説明

最初にコアを形成するナノ粒子形成プロセス、ナノ粒子、及び組成物

下記の工程:架橋剤で架橋されてナノ粒子のコアを形成するモノビニル単量体を含有する重合体のシードを(溶液中に)準備する工程であって、コアの平均直径が約5ナノメートルから約10,000ナノメートルで、コアが活性末端を有する重合体鎖を有する、工程;安定化剤を添加して、前記シードを安定化させ、前記シードが溶液から沈殿するのを防ぐ工程;前記コアの活性末端上にシェル種をグラフト化させて、ナノ粒子のシェルを形成する工程を含む、コア−シェルナノ粒子を合成するための方法を提供する。最初にコアを合成したナノ粒子と共に、ゴム組成物及びタイヤ製品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリマーナノ粒子は、過去数年間、触媒、コンビナトリアルケミストリー、タンパク質支持体、磁石、フォトニック結晶を含むさまざまな分野で注目を集めてきた。同様に、芳香族ビニル(ポリスチレンなど)のマイクロ粒子は、医学研究及び医学診断検査におけるさまざまな機器の検量用標準として使用するために調製されてきた。このようなポリスチレンのマイクロ粒子は、アニオン分散重合及び乳化重合により調製されてきた。
【0002】
他の材料に添加剤としてナノ粒子を使用する利点は、粒子を、ホスト組成物全体を通して均一に分布する分散伝導性粒子とすることができる点である。いくつかの適用例において、ナノ粒子はサイズが単分散で、単一の形状を有していることが好適である。しかしながら、重合反応中にナノ粒子の大きさを制御すること、及びナノ粒子の表面特性を制御すること、またはこれら両方を制御することは困難となり得る。したがって、このようなナノ粒子の表面組成をより適切に制御することも望まれている。
【0003】
幅広くさまざまなマトリクス材料と相溶可能な多様な官能基、もしくはヘテロ原子の単量体を含む表面層、またはシェルを有するナノ粒子の開発が望まれている。しかしながら、多様な官能基もしくはヘテロ原子単量体を有する、使用可能なナノ粒子を確実に製造できるプロセスを開発することは、困難な試みであった。例えば、種々の単量体の伝統的なアルカン溶媒に対する溶解度が原因で、溶液重合を行い、ナノ粒子を適した状態のシェル層を有するようにするのは困難であった。エマルジョン合成には、ナノ粒子を合成するために水性溶液の使用を要するが、多くの官能性単量体と開始剤は水性溶液中で使用するのには向かない。また、エマルジョン合成には、多量の界面活性剤を必要とするが、いくつかの理由によりこれは望ましくない。さらに、官能基は、安定したものであって、ナノ粒子形成工程を経ても残存することが必要であるが、ある種の官能基がこのような安定性を有しないものであれば、該官能基によるナノ粒子の官能化は困難となる。なお、ナノ粒子形成後の官能化は、ナノ粒子同士の結合を引き起こし、その分散特性の利点を失わせてしまいかねない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで、下記の工程:
架橋剤で架橋されて、ナノ粒子のコアを形成するモノビニル単量体を含む重合体のシード(種)を(溶媒中に)準備する工程(コアの平均直径は約5ナノメートルから約10,000ナノメートルであり、コアが活性末端を有する重合体鎖を有する);
安定化剤を添加して、前記シード(種)を安定化させ、溶液から前記シード(種)が沈殿するのを防止する工程;及び、
前記コアの活性末端上にシェル種をグラフト化及び/または重合させて、ナノ粒子のシェルを形成する工程
を有する、コア−シェルナノ粒子を合成する方法を開示する。
【0005】
加えて、ゴム組成物を製造する方法を提供する。この方法は、上記の段落に記載されたコア−シェルナノ粒子の製造工程と、加硫可能なゴムマトリクスにコア−シェルナノ粒子を加えてゴム組成物を形成する工程を有する。
【0006】
タイヤの製造方法も提供する。この方法は、上記のコア−シェルナノ粒子の製造工程;コア−シェルナノ粒子をゴム組成物に添加する工程;ゴム組成物をタイヤトレッドへと成形する工程;及び前記タイヤトレッドを使用したタイヤを構築する工程を有する。
【0007】
さらに、コア−シェルナノ粒子も提供する。このコア−シェルナノ粒子は、架橋剤で架橋されたモノビニル単量体を含む重合体のシード(種)から形成されたコアを有し、該コアは約5ナノメートルから約10,000ナノメートルの平均直径を有する。シェル種を含むシェルは、コアに対してグラフト化及び/または重合化しており、シェルは実質的に架橋されていない。
【0008】
ここで、全体を通して、特に記述がない場合は:「ビニル置換芳香族炭化水素」及び「アルケニルベンゼン」は相互に交換使用が可能であり;「ゴム」は天然ゴム、及びスチレン−ブタジエンゴム、エチレンブタジエンゴム等の合成エラストマーを含む、当該技術分野で公知のゴム化合物を示すものとする。さらに文中の単語は、特に記述がない場合は、「1以上」存在するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】最初にコアを形成するプロセスで形成されたナノ粒子を100 nmスケールで描写したSEM写真である。
【図2】最初にコアを形成するプロセスで形成されたナノ粒子を500 nmスケールで描写したSEM写真である。
【図3】最初にコアを形成するプロセスで形成されたナノ粒子を2マイクロメートルスケールで描写した第3のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
多様なシェル種のコア−シェルナノ粒子を形成する、高度に汎用性のある方法をここに開示する。この方法では、シェル形成より先に、ナノ粒子コアを形成し、コアは、比較的大きな架橋したシードを合成し、リビング分散重合を用いて該シード安定化させ該シードを溶液中に保持することによって形成する。次いで、シェルをシードに対してグラフト化及び/または重合させ、それによって、ヘテロ原子重合体、炭化水素重合体、オリゴマー、大環状分子及び単量体といった、多種多様なシェル種の使用が可能となる。実施形態において、この方法は単一バッチで実施してもよく、シェルのグラフト化及び/または重合の前にコアを単離及び乾燥させる必要はない。この例示した方法によると、多様なサイズで、内部及び表面の構造が明確に定められ、かつ適した界面を有する官能性ナノ粒子の製造が可能となる。この方法で合成されたナノ粒子は、ゴム配合物における、補強剤及び性能強化用添加剤として有効に作用することが実証された。架橋されていないシェルを有するナノ粒子は、驚くべきことに、ゴム組成物に配合された際に、低い配合物粘度特性と、良好な湿潤トラクション性及び受け入れ可能な雪上トラクション性を示した。
【0011】
ある実施形態において、重合体シード(種)は溶媒中で準備される。このシードは、架橋剤で架橋された重合したモノビニルモノマーを含む。重合したモノビニル重合体鎖が架橋剤により保持されることで、比較的高密度で安定したコアとなり、これにより、生成するナノ粒子の形及び大きさの均一性及び性能が向上する。
【0012】
重合は、リビングアニオン分散重合またはリビングフリーラジカル分散重合等のリビング分散重合により行われる。いくつかの適用例においては、リビングアニオン分散重合が、フリーラジカル分散重合より好適に使用できる。分散重合反応は、生成する重合体が溶解しない有機液体中で単量体を重合させ、有機液体中に生成する不溶性重合体を、立体安定化剤を使用して、安定化させることによってなされる。分散重合を使用するのは、シードが溶液から沈殿するのを防ぐためである。この技術を用いることで、かなり大きなシードから、約5ナノメートルから約10,000ナノメートルの範囲のコアを溶液中に残したまま形成させることができる。結果として、さもなければ重合体シードを溶解しない、広い範囲の溶媒を使用できる。
【0013】
シード形成工程の一般的な例において、炭化水素溶媒の入った反応器が使用され、その中にモノビニル単量体種、及びポリスチレン−ポリブタジエンジブロック等の立体安定化剤を加える。架橋剤とともに、重合開始剤を反応器に加える。架橋剤と開始剤とは、1回で反応器に加えてもよい。反応器には、ランダム化剤を加えてもよい。このようにして、モノビニル重合体鎖が表面に活性末端を有する、架橋剤で架橋された重合体モノビニルコアが形成される。活性末端は、モノビニル種よりも溶媒に対して高い親和性を有するため、コアの表面に位置する。コアの表面は、コア表面に吸着した立体安定化剤により安定化される。
【0014】
モノビニル単量体種の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1−α−メチルビニルナフタレン、2−α−メチルビニルナフタレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、並びに、一般には、組み合わせた炭化水素中の炭素原子の総数が18を超えない、これらのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール及びアラルキル誘導体等のモノビニル芳香族種、並びに、ジビニルまたはトリビニル置換芳香族炭化水素、及びこれらの混合物が挙げられる。モノビニル単量体種の例としては、さらに、酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル及びビニルアルコール等の非芳香族モノビニル単量体種が挙げられる。
【0015】
架橋剤としては、少なくとも2つの官能基を有し、2つの官能基がコアのモノビニル種と反応可能であるものが使用できる。好適な架橋剤の例としては、多ビニルモノマー及び多ビニル芳香族モノマーが一般的に挙げられる。架橋剤の具体例としては、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のジビニルまたはトリビニル置換芳香族炭化水素、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、1,2−ポリブタジエン、N,N'−m−フェニレンジマレイミド、N,N'−(4−メチル−m−フェニレン)ジマレイミド、トリメリット酸トリアリル、C2−C10多価アルコールのアクリレート及びメタクリレート、2から20のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコールのアクリレート及びメタクリレート、脂肪族のジオール及び/またはポリオールからなるポリエステル、または、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸が挙げられる。
【0016】
立体的安定化剤の具体例としては、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、及びポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0017】
上記のように、分散重合技術では、多様な溶媒の使用が可能である。水等の極性溶媒、及び非極性溶媒が使用可能であるが、炭化水素溶媒は幾つかの用途で有益である。溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びデカン等の脂肪族炭化水素、並びに、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロオクタン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロノナン及びシクロデカン等の脂環式炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、個々に使用しても、組み合わせて使用してもよい。しかしながら、下記により詳細に説明するように、ナノ粒子を形成する一重合体が、ナノ粒子を形成する他の重合体より溶解しやすい溶媒を選択することが、ミセル形成において重要である。
【0018】
1,2−ミクロ構造の制御剤またはランダム化調節剤を任意に使用して、コアのモノビニル単量体ユニット中の1,2−ミクロ構造を制御する。好適な調節剤としては、2,2-ビス(2'−テトラヒドロフリル)プロパン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジエチルエーテル、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、アニソール、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルエチルアミン、ビス−オキソラニルプロパン、トリ−n−プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチル−N−エチルアニリン、N−メチルモルフォリン、テトラメチレンジアミン、オリゴマー状オキソラニルプロパン(OOPs)、2,2−ビス−(4−メチルジオキサン)、及びビステトラヒドロフリルプロパンが挙げられる。1種または2種以上のランダム化調節剤の混合物を使用することもできる。単量体に対する調節剤の比率は、最小で約0から、最大で約4000ミリモル程度までとすることができ、例えば、単量体100gあたり約0.01から約3000ミリモルの調節剤を反応器に投入することができる。調節剤の投入量を増やすに従って、重合体ナノ粒子の表面層中の共役ジエン寄与単量体ユニットにおける1,2−ミクロ構造(ビニル含有量)が増加する。共役ジエンユニットの1,2−ミクロ構造含有率は、例えば、約5%から約95%の範囲内であり、例えば、約35%未満である。
【0019】
コアの形成プロセスに適した開始剤としては、モノビニル単量体、または多ビニル単量体の重合に有用であることが、当該技術分野で知られているアニオン開始剤が挙げられる。例えば、有機リチウム開始剤としては、式:R(Li)xで表されるリチウム化合物が挙げられ、ここで、RはC1〜C20のヒドロカルビルラジカル(例えば、C2〜C8のヒドロカルビルラジカル)を示し、xは1〜4の整数を示す。典型的なR基としては、脂肪族ラジカル及び脂環式ラジカルが挙げられる。R基の具体例としては、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びt−ブチル等の、1級、2級及び3級の基が挙げられる。
【0020】
開始剤の具体例としては、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、及びtert−ブチルリチウム;フェニルリチウム及びトリルリチウム等のアリールリチウム;ビニルリチウム、プロぺニルリチウム等のアルケニルリチウム;テトラメチレンリチウム及びペンタメチレンリチウム等のアルキレンリチウムが挙げられる。これらの中でも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、テトラメチレンリチウム、及びこれらの混合物が特徴的な例である。他の適したリチウム開始剤としては、p−トリルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、4−ブチルシクロヘキシルリチウム、4−シクロヘキシルブチルリチウム、リチウムジアルキルアミン、リチウムジアルキルホスフィン、リチウムアルキルアリールホスフィン、及びリチウムジアリールホスフィンが挙げられる。
【0021】
フリーラジカル開始剤を、フリーラジカル重合プロセスと併せて使用してもよい。フリーラジカル開始剤の例としては、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2−ブタノンペルオキシド、2−ブタノンペルオキシド、2−ブタノンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、無水ヒドロキシメタンスルホン酸一ナトリウム塩、過硫酸カリウム、及び試薬グレードの過硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0022】
官能化されたリチウム開始剤もまた、コア種の重合において有用であると考えられる。官能化された開始剤は、コアを官能化する役割を果たし、官能基がコアの表面から内部に至るまで分布しやすい。官能基の例としては、アミン、ホルミル、カルボン酸、アルコール、スズ、シリカ、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
アミン官能化開始剤としては、アミン、有機リチウム、及び可溶化成分の反応生成物が挙げられる。開始剤は、一般式:
(A)Li(SOL)y
で表され、ここで、yは1から3であり;SOLは、炭化水素、エーテル、アミン、またはこれらの混合物からなる群より選ばれる可溶化成分であり;Aは、下記一般式:
【化1】

で表されるアルキル、ジアルキル及びシクロアルキルのアミンラジカル、及び下記一般式:
【化2】

で表される環状アミンからなる群より選択され、ここで、R1は1から12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアラルキルよりなる群より選ばれ、R2は3から16個のメチレン基を有するアルキレン、置換アルキレン、オキシ−又はN−アルキルアミノ−アルキレン基からなる群より選ばれる。官能化リチウム開始剤の具体例は、ヘキサメチレンイミンプロピルリチウムである。
【0024】
スズ官能化リチウム開始剤も、ナノ粒子の合成に有用かもしれない。好適なスズ官能化リチウム開始剤としては、トリブチルスズリチウム、トリオクチルスズリチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
一般的に、アニオン開始剤は、投入されるモノマー100gあたり、約0.01から約60ミリモルの範囲の量で使用できる。フリーラジカル開始剤は、投入されるモノマー100gあたり、約6から100ミリモルの範囲の量で使用できる。
【0026】
コアのサイズは約5ナノメートルから約10,000ナノメートルの範囲とすることが可能で、例えば、約25から約1,000ナノメートル、約40から150ナノメートル、約50から125ナノメートルの範囲とすることができる。
【0027】
ナノ粒子のシェルは、例えば、架橋されたコアの活性末端上にシェル種をグラフト化及び/または重合させることにより形成する。こうして、ナノ粒子は、重合体または共重合体が架橋されたコアから架橋されていないシェル内部にわたって延在しながら、形成される。シェル種は、多様なオリゴマー、重合体、単量体、または高分子及びこれらすべての官能化物から選択することができる。
【0028】
シェルを最初に形成する場合にシェルがコア形成及び架橋プロセスを耐え抜くほどの安定性は、シェルを最後に形成するため、シェル種に必要ではない。そのため、最初にコアを形成するプロセスを実施することにより、最初にシェルを形成するプロセスでは製造するのが困難なまたは不可能な、多くの新しいナノ粒子を製造することができる。さらに、最初にコアを形成するプロセス例は、一般的に官能化ナノ粒子を製造するための、より簡単で信頼できる方法を提供する。
【0029】
一例において、シェル種は、別の反応器で重合された後、活性末端を有するコアの入った反応器に加えられる重合体である。予め形成された重合体を、コアの入った反応器に添加することにより、重合体鎖が架橋されたコアにグラフト化され、それによって、重合体ブラシを有するシェルが形成される。ここで使用される「重合体ブラシ」または「ブラシ状表面」との用語は、ナノ粒子のシェル内部に向かって延在する、架橋されていない重合体の意味で使用される。「ブラシ」との用語は、シェル内の架橋されていない状態の重合体鎖を意味する。「ブラシ状表面」は、重合体鎖のほとんどが自由な鎖末端を有する表面である。また、予め形成された重合体を、別の反応器内で、官能性開始剤、官能性停止剤、またはこれら両方により官能化し、次いでコアの活性末端上にグラフト化させ、それによって、ナノ粒子のシェル内に官能化された重合体ブラシを形成してもよい。
【0030】
他の例においては、シェル種を、単量体としてコアを含む反応器に加え、同じ反応器内で開始剤により重合させる。こうして、シェルは、シェル種の重合体ブラシを有することとなる。任意選択的に、シェルの重合体ブラシを官能化するために、官能性停止剤を使用してもよい。
【0031】
他の例においては、シェル種はヘテロ原子を含有する単量体である。ヘテロ原子単量体は、上記のように重合して、シェルを形成する。
【0032】
他の例においては、シェル種は単一の単量体ユニットである。このユニットは、炭化水素であっても、1種以上のヘテロ原子を含有していてもよく、また、官能化されていてもよい。単量体を添加し、コアの活性末端を介して重合させる。
【0033】
他の例においては、シェル種は、約10,000g/モル以下の分子量を有する高分子か、オリゴマーである。シェル種は、コアを含有する反応器に添加される。こうして、高分子またはオリゴマーは、コアの活性末端上にグラフト化される。高分子またはオリゴマー中には、さまざまな官能基が存在していてもよい。
【0034】
他の例においては、シェル種は、それ自体が官能性の停止剤である。コアを含有する反応器に添加された場合、官能性停止剤はコアの活性末端を停止させる。この例においては、官能基がシェルとみなされる。
【0035】
シェル種の重量%は、ナノ粒子全体の約1×10-5%から約75%の範囲としても、約1%から約75%の範囲としてもよく、例えば、シェル種がコアの活性末端の官能性停止剤である場合は、約1×10-5%から約5%としてもよく、シェル種が高分子または1より多い「マー」ユニットを有する場合は、3%から50%、または5%から25%としてもよい。
【0036】
一般的にシェル種の例としては、炭化水素、ヘテロ原子種、極性官能化種、水溶性種、熱可塑性エラストマー及び可塑性エラストマーが挙げられる。
【0037】
炭化水素のシェル種としては、1,3−ブタジエン、イソプレン及び1,3−ペンタジエン等のC4からC8の共役ジエンが挙げられる。エチレン、プロピレン、イソブチレン及びシクロヘキセン等のオレフィン種も使用できる。
【0038】
ヘテロ原子シェル種としては、O、N、S、P、Cl、Ti及びSi原子を含有する種が挙げられ、例えば、エポキシド、ウレタン、エステル、エーテル、イミド、アミン、カーボネート、シロキサン、ハロゲン、金属、合成オイル、及び植物油が挙げられる。具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ハロゲン化ブチルゴム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPO−EO2)、ポリビニルアルコール、ピリジン、カルバゾール、イミダゾール、ジエチルアミノスチレン及びピロリドンが挙げられる。高分子又はオリゴマーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリフェニレンオキサイド、及びポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0039】
特定の実施形態においては、シェル種は、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたは植物油である。このようなオイルでブラシ化されたナノ粒子は、ゴム配合物中における補強剤及び加工添加剤としてのナノ粒子の能力を相乗的に向上させる。例えば、本文中に開示の非限定的な例において、ヒマシ油でブラシ化されたナノ粒子は、配合物のムーニー粘度を増加させることなく、引張り強度及びウェットトラクションの向上を示し、加えて、他の特性を損なうことなく、ヒステリシスとペイン効果の低減を示した。
【0040】
シェル種とともに、またはシェル種として使用される官能性停止剤としては、SnCl4、R3SnCl、R2SnCl2、RSnCl3、カルボジイミド、N−メチルピロリジン、環状アミド、環状尿素、イソシアネート、シッフ塩基、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N'−ジメチルエチレン尿素、及びこれらの混合物が挙げられ、ここで、Rは、約1から約20個の炭素原子を有するアルキル基、約3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、約6から約20個の炭素原子を有するアリール基、約7から約20個の炭素原子を有するアラルキル基、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0041】
コア−シェルナノ粒子の全体のサイズは、コアとシェルの両方を含む平均直径の平均値で表すと、例えば、約5ナノメートルと約20,000ナノメートルの間、特には、約50から約5,000ナノメートル、約75から約300ナノメートル、または約75から約150ナノメートルである。
【0042】
いくつかの用途において、ナノ粒子は、好適には実質的に単分散で、単一形状を有する。分散度は、Mnに対するMwの割合で表され、割合が1のとき、実質的に単分散である。例えば、ナノ粒子は、約1.3未満、特には、約1.2未満、または約1.1未満の分散度を有する。さらに、ナノ粒子は、形状の歪みがあってもよいが球形であってもよく、通常、粒子間の重合はほとんど生じないか、全く生じず、離散した状態で保持される。
【0043】
ここで定義された単量体と溶媒について、選択した溶媒内で、選択したモノマーが重合するのに適した温度を維持することによって、ナノ粒子を形成する。反応温度は、例えば、約-40から約250℃の範囲、特には、約0から約150℃の範囲の温度である。
【0044】
加えて、シェル種は、ランダム共重合体及びブロック共重合体のような共重合体を含んでもよい。これらの他のブロックは、上記に挙げられた炭化水素とヘテロ原子単量体を含んでもよい。共重合体シェル種は、コアの入った反応器に導入する前に合成してもよいし、上記の反応器内に導入した後に重合させてもよい。
【0045】
予め形成された多ブロック重合体は、コア中心部に向かう溶媒への溶解度が最も小さなブロックと、そこから延在するテールまたはブラシとしての他の全てのブロックとを有し、凝集してコア周辺でミセル様構造を形成するものと考えられる。例えば、炭化水素溶媒において、ビニル置換芳香族ブロックはコア中心部に向かい、他のブロックはそこからテールとして延在している。炭化水素溶媒を追加で投入したり、重合混合物の温度を低下させてもよく、実際、これらは、ミセルの形成に必要なこともあることを注記する。さらに、これらの工程は、通常、ビニル芳香族ブロックが不溶性である、という特性を利用して行ってもよい。例えば、この工程における温度範囲は、約-80℃から約100℃の間、特には、約20℃から約80℃にする。
【0046】
ナノ粒子のコア及びシェルを形成した後、活性末端の停止の前に、共役ジエンモノマー及び/またはビニル置換芳香族炭化水素モノマー等の単量体を、追加で、所望の重合混合物に投入することができる。続いて、多様な単量体を加えることにより、その粒子サイズを大きくし、かつ、内部構造の異なるシェルを形成することができる。
【0047】
本文中に記載されるナノ粒子の実施形態は、実質的に分離しており、例えば、ナノ粒子間の架橋は20%未満、特には、15%未満、または10%未満である。
【0048】
ナノ粒子全体の数平均分子量(Mn)は、約10,000から約200,000,000の範囲内、特には、約50,000から約1,000,000の範囲内、または約100,000から約500,000の範囲内となるように制御してもよい。重合体ナノ粒子の多分散性(数平均分子量に対する重量平均分子量の割合)は、約1から約2.0の範囲内、特には、約1から約1.5の範囲内、または約1から約1.2の範囲内となるように制御される。
【0049】
Mnは、ポリスチレン標準で校正され、対象の重合体に合わせてマーク−ホーウィンク定数を調整されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で計測することができる。下記の実施例おけるMn値は、直鎖状重合体で校正したGPC法により計測した。
【0050】
一例においては、合成されたナノ粒子のコアは比較的硬く、即ち、コアは約60℃以上のTgを有する。他の例においては、ナノ粒子はシェルより硬いコアを有し、たとえば、シェル層のTgより少なくとも約60℃高いか、または、シェル層のTgより少なくとも約1℃以上高いコアを有する。一例においては、シェル層は柔らかく、即ち、シェル層は約0℃より低いTgを有する。一例においては、シェル層のTgは約0℃と約-100℃の間である。硬いコアと柔らかいシェルを有するナノ粒子は、タイヤトレッドに使用されるゴム配合物を補強するのに、特に有用である。
【0051】
ナノ粒子中のポリマーのTgは、モノマーとその分子量の選択、スチレン含量、及びビニル含量により制御できる。
【0052】
<ポリマーナノ粒子の適用例>
例示したナノ粒子と組み合わせて使用するための多様な適用例が考えられる。さらに、ナノ粒子の変性に係る本文中のいくつかの機構は、ナノ粒子を異なる適用例により適した状態とする。例示したナノ粒子の全ての形態は、当然に、例示した各適用例及び当業者が想定する全ての適用例に使用するために考えられている。
【0053】
<一般的なゴム>
ナノ粒子を形成した後、ゴム配合物の物理的特性を改良するために、ナノ粒子をゴムと混合してもよい。ナノ粒子は、互いに分離しており、ゴム組成物の全体に均一に分散して、均一な物理特性を実現可能であるため、ゴムの変性剤として有用である。
【0054】
本発明の重合体ナノ粒子は、特に限定されるものではないが、ランダムスチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエンゴム、ポリ(イソプレン)、天然ゴム、エチレン−プロピレン、ニトリルゴム、ポリウレタン、ブチルゴム、EPDM及びシリコーンゴム等の多様なゴムを変性するのに適している。
【0055】
さらに、水素化された層を有するナノ粒子は、特定のゴムとの親和性が向上していることもある。例えば、水素化されたポリイソプレン層を含むナノ粒子は、水素化されたイソプレンとEPDMゴムとの親和性により、EPDMのゴムマトリクスと優れた結合性を示し、かつ分散性が向上していることがある。米国特許第6,689,469号(Wang)は、ナノ粒子を水素化する方法を開示しており、本文においてこれを引用して組み合わせる。
【0056】
加えて、共重合体層を有するナノ粒子は、ゴムとの親和性が向上していることがある。ナノ粒子の層中の共重合体テールは、ブラシ様の表面を形成することがある。そして、ホスト組成物がテールの隙間に入り込み、これによりホストとナノ粒子の間の相互作用を向上させることができる。
【0057】
シロキサン基を含むシェル種を有するナノ粒子は、シリカ充填ゴム組成物中の相互作用を向上させることがある。植物油または合成オイルを含むシェル種を有するナノ粒子は、ゴムマトリクスの加工性を向上させることがある。
【0058】
ピリジン、カルバゾール、イミダゾール、ジエチルアミノスチレン、ピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリフェニルオキシド(PPO)及びポリ(プロピレングリコール)を含むシェル種を有するナノ粒子は、シリカ及びカーボンブラックを充填したゴムと混合されて、ムーニー粘度の顕著な増加を呈することなく、G'等の特性を向上させることが判明した。
【0059】
<ハードディスク技術>
水素化されたナノ粒子は、ハードディスク技術においても、用途が見出されるかもしれない。
【0060】
従来より、コンピューターのディスクドライブ組立品は、毎分数千回転(RPM)を超えるスピードで回転する軸装置と同軸上に搭載された磁気保存ディスクを含む。このディスクドライブ組立品は磁気ヘッドも有し、該磁気ヘッドは、磁気ディスクが回転する間、磁気ディスクに情報を書き込んだり、磁気ディスクから情報を読み込んだりする。磁気ヘッドは、通常はアクチュエータアームの末端に配置され、磁気ディスクの上方のスペースに位置する。アクチュエータアームは、磁気ディスクに関連して移動する。ディスクドライブ組立品は、ディスク基板(支持板)に搭載され、カバープレートで封止されて、ハウジングが形成し、該ハウジングは、ハウジング外部の環境中での汚染から、ディスクドライブ組立品を保護する。
【0061】
ディスクドライブ組立品のハウジング内部への、気体状及び微粒子状汚染物質の混入により、有用な情報の消失などの、磁気ディスクへの深刻な損傷が生じ得る。気体状及び微粒子状の汚染物質のディスクドライブのハウジング内への混入を実質的に防止するか、軽減するため、ディスクドライブ搭載基板(支持板)とディスクドライブ組立品ハウジングまたはカバープレートとの間に、可撓性の封止ガスケットを配置する。通常、封止ガスケットは、シート状の硬化エラストマーから、リング形状のガスケットをパンチで打ち抜いて製造される。通常、製造されたエラストマーガスケットはディスクドライブ組立品の基盤に、該ガスケットをネジ止めしたり、接着剤を用いたりして、機械的に取り付けられる。
【0062】
<熱可塑性ゲル>
本願明細書の開示に従って製造されたナノ粒子は、水素化されているか否かにかかわらず、SEPS、SEBS、EEBS、EEPE、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、及びこれらの混合物等の多様な熱可塑性エラストマーと混合してもよい。例えば、水素化されたイソプレン層を有するナノ粒子を、SEPS熱可塑性物質と混合して、引張り強度と熱安定性を向上させる。このような熱可塑性エラストマーとナノ粒子との混合物は、通常、当該技術分野で公知のように、伸展できる。例えば、好適なエキステンダーとしては、エキステンダー油及び低分子量の化合物または成分が挙げられる。好適なエキステンダー油としては、ナフテン系、芳香族系またはパラフィン系石油、及びシリコーン油等の当該技術分野で周知のものが挙げられる。
【0063】
ナノ粒子を含む組成物中においてエキステンダーとして有用な低分子量の有機化合物または成分の例としては、数平均分子量が約20,000未満、例えば約10,000未満、または約5000未満の低分子量有機材料が挙げられる。使用可能な材料に制限はないが、適正な材料の例は、下記のリストの通りである:
【0064】
(1)軟化剤、すなわち、ゴムまたは樹脂用の、芳香族系、ナフテン系、及びパラフィン系の軟化剤;
【0065】
(2)可塑剤、すなわち、フタル酸、混合フタル酸、脂肪族二塩基酸、グリコール、脂肪酸、リン酸及びステアリン酸のエステル等のエステル、エポキシ可塑剤、その他のプラスチック用可塑剤、及び、NBR用の、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル、ポリエーテル、ポリエステル可塑剤からなる可塑剤;
【0066】
(3)粘着付与剤、すなわち、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油系炭化水素及びロジン誘導体;
【0067】
(4)オリゴマー、すなわち、クラウンエーテル、フッ素含有オリゴマー、ポリブテン、キシレン樹脂、塩化ゴム、ポリエチレンワックス、石油系樹脂、ロジンエステルゴム、ジアクリル酸ポリアルキレングリコール、液状ゴム(ポリブタジエン、スチレン/ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、及びポリクロロプレン)、シリコーンオリゴマー及びポリ−α−オレフィン;
【0068】
(5)潤滑剤、すなわち、パラフィン及びワックス等の炭化水素潤滑剤、高級脂肪酸及びヒドロキシル脂肪酸等の脂肪酸潤滑剤、脂肪酸アミド及びアルキレン−ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド潤滑剤、脂肪酸−低級アルコールエステル、脂肪酸−多価アルコールエステル及び脂肪酸−ポリグリコールエステル等のエステル潤滑剤、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール及びポリグリセロール等のアルコール潤滑剤、金属せっけん、及び混合潤滑剤;並びに、
【0069】
(6)石油系炭化水素、すなわち、合成テルペン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族または脂環式石油樹脂、不飽和炭化水素の重合体、及び水素化された炭化水素樹脂。
【0070】
他の適した低分子量有機材料としては、ラテックス、エマルジョン、液晶、アスファルト組成物、ホスファゼンが挙げられる。これらの材料の1種以上を、エキステンダーとして使用してもよい。
【0071】
本明細書に従って調製された表面が官能化されたナノ粒子は、水素化の有無にかかわらず、シリカ含有ゴム組成物と共に配合してもよい。シリカ含有ゴム組成物中に表面官能化ナノ粒子を含ませることで、このようなシリカ含有ゴム組成物の収縮率が減少することが分かった。官能化ナノ粒子は、シリカ組成物中に、全組成の約50重量%以下、特には、約40重量%以下、または約30重量%以下、配合することができる。
【0072】
<タイヤのゴム>
ナノ粒子を有するゴム配合物の1つの適用例として、タイヤのゴム処方が挙げられる。
【0073】
ナノ粒子を含む加硫可能なエラストマー組成物は、シリカ、カーボンブラック、またこれら2つの混合物を含む補強性充填剤、加工助剤及び/またはカップリング剤、硬化剤、組成物の十分な硬化に有効な量の硫黄と共に、ゴムとナノ粒子組成物を混合して調製される。
【0074】
上記のナノ粒子と共に有用なゴムの例として、共役ジエン重合体、共役ジエン単量体とモノビニル芳香族単量体の共重合体または三元重合体が挙げられる。これらは、トレッドストック配合物中のゴム100部として使用してもよいし、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物等の、従来のトレッドストックゴムと混合してもよい。かかるゴムは当業者に周知であり、該ゴムとしては、合成イソプロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素エラストマー、エチレンアクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン三元重合体(EPDM)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エピクロロヒドリンゴム、塩化ポリエチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水添ニトリルゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレンゴムが挙げられる。
【0075】
加硫可能なエラストマー組成物に使用可能な補強性シリカ充填剤の例としては、湿式シリカ(ケイ酸水和物)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、及びケイ酸カルシウムが挙げられる。他の好適な充填剤としては、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。これらの中でも、湿式プロセスによる沈降アモルファスシリカ水和物が、好適な例である。シリカは、エラストマー100部(phr)に対して1から約100部の量、特には、約5から約80 phr、または約30から約80 phrの量で使用することができる。有用な上限の範囲は、この種の充填剤によってもたらされる粘度の高さによって、制限される。市販されている使用可能なシリカとしては、PPG Industries社(ペンシルバニア州ピッツバーグ)で製造されたHiSil(登録商標)190、HiSil(登録商標)210、HiSil(登録商標)215、HiSil(登録商標)233及びHiSil(登録商標)243が挙げられるが、これらに限定されるものではない。DeGussa社(例えば、VN2, VN3)、Rhone Poulenc社(例えば、Zeosil(登録商標)1165MP0)及びJ. M. Huber社から販売されている、多種の有用な市販等級のシリカも使用可能である。
【0076】
シリカ含有ゴム組成物中に表面官能化ナノ粒子を含ませることで、このようなシリカ含有ゴム組成物の収縮率が減少することが分かった。官能化されたナノ粒子は、シリカ組成物内に、全組成の30重量%以下、特には、約40重量%以下、または約50重量%以下の濃度で配合してもよい。
【0077】
ゴムには、全ての形態のカーボンブラックを配合することができ、任意にシリカを添加することができる。カーボンブラックは、1から100 phrの範囲の量で存在させることができる。カーボンブラックとしては、一般的に利用可能な、市販製品のカーボンブラックの如何なるものをも挙げることができ、例えば、表面積が20 m2/g以上又は35 m2/g以上で200 m2/g以下、あるいはそれ以上のものが挙げられる。有用なカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックが挙げられる。上記カーボンブラックの2種以上の混合物を、カーボンブラック組成物の調製に使用できる。特に好適なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aで規定されたN-110、N-220、N-339、N-330、N-352、N-550、N-660である。
【0078】
クレイ、タルク、アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム及びマイカのような鉱物系充填剤等のある種の充填剤を追加で使用することができる。前記の追加の充填剤の使用は任意であり、約0.5 phrから約100 phrの量で使用可能である。
【0079】
シリカとゴムを組み合わせる際に使用されるものとして、多くのカップリング剤及び親和剤が知られている。シリカベースのカップリング剤及び親和剤としては、例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75)のように、ポリスルフィドブリッジ内に2から8個の硫黄原子を含むトリアルコキシオルガノシランポリスルフィド等のポリスルフィド成分又は構造を含有するシランカップリング剤、並びに、オクチルエトキシシラン及びヘキシルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランが挙げられる。
【0080】
例えば、硬化剤、活性剤、遅延剤及び促進剤、オイル等の加工添加剤、粘着付与樹脂等の樹脂、可塑剤、顔料、追加の充填剤、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、及び素練り促進剤などの通常使用される多様な添加材料と、種々の加硫可能な重合体とを混合するような、ゴム配合の分野で一般的に知られる方法によって、ゴム組成物が調製されることは、当業者であれば容易に理解できる。当業者に知られるように、硫黄加硫可能な、及び硫黄で加硫された材料(ゴム)の使用目的によって、上記の添加剤を選択して、従来の量で使用する。
【0081】
<エンジニアリングプラスチック及びその他>
同様に、ナノ粒子を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン及びポリイミド等の通常のプラスチック材料に添加して、例えば、衝撃強度、引張強度、制動特性を向上させることができる。
【0082】
当然に、本発明のナノ粒子は、ナノ粒子の他の既存の適用例にも好適であり、他の適用例としては、ドラッグデリバリー及び輸血のような医療分野、量子コンピューター及びドットのような情報技術、航空宇宙研究、オイル精製及び潤滑剤のようなエネルギー分野が挙げられる。
【0083】
<エンジンマウント>
このようなゴムの他の適用例としては、エンジンマウントやホース(例えば空調のホース)等の優れた制動特性を要する状況が挙げられる。高い機械強度、優れた制動特性及び強いクリープ耐性を有するゴム配合物が、エンジンマウントの製造において要求される。エンジンマウントにおいては、その使用期間のほとんどで密封された熱い箇所に置かれるため、ゴムは非常に良好な特性を有する必要がある。選択したゴムの処方内でナノ粒子を使用することで、ゴム配合物の特性を改善することができる。
【0084】
ここで、本発明を、非制限的な実施例を用いて説明する。下記の実施例及び表は例示の目的のみで示すものであり、制限的な意味で理解されるものではない。
【実施例】
【0085】
隔壁ライナーと穿孔した王冠キャップとで密封した、0.8リットルの窒素パージしたガラス瓶を、下記の例の反応容器として使用した。また、1,3−ブタジエン(ヘキサン中22重量%)、スチレン(ヘキサン中33重量%)、ヘキサン、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.60 M)、2,2−ビス(2'−テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.60 M、水素化カルシウム上で保存)及びBHTのヘキサン溶液を使用した。市販試薬は、Aldrich社及びGelest社(ペンジルバニア州モリスビル)より購入し、モレキュラーシーブ(3Å)で乾燥させた。
【0086】
<実施例1:4-[2-トリクロロシリル]エチルピリジンで官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、62 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約1時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。1日後、39 gの33重量% スチレンを加え、一晩撹拌した。2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えた。約3時間後、1.5 mLの17.5% 4−[2−トリクロロシリル]エチルピリジンを、重合体の溶液(セメント)に添加し、一晩撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。
【0087】
図1に示すように、粒子サイズをSEM観察による数平均法で計測した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ58.4/3.1/38.5であった。4−[2−トリクロロシリル]エチルピリジン官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、約0.43%であった。
【0088】
<実施例2:9−ビニルカルバゾールで官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、62 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約1時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。1日後、40 gの33重量% スチレンを加えた。約6時間後、2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えて一晩撹拌した。30 mLの0.1M 9−ビニルカルバゾールを、重合体の溶液(セメント)に添加し、2日間撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ58.4/3.1/38.5であった。9−ビニルカルバゾール官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、0.95%未満であった。
【0089】
<実施例3:1−ビニルイミダゾールで官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、72 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約1時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。1日後、38 gの33重量% スチレンを加えた。約6時間後、2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えて一晩撹拌した。30 mLの0.1 M 1−ビニルイミダゾールを、重合体の溶液(セメント)に添加して2日間撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ60/3/37であった。1−ビニルイミダゾール官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、0.43%未満であった。
【0090】
<実施例4:p−ジエチルアミノスチレンで官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、62 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約1時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。1日後、30 gの33重量% スチレンを加えた。約3時間後、2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えて一晩撹拌した。2 mLのp−ジエチルアミノスチレンを、重合体の溶液(セメント)に添加して1日間撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ56/4/40であった。p−ジエチルアミノスチレン官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、約3%であった。
【0091】
<実施例5:テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]で官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、62 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約1時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。1日後、40 gの33重量% スチレンを加えた。約3時間後、2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えて一晩撹拌した。16 mLの0.1 M テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]を、重合体の溶液(セメント)に添加して一晩撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ58.4/3.1/38.5であった。テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、約1.95%であった。
【0092】
<実施例6:N-ビニルカルバゾールで官能化されたナノ粒子>
45 gのヘキサン、68 gの34重量% スチレン及び2.5 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.4 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約2時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び111 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加し、一晩撹拌した。次に、40 gの33重量% スチレンを加えた。約2時間後、2 mLのジビニルベンゼン(DVB)を反応器に加えて3時間撹拌した。40 mLの0.1 M N−ビニルカルバゾールを、重合体の溶液(セメント)に添加して2日間撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。粒径は、約50 nmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ60/3/37であった。N−ビニルカルバゾール官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、約0.95%であった。
【0093】
<実施例7:テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]で官能化されたナノ粒子>
49 gのヘキサン、60 gの34重量% スチレン及び9 mLの5% Stereon 730AC(ポリスチレン−b−ポリブタジエン:スチレン30.6%、ビニル8.8%、Mn 134 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、室温で、1.6 mLの1.4 M sec−ブチルリチウムを反応器に投入した。約12時間後、0.1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、14 gの34重量% スチレン及び24 gの22重量% 1,3−ブタジエンを添加した。約2時間後、17 gの33重量% スチレンと、44 gの22重量% 1,3−ブタジエンを追加で添加した。1日撹拌した後、15 mLの0.1 M テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]を、重合体の溶液(セメント)に添加して一晩撹拌した。セメントをイソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。
【0094】
図2に示すように、SEM観察での数平均法により、粒径を計測した。粒径は、約100 nmであった。スチレン/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ74/26であった。テトラキス[(N-(1-エチル)-2-ピロリドン)-ジメチルシロキシ]官能基の重量パーセントは、全ナノ粒子組成物を基準として、約2%であった。
【0095】
<実施例1A:最初にコアを形成した非官能性のナノ粒子>
300 gのヘキサン、20 gの33重量% スチレン及び5 mLの10% ポリスチレン−ポリブタジエンジブロック(スチレン含量24.2%、ビニル9.2%およびMn 67 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、反応器に1 mLのDVB、2 mLの1.6 M ブチルリチウム及び1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを投入した。約10分後、30 gの22重量% 1,3-ブタジエン及び2 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを添加した。室温で4時間経過後、重合体の溶液(セメント)をイソプロパノールで停止させ、イソプロパノール中で凝集させ、真空乾燥した。
【0096】
図3に示すように、SEM観察での数平均法により、粒径を計測した。粒径は、約0.6−0.8 μmであった。スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、官能化していない粒子の重量を基準として、それぞれ46.8/6.4/46.8であった。
【0097】
<実施例2A:PEGで官能化されたシェルを有する粒子の合成>
300 gのヘキサン、20 gの33重量% スチレン及び5 mLの10% ポリスチレン−ポリブタジエンジブロック(スチレン含量24.2%、ビニル9.2%およびMn 67 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、反応器に1 mLのDVB、2 mLの1.6 M ブチルリチウム及び1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを投入した。約10分後、30 gの22重量% 1,3-ブタジエン及び2 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを添加した。室温で4時間経過後、5 mLのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG−EO2, Mn=526 g/mol)のストック溶液をセメントに30分間で添加した。PEG−EO2(1 M)のストック溶液はトルエンに溶解して調製し、モレキュラーシーブで処理した。溶液の色を漂白した後、粒子をイソプロパノールで凝集させ、真空乾燥した。製品の重量は、実施例1Aで合成した非官能性の粒子と比較して、約15%増加していた。粒径は約0.6−0.8μmであった。スチレン/DVB/BD/PEG粒子の重量分布は、それぞれ39.5/5.3/39.5/15.7であった。
【0098】
<実施例3A:PDMSで官能化されたシェルを有する粒子の合成>
300 gのヘキサン、20 gの33重量% スチレン及び5 mLの10% ポリスチレン−ポリブタジエンジブロック(スチレン含量24.2%、ビニル9.2%およびMn 67 kg/モル)を反応器に添加した。次いで、反応器に1 mLのDVB、2 mLの1.6 M ブチルリチウム及び1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを投入した。約10分後、30 gの22重量% 1,3-ブタジエン及び2 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを添加した。室温で4時間経過後、5 mLのヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)のストック溶液をセメントに約1時間で添加した。粒子をイソプロパノールで凝集させ、真空乾燥した。D3のストック溶液(2 M)は、ヘキサンに溶解して調製し、モレキュラーシーブで処理した。製品の重量は、実施例1Aで合成した非官能性の粒子と比較して、約6.7%増加していた。粒径は約0.6−0.8μmであった。スチレン/DVB/BD/D3粒子の重量分布は、それぞれ34.6/4.7/34.6/26.1であった。
【0099】
<実施例4A:PPOで官能化されたシェルを有する粒子の合成>
300 gのヘキサン、20 gの33重量% スチレン及び5 mLの10% ポリスチレン−ポリブタジエンジブロックを反応器に添加した。次いで、反応器に1 mLのDVB、2 mLの1.6 M ブチルリチウム及び1 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを投入した。約10分後、30 の22重量% 1,3-ブタジエン及び2 mLの1.6 M 2,2'−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを添加した。室温で4時間経過後、5 mLのポリ(プロピレンオキシド)ジグリシジルエーテル(PPO−EO2、Mn=640 g/mol)のストック溶液を約40分間でセメントに投入した。PPO−EO2のストック溶液(1 M)は、トルエンに溶解して調製し、モレキュラーシーブで処理した。粒子をイソプロパノールで凝集させ、真空乾燥した。製品の重量は、実施例1Aで合成した非官能性の粒子と比較して、約20%増加していた。粒径は約0.6−0.8μmであった。スチレン/DVB/BD/PPO粒子の重量分布は、それぞれ38.2/5.2/38.2/18.4であった。
【0100】
<実施例1B:最初にコアを形成した非官能性のナノ粒子の合成>
0.8リットルの窒素パージしたガラス瓶に300 gのヘキサン、20 mLのTHF、20 gの33重量% スチレン、10 mLの10% PS−PBジブロック(S730AC)、及び0.6 mLの50重量% DVBを投入した。反応器に0.5 mLの1.6 M ブチルリチウムを投入した。5分以内に、5.5 mLの50重量% DVBを加えて、室温で撹拌した。30分後に20 gの22重量% 1,3-ブタジエンと1 mLの1 M N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を投入した。室温で1日間撹拌した後、セメントをイソプロパノール(IPA)中で凝集させ、真空乾燥した。
【0101】
スチレン/DVB/BD粒子の重量分布は、それぞれ49/18/33であった。
【0102】
<実施例2B.ヒマシ油のブラシ(シェル)を有するSBRナノ粒子の合成>
0.8リットルの窒素パージしたガラス瓶に300 gのヘキサン、20 mLのTHF、20 gの33重量% スチレン、10 mLの10% PS−PBジブロック(S730AC)、及び0.6 mLの50重量% DVBを投入した。反応器に0.5 mLの1.6 M ブチルリチウムを投入した。5分以内に、5.5 mLの50重量% DVBを加えて、室温で30分間撹拌した。次いで、20 gの22重量% 1,3−ブタジエンと1 mLの1 M N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を投入した。室温で1日間撹拌した後、6 mLのヒマシ油グリシジルエーテル(ヘキサン中10重量%)を加えた。4時間後、セメントをIPA中で凝集させ、真空乾燥した。
【0103】
スチレン/DVB/BD/COGE粒子の重量分布は、それぞれ48/17/32/3であった。
【0104】
<ゴム配合例9−24>
表1及び2は、一般的なカーボンブラック及びシリカ組成の処方を示している。例8は、表1の処方に従って配合した参照例である。SBR重合体のうち10 phr(ゴム100重量部につき)を実施例1−7のナノ粒子で置換した以外は表1の処方に従って、例9−15を配合した。例16は、表2の処方に従って配合した参照例である。SBR重合体のうち10 phr(ゴム100重量部につき)を実施例1−7のナノ粒子で置換した以外は表2の処方に従って、例17−23を配合した。10 phrのナノ粒子は、カーボンブラック充填組成物では5.7重量%に相当し、シリカ充填組成物では、4.7重量%に相当した。表3及び4は、官能化ナノ粒子の特性及び配合物の性質の概要を示している。
【0105】
【表1】

Firestone Polymers社のHX263(商品名)(スチレン23.8%、ビニル13%、シス35%、トランス52%、及びMw 261kg/モル、Mw/Mn 2.30)
【0106】
【表2】

FirestonePolymers社のHX263(商品名)(スチレン23.8%、ビニル13%、シス35%、トランス52%、及びMw 261kg/モル、Mw/Mn 2.30)
【0107】
【表3】

* K'及びK''は、動的圧縮モジュラスである。
【0108】
【表4】

【0109】
<ゴム配合例5A−9A>
表1Aは、一般的なシリカ組成物の処方を示している。下記の例9Aは、表1Aに記載されたシリカ処方を使用する参照例である。SBR重合体の15 phrを実施例1A−4Aのナノ粒子を用いて置換した以外は表1Aの処方に従って、例5A−8Aを配合した。15 phrのナノ粒子は、シリカ充填組成物の7重量%に相当する。表2Aは、配合物の性質の概要を示している。
【0110】
【表5】

Firestone Polymers社のHX263(商品名)(スチレン23.8%、ビニル13%、シス35%、トランス52%、及びMw 261kg/モル、Mw/Mn 2.30)
【0111】
【表6】

【0112】
<例3B−5B:ゴムの配合>
実施例2Bで述べたようにして、ヒマシ油ブラシを有するナノ粒子を合成し、シリカ充填剤と共にSBRゴムマトリクスに配合した。ナノ粒子を含まない例、官能化されていないナノ粒子を含有する例も併せて配合した。
【0113】
例3Bでは、100 phrのHX263 SBRのマトリクスをコントロールとして用いた。例4Bでは、SBRマトリクス重合体の15部(全配合物の7重量%)を実施例1Bで合成した官能化されていないナノ粒子で置換した。例5Bでは、SBRマトリクス重合体の15部(全配合物の7重量%)をヒマシ油シェル(ブラシ)を有するナノ粒子で置換した。
【0114】
表1Bは、ゴム及びシリカ配合処方を示している。表2Bは、配合物の性質の概要を示している。
【0115】
【表7】


Firestone Polymers社のHX263(商品名)(スチレン23.8%、ビニル13%、シス35%、トランス52%、及びMw 261kg/モル、Mw/Mn 2.30)
【0116】
【表8】

【0117】
ここに記載された発明の詳細は、発明の最良の形態を示すものであり、いくつかの実施例を示すことで、当業者が本発明を実施し得るように記述したものである。本発明の特許範囲は、請求項により定義され、当業者にとって実施可能な他の形態を包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に重合体のシードを準備する工程であって、該シードが架橋剤で架橋されてナノ粒子のコアを形成するモノビニル単量体を含み、前記コアの平均直径が約5ナノメートルから約10,000ナノメートルであり、かつ、前記コアが活性末端を有する重合体鎖を有する、工程、
安定化剤を添加して、前記シードを安定化させ、溶液から前記シードが沈殿するのを防止する工程、及び
前記コアの活性末端上にシェル種をグラフト化及び/または重合させて、ナノ粒子のシェルを形成する工程
を含む、コア−シェルナノ粒子の合成方法。
【請求項2】
前記安定化されたシードを、リビング分散重合によって作製する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モノビニル単量体を開始剤で重合させ、得られた重合体を多ビニル単量体架橋剤によって架橋することによって、前記シードを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、アニオン開始剤によってシェル種を重合させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記シェル種が、あらかじめ形成された重合体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤とアニオン開始剤を、炭化水素溶媒、モノビニル芳香族単量体、及び安定化剤に、1回の投与で添加する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記シードの合成に乳化重合を使用しないことを条件とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、炭化水素溶媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
さらに、官能性停止剤を添加して、シェルの活性末端を停止させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記コアの平均直径が、約50ナノメートルから約125ナノメートルである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記シェル種が、ポリビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミン、ポリ(カーボネート)、ポリ(エポキシド)、ポリ(シロキサン)、及びポリビニルアルコールよりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記シェル種が、O、N、S、P、ハロゲン、Ti及びSiからなる群より選択されるヘテロ原子種を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記シェル種が、官能性オリゴマー若しくは高分子、またはヘテロ原子を含有する官能性停止剤である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記シェル種が、合成オイル、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたは植物油である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
請求項1に従ってコア−シェルナノ粒子を製造する工程;及び
前記コア−シェルナノ粒子を加硫可能なゴムマトリクスに添加する工程
を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1に従ってコア−シェルナノ粒子を製造する工程;
前記コア−シェルナノ粒子をゴム組成物に添加する工程;
前記ゴム組成物をタイヤトレッドへと成形する工程;及び
前記タイヤトレッドを使用したタイヤを構築する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項17】
架橋剤で架橋されたモノビニル単量体のコア種を含む重合体のシードより形成された、平均直径が約5ナノメートルから約10,000ナノメートルのコアと;
コアに付着したシェル種を含有し、実質的に架橋されていないシェルと
を含む、コア−シェルナノ粒子。
【請求項18】
架橋されたシェル種が約10%未満である、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項19】
安定化剤の残基を含む、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項20】
前記コアがリビング分散重合により形成されている、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項21】
前記シェル種が、ヘテロ原子を含有する単量体を含む、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項22】
前記コアの平均直径が、約50ナノメートルから約125ナノメートルである、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項23】

さらに、前記シェル中に官能基を有する、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項24】
前記コアのTgが、前記シェルのTgより高い、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項25】
前記シェル種が、ポリビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミン、ポリ(カーボネート)、ポリ(エポキシド)、ポリ(シロキサン)及びポリビニルアルコールよるなる群より選択される、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。
【請求項26】
前記シェル種が、合成オイル、脂肪酸エステル、トリグリセリド、または植物油である、請求項17記載のコア−シェルナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514117(P2012−514117A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544583(P2011−544583)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/069680
【国際公開番号】WO2010/078320
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】