説明

書籍用紙及びその製造方法

【課題】資源を再利用した填料を内添した書籍用紙及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】パルプに填料が内添されてなる書籍用紙であって、古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた再生粒子凝集体が、前記填料として少なくとも内添されており、以下の式:B=(S×105)/T3(ここで、B:しなやか指数、S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/100)、T:紙厚(μm)である)で表されるしなやか指数が、2.9以下であることを特徴とする、書籍用紙、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍用紙及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、古紙処理工程からの資源を再利用した填料が内添され、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備した書籍用紙、及びそれを低コストで製造し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
書籍用紙には、その用途から、通常しなやかさ及び平坦さに加え、嵩高(低密度)であることが求められる。一般に、書籍用紙にしなやかさ及び平坦さを付与するために、原料パルプに炭酸カルシウムが添加されるが、かかる炭酸カルシウムの添加量が多すぎると嵩高さが失われてしまう。したがって、書籍用紙において、炭酸カルシウムを使用することによってしなやかさ及び平坦さと嵩高さとを両立させるには、限界があった。
【0003】
そこで、書籍用紙において、炭酸カルシウムを使用せずに、しなやかさ及び平坦さと嵩高さとを両立させる技術の研究開発が種々進められている。その多くは、紙厚向上剤、柔軟剤等の、界面活性剤からなる薬品を原料パルプに添加してしなやかさと嵩高さとを同時に得る技術か、又は原料パルプとして機械パルプを配合し、嵩高さを得る技術である。
【0004】
前記薬品を原料パルプに添加する技術としては、例えば特許文献1には、嵩高柔軟剤を用い、予熱乾燥期間中に紙面温度が該嵩高柔軟剤の融点以上となるようにして乾燥して製造した嵩高柔軟紙が開示されている。また特許文献2には、その両表面から各々30μmまでに、含有される全繊維間結合阻害剤の50%以上を存在させ、必要に応じて澱粉及びサイズ剤を含有した嵩高印刷用紙が開示されている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の嵩高柔軟紙や、特許文献2に記載の嵩高印刷用紙のように、嵩高柔軟剤や全繊維間結合阻害剤といった薬品を原料パルプに内添すると、サイズプレスパートでのアプリケーターロールへの傷入りが発生し、例えば表面紙力剤である澱粉が未塗工となる等の問題が生じる。また、このような薬品を添加することによってコストも上昇してしまう。
【0006】
一方、原料パルプとして機械パルプを配合する技術としては、例えば特許文献3には、全パルプ成分中の65〜95重量%が機械パルプであり、かつ機械パルプ成分中の20〜80重量%が松材系のサーモメカニカルパルプから構成された嵩高なオフセット印刷用中質紙が開示されている。また特許文献4には、少なくとも1種の広葉樹機械パルプと嵩高剤とを含有した紙料から得られる原紙の表面に澱粉系紙力剤が塗工された嵩高中質印刷用紙が開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献3に記載の嵩高なオフセット印刷用中質紙や、特許文献4に記載の嵩高中質印刷用紙のように、パルプとして機械パルプを配合した場合、紙表面の平滑性が著しく低下してしまうため、平滑性を維持するには、表面のカレンダー処理が必要となる。ところが、このように表面にカレンダー処理を施すと、今度は充分な嵩高効果を得ることができないといった問題が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−155495号公報
【特許文献2】特開2004−115986号公報
【特許文献3】特開平5−98593号公報
【特許文献4】特開2005−163253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、特定の薬品を配合したり、原料パルプとして機械パルプを用いた場合、また炭酸カルシウムを填料として内添した場合の問題点が解決され、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備した書籍用紙を提供すること、並びに再資源化が実現され、低コストで容易にこのような書籍用紙を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、
(i)パルプに填料が内添されてなる書籍用紙であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた再生粒子凝集体が、前記填料として少なくとも内添されており、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が、2.9以下であることを特徴とする、書籍用紙
に関する。
【0011】
また本発明は、
(ii)パルプに填料が内添されてなる書籍用紙であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた再生粒子凝集体の表面に、さらにシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子凝集体が、前記填料として少なくとも内添されており、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が、2.9以下であることを特徴とする、書籍用紙
に関する。
【0012】
また本発明は、
(iii)パルプに填料を内添して抄造する書籍用紙の製造方法であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程に供し、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して再生粒子凝集体を調製し、
前記填料として、少なくとも前記再生粒子凝集体をパルプに内添させることを特徴とする、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が2.9以下である書籍用紙の製造方法
に関する。
【0013】
さらに本発明は、
(iv)パルプに填料を内添して抄造する書籍用紙の製造方法であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程に供し、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して再生粒子凝集体を調製し、該再生粒子凝集体の表面に、さらにシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子凝集体を調製し、
前記填料として、少なくとも前記シリカ被覆再生粒子凝集体をパルプに内添させることを特徴とする、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が2.9以下である書籍用紙の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の書籍用紙は、古紙処理工程からの資源を再利用した填料が内添されているので、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備したものである。また本発明の製造方法により、再資源化が実現され、前記のごとき優れた特性を具備した書籍用紙を低コストで容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の書籍用紙は、前記したように、パルプに填料が内添されており、該填料として、古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた特定の再生粒子凝集体が少なくとも用いられている。
【0016】
まず、本発明に用いるパルプについて説明する。該パルプの種類には特に限定がなく、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプ;ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の、公知の種々のパルプがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0017】
なお本発明においては、後述するように、填料として特定の再生粒子凝集体が少なくとも内添されるので、パルプとして機械パルプを用いたとしても、従来の一般的な填料を内添した場合のように紙表面の平滑性が著しく低下することはない。しかしながら、かかる機械パルプをあまりにも多量に配合すると、得られる書籍用紙の平滑性や引張強さが低下する場合があるので、該機械パルプの配合量は、パルプ全量の50質量%以下に調整することが好ましい。
【0018】
次に、前記パルプに配合さる填料について説明する。本発明において、該填料として特定の再生粒子凝集体が少なくとも用いられ、該特定の再生粒子凝集体とは、古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、特に焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られたものである。
【0019】
このように、本発明において、前記特定の再生粒子凝集体が少なくとも填料としてパルプに内添されていることが大きな特徴の1つであり、填料として、かかる特定の再生粒子凝集体が内添されていることにより、従来の炭酸カルシウムを内添した際の問題点が解決され、得られる書籍用紙は、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備したものとなる。
【0020】
なお、前記再生粒子凝集体を調製する際には、後述するように、脱墨フロスの造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子凝集体の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。以下の具体的説明で示す移送流路、給送流路、排送流路、循環流路、返送流路等の各種流路は、例えば管、ダクト等で構成することができる。
【0021】
前記再生粒子凝集体の主原料は、古紙から古紙パルプを製造する脱墨処理工程で発生する脱墨フロスである。特に古紙のリサイクル工程で排出される脱墨フロスが、製紙原料由来の材料からなり、鉄分やその他重金属等の不純物の混入が少ないので、好適である。そして、古紙再生工程では、あらかじめ古紙自体の選別を行うので、脱墨フロスは、その無機物の組成が経時的に安定したものであり、得られる再生粒子凝集体の組成も安定したものとなる。これら脱墨フロスには、無機物として例えば炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が含有される。なお、本発明においては、かかる脱墨フロスを再生粒子凝集体の主原料とする。全原料における脱墨フロスの割合は固形分として50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上とすることがより好ましい。
【0022】
通常脱墨フロスは、水分率が95〜98質量%程度であり、凝集剤を加えてフロックを形成させ、脱水処理を行う。かかる脱水処理は、1段であっても複数段であっても実施可能ではあるが、フロックを固化させると、後の焼成工程において焼成ムラが生じる原因になるため、スクリュープレス等の脱水手段にて水分率を40〜70質量%まで脱水することが好ましい。水分率が45質量%未満では、脱水エネルギーコストが大きくなり、逆に70質量%を超えると、次の乾燥工程での乾燥エネルギーコストが大きくなったり、乾燥後の粒度にバラツキが生じる原因となり、結果として均一な焼成が困難になる恐れがある。
【0023】
得られた脱水脱墨フロス(脱水物)は、あらかじめ乾燥される。乾燥手段としては、熱風乾燥等の公知の手段が使用可能であるが、脱墨フロスを乾燥させながらほぐすことが可能であり、さらに比重分級も可能な熱風乾燥手段を最も好適に使用することができる。
【0024】
好適に使用することが可能な熱風乾燥手段を具体的に例示すると、脱水物を、インペラ等のほぐし設備にて、250〜3000μm、好適には355〜2000μm程度の体積平均粒子径となるようにほぐしながら、インペラ設備下方に設けた熱風吹出し手段にて熱風を吹き込み、熱風乾燥を行う。ほぐされ、乾燥された脱墨フロスのうち、比重の軽い脱墨フロスを、熱風乾燥手段の上部に設けた取出し口から排出させることで、乾燥と分級とを行うことができる。なお、乾燥脱墨フロスの分級には、好適な手段として、サイクロンによる分級手段を採用することもできる。
【0025】
また乾燥・分級された脱墨フロス(乾燥物)の粒揃えは、粒子径が355〜2000μmのものが70質量%以上となるように調整することが好ましく、72質量%以上となるように調整することがより好ましく、80質量%以上となるように調整することが特に好ましい。このように、乾燥物を、粒子径が355〜2000μmのものが70質量%以上となるように製造すると、すなわち小径な粒子の乾燥物を除去すると、部分的な過焼が防止され、焼成がより均一になる。したがって、得られる再生粒子凝集体の品質を均一にするという観点における実用化の可能性高めることができる。さらに、このように乾燥後に分級すると、小径な粒子の乾燥物を確実に除去することができ、処理効率も向上する。
【0026】
前記熱風乾燥手段を採用する際の熱風の温度は、乾燥工程に供する脱水物の水分率や、目的とする乾燥物の水分率を考慮して適宜調整することが好ましいが、例えば100〜200℃程度とすることが好ましい。
【0027】
かくして乾燥工程を経た乾燥物の水分率は、2〜20質量%程度、さらには5〜15質量%程度に調整されていることが好ましい。乾燥物の水分率が2質量%よりも低いと、次の焼成工程で過焼する恐れがあり、逆に20質量%よりも高いと、乾燥不足により、焼成を確実に行うことが困難となる恐れがある。
【0028】
次に、乾燥・分級された脱墨フロスは、焼成工程に送られる。焼成は、例えばロータリーキルン、流動床炉、浮遊炉、ストーカ炉等、通常用いられている焼却炉を用いて行うことができ、中でも、熱風炉や電気炉による間接加熱による方法が、焼成温度コントロール、焼成度合いの微調整が容易であるという点から特に好適である。例えばロータリーキルンを用いた焼成においては、直接加熱による焼成や間接加熱による燃焼を、単独で、又は組み合わせて行うことができる。例えば、一次焼成炉による一次焼成を直接加熱キルン炉で、二次焼成炉による二次焼成を間接加熱キルン炉、特に焼成温度の調整が容易に可能な外熱電気炉で、各々行う方法を採用することができる。
【0029】
焼成工程は少なくとも二段階焼成であり、連続する設備により少なくとも二段階焼成とすることが好ましい。焼成工程が少なくとも二段階であるので、有機物の燃焼による焼成において焼成ムラが生じにくく、満遍なく焼成を進めることが可能になる。特に焼成工程における物理的手段を相違させることで、偏った焼成を避け、焼成速度の向上を図ることが可能である。
【0030】
焼成温度は、脱墨フロス中のカーボンブラック等のインク顔料や、繊維、ポリマー等の有機系化合物を燃焼し、その粒子中に、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分が含有されるように、かかる焼成工程において凝集された再生粒子凝集体が形成されるのに充分かつ安定した温度であればよい。
【0031】
脱墨フロス中にシリカが含まれる場合には、シリカがカルシウム及びアルミニウムと反応し、硬度の高いケイ酸アルミニウムカルシウム等が生成する恐れがある。このような硬度の高い物質の生成を防止するために、例えば、500℃以下の温度で焼成することが検討されるが、このような条件では、有機化合物を完全燃焼させることが難しく、填料として有用なレベルの白色度を有する再生粒子凝集体を得ることが困難となる恐れがある。
【0032】
一方、焼成温度が1000℃を超えると、脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等の無機物の分解及び焼結が進み、高硬度化するため、得られた再生粒子凝集体を所望の粒子径にまで粉砕するのに多大のエネルギーや時間を要する恐れがある。
【0033】
このように、焼成温度は、製造される再生粒子凝集体の白色度、硬度に大きな影響力を有するので、焼成条件としては、一次焼成が510〜750℃で、二次焼成が500〜700℃で行われ、一次焼成が520〜650℃で、二次焼成が500〜600℃で行われることが好ましい。一次焼成温度が510℃未満である場合には、未燃物の残量が多く、再生粒子の凝集体形成が不充分であり、例えば得られる再生粒子凝集体の白色度が70%程度以上に達しない恐れがある。逆に一次焼成温度が750℃を超える場合には、脱墨フロスに含まれる炭酸カルシウムの多くが熱分解し、再資源としての使用が難しい、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム等の高pH化要因物質が多く生じる恐れがあり、また得られる再生粒子凝集体に熱溶融が生じ、極めて硬くワイヤー摩耗性が低下する恐れがある。一方、二次焼成温度が500℃未満である場合には、有機物の燃焼が不充分になったり、焼成ムラが生じ、得られる再生粒子凝集体の白色度が向上しない恐れがある。逆に二次焼成温度が700℃を超える場合には、焼成されて凝集した再生粒子凝集体の表面が高温に晒され、溶融が生じて極めて硬い溶融物を形成する恐れや、再生粒子の表面の高温化による燃焼のため、酸素が再生粒子芯部にまで行き届き難く、焼成ムラや未焼成部位の発生が懸念されることがある。また、二次焼成温度を一次焼成温度よりも10〜50℃低くすることで、再生粒子凝集体の表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。
【0034】
なお、勿論、二次焼成温度を一次焼成温度と同温度とすることもできる。二次焼成温度を一次焼成温度と同温度とする場合は、例えば520〜600℃とすると、緩慢に焼成が進行し、未燃物を減少させることができ、白色度が70%以上、好適には80%を超える再生粒子凝集体を得ることができる。なお、本実施形態において、一次焼成温度と二次焼成温度との温度差は、焼成炉内上端部の温度を基準とする。
【0035】
焼成工程は、この工程内に空気を送風する手段及びこの工程内から空気を排気する手段の少なくともいずれか一方によって、焼成工程内酸素濃度が0.05%以上に、さらには0.1%以上に調節されることが好ましく、また20%以下に調節されることが好ましい。特に、この焼成工程内酸素濃度は、一次焼成炉内上端部で0.05〜20%に、さらに好ましくは0.1〜20%に、より好ましくは5〜15%に、特に好ましくは7〜13%に調節されることが望ましく、二次焼成炉のバーナー近傍で10〜20%に、より好ましくは12〜18%に調節されることが望ましい。一次焼成炉内上端部での酸素濃度が0.05%未満であると、焼成が進まず、ムラのある焼成が進むだけでなく、焼成に膨大な時間とエネルギーコストとが必要になる恐れがある。他方、二次焼成炉のバーナー近傍での酸素濃度が20%を超えると、過焼しやすく、過焼ムラにより再生粒子凝集体が黄変化するととともに、再生粒子凝集体の溶融が多発して分解や酸化が進み、填料としての活用が困難になる場合がある。また、本実施形態においては、焼成工程に供給される、乾燥・分級された脱墨フロス(乾燥物)の水分率が、好ましくは2〜20質量%程度、より好ましくは5〜15質量%程度に調整されているため、焼成工程内酸素濃度を0.05〜20%とすると、極めて効率よく焼成を進行させることができ、焼成を90分間以内で行うことが可能になり、極めて高い生産性を得ることができる。例えば、乾燥物の水分率を10質量%とすることで、焼成を約60分間で行うことができる。
【0036】
なお、焼成工程内の酸素は、焼成させるためのバーナー等によって消費され、焼成工程内酸素濃度が低下するが、空気等の酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節することが可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、焼成工程内の温度を細かく調節することが可能になり、再生粒子凝集体をムラなく万遍に焼成することができる。
【0037】
一次焼成炉での焼成は、未燃率が5〜30質量%、さらには8〜25質量%、特に10〜20質量%となるように行うことが好ましい。一次焼成後の未燃率が5質量%未満では、焼成における粒子表面の過焼が生じ、表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、再生粒子凝集体の白色度が低下する恐れがある。他方、一次焼成後の未燃率が30質量%を超えると、後の燃焼焼成後においても未燃分が残ったり、未燃分の自燃による過焼成により粒子が硬化したり、未燃分が残るのを防止するために粒子表面が過焼するまで燃焼焼成してしまい、再生粒子凝集体表面が硬くなる恐れがある。
【0038】
前記焼成後の粒子は、粉砕工程にて適宜必要な粒径に微細粒化し、該粉砕工程後に微細粒子を凝集させることなく、顔料として使用可能な再生粒子凝集体とすることができる。
【0039】
例えば、焼成して得られた粒子を、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、又はアトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕し、目的とする再生粒子凝集体とすることができる。顔料としては、粒径が均一化、微細化されていることが好ましく、粒子径が1〜30μmである粒子割合が、80質量%以上であること、粒子径が40μm以上である粒子の割合が0.4質量%以下であることが好ましい。
【0040】
再生粒子凝集体について、さらなる品質の安定化を求める場合には、再生粒子凝集体の粒度を各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることが望ましい。
【0041】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大造粒粒子や微小造粒粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。なお造粒には、通常の造粒設備を使用することができ、例えば回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
【0042】
さらに、再生粒子凝集体以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプの製造工程において、脱墨工程の前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で、砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分は、酸化することによって再生粒子凝集体の白色度を低下させる恐れがあるので、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが好ましい。各工程における設備を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止すると共に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0043】
なお、前記乾燥工程や焼成工程、及び必要に応じて分級工程において、粉砕工程前にあらかじめ、粒子径が40μm以下の粒子が80質量%以上、さらには90質量%以上となるように処理しておくことが好ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による粗大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式粉砕による一段粉砕処理も可能となる。またこれにより、レーザー粒径分布測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2200型、標準屈折率(1)にて測定、(株)島津製作所製)による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができる。さらには主原料である脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、あらかじめ、例えば後述する質量割合に調整することで、再生粒子凝集体の細孔容積を0.15〜0.60mL/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を30〜100nmとすることもでき、再生粒子凝集体の分散性や基紙表面の被覆性を向上させることができる。
【0044】
さらに本発明においては、パルプに内添する填料である再生粒子凝集体として、前記のごとき工程を経て得られた再生粒子凝集体の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子凝集体を特に好適に用いることができる。
【0045】
前記再生粒子凝集体の表面にさらにシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子凝集体とすることで、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、無機粒子の循環使用にも寄与させることができる。またかかるシリカ被覆再生粒子凝集体を填料としてパルプに内添した場合には、シリカが保有する不透明性とインク吸収能の向上に寄与する多孔性の付与が可能になるとともに、書籍用紙を構成するパルプ繊維の間隙にシリカ被覆再生粒子凝集体が含有されると、パルプ繊維同士のズレが押さえられ、例えば平坦化処理において密度が上昇し易くなるのを抑制し、得られる書籍用紙の書籍加工におけるしなやかさを、より向上させることができる。
【0046】
なお、本実施形態に用いられる古紙処理工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子凝集体中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子凝集体を填料として内添すると、得られる書籍用紙の不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子凝集体は、製紙用途の再生粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子凝集体を填料として内添した書籍用紙の不透明度は、充分に向上する。
【0047】
再生粒子凝集体の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカ等があげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性等の優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
【0048】
再生粒子凝集体の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子凝集体を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。
【0049】
まず、再生粒子凝集体をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜13の範囲に調整することにより、再生粒子凝集体の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子凝集体の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
【0050】
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子凝集体の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、該シリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子凝集体に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
【0051】
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。かかるケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子凝集体中のシリカ成分が低下し、再生粒子凝集体の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子凝集体の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子凝集体の多孔性が阻害され、不透明度や印刷適性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、かかるケイ酸分が10質量%以下であることが好ましい。
【0052】
このように、本発明に用いられる再生粒子凝集体は、その粒子中に、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分を含有している。X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)による元素分析において、該再生粒子凝集体の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、20〜82:10〜40:8〜40の質量割合で含まれていることが好ましく、該質量割合は、さらには40〜82:10〜30:8〜30、特に60〜82:10〜20:8〜20であることが好ましい。
【0053】
また、特に再生粒子凝集体がシリカ被覆再生粒子凝集体である場合には、前記X線マイクロアナライザーによる元素分析において、該シリカ被覆再生粒子凝集体の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含まれていることが好ましく、該質量割合は、15〜80:15〜80:5〜25であることがさらに好ましい。
【0054】
また、前記再生粒子凝集体(以下、シリカ被覆再生粒子凝集体を含む概念として記載する)において、酸化物換算のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合は、再生粒子凝集体の粒子構成成分中の85質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましい。
【0055】
本発明に用いられる再生粒子凝集体は、ケイ素を含むところ、ケイ素からなるシリカの粒子は微細なので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で前記質量割合以上含有されている再生粒子凝集体を填料として内添した書籍用紙は、不透明度が特に高い。
【0056】
また、例えばカルシウムが酸化物換算で前記質量割合以上含有された再生粒子凝集体を填料として内添した場合には、特に得られる書籍用紙の白色度を向上させることができる。
【0057】
再生粒子凝集体の粒子構成成分中のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの質量割合を、酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や焼成工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
【0058】
例えば、再生粒子凝集体中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている塗工紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
【0059】
また再生粒子凝集体において、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合を酸化物換算で85質量%以上に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
【0060】
ところで、炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)等の同質異像が存在する。天然に産する石灰石はその殆どがカルサイト結晶であり、貝殻類にはカルサイト結晶のほか、アラゴナイト結晶も存在する。さらに炭酸カルシウムには、天然ではないが、バテライト結晶も存在する。前記脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、かかるカルシウムは再生粒子凝集体そのものの品質安定性に寄与し、該再生粒子凝集体は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムといった異なる成分で構成される凝集体でありながら、安定した性状を示す。
【0061】
また再生粒子凝集体にはケイ素が含まれるが、該ケイ素からなるシリカの1次粒子は微細であるので、光学的屈折率が高い。したがって、例えばケイ素が酸化物換算で前記質量割合以上含有された再生粒子凝集体を填料として内添した場合には、特に得られる書籍用紙の不透明度を向上させることができる。
【0062】
さらに本発明に用いられる再生粒子凝集体は、柔軟かつポーラスな性状を有するので、特に嵩高で、かつしなやかな紙層形成に寄与することができる。
【0063】
本発明に用いられる再生粒子凝集体の粒子径は、パルプ中への歩留まりや再生粒子凝集体の白水中への流失防止という点から、レーザー粒径分布測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2200型、標準屈折率(1)にて測定、(株)島津製作所製)にて測定して、平均粒子径が0.05μm以上、さらには0.3μm以上であることが好ましく、また印刷適性の維持と平坦さの低下防止という点から、平均粒子径が16μm以下、さらには10μm以下であることが好ましい。
【0064】
また粒子径の体積分布において0.05〜10μmである凝集体の割合を80質量%以上に、かつ該粒子径の体積分布において20μm以上である凝集体の割合を0.5質量%以下に調整することがより好ましい。
【0065】
填料である前記再生粒子凝集体の添加量は、あまりにも少ない場合には、該再生粒子凝集体が有する嵩高効果が充分に発現されない恐れがあるので、パルプ100質量部(絶乾パルプ質量)に対して、灰分で5質量部以上、さらには10質量部以上、特に15質量部以上であることが好ましい。逆に再生粒子凝集体の添加量があまりにも多い場合には、得られる書籍用紙の紙力が低下する恐れがあるので、パルプ100質量部(絶乾パルプ質量)に対して、灰分で35質量部以下、さらには30質量部以下、特に25質量部以下であることが好ましい。
【0066】
本発明において、填料としては、前記再生粒子凝集体の他にも、通常填料として用いられる、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種を、本発明の目的を阻害しない範囲で、その種類及び配合量を適宜調整して用いることができる。
【0067】
さらに本発明においては、パルプ及び前記填料から調製される紙料スラリーに、通常紙に配合される種々の添加剤をパルプに配合してもよい。かかる添加剤としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステルや多価カルボン酸エステルを含むエステル、アミン、アミド、及び高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物等の紙厚向上剤;ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留向上剤等があげられ、これらはその種類及び配合量を適宜調整して用いることができる。
【0068】
なお、前記紙厚向上剤を配合する場合、その量があまりにも多い場合には、例えば後述するように、澱粉類等の表面処理剤を抄紙後に塗布すると、該表面処理剤の未塗工欠陥の発生が懸念される恐れがあるので、パルプ100質量部(絶乾パルプ質量)に対して0.5質量部以下となるように調整することが好ましい。また、かかる紙厚向上剤を、パルプ100質量部(絶乾パルプ質量)に対して0.5質量部以下の量で、機械パルプを50質量%以下といった比較的少量含んだパルプに配合した場合には、嵩高さと柔軟性との相乗効果がさらに発現される。
【0069】
パルプ及び填料からなる紙料スラリー及び必要に応じて添加剤から調製された紙料は、例えば長網式抄紙機、オントップ式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の通常の抄紙機によって抄造することができる。また本発明においては、得られた書籍用紙に表面処理を施さなくとも、後述するように、例えば10〜30秒といった好適なベック平滑度を付与することができるが、必要に応じて、カレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施してもよい。該カレンダー装置としては、通常の金属ロール/金属ロールの組み合わせによるマシンカレンダーよりも、金属ロール/樹脂ロールの組み合わせによるソフトカレンダーを使用するほうが、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでより好ましい。
【0070】
なお前記抄造の際のpHは、例えば填料として、再生粒子凝集体の他に炭酸カルシウムが含まれている場合、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程の汚れの原因になる恐れをなくすという点から、5〜8程度となるように調整することが好ましい。
【0071】
また再生粒子凝集体の添加は、抄造工程のいずれの段階でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子凝集体が分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料の歩留まりが向上する。また再生粒子凝集体がパルプ繊維間の結合を阻害しないので、書籍用紙の剛度が低下し過ぎることもない。再生粒子凝集体をより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該再生粒子凝集体を添加することが特に好ましい。
【0072】
さらに本発明においては、パルプから紙料スラリーを調製して抄紙した後、表面に、例えば澱粉類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の高分子材料を成分とする表面処理剤を塗布したり、紙料スラリーに染料、顔料等の色料を添加することも可能である。
【0073】
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて塗布すればよい。またかかる表面処理剤の塗布量は、目的とする書籍用紙の表面強度等を考慮し、適宜調整することが好ましい。
【0074】
かくして得られる書籍用紙は、以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法
」に記載の方法に準拠して測定した、横方向のクラークこわさ(cm3/100)

T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が、2.9以下である。
【0075】
従来より、剛度は紙厚の3乗に比例するといわれてきており、この知見に基づく分析及び官能試験により、これら剛度及び紙厚と「しなやかさ」との相関関係を鋭意研究した結果、上記式(1)で求められる値が2.9以下であることが、本発明における「しなやかさ」の指標になることが見出された。このように、本発明の書籍用紙のしなやか指数Bは2.9以下であり、好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.3以下である。なお、印刷作業性、頁のめくりやすさ、紙腰という点を考慮すると、かかるしなやか指数Bは1.0以上であることが好ましい。
【0076】
また本発明の書籍用紙のベック平滑度は、JIS P 8119に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、10〜30秒であることが好ましい。かかるベック平滑度が10秒未満では、印刷適性が不充分となる恐れがあり、逆に30秒を超えると、本発明の目的とする嵩高さが損なわれる恐れがある。なお、かかるベック平滑度は、書籍用紙の平坦さに、さらに充分な満足感が付与されるという点から、より好ましくは12秒以上、特に好ましくは15秒以上である。
【0077】
また本発明の書籍用紙の密度は、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、0.63g/cm3以下であることが好ましい。かかる密度が0.63g/cm3を超えると、嵩高い書籍用紙とはいえず、またクッション性が低下するため、前記のごとくベック平滑度が30秒以下である場合には、印刷適性が不充分となる恐れがある。なお、かかる密度は、書籍用紙の嵩高さに、さらに充分な満足感が付与されるという点から、より好ましくは0.61g/cm3以下、特に好ましくは0.60g/cm3以下である。また、紙の層間強度、インクの裏抜け、手肉感という点を考慮すると、かかる密度は0.30g/cm3以上であることが好ましい。
【0078】
本発明の書籍用紙の坪量は、紙質強度の確保という点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、50g/m2以上、さらには55g/m2以上であることが好ましく、またその軽量化の点から、かかる坪量は、110g/m2以下、さらには105g/m2以下であることが好ましい。
【0079】
本発明の書籍用紙の表面粗さ(Ra)は、優れた平坦さの維持という点から、JIS B 0651に記載の「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」に準拠して測定及び算出して、2.7μm以下、さらには2.5μm以下、特に2.4μm以下であることが好ましい。また、印刷作業性、オフセット印刷適性、手触感という点を考慮すると、かかる表面粗さ(Ra)は1.0μm以上であることが好ましい。
【0080】
さらに本発明の書籍用紙の引張強さは、良好な紙力の確保という点から、JIS P 8113に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して測定して、2.0kN/m以上、さらには2.1kN/m以上であることが好ましい。
【0081】
本発明の書籍用紙は、パルプに、填料として、古紙処理工程からの資源である脱墨フロスを再利用して低コストで製造された特定の再生粒子凝集体を少なくとも内添させて得られたものであり、クラークこわさ及び紙厚から算出した特定のしなやか指数を有する。したがって、本発明の書籍用紙は、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備している。そして、このような優れた特性を具備した書籍用紙は、本発明の製造方法により、再資源化が実現されながら、低コストで容易に製造され得る。
【0082】
次に、本発明の書籍用紙及びその製造方法を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
製造例1〜20及び比較製造例1〜5(再生粒子凝集体又は再生粒子の製造)
原料として、表1〜2に示すように、脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程から排出された脱墨フロス)及び/又は製紙スラッジ(主に製紙工程から排出された排水・脱水スラッジ)を用い、表1〜2に示す条件にて脱水工程、乾燥工程及び焼成工程を順次行い、焼成工程にて粒子を凝集させた後(製造例1〜20)、湿式粉砕処理を施し、該湿式粉砕処理後に粒子の凝集工程を行うことなく、再生粒子凝集体(製造例1〜20)又は再生粒子(比較製造例1〜5)を得た。
【0084】
なお、製造例3、5、19及び20においては、再生粒子凝集体をケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、以下に示す液温に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで最終反応液を以下に示すpHに調整し、再生粒子凝集体の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子凝集体を得た。
製造例 : 3 5 19 20
液温(℃) : 70 100 93 90
最終反応液(pH):13.0 8.0 8.5 8.3
【0085】
得られた再生粒子凝集体(及びシリカ被覆再生粒子凝集体)又は再生粒子について、その粒子構成成分中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合(酸化物換算)、平均粒子径、粒子径の体積分布において0.05〜10μmである凝集体又は粒子の割合、粒子径の体積分布において20μm以上である凝集体又は粒子の割合、外観、ワイヤー摩耗度、生産性及び品質安定性について調べた。これらの結果を表3〜5に示す。
【0086】
また、市販の炭酸カルシウム(品番:TNC−N360、東洋電化工業(株)製)を比較製造例6とし、前記再生粒子凝集体と同様にして物性を測定した。これらの結果も併せて表4〜5に示す。
【0087】
なお、表1〜5に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
【0088】
(ア)脱水物及び乾燥物の水分率
試料を採取し、JIS P 8127に記載の「紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法」に準拠して測定した。
【0089】
(イ)焼成工程入口での乾燥物の体積平均粒子径
X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)を加速電圧15kVで用い、白黒ポラロイドフィルム(ポラロイド社製、8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を20枚撮影して実測した。
【0090】
(ウ)一次焼成炉内上端部及び二次焼成炉のバーナー近傍での酸素濃度
ガス分析装置(型番:PG250型、(株)堀場製作所製)にて測定した。
【0091】
(エ)一次焼成後の未燃率
電気マッフル炉をあらかじめ600℃に昇温後、ルツボに試料を入れて約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から未燃分を算出した。
【0092】
(オ)再生粒子凝集体又は再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて粒子構成成分の元素分析を行った。また、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウム各々の含有量から、再生粒子凝集体又は再生粒子の粒子構成成分中の、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合(酸化物換算)を算出した。
【0093】
(カ)再生粒子凝集体又は再生粒子の平均粒子径並びに体積分布
再生粒子凝集体又は再生粒子のサンプル10mgを超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。これを用い、レーザー粒径分布測定装置(レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2200型、標準屈折率(1)にて測定、(株)島津製作所製)にて、平均粒子径、並びに粒子径の体積分布において0.05〜10μmである凝集体又は粒子の割合、及び20μm以上である凝集体又は粒子の割合を測定した。
【0094】
(キ)外観(粒子白色度測定値及び目視)
(i)粒子白色度測定
米国TAPPI標準法T−646os75に準拠し、白色度計(型番:KR−III型、熊谷理機工業(株)製)にて測定した。
【0095】
(ii)目視
目視にて再生粒子凝集体又は再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
【0096】
(ク)ワイヤー摩耗度
摩耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー摩耗度を測定した。
【0097】
(ケ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々5段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
【0098】
(コ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:上位10位まで
○:11〜20位
△:21〜23位
×:24位以下
【0099】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0100】
表5に示された結果から、製造例1〜20の再生粒子凝集体は、いずれも白色度が高く、ワイヤー摩耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。これに対して比較製造例1〜5の再生粒子は、いずれもワイヤー摩耗度が高く、生産性及び品質安定性にも劣るものであることがわかる。
【0101】
実施例1〜20及び比較例1〜10(書籍用紙の製造)
表6〜7に示す割合のパルプをダブルディスクリファイナーで叩解処理して混合し、このパルプ(絶乾パルプ質量)100質量部に対して、表6〜7に示す種類及び添加量(灰分)の填料、並びに表6〜7に示す添加量の紙厚向上剤を添加し、パルプスラリーを得た。
【0102】
次いでこのパルプスラリーを用い、オントップ多筒型抄紙機(デュオフォーマーD型、石川島プラント建設(株)製)にて抄紙速度800m/分で抄造し、ゲートロールコータにて、表面処理剤として澱粉を固形分で片面あたり0.5g/m2となるように両面に塗布し、書籍用紙を得た。
【0103】
表6〜7に示すパルプ及び紙厚向上剤は以下のとおりである。
クラフトパルプ:CSF380mLに叩解したLBKP
機械パルプ :CSF120mLに叩解したPGW
紙厚向上剤 :品番PT8107(星光PMC(株)製)
【0104】
なお、前記カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)は、JIS P 8220に記載の「パルプ−離解方法」に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS P 8121に記載の「パルプのろ水度試験方法」に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
【0105】
【表6】

【表7】

【0106】
得られた書籍用紙について、各種物性を以下の方法にしたがって調べた。これらの結果を表8〜9に示す。また、填料として前記比較製造例6と同様の炭酸カルシウムが用いられ、前記と同様の紙厚向上剤が配合された市販の書籍用紙1、2を準備し、同様にして物性を調べた。この結果を、比較例11〜12として併せて表9に示す。これら市販の書籍用紙1、2において、パルプ(絶乾パルプ質量)100質量部に対する炭酸カルシウム及び紙厚向上剤の添加量は、以下のとおりである。
炭酸カルシウム 紙厚向上剤
(灰分:質量部) (質量部)
市販の書籍用紙1: 11.7 1
市販の書籍用紙2: 17.9 1
【0107】
なお、表8〜9に示す各種値は、以下の方法にて測定又は算出した。
【0108】
(a)横方向のクラークこわさ
JIS P 8143に記載の方法に準拠して測定した。
【0109】
(b)紙厚
JIS P 8118に記載の方法に準拠して測定した。
【0110】
(c)しなやか指数
横方向のクラークこわさ及び紙厚の測定値から、前記式(1)を用いて算出した。
【0111】
(d)ベック平滑度
JIS P 8119に記載の方法に準拠して測定した。
【0112】
(e)密度
JIS P 8118に記載の方法に準拠して測定した。
【0113】
(f)坪量
JIS P 8124に記載の方法に準拠して測定した。
【0114】
(g)表面粗さ(Ra)
JIS B 0651に記載の方法に準拠して測定した。
【0115】
(h)引張強さ
JIS P 8113に記載の方法に準拠して測定した。
【0116】
【表8】

【表9】

【0117】
次に、実施例1〜20及び比較例1〜12の書籍用紙について、以下の試験例1〜4に基づいて各特性を調べた。その結果を表10〜11に示す。
【0118】
試験例1(嵩高さ)
前記密度の測定結果から、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:密度が0.61g/cm3以下である。
○:密度が0.61g/cm3よりも大きく、0.63g/cm3以下である。
△:密度が0.63g/cm3よりも大きく、0.64g/cm3以下である。
×:密度が0.64g/cm3よりも大きい。
【0119】
試験例2(しなやかさ)
前記しなやか指数の算出結果から、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:しなやか指数が2.5以下である。
○:しなやか指数が2.5よりも大きく、2.9以下である。
△:しなやか指数が2.9よりも大きく、3.2以下である。
×:しなやか指数が3.2よりも大きい。
【0120】
試験例3(画感(平坦さ))
前記ベック平滑度の測定結果から、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ベック平滑度が15秒以上、30秒以下である。
○:ベック平滑度が10秒以上、15秒未満である。
△:ベック平滑度が8秒以上、10秒未満である。
×:ベック平滑度が8秒未満である。
【0121】
試験例4(未塗工欠陥)
四六版(1091mm×788mm)に断裁したサンプル1000枚の中から、無作為に5枚を抜き出し、所定の濃度に溶解したヨウ素液をローラーにて塗布し、目視にてヨウ素−澱粉反応の有無を調べた。反応ありの場合を未塗工欠陥なし、反応なしの場合を未塗工欠陥あり、として表中に示す。
【0122】
【表10】

【表11】

【0123】
実施例1〜20の書籍用紙は、古紙処理工程から排出される脱墨フロスが主原料で、特定の工程、特に二段階の焼成工程を経て得られた、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分を含有した再生粒子凝集体を、填料としてパルプに内添し、抄造して得られたものである。したがって、実施例1〜20の書籍用紙は、資源を再利用して低コストで得られるだけでなく、嵩高さを維持しながら、しなやかさと平坦さとを兼備しており、さらに適度の坪量、表面粗さ及び引張強さを有し、しかも未塗工欠陥の発生がないものであることがわかる。
【0124】
これに対して比較例1〜5の書籍用紙は、古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料としない再生粒子を填料としてパルプに内添し、抄造して得られたものである。したがって、比較例1〜5の書籍用紙は、省資源化や低コスト化が図られず、しかも嵩高さと、しなやかさ及び平坦さとが両立されないものであることがわかる。
【0125】
また比較例6〜12の、一般的な炭酸カルシウムを填料として内添した書籍用紙や、填料を内添していない書籍用紙、さらに市販の書籍用紙も、比較例1〜5と同様に、嵩高さと、しなやかさ及び平坦さとが両立されないものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の書籍用紙は、例えば各種書籍の本文用用紙等に好適に使用することができる。また本発明の製造方法により、このような書籍用紙を、資源を再利用しながら低コストで容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプに填料が内添されてなる書籍用紙であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた再生粒子凝集体が、前記填料として少なくとも内添されており、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が、2.9以下であることを特徴とする、書籍用紙。
【請求項2】
二次焼成温度を一次焼成温度よりも10〜50℃低く調節して得られた再生粒子凝集体が、填料として少なくとも内添されてなる、請求項1に記載の書籍用紙。
【請求項3】
再生粒子凝集体が、パルプ100質量部(絶乾パルプ質量)に対して、灰分で5〜35質量部内添されてなる、請求項1に記載の書籍用紙。
【請求項4】
パルプに填料が内添されてなる書籍用紙であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られ、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して得られた再生粒子凝集体の表面に、さらにシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子凝集体が、前記填料として少なくとも内添されており、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が、2.9以下であることを特徴とする、書籍用紙。
【請求項5】
パルプに填料を内添して抄造する書籍用紙の製造方法であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程に供し、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して再生粒子凝集体を調製し、
前記填料として、少なくとも前記再生粒子凝集体をパルプに内添させることを特徴とする、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が2.9以下である書籍用紙の製造方法。
【請求項6】
パルプに填料を内添して抄造する書籍用紙の製造方法であって、
古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程に供し、焼成工程において、少なくとも二段階で焼成し、一次焼成温度を510〜750℃に、二次焼成温度を500〜700℃に調節して再生粒子凝集体を調製し、該再生粒子凝集体の表面に、さらにシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子凝集体を調製し、
前記填料として、少なくとも前記シリカ被覆再生粒子凝集体をパルプに内添させることを特徴とする、
以下の式(1):
B=(S×105)/T3 ・・・(1)
(ここで、
B:しなやか指数、
S:JIS P 8143に準拠して測定した横方向のクラークこわさ(cm3/10
0)、
T:紙厚(μm)
である)
で表されるしなやか指数が2.9以下である書籍用紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−133076(P2010−133076A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35796(P2010−35796)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【分割の表示】特願2006−346141(P2006−346141)の分割
【原出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】