説明

暖房専用空気調和装置

【課題】暖房サイクルと逆のサイクルで試運転を行う場合に室内熱交換器のドレン水がドレンパンから溢れるのを防止できる暖房専用空気調和装置の提供。
【解決手段】圧縮機21と、室内熱交換器42と、室外熱交換器23と、室内熱交換器42と室外熱交換器23との間に設けられる室外膨張弁24と、圧縮機21の吐出側と室内熱交換器42とを接続すると共に圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する第1状態と圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続すると共に圧縮機21の吸入側と室内熱交換器42とを接続する第2状態とを切り換える四路切換弁22と、室内熱交換器42に送風する室内ファン43と、試運転モードで四路切換弁22を第2状態に切り換える制御部とを備える。試運転モードには、制御部が圧縮機21を運転し室内ファン43を停止するドレン水抑制制御を行うドレン水抑制期間が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房専用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置が設置されると、空気調和装置の各種機器が正常に動作するか、空気調和装置が正しく施工がされているか等の確認を行うために試運転が行われることが多い。例えば、特許文献1(特開2001−99459号公報)に記載の空気調和装置では、冷房サイクルまたは暖房サイクルで試運転が行われており、この試運転において、室内ファンが正常に動作しているかの確認が同時に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような空気調和装置のうち、暖房運転を主に行う暖房専用空気調和装置が存在する。この暖房専用空気調和装置では、低温度の冬場に主に暖房運転が行われるだけであるので、ドレン水処理設備としてのドレン排水管は設けられておらず、ドレンパンのみが設けられることが多い。このため、例えば高温多湿の夏場などにおいて、上述のように暖房サイクルと逆のサイクルで暖房専用空気調和装置の試運転を行うと、室内熱交換器からのドレン水がドレンパンから溢れ出し、室内にドレン水が流れ出てしまうことが懸念される。
【0004】
そこで、本発明の課題は、例えば、高温多湿の夏場などにおいて暖房サイクルと逆のサイクルで暖房専用空気調和装置の試運転を行う場合に、室内熱交換器からのドレン水がドレンパンから溢れることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る暖房専用空気調和装置は、圧縮機構と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、膨張機構と、四路切換弁と、送風機と、制御部とを備える。膨張機構は、室内熱交換器の一端と室外熱交換器の一端との間に設けられる。四路切換弁は、圧縮機構の吐出側と室内熱交換器の他端とを接続すると共に圧縮機構の吸入側と室外熱交換器の他端とを接続する第1状態と、圧縮機構の吐出側と室外熱交換器の他端とを接続すると共に圧縮機構の吸入側と室内熱交換器の他端とを接続する第2状態とを切り換える。送風機は、室内熱交換器に対して送風を行う。制御部は、少なくとも圧縮機構、膨張機構、四路切換弁および送風機の制御を行う。また、制御部は、試運転モードにおいて四路切換弁を第2状態に切り換える。そして、試運転モードには、制御部が圧縮機構を運転し送風機を停止するドレン水抑制制御を行うドレン水抑制期間が設けられる。
【0006】
ここで、暖房専用空気調和装置において、例えば室内熱交換器の下方にドレンパンが配置されていれば、室内熱交換器において発生したドレン水を溜めることが可能となる。また、例えば、膨張機構は、膨張弁であり、開度は固定されていてもよい。
【0007】
第1発明に係る暖房専用空気調和装置では、制御部が試運転モードにおいて四路切換弁を第1状態から第2状態に切り換えると共に送風機を停止させる。これにより、例えば、暖房専用空気調和装置において、ドレンパンに溜められたドレン水を外部へと排出するドレン排水配管が設けられておらずドレンパンのみが設けられている場合であって、例えば、暖房サイクルとは逆のサイクルで夏場に試運転を行った場合であっても、ドレン水がドレンパンから溢れ出ることを防止することができる。
【0008】
第2発明に係る暖房専用空気調和装置は、第1発明に係る暖房専用空気調和装置であって、ガス側閉鎖弁と、圧力検知器とをさらに備える。ガス側閉鎖弁は、室内熱交換器の他端と四路切換弁との間に設けられる。圧力検知器は、室内熱交換器の他端と圧縮機構の吸入側とを接続するガス冷媒配管に取り付けられる。
【0009】
第2発明に係る暖房専用空気調和装置では、例えば、試運転モードにおける試運転は、四路切換弁が第2状態となっている状態、すなわち、暖房サイクルとは逆のサイクルの状態で行われる。これは、暖房サイクルで試運転を行うと、ガス側閉鎖弁と圧縮機構の吐出側との間の高圧が上がりにくくガス側閉鎖弁が開の状態であるかをいち早く検知できない恐れが考えられるからである。よって、例えば、試運転モードにおける試運転を暖房サイクルとは逆のサイクルの状態で行い、室内熱交換器の他端と圧縮機構の吸入側とを接続するガス冷媒配管に圧力検知器を設けることによって、試運転モードにおいてガス側閉鎖弁の開閉の状態を早く検知できる。
【0010】
第3発明に係る暖房専用空気調和装置は、第2発明に係る暖房専用空気調和装置であって、室内ケーシングと、室外ケーシングとをさらに備える。室内ケーシングには、室内熱交換器および送風機が収容される。室外ケーシングには、圧縮機構、室外熱交換器、膨張機構、四路切換弁、ガス側閉鎖弁および圧力検知器が収容される。
【0011】
第3発明に係る暖房専用空気調和装置では、夏場に試運転を行った場合であってもドレン水がドレンパンから溢れ出ることを防止することができる。
【0012】
第4発明に係る暖房専用空気調和装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る暖房専用空気調和装置であって、気液分離器をさらに備える。気液分離器は、圧縮機構の吸入側と四路切換弁との間に設けられる。
【0013】
第4発明に係る暖房専用空気調和装置では、送風機が停止していることにより室内熱交換器における冷媒の蒸発量が低下する。このため、送風機が稼働しているときに比べると液冷媒が多くなる。そこで、気液分離器を設けることによって圧縮機の液吸入を防止することができる。
【0014】
第5発明に係る暖房専用空気調和装置は、第1から第4発明のいずれかに係る暖房専用空気調和装置であって、ドレン水抑制期間は、試運転モードの全体の期間の8割以上を占める。
【0015】
第5発明に係る暖房専用空気調和装置では、全体の期間の8割以上の期間、送風機を停止させることで、送風機から室内熱交換器に対して送られる室内空気の量を減らすことができる。よって、送風機を駆動したとしても、ドレンパンからドレン水が溢れ出ることを防止できる。
【0016】
第6発明に係る暖房専用空気調和装置は、第5発明に係る暖房専用空気調和装置であって、試運転モードにおける、ドレン水抑制期間以外の第1の期間は、試運転モードの全体の期間における始めの期間である。
【0017】
第6発明に係る暖房専用空気調和装置では、さほど蒸発温度が下がっていない試運転モードにおける始めの期間に送風機を駆動している。これにより、送風機を駆動したとしても、ドレンパンからドレン水が溢れ出ることを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
第1発明に係る暖房専用空気調和装置では、制御部が試運転モードにおいて四路切換弁を第1状態から第2状態に切り換えると共に送風機を停止させる。これにより、例えば、暖房専用空気調和装置において、ドレンパンに溜められたドレン水を外部へと排出するドレン排水配管が設けられておらずドレンパンのみが設けられている場合であって、例えば、暖房サイクルとは逆のサイクルで夏場に試運転を行ったとしてもドレン水がドレンパンから溢れ出ることを防止することができる。
【0019】
第2発明に係る暖房専用空気調和装置では、例えば、試運転モードにおける試運転を暖房サイクルとは逆のサイクルの状態で行い、室内熱交換器の他端と圧縮機構の吸入側とを接続するガス冷媒配管に圧力検知器を設けることによって、試運転モードにおいてガス側閉鎖弁の開閉の状態を早く検知できる。
【0020】
第3発明に係る暖房専用空気調和装置では、夏場に試運転を行った場合であってもドレン水がドレンパンから溢れ出ることを防止することができる。
【0021】
第4発明に係る暖房専用空気調和装置では、送風機が停止していることにより室内熱交換器における冷媒の蒸発量が低下する。このため、送風機が稼働しているときに比べると液冷媒が多くなる。そこで、気液分離器を設けることによって圧縮機の液吸入を防止することができる。
【0022】
第5発明および第6発明に係る暖房専用空気調和装置では、送風機を駆動したとしても、ドレンパンからドレン水が溢れ出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】暖房専用空気調和装置の冷媒回路の系統図。
【図2】制御部の制御ブロック図。
【図3】第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置の試運転時における動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<第1実施形態>
<暖房専用空気調和装置1の構成>
暖房専用空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、建物の室内の暖房に使用される装置である。暖房専用空気調和装置1は、図1に示すように、1台の熱源ユニットとしての室外ユニット2と、室外ユニット2に接続される1台の利用ユニットとしての室内ユニット4と、室外ユニット2と室内ユニット4とを接続する冷媒連絡配管としての液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7とを備えている。すなわち、暖房専用空気調和装置1の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット4と、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7とが接続されることによって構成されている。
【0026】
<室内ユニット4の構成>
まず、室内ユニット4の構成について説明する。
【0027】
室内ユニット4は、建物の室内の天井に埋め込みや吊り下げにより、または、室内の壁面に壁掛けにより設置されている。室内ユニット4は、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7を介して室外ユニット2に接続されている。
【0028】
室内ユニット4は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10aを有している。この室内側冷媒回路10aは、主として、室内熱交換器42を有している。
【0029】
室内熱交換器42は、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器であり、暖房運転時に冷媒(例えば、フロン系冷媒)の凝縮器として機能して室内空気を加熱する。なお、後述するデフロスト運転時および試運転時(すなわち、冷媒回路10が暖房サイクルとは逆のサイクルの状態)においては、冷媒の蒸発器として機能する。
【0030】
また、室内ユニット4は、室内ファン43(図2を参照)を有している。室内ファン43は、室内ユニット4内に室内空気を吸入して、室内熱交換器42において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための送風ファンとして機能する。また、室内ファン43は、ファンモータ(図示せず)によって駆動され、室内熱交換器42に供給する空気の風量を可変することが可能なファンである。ファンモータは、インバータ装置(図示せず)を介して電力の供給を受けて駆動されるようになっており、周波数(すなわち、回転数)を可変することによって、室内ファン43の風量を可変することが可能になっている。
【0031】
さらに、室内ユニット4には、室内熱交換器42の下方にドレンパン45が設けられている。ドレンパン45は、冷媒回路10が暖房サイクルと逆のサイクルとなっている状態において、室内熱交換器42において発生したドレン水を受ける役割を有する。なお、ドレン水を排出するためのドレン排水管は設けられていない。
【0032】
<室外ユニット2の構成>
次に、室外ユニット2の構成について説明する。
【0033】
室外ユニット2は、建物の室外に設置されており、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7を介して室内ユニット4に接続されている。そして、室外ユニット2は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10bを有している。この室外側冷媒回路10bは、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、熱源熱交換器としての室外熱交換器23と、膨張機構としての室外膨張弁24と、アキュムレータ25と、液側閉鎖弁26と、ガス側閉鎖弁27とを有している。
【0034】
圧縮機21は、運転容量を可変することが可能な圧縮機であり、圧縮機用モータ(図示せず)によって駆動される容積式圧縮機である。
【0035】
四路切換弁22は、冷媒の流れ方向を切り換えるための弁であり、第1状態(図1の四路切換弁22の破線を参照)と、第2状態(図1の四路切換弁22の実線を参照)とを採ることができる。第1状態では、圧縮機21の吐出側と室内熱交換器42のガス側(具体的には、ガス側冷媒連絡配管7)とが接続されると共に圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ25)と室外熱交換器23のガス側とが接続されている。すなわち、四路切換弁22が第1状態となっている場合は、冷媒回路10が暖房サイクルとなっている場合である。第2状態では、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とが接続されると共に圧縮機21の吸入側と室内熱交換器42のガス側とが接続されている。すなわち、四路切換弁22が第2状態となっている場合は、冷媒回路10が暖房サイクルとは逆のサイクルの状態、いわゆる冷房サイクルの状態となっている場合である。
【0036】
室外熱交換器23は、伝熱管と多数のフィンとにより構成されるクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。室外熱交換器23は、暖房運転時に冷媒の蒸発器として機能する。室外熱交換器23は、そのガス側が四路切換弁22に接続され、その液側が液側冷媒連絡配管6に接続されている。なお、四路切換弁22が第2状態となっている場合は、室外熱交換器23は、冷媒の凝縮器として機能する。
【0037】
室外膨張弁24は、室内熱交換器42の一端と室外熱交換器23の一端との間に設けられ、室外熱交換器23の液側に接続された電動膨張弁である。室外膨張弁24は、室外側冷媒回路10b内を流れる冷媒の圧力や流量の調節を行う。
【0038】
室外ユニット2は、室外ファン28(図2を参照)を有している。室外ファン28は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、室外に排出するための送風ファンとして機能する。また、室外ファン28は、室外熱交換器23に供給する外気の量を可変することが可能なファンであり、ファンモータ(図示せず)によって駆動されるプロペラファンである。
【0039】
アキュムレータ25は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22との間に設けられ、室内ユニット4の運転負荷の変動に応じて冷媒回路10内に発生する余剰冷媒を溜めることが可能な容器である。
【0040】
液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27は、外部の機器・配管(具体的には、液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7)との接続口に設けられた弁である。液側閉鎖弁26は、室外熱交換器23に接続されている。ガス側閉鎖弁27は、四路切換弁22に接続されている。液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27は、室外ユニット2内に初期充填されている冷媒を封入する機能を有している。一般に、暖房専用空気調和装置1の据付時、施工者は、現地において室内ユニット4と室外ユニット2とを液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7によって接続し冷媒回路10を完成させるが、冷媒回路10を完成させた後、これらの液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27を手動で開の状態にする。これにより、室外ユニット2(具体的には、室外熱交換器23)内に封入されていた冷媒は、冷媒回路10へ拡がるようになっている。
【0041】
また、室外ユニット2には、四路切換弁22とガス側閉鎖弁27との間に冷媒の圧力を検知する冷媒圧力センサ33が設けられている。
【0042】
<液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7の構成>
液側冷媒連絡配管6およびガス側冷媒連絡配管7は、暖房専用空気調和装置1を建物内の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒配管であり、設置場所や室外ユニット2と室内ユニット4との組み合わせの設置条件に応じて種々の長さや管径を有する冷媒配管が使用される。
【0043】
<制御部9の構成>
制御部9は、マイクロコンピュータやメモリ等から構成され、図2に示すように、室内制御部9aと、室外制御部9bとを有する。室内制御部9aは、室内ユニット4を構成する各種機器(具体的には、室内ファン43等)の動作を制御する。室外制御部9bは、室外ユニット2を構成する各種機器(具体的には、圧縮機21、室外ファン28等)の動作を制御する。
【0044】
室内制御部9aは、室内ユニット4を個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号の送受信を行うことが可能である。また、室内制御部9aおよび室外制御部9bは、互いに伝送線を介して制御信号の送受信を行うことができるようになっている。そして、室内制御部9aと室外制御部9bとから構成される制御部9は、冷媒圧力センサ33の検出信号を受信することができるように冷媒圧力センサ33とも接続されており、この検出信号やリモコンからの制御信号に基づいて、室内ファン43および室外ファン28の回転数、圧縮機21の回転数等の制御を行うことができるようになっている。
【0045】
なお、制御部9には、冷媒圧力センサ33によって検知される低圧側の圧力および高圧側の圧力について所定のしきい値が設定されており、これらのしきい値を基準として低圧側の圧力および高圧側の圧力が上下に変動しているかを検知している。そして、この検知により、暖房専用空気調和装置1の各種機器の異常を知ることが可能である。例えば、後述する試運転モードにおける試運転時において、ガス側閉鎖弁27が開けられずに閉の状態になっているとき、冷媒圧力センサ33によって検知される圧力は、低圧側の圧力のしきい値よりも下がることになる。
【0046】
<暖房専用空気調和装置1の動作>
暖房専用空気調和装置1の運転モードとしては、主として、室内ユニット4の運転負荷に応じて、室外ユニット2および室内ユニット4の各種機器の制御が行われる通常運転モードと、室外ユニット2および室内ユニット4の各種機器が正常に動作するか、施工が正しくされているか(例えば、液側閉鎖弁26およびガス側閉鎖弁27が開の状態になっているか)等を確認するための試運転モードとがある。通常運転モードでは、主として暖房運転が行われる。試運転モードでは、試運転が行われる。なお、試運転は、暖房専用空気調和装置1の各種機器の設置後(具体的には、最初の機器の設置後に限られず、例えば、室外ユニット2および室内ユニット4の各種機器を追加や撤去する等の改造後や機器の故障を修理した後も含まれる)に行われる。
【0047】
以下、暖房専用空気調和装置1の各運転モードにおける動作について図1を用いて説明する。なお、暖房専用空気調和装置1の動作は、制御部9によって行われるものである。
【0048】
(1)通常運転モード
(a)暖房運転
まず、通常運転モードにおける暖房運転について説明する。
【0049】
暖房運転時は、四路切換弁22が第1状態となるように制御されている。すなわち、圧縮機21の吐出側がガス側閉鎖弁27およびガス側冷媒連絡配管7を介して室内熱交換器42のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側が室外熱交換器23のガス側に接続された状態となるように、四路切換弁22が制御されている。
【0050】
そして、この状態で、圧縮機21、室外ファン28および室内ファン43が駆動されると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、そして圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁27およびガス側冷媒連絡配管7を経由して室内ユニット4に送られる。室内ユニット4に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器42において、室内ファン43によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮されて高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は、液側冷媒連絡配管6および液側閉鎖弁26を経由して室外ユニット2に送られる。そして、室外ユニット2に送られた高圧の液冷媒は、室外膨張弁24で減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、室外熱交換器23に送られる。低圧の気液二相状態の液冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン28によって供給される外気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となる。この低圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由してアキュムレータ25に流入し、そして再び、圧縮機21に吸入される。
【0051】
ここで、室外熱交換器23は冷媒の蒸発器として機能している。しかし、室外熱交換器23の熱源である外気の温度が低い条件下において暖房専用空気調和装置1の暖房運転が行われると、室外熱交換器の表面に着霜が生じることが想定される。そして、室外熱交換器の表面に霜が付着すると、室外熱交換器の熱交換性能が低下してしまう恐れがある。そこで、暖房専用空気調和装置1では、暖房運転時に室外熱交換器23に着霜が生じた際には、一時的に四路切換弁22が第1状態から第2状態に切り換えられて以下のようなデフロスト運転が行われている。
【0052】
(b)デフロスト運転
デフロスト運転時は、四路切換弁22が第2状態となるように制御されている。すなわち、圧縮機21の吐出側が室外熱交換器23のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側がガス側閉鎖弁27およびガス側冷媒連絡配管7を介して室内熱交換器42のガス側に接続された状態となるように、四路切換弁22が制御されている。
【0053】
この状態において、圧縮機21が駆動されると、まず、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、そして圧縮されて高圧のガス冷媒となる。そして、この高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して室外熱交換器23に送られ、室外熱交換器23において外気と熱交換を行って凝縮されて高圧の液冷媒となる。このとき、熱交換が行われる高圧のガス冷媒から放出される熱によって室外熱交換器23の表面に付着した霜、または、氷は融かされることになる。なお、デフロスト運転時においては、室外ファン28は停止した状態に制御されている。
【0054】
そして、高圧の液冷媒は、室外膨張弁24によって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、液側閉鎖弁26および液側冷媒連絡配管6を経由して室内ユニット4に送られる。室内ユニット4に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器42に送られ、室内熱交換器42で室内空気と熱交換を行って蒸発されて低圧のガス冷媒となる。このとき、室内ファン43は、停止した状態に制御されている。これは、室内ファン43が稼働していると室内空間に冷風が吹き出されてユーザ等の快適性が損なわれるおそれがあるので、これを防止するためである。
【0055】
そして、低圧のガス冷媒は、ガス側冷媒連絡配管7およびガス側閉鎖弁27を経由して室外ユニット2に送られ、四路切換弁22を経由してアキュムレータ25に流入する。なお、室内ファン43が停止しているために室内熱交換器42で蒸発されない低圧の液冷媒は、アキュムレータ25に溜められることになる。
【0056】
そして、アキュムレータ25に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。
【0057】
(2)試運転モード
次に、試運転モードにおける試運転について説明する。なお、試運転は、リモコン(図示せず)に設けられる試運転モードに設定するための操作ボタンを、作業者が操作することによって行われるものである。また、試運転モードにおいて行われる試運転の全体の期間である試運転期間は、予め設定されており(例えば、3分)、設定されている試運転期間が終了すると、リモコンを介してユーザから設定される運転モード(通常運転モードにおける暖房運転)へ切り換えられる。
【0058】
ここで、通常、試運転は、四路切換弁22が第2状態に制御されている状態(冷媒回路がいわゆる冷房サイクルの状態)で行われることが多い。これは、暖房サイクルで試運転を行うと、冷媒圧力センサ33で検知される圧力が上がりにくいため、いち早く閉鎖弁(例えば、ガス側閉鎖弁27)が開の状態であるかを検知しにくくなることが考えられるからである。
【0059】
しかし、暖房専用空気調和装置では、ドレンパンに溜まったドレン水を室外に排出するようなドレン排水工事がされていないものが多い。このため、例えば、高温多湿の場所や高温多湿の季節(例えば、夏場)において暖房専用空気調和装置が使用され、冷房サイクルで試運転が行われた場合、室内ファンによって室内熱交換器に送られる室内空気が室内熱交換器内を流れる冷媒に熱を奪われることによって、室内熱交換器において大量にドレン水が生じることが想定される。よって、室内熱交換器に生じるドレン水をドレンパンに溜めることができるとしても、ドレン水の量がドレンパンの貯水可能な容量を超えた場合、ドレン水がドレンパンから溢れ出て室内へと流れてしまうことが考えられる。
【0060】
そこで、暖房専用空気調和装置1の試運転時においては、圧縮機21を運転し室内ファン43を停止させるドレン水抑制制御を行っている。ここで、ドレン水抑制制御を行うドレン水抑制期間は、試運転期間と同じである。すなわち、暖房専用空気調和装置1では、試運転モードにおける試運転中、常に室内ファン43を停止させている。
【0061】
これにより、室内ファン43を稼動させているときよりも室内熱交換器42における冷媒と室内空気との熱交換効率が低下するので、ドレン水の発生が抑制される。よって、ドレンパン45からドレン水が溢れ出ることを防止することができるようになっている。
【0062】
なお、試運転時における暖房専用空気調和装置1の動作については、デフロスト運転時における暖房専用空気調和装置1の動作とほぼ同様である。但し、デフロスト運転時においては室外ファン28を停止させているが、試運転時においては室外ファン28を稼働させている点と、試運転時においては、室外膨張弁24の開度が固定である点とが異なる。
【0063】
<第1実施形態に係る暖房専用空気調和装置1の特徴>
(1)
第1実施形態では、試運転は、四路切換弁22が第2状態となっている状態で行われる。そして、試運転時においては、室内ファン43を停止させている。
【0064】
よって、室内ファン43によって室内空気が室内熱交換器42に送られなくなるので、室内熱交換器42における冷媒が熱交換を行う室内空気の量が少なくなる。したがって、室内熱交換器42において発生するドレン水も少なくなるので、結果として夏場であっても、ドレンパン45からドレン水が溢れ出ることを防止することができる。また、ドレンパン45からドレン水が溢れ出ないことにより、ドレン水が室内へと流れることも防止することができる。また、これにより、ドレン工事も不要になる。
【0065】
(2)
第1実施形態では、試運転時およびデフロスト運転時に室内ファン43を停止させている。このため、室内熱交換器42を流れる冷媒の蒸発量は、室内ファン43を稼働させているときよりも少なくなることが想定される。そして、室内熱交換器42を流れる冷媒の蒸発量が少なくなることにより、ガス冷媒だけでなく、気液二相状態の冷媒も室内熱交換器42から出て室外ユニット2側へと流れることになると考えられる。
【0066】
そこで、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22との間にアキュムレータ25を設けることにより、気液二相状態の冷媒が室外ユニット2側へと流れても、液冷媒をアキュムレータ25に溜めることができるので、ガス冷媒のみを圧縮機21へと吸入させることができている。これにより、圧縮機21の損壊を防止することができる。
【0067】
<第1実施形態に係る暖房専用空気調和装置1の変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0068】
(A)
上記実施形態では、1台の室外ユニット2に対して1台の室内ユニット4が接続されるセパレート型の暖房専用空気調和装置1に限定して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、室外ユニット2と室内ユニット4とが一体となっている一体型の暖房専用空気調和装置であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、1台の室外ユニット2に対して1台の室内ユニット4が接続される、いわゆるペア式の暖房専用空気調和装置1に限定して説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、1台の室外ユニット2に複数台の室内ユニットが接続される、いわゆるマルチ式の暖房専用空気調和装置であってもよい。
【0070】
(B)
上記実施形態においては、冷媒はフロン系冷媒に限られず、CO2冷媒等の自然冷媒であってもよい。
【0071】
<第2実施形態>
続いて、暖房専用空気調和装置1の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成機器等については、同符号を付し、説明を省略する。
【0072】
第2実施形態の第1実施形態と異なる点について簡単に説明すると、第1実施形態では、試運転モードにおける試運転中常に室内ファン43を停止させているが、第2実施形態では、試運転時に常に室内ファン43を停止させずに室内ファン43を動かす場合があるという点である。
【0073】
以下、第2実施形態における暖房専用空気調和装置1の試運転時における動作について、図3を用いて説明する。
【0074】
図3は、第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1の試運転時における動作を示すフローチャートである。
【0075】
まず、ステップS101では、第1実施形態と同様に、四路切換弁22を第2状態に制御する。そして、ステップS102で、第1実施形態と同様に、圧縮機21、室外ファン28を駆動する。このとき、第1実施形態では、試運転モードにおける試運転時において常に室内ファン43を停止させているため、室内ファン43を駆動しないが、第2実施形態では、圧縮機21および室外ファン28以外にもさらに室内ファン43を駆動している。
【0076】
次に、ステップS103で、室内ファン43が正常に動作しているか否かを判定する。動作していると判定する場合は、ステップS104へ移行し、他方、動作していないと判定する場合は、ステップS105へ移行する。
【0077】
ステップS104では、第1実施形態と同様に、ドレン水抑制制御を行う。すなわち、圧縮機21はそのまま運転状態を維持し、室内ファン43を停止する。
【0078】
ステップS105では、室内ファン43が正常に動作していないと判定して、報知部(図示せず、例えば、LEDや、文字表示等を行うもの等)を介して警告表示を行う。
【0079】
ここで、第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1では、室内ファン43を駆動している期間(第1の期間に相当)は、5秒〜10秒程度である。よって、ドレン水抑制制御を行う期間であるドレン水抑制期間は、試運転期間(例えば、3分)の8割以上(具体的には、約94%〜約97%)を占めている。
【0080】
また、上述の通り、室内ファン43を駆動している期間は、試運転期間における始めの期間である。これは、蒸発温度が下がってきたときに室内ファン43を駆動するとドレン水が発生しやすくなるためである。
【0081】
なお、圧縮機21や室外ファン28が正常に駆動しない場合も、室内ファン43と同様に、警告表示を行うものとする。
【0082】
<第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1の特徴>
第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1は、試運転モードにおける試運転時に、室内ファン43を駆動させることができるので、例えば、室内ファン43が正常に動作しているかの確認を行いたい場合等に、有効である。
【0083】
また、第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1では、ドレン水抑制制御を行うドレン水抑制期間は、試運転期間の8割以上を占める。
【0084】
試運転モードにおける試運転時において、全体の期間の8割以上の期間、室内ファン43を停止させることで、室内ファン43から室内熱交換器42に対して送られる室内空気の量を減らすことができる。よって、室内熱交換器42において発生するドレン水が少なくなる。従って、室内ファン43が正常に動作するかを確認するために室内ファン43を駆動したとしても、ドレンパン45からドレン水が溢れ出ることを防止できる。
【0085】
また、第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1では、室内ファン43を駆動している期間は、試運転期間における始めの期間である。すなわち、さほど蒸発温度が下がっていない試運転時における始めの期間に室内ファン43を駆動している。これにより、室内ファン43が正常に動作するかを確認するために室内ファン43を駆動したとしても、ドレンパン45からドレン水が溢れ出ることを防止できる。また、これにより、ドレン工事も不要になる。
【0086】
<第2実施形態に係る暖房専用空気調和装置1の変形例>
上記実施形態では、室内ファン43を駆動して、室内ファン43が正常に動作するかを確認しているが、これに限られるものではなく、他の目的のために、室内ファン43を上述のように駆動してもよい。この場合であっても、上述の効果と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明では、例えば、高温多湿の夏場などにおいて暖房サイクルと逆のサイクルで暖房専用空気調和装置の試運転を行う場合に、室内熱交換器からのドレン水がドレンパンから溢れることを防止することができるので、ドレン工事が不要であり、有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 暖房専用空気調和装置
2 室外ケーシング(室外ユニット)
4 室内ケーシング(室内ユニット)
7 ガス側冷媒連絡配管(ガス冷媒配管)
9 制御部
21 圧縮機(圧縮機構)
22 四路切換弁
23 室外熱交換器
24 室外膨張弁(膨張機構)
25 アキュムレータ(気液分離器)
27 ガス側閉鎖弁
33 冷媒圧力センサ(圧力検知器)
42 室内熱交換器
43 室内ファン(送風機)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2001−99459号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構(21)と、
室内熱交換器(42)と、
室外熱交換器(23)と、
前記室内熱交換器(42)の一端と前記室外熱交換器(23)の一端との間に設けられる膨張機構(24)と、
前記圧縮機構(21)の吐出側と前記室内熱交換器(42)の他端とを接続すると共に前記圧縮機構(21)の吸入側と前記室外熱交換器(23)の他端とを接続する第1状態と、前記圧縮機構(21)の吐出側と前記室外熱交換器(23)の他端とを接続すると共に前記圧縮機構(21)の吸入側と前記室内熱交換器(42)の他端とを接続する第2状態とを切り換える四路切換弁(22)と、
前記室内熱交換器(42)に対して送風を行う送風機(43)と、
少なくとも前記圧縮機構(21)、前記膨張機構(24)、前記四路切換弁(22)および前記送風機(43)の制御を行う制御部(9)と、
を備え、
前記制御部(9)は、試運転モードにおいて、前記四路切換弁(22)を前記第2状態に切り換え、
前記試運転モードには、前記制御部(9)が前記圧縮機構(21)を運転し前記送風機(43)を停止するドレン水抑制制御を行うドレン水抑制期間が設けられる、
暖房専用空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記室内熱交換器(42)の他端と前記四路切換弁(22)との間に設けられるガス側閉鎖弁(27)と、
前記室内熱交換器(42)の他端と前記圧縮機構(21)の吸入側とを接続するガス冷媒配管(7)に取り付けられる圧力検知器(33)と、
をさらに備える、
請求項1に記載の暖房専用空気調和装置(1)。
【請求項3】
室内ケーシング(4)と、
室外ケーシング(2)と、
をさらに備え、
前記室内ケーシング(4)には、前記室内熱交換器(42)および前記送風機(43)が収容され、
前記室外ケーシング(2)には、前記圧縮機構(21)、前記室外熱交換器(23)、前記膨張機構(24)、前記四路切換弁(22)、前記ガス側閉鎖弁(27)および前記圧力検知器(33)が収容される、
請求項2に記載の暖房専用空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記圧縮機構(21)の吸入側と前記四路切換弁(22)との間に設けられる気液分離器(25)をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の暖房専用空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記ドレン水抑制期間は、前記試運転モードの全体の期間の8割以上を占める、
請求項1から4のいずれかに記載の暖房専用空気調和装置(1)。
【請求項6】
前記試運転モードにおける、前記ドレン水抑制期間以外の第1の期間は、前記試運転モードの全体の期間における始めの期間である、
請求項5に記載の暖房専用空気調和装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7483(P2011−7483A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120132(P2010−120132)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【特許番号】特許第4582261号(P4582261)
【特許公報発行日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】