説明

時計ケースの中間部にクリスタルを固定する方法

【課題】超音波溶接によって生じる問題を解消し、プラスチック製時計クリスタルを、プラスチック製の時計中間部に固定する新たな方法を見つける。
【解決手段】 時計クリスタル(4)を、該クリスタル(4)と共に時計ケース(1)を画定する、同じくプラスチック製の中間部(2)に、固定する方法であり、上記時計クリスタル(4)は、ユーザ側に面する上面(6)と、該上面(6)と対向する下面(8)とを含み、デジタル表示装置(12)を、クリスタルの下面(8)に接合する方法であって、クリスタル(4)とデジタル表示装置(12)とによって形成する組立体を、レーザビームによって中間部(2)に溶接することから成ることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ケースの中間部にクリスタルを固定する方法に関する。特に、本発明は、ユーザ側に面する上面と、該上面と対向する下面とを含み、デジタル表示装置をクリスタルの下面に接合する、時計クリスタルを固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料等の有機材料製クリスタルを、同じくプラスチック製の時計ケースの中間部に固定する第1の解決方法は、接合技術を使用することである。接合技術は、機械的応力又は熱的制約(thermal constraint)を発生しない。しかしながら、接合技術は、他の問題を起こす。接合技術は、必ずしも良好な密閉を保証せず、時間が立つにつれて、摩耗の問題が生じる。その上、部品を接合した後に、通常24時間かかる重合時間観察しなければならない。その結果、生産フローに中断が生じ、そのため経済的観点から支障を来たす。
【0003】
従って、プラスチック材料製時計クリスタルの場合、この種のクリスタルを、同じくプラスチック製の時計中間部に溶接するには、超音波技術を使用するのが望ましい。確かに、超音波溶接技術により、クリスタルを、完全に密閉し、長持ちする方法で、時計中間部に固着できる。
【0004】
しかしながら、超音波溶接技術が適切でない場合がある。これは、特に、液晶表示装置をクリスタルの下面に接合する場合のように、要素が機械的応力や熱応力に影響を受け易い場合に、特に言える。本出願人は、クリスタルの下面に接合した液晶セルと時計クリスタルとを超音波溶接することで、液晶セルの容積に亘り、スペーサが凝集するという問題を起こし、セルの表示領域での黒点の出現(当然ながら許容できない)を伴うことに、気付いた。本出願人の意見では、こうしたセル容積におけるスペーサ凝集問題は、機械的振動によるもの、及び超音波溶接によって生じる昇温によるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本出願人の目的は、前述した問題を解消して、プラスチック製時計クリスタルを、同じくプラスチック製の時計中間部に固定する新たな方法を見つけることであった。
【0006】
そのため、本発明は、プラスチック材料製時計クリスタルを、該クリスタルと共に時計ケースを画定する、同じくプラスチック製の中間部に、固着する方法であり、上記時計クリスタルは、ユーザ側に面する上面と、該上面と対向する下面とを含み、デジタル表示装置を、クリスタルの下面に接合する方法であって、クリスタルを、レーザビームによって中間部に溶接することから成ることを特徴とする方法に関する。
【0007】
これらの特徴により、本発明は、完全に密閉し、長持ちする方法で、プラスチック製時計中間部にプラスチック製クリスタルを固定する方法であって、クリスタルは、クリスタルの下面に接合するデジタル表示装置を含むという特定の特徴を有する方法を、提供する。実際に、驚いたことに、本出願人は、この種のクリスタルをレーザ溶接することで、デジタル表示装置の機械的特性や光学的特性に全く影響を与えなかったことを観察した。特に、レーザ溶接法は、レーザ溶接に伴う高温にもかかわらず、超音波溶接法で観察されたスペーサ凝集の問題を回避できる。その上、レーザ溶接法により、クリスタルを、時計の中間部に即座に組付け可能になる。従って、例えば、接着剤が重合化する間、本発明による時計の組立てステップを続行するために、待つ必要がなくなる。これにより、大幅に時間を節約でき、とりわけ、製造方法を中断することなく、作業フローを続行可能になる。その上、以下の記述を読めば明らかになるように、ベゼルをレーザ溶接することで、特に、2つのフレキシブルコネクタによって加わる永久的な対抗力に対する、優れた抵抗を提供する頑丈な組立体を提供できる。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点については、本発明による方法の実行に関する以下の詳細な記述から一層明確になるが、この実施例は、非限定的に説明するためにのみ、添付図を参照して、挙げるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明による時計ケースの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、プラスチック製時計クリスタルを、時計ケースのプラスチック製中間部に固定する方法を提供する一般的な創意から生まれたものである。時計クリスタルの特有な特徴は、液晶セル等のデジタル表示装置を、光学用透明接着剤(Optical Clear Adhesive)、又はOCAという名称で知られる光学用接着剤を用いて、クリスタルの下面に固着すること、及び所望される固定方法により、クリスタルを、液晶表示装置の機械的及び光学的特性に影響を与えることなく、完全に密閉し、長持ちする方法で、時計の中間部に組付け可能にする必要があることである。本出願人は、この種の組立体を超音波溶接することで、スペーサが表示セルの容積において凝集し、表示ゾーンに黒点が出現した(当然ながら許容できない)ことを観察した。本出願人の意見では、この現象は、超音波溶接で発生した機械的応力及び熱応力によるものである。そのため、本出願人は、鋭意努力を続け、驚くべきことに、熱的制約にかかわらず、レーザ溶接は、決してクリスタルの表面下に接合した液晶表示セルの機械的品質や光学的特性に影響しないことを発見した。
【0011】
本特許出願に添付した図1は、本発明による時計ケースの部分断面図である。全体として、全般的な参照番号1で指す、この時計ケースを、中間部2で画定しており、該中間部2を、最上部でクリスタル4によって密閉している。中間部2及び時計クリスタル4を、レーザ溶接可能な材料製とする。単に非限定的な実施例として、クリスタル4を、ポリメタクリル酸メチル又はPMMA製とする一方で、中間部2を、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂又はABS製とする。
【0012】
時計クリスタル4は、2つの表面、即ち、時計ユーザ側に面する上面6と、時計ケース1側に面する下面8とを有する。クリスタル4は、中間部2の肩部10に当接する。
【0013】
デジタル表示装置を、クリスタル4の下面8に固定する。単に、非限定的な実施例として、このデジタル表示装置を、液晶表示セル12としてもよく、該液晶表示セル12は、平行に、互いに離間して延在し、スペーサを分散させた液晶を含む密閉容積を画定する密閉フレーム(図面では視認できない)によって互いに接合させた前面基板14と後面基板16とを備える。前面14と後面16の2基板を、第1偏光板18と第2偏光板20との間に、交差偏光方向に配設する。2基板14及び16と2偏光板18及び20によって形成した組立体を、光学接着剤22のフィルムによって、時計クリスタル4の下面8に接合する。
【0014】
図面をよく見ると、前面基板14の大きさが、後面基板16より大きいのが分かる。これにより接触面24を形成して、表示セル12の制御電極を該セル12に関する電子制御部品(図示せず)に電気的に接続するために、該接触面24に導電路26を開口させる。これらの電子制御部品を、時計ケース1内部に、表示セル12の下で該セルから離間して、配設したプリント基板28上に実装する。液晶表示セル12の制御電極を電気的に接続するための導電路26を、略垂直に延在するエラストメトリックコネクタ32によってプリント基板28の表面に構築した対応する導電路30に接続する。ゼブラコネクタの商品名でも知られるエラストメトリックコネクタを、エラストマ絶縁シートで互いに離隔した複数の導電性シートから成るフレキシブルコネクタとする。組立体を、光導体34によって完成しており、光導体34を、プリント基板28に当接させ、液晶表示セル12を背面照明するのに使用する。光導体34は、ゼブラコネクタ32をガイドし、垂直方向に保持するスロット36を含むことに注意されたい。ゼブラコネクタ32をガイドし保持する際に、ゼブラコネクタ32を、横方向に移動させずに、垂直方向に加圧でき、それにより確実に、液晶表示セル12の導電路26と、プリント基板28によって担持する対応するコネクタとの間で、完全にアライメントできる。
【0015】
既に上述したように、クリスタル4は、中間部2の肩部10に当接する。本発明によると、クリスタル4を、レーザ溶接によって、中間部2に固定する。レーザ溶接のために、環状カラー38を、中間部2の内周部に設ける。この環状カラー38を、クリスタル4が中間部2に当接する場所に設ける。このカラー38は、レーザ溶接処理中に溶けて、クリスタル4を中間部2に密閉した状態で永久的に固着する熱可塑性材料の付加体となる。本発明の方法の変形例によると、レーザ溶接中に溶けるホットメルト材料製カラーを、クリスタル4の外周縁の下に配置してもよい。しかしながら、この変形例は、カラーをクリスタル4の表面下に配置することが、セル12とクリスタル4との間に配設する光学接着剤22のフィルムに捕捉される可能性がある気泡を除去するための、液晶セル12を接合し、押圧する作業に不便なため、好ましくない。
【0016】
本発明によると、プリント基板28に対する肩部10の高さを、クリスタル4を中間部2にレーザ溶接する際に、ゼブラコネクタ32を加圧する高さにする。ゼブラコネクタ32の被加圧部分を、図中点線で示している。この特定の事例から、本発明の全ての利点は明らかである。第一に、液晶セル12をクリスタル4の下面8に接合するので、クリスタル4を中間部2にレーザ溶接しても、セル12を損傷する危険性を回避できる。第二に、ゼブラコネクタ32を、液晶表示セル12とプリント基板28との間に加圧して配設するならば、ゼブラコネクタ32は、その初期形状に戻ろうとする傾向があり、中間部2からクリスタル4を離す傾向がある応力をクリスタル4に加える。その結果、クリスタル4と中間部2との間をレーザ溶接しない場合は、該クリスタル4と中間部2によって形成する組立体を、少なくとも24時間機械的応力下で接合し、重合させる必要が生じ、製造作業を複雑化し、生産フローを中断させる恐れがある。
【0017】
言うまでもなく、本発明は、説明した実施形態に限定されず、様々な簡単な変更例や変形例を、付記した特許請求の範囲によって規定した本発明の範囲から逸脱せずに、当業者は想定できる。特に、2つのプラスチック材料製部品をレーザ溶接する実際の技術に関しては、レーザ源の性質、パルスの波長、エネルギ密度、持続時間、材料の調合等の、溶接パラメータについて開示している欧州特許第1,117,502B2号を参照してもよい。また、液晶表示セルと関連して本発明について説明したが、有機LED(OLED)又は電子インク(e−ink)セルの仲間に属する他のデジタル表示装置も、本発明の範囲内であると考えてもよいことに、注意されたい。しかしながら、セグメントを有するOLED又は電子インク表示装置が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料製時計クリスタル(4)を、該クリスタル(4)と共に時計ケース(1)を画定する、同じくプラスチック製の中間部(2)に、固定する方法であり、前記時計クリスタル(4)は、ユーザ側に面する上面(6)と、該上面(6)と対向する下面(8)とを有し、デジタル表示装置(12)を、前記クリスタルの下面(8)に接合する方法であって、前記クリスタル(4)と前記デジタル表示装置(12)とによって形成する組立体を、レーザビームによって前記中間部(2)に溶接することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記レーザ溶接のために、前記中間部(2)は、前記クリスタル(4)が前記中間部(2)に当接する場所に設ける環状カラー(38)を、備え、前記環状カラー(38)は、レーザ溶接処理中に溶けて、前記クリスタル(4)を前記中間部(2)に固着する熱可塑性材料の付加体となることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ溶接中に溶けるホットメルト材料のカラーを、前記クリスタル(4)の周縁部の下に配置することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル表示装置(12)を、液晶セルとすることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
プリント基板(28)を時計ケース(1)内部に、前記デジタル表示装置(12)の下で、該デジタル表示装置から離間して配設し、前記デジタル表示装置(12)を、前記プリント基板(28)にゼブラ型電気コネクタ(32)によって電気的に接続し、前記クリスタル(4)は、前記中間部(2)に配設した肩部(10)に当接し、前記肩部(10)の前記プリント基板(28)に対する高さを、前記クリスタル(4)を前記肩部(10)に固着した際に、前記ゼブラコネクタ(32)を、前記デジタル表示装置(12)とプリント基板(28)との間で加圧するような高さにすることを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記ゼブラコネクタ(32)を、垂直にガイドし、保持し、その結果、前記コネクタを、横方向に移動させることなく、加圧でき、確実に、前記デジタル表示装置(12)の前記導電路(26)と、前記プリント基板(28)によって担持する対応する前記コネクタとの間で完全にアライメントできることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記デジタル表示装置(12)を背面照明するのに使用する光導体(34)は、前記ゼブラコネクタ(32)をガイドし、垂直に保持するスロット(36)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−88435(P2013−88435A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231404(P2012−231404)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(591048416)ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス (63)
【Fターム(参考)】