説明

書画制作補助装置

【課題】書き手に負担を強いることなく大寸法の紙幅に揮毫することができる書画制作のための補助装置を提供する。
【解決手段】書画用紙を載せる長方形のパネル1と、このパネル上方に空間をおいて位置させ、且つパネルの短径方向に跨って設けられた移動台2と、この移動台の裏面に設けられたキャスター6と、移動台の裏面に設けられると共にパネルの長径方向の側縁に摺接される案内突条7と、移動台の上面に着脱自在に載置し、左右に移動できる座台3とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、条幅等の揮毫に関する書画制作補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
条幅(半切)を揮毫する場合、用紙が縦に長いので、一字毎に体位を上方から下方へ移動せねばならなかった。正しい位置で書けるように体位を移動させるには、現状では身体的な移動以外に方法はなかった。書き手の位置場所が合ってないと運筆が正しく進まなかった。以下の非特許文献1及び2に見るように、従来の書道界の状態を的確に表現しているように、方法として身体的動作以外は、揮毫に対する補助装置が無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−52617号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】尾崎邑鵬著 条幅入門(二玄社発行)13頁写真掲載
【非特許文献2】富田翠江著 現代書道講座テキスト
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来に行われてきた書道の書き方として、条幅を揮毫する場合、縦長用紙を使用するので、揮毫する筆の起筆位置を確保するために、体位を上方から下方へ移動する必要があります。ここで重要なことは揮毫する文字が、正しい位置で書けるように体位を移動する事ですが、正しい場所位置が確保出来ないと運筆が正常に進みません。非特許文献1及び2に示す通り、今迄の書道界は原始的に姿勢を無理に変える所作以外、揮毫手段がなかった。
【0006】
その現状として以下に示す状態がある。
(イ)立って書く場合
机の上に毛氈を敷き用紙を載せて書く場合、書いた文字を机の前に垂らしながら書くので、垂らした文字が見えなくなり見通しが利かず、全体を見てバランスの判断が出来ない。
(ロ)中腰で書く場合
毛氈を下に敷き、用紙を跨いで書くために中腰で書くことになる。その為に用紙までの距離が離れすぎて、紙面から筆先までの距離が遠くなりすぎる。
(ハ)座って書く場合
この姿勢は左手を毛氈上に置き、一字毎に正位置に移動する。しかし用紙上に乗ったままの状態で移動するので、紙面の汚れや破損の恐れがある。(いずれも特許文献1より引用)。
(ニ)用紙を巻いて書く場合
書く前に下方から巻き上げ、巻き戻しながら書く。この場合は複数行にわたる作品には墨の乾燥まで再度巻き上げられない。(特許文献2より引用)。
【0007】
上記引用文が、従来の揮毫状態を良く説明している。これらの肉体的、物理的条件を解決する手段として、長年書道界に存在しなかった書道用具として書画制作補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の書画制作補助装置は、書画用紙を載せる長方形のパネルと、このパネル上方に空間をおいて位置させ、且つパネルの短径方向に跨って設けられた移動台と、この移動台の裏面に設けられたキャスターと、前記移動台の裏面に設けられると共に前記パネルの長径方向の側縁に摺接される案内突条と、前記移動台の上面に着脱自在に載置し、かつ左右に移動できる座台と、から構成したことを特徴とする。
【0009】
また本発明の移動台は、パネルの短径方向の横幅よりも外方に延設して書画道具を載置する載置領域を形成したことを特徴とする。
【0010】
本発明の座台は、移動台の前縁に当接し、移動台との位置関係を決定するための当接片を、その前方縁に設け、さらに奥行き寸法を移動台の奥行き寸法より小さくした事を特徴とする。
【0011】
本発明の書画制作補助装置は複数の小パネルを形成し、この複数の小パネルを着脱自在に嵌合してパネルを構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
非特許文献に示された引用文のように、従来は立ち姿勢で腰や膝を曲げて書くことや、膝付き状態で書くことを強いられてきた。本発明の書画制作補助装置を活用して揮毫することで、身体的動作に無理が無く、キャスター付き移動台で前後移動できる。しかも座台が左右に移動できることで、常に起筆が体の中心から置筆できる事と、座台に座った状態で移動台を手漕ぎで前後移動できる。
【0013】
(ア)基本的な揮毫姿勢として、正座、膝付、跨りが有るが肉体的条件によって都度使い分けが可能である。
【0014】
(イ) パネル上に空間を取って、キャスター付き移動台をセットした事で、前後移動でき、その上に左右移動座台をセットした事で、起筆の中心置に移動できる。
【0015】
(ウ)書画道具載置領域にセットした硯、筆置きがその場に座ったままの状態で使用できる。
【0016】
(エ)一字毎に座台を前後移動させ、視覚の真上で起筆できる位置が確保できる。
【0017】
(オ)用紙の左片隅に落款揮毫する時に、左右移動座台を左に寄せ、図7に見るように視覚的に起筆を真上にして揮毫できる。
【0018】
(カ)座台の奥行きが小さくしてある事は、正座した時の足首に無理がないように、敷いたクッション上で正座し、図6の10aに示す踝から先に起こる痛みを無くす為、段差に落とし圧痛を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】書画制作補助装置の斜視図である。
【図2】書画制作補助装置の前面図である。
【図3】書画制作補助装置の側面図である。
【図4】書画制作補助装置の座台の左方移動図である。
【図5】書画制作補助装置の他の実施形態図で第2の座台9を追加した図である。
【図6】書画制作補助装置の使用状態図である。
【図7】書画制作補助装置の落款位置に移動した使用状態図である。
【図8】書画制作補助装置の図5の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を図1から図4に基づいて以下説明する。木製で六ッ割り突条を骨組みにし
ベニヤを表裏に張って重量を軽くしたパネル1で、サイズは約幅45cm×縦180cmの中間サイズ90cmで、2分され差し込み嵌合8出来る。
移動台2は木製で六ッ割り突条を骨組みにして、ベニヤを表裏に張り、約幅90cm×縦45cm×厚さ3cm大きさに形成してある。
【0021】
この移動台2の裏面の4隅にキャスター6を取り付け、このキャスター6により移動台2を直線的に前後移動するものである。
【0022】
移動台2の裏面には、パネル1の長径方向の両側縁に摺接される木製の案内突条7
を取り付けてある。
【0023】
移動台2はパネル1の短径方向の横幅より外方に延設して、書画道具を載置する載置領域5を形成したことと、左外方にも延置させた事により座台3も左移動でき、起筆に要する位置が確保できる。
【0024】
座台3は、木製で約3cm×7cmの骨組み板で約幅45cm×縦30cm高さ7cmに、片面ベニヤを張った左右に移動するようにしてあり、移動台2の前縁に当接し、移動台との位置関係を決定するための当接片15を座台3の前方に設けてある。
【0025】
さらに座台3の奥行き寸法を移動台2の奥行きより小さくた事は、クッション4上に正座した時の足に痛みが生じないように、踝から先を段差図6の10aに落とし、圧痛を防止して起筆位置を決める。
【0026】
クッション4は、スポンジ製で厚さ約1cm×50cm四方で作られ、左右移動の座台3の上に敷き、足首や踝への圧痛を防止する。
【0027】
書画道具載置領域5には硯とか筆とかを載置する場所で、座台3に座った状態のまま、移動することなく、硯から筆に墨付けが出来る。
【0028】
座台3の小さい奥行き寸法は、クッション4上に正座した時の足首に痛みが生じないように、踝から先を段差10aに落として圧痛を防止する。
【0029】
パネル1の寸法が長いため、中心で2分割にし、分割部分は嵌め込み嵌合8できる。
【0030】
紙面の左側で揮毫する時は、図7に示すように座台3を左方に移動し、正座した体位も左に寄せて起筆する。その時、右膝頭を枕として活用し沈腕法も使用できる。
【0031】
図5は他の実施形態を示す図で、直接尻を着いて、パネル1を跨いだ姿勢で揮毫する方法で、座台が一台では低く二倍の高さを必要とする。左右移動座台3の上にこの座台3と同等の第2の座台9を付属追加したものである。その敷いた二重の座台で、揮毫する事により身体的苦痛もなく運筆がスムーズに進む。同時に右太腿が、筆を持つ右手肘の枕となるので沈腕法が活用できる。
【0032】
次に本発明の書画制作補助装置の使用状態を説明する。
【0033】
図6に示すように足首に痛みがないように、クッション4上に正座し、踝から先を段差10aに落として、足の甲の圧痛を防止している実施図である。
【0034】
落款用の揮毫を左片隅で行う時、図7で示すように座台3も体位も左に移動し、視覚的に起筆を真上にして揮毫している実施図である。
【0035】
図8は座台3の上に第2の座台9を重ねて、その上に直接尻を着いて、パネル1を
跨いだ姿勢で揮毫している実施図である。
【符号の説明】
【0036】
1 パネル
2 移動台
3 座台
4 クッション
5 書画道具載置領域
6 キャスター
7 摺接案内突条
8 着脱自在の嵌合箇所
9 第2の座台
10 座台3に正座して足首を落とす段差
11 書画道具
12 書画用紙
13 文鎮
14 毛氈
15 当接片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の書画制作補助装置は書画用紙を載せる長方形のパネルと、このパネル上方に空間をおいて位置させ、且つパネルの短径方向に跨って設けられた移動台と、この移動台の裏面に設けられたキャスターと、前記移動台の裏面に設けられると共に前記パネルの長径方向の側縁に摺接される案内突条と、前記移動台の上面に着脱自在に載置し、左右に移動できる座台と、から構成したことを特徴とする書画制作補助装置。
【請求項2】
前記移動台は、前記パネルの短径方向の横幅よりも外方に延設して書画道具を載置する載置領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載の書画制作補助装置。
【請求項3】
前記座台は、前記移動台の前縁に当接し移動台との位置関係を決定するための当接片を、その前方縁に設け、さらに奥行き寸法を前記移動台の奥行き寸法より小さくした事を特徴とする請求項1または2に記載の書画制作補助装置。
【請求項4】
複数の小パネルを形成し、この複数の小パネルを着脱自在に嵌合して前記パネルを構成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の書画制作補助装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−56150(P2011−56150A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211259(P2009−211259)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【特許番号】特許第4571702号(P4571702)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(309030333)
【Fターム(参考)】