行い、他のチャンネル音声の再生は、センターチャンネル音声Cに準じる。
【0031】
DVDプレーヤー1は、記録媒体(DVDディスク)から記録された同期したビデオ信号ならびにオーディオビットストリームを読みだして再生し、AVセンター2の入力端子に、HDMIで多重化されたビデオ信号ならびにオーディオビットストリームを入力する。もちろん、AVセンター2に入力される同期した映像音声コンテンツの再生データは、DVDプレーヤー1で再生されるものに限定されず、他の放送を受信する受信機や、インターネットに接続するデータ通信機器であってもよい。
【0032】
AVセンター2は、AVセンター2の動作を制御するCPU20と、入力されたHDMIで多重化されたビデオ信号ならびにオーディオビットストリームをそれぞれ映像データVdと音声データAdとに分離して出力する分離回路21と、分離回路21の出力を受けて再生する映像Vとセンターチャンネル音声Cとの遅延同期をとる遅延同期回路22と、スピーカー41〜45に接続する複数の増幅器23(図1に図示するのはセンターチャンネル音声C用のみ。)と、試験音声信号および試験映像信号をそれぞれ出力する試験信号出力回路24と、リモートコントローラー5からの遠隔操作信号を受信する遠隔操作信号受信回路25と、を含む。
【0033】
リモートコントローラー5は、制御手段としてのマイコン50(図示せず)と、赤外線による遠隔操作信号の送信手段としての送信窓51と、操作キー群52と、メモリ53(図示せず)とを備え、これらが相互に接続されている。メモリ53は、好ましくはROM等の記憶手段であり、マイコン50が実行するプログラムが格納される。操作キー群52のキーは、(図示しない)タクトスイッチにより構成され、いずれかのキー52を押し下げて操作すると、マイコン50は、操作されたキー52に対応する遠隔操作信号を送信窓51から送信する。
【0034】
AVセンター2のCPU20による制御によって、遅延同期回路22はモニター装置3にHDMIで映像データVdを出力し、その結果、モニター装置3からは映像Vが再生される。また、遅延同期回路22は、音声データAdを5チャンネルの音声信号にデコードし、増幅器23を介してセンターチャンネル音声信号Csをセンタースピーカー41に出力し、センタースピーカー41からはセンターチャンネル音声Cが再生される。
【0035】
モニター装置3は、モニター装置3の動作を制御するCPU30と、映像データVdが入力される映像変換回路31と、映像変換回路31の出力が入力されて映像Vを再生する液晶ディスプレイ32と、を含む。映像変換回路31では、映像データVdを液晶ディスプレイ32が表示可能な映像信号に変換するのに長い時間を要する場合がある。例えば、映像データVdがビデオ信号で、液晶ディスプレイ32が1フレームあたり525本を走査するD1規格(525i)の場合には、約30〜100msecの時間を要する場合がある。
【0036】
センタースピーカー41は、視聴位置10からモニター装置3が配置される正面方向に、モニター装置3の近傍に、つまり、視聴位置10から距離Yをとって設置される。具体的には、距離Yは約1m〜6m程度が一般的なため、センタースピーカー41で再生されるセンターチャンネル音声Cは、約1〜18msecの伝達時間を伴って視聴位置10に到達する。
【0037】
また、モニター装置3の液晶ディスプレイ32は、視聴位置10から距離Xの正面方向に配置される。具体的には、映像音声再生システム100を一般家庭で使用する場合では、距離Xもほぼ距離Yに等しく、約1m〜6m程度が一般的である。視聴位置10では、距離Xを光が伝達する時間は無視できるほど短いので、映像Vに関する距離Xは、映像Vと音センターチャンネル声Cとの同期再生にほぼ関係しない。一方、前述のモニター装置3の映像変換回路31における映像変換に伴う処理時間(約30〜100msec)は、上述のセンターチャンネル音声Cの伝達時間に比較しても、映像Vと音声Cとの同期再生に最も影響が大きい。したがって、AVセンター2の遅延同期回路22は、視聴位置10における映像と音声との同期再生を実現するため、映像よりも早く再生されてしまう音声信号を遅延させる処理を行う。
【0038】
図2は、AVセンター2の遅延同期回路22の周辺の構成を説明する図である。遅延同期回路22は、分離回路21からの音声データAdが入力される音声遅延回路26と、スイッチ回路28と、を含む。遅延同期回路22は、CPU20によって動作が制御され、具体的にはDSP(Digital Signal Processor)、メモリを有する遅延ディレイ回路、デジタル/アナログ変換回路、オペアンプ、等により構成される。
【0039】
音声遅延回路26は、音声データAdを受けてこれを5チャンネルのサラウンド信号データC0、L0、R0、LS0およびRS0にデコードするデコード回路26aと、サラウンド信号データをそれぞれ遅延させる遅延回路26bと、遅延回路26bから遅延されたサラウンド信号データをそれぞれアナログ信号の5チャンネルのサラウンド信号Cs、Ls、Rs、LSsおよびRSsに変換するデジタル/アナログ変換器26cと、を含む。デジタル/アナログ変換器26cから出力された5チャンネルのサラウンド信号Cs、Ls、Rs、LSsおよびRSsは、それぞれAVセンター2の複数の増幅器23へ入力される。
【0040】
また、遠隔操作信号受信回路25と、試験信号出力回路24と、は遅延同期回路22と、CPU20とに接続する。遠隔操作信号受信回路25および試験信号出力回路24は、その一部が音声遅延回路26を構成するDSPと共通化されていて、デジタル/アナログ変換回路、オペアンプ、等により構成される。なお、図2では、CPU20は省略されている。
【0041】
遠隔操作信号受信回路25は、リモートコントローラー5からの赤外線遠隔操作信号を受信する受信窓25aと、受信窓25aからの出力信号が入力される遠隔操作信号検出回路25bと、を含む。遠隔操作信号検出回路25bは、検出した赤外線遠隔操作信号を判別して遠隔操作信号に変換し、検出結果は、CPU20と、遅延同期回路22とに通知される。
【0042】
試験信号出力回路24は、等時間間隔で出現する試験音声信号Tasを再生する符号化された試験音声信号データTadを出力する試験音声信号出力回路24bと、等時間間隔で出現する試験音声信号Tasと同一タイミングで出現する試験映像信号Tvsを再生する符号化された試験映像信号データTvdを出力する試験映像信号出力回路24aと、を含んでいる。試験映像信号データTvdおよび試験音声信号データTadは、CPU20からの制御命令により試験信号出力回路24から出力され、後述するスイッチ回路28に入力される。試験音声信号Tasおよび試験映像信号Tvs、ならびに、これらにより再生されて視聴者が知覚する試験音声および試験映像については、後述する。
【0043】
スイッチ回路28は、CPU20からの制御命令により、遅延同期回路22からモニター装置3およびスピーカー41〜45へ、DVDプレーヤー1から入力された映像データVdと音声データAdを出力するか、試験信号出力回路24から出力された試験映像信号データTvdおよび試験音声信号データTadを出力するか、を切り換える。ここで、スイッチ回路28は、試験映像信号と試験音声信号とに対応する少なくとも2つのスイッチ28aおよび28bの組であり、遅延同期回路22の音声遅延回路26の音声遅延設定値を調整する場合には、CPU20は、スイッチ回路28aに切り換える命令を出し、モニター装置3の映像変換回路31に試験映像信号データTvdを出力する。また、CPU20は、スイッチ回路28bに切り換える命令を出し、音声遅延回路26の遅延回路24bに試験音声信号データTadを出力する。スイッチ回路28bは、例えば、図示したように音声遅延回路26の内部に設定しても良く、試験音声信号データTadが、音声データC0に切り換えられてセンタースピーカー41へ出力される。もちろん、他のスピーカー42〜45に対応するサラウンド音声チャンネルの音声遅延回路26の音声遅延設定値を調整する場合には、それぞれのサラウンド音声チャンネルに設けられるスイッチ回路28bが動作して、試験音声信号データTadがそれぞれのスピーカーへ出力される。
【0044】
図3は、試験信号出力回路24の試験音声信号出力回路24bと、試験映像信号出力回路24aとから出力される試験音声信号データTad1および試験映像信号データTvd1の構造を示す図である。また、図4は、試験音声信号Tasおよび試験映像信号Tvs、ならびに、これらにより再生されて視聴者が知覚する試験音声Aおよび試験映像Vについて説明する図である。図3および図4は、横軸方向を時間としており、AVセンター2のCPU20が遅延同期回路22の音声遅延回路26の音声遅延設定値Tx1〜Tx5を設定する動作、つまり、「AV Sync」の遅延設定モードを説明する。
【0045】
まず、図4(a)を参照して、センタースピーカー41から再生される試験音声A1を説明する。試験音声A1は、等時間間隔tcをおいて繰り返し出現する予告音(例えば、周波数1kHzの純音、継続時間0.5秒の短音を、2.0秒間隔で3回。)と、この予告音に続いて等時間間隔で出現する第1キー操作指示音(例えば、周波数500Hzの純音、継続時間1.5秒の長音。)と、第1キー操作指示音の後に無音の休止期間(例えば、2.5秒)と、を含み、これを1周期ta(10秒)として繰り返す試験音声信号Tas1により再生される。この試験音声信号Tas1を再生するための試験音声信号データTad1は、図3の上段側に記載するとおり、予告音信号に対応する短音データ(301、303、304)と、無音データ(302、306)と、長音データ(305)から構成される。したがって、CPU20が、試験音声信号データTad1を出力するように命令すると、試験信号出力回路24は、時間t00に最初の予告音信号のデータを出力し、時間t0に長音データ(つまり、第1キー操作指示音信号)を出力する。
【0046】
一方、図4(b)を参照して、モニター3から再生される試験映像V1を説明する。試験映像V1は、等時間間隔tcをおいて繰り返し出現する予告映像(例えば、最初は数字「3」、次に数字「2」、最後に数字「1」を表示する映像を、それぞれ継続時間0.5秒で、2.0秒間隔。)と、この予告映像に続いて等時間間隔で出現する第2キー操作指示映像(例えば、文字「★キーを押してください!」を含む、継続時間1.5秒の映像。)と、第2キー操作指示映像の後に黒色映像の休止期間(例えば、2.5秒)と、を含み、これを1周期ta(10秒)として繰り返す試験映像信号Tvs1により再生される。この試験映像信号Tvs1を再生するための試験映像信号データTvd1は、図3の下段側に記載するとおり、予告映像信号に対応する数字の映像データ(311、313、314)と、黒色データ(312、316)と、映像データ(305)から構成される。したがって、CPU20が、試験映像信号データTvd1を出力するように命令すると、試験信号出力回路24は、時間t00に最初の予告映像信号のデータを出力し、時間t0に第2キー操作指示映像のデータ(つまり、第2キー操作指示音信号)を出力する。
【0047】
CPU20が、試験信号出力回路24に制御コマンドを与えると、試験信号出力回路24は、試験音声信号データTadおよび試験映像信号データTvdを、それぞれ単独に、もしくは、これら両方が同期するように同時に出力する。遅延同期回路22の遅延設定値を設定する遅延設定モードでは、試験信号出力回路24が試験音声信号Tas1を出力する場合には、試験映像信号Tvs0を停止するか、図4(a)に示すように文字「長音に合わせて★キーを押してください!」という指示を視聴者へ伝える試験映像V0を出力するような試験映像データTvd0を、試験映像信号出力回路24aから出力する。あるいは、試験信号出力回路24が試験映像信号Tvs1を出力する場合には、試験音声信号Tas0を停止するか、図4(b)に示すようにセンタースピーカー41から試験音声A0が再生されない(つまり、無音となる)ような試験音声データTad0を、試験音声信号出力回路24bから出力する。
【0048】
遅延設定モードにおいて、最初に視聴者は、センタースピーカー41を通じて、図4(a)に示すような試験音声A1を提示される。試験音声A1は、休止期間を挟んで繰り返し再生されるので、等時間間隔tcで3回繰り返し出現する短音と、それに続く長音を提示されると、視聴者は、等時間間隔tcに基づくテンポを記憶する。一方、視聴者には、試験映像V0により文字「長音に合わせて★キーを押してください!」という指示が伝えられるので、リモートコントローラー5を視聴位置10で保持する視聴者は、記憶したテンポに基づいて長音が再生されたと知覚したタイミングで、そのキー52を押し下げて操作することができる。キー52が押し下げられると、リモートコントローラー5のマイコン50は、操作されたキー52に対応する遠隔操作信号を送信窓51から送信するので、AVセンター2のCPU20は、長音が再生されたタイミングに対応する第1キー操作時間t1を検出する。前述の通り、音声系の再生には距離Yを原因とする遅延が伴うので、第1キー操作時間t1は、長音データを再生する時間t0よりも遅延した時間として検出される。
【0049】
次に視聴者は、モニター装置3の液晶ディスプレイ32を通じて、図4(b)に示すような試験映像V1を提示される。試験映像V1も、休止期間を挟んで繰り返し再生されるので、等時間間隔tcで文字「3」から「1」までカウントダウンする映像と、それに続く文字「★キーを押してください!」を含む映像を提示されると、視聴者は、等時間間隔tcに基づくテンポを記憶する。一方、視聴者には、「★キーを押してください!」という指示が伝えられるので、リモートコントローラー5を視聴位置10で保持する視聴者は、記憶したテンポに基づいて「★キーを押してください!」という映像が再生されたと知覚したタイミングで、そのキー52を押し下げて操作することができる。キー52が押し下げられると、リモートコントローラー5のマイコン50は、操作されたキー52に対応する遠隔操作信号を送信窓51から送信するので、AVセンター2のCPU20は、長音が再生されたタイミングに対応する第2キー操作時間t2を検出する。前述の通り、映像系の再生においては、モニター装置3の映像変換回路31における映像変換に伴う処理時間を原因とする遅延が伴うので、第2キー操作時間t2は、文字「★キーを押してください!」を含む映像データを再生する時間t0よりも、かつ、前述の第1キー操作時間t1よりも、遅延した時間として検出される。
【0050】
遅延設定モードにおいては、試験音声A1、または、試験映像V1のいずれか一方のみを視聴者に提示するので、視聴者が記憶するテンポは、試験音声A1のみ、または、試験映像V1のみに影響されて、それぞれ安定する。これらの視聴者が記憶する等時間間隔tcのテンポ・タイミングを利用することにより、CPU20が検出する第1キー操作時間t1は、試験音声の長音を実際に視聴者が知覚するタイミングを正確に反映したものになり、また、CPU20が検出する第2キー操作時間t2は、試験映像の文字「★キーを押してください!」を含む指示を実際に視聴者が知覚するタイミングを正確に反映したものになる。したがって、CPU20が算出する第1キー操作時間t1と第2キー操作時間t2との時間差tdは、映像と音声との同期を実現するために、遅延同期回路22の音声遅延回路26において設定されるべき遅延時間を意味することになる。
【0051】
つまり、AVセンター2の遅延同期回路22の音声遅延回路26において設定する音声遅延設定値Tx1を、CPU20が算出する第1キー操作時間t1と第2キー操作時間t2との時間差tdに等価な値とすることで、映像音声再生システム100では、精度の高い映像Vとセンターチャンネル音声Cとの同期が実現される。なお、リモートコントローラー5から送信される遠隔操作信号がCPU20に送信される場合に、遠隔操作信号受信回路25を含む系における遅延時間は、第1キー操作時間t1と第2キー操作時間t2に共通に反映しているので、時間差tdを算出する時点で相殺されている。
【0052】
遅延設定モードにおいては、試験音声A1、または、試験映像V1は、繰り返して視聴者に提示されるので、繰り返し提示されることで視聴者は、等時間間隔tcのテンポ・タイミングをつかみやすくなる。したがって、第1キー操作時間t1と第2キー操作時間t2を、それぞれ複数回検出した値を平均化して、より正確な「実際に視聴者が知覚したタイミング」として検出結果に反映させる。例えば、CPU20は、第1キー操作時間t1および第2キー操作時間t2をそれぞれ繰り返して検出して、最近m回のt1の値と、最近n回のt2の値とを記憶した数列t1(m)と数列t2(n)を算出する。なお、mおよびnは、それぞれ2以上の整数であり、異なっていても等しくてもよい。
【0053】
数列t1(m)における最大値と最小値との差δtが、予め設定する閾値Δt内に収まった場合には、数列t1(m)の平均値を平均第1キー操作時間t1として算出する。一方、数列t1(m)における最大値と最小値との差δtが、予め設定する閾値Δt内に収まらなかった場合には、最も過去の値を数列t1(m)から破棄し、新たに検出した値を数列t1(m)に加える。そして、数列t1(m)における最大値と最小値との差δtが、予め設定する閾値Δt内に収まるかどうかを検討する処理を繰り返し、閾値Δt内に収まると終了する。第2キー操作時間t2に関する数列t2(n)についても、同様の平均処理を行い、平均化された第2キー操作時間t2を算出する。したがって、CPU20は、安定したテンポが反映した平均化された第1キー操作時間t1と第2キー操作時間t2とを利用して、遅延同期回路22の音声遅延回路26の遅延設定値Tx1を設定することができて、精度の高い映像Vとセンターチャンネル音声Cとの同期が実現される。
【0054】
例えば、m=n=4とすると、遅延設定モードにおいて、試験音声A1および試験映像V1は、少なくとも4回以上繰り返して視聴者に提示され、CPU20は、1行4列の数列t1(m)と数列t2(n)とを算出する。予め設定する閾値Δtを0.1秒とすると、試験音声A1が視聴者に提示された当初は、視聴者はテンポをつかめていなくて数列t1(m)における最大値と最小値との差δtが閾値Δtを超える値(例えば0.5秒)になっていたとしても、5〜8回目ぐらいからは安定してキーを押し下げられるようになるので、数列t1(m)における最大値と最小値との差δtが次第に閾値Δt内に収まるようになる。そこで、試験音声A1の提示を終了し、数列t1(m)を平均化した平均第1キー操作時間t1を算出する。なお、数列t2(n)およびこれを平均化した平均第2キー操作時間t2を算出するについての処理も、基本的に同じであるので、説明は省略する。
【0055】
映像Vとセンターチャンネル音声Cとが同期しているかどうかを確認する遅延確認モードでは、映像音声再生システム100は、試験信号出力回路24が、試験音声信号Tas1および試験映像信号Tvs1を同期した状態で同時に出力するので、試験音声A1および試験映像V1が同時に視聴者に提示される。遅延同期回路22の音声遅延回路26が、適切な遅延設定値Tx1を設定されていれば、試験音声の短音と試験映像の数字のカウントダウンが同時に提示され、また、試験音声の長音と「★キーを押してください!」を含む指示とが同時に提示されることになる。したがって、視聴者は、映像音声再生システム100が再生する映像と音声とが同期しているかを、容易に確認することができる。もちろん、この遅延確認モードにおいて、「★キーを押してください!」という映像にあわせて視聴者がリモートコントローラー5のキー52を押し下げて操作する場合には、この操作で検出したタイミングを用いて、遅延設定モードと同様に、遅延同期回路22の音声遅延回路26の遅延設定値を新たに設定してもよい。
【0056】
なお、センターチャンネル音声C以外の他の音声チャンネルについては、遅延同期回路22の音声遅延回路26において設定する音声遅延設定値Tx2〜Tx5をそれぞれ求める。遅延設定モードにおいて、CPU20は、試験音声A1をそれぞれ他のスピーカー42〜45を通じて繰り返して視聴者に提示し、左チャンネル音声、右チャンネル音声、左サラウンドチャンネル音声、右サラウンドチャンネル音声のそれぞれについて、平均第1キー操作時間t1を算出する。また、一度でも試験映像V1が視聴者に提示されて平均第2キー操作時間t2が算出されている場合には、あらためて試験映像V1を視聴者に提示する必要はなく、それぞれの他の音声チャンネルについて、それぞれ求めた平均第1キー操作時間t1と平均第2キー操作時間t2との時間差に基づいて遅延同期回路22の音声遅延回路26の遅延設定値Tx2〜Tx5を設定すればよい。もちろん、マルチチャンネルサラウンド音声が、本実施例の5チャンネルよりも多いチャンネル数を有する場合であっても、それぞれに正確な音声遅延時間を設定すればよい。
【0057】
上記実施例では、DVDプレーヤー1と、AVセンター2と、モニター装置3との信号伝送方式がHDMIの場合を説明したが、他にも、有線や無線の接続に限らず、IEEE1394等の伝送方式であってもよい。また、試験信号出力回路24は、AVセンター2に含まれる場合に限られず、DVDプレーヤー1に代わって接続される試験信号ジェネレーターのような機器であってもよく、また、DVDプレーヤー1で再生するテストディスクが、前述した試験音声A1および試験映像V1を視聴者に提示する試験音声信号Tas1および試験映像信号Tvs1を再生、出力するものであればよい。
【0058】
また、試験音声信号および試験映像信号が提示するテンポ(等時間間隔tc)が、速過ぎるとテンポがつかみにくくキー操作時間の検出精度が悪くなる問題があり、また、遅過ぎると試験信号の1周期taが長くなりすぎる問題がある。試験信号の等時間間隔tcと、試験信号の1周期taは、好ましくは、視聴者の好みで数段階の長さを選択できるように予め用意しておくのがよい。また、予告信号ならびにキー操作指示信号を、視聴者に提示する時間が長くなれば、視聴者がキーを押し下げて操作するタイミングが安定しなくなることがあるので、予告信号ならびにキー操作指示信号の継続時間は、好ましくは約1秒以下がよい。もちろん、試験音声信号の予告音と第1キー操作指示音、そして、試験映像信号の予告映像と第2キー操作指示映像は、上記実施例に記載のものに限定されず、視聴者がテンポを記憶しやすい他の試験音声および試験映像であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の伝送信号処理装置は、増幅器を内蔵するマルチチャンネル音声再生用のAVセンターのみならず、増幅器を備えないコントロールアンプ等にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の好ましい実施形態による映像音声再生システムについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明のAVセンターの遅延同期回路の周辺の構成を説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の試験信号出力回路24から出力される試験音声信号データTad1および試験映像信号データTvd1の構造を示す図である。(実施例1)
【図4】本発明の試験音声信号Tasおよび試験映像信号Tvs、ならびに、視聴者が知覚する試験音声Aおよび試験映像Vについて説明する図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0061】
1 DVDプレーヤー
2 AVセンター
20 CPU
21 分離回路
22 遅延同期回路
23 増幅器
24 試験信号出力回路
25 遠隔操作信号受信回路
26 音声遅延回路
28 スイッチ回路
3 モニター装置
30 CPU
31 映像変換回路
32 液晶ディスプレイ
41 センタースピーカー
42 左スピーカー
43 右スピーカー
44 サラウンド左スピーカー
45 サラウンド右スピーカー
5 リモートコントローラー
51 送信窓
52 キー
100 映像音声再生システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を映像として再生するモニターと、該映像信号ならびに該映像信号に同期した音声信号を出力する映像音声同期再生装置と、該映像音声同期再生装置から出力された音声信号を音声として再生するスピーカーと、該映像音声同期再生装置の制御回路へ操作されたキーに基づく遠隔送信信号を送信するリモートコントローラーと、を備え、
該映像音声同期再生装置が、該音声信号を遅延して該映像信号と該音声信号との同期処理を行う遅延同期回路と、等時間間隔で出現する音声信号を含む試験音声信号、および、該等時間間隔で出現する該音声信号と同一タイミングで出現する映像信号を含む試験映像信号、をそれぞれ出力する試験信号出力回路と、を有し、
該制御回路が、該リモートコントローラーから送信された該遠隔送信信号に基づいて、該試験音声に対応する第1キー操作時間と、該試験映像に対応する第2キー操作時間と、をそれぞれ繰り返し検出し、該第1キー操作時間および該第2キー操作時間の平均値がそれぞれ一定範囲値内に収まった場合に、平均第1キー操作時間と平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、該遅延時間を該遅延同期回路の該音声遅延回路の遅延設定値に設定する、映像音声再生システム。
【請求項2】
前記試験信号出力回路が出力する前記試験音声信号が、等時間間隔で繰り返し出現する予告音信号と、該予告音信号に続いて該等時間間隔で出現する第1キー操作指示音信号と、を含み、
前記試験信号出力回路が出力する前記試験映像信号が、該予告音信号と同一タイミングで繰り返し出現する予告映像信号と、該予告映像信号に続いて該等時間間隔で出現する第2キー操作指示映像信号と、を含み、
前記制御回路が、該第1キー操作指示音信号が出力されてから最初に前記リモートコントローラーからの前記遠隔送信信号を検出するまでの時間を、前記第1キー操作時間とし、該第2キー操作指示映像信号が出力されてから最初に該リモートコントローラーからの該遠隔送信信号を検出するまでの時間を、前記第2キー操作時間とする、
請求項1に記載の映像音声再生システム。
【請求項3】
前記制御回路が、前記第1キー操作時間および前記第2キー操作時間をそれぞれ繰り返して算出する場合に、記憶する最近m回の該第1キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を前記平均第1キー操作時間として算出し、記憶する最近n回の該第2キー操作時間が一定範囲値内に収まった場合にそれらの平均値を前記平均第2キー操作時間として算出し、これらの該平均第1キー操作時間と該平均第2キー操作時間との時間差を、試験音声に対応する試験映像の遅延時間として算出し、該遅延時間を該遅延同期回路の該音声遅延回路の遅延設定値に設定する、
請求項1または2に記載の映像音声再生システム。
【請求項4】
前記試験信号出力回路が、前記試験音声信号を出力して前記第1キー操作時間を検出する場合に前記試験映像信号を停止し、該試験映像信号を出力して前記第2キー操作時間を検出する場合に該試験音声信号を停止し、前記遅延同期回路の前記音声遅延回路の前記遅延設定値を設定する遅延設定モードを有する、
請求項1から3のいずれかに記載の映像音声再生システム。
【請求項5】
前記試験信号出力回路が、前記試験音声信号および前記試験映像信号を同時に出力し、設定された前記遅延同期回路の前記音声遅延回路の前記遅延設定値により、該試験音声信号および該試験映像信号が同期しているかを確認する遅延確認モードを有する、
請求項1から4のいずれかに記載の映像音声再生システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の映像音声再生システムを構成する前記遅延同期回路、前記試験信号出力回路、前記制御回路、ならびに、増幅回路を含み、前記リモートコントローラーを備える、映像音声同期再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−66931(P2008−66931A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241188(P2006−241188)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】