説明

暴露試験片の箱型収納ホルダーと、この暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法

【課題】ケース本体内において、降雨時に暴露試験片の表面に着いている種々の付着物が洗い流されてしまうことを防止した、暴露試験片の腐食状態測定方法を提供する。
【解決手段】上記暴露試験片の箱型収納ホルダーは、ケース本体内に、矩形状の暴露試験片や、矩形状のACMセンサーを配置する収納部を、縦方向に複数設けている。また、ケース本体内に、所定の間隔を開けて矩形状の固定板を複数配置すると共に、固定板の左右両端部において、ケース本体の側板に沿うように長方形の支持板を配置し、両支持板の上縁とその上方に位置している天板の間に形成されている空間、また、両支持板の上縁とその上方に位置している固定板の間に形成されている空間を、暴露試験片やACMセンサーの収納部としている。さらに、ケース本体は、個々の収納部に暴露試験片やACMセンサーを配置した状態で、収納部に挿入する長方形状の閉鎖板を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暴露試験片が雨を受けて、暴露試験片の表面に着いている付着物が洗い流されることを防止した、暴露試験片の箱型収納ホルダーと、この暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電柱や鉄塔等の様々な構成部材の腐食をもたらす腐食環境因子としては、例えば、大気中に飛来している海塩、降雨時の酸性雨、光化学スモッグや腐食性ガス(例えば、ソックスSOx)等に含まれる各種成分等が挙げられる。
【0003】
この様な腐食環境因子により、電柱や鉄塔等の様々な構成部材がどのように腐食していくのかを確認する場合、例えば、図11に示すように、電柱Tに巻き付けた所定の保持バンド100を介して、矩形の板状に形成されたホルダー盤101を電柱Tに取り付け、このホルダー盤101に複数の暴露試験片Qを固定して、個々の暴露試験片Qの腐食状態を観察していた。
【0004】
また、電柱や鉄塔等の様々な構成部材の腐食速度等を測定する場合、例えば、図12に示すように、電柱Tに巻き付けた一対の保持バンド100間に所定の長さの固定杆102を配置し、この固定杆102に複数の取り付け台103を固定し、これらの取り付け台103に暴露試験片QとACMセンサSを配置して、暴露試験片Qの腐食状態を観察して、その腐食速度等の測定を行っていた。このACMセンサSは、データロガーDに接続している。
【0005】
ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサSを使用して腐食速度を推定する方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、ACMセンサSにより、付着イオンの種類と量を分析する手法が存在する。
【0006】
具体的には、被評価ACMセンサの表面の付着物を分析して解析電流値を求め、該被評価ACMセンサの恒温恒湿条件下での測定出力電流値と解析電流値との相関関係から、被評価ACMセンサの測定出力電流値を補正する。こうして、被評価ACMセンサの電気量と、予め設定した電気量と腐食速度との関係に基づいて、実構造物の推定腐食速度を求めるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−157647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この様に、従来においては、電柱T等の高所に暴露試験片Qを取り付けて、その暴露試験片Qの腐食状態を観察していたが、暴露試験片Qが露出していることから、降雨時に暴露試験片が水滴を受けることにより、暴露試験片の表面に着いている付着物が洗い流されてしまう事態が生じていた。
【0009】
その為、雨により暴露試験片の付着物が洗い流されてしまうことのない環境を模擬して、暴露試験片Qの腐食状態・腐食環境を測定することができなかった。
【0010】
即ち、雨により付着物が洗い流されてしまうことのない環境においては、例えば、大気中に飛来している海塩等が暴露試験片Qに常時付着して、暴露試験片Qが非常に腐食し易い状態となっている。
【0011】
この様に、雨により付着物が洗い流されてしまうことのない環境は、暴露試験片Qが非常に腐食し易い特殊な状態であることから、雨により暴露試験片の付着物が洗い流されてしまうことのない環境を模擬して、暴露試験片Qの腐食状態・腐食環境を測定する必要があるのである。
【0012】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、側方に開口部を有する縦長の箱状に形成されたケース本体内に、暴露試験片やACMセンサーを収納して、降雨時に暴露試験片の表面に着いている種々の付着物が洗い流されてしまうことを防止した、暴露試験片の箱型収納ホルダーと、この暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダーは、側方に開口部を有する縦長の箱状に形成されたケース本体において、ケース本体内に、矩形状の暴露試験片や、矩形状のACMセンサーを配置する収納部を、縦方向に複数設けていることで、上述した課題を解決した。
【0014】
また、ケース本体は、矩形状の天板及び底板を所定の間隔を開けて上下に配置し、天板と底板の一方側の側辺同士、他方側の側辺同士を接続するように長方形の側板をそれぞれ固定し、天板と底板の基端側の側辺同士、両側板の基端側の長手方向における側辺に沿った部分同士を接続するように長方形の背板を固定していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
さらに、ケース本体内に、所定の間隔を開けて矩形状の固定板を複数配置すると共に、固定板の左右両端部において、ケース本体の側板に沿うように長方形の支持板を配置し、両支持板の上縁とその上方に位置している天板の間に形成されている空間、また、両支持板の上縁とその上方に位置している固定板の間に形成されている空間を、暴露試験片やACMセンサーの収納部としていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
また、ケース本体は、個々の収納部に暴露試験片やACMセンサーを配置した状態で、収納部に挿入する長方形状の閉鎖板を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
加えて、ケース本体の天板、固定板、底板のそれぞれにおいて、開口部の近傍に孔を設けると共に、閉鎖板の所定の位置に孔を設け、ケース本体の収納部に閉鎖板を挿入した状態で、天板、閉鎖板、固定板、底板の各孔に貫挿する棒状の固定杆を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
また、ケース本体は、背板の縦方向に、下方に行くに従い高さを低くしている傾斜板を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
この他、本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法は、前記した箱型収納ホルダーを使用して暴露試験片の腐食状態を測定することで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダーは、側方に開口部を有する縦長の箱状に形成されたケース本体において、ケース本体内に、矩形状の暴露試験片や、矩形状のACMセンサーを配置する収納部を、縦方向に複数設けていることから、ケース本体内の収納部に暴露試験片を配置したときには、降雨時に暴露試験片の表面に着いている種々の付着物が洗い流されてしまうことを防止できる。
【0021】
即ち、雨により付着物が洗い流されてしまうことのない環境においては、例えば、大気中に飛来している海塩等が暴露試験片に常時付着して、暴露試験片が非常に腐食し易い状態となっている。
【0022】
この様に、雨により付着物が洗い流されてしまうことのない環境は、暴露試験片が非常に腐食し易い特殊な状態であることから、ケース本体内の収納部に暴露試験片を配置することにより、雨により暴露試験片の付着物が洗い流されてしまうことのない環境を模擬できることとなり、当該環境における暴露試験片の腐食状態・腐食環境を測定できるのである。
【0023】
また、ケース本体は、矩形状の天板及び底板を所定の間隔を開けて上下に配置し、天板と底板の一方側の側辺同士、他方側の側辺同士を接続するように長方形の側板をそれぞれ固定し、天板と底板の基端側の側辺同士、両側板の基端側の長手方向における側辺に沿った部分同士を接続するように長方形の背板を固定していることから、側方にのみ開口部を有するケース本体の収納部に暴露試験片を配置することにより、降雨時に暴露試験片が水滴を受けることがない。
【0024】
さらに、ケース本体内に、所定の間隔を開けて矩形状の固定板を複数配置すると共に、固定板の左右両端部において、ケース本体の側板に沿うように長方形の支持板を配置し、両支持板の上縁とその上方に位置している天板の間に形成されている空間、また、両支持板の上縁とその上方に位置している固定板の間に形成されている空間を、暴露試験片やACMセンサーの収納部としていることから、当該空間に暴露試験片を配置したときは、両支持板の上縁と、その上方に位置している天板・固定板の間に暴露試験片が挟まれたような状態となる。この天板・固定板の存在により、降雨時に暴露試験片が水滴を受けることを、より確実に防止している。
【0025】
加えて、暴露試験片は、両支持板の上縁により支持されているものの、暴露試験片の下面全体が露出していることから、この暴露試験片の露出面に、腐食を生じさせることができる。
【0026】
また、ケース本体は、個々の収納部に暴露試験片やACMセンサーを配置した状態で、収納部に挿入する長方形状の閉鎖板を備えていることから、収納部から暴露試験片やACMセンサーが抜け落ちてしまう事態の発生を防止できる。加えて、この閉鎖板が存在することにより、収納部の開口部側からの水滴の侵入を阻止している。
【0027】
さらに、ケース本体の天板、固定板、底板のそれぞれにおいて、開口部の近傍に孔を設けると共に、閉鎖板の所定の位置に孔を設け、ケース本体の収納部に閉鎖板を挿入した状態で、天板、閉鎖板、固定板、底板の各孔に貫挿する棒状の固定杆を備えていることから、ケース本体の収納部に配置した閉鎖板が、ケース本体から外れることがない。
【0028】
その為、収納部に暴露試験片やACMセンサーが配置されている状態が、確実に維持されている。
【0029】
また、ケース本体は、背板の縦方向に、下方に行くに従い高さを低くしている傾斜板を備えていることから、ケース本体を電柱に固定したとき、ケース本体の開口部が常に水平になっている状態を維持できる。
【0030】
具体的には、電柱において、その基端部側が太く形成され、先端部側に行くに従い細くなるように周面が若干傾斜している場合であっても、ケース本体の傾斜板を電柱に宛がうことにより、ケース本体が直立して、ケース本体の開口部において、天板、閉鎖板、固定板、底板が常に水平になっている状態を維持できるのである。
【0031】
この他、本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法によれば、ケース本体内に複数の暴露試験片を配置して、個々の暴露試験片の腐食状態・腐食環境を同時に測定することができる。
【0032】
また、ケース本体の収納部へ暴露試験片を配置する手順や、ケース本体の収納部から暴露試験片を取り出す手順も、極めて容易である。
【0033】
そして、本発明によれば、雨により付着物が洗い流されてしまうことのない環境を容易に模擬して、当該環境における暴露試験片の腐食状態・腐食環境を正確に測定できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、暴露試験片と閉鎖板、また、ACMセンサーと閉鎖板を配置する状態を示す分解斜視図である。
【図2】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、暴露試験片と閉鎖板、また、ACMセンサーと閉鎖板を配置する状態を示す分解断面図である。
【図3】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、暴露試験片と閉鎖板、また、ACMセンサーと閉鎖板を配置した状態を示す斜視図である。
【図4】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、暴露試験片と閉鎖板、また、ACMセンサーと閉鎖板を配置した状態を示す断面図である。
【図5】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、閉鎖板のみが配置されている状態を示す斜視図である。
【図6】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体の収納部に、閉鎖板のみが配置されている状態を示す断面図である。
【図7】箱型収納ホルダーの構成を示すもので、ケース本体から固定杆を引き抜いて、収納部から閉鎖板を取り出している状態を示す分解斜視図である。
【図8】箱型収納ホルダーを構成するケース本体を、電柱に取り付けている状態を示す斜視図である。
【図9】箱型収納ホルダーを構成するケース本体を、電柱に取り付けている状態を示す断面図である。
【図10】箱型収納ホルダーを構成するケース本体の収納部に暴露試験片を配置して、その腐食状況を観察した場合と、暴露試験片を露出させた状態で暴露試験片の腐食状況を観察した場合の腐食速度を比較している説明図である。
【図11】従来における、電柱への暴露試験片の取り付け状態を示す斜視図である。
【図12】従来における、電柱へのACMセンサと暴露試験片の取り付け状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0036】
本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダー1は、図1・図2に示すように、側方に開口部2を有する縦長の箱状に形成されたケース本体3により構成されている。この暴露試験片の箱型収納ホルダー1は、図3・図4に示すように、ケース本体3内に、矩形状の暴露試験片Qや、矩形状のACMセンサーSを配置する収納部4を、縦方向に複数設けている。
【0037】
そして、ケース本体3の収納部4に、暴露試験片Qとしては、例えば、チタン板(Ti)や鉄板(Fe)等の異なる材質の暴露試験片Qを配置して、その腐食状況を個別に観察するのである。
【0038】
暴露試験片QやACMセンサーSを収容するケース本体3は、図1・図2に示すように、矩形状の天板5及び底板6を所定の間隔を開けて上下に配置し、天板5と底板6の一方側の側辺同士、他方側の側辺同士を接続するように長方形の側板7をそれぞれ固定している。また、ケース本体3は、天板5と底板6の基端側の側辺同士、両側板7の基端側の長手方向における側辺に沿った部分同士を接続するように、長方形の背板8を固定している。
【0039】
この背板8は、図2・図4に示すように、両側板7の基端側の長手方向における側辺に沿った内側の部分同士を接続しており、両側板7の基端部が、背板8の外側に若干突出している。この両側板7における突出している部分は、全体として、下方に行くに従い高さを次第に低くしている傾斜板9を形成している。
【0040】
また、この傾斜板9には、保持バンド100を貫挿させる矩形状の孔19を上下に設けている。
【0041】
さらに、ケース本体3内においては、図1・図2に示すように、所定の間隔を開けて矩形状の固定板10を複数配置している。また、固定板10の左右両端部において、ケース本体3の側板6に沿うように、支持板11を配置している。この支持板11は、ケース本体3の開口部2から背板8に到達する長さを有する横長の長方形状に形成されている。
【0042】
そして、図2・図4に示すように、両支持板11の上縁と、その上方に位置している天板5の間に形成されている空間を、暴露試験片QやACMセンサーSの収納部4としている。同様に、両支持板11の上縁と、その上方に位置している固定板10の間に形成されている空間も、その他の収納部4としている。
【0043】
ケース本体3において、天板5及び底板6と、その間に配置されている複数の固定板10において、その横幅は、暴露試験片Qの長手方向における横幅よりも、若干長くなるように形成されている。
【0044】
また、ケース本体3の両側板7の内側には、所定の凹部を対向するように設けている。この凹部は、ケース本体3の開口部2側から背板8側に向けて、直線状に設けられている。さらに、両側板7の内側に対向するように設けているそれぞれの凹部は、互いに平行状態を維持している。そして、天板5と底板6の左右の側辺と、固定板10の左右の側辺を、両側板6の凹部に嵌合するように固定している。
【0045】
また、両支持板11の上縁と、その上方に位置している天板5・固定板10の間に形成されている空間においては、図1に示すように、暴露試験片Qの長手方向における側片が、開口部2側から背板8側に向かうことができるように、暴露試験片Qを収容できる横幅を有している。
【0046】
そして、この空間内に暴露試験片Qを収容したとき、暴露試験片Qは、その短手方向における両側辺が、両支持板11の上縁により下方から支えられた状態となる。このとき、暴露試験片Qは、ケース本体3の背板8側、また、開口部2側に向けて、自由に移動できる状態となっている。
【0047】
さらに、両支持板11の上縁と、その上方に位置している天板5・固定板10の間に形成されている空間は、暴露試験片Qと、閉鎖板12を収容できる奥行きを有している。
【0048】
閉鎖板12は、個々の収納部4に暴露試験片QやACMセンサーSを配置した状態で、収納部4に挿入するもので、図3・図4に示すように、収納部4から暴露試験片QやACMセンサーSが抜け落ちることを防止している。この閉鎖板12は、図1に示すように、長方形状に形成されて、収納部4に収容される暴露試験片Qと略同じ横幅を有している。また、閉鎖板12の略中央部には、所定の孔13を設けている。
【0049】
この他、ケース本体3の天板5、固定板10、底板6のそれぞれにおいて、開口部2の近傍に孔14を設けている。これらの複数の孔14は、図2に示すように、上下方向において直線状に配置されている。
【0050】
そして、図3・図4に示すように、ケース本体3の収納部4に閉鎖板12を挿入した状態で、天板5、閉鎖板12、固定板10、底板6の各孔13・14に貫挿する棒状の固定杆15を備えている。
【0051】
この固定杆15は、先端部が先細り状に形成されている。また、固定杆15は、基端部を逆U字状に折曲して、ケース本体3からの抜け落ちを防止している。
【0052】
また、天板5においては、図1・図2に示すように、固定杆15を差し込む挿入体16を設けている。この挿入体16は、所定の長さの円筒状に形成され、内部にゴム材等を利用した筒状弾性部材17を備えている。この筒状弾性部材17に摺接しながら固定杆15を差し込むことから、その差し込み時と、引き抜き時に所定の力を要することとなり、固定杆15がケース本体3から不意に外れてしまう事態の発生を防止している。
【0053】
さらに、挿入体16は、その周面に環状板片18を設けており、この環状板片18を天板5に当接した状態で天板5に固定している。
【0054】
本発明に係る暴露試験片の箱型収納ホルダー1を使用するときは、まず、図5・図6に示すように、ケース本体3の収納部4に、暴露試験片QやACMセンサーSが存在していない状態において、図7に示すように、ケース本体3から固定杆15を上方に向けて引き抜いて、ケース本体3の収納部4に配置している閉鎖板12を開口部2から取り出す。
【0055】
次に、図1・図2に示すように、ケース本体3の収納部4に、例えば、チタン板(Ti)や鉄板(Fe)等の異なる材質の暴露試験片Qを収納部4に入れ、収納部4に閉鎖板12を挿入する。また、必要に応じて、ACMセンサーSも収納部4に入れ、収納部4に閉鎖板12を挿入する。
【0056】
次に、図3・図4に示すように、ケース本体3の挿入体16に固定杆15を差し込んで、ケース本体3において、天板5、閉鎖板12、固定板10、底板6の各孔13・14に棒状の固定杆15を貫挿させる。
【0057】
次に、図8・図9に示すように、ケース本体3を、例えば、所定の電柱Tに宛がい、電柱Tに券回している保持バンド100をケース本体3の孔19に貫挿させて、電柱Tにケース本体3を固定する。
【0058】
電柱Tは、一般的に、基端部側が太く形成され、先端部側に行くに従い細くなるように、その周面が若干傾斜している。この様な電柱Tにケース本体3を固定したときは、図9に示すように、ケース本体3において、両側板7の基端部側が、全体として下方に行くに従い高さを次第に低くしている傾斜板9を形成していることから、ケース本体3が直立して、ケース本体3の開口部2において、天板5、閉鎖板12、固定板10、底板6が常に水平になっている状態を維持している。
【0059】
そして、図8に示すように、電柱Tにケース本体3を固定して、収納部4に配置している暴露試験片Qの腐食状況を観察した場合と、図11に示すように、暴露試験片Qを露出させた状態で暴露試験片Qの腐食状況を観察した場合を比較すると、図10に示すように、ケース本体3の収納部4に暴露試験片Qを配置している方が腐食速度が速いことが確認されている。
【0060】
尚、図10において、ケース本体3を用いている場合は、「軒下」と表示されている。また、図10において、暴露試験片Qを露出させている場合は、「暴露片」と表示されている。
【0061】
さらに、「大神宮136」地域において、ケース本体3の開口部2が海側を向いているとき、腐食速度が「165.1」となり、最も腐食速度が速くなっている。また、同一地域において、暴露試験片Qが海側を向いて露出している場合は、腐食速度が「26.5」となっている。
【0062】
この他、「大神宮136」地域において、ケース本体3の開口部2が陸側を向いているとき、腐食速度が「36.6」となっている。また、同一地域において、暴露試験片Qが陸側を向いて露出している場合は、腐食速度が「22.5」となっている。
【0063】
さらに、「三坂75」地域において、ケース本体3の開口部2が海側を向いているとき、腐食速度が「49.9」となっている。また、同一地域において、暴露試験片Qが海側を向いて露出している場合は、腐食速度が「30.9」となっている。
【0064】
加えて、「三坂75」地域において、ケース本体3の開口部2が陸側を向いているとき、腐食速度が「44.8」となっている。また、同一地域において、暴露試験片Qが陸側を向いて露出している場合は、腐食速度が「22.1」となっている。
【0065】
この様に、ケース本体3の収納部4に暴露試験片Qを配置して、暴露試験片Qの付着物が雨により洗い流されてしまうことのない環境の方が、暴露試験片Qの腐食が進行し易い特殊な状態であることが判明している。
【0066】
尚、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、沿岸に沿って設置されている電柱にケース本体を取り付けて暴露試験片の腐食状態を測定することの他に、地上に設置されている様々な構造物にケース本体を取り付けて、内部に配置されている暴露試験片の腐食状態を測定する場合にも、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
Q…暴露試験片
S…ACMセンサ
T…電柱
D…データロガー

1…暴露試験片の箱型収納ホルダー
2…開口部
3…ケース本体
4…収納部
5…天板
6…底板
7…側板
8…背板
9…傾斜板
10…固定板
11…支持板
12…閉鎖板
13…孔
14…孔
15…固定杆
16…挿入体
17…筒状弾性部材
18…環状板片
19…孔

100…保持バンド
101…ホルダー盤
102…固定杆
103…取り付け台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方に開口部を有する縦長の箱状に形成されたケース本体において、ケース本体内に、矩形状の暴露試験片や、矩形状のACMセンサーを配置する収納部を、縦方向に複数設けていることを特徴とする、暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項2】
ケース本体は、矩形状の天板及び底板を所定の間隔を開けて上下に配置し、天板と底板の一方側の側辺同士、他方側の側辺同士を接続するように長方形の側板をそれぞれ固定し、天板と底板の基端側の側辺同士、両側板の基端側の長手方向における側辺に沿った部分同士を接続するように長方形の背板を固定している請求項1に記載の暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項3】
ケース本体内に、所定の間隔を開けて矩形状の固定板を複数配置すると共に、固定板の左右両端部において、ケース本体の側板に沿うように長方形の支持板を配置し、両支持板の上縁とその上方に位置している天板の間に形成されている空間、また、両支持板の上縁とその上方に位置している固定板の間に形成されている空間を、暴露試験片やACMセンサーの収納部としている請求項1または2に記載の暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項4】
ケース本体は、個々の収納部に暴露試験片やACMセンサーを配置した状態で、収納部に挿入する長方形状の閉鎖板を備えている請求項1乃至3のいずれかに記載の暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項5】
ケース本体の天板、固定板、底板のそれぞれにおいて、開口部の近傍に孔を設けると共に、閉鎖板の所定の位置に孔を設け、ケース本体の収納部に閉鎖板を挿入した状態で、天板、閉鎖板、固定板、底板の各孔に貫挿する棒状の固定杆を備えている請求項4に記載の暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項6】
ケース本体は、背板の縦方向に、下方に行くに従い高さを低くしている傾斜板を備えている請求項2乃至5のいずれかに記載の暴露試験片の箱型収納ホルダー。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載されている暴露試験片の箱型収納ホルダーを使用した、暴露試験片の腐食状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−93157(P2012−93157A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239348(P2010−239348)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】