説明

曲がり材から板材をつくる方法、それに使用する製材装置を含む森林資源リサイクルシステム

【課題】従来、林地に放置されていた間伐材を含む曲がり材を有効に利用して、厚さが均一で木製パレットの構成材として好適な構成材を無駄を少なくしてつくることができる装置を利用した森林資源リサイクルシステムを提供する。
【解決手段】森林資源リサイクルシステムは、森林資源である間伐材を含む曲がり材を短尺に切断して曲がり度を緩和し、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に隆起部材(2)を配することにより、隆起部材(2)で底上げされたベルト(11)上面と帯鋸(33)との間隔を一定にするようにした製材装置(A)で、短尺材をベルトコンベヤ(1)に乗せて送り、切断する箇所の近傍で短尺材を隆起部材(2)で底上げされたベルト(11)上面で案内するようにして帯鋸(33)で一定厚さに切断し、この構成材を使用して構成材の接合を木製ダボと接着剤によるダボ接合で行うようにした木製パレットをつくり、処分対象となった木製パレットをリサイクルするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がり材から構成材をつくる方法、それに使用する製材装置、木製パレット及び森林資源リサイクルシステムに関するものである。更に詳しくは、従来、その多くが林地に放置されていた間伐材を含む曲がり材を有効に利用して、厚さが均一で木製パレットの材料として好適な構成材をつくることができる方法、装置及びその構成材を使用した木製パレットに関する。また、毎年大量につくられ同じく大量に処分されている木製パレットを、この構成材を使用すると共にリサイクルしやすいように全部を木製とすることにより、国内の森林資源の健全な整備に寄与できる森林資源リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的にみると木材消費量は年々伸びており、これによって森林の面積は減少傾向にある。これに対し、国内の現状はそれとは逆であり、近年の木材価格の低迷、林業就労者人口の減少などによる林業生産活動の停滞から、資源的には充実してきた反面、森林の管理は行き届いておらず、資源の利用も十分に行われていない。
【0003】
森林は、地球温暖化対策において、CO2の吸収源として重要な位置付けになっている。この森林の機能性を十分に生かすには、健全な森林の整備が必要であり、そのためには間伐材のうち曲がり材や変色材等の低位利用材の積極的な利用も欠かせない。
しかしながら、現在は上記したように傾向として林業生産活動が停滞しており、間伐や再造林が十分に行われておらず、健全な森林の整備が困難な状況となっている。
【0004】
こうした中、森林整備として国、県の助成による間伐が進められているが、間伐から生じた上記のような低位利用材は、需要の多い住宅部材としては不向きであり、原木市場に出しても需要が少なく価格も安い。また、製材しても歩留まりが悪く採算がとれない。
このため、その多くは林地に放置され、林地の荒廃の要因となっている。また、放置材は土砂崩れなどの森林災害を誘発する危険性をも有しており、間伐材の放置を減らすために、曲がり材や変色材などの低位利用材の新たな用途の開拓が求められている。
【0005】
なお、曲がり材を板材や角材などの構成材に加工するときに、できるだけ無駄が出ないようにしてコストダウンが図れる製材装置が従来より種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された製材装置は、曲がり材から得たタイコ材の表面形状をセンサにより認識し、この認識に基づいて角材の歩留り率を最大とするのに適した目標製材軌跡を制御器により計算し、目標製材軌跡の中間平均位置を通るタイコ材の軸が鋸盤の中央位置を直進通過するように給送姿勢を制御し、鋸盤に搭載した一対の帯鋸のそれぞれが目標製材軌跡を辿るように、タイコ材の給送方向に対して横方向への鋸盤の移動と回動を制御することで、曲がり角材を得るものである。
【0006】
また、本願発明と同様にスギなどの間伐材の有効利用を図るために、構成部の全部を木でつくった木製パレットが提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2に記載された木製パレットは、板材の接合に釘を使用せず、木製のダボと接着剤を使用するダボ接合によってつくられており、木の繊維が粗いスギでつくっても十分な強度が得られる。また、例えば耐用年数が経過したり壊れたりして処分対象となった木製パレットを処分するときに、木(板材)と金属(釘)を分別する必要がなく、手間が軽減できるという利点もある。
【0007】
【特許文献1】特願2002−265437
【0008】
【特許文献2】特願2003−391208
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載された木製パレットは、主に間伐材などの曲がり材を製材した板材を構成材として利用している。この曲がり材を切断加工するときには、特許文献1記載のものに代表されるような製材装置が使用されている。この製材装置は、曲がり材を例えば2〜3m程度の長いままで、所定の厚みで切断加工できるようになっているが、このために製材装置は大型化し、制御機構部も複雑で装置が高価である。
【0010】
また、曲がり材を切断加工した板材や角材などの構成材も、そのままの長さで使用しようとすれば、曲がり度の影響が大きくて使いにくく、用途が少ない。これを解消するために材を直材に加工しようとすると、大量の無駄が生じてしまう。
このように、森林資源である間伐材を含む曲がり材を有効利用して、森林資源をリサイクルするには障害が多く、そのシステムの構築は困難であった。
【0011】
(本発明の目的)
本発明の目的は、従来、その多くが林地に放置されていた間伐材を含む曲がり材を有効に利用して、厚さが均一で木製パレットの構成材として好適な構成材を無駄を少なくしてつくることができる方法及びその構成材を使用した木製パレットを提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、簡単な構造で曲がり材を均一な厚さで製材することができる製材装置を提供することである。
【0013】
更に、本発明の他の目的は、毎年大量につくられ同じく大量に処分されている木製パレットを、上記構成材を使用してリサイクルしやすいように全部を木製とし、間伐材を含む曲がり材の用途を大量の需要が見込めるこのような木製パレットに拡大することにより、国内の森林資源の健全な整備に寄与できる森林資源リサイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、ベルトコンベヤと、ベルトコンベヤのベルト上面と所要の間隔をおいて通された鋸と、ベルトコンベヤのベルトの下側に配された隆起部材を有し、該隆起部材は上記鋸の近傍に設けられている製材装置を使用し、曲がり材を短尺に切断し短尺材をつくる工程、該短尺材をベルトコンベヤに乗せて上記隆起部材側へ送る工程、上記短尺材を鋸で本質的に一定厚さに切断する工程を含む、曲がり材から構成材をつくる方法である。
【0015】
本発明は、曲がり材を乗せて送るベルトコンベヤと、ベルトコンベヤのベルト上面と所要の間隔をおいて通された鋸と、曲がり材をベルト上面に押し付ける押さえ手段とを有する製材装置であって、ベルトコンベヤのベルトの下側に隆起部材が配され、該隆起部材は上記鋸の近傍に設けられている、製材装置である。
【0016】
製材装置では、隆起部材の位置は、ベルトの送り方向において鋸の歯部より上手側に設定するのがより好ましい。
【0017】
本発明は、ベルトコンベヤと、ベルトコンベヤのベルト上面と所要の間隔をおいて通された鋸と、ベルトコンベヤのベルトの下側に配された隆起部材を有し、該隆起部材は上記鋸の近傍に設けられている製材装置を使用し、曲がり材を短尺に切断し短尺材をつくるようにし、該短尺材をベルトコンベヤに乗せて上記隆起部材側へ送るようにし、上記短尺材を鋸で本質的に一定厚さに切断するようにして得られた構成材でつくられた、木製パレットである。
【0018】
本発明は、ベルトコンベヤと、ベルトコンベヤのベルト上面と所要の間隔をおいて通された鋸と、ベルトコンベヤのベルトの下側に配された隆起部材を有し、該隆起部材は上記鋸の近傍に設けられている製材装置を使用し、森林資源である間伐材を含む曲がり材を短尺に切断し短尺材をつくるようにし、該短尺材をベルトコンベヤに乗せて上記隆起部材側へ送るようにし、上記短尺材を鋸で本質的に一定厚さに切断し、本質的に一定厚さに切断した構成材を使用して、構成材の接合を木製ダボと接着剤によるダボ接合で行うようにして木製パレットをつくり、処分対象となった木製パレットをリサイクルする、森林資源リサイクルシステムである。
【0019】
(作用)
本発明の作用を説明する。なお、ここでは本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与し説明するが、この符号の付与は、あくまで説明の理解を容易にするためであって各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0020】
本願発明に係る曲がり材から構成材をつくる方法によれば、例えば間伐材を含む曲がり材を、木製パレット(6)を構成する材料(60)の大きさに合わせて短尺に切断して個々の短尺材(5)の全長における曲がり度を緩和するので、切断加工したときに無駄が生じにくく、効率のよい利用が可能になる。
【0021】
また、上記方法と、本願発明に係る製材装置(A)によれば、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に隆起部材(2)を配することにより、ベルト(11)上面と帯鋸(33)との間隔を一定にするので、ベルト(11)の高さが固定されて変化せず、短尺材(5)をあらかじめ設定されたほぼ正確な厚さで切断加工することができる。なお、ほぼ正確な厚さ、または本質的に一定厚さとは、多少の寸法の狂いも含む意味である。
このようにしてつくられた厚さがほぼ正確な構成材を木製パレット(6)の材料(60)として使用すれば、木製パレット(6)の強度や品質が安定する。
【0022】
隆起部材(2)の位置がベルト(11)の送り方向において帯鋸(33)の歯部(330)より上手側に設定してあるものは、短尺材(5)が送られてきて帯鋸(33)の歯部(330)に当たるときには、すでに高さが決まり安定もしているので、より正確で安定的な切断加工ができる。
【0023】
本願発明に係る森林資源リサイクルシステムによれば、森林資源である間伐材を含む曲がり材を短尺に切断し短尺材(5)をつくるようにし、該短尺材(5)をベルトコンベヤ(1)に乗せて上記隆起部材(2)側へ送るようにし、上記短尺材(5)を鋸(33)で本質的に一定厚さに切断し、本質的に一定厚さに切断した構成材を使用して、構成材の接合を木製ダボ(63)と接着剤によるダボ接合で行うようにして、リサイクルが容易にでき全部が木製で大量の需要が見込まれる木製パレット(6)をつくり、処分対象となった木製パレット(6)をリサイクルすることにより、森林資源リサイクルシステムを構築できる。
【発明の効果】
【0024】
本願発明は上記構成を備えており、次のような効果を有する。
【0025】
(a)本願発明に係る曲がり材から構成材をつくる方法によれば、曲がり材を、例えば木製パレットを構成する材料の大きさに合わせて短尺に切断して個々の短尺材の全長における曲がり度を緩和することにより、切断加工したときに無駄が生じにくく、効率のよい利用が可能になる。
【0026】
(b)本願発明に係る曲がり材から構成材をつくる方法と製材装置によれば、ベルトコンベヤのベルトの下側に隆起部材を配することにより、ベルト上面と鋸との間隔を一定にするので、ベルトの高さが固定され、短尺材をあらかじめ設定された正確な厚さで切断加工することができる。
このようにしてつくられた厚さが正確な構成材を、例えば木製パレットの材料として使用すれば、木製パレットの強度や品質が安定する。
【0027】
(c)隆起部材の位置がベルトの送り方向において鋸の歯部より上手側に設定した製材装置は、短尺材が送られてきて帯鋸の歯部に当たるときには、すでに高さが決まり安定もしているので、被加工材をより正確で安定的に切断加工することができる。
【0028】
(d)本願発明に係る森林資源リサイクルシステムによれば、間伐材を含む曲がり材を本質的に一定厚さに切断した構成材を使用し、構成材の接合を木製ダボと接着剤によるダボ接合で行うようにして、リサイクルが容易にできると共に大量の需要が見込まれる全部が木製の木製パレットをつくり、処分対象となった木製パレットをリサイクルすることにより、国内の森林資源の健全な整備に大きく寄与できる優れた森林資源リサイクルシステムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
図1は本発明に係る製材装置の実施の形態を示す概略側面図、
図2は製材装置の概略正面図、
図3は製材装置のベルトコンベヤのベルトを一部切り欠いて下側の隆起部材を表した説明図である。
【0031】
製材装置Aは、ベルトコンベヤ1、隆起部材2、帯鋸装置3及び押さえ装置4を備えている。製材装置Aの前後には、搬送経路が直線的な複数のベルトコンベヤ(図示省略)をループ状に配している。これにより、製材装置Aは、被切断加工材をベルトコンベヤ1によって繰り返し帯鋸装置3に通すことにより構成材(後述するデッキ部材60、ケタ部材61)に加工することができる。
【0032】
(ベルトコンベヤ1)
ベルトコンベヤ1は、所要長さの水平かつ平坦な台板10を備えている。台板10の前後端部間には、無端状のベルト11が回し掛けられており、ベルト11は台板10の上面を滑るように回転移動する構造である。
【0033】
(帯鋸装置3)
ベルトコンベヤ1の送り方法の中間部には、帯鋸装置3が設けられている。帯鋸装置3は、ケーシング30を有し、その中央下部には通過ゲート31が設けてある。
ケーシング30内部には、両側に回転ホイール32、32aが設けられ、回転ホイール32、32aには、無端状の帯鋸33が回し掛けられている。
【0034】
帯鋸33は、その表面がベルトコンベヤ1のベルト11の上面と所要間隔をおいて平行になるように、かつベルト11の移動方向と直交するように通されている。なお、帯鋸33の方向は、上記方向に限定されず、切断作業及び切断してできた加工材の品質に問題がなければ多少は傾斜してもよい。帯鋸33とベルト11の上面との間隔は、被切断加工材を切断するときの切断厚さとなるもので、この間隔は帯鋸33の高さを調節することにより適宜設定が可能である。
【0035】
(隆起部材2)
ベルトコンベヤ1のうち、帯鋸装置3を通過する部分の台板10上面の所要位置すなわちベルト11の下側には、平面視で長方形の板状に形成された隆起部材2が設けられている。隆起部材2は、ベルト11の移動方向と直交するように、かつ台板10の幅とほぼ同じ長さに設けてあり、隆起部材2の上面から突出しない皿ネジ21で両側が台板10に固定されている(図3参照)。なお、隆起部材2の方向は、上記に限定されず多少斜めになっていてもよいし、また必ずしも直線的でなくてもよく、多少曲がっていてもよい。
【0036】
隆起部材2が設けられているのは、帯鋸33の位置より、ベルト11の移動方向において上手(かみて)側である。具体的には、隆起部材2の上手側の端辺部20と帯鋸33の歯部330との平面視での間隔(距離)が10mmになるように設定してある。この間隔は10mmに限定するものではなく、適宜設定が可能である。なお、隆起部材2は、上記のように帯鋸33の位置より上手側に限定されるものではなく、真下(同じ位置)でもよいし下手(しもて)側に配してもよい。
【0037】
なお、隆起部材2の厚さは、1.5mm、幅12mmであるが、この寸法に限定されるものではない。また、隆起部材2の形状は長方形の板状に限定されるものではなく、例えば角棒状のもの、かまぼこ状のものなど、ベルト11を所要の幅にわたり同じ高さで下から底上げできるものであれば、各種形状のものが採用できる。
【0038】
(押さえ装置4)
押さえ装置4は、ベルト11に乗せて送られる被切断加工材を上から押さえてベルト11上面に押し付けるものであり、ベルト11の移動方向(矢印a:図1、図3に図示)において、上記帯鋸装置3より上手側に設けられている。
【0039】
押さえ装置4は、基端が軸支され上下に回動するアーム40を有している。アーム40は下方へ向けて(図1で右回転方向)空気バネ41で付勢されている。アーム40の角度は、角度調節装置42によってアーム40を上下に回動させることにより調節可能である。
【0040】
また、アーム40の先部にはローラ間に回転ベルトを回し掛けて構成した押さえベルト装置43が設けてある。押さえベルト装置43は、ベルト11に乗って送られる被切断加工材の上部を、回転しながらその移動を邪魔することなく押さえて、被切断加工材をベルト11上面に押し付けて固定することができる。
【0041】
(作用)
図4は製材装置で短尺材を切断加工するときの切断部の状態を示す説明図である。
図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係る製材装置Aの作用を説明する。
【0042】
製材装置Aのベルトコンベヤ1のベルト11上に、被切断加工材である短尺材5を乗せる。ベルト11を回転させて短尺材5を帯鋸装置3へ送る。
なお、ここにいう短尺材5とは、例えば2〜3mの長さの曲がり材であるスギ間伐材を、木製パレットを構成する板材の大きさに合わせて短尺に切断して個々の全長における曲がり度を緩和したものである。本実施の形態では、短尺材5の長さは1100mmに設定されている。
【0043】
帯鋸装置3の近くまで送られてきた短尺材5は、押さえ装置4の押さえベルト装置43によって上から押さえられ、ベルト11上面に押し付けられる。短尺材5は、この状態で更にベルト11によって送られる。そして、隆起部材2が設けてある位置で隆起部材2によって底上げされベルト11の送り力によって、帯鋸33で水平に切断される(図4参照)。
【0044】
このとき、隆起部材2によって底上げされやや高く案内されたベルト11は、短尺材5の重さによって隆起部材2上面と強く接触する。これによって、隆起部材2の上を移動するベルト11の上面の高さは連続的に安定しており、帯鋸33との間隔、すなわち切断厚さが正確に維持される。
【0045】
図5は製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と元口の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフ、
図6は製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と中央の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフ、
図7は製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と末口の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフである。
【0046】
なお、各グラフのデータをとったときの設定条件は、帯鋸33の張り力(7kg)、隆起部材2の厚さ(1.5mm:上記実施の形態の設定値)、隆起部材2の位置(帯鋸33の上手側10mm:上記実施の形態の設定値)、切断厚(20mm)であった。
【0047】
図5は短尺材5を切断加工した製材回数と、できた板材の元口の厚さの精度の関係を示したものである。
図5(a)に示されたように、隆起部材2を使用した場合では、板材の元口側においては、一部例外はあるが、そのほとんどが設定値である20mmの±0.5mm以内に収まっており、ほぼ正確な切断加工を行うことができた。
これに対して、隆起部材2を使用しなかった場合では、図5(b)に示すように、すべてが設定値である20mmを超えるとともに全体に安定しない値を示した。そして、最も厚いものは24mmを超えるものもあって、切断加工の精度が悪かった。
【0048】
図6は短尺材5を切断加工した製材回数と、できた板材の長手方向中央の厚さの精度の関係を示したものである。
図6(a)に示されたように、隆起部材2を使用した場合では、板材の中央においては、一部例外はあるが、元口側と同様にそのほとんどが設定値である20mmの±0.5mm以内に収まっており、ほぼ正確な切断加工を行うことができた。
これに対して、隆起部材2を使用しなかった場合では、図6(b)に示すように、18mmに満たない厚さから24mmを超える厚さの間で全体に安定しない値を示し、元口側と同様に、切断加工の精度が悪かった。
【0049】
図7は短尺材5を切断加工した製材回数と、できた板材の末口の厚さの精度の関係を示したものである。
図7(a)に示されたように、隆起部材2を使用した場合では、板材の末口側においては、一部例外はあるが、元口側や中央と同様にそのほとんどが設定値である20mmの±0.5mm以内に収まっており、ほぼ正確な切断加工を行うことができた。
これに対して、隆起部材2を使用しなかった場合では、図7(b)に示すように、そのほとんどが21〜22mmの間に集中した。そこに入らないものの大多数は17mmに満たない厚さから20mmの間で全体に安定しない値を示し、元口側や中央と同様に、切断加工の精度が悪かった。
【0050】
上記図5ないし図7に示されたデータから、隆起部材2を使用することにより、被切断加工材である短尺材5から板材をつくるときの厚さの精度が、元口、中央、末口の各部において向上することがわかった。
【0051】
また、このようにしてつくられた板材は、長さが1100mmであり、曲がり度が大きすぎる場合は、幅方向両側を平行に切断して所要幅の直板をつくって使用する。
このとき切断される部分は、この板材が一旦短尺にして曲がり度を緩和した短尺材からつくられているので、長尺で曲がり度の大きいものを切断する場合と比べて、明らかに少なくなり、無駄を低減できる。
【0052】
なお、隆起部材2を使用することによって加工寸法の精度が上がる理由は定かではないが、木材が上記のようにして切断されることにより下に残った木材が若干上反りになることが関係していると思われる。すなわち、ベルト11に載っている短尺材5が上反りになると、ベルト11上で揺り椅子のように揺れ動きやすい。このため、短尺材5が隆起部材2を使用しないで送られると、押さえ装置4である程度の固定はできても、先端がベルト11上面から浮いた状態で切断が始まり、揺れ動きを十分に抑えることができないので、切断された構成材の特に中間部の厚さの誤差が大きく寸法が安定しない(図6(b)参照)。
【0053】
これに対し、ベルト11の下側に隆起部材2を敷いて底上げを行うことにより、ベルト11の裏面が隆起部材2の端辺部20と上面に強く接触すると共に、上反りになった短尺材5の先端部はベルト11の高くなった部分と隙間をつくることなく乗り上げるように斜め上方に案内されて切断される。これにより、まず短尺材5の末口の切り込み厚さが正確になり、しかも切断部と押さえ装置4による固定作用によって短尺材5の揺れ動きが抑えられるので、短尺材5を全長にわたりほぼ正確な厚さで切断することが可能になるものと思われる。なお、仮に上記理由とは別のメカニズムであっても、いずれにしても本発明の範囲内であることには変わりはない。
【0054】
図8は木製パレットの斜視図、
図9は木製パレットの平面視説明図、
図10はデッキ部材とケタ部材の固定構造を示す要部断面図である。
【0055】
ここで、製材装置Aでつくられる板材(デッキ部材)を使用して作製される木製パレット6の構造を説明する。
【0056】
木製パレット6は、複数のデッキ部材60と、連結部材である三本のケタ部材61と、ダボ63により構成されている。各デッキ部材60及び各ケタ部材61は、上記のように材料としてスギの間伐材を製材したものを使用している。各ケタ部材61は、デッキ部材60の両端と中央に等間隔で平行に配置されている。各ケタ部材61の上下の面611、612には、それぞれ五枚ずつのデッキ部材60が接合(固着または固定)されている。各デッキ部材60は、ケタ部材61と直交する方向へ設けられており、各デッキ部材60の間には所要幅の隙間64が設けられている。
【0057】
各ケタ部材61の間には、二箇所にフォークリフトトラックのフォークや吊り紐などを差し込んで通すための差込部65が二箇所に設けられている。
デッキ部材60と各ケタ部材61の接合部の構造を図10を参照して説明する。なお、図10ではデッキ部材60と中央のケタ部材61の接合部の構造を示しているが、デッキ部材60と両端のケタ部材61の接合部の構造も同様である。
【0058】
各デッキ部材60と各ケタ部材61の交差する部分には、それぞれ三箇所に接合部が設けられている。接合部の構造は、ダボ継ぎである。すなわち、各デッキ部材60の接合面601にはダボ穴602が設けられている。ダボ穴602の穴底はデッキ部材60の厚みの中間部分に位置しており、外面603側には貫通していない。また、各ケタ部材61の接合面となる上下の面611、612にはダボ穴613が設けられている。
【0059】
各デッキ部材60と各ケタ部材61は、まず各デッキ部材60または各ケタ部材61のうち何れか一方のダボ穴に接着剤を適量注入または塗布してダボ63を差し込み、次に他方のダボ穴に接着剤を適量注入または塗布し、差し込まれているダボ63の突出している側に嵌め入れるようにして接合面601と上下の面611、612を合わせ、接着することにより組み立てられている。また、ダボ63にあらかじめ接着剤を付着させることは任意である。本実施の形態では、接着剤として水性ビニル系接着剤が使用されている。なお、水性ウレタン系接着剤や水性高分子イソシアネート系接着剤など他の接着剤を使用することもできる。
【0060】
ダボ63は、材料としてブナが使用されている。ダボ63は、外周面に多数の螺旋状の溝(または条)を設けた構造である。ダボ63の直径は、圧縮することによって、デッキ部材60、ケタ部材61に設けられているダボ穴602、613の内径よりやや小さく形成されている。本実施の形態では、ダボ63の直径がダボ穴602、613の内径より0.2mm径小に形成されており、ほとんど抵抗なく手差しが可能である。また、ダボ穴602、613に接着剤を入れ、ダボ63を差し込んだときに接着剤がダボ穴602、613から溢れるので、溢れた接着剤でデッキ部材60とケタ部材61の接合面を広く接着することができ、パレット全体の強度や品質が向上する。
【0061】
ダボ63は、ダボ穴602、613に差し込むことにより接着剤が付着して接着剤の成分(液分)を吸収することにより膨張する。各デッキ部材60と各ケタ部材61は、接着剤による接着力とダボ63が膨張する力が相まって、より強固に固着される。これにより、デッキ部材60とケタ部材61の接合が確実に行われ、木製パレット全体としての強度が向上する。ダボ63の直径は上記のようにダボ穴602、613より径小のものに限定されるものではなく、同径またはやや径大に形成してダボ穴に打ち込み、接合部に圧力を加えて組み立てるようにしてもよい。
【0062】
なお、本実施例の木製パレット6のサイズは、パレットの大きさが長さ1100mm、幅1100mm、厚さ148mm、デッキ部材60の大きさが長さ1100mm、幅120mm、厚さ24mm、ケタ部材61の大きさが長さ1100mm、幅50mm、厚さ100mmであるが、これに限定するものではない。また、ダボ63のサイズは、長さ40mm、直径11.8mmのものを使用しているが、これに限定するものではない。
【0063】
(作 用)
図8ないし図10を参照して、木製パレット6の作用を説明する。
木製パレット6は、ダボ63が接着剤でダボ穴602、613に接着されるので、デッキ部材60やケタ部材61あるいはダボ63の材料として、木質が軟らかいスギの間伐材を使用した場合でも、釘を使用した場合のように緩むことがなく、従来のものと比較して接合部分の強度に実質的に差は生じない。
【0064】
なお、製材装置Aで切断加工した板材でつくったデッキ部材60は、上記したように厚さがあらかじめ決まられた厚さで一定であるので、パレット全体としての強度や品質が安定する。従って、各部材の材料としてスギの間伐材等を支障なく利用することができる。
【0065】
木質のデッキ部材60とケタ部材61が、木質のダボ63と接着剤により接合されている構造であるので、リサイクル処理する場合も、従来のように釘を使用したものと相違して釘を除去する手間がかからず、そのままチッパーにかけて細片化することができる。従って、木製パレット6は、廃棄された後も廃材をチップ化してチップボードに加工したり、パルプの材料とするなどリサイクルすることが簡単に効率よくできる。
【0066】
釘を使用した従来のパレットは、釘の酸化により錆が発生し、物品をこの上に載せた時に錆が付着し商品価値を低下させてしまうこともあったが、すべて木質である木製パレット6では、このような問題は生じない。
【0067】
また、ダボ穴602がデッキ部材60の厚み方向の外面603側に貫通しないように設けられており、デッキ部材60の外面603に穴が開かないので、外観が見苦しくならない。また、ダボ穴602、613にボンド等の接着剤を入れ、ダボ63を差し込んだときに接着剤がダボ穴602、613から溢れるので、デッキ部材60とケタ部材61の接合面での接着が確実に行われ、パレット全体の強度が向上する。
【0068】
ダボ63の直径は、圧縮することによってダボ穴602、613の内径より小さく形成されており、デッキ部材60とケタ部材61はダボ穴602、613に挿入したダボ63に接着剤の成分を吸収させ膨張させて接着してある。これにより、接着剤による接着力とダボ63がダボ穴602、613内部で膨張する力が相まって、ダボ63とダボ穴602、613がより強固に固着されるので、デッキ部材60とケタ部材61の接合が確実に行われ、木製パレット全体としての強度が向上する。
【0069】
組み立て時(製造時)において、ダボ63をダボ穴602、613に差し込む作業が手差しでも可能となり、ダボ63を打ち込む場合と比べて組み立てが容易にでき組み立ての自動化(機械化)がしやすくなる。
【0070】
図11は本発明に係る森林資源リサイクルシステムの説明図である。
図1ないし図11を参照して、本発明に係る森林資源リサイクルシステムについて説明する。
【0071】
(1)地域の森林資源である間伐材を含む曲がり材を集める。
(2)曲がり材を上記した方法で木製パレット6を構成する材料の大きさに合わせて短尺に切断し、個々の短尺材5の曲がり度を緩和しておく。
(3)上記したように製材装置Aによって短尺材5を本質的に一定厚さの板状に加工する。
【0072】
(4)板状に加工したものをデッキ部材60として使用し、上記した木製パレット6をつくる。
(5)耐用年数が経過したり壊れたりして処分対象となった木製パレット6を燃料にするなど公知処理手段でリサイクルする。
(6)森林資源は、一方では良質な木材の生産によって建築物などをつくるために使用され、これらも最終的には同様にリサイクルされる。
【0073】
このように、その多くが林地に放置されていた間伐材を含む曲がり材を有効に利用し、リサイクルが容易にできる全部が木製で大量の需要が見込まれる木製パレット6をつくり、処分対象となった木製パレット6をリサイクルすることにより、優れた森林資源リサイクルシステムを構築できる。
【0074】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る製材装置の実施の形態を示す概略側面図。
【図2】製材装置の概略正面図。
【図3】製材装置のベルトコンベヤのベルトを一部切り欠いて下側の隆起部材を表した説明図。
【図4】製材装置で短尺材を切断加工するときの切断部の状態を示す説明図。
【図5】製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と元口の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフ。
【図6】製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と中央の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフ。
【図7】製材装置において隆起部材を使用したときと使用しないときの製材回数と末口の厚さの精度の関係を示し、(a)は隆起部材の使用時、(b)は隆起部材の不使用時のグラフ。
【図8】木製パレットの斜視図。
【図9】木製パレットの平面視説明図。
【図10】デッキ部材とケタ部材の固定構造を示す要部断面図。
【図11】本発明に係る森林資源リサイクルシステムの説明図。
【符号の説明】
【0076】
A 製材装置
1 ベルトコンベヤ
10 台板
11 ベルト
2 隆起部材
20 端辺部
21 皿ネジ
3 帯鋸装置
30 ケーシング
31 通過ゲート
32、32a 回転ホイール
33 帯鋸
330 歯部
4 押さえ装置
40 アーム
41 空気バネ
42 角度調節装置
43 ベルト装置
5 短尺材
6 木製パレット
60 デッキ部材
601 接合面
602 ダボ穴
603 外面
61 ケタ部材
611、612 面
613 ダボ穴
63 ダボ
64 隙間
65 差込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベヤ(1)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)上面と所要の間隔をおいて通された鋸(33)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に配された隆起部材(2)を有し、該隆起部材(2)は上記鋸(33)の近傍に設けられている製材装置を使用し、
曲がり材を短尺に切断し短尺材(5)をつくる工程、
該短尺材(5)をベルトコンベヤ(1)に乗せて上記隆起部材(2)側へ送る工程、
上記短尺材(5)を鋸(33)で本質的に一定厚さに切断する工程、
を含む、
曲がり材から構成材をつくる方法。
【請求項2】
曲がり材(5)を乗せて送るベルトコンベヤ(1)と、
ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)上面と所要の間隔をおいて通された鋸(33)と、
曲がり材(5)をベルト(11)上面に押し付ける押さえ手段(4)と、
を有する製材装置であって、
ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に隆起部材(2)が配され、該隆起部材(2)は上記鋸(33)の近傍に設けられている、
製材装置。
【請求項3】
隆起部材(2)の位置は、ベルト(11)の送り方向において鋸(33)の歯部(330)より上手側に設定してある、
請求項2記載の製材装置。
【請求項4】
ベルトコンベヤ(1)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)上面と所要の間隔をおいて通された鋸(33)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に配された隆起部材(2)を有し、該隆起部材(2)は上記鋸(33)の近傍に設けられている製材装置を使用し、
曲がり材を短尺に切断し短尺材(5)をつくるようにし、該短尺材(5)をベルトコンベヤ(1)に乗せて上記隆起部材(2)側へ送るようにし、上記短尺材(5)を鋸(33)で本質的に一定厚さに切断するようにして得られた構成材でつくられた、
木製パレット。
【請求項5】
ベルトコンベヤ(1)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)上面と所要の間隔をおいて通された鋸(33)と、ベルトコンベヤ(1)のベルト(11)の下側に配された隆起部材(2)を有し、該隆起部材(2)は上記鋸(33)の近傍に設けられている製材装置を使用し、
森林資源である間伐材を含む曲がり材を短尺に切断し短尺材(5)をつくるようにし、該短尺材(5)をベルトコンベヤ(1)に乗せて上記隆起部材(2)側へ送るようにし、上記短尺材(5)を鋸(33)で本質的に一定厚さに切断し、
本質的に一定厚さに切断した構成材を使用して、構成材の接合を木製ダボ(63)と接着剤によるダボ接合で行うようにして木製パレット(6)をつくり、
処分対象となった木製パレット(6)をリサイクルすることを特徴とする、
森林資源リサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−196597(P2007−196597A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19885(P2006−19885)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(506031546)NPO法人21世紀の森林づくり (1)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】