説明

暖気流体誘導板およびこれを備える機器収納架並びに暖気流体制御方法

【課題】空調空気として循環するように暖気を空調装置の暖気吸入口に向けて誘導し、空調空気の風量を減少させても暖気が天井付近に滞留せず、冷却効果の低下を回避することのできる暖気流体制御を提供すること。
【解決手段】冷気caを内部に流入させて流出させる間に、収納する通信機器Mを冷却するように通信機械室Mに設置されている機器収容ラック10に取り付けられる暖気流体誘導板21であって、機器収納ラックの上部に設置されて、周囲温度との差異に応じて上昇しようとする暖気waを、空調装置ACの暖気流入口ACiに向かう暖気の気流へ誘導する誘導部23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖気流体誘導板およびこれを備える機器収納架並びに暖気流体制御方法に関し、詳しくは、発熱体が排気する暖気を、空調装置が回収する空調空気の循環の流れに向かうように制御するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体となるために冷却が必要な機器が存在する。特に、近年の情報処理装置では、データ処理の高集積化・高密度化に伴って発熱量が多くなり、内部基板の搭載部品を故障や誤動作等を発生させることなく動作させるために冷却が必須になっている。
【0003】
この種の発熱機器、例えば、通信機器やデータ処理装置などは、複数台を整然と整列させた状態にして膨大なデータ量の処理を実行することを可能にするために、適温に温調された専用の稼働ルーム(空間)を準備して設置することが行われている。
【0004】
この専用ルームでは、1台分の横幅と奥行きを有するラック(機器収納架)内に、複数台の装置機器を上下方向の間に隙間を確保しつつ平行に積み上げる形態で取付支持させており、このラックを一列に並列させるようにレイアウトされている。このラック列を複数列設置する必要がある場合には、装置機器の正面を前面側にして向かい合わせで対峙するようにレイアウトする。この種の装置機器は、データ処理などの稼働に伴って発熱して、温度上昇が故障や誤動作等の要因になることから、装置機器内やラック内の空気を外部に追い出して外気を取り込む排熱処理が必要であり、さらに、取り込む外気を冷気(流体)にして効果的に冷却することも行われている。
【0005】
さらに、この専用ルームでは、対峙するラック列の間に冷気を吹き出させて冷気空間(コールドアイル)を形成するコールドアイル方式を採用することにより、ラック内の個々の装置機器間の隙間に流入させて背面側から流出させる間に熱交換させて効率よく冷却することも行われている。このコールドアイル方式では、装置機器の発熱により加熱された暖気が背面側から前面側に回り込んで冷却効率を低下させてしまうことを防止するために、ラック列の前面側(冷気の流入面側)上部に、板材を設置して回込制限壁を設けることが特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−184070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような発熱装置機器の温調された冷気による冷却にあっては、装置機器で加熱された暖気を空調装置に取り込ませて冷気にしてラック列間のコールドアイルに吹き出させており、近年の省エネルギの推進に伴って必要最低限の空調に調整される傾向にある。
【0008】
このため、十分な風量で空調空気を循環させるように空調装置を稼働させることができる場合には、上記の特許文献1に記載の流体制御壁が有効に機能し、暖気の回り込みを抑制することが可能となるが、コールドアイルに吹き出す冷気の風量や空調装置に引き込む風量によっては、空調空気を循環させることができず、上昇した暖気を十分に回収できない場合もある。このため、装置機器の冷却効果を低下させてしまい設計通りの冷却機能を果たすことができない状況になってしまう可能性もある。
【0009】
そこで、本発明は、空調空気として循環するように暖気を空調装置の暖気吸入口に向けて誘導し、空調空気の風量を減少させても暖気が天井付近に滞留せず、冷却効果の低下を回避することのできる暖気流体制御を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する暖気流体誘導板の発明の第1の態様は、周囲温度よりも低温の流体を流入させて内部に流通させた後に流出させる当該暖気流体を空調空気として循環させる間に、前記流体により冷却させる発熱部を内部に備える構造体に取り付けられる暖気流体誘導板であって、前記構造体の前記暖気流体の流出面から流出して周囲温度との差異に応じて上昇しようとする当該暖気流体を、空調装置の暖気流入口に向かう暖気の気流へ誘導する誘導部を有することを特徴とするものである。
【0011】
上記課題を解決する暖気流体制御板の発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記誘導部は、前記構造体の上部に設置されて、該構造体の前記暖気流体の流出面から流出する前記暖気流体が、前記空調装置の前記暖気流入口に向かう暖気の気流に乗る方向に流動させるように形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
上記課題を解決する暖気流体誘導板の発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様の特定事項に加え、前記誘導部は、前記暖気流体の循環流路の下流側ほど上側に位置する傾斜面となるように設置されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記課題を解決する機器収納架の発明の第1の態様は、発熱部となる1台または2台以上の機器を収納して、正面、背面または側面のいずれか一面側から周囲温度よりも低温の流体を流入させて内部に流通させた後に流出させる間に、前記流体により前記機器を冷却させる構造体に構成されている架であって、上記請求項1から4のいずれか1項に記載の暖気流体誘導板を備えることを特徴とするものである。
【0014】
上記課題を解決する暖気流体制御方法の発明の第1の態様は、周囲温度よりも低温の流体を流入させて構造体の内部に流通させた後に流出させる当該暖気流体を空調空気として循環させる間に、該構造体内の発熱体との間で熱交換させた当該暖気流体を誘導する暖気流体制御方法であって、前記構造体の前記暖気流体の流出面から流出して周囲温度との差異に応じて上昇しようとする当該暖気流体を、空調装置の暖気流入口に向かう暖気の気流へ誘導することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明の一態様によれば、発熱部を冷却して温まって上昇する暖気流体を、空調装置の暖気流入口に向かう暖気の気流に誘導させることによって、天井付近に滞留したり、流入面側に回り込むことなく空調装置に回収させることができ、流入面側を温度低下させることができる。したがって、冷却対象の発熱部周りに流入させる低温の流体が温度上昇してしまことなく、省エネルギを達成しつつ冷却効率の低下を防止して発熱機器を効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る暖気流体誘導板およびこれを備える機器収納架並びに流体制御方法を示す図であり、その全体構成を示す一部透視斜視図である。
【図2】その機器収納架を示す側面図である。
【図3】その機器収納架と空調装置の位置関係を示す立面図である。
【図4】その機器収納架の上部に暖気流体誘導板を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】その冷却流体および暖気流体の流れを説明する図であり、本実施形態の設置時を示す概念立面図である。
【図6】その図5と異なる冷却流体および暖気流体の流れを説明する図であり、本実施形態の非設置時を示す概念断面図である。
【図7】その暖気流体誘導板の他の形態を示す図であり、(a)は本実施形態を示す概念斜視図、(b)はその変形例を示す概念斜視図、(c)は(b)と異なる変形例を示す概念斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図5は本発明の一実施形態に係る暖気流体誘導板およびこれを備える機器収納架並びに流体制御方法を示す図である。
【0018】
図1〜図3において、機器収納ラック(機器収納架)10は、通信機械室R内で複数列になるように設置されており、それぞれ複数台の通信機器Mを収納する状態に取り付けて支持させることができるように作製されている。
【0019】
この機器収納ラック10は、1台の通信機器Mの横幅と奥行きを有しており、その通信機器Mの左右の側面側下部を不図示のレールで案内しつつ収納させた後に、正面Mf側をネジ止めして取付支持させるようになっている。この状態で、機器収納ラック10は、通信機器Mを寝かせた姿勢にして間に隙間Sを形成確保しつつ上下方向に積み上げる形態で複数台を取付支持させることができるように設計されている。なお、この機器収納ラック10は、レールに代えて、個々の通信機器Mを載せる状態で支持する棚板を備えていてもよい。
【0020】
ここで、通信機器Mは、膨大なデータ処理の実行時に内部基板搭載の集積回路が発熱するために、故障や誤動作しないように冷却する必要があり、内外の空気を循環させるように不図示のファンが取り付けられている。すなわち、機器収納ラック10は、発熱部となる通信機器Mを収納する構造体を構成している。
【0021】
通信機械室Rは、複数台の通信機器Mを収納支持する機器収納ラック10を、その通信機器Mの正面Mf側を向かい合わせて対峙する2列の並列状態に隙間なく設置させており、通信機器Mは、正面Mf側が2列の機器収納ラック10の間を通路Pにする管理者等に対して前面側になるように配置(レイアウト)されている。この通信機械室Rは、通路Pの突き当たりに空調装置ACを設置して室内を一定温度に調整しており、空調装置ACは、上部の吸込口(暖気流入口)ACiから天井側の空気(流体)を吸い込んで冷却した後に、二重床の間の空間Dに吹き込んで通路Pに形成されている複数の吹き出し口から吹き出させて循環するようになっている。
【0022】
すなわち、通信機械室Rは、空調装置ACから冷気(流体空気)caを機器収納ラック10列の間の通路Pに吹き出させてコールドアイル(冷気空間)を形成し、その冷気caを機器収納ラック10内の通信機器M間に通気(流通)させて内外空気循環により熱交換させるようになっており、その熱交換後の暖気(排熱)waは、通信機器Mの背面Mbに逃がして周囲の温度差により天井側に上昇させ空調装置ACの吸込口ACiに向かう流れ(気流)を作ることにより、効果的に通信機器Mを冷却することのできるコールドアイル方式を採用している。
【0023】
そして、機器収納ラック10は、上述したように、通信機器Mの正面Mf側を冷気caの流入側にする一方、背面Mb側を暖気waの流出側にしており、そのラック10上部には、暖気流体誘導板21が隙間なく連続するように設置されている。
【0024】
暖気流体誘導板21は、図4に示すように、機器収納ラック10の上部の枠形状に一致する形状に形成されている固定部22と、この固定部22に隣接して空調装置ACのある方向に向かって対面する形態で傾斜するように形成されている暖気誘導部23と、を一体形成して作製されている。すなわち、暖気流体誘導板21の暖気誘導部23は、空調装置ACの吸込口ACiに向かう暖気waの循環流路の下流側ほど上側に位置する傾斜面、言い換えると、空調装置ACに近接するほど上昇してその空調装置ACに向かう気流に乗る方向に暖気waを流動させる傾斜面を有するように形成されている。そして、この暖気流体誘導板21は、固定部22に穿孔されているネジ孔22aを利用して機器収納ラック10のフレーム上部にネジ止めするようになっている。この暖気流体誘導板21は、例えば隣接するラック10同士を連結させるためのボルト穴を利用して取り付けることができ、固定部22と共に誘導部23の周縁部は、例えば、硬質の樹脂材料により作製されている。
【0025】
これにより、図5に示すように、機器収納ラック10から排気された暖気waは、周囲との温度差により真上に上昇した後に、暖気流体誘導板21の暖気誘導部23の傾斜面によって空調空気として循環させるように誘導されることになり、周囲も巻き込んで誘導する空調空気の循環流路を形成することができ、暖気waの回り込みによる冷却効果の低下を回避することができる。すなわち、暖気流体誘導板21の暖気誘導部23が暖気を誘導する流路経路の上面側を構成している。これに対して、暖気流体誘導板21を設けずに空調装置ACが循環させる空調空気(流体)の量を減少させると、空調装置ACによる暖気waの吸い込み力も減少するため、図6に示すように、空調装置ACから離れた場所において暖気waが天井付近に滞留してしまい、ホットスポットの発生や暖気waのコールドアイルへの回り込みが発生してしまう。
【0026】
よって、暖気流体誘導板21は、暖気流体制御方法を実行して、機器収納ラック10から流出した暖気waが、その機器収納ラック10の上方の天井付近で滞留してしまうこと(図6を参照)を抑制することができ、ラック10の隣接位置から空調装置AC側にその暖気waを誘導して通路Pのコールドアイルの温度を効果的に冷却させることができる。
【0027】
なお、この暖気流体誘導板21は、上昇した暖気waを滞留させることなく空調空気として誘導させるように適当な仰角で上方に傾斜する姿勢で設置すればよく、例えば、ラック10より張り出す形状でもよく、水平から30度〜60度程度の仰角に適宜設計すればよい。
【0028】
このように本実施形態においては、通信機械室Rの空調装置ACの風量を最低限に絞って省エネルギを図る必要がある環境でも、機器収納ラック10から排気された後、上昇する暖気waを、空調空気の循環に誘導させ、暖気waの滞留や回り込みによる冷却効果の低下を回避し、十分に放冷させることができる。
【0029】
ここで、本実施形態では、図7(a)に示すように、機器収納ラック10上部の隣接位置に誘導部23が位置するように暖気流体誘導板21を設置するが、これに加えて、そのラック10に天板を設けて、その天板付近でも積極的に誘導部23側に暖気waが流れ込むようにしてもよい。または、図7(b)に示すように、そのラック10の天板位置に、言い換えると、ラック10の直上に暖気流体誘導板21の誘導部23が位置するように設置してもよい。さらに、図7(c)に示すように、傾斜面が変化する誘導部33を備える暖気流体誘導板31としてもよく、例えば、その誘導部33の中央に水平方向の稜線33aを有するように折り曲げたり、あるいは、徐々に水平に近づくように湾曲する形状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 機器収納ラック
11 背面側流出面
12 前面側流入面
21 暖気流体誘導板
22 固定部
23 暖気誘導部
AC 空調装置
ACi 吸込口
ca 冷気
M 通信機器
P 通路
R 通信機械室
S 隙間
wa 暖気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度よりも低温の流体を流入させて内部に流通させた後に流出させる当該暖気流体を空調空気として循環させる間に、前記流体により冷却させる発熱部を内部に備える構造体に取り付けられる暖気流体誘導板であって、
前記構造体の前記暖気流体の流出面から流出して周囲温度との差異に応じて上昇しようとする当該暖気流体を、空調装置の暖気流入口に向かう暖気の気流へ誘導する誘導部を有することを特徴とする暖気流体誘導板。
【請求項2】
前記誘導部は、前記構造体の上部に設置されて、該構造体の前記暖気流体の流出面から流出する前記暖気流体が、前記空調装置の前記暖気流入口に向かう暖気の気流に乗る方向に流動させるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の暖気流体誘導板。
【請求項3】
前記誘導部は、前記暖気流体の循環流路の下流側ほど上側に位置する傾斜面となるように設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の暖気流体誘導板。
【請求項4】
発熱部となる1台または2台以上の機器を収納して、正面、背面または側面のいずれか一面側から周囲温度よりも低温の流体を流入させて内部に流通させた後に流出させる間に、前記流体により前記機器を冷却させる構造体に構成されている架であって、
上記請求項1から4のいずれか1項に記載の暖気流体誘導板を備えることを特徴とする機器収納架。
【請求項5】
周囲温度よりも低温の流体を流入させて構造体の内部に流通させた後に流出させる当該暖気流体を空調空気として循環させる間に、該構造体内の発熱体との間で熱交換させた当該暖気流体を誘導する暖気流体制御方法であって、
前記構造体の前記暖気流体の流出面から流出して周囲温度との差異に応じて上昇しようとする当該暖気流体を、空調装置の暖気流入口に向かう暖気の気流へ誘導することを特徴とする暖気流体制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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