説明

曝気流発生ユニットを使った低空気圧曝気式培養タンク

【課題】 背高の藻類培養大型タンクの中にある培養液を曝気攪拌するのに、タンクの底に設けた噴気ノズルから、高い圧力の空気を送って気泡を噴出して曝気するが、それには大型の空気コンプレッサーを使うことになり、消費するエネルギー量が大きく、曝気攪拌のコストが高くなって採算が合わないので、それを改善する。
【解決手段】 タンクの内部を仕切り板又は内筒を使って二室に分け、一方の室の上部に多数の曝気管を集めて形成された曝気流発生ユニットを液面の浅い位置に設置して、送風機から送られる圧力の低い空気で曝気出来るようにし、発生する曝気流が仕切られた二つの部屋を巡回しながら還流して、タンク全体を部分曝気で曝気攪拌できる方法を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低圧空気で曝気流を発生させ、大容量の藻を培養出来るようにしたタンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類の工場での大型タンクによる大量培養には、タンクの底に配置した噴気ノズルから気泡を噴出して、タンク全体を曝気攪拌する方式の培養タンクしかない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では藻類の工場での大型タンクによる大量培養をする場合、培養液の空気による曝気攪拌作業に大量のエネルギー消費をともなうので、培養コストの高騰化が避けられない。
発明が解決しようとする課題は同じ培養液の大容量タンクでの曝気攪拌作業が小さいエネルギーで出来るようにする事。
【課題を解決する上の問題点】
【0004】
[図1]のように、大型の培養タンク1に入れた培養液を曝気攪拌するには、タンクの底に空気の噴気ノズル6を配置し、外部から空気コンプレッサーで培養液の深さに対応した高圧の空気をそのノズルに送って気泡を噴出させ、タンク内の培養液に曝気攪拌流動を起こさせるという方法をとる。
この方法では気泡を噴出させるノズル6はタンクの底部に配置しなければタンクの底まで曝気攪拌できないので、噴出する空気は培養液の深さDの水圧に抗して噴気できる高い圧力の空気の供給を必要とする。
【0005】
従って深さが深い培養タンクの場合は圧力の高いコンプレッサーが必要となり、消費電力もそれだけ多くなる。
また培養タンク1の深さDを浅くして、同じ容量の培養タンクを作動させようとすると、コンプレッサーから供給する空気の圧力は低くすることができるが、タンクの形状は断面積Aを大きくした平たい形になり、その場合はタンクの底部に配置する気泡の噴出ノズル6も、タンクの底の面積に比例して数を多く設置しなければならなくなる。
その為、噴出ノズルの数が多くなる分、コンプレッサーから供給する空気量も多くなり、コンプレッサーの空気圧縮作動に要するエネルギーの量は、タンクの深さを浅くしてもそれほど変わらず、大きな省エネルギー効果は得られない。
【問題を解決するための手段】
【0006】
培養液の曝気攪拌のために消費されるエネルギー量を大幅に削減するためには、曝気攪拌作業を低圧の空気で出来るようにするが必要がある。その場合、曝気のために培養液内に噴射される気泡は低圧の為、タンクの底部に噴気する事は出来ないので、液面より僅かな深さのタンク上部の位置で噴気することになる。
その場合タンク上部付近の曝気だけで、タンク全体の培養液が均一に曝気され、攪拌出来る構造を工夫すれば、消費エネルギーは格段に減らすことが可能になる。
【0007】
その具体的な方法として、タンク上部の位置で曝気するだけで培養液に強い攪拌流を発生させる工夫をする。
それには[図2]のように、気泡を細い曝気管5の中に噴射して、気泡の上昇流動と共に管の中にある培養液を空気と共に、強制的に管の上方に押し出す方法を採る。これは上昇する気泡が水を曝気しながら押し上げるピストンの役目をする。
その流動効果を確認するために、水を使って管の太さ、噴射空気の量、及び気泡の噴射深さdなどの条件を変えて実験した結果、気泡による上昇流の流量は、噴射する空気の体積の10〜30倍になることが確認できたので、複数の曝気管5をまとめ、曝気流を発生する曝気流発生ユニット3を形成し、その流動特性を利用する事で課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
[図3]は深い培養タンク1の中にある培養液を曝気するのに、曝気用の噴気ノズル6をタンクの底に設置せず、タンク上部の浅い位置に設置するだけで、タンク全体が均一に曝気攪拌することができる原理を示す。
培養タンク1全体に攪拌曝気流を発生するには、曝気管5が1本だけではタンク内に攪拌流を発生出来ないので、これを多数集めてブロック化して曝気流発生ユニット3を形成し、それをタンク内の流れを整理する仕切り板8でタンク内部を2つの室に仕切り、片方の室の流路を塞ぐ形で設置する。
曝気流発生ユニット3で曝気された培養液は仕切り板8を超えて反対側の室に流れ、タンク内を矢印方向にまわる巡回流となる。
その場合噴射ノズル6からふき出す空気は、培養液上面から噴射ノズルの噴射口までの深さdに対応する圧力で噴射することになり、その圧力は培養液タンクの深さDとは関係ない。
即ち、深さDが例えば10m、又は20m以上という大型の培養タンクの培養液を曝気攪拌する場合でも、従来の技術では水深がその深いタンクの底に噴気しなければならないが、本発明の曝気流発生ユニット3を装備したタンク装置では、水深dが例えば0.5m〜0.8mの位置に空気を噴出するだけで、水深が10m以上、又は20m以上の深いタンクの底にある培養液でも巡回流の発生で曝気攪拌を完全に行うことが出来る。
【0009】
従って、従来培養液の曝気攪拌方式では高圧の空気を必要とするために空気コンプレッサーを使うしか曝気方法がなかったが、本発明の場合は高圧空気を必要としないので、送風機程度の低い吐出圧力で十分対応でき、同じ大きさの培養タンクの曝気攪拌作業と比較した場合、消費されるエネルギー量は格段に少なり、培養コストを大幅に引き下げることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【00010】
上述の作動原理を実用装置に使う場合の培養タンクの形態は背高の円筒型培養タンクとなり、その作動状態を断面図を[図4]にて説明すると次のようになる。
培養タンク1の中には仕切り用の内筒2を設け、培養タンク1と内筒2の間に、多数の曝気管5を纏めた曝気流発生ユニット3を組み込み、全ての曝気管5の下にはそれぞれ噴気ノズル6がセットされ、噴出される気泡は全てその管内を、培養液を巻き込みながら上昇する。
【00011】
曝気管5から気泡とともにあふれ出した液は内筒2のふちを越えて中央に集まり、矢印のように下降し、培養タンク1の底で反転して上方に還流する。
曝気用の空気は送風機によって空気ダクト4に送り込まれ、逆支弁7を通って噴気ノズル6から気泡になって、曝気管5の中に噴出される。その曝気を終えた空気はタンク上部の排気口から外に排出される。曝気用の空気の圧力は液面から噴気ノズル6までの曝気深さdに対応する水圧を超えた圧力で噴出するが、培養タンク1の深さDがどのような深いタンクの場合でも、噴気ノズル6からの噴気圧力は影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【00012】
【図1】 従来の培養タンクの底から空気を噴出して培養液を曝気する方式のタンクの断面図。
【図2】 曝気管の中に気泡を噴出して、気泡による強制流動を起こさせる原理の説明図
【図3】 タンクの上部に設置される曝気流発生ユニットによって、タンク全体が曝気出来る状態の説明図
【図4】 実際に実用される円筒型培養タンクの断面図
【符号の説明】
【00013】
A 培養タンクの断面積
D 培養液の深さ
d 曝気深さ
1 培養タンク
2 内筒
3 曝気流発生ユニット
4 空気分配ダクト
5 曝気管
6 噴気ノズル
7 逆支弁
8 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背高の藻類培養大型タンクの中にある培養液を曝気攪拌するのに、当該タンクの内側を内筒又は仕切り板で二室に分割し、一方の室の上部に、多数の曝気管を集めてブロックに形成した曝気流発生ユニットを装備し、曝気作動する時には送風機で得られる程度の低い圧力の空気で培養液に曝気流を発生させ、それが当該タンク内を二つに仕切った二室を循環流動して、タンク内全体の培養液を曝気攪拌出来るようにした低圧曝気構造が特徴の省エネルギー型藻類培養タンク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−231773(P2012−231773A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115200(P2011−115200)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000123022)
【Fターム(参考)】