説明

曲線ファスナー付き衣服製造方法と製造装置、曲線ファスナー付き衣服

【課題】 曲線ファスナーを所望の曲線パターンでウェアに低い不良品率で取り付けることが可能な曲線ファスナー付き衣服製造方法を提供する。
【解決手段】 ファスナー10xのファスナーテープ部14a,14bの裏面を、型板20の両面接着テープ24に接着させ、曲線パターンに固定する。型板20に固定されたファスナー10xのファスナーテープ部14a,14bの裏面の両縁部に沿って、それぞれ接着シート32a,32bを貼り付ける。接着シート32a,32bが裏面に貼り付けられたファスナーテープ部14a,14bを、表面から熱プレスした後に冷却プレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線ファスナー付き衣服製造方法と製造装置、曲線ファスナー付き衣服、曲線ファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デザイン性等の点で曲線ファスナーを備えたウェアがある。
このような曲線ファスナーは、通常は直線パターンのファスナーを曲げた状態で、ファスナーテープの曲線個所に伸縮性部材等を形成して曲線状態を保持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特昭61−191307号公報
【特許文献2】特開2008−93210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、直線ファスナーを常に同じ曲線になるように曲げた状態でウェアに取り付けることは容易ではなく、製造過程のウェアに固定する前の段階で曲線ファスナーの形状が崩れてしまい、不良品率が高いという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、曲線ファスナーを所望の曲線パターンでウェア(取付対象生地)に低い不良品率で取り付けることが可能な曲線ファスナー付き衣服製造方法と製造装置、曲線ファスナー付き衣服を提供することを目的とする。
また、本発明は、多様な曲線を形成でき、高い耐久性を発揮できる曲線ファスナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の工程と、前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の工程と、前記第2の工程に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の工程と、前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の工程と、前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の工程と、前記第3の工程で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の工程と、前記第6の工程で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の工程とを有する。
【0007】
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、前記第5の工程の前に、前記取付対象生地の表面にポケット口布の表面を面接して所定の領域を囲むように地縫いする第8の工程を行い、前記第5の工程は、ポケット口布および前記取付対象生地の前記地縫いで書き込まれた領域の内側に切り込みを入れてポケット口を形成し、前記ポケット口を通して、前記ポケット口布を前記取付対象生地の裏側に返す第9の工程をさらに有する。
本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、前記第9の工程の後に、前記ポケット口を、曲線パターンの板をゲージにして成型する第10の工程をさらに有する。
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、カーブ状に裁断した第3の接着部を、前記ファスナーテープの長手方向に延びる縁部の表面側の全域に形成する第11の工程をさらに有し、前記第6の工程は、前記第11の工程を経た前記ファスナーテープの表面に前記仮止めを行う。
【0008】
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、前記取付対象生地の表面に前記ポケット口を囲むように地縫い部を形成する第11の工程をさらに有する。
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法の前記第1の工程は、前記ファスナーテープに対応する位置に沿って曲線パターンで凹部あるいは接着部が形成された固定手段に、当該ファスナーテープの裏面側から固定する。
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法の前記第1の工程は、前記ファスナーのファスナーエレメントに対応する位置に沿って曲線パターンで凹部が形成された固定手段に、前記凹部に前記ファスナーエレメントが収容されるように前記ファスナーの表面側から固定する。
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法の前記ファスナーは、ファスナーエレメントと、前記ファスナーエレメントの両側に位置するファスナーテープとを有し、前記ファスナーテープには、前記ファスナーエレメント上をスライダーが移動する第1の方向に沿って所定の間隔で設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って縁部から形成された切り込み部が形成されており、前記切り込み部は、前記縁部から前記ファスナーエレメントに向けて第1の幅で第2の方向に沿って延びる第1の切り込み部と、前記第1の切り込み部の前記縁部と反対側の端部に、その中心部付近が連結し、前記第1の方向に延びる第2の切り込み部とを有する。
好適には、本発明の曲線ファスナー付き衣服製造方法は、前記第2の工程において、前記ファスナーテープに形成された全ての切り込み部の全体を覆うように前記第1の接着部を形成する。
【0009】
本発明の ファスナー付き衣服製造装置は、ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の手段と、前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の手段と、前記第2の手段に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の手段と、前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の手段と、前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の手段と、前記第3の手段で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の手段と、前記第6の手段で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の手段とを有する。
【0010】
本発明の衣服は、ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の工程と、前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の工程と、前記第2の工程に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の工程と、前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の工程と、前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の工程と、前記第3の工程で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の工程と、前記第6の工程で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の工程とにより製造されている。
【0011】
本発明のファスナーは、ファスナーエレメントと、前記ファスナーエレメントの両側に位置するファスナーテープとを有し、前記ファスナーテープには、前記ファスナーエレメント上をスライダーが移動する第1の方向に沿って所定の間隔で設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って縁部から形成された切り込み部が形成されており、前記切り込み部は、前記縁部から前記ファスナーエレメントに向けて第1の幅で第2の方向に沿って延びる第1の切り込み部と、前記第1の切り込み部の前記縁部と反対側の端部に、その中心部付近が連結し、前記第1の方向に延びる第2の切り込み部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲線ファスナーを所望の曲線パターンでウェア(取付対象生地)に低い不良品率で取り付けることが可能な曲線ファスナー付き衣服製造方法と製造装置、曲線ファスナー付き衣服を提供できる。
また、本発明によれば、多様な曲線を形成でき、高い耐久性を発揮できる曲線ファスナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナーの成型方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、図1に示すステップST11の処理を説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示すステップST12、ST13の処理を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示すステップST14の処理を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナーの取付対象生地への圧着方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、図5に示すステップST21、ST22の処理を説明するための図である。
【図7】図7は、図1に示すステップST23の処理を説明するための図である。
【図8】図8は、図1に示すステップST24の処理を説明するための図である。
【図9】図9は、図1に示すステップST24の処理を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナーの取付対象生地への縫製方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、図1に示すステップST31の処理を説明するための図である。
【図12】図11は、図1に示すステップST32の処理を説明するための図である。
【図13】図13は、図1に示すステップST33、ST34の処理を説明するための図である。
【図14】図14は、図1に示すステップST35の処理を説明するための図である。
【図15】図15は、図1に示すステップST36の処理を説明するための図である。
【図16】図16は、図1に示すステップST37の処理を説明するための図である。
【図17】図11は、図1に示すステップST38の処理を説明するための図である。
【図18】図18は、本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【図19】図19は、本発明の第4実施形態の曲線ファスナーの裏面側の外観図である。
【図20】図20は図19に示す曲線ファスナーの6面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の本発明の実施形態に係る衣服製造方法およびその装置を説明する。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法を説明する。
先ず、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナーの成型方法を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナー10の成型方法を説明するためのフローチャートである。
図2(A)は、本発明の第1実施形態に用いられるファスナー10xの裏面側の外観図である。
図2に示すように、直線状のファスナー10xは、ファスナーエレメント部(務歯)12と、その両側に位置するファスナーテープ部14a,14bと、ファスナーエレメント部12に沿って移動するスライダー16とを有する。
【0015】
先ず、図2〜図4を参照しながら、図1に示す曲線ファスナー10の成型方法を説明する。
ステップST11:
図2(B)に示すように、型板20の表面に、ファスナーテープ部14a,14bの形状に適合した曲線パターンで両面接着テープ24a,24bを形成する。
ファスナー10xのファスナーエレメント部12を型板20の曲線状の溝20aに収容した状態で、ファスナーテープ部14a,14bの表面を両面接着テープ24に接着させ、曲線パターンに固定する。このように両面接着テープ24a,24bが形成された型板20を用いて、曲線ファスナー10xを所定の曲線パターンに固定することで、一定形状の曲線パターンの曲線ファスナー10xを安定して製造できる。
【0016】
ステップST12:
図3(A)に示すように、ファスナーテープ部14a,14bに適合したサイズの接着シート32a,32bを形成する。
そして、型板20に固定されたファスナー10xのファスナーテープ部14a,14bの表面の両縁部に沿って、それぞれ接着シート32a,32bを貼り付ける。
接着シート32a,32bは、両縁部の全域に形成される。なお、接着シート32a,32bを略曲線部にのみ形成してもよい。
接着シート32a,32bの幅は、例えば、ファスナーテープ部14a,14bの幅の約3/5である。
接着シート32a,32bとしては、例えば、シームシートやホットメルトが用いられる。ファスナーテープ部14a,14bは、アイロン等を用いて加熱して接着シート32a,32bに仮接着される。
【0017】
ステップST13:
図3(B)に示すように、曲線ファスナー10xを型板20から取り外す。
ステップST14:
図4(A)に示すように、両面接着テープが形成されていない型板20の曲線状の溝20aに、ファスナー10xのファスナーエレメント部12を収容して固定する。
【0018】
ステップST15:
図4(B)に示すように、接着シート32a,32bが表面に貼り付けられたファスナーテープ部14a,14bを、裏面から熱プレスした後に冷却プレスする。これにより、接着シート32a,32bによってファスナーテープ部14a,14bの曲線が固定され、曲線ファスナー10が得られる
【0019】
上述した図1に示す曲線ファスナー10の成型方法によって、予め決められた曲線パターンを持つ曲線ファスナー10を低い不良品率で安定して簡単に製造できる。
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナーの取付対象生地への圧着方法を説明する。
図5は、本発明の第1実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナー110の取付対象生地への圧着方法を説明するためのフローチャートである。
曲線ファスナー110は、基本的は、前述した曲線ファスナー110と同じであるが、ファスナーテープ部14a,14bに切り込みが形成されており、接着シートが表面に形成されている点が異なる。ただし、以下の工程は、曲線ファスナー10を用いた場合でも同じである。
【0021】
以下、図6〜図9を参照しながら、図5に示す曲線ファスナー110の取付対象生地への圧着方法を説明する。
ステップST21:
図6(A)に示すように、取付対象生地40の裏面に、曲線ファスナー110に対応した大きさ且つ曲線パターンで、ホットメルト42を形成する。
ここで、ホットメルトは、例えば、熱可塑性の合成樹脂またはゴムをベースとした100%固形分、無溶剤形の環境にやさしい接着剤である。熱で溶解塗付し、急速に温度が下がることによってきわめて短時間に固化接着するので高速接着に優れた能力を発揮、溶剤を必要としないことから安全性、生産性のアップ、省力化、トータルなコストダウンにつながる。
【0022】
ステップST22:
図6(B)に示すように、取付対象生地40の表面に、曲線ファスナー10に対応した曲線パターンで、且つ、ステップST21でホットメルト42が形成された領域の内側に位置するように、ポケット口44を形成する。
【0023】
ステップST23:
図7に示すように、型板52に曲線ファスナー110を裏面側を固定(接着あるいは嵌め込み)した状態で、曲線ファスナー110の表面に、取付対象生地40の裏面を、ポケット口44がファスナーエレメント部112に対応した位置になるように位置決めしてアイロン等で加熱して仮止めする。
曲線ファスナー110の表面に、前述した接着シート32a,32bに対応する接着シート132a,132bが形成されている。
型板52には、例えば、曲線ファスナー110のファスナーテープ部114a,114b全体が嵌め込まれる溝が形成されている。
【0024】
ステップST24:
図8(A),図8(B)に示すように、ステップST23で行った仮止めした状態で、ファスナーテープ部14a,14bの表面からプレスを行い、取付対象生地40の裏面をファスナーテープ部14a,14bの表面に圧着する。
図8(A),図8(B)に示すように、当該プレスは2回に分けて行われ、図9に示すように、1回目のプレスと2回目のプレスとに重なりを作る。
当該プレスとしては、高周波ウェルダーやホット・クールプレス機による圧着が採用される。高周波ウェルダーとは、高周波ウェルダーと呼ばれる機器を用いた熱処理である。
【0025】
上述した曲線ファスナー110の取付対象生地への圧着方法によれば、曲線ファスナー110を取付対象生地に効率的に取り付けることができる。
すなわち、曲線ファスナー110に形成された接着シート132a,132bと、ホットメルト42とを用いることで、ファスナーテープ部114a,114bの表面と取付対象生地40の裏面とが安定した状態で仮止めすることができ、曲線ファスナー110の曲線パターンを安定して保持しながら、曲線ファスナー110を取付対象生地40に位置決めして仮止めすることができる。
また、ステップST23の仮止めの後に、ステップST24の熱処理による圧着を行うため、取付対象生地40と曲線ファスナー110との接合を強固にできる。
【0026】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態では、図1に示す成型方法を製造した曲線ファスナー10を用いて取付対象生地にポケットを形成する方法を説明する。
なお、前述した曲線ファスナー110を用いる場合も同様である。
図10は、本発明の第2実施形態に係る衣服製造方法における曲線ファスナー10の取付対象生地への縫製方法を説明するためのフローチャートである。
ステップST31:
図11(A)に示すように、取付対象生地140の表面にポケット口布60の表面を面接させ、続いて図11(B)に示すように地縫いする。
【0027】
ステップST32:
図12(A)に示すように、取付対象生地140の裏面のステップST31で施した地縫いに対応した部分をカバーするように、曲線ファスナー10に対応した大きさ且つ曲線パターンのホットメルト142を形成する。そして、図12(B)に示すようにホットメルト142の離形紙を剥がす。
【0028】
ステップST33:
図13(A)に示すように、ポケット口布60および取付対象生地140の上記地縫いの個所の内側に切り込み144を入れてポケット口を形成する。
【0029】
ステップST34:
ステップST33で形成したポケット口を通して、ポケット口布60を取付対象生地140の裏側に返す。これにより、図13(B)に示すポケット口146が形成される。
【0030】
ステップST35:
図14(A)に示すように、ステップST34で形成したポケット口146を、曲線パターンの板64をゲージにしてアイロン等で図14(B)に示すように成型してポケット口246を形成する。
板64としては、ポケット口の形状に合わせてレーザー裁断したプラスチック製あるいは塩化ビニル製の板が用いられる。
【0031】
ステップST36:
図15に示すように、カーブ状に裁断したホットメルトまたは両面接着芯等の接着シート68a,68bを、曲線ファスナー10のファスナーテープ部14a,14bの長手方向に延びる縁部の表面側の全域に形成して曲線ファスナー210を製造する。
すなわち、ファスナーテープ部14a,14bの曲線部に形成された接着シート32a,32bの周縁部側を覆うと共に、ファスナーテープ部14a,14bの周縁部の全域を覆うように接着シート68a,68bが形成される。
接着シート68の幅は、例えば、5mm程度である。
【0032】
ステップST37:
図16に示すように、ステップST36を経た得られた曲線ファスナー210を、例えば、曲線ファスナー10の形状に凹部が形成された型板220に嵌め込む。
なお、型板220には、曲線ファスナー210のファスナーテープ部14a,14b全体が嵌め込まれる溝が形成される。
そして、型板220に嵌め込まれた曲線ファスナー210正面側に、取付対象生地140の裏面をファスナーエレメント部12がポケット口246に位置するように位置決めして、取付対象生地140の裏面を曲線ファスナー210の正面側にアイロン等で熱処理して仮止めする。
【0033】
ステップST38:
図17に示すように、取付対象生地140と曲線ファスナー10のファスナーテープ部14a,14bとの間を、ポケット口246の周りで地縫い248をする。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、図13および図14に示す工程により、取付対象生地140の表面にポケット口布60を貼り付けた状態で切り込み144を入れてポケット口146を形成することで、ポケット口146を安定して所望形状に成型できる。
また、本実施形態では、図15に示すようにして製造した曲線ファスナー210を用いることで、図16に示す工程において、曲線ファスナー210の表面と取付対象生地140の裏面とを強固に安定した状態で接着できる。
【0035】
<第3実施形態>
本実施形態では、例えば、図1に示すステップST11の工程において、図18に示すように、ファスナーエレメント部12が挿入される曲線状の凹部320xが形成された型板220を用いる。
本実施形態では、ファスナーエレメント部12を凹部320xに挿入させて、正面側から曲線ファスナー10xを型板220に固定する。
この場合には、曲線ファスナー10xの裏面に、接着シート32a,32bを形成する。
【0036】
<第4実施形態>
本実施形態では、図1に示す曲線ファスナー10xの代わりに、図19に示す曲線ファスナー110xを用いる。
図19は、本発明の第4実施形態の曲線ファスナー110xの裏面側の外観図である。
図19に示すように、曲線ファスナー110xは、ファスナーエレメント部112と、ファスナーテープ部114a,114bと、スライダー16とを有する。
【0037】
ファスナーテープ部114a,114bには、ファスナーエレメント部112上をスライダー16が移動する第1の方向に沿って所定の間隔で設けられ、当該第1の方向と直交する第2の方向に沿って縁部から形成された切り込み部410が形成されている。
切り込み部410は、第1の切り込み部410aと第2の切り込み部410bとで構成される。
第1の切り込み部410aは、ファスナーテープ部114a,114bの縁部からファスナーエレメント部12に向けて第1の幅で第2の方向に沿って延びる。
第2の切り込み部410bは、第1の切り込み部410aの上記縁部と反対側の端部に、その中心部付近が連結し、第1の方向に延びる。
【0038】
曲線ファスナー110xは、前述した第1〜3実施形態の曲線ファスナー10xと同様に用いられる。
【0039】
上述したように曲線ファスナー110xの切り込み部410を形成したことで、曲線部の内側ラインと、外側ラインとが滑らかに形成されるというメリットがある。
【0040】
図19に示す曲線ファスナー110を用いる場合には、図7に示すように、ファスナーテープ部114a,114bに形成された切り込み部410の全てを覆うように接着シート132a,132bを形成する。
【0041】
上述した実施形態において、ステップST11が本発明の第1の工程の一例、ステップST12が第2の工程の一例、ステップST13が第3の工程の一例、ステップST21、ST32が第4の工程の一例、ステップST22、ST33、ST34が第5の工程の一例、ステップST23、ST37が第6の工程の一例、ステップST24、ST37が第7の工程の一例、ステップST31が第8の工程の一例、ステップST35が第10の工程の一例、ステップST36が第11の工程の一例である。
【0042】
上述した実施形態では、曲線ファスナー付き衣服製造方法を説明したが、上述した各工程は曲線ファスナー付き衣服製造装置が備える各手段(部品やモジュール)によって実現されるようにしてもよい。
【0043】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、図1〜図4で説明した工程で、曲線ファスナー10のファスナーテープ部の裏面を、両面接着シートに貼り付けて固定し、ファスナーテープ部の表面に接着シートを形成してもよい。
図20に示すファスナー(物品)は、衣服に取り付けられるファスナーであり、曲げた場合に内側および外側のラインが滑らかに形成される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、曲線ファスナー付き衣服を製造する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
10,110,210…曲線ファスナー
12,112…ファスナーエレメント部
14a,14b,114a,114b…ファスナーテープ部
16…スライダー
24a,24b…両面接着テープ
32a,32b…接着シート
40,140…取付対象生地
42…ホットメルト
44…ポケット口
60…ポケット口布
144…切り込み144
146,246…ポケット口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の工程と、
前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の工程と、
前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の工程と、
前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の工程と、
前記第3の工程で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の工程と、
前記第6の工程で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の工程と
を有する曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項2】
前記第5の工程の前に、前記取付対象生地の表面にポケット口布の表面を面接して所定の領域を囲むように地縫いする第8の工程を行い、
前記第5の工程は、ポケット口布および前記取付対象生地の前記地縫いで書き込まれた領域の内側に切り込みを入れてポケット口を形成し、
前記ポケット口を通して、前記ポケット口布を前記取付対象生地の裏側に返す第9の工程をさらに有する
請求項1に記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項3】
前記第9の工程の後に、前記ポケット口を、曲線パターンの板をゲージにして成型する第10の工程
をさらに有する請求項2に記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項4】
カーブ状に裁断した第3の接着部を、前記ファスナーテープの長手方向に延びる縁部の表面側の全域に形成する第11の工程
をさらに有し、
前記第6の工程は、前記第11の工程を経た前記ファスナーテープの表面に前記仮止めを行う
請求項2または請求項3に記載の衣服製造方法。
【請求項5】
前記取付対象生地の表面に前記ポケット口を囲むように地縫い部を形成する第11の工程
をさらに有する請求項2〜4のいずれかに記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程は、前記ファスナーテープに対応する位置に沿って曲線パターンで凹部あるいは接着部が形成された固定手段に、当該ファスナーテープの裏面側から固定する
請求項1〜5のいずれかに記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程は、前記ファスナーのファスナーエレメントに対応する位置に沿って曲線パターンで凹部が形成された固定手段に、前記凹部に前記ファスナーエレメントが収容されるように前記ファスナーの表面側から固定する
請求項1〜5のいずれかに記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項8】
前記ファスナーは、
ファスナーエレメントと、
前記ファスナーエレメントの両側に位置するファスナーテープと
を有し、
前記ファスナーテープには、前記ファスナーエレメント上をスライダーが移動する第1の方向に沿って所定の間隔で設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って縁部から形成された切り込み部が形成されており、
前記切り込み部は、
前記縁部から前記ファスナーエレメントに向けて第1の幅で第2の方向に沿って延びる第1の切り込み部と、
前記第1の切り込み部の前記縁部と反対側の端部に、その中心部付近が連結し、前記第1の方向に延びる第2の切り込み部と
を有する
請求項2〜7のいずれかに記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程において、前記ファスナーテープに形成された全ての切り込み部の全体を覆うように前記第1の接着部を形成する
請求項8に記載の曲線ファスナー付き衣服製造方法。
【請求項10】
ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の手段と、
前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の手段と、
前記第2の手段に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の手段と、
前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の手段と、
前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の手段と、
前記第3の手段で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の手段と、
前記第6の手段で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の手段と
を有する曲線ファスナー付き衣服製造装置。
【請求項11】
ファスナーを所定の曲線パターンで曲げた状態で固定する第1の工程と、
前記ファスナーのファスナーテープの少なくとも一方の面の長手方向の両縁部に熱可塑性の第1の接着部を形成する第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記接着部が形成された面側から熱プレス行い、前記ファスナーテープを前記曲線パターンに成型する第3の工程と、
前記ファスナーテープに対応した大きさ且つ前記曲線パターンで、取付対象生地の裏面に熱可塑性の第2の接着部を形成する第4の工程と、
前記取付対象生地の表面に、前記曲線パターンに対応した曲線パターンで、且つ、前記第2の接着部が形成された領域の内側に位置するように切り込みを入れてポケット口を形成する第5の工程と、
前記第3の工程で成型された前記ファスナーテープの表面に、前記取付対象生地の裏面を、前記ポケット口が前記ファスナーのファスナーエレメントに対応した位置になるように位置決めしてから仮止めを行う第6の工程と、
前記第6の工程で仮止めした状態で、前記取付対象生地の表面側から加熱して前記取付対象生地の裏面を前記ファスナーテープの表面側に固定する第7の工程と
により製造された曲線ファスナー付き衣服。
【請求項12】
ファスナーエレメントと、
前記ファスナーエレメントの両側に位置するファスナーテープと
を有し、
前記ファスナーテープには、前記ファスナーエレメント上をスライダーが移動する第1の方向に沿って所定の間隔で設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って縁部から形成された切り込み部が形成されており、
前記切り込み部は、
前記縁部から前記ファスナーエレメントに向けて第1の幅で第2の方向に沿って延びる第1の切り込み部と、
前記第1の切り込み部の前記縁部と反対側の端部に、その中心部付近が連結し、前記第1の方向に延びる第2の切り込み部と
を有する
ファスナー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−117153(P2012−117153A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264776(P2010−264776)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【特許番号】特許第4814391号(P4814391)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(505070645)株式会社フェニックス (3)
【Fターム(参考)】