説明

暗渠形成装置

【課題】走行機体の進行に伴い穿入ビームは進行方向に揺振動作しつつ土中に穿入して穿入跡溝を形成し、かつ、穿孔体は穿孔機構により穿入ビームの進行方向後方位置に縦孔を間隔を置いて穿孔することになり、しかして、穿入ビームにより形成される穿入跡溝及び縦孔の存在により圃場の通水性、排水性及び通気性を良好に保持することができ、空気、水、養分の吸収を良化することができ、稲等の作物を生育を良化することができる。
【解決手段】走行機体1に連結機構2により機枠3を連結し、機枠に穿入ビーム4を揺振機構5により進行方向に揺振動作自在に縦設し、穿入ビームの進行方向後方位置に圃場土中Wに縦孔Gを穿孔可能な穿孔体15を配設し、穿孔体を穿孔動作させる穿孔機構16を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば水田や畑の土中に暗渠を形成する際に用いられる暗渠形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の暗渠形成装置として、走行機体に連結機構により機枠を連結し、機枠に穿入ビームを揺振機構により進行方向に揺振動作自在に縦設し、穿入ビームの下部に土中に暗渠を形成可能な弾丸体を配設してなる構造のものが知られている。
【0003】
しかして、圃場等は表層の耕土層、その下層の硬土層、さらに下層の芯土層からなり、この耕土層、硬土層及び芯土層に穿入ビームを穿入進行させ、硬土層を破ってその下の芯土層に弾丸体により暗渠を開穴形成することになる。
【特許文献1】特開2003−180102公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来構造の場合、穿入ビームの穿入作業進行直後においては、土中の上下方向に形成される穿入跡溝は穿入ビームの厚さに応じた幅に保持されているが、圃場土質や時間の経過により穿入溝跡の両対向面が近接して狭まって閉塞されることがあり、このため圃場の通水性、排水性及び通気性を低下させることがあり、空気、水、養分の吸収不足により稲等の作物の生育が阻害され、収穫量や品質の低下をもたらすことがあるという不都合を有している
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に穿入ビームを揺振機構により進行方向に揺振動作自在に縦設し、該穿入ビームの進行方向後方位置に圃場土中に縦孔を穿孔可能な穿孔体を配設し、該穿孔体を穿孔動作させる穿孔機構を設けてなることを特徴とする暗渠形成装置にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記穿孔機構は上記穿孔体を上下動作させる上下動機構及び該穿孔体を進行方向前方位置から後方位置への後方移動を許容すると共に該穿孔体を該進行方向後方位置から前方位置に前方移動させる復帰移動機構からなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明にあっては、上記穿孔体は上記圃場土中に穿入可能な穿入体及び該穿入体の下部に設けられ、圃場土を刳り貫いて持ち上げる刳貫口部をもつ捕捉部からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、走行機体の進行に伴い穿入ビームは進行方向に揺振動作しつつ土中に穿入して穿入跡溝を形成し、かつ、穿孔体は穿孔機構により穿入ビームの進行方向後方位置に縦孔を間隔を置いて穿孔することになり、しかして、穿入ビームにより形成される穿入跡溝及び縦孔の存在により圃場の通水性、排水性及び通気性を良好に保持することができ、空気、水、養分の吸収を良化することができ、稲等の作物を生育を良化することができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記穿孔機構は上記穿孔体を上下動作させる上下動機構及び穿孔体を進行方向前方位置から後方位置への後方移動を許容すると共に穿孔体を進行方向後方位置から前方位置に前方移動させる復帰移動機構からなるので、走行機体を走行した状態で縦孔を穿孔することができて作業性を高めることができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記穿孔体は上記圃場土中に穿入可能な穿入体及び穿入体の下部に設けられ、圃場土を刳り貫いて持ち上げる刳貫口部をもつ捕捉部からなるので、縦孔を良好に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図16は本発明の実施の形態例を示し、図1乃至図14は第一形態例、図15、16は第二形態例である。
【0010】
図1乃至図14の第一形態例において、1は走行機体であって、この場合トラクタが用いられ、走行機体1の後部に三点リンク式の連結機構2により機枠3を上下動可能に連結して構成している。
【0011】
4は穿入ビーム、5は揺振機構であって、この場合、図4乃至図8の如く、機枠3に揺動アーム6の中程部を支点軸7により揺振動作自在に枢着すると共に機枠3に主軸8を軸受8a・8aにより回転自在に横設し、走行機体1の動力取出軸9と主軸8とを自在継手10により連結し、揺動アーム6と穿入ビーム4との間に偏心輪機構11を介装し、偏心輪機構11として、上記主軸8の軸受8a・8a間に偏心軸部11aを形成し、偏心軸部11aに接続部材11bの上側の軸受11cを嵌合し、接続部材11bの下側の軸受11dに揺動アーム6の基軸6aを嵌挿し、揺動アーム6をガイドロール6b・6b及びガイド片3a・3aにより上下揺動案内し、主軸8の回転により偏心輪機構11を介して揺動アーム6を支点軸7を中心として上下揺振動作させ、揺動アーム6の後端部に穿入ビーム4を上下方向に取付け、図9、図10の如く、穿入ビーム4の下端部に犂体12を取付けると共にフック状の連結材13により砲弾状の弾丸体14を連結して構成している。
【0012】
しかして、走行機体1の進行に伴い穿入ビーム4は進行方向に揺振動作しつつ圃場土中Wに穿入して穿入跡溝Sを形成すると共に犂体12の穿入後方位置の弾丸体14により暗渠Hを連続して形成することになる。
【0013】
15は穿孔体、16は穿孔機構であって、この場合、図13の如く、穿孔体15は上記圃場土中に穿入可能な長尺板状の穿入体15a及び穿入体15aの下部に設けられ、圃場土Wを刳り貫いて持ち上げる刳貫口部15bをもつ捕捉部15cにより形成され、この場合、刳貫口部15bの内径は約30mm〜40mm程度であり、また、上記穿孔機構16は上記穿孔体15を上下動作させる上下動機構17及び穿孔体15を進行方向前方位置から後方位置への後方移動を許容すると共に穿孔体15を進行方向後方位置から前方位置に前方移動させる復帰移動機構18により構成されている。
【0014】
この場合、上記上下動機構17は、図2乃至図4の如く、上記機枠3に穿孔機枠3bを進行方向後方に向けて突設し、穿孔機枠3bに昇降体19を上下一対計4個のガイドロール20により回り止め状態で上下昇降自在に縦設し、穿孔機枠3aに中間軸21及び駆動軸22を横架し、中間軸21と上記主軸8との間に歯車機構23を介装すると共に中間軸21と駆動軸22との間にチェーン機構24を介装し、駆動軸22にクランク25の基部を固定し、クランク25の先端部と上記昇降体19の下部との間に枢軸25a・19aによりクランクロッド25bを枢着架設して構成している。
【0015】
また、上記復帰移動機構18は、この場合、図11、図12の如く、上記昇降体19の下部にガイド体26を取り付け、ガイド体26に左右一対計4個のガイドロール27を取付け、ガイドロール27により移動体28を進行方向の前後方向に移動自在に設け、移動体28の進行方向前部にバネ掛けピン29を取付け、バネ掛けピン29と移動体28との間に戻動用バネ30を掛架し、移動体28にガイド体26の進行方向後部に当接可能なストッパー28aを取付け、移動体28に上記穿孔体15の上部を固定して構成している。
【0016】
しかして、主軸8の回転により上下動機構17の昇降体19はクランク25及びクランクロッド25bの作用により上下昇降動作し、昇降体19の下降動作により穿孔体15は圃場土中Wに穿入し、このとき、上記復帰移動機構18の移動体28は移動体28とガイドロール27とにより進行方向前方位置から後方位置への後方移動が許容されているので、走行機体1が前進走行しても、穿孔体15は圃場土中Wに穿入して静止状態に保持され、そして、昇降体19の上昇動作により穿孔体15が圃場土中Wから抜け出ると、戻動用バネ30により移動体28を介して穿孔体15は後方位置から前方位置に前方移動して元の前方位置に復帰することになる。
【0017】
そして、図14の如く、この昇降体15の上下昇降により穿孔体15は圃場土中Wに対して穿入抜脱を繰返し、穿孔体5の穿入下降時において、圃場土Wは捕捉部15cの刳貫口部15bにより刳り貫かれ、抜脱上昇時において、刳り貫かれた円柱状の刳り貫き土Fは捕捉部15cの刳貫口部15b内の土が底板作用をなして持ち上げられ、刳り貫き土Fは圃場面Mに排出され、これにより圃場土中Wに縦孔Gが形成され、図中左方向への走行機体1の前進により縦孔Gが複数個間隔をおいて形成されることになる。
【0018】
31は溝切円盤であって、上記穿入ビーム4の基部に取付片31aを垂設し、取付片31aに溝切円盤31を回転自在に取り付け、穿入ビーム4の進行方向前方位置に揺振動作しつつ穿入条溝Dを形成するように構成している。
【0019】
32は転輪であって、上記機枠3の左右両側位置に取付アーム32a・32aを高さ調節機構32bにより高さ調節自在に配置し、田面等の圃場面Mに転輪32を接地させ、機枠3の安定走行及び暗渠Hの表面からの形成高さの設定を図るように構成している。
【0020】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、図14の如く、図中左方向への走行機体1の前進進行に伴い穿入ビーム4は進行方向に揺振動作しつつ土中Wに穿入して穿入跡溝Sを形成すると共に弾丸体14により暗渠Hを連続して形成し、かつ、穿孔体15は穿孔機構16により穿入ビーム4の進行方向後方位置に縦孔Gを間隔を置いて穿孔することになり、しかして、穿入ビーム4により形成される穿入跡溝S及び縦孔Gの存在により圃場の通水性、排水性及び通気性を良好に保持することができ、空気、水、養分の吸収を良化することができ、稲等の作物を生育を良化することができる。
【0021】
又、この場合、上記穿孔機構16は上記穿孔体15を上下動作させる上下動機構17及び穿孔体15を進行方向前方位置から後方位置への後方移動を許容すると共に穿孔体15を進行方向後方位置から前方位置に前方移動させる復帰移動機構18からなるので、走行機体1を走行した状態で縦孔Gを穿孔することができ、作業性を高めることができ、又、この場合、上記穿孔体15は上記圃場土中Wに穿入可能な穿入体15a及び穿入体15aの下部に設けられ、圃場土Wを刳り貫いて持ち上げる刳貫口部15bをもつ捕捉部15cからなるので、縦孔Gを良好に形成することができる。
【0022】
図15、図16は第二形態例は別例構造を示し、この場合、上記第一形態例の弾丸体14は砲弾状に形成され、穿入ビーム4の下端部にフック状の連結材13を介して連結されているが、この第二形態例にあっては、弾丸体33はほぼ砲弾の上半分の形状に形成され、穿入ビーム4の下端部に直接取付けられている。
【0023】
この実施の第二形態例にあっても、上記第一形態例と同様な作用効果を奏することができる。
【0024】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、穿入ビーム4、揺振機構5、穿孔体14、穿孔機構16、上下動機構17、復帰移動機構18、昇降体19の構造等は適宜変更して設計されるものである。また、上記実施の形態例においては、穿入ビーム4の下部に土中に暗渠を形成可能な弾丸体14・33を配設して構成しているが、これら弾丸体14・33を無くして構成することも勿論可能である。
【0025】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の第一形態例の全体側面図である。
【図2】本発明の実施の第一形態例の拡大側面図である。
【図3】本発明の実施の第一形態例の拡大平面図である。
【図4】本発明の実施の第一形態例の拡大側断面図である。
【図5】本発明の実施の第一形態例の平断面図である。
【図6】本発明の実施の第一形態例の部分側面図である。
【図7】本発明の実施の第一形態例の部分側断面図である。
【図8】本発明の実施の第一形態例の部分拡大平断面図である。
【図9】本発明の実施の第一形態例の部分拡大側面図である。
【図10】本発明の実施の第一形態例の部分拡大平断面図である。
【図11】本発明の実施の第一形態例の部分側断面図である。
【図12】本発明の実施の第一形態例の部分横断面図である。
【図13】本発明の実施の第一形態例の部分拡大斜視図である。
【図14】本発明の実施の第一形態例の部分拡大側断面図である。
【図15】本発明の実施の第二形態例の部分側面図である。
【図16】本発明の実施の第二形態例の部分横面図である。
【符号の説明】
【0027】
W 圃場土中
S 穿入跡溝
1 走行機体
2 連結機構
3 機枠
4 穿入ビーム
5 揺振機構
15 穿孔体
15a 穿入体
15b 刳貫口部
15c 捕捉部
16 穿孔機構
17 上下動機構
18 復帰移動機構
19 昇降体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に穿入ビームを揺振機構により進行方向に揺振動作自在に縦設し、該穿入ビームの進行方向後方位置に圃場土中に縦孔を穿孔可能な穿孔体を配設し、該穿孔体を穿孔動作させる穿孔機構を設けてなることを特徴とする暗渠形成装置。
【請求項2】
上記穿孔機構は上記穿孔体を上下動作させる上下動機構及び該穿孔体を進行方向前方位置から後方位置への後方移動を許容すると共に該穿孔体を該進行方向後方位置から前方位置に前方移動させる復帰移動機構からなることを特徴とする請求項1記載の暗渠形成装置。
【請求項3】
上記穿孔体は上記圃場土中に穿入可能な穿入体及び該穿入体の下部に設けられ、圃場土を刳り貫いて持ち上げる刳貫口部をもつ捕捉部からなることを特徴とする請求項1又は2記載の暗渠形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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