説明

曲げ加工装置及び曲げ加工方法

【課題】簡便且つ適切に金属板への加熱及び冷却を行うことができる曲げ加工装置及び曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】金属板2を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工装置1であって、金属板2の上面の一部を加熱可能な加熱ヘッド3と、金属板2の下面を支持するとともに金属板2の曲げ形状に対応して鉛直方向に伸縮可能な複数のジャッキ4と、ジャッキ4の先端部の側面に配置され金属板2の下面に冷却水を散水する複数の冷却ノズル5と、を有し、冷却ノズル5は、金属板2の下面全体に冷却水を散水可能に配置され、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下以外の金属板2の下面に冷却水を散水するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を加熱して曲げ加工を行う線状加熱による曲げ加工装置及び曲げ加工方法に関し、特に、金属板の一面を加熱し片面を冷却しながら曲げ加工を行う曲げ加工装置及び曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造船等に使用される金属板を曲げ加工するために線状加熱が用いられている。線状加熱とは、金属板を線状に加熱して平板を曲面に曲げ加工したり、溶接作業により波打ち状に変形した金属面を平面に修正したりする技術である。また、線状加熱は、熟練作業者の経験に基づいてほとんど人手で行われていた。
【0003】
しかし、近年、コンピュータを用いた有限要素法(Finite Element Method)を用いることによって、目的形状、金属板の特性及び加熱装置の特性等のデータに基づいて、金属板上を加熱する線の配置を算出できるようになってきた。そのため、線状加熱の自動化が可能になりつつある。
【0004】
ところで、線状加熱においては、効果的に金属板を変形させるとともに、金属板の温度が高くなり過ぎないようにするために、金属板に散水して冷却する必要がある。これは線状加熱を自動化した装置においても同様である。
【0005】
しかし、金属板の上面に散水した場合、曲面となった金属板の椀型形状の上に冷却水が溜まり、これを放置すると加熱点の温度上昇を妨げるため、速やかに排水する必要がある。そこで、金属板の上面を加熱し、金属板の下面から散水又は冷却する技術が考案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1には、曲げ加工の際に、金属板の一方面を加熱ヘッドで加熱し、他方の面を水冷ヘッドで冷却する線状加熱による曲げ加工装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、外部から拘束を受けず、自由に動き得るように支持された金属板の表面に点状、直線状又は曲線状の断続的な加熱を加えると同時に、金属板の裏面の表面加熱位置に対応する位置を断続的な加熱の間の加熱停止直後の非加熱時に冷却する加熱・冷却処理を所定回数繰返し加え、金属板の表裏両面間に局部的な温度勾配を繰返し与えることにより、金属板の表面側に所定角度だけ曲げることを特徴とする熱応力利用ダイレス板成型方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3862183号公報
【特許文献2】特公平03−8850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された曲げ加工装置では、金属板の下面を冷却することは記載されているものの、具体的な冷却方法が記載されておらず、金属板のどの位置にどのように冷却水を散水すればよいのか不明である。
【0010】
また、特許文献2に記載の曲げ加工方法では、金属板の表面に所定の線状加熱をした後、加熱処理を停止して、加熱した位置を裏面から一定時間冷却するという処理を行っており、加熱工程と冷却工程とが分離している。このように表面の加熱処理をしてから、裏面の冷却処理を行う方法では、船舶の鋼板のような大型の金属板(例えば、3m×12m以上)には、加熱後の所定のタイミングで冷却を施すことが困難であり、所望の曲げ形状を得ることができないという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、簡便且つ適切に金属板への加熱及び冷却を行うことができる曲げ加工装置及び曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、金属板を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工装置であって、前記金属板の上面の一部を加熱可能な加熱ヘッドと、前記金属板の下面を支持するとともに前記金属板の曲げ形状に対応して鉛直方向に伸縮可能な複数のジャッキと、前記ジャッキの先端部の側面に配置され前記金属板の下面に冷却水を散水する複数の冷却ノズルと、を有し、前記冷却ノズルは、前記金属板の下面全体に冷却水を散水可能に配置され、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下以外の前記金属板の下面に冷却水を散水するように構成されている、ことを特徴とする曲げ加工装置が提供される。
【0013】
前記加熱ヘッドを移動させる加熱ヘッド移動機構を有し、前記冷却ノズルは、前記加熱ヘッド移動機構が前記加熱ヘッドを移動させながら前記金属板の上面を加熱する際に、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下を冷却しないように、前記加熱ヘッドの移動に追従しながら前記金属板の下面に冷却水を散水するようにしてもよい。
【0014】
また、前記加熱ヘッドを移動させる加熱ヘッド移動機構を有し、前記冷却ノズルは、前記加熱ヘッド移動機構が前記加熱ヘッドを移動させながら前記金属板の上面を加熱する際に、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下を冷却しないように、前記金属板の下面全体に冷却水を散水するようにしてもよい。
【0015】
前記冷却ノズルは、例えば、前記ジャッキの伸縮とともに移動する位置に固定される。また、前記加熱ヘッドは、例えば、高周波加熱コイル又はガスバーナーである。また、前記ジャッキは、例えば、格子線に沿って配置されている。
【0016】
また、本発明によれば、金属板を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工方法であって、前記金属板を曲げ形状に対応して伸縮可能なジャッキ上に配置する金属板支持工程と、前記金属板の上面の一部を予め設定された条件に従って加熱する加熱工程と、加熱点の直下以外の前記金属板の下面に冷却水を散水して前記金属板を冷却する冷却工程と、を有することを特徴とする曲げ加工方法が提供される。
【0017】
前記冷却工程は、前記加熱点の直下を冷却しないように前記加熱点の移動に追従しながら冷却水を散水する工程であってもよいし、前記加熱点の直下を冷却しないように前記金属板の下面全体に冷却水を散水する工程であってもよい。
【0018】
なお、上述した曲げ加工装置及び曲げ加工方法において、「下面全体」とは、冷却が必要な部分の全体を意味し、例えば、金属板の周縁部や線状加熱よる曲げ加工を行わない部分(すなわち、冷却する必要がない部分)を除外してもよい趣旨である。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明に係る曲げ加工装置及び曲げ加工方法によれば、複数の冷却ノズルを金属板の下面の一面に配置し、加熱ヘッドが加熱している部分の直下以外の下面を冷却するようにしたことにより、所定の温度に加熱された金属板を所定のタイミングで直ちに冷却することができ、簡便且つ適切に金属板への加熱及び冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置の側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキ式定盤の上面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキ式定盤の側面図であり、(a)は金属板の支持前の状態、(b)は金属板の支持後の状態、(c)は曲げ加工前の状態、(d)は曲げ加工後の状態、を示している。
【図4】本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキを示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、を示している。
【図5】本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置における金属板に対する加熱部分と冷却部分との位置関係を説明するための図であり、(a)は金属板の右側を加熱している場合、(b)は金属板の中央部を加熱している場合、(c)は金属板の左側を加熱している場合、を示している。
【図6】本発明の第二実施形態に係る曲げ加工装置における金属板に対する加熱部分と冷却部分との位置関係を説明するための図であり、(a)は金属板の右側を加熱している場合、(b)は金属板の中央部を加熱している場合、(c)は金属板の左側を加熱している場合、を示している。
【図7】本発明の第三実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキを示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に第一実施形態に係る曲げ加工装置について、図1乃至図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置の側面図である。図2は、本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキ式定盤の上面図である。図3は、本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキ式定盤の側面図であり、(a)は金属板の支持前の状態、(b)は金属板の支持後の状態、(c)は曲げ加工前の状態、(d)は曲げ加工後の状態、を示している。図4は、本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置におけるジャッキを示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、を示している。
【0022】
本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置1は、図1乃至図4に示したように、金属板2を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工装置1であって、金属板2の上面の一部を加熱可能な加熱ヘッド3と、金属板2の下面を支持するとともに金属板2の曲げ形状に対応して鉛直方向に伸縮可能な複数のジャッキ4と、ジャッキ4の先端部の側面に配置され金属板2の下面に冷却水を散水する複数の冷却ノズル5と、を有し、冷却ノズル5は、金属板2の下面全体に冷却水を散水可能に配置され、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下以外の金属板2の下面に冷却水を散水するように構成されている。ここで、「下面全体」とは、冷却が必要な部分の全体を意味し、例えば、金属板2の周縁部や線状加熱よる曲げ加工を行わない部分(すなわち、冷却する必要がない部分)を除外してもよい趣旨である。
【0023】
金属板2は、例えば、船舶の外殻等に使用される鋼板であり、曲げ加工装置1によって平面形状から曲面形状に加工される。曲げ形状は、船体形状に予め設定されており、配置される鋼板の位置によって異なる線状加熱が施される。
【0024】
前記加熱ヘッド3は、例えば、高周波加熱コイル、ガスバーナー等の加熱器であり、金属板2を加熱する。かかる加熱ヘッド3は、加熱ヘッド移動機構6に配置されており、所望の形状に金属板2を曲げることができるように設定された線状加熱ラインに沿って移動できるように構成されている。
【0025】
加熱ヘッド移動機構6は、例えば、図1に示すように、加熱ヘッド3を金属板2の上方で三次元に移動させることができるように構成される。具体的には、加熱ヘッド移動機構6は、基部61と、マニピュレータ62と、を有する。基部61は、天井のXY平面に沿って移動可能に設置される。マニピュレータ62は、基部61に配置され、先端に加熱ヘッド3を有する。マニピュレータ62は、基部61の周辺で加熱ヘッド3を三次元に移動させる。この基部61のXY平面の移動とマニピュレータ62の三次元の移動とにより、所望の線状加熱を実現する。また、加熱時には、加熱ヘッド移動機構6は、加熱ヘッド3を金属板2に当接又は近接させて、加熱ヘッド3により金属板2を加熱する。
【0026】
前記ジャッキ4は、図1及び図2に示したように、定盤71上に配置されており、ジャッキ式定盤7を構成している。配置されたジャッキ4の大部分は、格子線に沿って配置されており、例えば、市松模様を構成するように配置される。ただし、ジャッキ4の配置はかかる配置に限定されるものではなく、部分的に異なる配置を有していてもよい。なお、ジャッキ式定盤7は、通路74を有していてもよい。通路74は、例えば、メンテナンス等を行う作業員、金属板2を反転させる反転装置、金属板2を搬送する搬送装置等を進入させるための通路である。
【0027】
また、ジャッキ式定盤7は、冷却水を回収する冷却水回収皿72を有していてもよい。冷却水回収皿72は、ジャッキ4を挿通する開口部73を有し、外縁部及び内縁部に折り返し部が形成された平面形状の受け皿である。冷却水回収皿72は、図示しない支持部材により定盤71上に配置されており、ジャッキ4の昇降を阻害しない位置であって、冷却水の散水位置よりも低い位置となるように配置される。かかる冷却水回収皿72によって、散水後の冷却水を効果的に回収し、冷却水として再利用する。なお、冷却水回収皿72の代わりに床面に冷却水回収水路を形成するようにしてもよい。
【0028】
前記ジャッキ4は、図3に示すように、Z軸方向に直立しており、Z軸方向に伸縮自在に構成されている。複数のジャッキ4を一面に配置することにより、ジャッキ4の先端部で金属板2の下面を支持することができる。ジャッキ4は、図3(a)に示した状態で待機し、金属板2を支持する際には、図3(b)にしたように、先端部を上昇させた位置で金属板2を支持する。この上昇位置は、曲げ加工後の金属板2の最も高い位置に相当している。このようにジャッキ4を上昇させてから金属板2を載置させるのは、その後の加熱及び冷却により金属板2は曲げられることから、その曲げ分をジャッキ4の昇降により吸収するためである。
【0029】
具体的には、図3(c)に示したように、図3(b)の状態において、金属板2の予め設定された曲げ形状に沿うように所定のジャッキ4の高さを調整してから、金属板2の加熱及び冷却を行う。かかる曲げ加工によって、図3(d)に示すように、金属板2は、ジャッキ4の配置位置に沿うように曲げ加工される。
【0030】
また、ジャッキ4は、図4に示すように、昇降機構41と、筐体42と、支持部43と、冷却水供給配管44と、四基の冷却ノズル5と、四基のノズルカバー45と、を有する。なお、図4において、冷却水回収皿72の図は省略してある。昇降機構41は、いわゆる油圧シリンダや空圧シリンダ等の昇降手段であり、ロッド41aを昇降させる。ロッド41aの先端部には、支持部43及び筐体42が接続されており、ロッド41aの昇降に伴って支持部43及び筐体42を昇降させることができる。
【0031】
支持部43は、金属板2に当接する部分であり、例えば、球体に構成された金属部材又は弾性部材により構成されている。筐体42は、昇降機構41の外周に立設された筒部材41bに沿って移動できるように嵌挿されている。また、筐体42には、冷却水供給配管44、冷却ノズル5及びノズルカバー45が接続されている。
【0032】
冷却水供給配管44は、筐体42の外周を囲うように配置されており、その一部に冷却ノズル5が接続されており、筐体42を中心として略放射状に冷却水を散水できるように構成されている。冷却水供給配管44は、筐体42の各側面に配置された台座44a上に配置され支持されている。また、冷却水供給配管44は、筐体42の内部に配置されたフレキシブルホース44bにより外部から冷却水が供給される。したがって、冷却水供給配管44及び冷却ノズル5は、筐体42とともに昇降可能に構成されており、冷却ノズル5はジャッキ4の伸縮とともに移動する位置に固定されている。かかる構成により、金属板2を支持した状態において、金属板2の下面と冷却ノズル5との距離を略一定に維持することができ、効果的に冷却水を散水することができる。
【0033】
冷却ノズル5は、例えば、図示したように、冷却水供給配管44の上部から斜め上方に向かって冷却水を放出できるように配置される。ノズルカバー45は、冷却水供給配管44の上部に接続され、冷却ノズル5の先端部に相当する部分に切欠部が形成され、冷却水の散水を阻害しないように構成されている。かかるノズルカバー45を配置することにより、比較的脆弱な構造である冷却水供給配管44や冷却ノズル5を何らかの衝撃や衝突から保護することができる。
【0034】
複数の冷却ノズル5は、金属板2の下面全体に散水可能に配置され、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下以外の金属板2の下面に散水する。具体的には、曲げ加工装置1が、加熱ヘッド3を移動させる加熱ヘッド移動機構6を有し、冷却ノズル5は、加熱ヘッド移動機構6が加熱ヘッド3を移動させながら金属板2の上面を加熱する際に、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下を冷却しないように、加熱ヘッド3の移動に追従しながら金属板2の下面に冷却水を散水する。
【0035】
ここで、図5は、本発明の第一実施形態に係る曲げ加工装置1における金属板2に対する加熱部分と冷却部分との位置関係を説明するための図であり、(a)は金属板2の右側を加熱している場合、(b)は金属板2の中央部を加熱している場合、(c)は金属板2の左側を加熱している場合、を示している。各図において、黒色の丸は加熱ヘッド3が加熱している部分(加熱点)を示し、灰色の丸は冷却水を散水している冷却ノズル5を有するジャッキ4を示し、白色の丸は冷却水を散水していない冷却ノズル5を有するジャッキ4示している。また、冷却水が散水される領域を斜線で示している。
【0036】
図5(a)〜(c)において矢印で示したように、右から左に加熱点を移動させる場合には、その加熱点が通過する線上のジャッキ4に配置された冷却ノズル5が冷却水を散水し、それ以外の冷却ノズル5は冷却水を散水しないように設定される。そして、冷却水を散水する冷却ノズル5は、加熱ヘッド3の加熱点の直下を冷却しないように、加熱点の移動に追従しながら所定の時間遅れで金属板2の下面に冷却水を散水する。このように、加熱点が所定の温度に達するまで又は所定時間加熱を施すまでは冷却水を散水せずに、所定のタイミングで追従しながら加熱点を冷却することにより、効果的に金属板2を冷却することができ、熟練工と同等の冷却を行うことができる。
【0037】
上述した第一実施形態に係る曲げ加工装置1によれば、金属板2を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工方法であって、金属板2を曲げ形状に対応して伸縮可能なジャッキ4上に配置する金属板支持工程と、金属板2の上面の一部を予め設定された条件に従って加熱する加熱工程と、加熱点の直下以外の金属板2の下面に冷却水を散水して金属板2を冷却する冷却工程と、を有する曲げ加工方法を容易に実現することができる。特に、第一実施形態に係る曲げ加工装置1によれば、冷却工程は、加熱点の直下を冷却しないように加熱点の移動に追従しながら冷却水を散水することとなる。
【0038】
上述した第一実施形態に係る曲げ加工装置1及び曲げ加工方法によれば、複数の冷却ノズル5を金属板2の下面の一面に配置し、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下以外の下面を冷却するようにしたことにより、所定の温度に加熱された金属板2を所定のタイミングで直ちに冷却することができ、簡便且つ適切に金属板2への加熱及び冷却を行うことができる。
【0039】
次に、本発明の第二実施形態に係る曲げ加工装置1及び曲げ加工方法について説明する。ここで、図6は、本発明の第二実施形態に係る曲げ加工装置1における金属板2に対する加熱部分と冷却部分との位置関係を説明するための図であり、(a)は金属板2の右側を加熱している場合、(b)は金属板2の中央部を加熱している場合、(c)は金属板2の左側を加熱している場合、を示している。各図において、黒色の丸は加熱ヘッド3が加熱している部分(加熱点)を示し、灰色の丸は冷却水を散水している冷却ノズル5を有するジャッキ4を示し、白色の丸は冷却水を散水していない冷却ノズル5を有するジャッキ4を示している。また、冷却水が散水される領域を斜線で示している。
【0040】
第二実施形態に係る曲げ加工装置1は、加熱ヘッド3を移動させる加熱ヘッド移動機構6を有し、冷却ノズル5は、加熱ヘッド移動機構6が加熱ヘッド3を移動させながら金属板2の上面を加熱する際に、加熱ヘッド3が加熱している部分の直下を冷却しないように、金属板2の下面全体に冷却水を散水するようにしたものである。冷却水の散水方法以外の点については、上述した第一実施形態に係る曲げ加工装置1と同様であるため、装置構成の詳細な説明については省略する。
【0041】
図6(a)〜(c)において矢印で示したように、右から左に加熱点を移動させる場合には、その加熱点が通過する線上のジャッキ4に配置された冷却ノズル5は冷却水を散水せず、それ以外の冷却ノズル5が冷却水を散水するように設定される。そして、冷却水を散水する冷却ノズル5は、加熱ヘッド3の加熱点の直下を冷却しないように、加熱点の移動に追従しながら所定の時間遅れで金属板2の下面に冷却水を散水しないようにする。
【0042】
かかる冷却方法によっても、加熱点が所定の温度に達するまで又は所定時間加熱を施すまでは加熱点を冷却せずに、所定のタイミングで追従しながら加熱点を冷却することができ、効果的に金属板2を冷却することができる。特に、第二実施形態に係る曲げ加工装置1によれば、金属板2の全体を常時冷却していることから、加熱点以外の部分における冷却効果に優れており、急速に金属板2を冷却することができる。なお、上述したように、冷却水回収皿72を配置することにより、冷却水を多量に使用しても再利用することができる。
【0043】
上述した第二実施形態に係る曲げ加工装置1によれば、第一実施形態の場合と同様に、金属板2を曲げ形状に対応して伸縮可能なジャッキ4上に配置する金属板支持工程と、金属板2の上面の一部を予め設定された条件に従って加熱する加熱工程と、加熱点の直下以外の金属板2の下面に冷却水を散水して金属板2を冷却する冷却工程と、を有する曲げ加工方法を容易に実現することができる。特に、第二実施形態に係る曲げ加工装置1によれば、冷却工程は、加熱点の直下を冷却しないように金属板2の下面全体に冷却水を散水することとなる。
【0044】
次に、本発明の第三実施形態に係る曲げ加工装置1について説明する。ここで、図7は、本発明の第三実施形態に係る曲げ加工装置1におけるジャッキ4を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、を示している。なお、第三実施形態に係る曲げ加工装置1は、図1乃至図3に示した第一実施形態に係る曲げ加工装置1と、冷却ノズル5及び冷却水の供給方法が異なるだけであるため、他の部分の詳細な説明については省略する。
【0045】
図7(a)及び(b)に示したように、第三実施形態に係る曲げ加工装置1は、筐体42の各側面から突出された冷却ノズル5と、冷却ノズル5の集結した部分に形成されたマニホールド部46と、を有し、マニホールド部46にフレキシブルホース44bが接続されている。冷却ノズル5は、例えば、図示したように、斜め上方に向かって冷却水を放出できるように形成される。かかる構成によっても、冷却ノズル5は、筐体42とともに昇降可能に構成されており、冷却ノズル5はジャッキ4の伸縮とともに移動する位置に固定されている。したがって、金属板2を支持した状態において、金属板2の下面と冷却ノズル5との距離を略一定に維持することができ、効果的に冷却水を散水することができる。なお、冷却ノズル5にノズルカバー45(図4参照)を配置するようにしてもよい。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 曲げ加工装置
2 金属板
3 加熱ヘッド
4 ジャッキ
5 冷却ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工装置であって、
前記金属板の上面の一部を加熱可能な加熱ヘッドと、
前記金属板の下面を支持するとともに前記金属板の曲げ形状に対応して鉛直方向に伸縮可能な複数のジャッキと、
前記ジャッキの先端部の側面に配置され前記金属板の下面に冷却水を散水する複数の冷却ノズルと、を有し、
前記冷却ノズルは、前記金属板の下面全体に冷却水を散水可能に配置され、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下以外の前記金属板の下面に冷却水を散水するように構成されている、
ことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
前記加熱ヘッドを移動させる加熱ヘッド移動機構を有し、
前記冷却ノズルは、前記加熱ヘッド移動機構が前記加熱ヘッドを移動させながら前記金属板の上面を加熱する際に、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下を冷却しないように、前記加熱ヘッドの移動に追従しながら前記金属板の下面に冷却水を散水する、
ことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記加熱ヘッドを移動させる加熱ヘッド移動機構を有し、
前記冷却ノズルは、前記加熱ヘッド移動機構が前記加熱ヘッドを移動させながら前記金属板の上面を加熱する際に、前記加熱ヘッドが加熱している部分の直下を冷却しないように、前記金属板の下面全体に冷却水を散水する、
ことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記冷却ノズルは、前記ジャッキの伸縮とともに移動する位置に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記加熱ヘッドは、高周波加熱コイル又はガスバーナーである、ことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記ジャッキは、格子線に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項7】
金属板を線状加熱して曲げ加工を行う曲げ加工方法であって、
前記金属板を曲げ形状に対応して伸縮可能なジャッキ上に配置する金属板支持工程と、
前記金属板の上面の一部を予め設定された条件に従って加熱する加熱工程と、
加熱点の直下以外の前記金属板の下面に冷却水を散水して前記金属板を冷却する冷却工程と、を有することを特徴とする曲げ加工方法。
【請求項8】
前記冷却工程は、前記加熱点の直下を冷却しないように前記加熱点の移動に追従しながら冷却水を散水する、又は、前記加熱点の直下を冷却しないように前記金属板の下面全体に冷却水を散水する、ことを特徴とする請求項7に記載の曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−51022(P2012−51022A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197786(P2010−197786)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)