説明

普通感冒の治療用の医薬の製造における物質の使用

本発明は、ライノウイルスにより引き起こされる普通感冒の治療および/または予防方法であって、該治療および/または予防を必要とする患者を、過酸化水素産生酵素を含む医薬で治療することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライノウイルス類により引き起こされる疾患の治療および/または予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上気道における正常細菌叢は、病原性細菌の異常繁殖およびその後の感染の予防に非常に重要であることがよく知られている。細菌叢の細菌の多くは、α溶血連鎖球菌(AHS)からなる。鼻副鼻腔炎および中耳炎病原体の増殖を阻害するために、AHSによる最も重要なメカニズムの一つが、大量の過酸化水素、Hの産生であることが示されている[1]。
【0003】
過酸化水素はまた、鼻咽頭粘膜の非特異的防御システムの1つである、ラクトペルオキシダーゼ(LPO)の基質として寄与する。ラクトペルオキシダーゼは、強力な抗菌物質である次亜チオシアン酸、OSCNの産生を、過酸化水素に依存している。AHSを含む正常鼻細菌叢およびヒト粘膜は、過酸化水素および次亜チオシアン酸の両方に対して本来の抵抗力を有する[2]。
【0004】
ブドウ球菌感染症の治療用の皮膚および鼻開口部に適用する軟膏における過酸化水素産生酵素の使用は以前に開示されているが、これは、皮膚の細菌叢の細菌に関する治療であり、過酸化水素含有軟膏(MicrocidTM)に対応する。
【0005】
EP1490096は、特に子供における中耳炎の治療用の鼻腔用スプレーの製造における過酸化水素の使用を開示する。しかしながら、中耳炎の治療を目的とするいくつかの抗生物質は存在するが、ライノウイルスにより引き起こされる普通感冒に対する積極的治療は証明されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明において、意外にも、過酸化水素産生酵素を用いて、普通感冒を引き起こすライノウイルスを不活性化することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の具体例は、ライノウイルスにより引き起こされる疾患の治療および/または予防方法であって、該治療および/または予防を必要とする患者を、過酸化水素産生酵素を含む医薬で治療する方法に関する。
【0008】
本発明のさらなる具体例において、過酸化水素産生酵素は、グルコースオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼからなる群から選択される。
本発明の他の具体例において、過酸化水素産生酵素は、アミログルコシダーゼと併用されるグルコースオキシダーゼである。
【0009】
本発明の一の具体例において、疾患は普通感冒である。
本発明のさらなる具体例において、過酸化水素産生酵素は、リンゲル液に処方される。
【0010】
本発明の別の具体例において、医薬は水溶性である。
本発明の一の具体例において、医薬は、鼻腔用スプレーとして処方される。
本発明のさらなる具体例において、医薬は点鼻薬として処方される。
本発明の別の具体例において、酵素基質が医薬に加えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ライノウイルス類(RV)は、普通感冒を引き起こす最も一般的なものである[3]。さらに、子供の中耳炎も、しばしば普通感冒に先だって生じる。RVは全身性感染症ではないが、鼻腔および鼻咽頭に局在する[4]。過酸化水素がRVを不活性化することが知られているが[5]、以下のいくつかの理由のために、RV感染を不活性化するための過酸化水素を含有する鼻腔用スプレーは製造できなかった:
a.スプレーの鼻腔分散は、ウイルス粒子の多くが存在する鼻腔の後部にまで及ばない[6];
b.粘膜細胞に豊富な酵素カタラーゼが、鼻の後部に届く前に過酸化水素を水と酸素に分解する;
c.過酸化水素の初期濃度が十分高くなければならず、したがって、鼻粘膜に大きな刺激を与える[7]。
【0012】
現在まで、症状の軽減、例えば鼻水の症状の軽減以外に普通感冒の症状に対する効果が実証された薬剤はない。
【0013】
本発明において、意外にも、過酸化水素産生酵素を用いて、ライノウイルス類を恒久的に不活性化することができることが見出された。ヒト気道細胞に接種した多くの量のライノウイルス(>100 TCID50)を不活性化するのに、わずか30分のインキュベートで十分であることが示された(TCID50は、接種瓶の少なくとも50%に、細胞変性効果(=感染)が見られるのに必要なウイルスの濃度を意味すると定義される)。このことは、ライノウイルス感染が鼻腔後部で生じる普通感冒の治療が可能であることを意味する。したがって、過酸化水素産生酵素、例えばGOが以下の特徴を有することを予測することはできなかった:
1.30以内でライノウイルス類を恒久的に不活性化する;
2.GOの添加を、初期接種後2日以上後に行った場合でさえも、細胞のさらなる感染を防止する:このことは、普通感冒の防止だけでなく、症状の開始後の感染を治療できることを意味する;
3.粘膜のすべてのウイルスを不活性化するために、鼻咽頭において長時間十分な過酸化水素濃度を維持することができる:これにより初めて、普通感冒の症状が喪失するだろう。
【0014】
意外にも、実験にて示されるように、GOおよびグルコースを含有する鼻腔用スプレーは上記の基準を満す。
【0015】
グルコースオキシダーゼ(GO)は過酸化水素産生酵素であり、ヒトで使用することができる。これは、蜂蜜の天然成分であり[8]、抗菌性保存剤として長年用いられている。GOの過酸化水素産生効果はまた、口腔内洗浄液(Oral BalanceTM)および歯磨き粉(ZendiumTM)において抗菌性添加剤として用いられている。
【0016】
アミログルコシダーゼ(AGO)は、デンプンからグルコースを産生する酵素であり、約50−60℃で最適効果を発揮する。GOおよびAGOは、より低い温度でGOの活性化を防止するために、しばしば組み合わされる。溶液が体温となった場合に、AGOはグルコースの放出を開始し、GOは過酸化水素を産生するだろう。そうでなければ、酵素(GO)および基質(グルコース)の混合を避けるために、2区画のシステムを用いることが必要になるだろう。
【0017】
鼻への使用に適した基質は、例えば:キシリトール(それ自体抗菌効果を有する)、マンニトール(ある種の中耳炎病原体に対して接着効果を有する)、ラクテート(先天性物質)、ガラクトース、グリセロール(鼻粘膜に効果的)およびグルコースであるだろう。これは、以下の過酸化水素産生酵素が、ライノウイルス類に対する鼻腔用スプレーにおける医薬として適合することを意味する:グルコースオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼ。本願発明者の研究によると、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼは両方とも、ヒト肺繊維芽細胞(WI38)に対して非常に寛容である。
【0018】
他の具体例において、過酸化水素産生酵素は、アミログルコシダーゼと併用されるグルコースオキシダーゼである。
【0019】
臨床研究では、リンゲル液が、生理食塩水よりも、鼻粘膜の粘膜繊毛に、より有益な効果をもたらすことが報告された[9]。このことは、リンゲル液が、鼻腔用の医薬製剤において好ましい担体溶液であることを示している。
【0020】
本発明は、実験項でより詳細に記載する。
以下の記載の目的は、酵素により産生される阻害物質である過酸化水素が、普通感冒を引き起こすライノウイルス類を不活性化できることを示すことである。ライノウイルス類(ライノウイルス属に属するウイルス)は、普通感冒の原因物質である。
【0021】
以前の研究により、良好な阻害活性を有するAHSは、約10mM(=0.03%)の過酸化水素濃度に対応するレベルの過酸化水素を産生できることが示されている。かくして、約0.05%の濃度の過酸化水素を産生するグルコースオキシダーゼ濃度は、非常に良好な阻害活性を有する正常細菌叢のインビボでの効果を模倣するのに足りると考えられる。下記実験により、20U/ml未満のGO濃度が、10mMを超える過酸化水素濃度に相当する、ライノウイルス感染症に対する効果を有することを示す。
【0022】
実施例1および2に記載する実験により、20U/mlの濃度のグルコースオキシダーゼが、ライノウイルスのWI38細胞に対する細胞変性効果を不可逆的に不活性化するのに十分であることが明らかとなった。この不活性化は30分未満のインキュベーションの間に完了し、これは、グルコースオキシダーゼが飲み込まれる前に鼻および鼻咽頭を通り抜ける間にライノウイルスを不活性化するのに十分である[10]。第2の実施例においては、グルコースオキシダーゼを、最初のインキュベーションの2日後になって加えた場合でさえも、ライノウイルスによる細胞のさらなる感染を防止でき、これは、グルコースオキシダーゼの鼻腔用スプレーが、症状が現れた後でさえも、普通感冒に治療効果があることを示唆している。
【0023】
第3の実施例は、普通感冒のサインの有意な減少が、治療12時間後にすでに達成されることを示している。本発明者は、3年間普通感冒の発症時に鼻腔用スプレーを用いており、そのパターンはほとんどが同じであった:GOの鼻腔用スプレーの頻繁な使用後(最初の12時間は2時間毎、その後は頻度を少なくする(続く2〜3日の間1日2〜4回))、普通感冒の症状が、治療開始後12〜24時間以内に消失する。また、他のボランティアも、スプレーに関して同様の効果を報告している。これらの予備研究は、鼻および鼻咽頭に存在するRVを不活性化するのに十分な期間、GOが有意なレベルで存在することを示している。
【0024】
カタラーゼは速やかに過酸化水素を酸素と水に変換し、そして、特にライノウイルスは鼻咽頭のアデノイドに存在するので、過酸化水素含有鼻腔用スプレーと機能しそうにない[5]。カタラーゼは、HのOおよびHOへの変換を触媒する特異的酵素である。この反応は急速に進む。ヒト赤血球から精製したカタラーゼ(>30000U/mg)を実験に用いた。
【0025】
普通感冒をシミュレートするウイルスアッセイにおいて、ATCCからの2つの標準分離株、すなわち、ATCC1117(=ライノウイルス7)およびATCC1118(=ライノウイルス8)を用いた。
【0026】
ライノウイルス類での実験に用いた細胞培養物は、ライノウイルスと一緒にインキュベートする場合に明らかな細胞変性効果(CPE)を示す、推奨されたヒト胎児肺繊維芽細胞由来のWI38細胞株である。
【0027】
グルコースオキシダーゼを含有する鼻腔用スプレーでの臨床研究において、GOは、リンゲル溶液中100U/mlの濃度で、等張液中5%ベータ−Dグルコースを含有するグルコーススプレーと一緒に用いた。スプレーの1回の噴霧で0.1mlが投与され、実験においては、1回投与あたり、各々のボトル(1つはGOのボトル、もう一つはグルコースのボトル)から2回噴霧した。
【0028】
臨床予備試験では、5%グルコース溶液を含有する鼻腔用スプレーと一緒に用いる100Uグルコースオキシダーゼ/mlを含有する鼻腔用スプレーが、耐用性良好であり、普通感冒の発症期間を短くするだろうことが示唆された。
【0029】
GOの鼻腔用スプレーの結果は、現在のところ、非常に有望であり、本発明者は、倫理委員会(Ethical Committee)およびスウェーデン医薬品局(Swedish Medical Products Agency)から、鼻腔用スプレーによる普通感冒の発症期間の短縮の可能性を評価するための、無作為プラセボ−コントロール二重盲検試験の開始の許可を得た。
【実施例】
【0030】
実施例1
以下の実施例の目的は、普通感冒の原因であるライノウイルス類に対する、過酸化水素産生酵素であるグルコースオキシダーゼの効果を示すことである。
【0031】
実験1.
ウイルス:ライノウイルス7(ATCCから購入(VR−1117))を、ライノウイルス群の代表例として用いた。アッセイにおいて、10−2および10−3希釈を用いた。これらの濃度は、100TCID50と関連付けられ、WI38と一緒にアッセイした場合に、前述の希釈系列において明確かつ大きな細胞変性効果(CPE)を生じる。各々0.3mlの希釈液を容器に加えた。
【0032】
細胞培養:ヒト肺細胞繊維芽細胞(WI38、ATCC−CCL−75)を、細胞変性効果検出用に用いた。10−倍連続希釈を、濃縮ウイルス懸濁液から行った。0.1mlの10−4〜10−5の希釈液は、2mlウェルにおいて5日以内に、目に見える細胞変性効果を生じさせるのに十分であった。10−3またはそれ以上の希釈液は、植菌の5日後の多くの細胞を破壊するほどだった。細胞は、最初に、10%ウシ胎児血清を含むRPMI中で、ウェルの底に滑らかな相が見られるまで培養した。ついで、培地を2%のウシ胎児血清を含むRPMIに交換し、アッセイの間保存した。細胞を、CO豊富エアー中37℃で培養した。実験の間、17〜18代継代の細胞培養を用いた。
【0033】
カタラーゼ:Sigma−AldrichTMから入手。100000U/mlの溶液を、10U/mlの原液から調製した。0.01mlを容器に加え、容器中に1000U/mlとした。
:20%溶液を、リン酸緩衝セイライン(PBS)で、0.5%および0.05%溶液に希釈した。0.1mlを容器に加え、容器中に0.05%または0.005%とした。
2.5%グルコース含有Rehydrex:0.6mlを、グルコースオキシダーゼの基質として各々の容器に用いた。
グルコースオキシダーゼ(GO):Sigma−AldrichTMから入手。200U/mlおよび600U/mlの溶液を、6000U/mlの原液から調製した。各々0.1mlの希釈液を容器に加え、容器中に20U/mlまたは60U/mlのグルコースオキシダーゼとした。
【0034】
過酸化水素の効果が、ウイルスそれ自体または細胞保護効果に直接影響するかを評価するために、細胞を含むウェルに移す前に、ウイルスを過酸化水素とプレインキュベートした。WI38細胞もまた、過酸化水素に感受性であり、したがって、植菌前にウェルにカタラーゼを加える必要があった。さらに、カタラーゼ添加によるRV7の不活性化により、この不活性化の速度を証明した。この設計はまた、阻害効果が静ウイルス性であるか、または、不可逆的にウイルスを損傷することができるかを明らかにするだろう。
【0035】
表1において、各々10個の容器(Eppendorf)の内容を示す。容器を37℃に安定に保持するヒーター中でインキュベートした。1000Uのカタラーゼを、インキュベーションの15、30および60分後に加えた。各々の容器から2×50μlを、二重に細胞ウェル(96−ウェルプレート)に移した。細胞ウェルにおける対照として、以下のものを用いた(二重に):細胞+RPMI、細胞+カタラーゼ、細胞+グルコースオキシダーゼ、細胞+0.05%H、細胞+rehydrex、カタラーゼ+RV7。細胞を、インキュベーションの5日間毎日、および最終的には7日まで試験した。
【0036】
【表1】

【0037】
WI38細胞は、0.05%Hの強い毒性効果およびグルコースオキシダーゼ酵素(GO)の非常に弱い毒性効果に感受性であった。しかしながら、グルコースオキシダーゼの非常に弱い毒性効果は、RV7の細胞変性効果に関する細胞の試験の実現を妨害しなかった。
【0038】
インキュベーションの5日後、グルコースオキシダーゼをRV7とインキュベートしたウェルにおいて、細胞変性効果は見られなかった。より高い濃度のRV7と15分間インキュベーションした後でさえもウェルにおいて見られなかった。20U/mlのグルコースオキシダーゼ濃度は、RV7の完全な不活性化を達成するのに十分であると思われる。表2。
【0039】
【表2】

【0040】
過酸化水素に関して、低濃度(0.005%、2mM)では、高濃度のRV7を不活性化することができなかった。しかしながら、60分のインキュベーション後には、0.005%過酸化水素溶液は、10−3希釈のRV7を不活性化することができた。0.05%(20mM)の濃度の溶液では、すべての濃度で、かつ、15分のインキュベーションでRV7を不活性化することができた。かくして、20U/mlのグルコースオキシダーゼにより産生されるHの量は、0.005%を超えるH濃度と等価である。上記結果は、インキュベーション7日後のものである。
【0041】
7日間のインキュベーションにおいて、グルコースオキシダーゼまたは0.05%過酸化水素溶液をアッセイしているウェルにおいて、不活性化RV7の回復のサインは見られなかった。これは、RV7の不活性化は不可逆であったが、静ウイルス性ではいことを示している。
【0042】
実験2
WI38細胞およびグルコースオキシダーゼ(GO)を用いるライノウイルス7および8の実験
グルコースオキシダーゼ:6000U/ml=>0.07ml〜2ml PBS=200U/ml
カタラーゼ:百万U/ml=>0.01ml〜1ml PBS=10kU/ml
過酸化水素:10%溶液=>0.02ml〜2ml PBS=0.1%溶液
細胞:RPMI中WI38+2%ウシ胎児血清
ライノウイルス:ATCC1117(=Rv nr 7)およびATCC1118(=Rv8)
ウイルス希釈液:ATCCからの0.1ml非希釈ウイルス溶液を0.7ml PBSに希釈=希釈液1
dil1(希釈液1)0.1mlを0.9mlPBSに希釈=希釈液2等、希釈液5まで。
【0043】
インキュベーション:
0.7ml 5%グルコース溶液+0.1ml RV7(=a7)またはRV8(=a8)のdil1+0.2mlの上記したグルコースオキシダーゼ溶液(容器中の最終濃度40U/ml)。ウイルス濃度=dil2。37℃に保持したヒーターで30分間インキュベーション。30分後、過酸化水素の影響を、0.1mlカタラーゼ溶液を容器に添加して停止させる(=1kU/ml)。
0.7ml 5%グルコース溶液+0.1mlのRV7(=a7)またはRV8(=a8)のdil1+0.1mlの過酸化水素溶液(=容器中の最終濃度=0.01%)。インキュベーションおよび過酸化水素の影響の停止は上記aと同様である)。
全部で4つの容器(Eppendorff):a7、a8、b7およびb8。
【0044】
カタラーゼ添加後、試料を、表3に従って平底の96−ウェルプレートに移す。37℃でCOとインキュベーションの2日後、10Uのグルコースオキシダーゼを、8つのウェル+0.1ml 5%グルコース溶液に加えた。グルコースオキシダーゼを添加したウェルを表4に示す。RV8はRV7よりも効果的な病原体であったが、40U/mlの濃度のグルコースオキシダーゼは、高レベルの初期植菌にもかかわらず、RV7およびRV8の両方を不活性化することができた。インキュベーション2日後のウェルへのグルコースオキシダーゼの添加は、すでに罹患した細胞以外へのウイルス感染の蔓延を防止することができると考えられる。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
実施例3
以下の実施例の目的は、普通感冒の治療のパイロット臨床試験において、グルコースオキシダーゼ含有鼻腔用スプレーの最適濃度および投与量を評価することである。
【0048】
実験3
試験者K.T.は、5%のグルコースを含有する鼻腔用スプレーと組み合わせた、100U/mlグルコースオキシダーゼを含有する鼻腔用スプレーが、普通感冒の症状を回復できるかどうかを評価することを目的とする。
スプレーは予防として用いる予定ではなく、鼻詰まりおよび/またはくしゃみを伴う鼻炎としての症状後に用いる。症状は0〜5の点数で評価し、該症状を1日の終わりに同じスケールで再評価した。プロトコールの詳細については、表5を参照。
【0049】
鼻腔用スプレーを、治療の初日は2時間毎に用いた場合、鼻炎、鼻詰まりおよびくしゃみの症状を1日のうちに改善するのに十分であった。疾患の再発を防止するためには、翌日に少なくとも1日2〜3回治療を続けることが必要であると思われる。鼻の乾燥感以外の副作用は観察されず、これも治療の終了時には消失した。
【0050】
【表5】

【0051】
参考文献
[1]Tano K,Grahn Hakansson E,Wallbrandt P,Ronnqvist D,Holm SE,Hellstrom S.Is Hydrogen peroxide responsible for the inhibitory activity of alpha−haemolytic streptococci sampled fromnasopharynx? Acta Otolaryngol 2003;123:724−729.
[2]Carlsson J,Iwami Y,Yamada T;Hydrogen peroxide Excretion by Oral Streptococci and Effect of Lactoperoxidase−ThiocyanateHydrogen peroxide,Infect Immun 1983;40:70−80.
[3]Papadopoulos NG,Johnston SL.Rhinoviruses.Principles and Practice of Clinical Virology,5thed.2004.Wiley&Sons Ltd.pp361−373.
[4]Winther B,Gwaltney JM,Mygind N,Turner RB,Hendley JO.Sites of Rhinovirus Recovery after Point Inoculation of the Upper Airway.JAMA 1986;13:1763−1767.
[5]Mentel R,Schmidt J.Investigations on Rhinovirus Inactivation by Hydrogen peroxide. Acta Virol 1973;17:351−354.
[6]Bateman ND,Whymark AD,Clifton NJ,Woolford TJ.A study of intranasal distribution of Asselstine hydrochloride aqueous nasal spray with different spray techniques.Clin Otolaryngol.2002;27:327−330.
[7]Greiff L,Ejerfalt I,Ejerfalt JS,Wollmer P,Persson CGA.Effects of Hydrogen peroxide on the guinea−pig tracheobronchial mucosa in vivo.Acta Physiol Scand 1999;165:415−420.
[8]Bang LM,Buntting C,Molan P.The effect of Dilution on the Raye of Hydrogen peroxide Production in Honey and its Implications for Wound Healing.J of Alternative and Complementary Medicine 2003;9:267−273.
[9]Unal M,Gorur K,Ozcan C;Ringer−Lactate solution versus Isotonic Saline solution on Mucociliary function after nasal septal surgery.J Laryngol Otol 2001;115:796−7.
[10]Newman SP,Moren F,Clarke SW.Deposition pattern from a nasal pump spray.Rhinology 1987;25:77−82.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライノウイルスにより引き起こされる疾患の治療および/または予防方法であって、該治療および/または予防を必要とする患者を、過酸化水素産生酵素を含む医薬で治療することを特徴とする方法。
【請求項2】
過酸化水素産生酵素が、グルコースオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
過酸化水素産生酵素が、アミログルコシダーゼと併用するグルコースオキシダーゼであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
疾患が普通感冒であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
過酸化水素産生酵素がリンゲル液に処方されることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
医薬が水溶性であることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
医薬を鼻腔用スプレーとして処方することを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
医薬を点鼻薬として処方することを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
酵素基質を医薬に加えることを特徴とする、前記請求項いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項記載の方法において用いる医薬製品のための、過酸化水素産生酵素の使用。
【請求項11】
過酸化水素産生酵素が、グルコースオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼからなる群から選択される請求項10記載の使用。
【請求項12】
過酸化水素産生酵素が、アミログルコシダーゼと併用されるグルコースオキシダーゼである、請求項10記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜9いずれか1項記載の方法において用いるための過酸化水素産生酵素。
【請求項14】
グルコースオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグリセロールオキシダーゼからなる群から選択される、請求項13記載の過酸化水素産生酵素。

【公表番号】特表2011−515391(P2011−515391A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500740(P2011−500740)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050291
【国際公開番号】WO2009/116944
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510250559)
【氏名又は名称原語表記】Krister TANO
【Fターム(参考)】