説明

暗渠排水管敷設装置

【課題】土中に暗渠排出管を敷設しつつ、その上に疎水材を同時に連続的に供給して各疎水材の厚みを正確に積層可能な暗渠排水管敷設装置を提供する。
【解決手段】暗渠排水管に第1の疎水材と第2の疎水材を積層していく暗渠排水管敷設装置2において、第1疎水材ホッパー7から第1の疎水材を受けて水平搬送コンベヤが設けられ、水平フレーム3の下部に、縦溝を形成する掘削体11が配設され、掘削体11の後部に暗渠排水管を案内して縦溝内に繰り出す暗渠排水管案内部15が設けられ、水平搬送コンベヤの搬出側は、筒状の疎水材投入シュート19に接続され、疎水材投入シュート19には疎水材を下方へ垂直搬送する垂直搬送コンベヤ20が配置され、疎水材投入シュート19の疎水材排出口21に第1の疎水材の厚さ調整板22が設けられ、第2疎水材ホッパー8の第2疎水材排出口25に第2疎水材の厚さ調整板25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の地中に暗渠排水管を敷設しながら、暗渠排水管の上に種類の異なる疎水材を積層可能な暗渠排水管敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の孔が穿孔された暗渠排水管を圃場の地中に敷設し、この暗渠排水管の上に疎水材を被覆して形成した暗渠排水を介して圃場からの排水を行ったり、圃場の地下水位を制御したりすることが行われている。
【0003】
暗渠排水管敷設装置として、例えば、特許文献1には、トラクタに装着されて使用される作業機であって、作業機を構成する作業機フレームと、この作業機フレームはこれに搭載されている疎水材の収容タンクと、作業機フレームに対して上端部が枢着されている掘削体と、この作業機フレームに搭載されていて排水管を巻装したリールとを備え、疎水材の収容タンクはその内部に回転自在に駆動される装備されている撹拌スクリュウと、この疎水材の収容タンク底部に形成された供給口と、この供給口に開閉自在に施されているシャッタをもち、リールに巻かれて案内空間に導かれる排水管をもち、掘削体は前縁が掘削機能をもった掘削刃と、下端部に取付けたチゼルをもち、掘削刃の後方には側板により区画されていて、落下供給される疎水材を案内する案内空間をもち、この案内空間に沿ってその前方位置にガイド部があって、これにリールに巻装された排水管が通されており、掘削体を作業進行方向に沿った平面内で下端部が揺動する駆動系とを備えた暗渠排水管敷設装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、圃場における表土に対して混層耕を施した後、この混層耕を施した表土において定められた埋設深さに排水管を連続的に線状に敷設しつつ、この排水管の上部から地表付近まで該排水管に沿って連続的に疎水材を積層させて暗渠排水を敷設し、前記地表近くから前記排水管までに通水・通気層を形成させる暗渠排水管敷設装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−225018号公報
【特許文献2】特開2004−003268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
暗渠の通水性を高めるために暗渠排水管の上に被覆して透水層を形成する疎水材としては、もみ殻、石灰石、ロックウール、おが屑、カラマツや杉などの木材チップ、砕石、砂利、貝殻、小石、火山礫などが知られている。
【0007】
疎水材として、フィルター効果に優れ、農地にやさしい土壌改良材であることから、もみ殻が利用されている。しかしながら、もみ殻は、水と空気にさらされると発酵により腐食して疎水材としての機能を失いやすいために耐久性を欠き、その修復に時間と費用がかかるという欠点がある。また、もみ殻は多量に縦溝に充填されるが、もみ殻の供給不足の問題もある。その代替に砕石等を使用すると、排水管に穿孔された排水孔に土が侵入してフィルター効果に問題があった。
【0008】
さらに、もみ殻、木材チップなどの疎水材は、搬送途中にブリッジを形成したりして均一に搬送されずに、縦溝へ充填されなかったり、あるいは充填量が均一にならなかったりして均一の厚さの透水層が形成されない場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、地中に暗渠排出管を敷設しながら、その上に異種の疎水材をそれぞれ連続的に供給して各疎水材の厚みを正確に所望の厚さに積層可能な暗渠排水管敷設装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、牽引車で牽引され、暗渠排水管を送り出しながら敷設される暗渠排水管を第1の疎水材で覆い、さらに第1の疎水材の上に第1の疎水材と異なる第2の疎水材を積層していく暗渠排水管敷設装置において、暗渠排水管敷設装置の水平フレームに、第1の疎水材を貯留する第1疎水材ホッパーと、第1疎水材と異なる第2の疎水材を貯留する第2疎水材ホッパーが搭載され、第1疎水材ホッパー底部の疎水材排出口の下部に疎水材排出口から排出される第1の疎水材を受けて疎水材投入シュートに向けて水平方向に搬送する水平搬送コンベヤが設けられ、水平フレームの牽引側の下部には、土壌を切り開いて縦溝を形成する掘削体が配設され、掘削体の後部には牽引車に搭載されたリールから巻き戻された可撓性を有する暗渠排水管を案内して縦溝内に繰り出す管状の暗渠排水管案内部が設けられ、水平搬送コンベヤの搬出側は、暗渠排水管案内部の出口の直上まで垂直に延びている筒状の第1の疎水材を縦溝内に投入する筒状の疎水材投入シュートに接続され、疎水材投入シュートの水平搬送コンベヤの搬出側に対向する側には、疎水材を下方へ垂直搬送する垂直搬送コンベヤが配置されており、疎水材投入シュートの下部の疎水材排出口に疎水材の厚さを調整する厚さ調整板が設けられ、第2疎水材ホッパーの底部に設けられている第2疎水材排出口は第2疎水材の厚さを調整する調整板が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、水平フレームの牽引側に牽引車に駆動シリンダで作動するリンク機構を介して接続される牽引フレームが固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、暗渠排水管案内部の下端に繰り出される暗渠排水管を上から押さえて縦溝の底部に圧着するレベルの調整が可能な管押さえローラが配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、第1疎水材の厚さ調整板が昇降バーに接続され、昇降バーが水平フレームに設けられているハンドルに接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、第2疎水材の厚さ調整板が昇降バーに接続され、昇降バーが水平フレームに設けられているハンドルに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の暗渠排水管敷設装置は、水平搬送コンベヤ、垂直搬送コンベヤで疎水材が縦溝内に連続的に均一に搬送できるとともに、厚さ調整板で疎水材の厚みを調整できるので、土中に敷設する暗渠排水管の上に異なる複数の疎水材を所定の厚さに連続的に同時に形成することが可能となる。この結果、暗渠排水の耐久性を向上させることができるとともに、疎水材のそれぞれの特徴を活用した暗渠管施工を正確且つ容易に低コストで施工できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の暗渠排水管敷設装置を牽引車に連結した状態を示す図である。
【図2】本発明の暗渠排水管敷設装置の概略平面図である。
【図3】本発明の暗渠排水管敷設装置の概略正面図である。
【図4】本発明の暗渠排水管敷設装置の概略側面図である。
【図5】本発明の暗渠排水管敷設装置で形成された縦溝の縦断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0018】
本実施例は、図1及び図5に示すように、ブルドーザーやトラクタなどの牽引車1に暗渠排水管敷設装置2を連結して牽引しながら掘削体11により地中に縦溝30を形成し、この縦溝30に暗渠排水管14を送り出しながら敷設し、暗渠排水管14の上をもみ殻などの第1の疎水材31で覆い、さらに第1の疎水材31の上にこの疎水材とは異なる砕石などの第2の疎水材32を積層していくものである。
【0019】
牽引車1で牽引される暗渠排水管敷設装置2の水平フレーム3の牽引側に牽引車1に接続するための一対の牽引フレーム4が間隔をおいて平行に固定されている。牽引フレーム4は牽引車1にリンク機構5を介して接続されている。リンク機構5を駆動シリンダ6で作動させて暗渠排水管敷設装置2を所定のレベルに保持して所定の掘削深さを維持する。
【0020】
図2〜図4において、水平フレーム3には、第1の疎水材(例えばもみ殻、木材チップ)を貯留する第1疎水材ホッパー7と、第1疎水材とは異なる第2の疎水材(砕石、火山礫)を貯留する第2疎水材ホッパー8が搭載されている。本発明において、暗渠排水管14の上を覆う第1疎水材は、もみ殻などのような暗渠排水管に対してフィルター効果のある疎水材から選択する。また、第1疎水材に積層する第2疎水材32としては火山礫のような水を容易に通す通水性のある疎水材から選択する。
【0021】
第1疎水材ホッパー7の底部に設けられている疎水材排出口の下部には、疎水材排出口から排出される第1疎水材31を受けて疎水材投入シュート19に向けて水平方向に搬送する水平搬送コンベヤ9が設けられている。水平搬送コンベヤ9は、水平フレーム3に搭載されているコンベヤ用発電機10から給電されて回転するモータMによって駆動される。水平搬送コンベヤ9により第1疎水材が強制的に搬送されることにより排出されて第1疎水材ホッパー7に第1疎水材のブリッジが形成されるのを防止する。
【0022】
水平フレーム3の牽引側の下部には、土を掘削して縦溝30を形成する掘削体11が配設されている。掘削体11は、前縁に掘削刃12が形成され、その下端部に掘進部材13が取付けられている。掘削体11の前進により掘進部材13が掘進するとともに、掘削刃12により土壌が切り開かれて縦溝30が形成されていく。
【0023】
掘削体11の後部には、可撓性を有する暗渠排水管14を、掘削体11の切開により形成された縦溝30の底に連続的に繰り出して敷設していくために、暗渠排水管14を案内する湾曲した管状の暗渠排水管案内部15が上下方向に形成されている。暗渠排水管案内部15には、暗渠排水管14が牽引車1に搭載されているリールRから巻き戻されながら導入される。
【0024】
暗渠排水管案内部15の下端には、縦溝30内に繰り出される暗渠排水管14を上から押さえて縦溝30の底部に圧着するために、管押さえローラ16が配置されている。管押さえローラ16は昇降バー17に接続され、水平フレーム3に設けられているハンドル18に接続されている昇降バー17を、暗渠排水管14の径の大小に応じて昇降させてレベルの調整が可能となっている。
【0025】
第1疎水材を水平方向に搬送する水平搬送コンベヤ9の搬出側は、暗渠排水管案内部15の出口の直上まで垂直に延びている筒状の疎水材投入シュート19に接続され、搬出された第1疎水材が疎水材投入シュート19に投入される。疎水材投入シュート19の水平搬送コンベヤ9の搬出側に対向する側には、垂直搬送コンベヤ20が配置されている。水平搬送コンベヤ9から搬送されてくる第1疎水材は、垂直搬送コンベヤ20が下方に向けて垂直に駆動することにより下方へ強制的に垂直搬送され、連続的に投入される。垂直搬送により第1疎水材が垂直搬送コンベヤ20及び疎水材投入シュート19に詰まるのを防止することが可能となる。
【0026】
投入シュート19の下方の疎水材排出口21で暗渠排水管案内部15の出口と逆の側面には、暗渠排水管14の上を覆う第1疎水材31の厚さを調整する厚さ調整板22が設けられている。厚さ調整板22は昇降バー23に接続され、水平フレーム3に設けられているハンドル24に接続されている昇降バー23を昇降させて厚さ調整板22を上下動させて開口面積を調整して第1疎水材31の排出量を調節し被覆厚さを調整する。また、第1疎水材の排出量調整は、第1疎水材ホッパー7の底の水平搬送コンベア9の回転スピードを変えてその量を調整することも可能である。
【0027】
第2疎水材ホッパー8の底部に設けられている排出口25は、暗渠排水管敷設装置2の前進に伴い、第1疎水材31が先に暗渠排水管14を被覆し、その上に第2疎水材32が積層されるように配置される。第2疎水材排出口25は、開口面積を調整する高さ調整板26が設けられている。厚さ調整板26は昇降部材27に接続され、水平フレーム3に設けられているハンドル28に接続されている昇降部材27を昇降させて第2疎水材排出口25の開口面積を調整して排出量を調節し、第2疎水材の積層厚さを調整する。
【0028】
水平フレーム3にはレーザ受光器用マスト29が立設されており、圃場内のレーザ発行器から発するレーザによりレベルが測定され、暗渠排水管敷設装置2が一定レベルに保持されるようにリンク機構5を駆動シリンダ6で作動させて地中貫入深さが制御される。
【0029】
図5において、例えば、暗渠排水管14に第1の疎水材31としてもみ殻、第2の疎水材32としてボラ(火山礫)を積層した場合、暗渠排水管14の上部10cmまでは常に水があるので、その範囲内のもみ殻は腐りにくい。また、もみ殻の上に火山礫を積層すると水が上下してもなんら耐久性に問題なく疎水材機能をはたせる。したがって、本発明の暗渠排水管敷設装置によりもみ殻層を暗渠排水管上部10cm以下の従来よりも小さい厚さに正確に形成し、その上に火山礫を積層することにより、フィルター効果がえられるとともに、もみ殻供給不足の問題も克服可能となり、また暗渠の耐久性も向上する。
【符号の説明】
【0030】
1:牽引車 2:暗渠排水管敷設装置
3:水平フレーム 4:牽引フレーム
5:リンク機構 6:駆動シリンダ
7:第1疎水材ホッパー 8:第2疎水材ホッパー
9:水平搬送コンベヤ 10:コンベヤ用発電機
11:掘削体 12:ナイフ
13:掘進部材 14:暗渠排水管
15:暗渠排水管案内部 16:管押さえローラ
17:昇降バー 18:ハンドル
19:疎水材投入シュート 20:垂直搬送コンベヤ
21:第1疎水材排出口 22:厚さ調整板
23:昇降バー 24:ハンドル
25:第2疎水材排出口 26:厚さ調整板
27:昇降部材 28:ハンドル
29:レーザ受光器用マスト 30:縦溝
31:第1の疎水材 32:第2の疎水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車で牽引され、暗渠排水管を送り出しながら敷設される可撓性を有する暗渠排水管を第1の疎水材で覆い、さらに第1の疎水材の上に第1の疎水材と異なる第2の疎水材を積層していく暗渠排水管敷設装置において、
前記暗渠排水管敷設装置の水平フレームに、前記第1の疎水材を貯留する第1疎水材ホッパーと前記第2の疎水材を貯留する第2疎水材ホッパーが搭載され、
前記第1疎水材ホッパーの底部の第1疎水材排出口の下部に疎水材排出口から排出される第1の疎水材を受けて水平方向に搬送する水平搬送コンベヤが設けられ、
前記水平フレームの牽引側の下部には、土壌を切り開いて縦溝を形成する掘削体が配設され、
前記掘削体の後部にはリールから巻き戻された前記暗渠排水管を案内して縦溝内に繰り出す管状の暗渠排水管案内部が設けられ、
前記水平搬送コンベヤの搬出側は、前記暗渠排水管案内部の出口の直上まで垂直に延びている、第1の疎水材を縦溝内に投入する筒状の疎水材投入シュートに接続され、
前記疎水材投入シュートの水平搬送コンベヤの搬出側に対向する側には、前記第1の疎水材を下方へ垂直搬送する垂直搬送コンベヤが配置されており、
前記疎水材投入シュートの下部の疎水材排出口に前記第1の疎水材の厚さを調整する第1の厚さ調整板が設けられ、
前記第2疎水材ホッパーの底部に設けられている第2疎水材排出口は第2の疎水材の厚さを調整する第2の厚さ調整板が設けられていることを特徴とする暗渠排水管敷設装置。
【請求項2】
水平フレームの牽引側に牽引車に駆動シリンダで作動するリンク機構を介して接続される牽引フレームが固定されていることを特徴とする請求項1記載の暗渠排水管敷設装置。
【請求項3】
暗渠排水管案内部の下端に繰り出される暗渠排水管を上から押さえて縦溝の底部に圧着するレベルの調整が可能な管押さえローラが配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の暗渠排水管敷設装置。
【請求項4】
第1疎水材の厚さ調整板が昇降バーに接続され、昇降バーが水平フレームに設けられているハンドルに接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の暗渠排水管敷設装置。
【請求項5】
第2疎水材の厚さ調整板が昇降バーに接続され、昇降バーが水平フレームに設けられているハンドルに接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の暗渠排水管敷設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94448(P2011−94448A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252130(P2009−252130)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(508320941)キャタピラー九州株式会社 (8)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)