最小CDRを有する抗体を産生するトランスジェニック動物
トランスジェニック動物が提供される。ある実施形態において、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワークをコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子に操作可能に連結されるb)i.機能遺伝子のCDRと同じ2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域の軽鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワークをそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含むゲノムを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は2009年8月13日に出願された米国仮出願第61/274,319号の利益を主張し、該仮出願は全体としてあらゆる目的で参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗体は特異抗原に結合するタンパク質である。一般に、抗体は標的に特異的であり、免疫エフェクター機構の媒介能を有し、ならびに長い血清半減期を有する。このような性質により、抗体は強力な治療になる。モノクローナル抗体は、癌、炎症、および心血管疾患を含む様々な状態を治療するために治療で使用される。現在、20を上回る治療抗体製品が市場に存在し、数百が開発中である。
【0003】
新規な抗体および該抗体の作製方法に一定の需要が存在する。
【発明の概要】
【0004】
トランスジェニック非ヒト動物が提供される。ある実施形態において、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワークをコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子と操作可能に連結されるb)i.該機能遺伝子のCDRと同じ2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域の軽鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワークをそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含むゲノムを含む。複数の該偽遺伝子軽鎖可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の転写可変領域に提供する。
【0005】
さらに、または上記の代替として、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸(例えば軽鎖と同じ2から5のアミノ酸)から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワークをコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子と操作可能に連結されるb)i.機能遺伝子と同じ2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域の重鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である重鎖フレームワークをそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含みうる。複数の該偽遺伝子重鎖可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の転写可変領域に提供する。
【0006】
トランスジェニック動物の作製方法および使用方法ならびに該方法により作製される抗体組成物も提供される。
【0007】
特許または出願の書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を添付した本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて事務所から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の欠失戦略を模式的に説明する。
【図2】図2は、内在性ニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子の欠失後に、可変領域をコードする偽遺伝子の合成アレイをニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に付加する戦略を模式的に説明する。
【図3】図3は可変領域をコードする偽遺伝子のアレイを構築する戦略を模式的に説明する。
【図4】図4は可変領域をコードする偽遺伝子のアレイを挿入するベクターの構築戦略を模式的に説明する。
【図5】図5はニワトリIgL遺伝子座にattP部位を配置する戦略を模式的に説明する。
【図6】図6はニワトリIgLのノックアウトおよびノックイン・クローンのPCR分析結果を示す。
【図7】図7はノックインの作製戦略を模式的に説明する。
【図8】図8Aおよび図8Bは、CDR1の配列番号:1〜6についての遺伝子変換事象例を説明する。
【図9】図9は多様な重鎖および軽鎖配列の発現レベルを示す表である。
【図10】図10は、長いインキュベーション時間後に多様な抗体の安定性を示すグラフである。
【図11】図11はE6(軽鎖)の配列番号:53および54のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。
【図12】図12はC3(重鎖)の配列番号:55および56のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。
【0009】
定義
「決定する」、「測定する」、「評価する」、「査定する」および「検定する」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられ、任意の測定形態を指し、要素が存在するか否かの決定も含む。これらの用語は定量的および/または定性的な決定の両方を含む。査定は相対的でも絶対的でもよい。「の存在を決定する」とは、存在する何物かの量の決定および何物かが存在するか否かの決定を含む。
【0010】
「遺伝子」という用語は、プロモーター領域、コード配列、および3’UTRを含む核酸配列を指す。
【0011】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。
【0012】
「リーダー配列」とは、タンパク質のN末端部に存在し、細胞からタンパク質の成熟形態の分泌を促進するアミノ酸配列である。シグナル配列の定義は機能的配列である。細胞外タンパク質の成熟形態はシグナル配列を欠失し、該配列は分泌過程で切断される。
【0013】
「核酸」という用語は、DNA、RNA、一本鎖または二本鎖およびこれらの化学修飾を包含する。「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。
【0014】
「非ヒト」動物は、ヒトでない種の任意の動物を指す。
【0015】
「子孫」または「子」という用語は、特定の動物に由来し伝わる全ての未来世代を指す。従って、子孫のF1、F2およびF3世代等がこの定義に含まれるように、あらゆる継続世代の子孫がこの中に含まれる。
【0016】
「トランスジェニック動物」という語句は、外来核酸(即ち、動物に固有でない組み換え核酸)を含む細胞を含む動物を指す。外来核酸は動物の全細胞または動物の一部だが全てではない細胞に存在しうる。外来核酸分子は、「導入遺伝子」と呼ばれ、1つまたは多数の遺伝子、cDNA等を含みうる。導入遺伝子を受精卵母細胞または初期胚由来の細胞に挿入することにより、得られるトランスジェニック動物は、完全トランスジェニックでもよく、外来核酸をその生殖細胞系列に安定に伝えることができる。あるいは、外来核酸を含む組み換え細胞または組織を動物に移入、例えば移植することにより、外来核酸が導入され、部分トランスジェニック動物を作製してもよい。あるいは、トランスジェニック動物は、遺伝的に改変された体細胞由来の核移植により、または胚性幹細胞もしくは始原生殖細胞などの遺伝的に改変された多機能性細胞の移植により作製してもよい。
【0017】
「イントロン」という用語は、大半の真核生物において、多数の遺伝子配列の中間に見出されるDNAの配列を指す。これらのイントロン配列は転写されるが、mRNAがタンパク質に翻訳される前にmRNA前駆体転写産物から除去される。このイントロン除去の過程はイントロンの両側にある配列(エキソン)の同時スプライシングにより起こる。
【0018】
「操作可能に連結する」という用語は、一方の機能が他方に影響を受けるような一本鎖核酸断片上の核酸配列の関連性を指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現に作用できる(即ち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、プロモーターは該コード配列と操作可能に連結する。同様に、イントロンがコード配列と操作可能に連結する場合、イントロンはmRNAからスプライシングされ、コード配列の発現を提供する。遺伝子変換に照らして、2つの核酸配列は、一方の配列が遺伝子変換により他方に配列を「供与」できる場合に、操作可能に連結する。一方が遺伝子変換を介して他方に配列を供与できるという点で2つの配列が非連結である場合、供与する配列は他方の上流または下流であってもよく、2つの配列は、即ち他の介在遺伝子が存在しないという点で、互いに近接してもよい。「非連結」とは関連する遺伝要素が互いに密接に関連しないことを意味し、一方の機能が他方に影響を及ぼさない。
【0019】
「上流」および「下流」という用語は転写の方向に関して用いられる。
【0020】
「偽遺伝子」という用語は、開始コドンおよび/または終止コドンを含んでも含まなくてもよいオープン・リーディング・フレームを含む非転写核酸領域を記載するために用いられる。アミノ酸配列は、オープン・リーディング・フレームのヌクレオチド配列がコンピュータで翻訳され、アミノ酸配列を作成できるという意味で、偽遺伝子により「コード」されうる。重鎖および軽鎖の免疫グロブリン遺伝子座に照らして、偽遺伝子は、プロモーター領域、組み換えシグナル配列またはリーダー配列を含まない。
【0021】
「ホモ接合性」という用語は、同一の対立遺伝子が相同染色体上の同じ遺伝子座にあることを示す。対照的に、「ヘテロ接合性」とは、異なる対立遺伝子が相同染色体上の同じ遺伝子座にあることを示す。トランスジェニック動物は導入遺伝子についてホモ接合性でもヘテロ接合性でもよい。
【0022】
遺伝子に関して、「内在性」という用語は、遺伝子が細胞に固有であることを示し、即ち、遺伝子が非改変細胞ゲノムの特定の遺伝子座に存在することである。内在性遺伝子は(自然界で見出されるような)野生型細胞の該遺伝子座に存在する野生型遺伝子でありうる。内在性遺伝子は、野生型遺伝子と同じゲノムの遺伝子座に存在する場合に改変内在性遺伝子でありうる。このような改変内在性遺伝子の例は、外来核酸が挿入される遺伝子である。内在性遺伝子は核ゲノム、ミトコンドリアゲノム等に存在しうる。
【0023】
「構築物」という用語は、特異的ヌクレオチド配列の発現目的で作製された、または他の組み換えヌクレオチド配列の構築に使用される組み換え核酸、一般に組み換えDNAを指す。構築物はベクターまたはゲノムに存在しうる。
【0024】
「組み換え」という用語は、宿主細胞に本来存在しないポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。組み換え分子は、天然に存在しない方法でともに連結される2以上の天然の配列を含みうる。組み換え細胞は組み換えポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。細胞が組み換え核酸を受容する場合、該核酸は細胞にとって「外来性」である。
【0025】
「選択可能なマーカー」という用語は、宿主で発現できるタンパク質であって、導入核酸またはベクターを含む宿主を容易に選別できるタンパク質を指す。選択可能なマーカーの例として、抗菌剤(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、またはクロラムフェニコール)への耐性を与えるタンパク質、宿主細胞に栄養的利益などの代謝優位を与えるタンパク質、および細胞に機能性または表現型の優位(例えば細胞分割)を与えるタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いられる「発現」という用語は、ポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて産生される過程を指す。該過程は転写および翻訳の両方を含む。
【0027】
細胞への核酸配列の挿入に照らして、「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、または「形質転換」または「形質導入」を意味し、真核細胞または原核細胞への核酸配列の取り込みについての言及を含む。該核酸配列は細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、またはミトコンドリアDNA)に取り込まれ、自律レプリコンに変換され、または一過性に発現する(例えば、トランスフェクションされたmRNA)。
【0028】
1つの遺伝子座を他で置換する内容において、「置換する」という用語は一段階手順または多段階手順を指す。
【0029】
「コード配列」という用語は、例えばインビボで、適切な調節要素の制御下にある場合、一度転写および翻訳されるとタンパク質を産生する核酸配列を指す。本明細書で用いられるコード配列は、連続ORFを有し、またはイントロンもしくは非コード配列の存在により中断されるORFを有しうる。この実施形態において、非コード配列はmRNAからスプライシングされ、成熟mRNAを産生する。偽遺伝子は非転写コード配列を含みうる。
【0030】
「と逆方向の」という用語は、異なる鎖上にあるコード配列を指す。例えば、転写領域が偽遺伝子に対して逆方向であると記載されるならば、転写領域によりコードされるアミノ酸配列は上鎖または下鎖によりコードされ、偽遺伝子によりコードされるアミノ酸配列は転写領域に対して他鎖によりコードされる。図8で説明するように、コード配列の方向は矢印により示されうる。
【0031】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。これらの用語は当業者によく理解されており、抗原に特異的に結合する1以上のポリペプチドから成るタンパク質を指す。抗体の一形態は抗体の基本的な構造単位を構成する。この形態は四量体であり、2つの同一な抗体鎖対から成り、各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖の可変領域は共に抗原への結合を担い、定常領域は抗体のエフェクター機能を担う。
【0032】
認識される免疫グロブリン・ポリペプチドは、カッパおよびラムダの軽鎖ならびにアルファ、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミューの重鎖または他の種の等価物を含む。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸)は、NH2−末端に約110アミノ酸の可変領域およびCOOH−末端にカッパまたはラムダの定常領域を含む。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは約446アミノ酸)は同様に可変領域(約116アミノ酸)および前記の重鎖定常領域の1つ、例えばガンマ(約330アミノ酸)を含む。
【0033】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、抗体または任意のアイソタイプの免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体断片を含み、Fab、Fv、scFv、およびFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むがこれらに限定されない。抗体は、例えば放射性同位体、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光タンパク質等で検出可能な程度に標識されうる。抗体は、特異的な結合対のメンバー、例えばビオチン(ビオチン−アビジン特異的結合対のメンバー)などの他の部分にさらに結合しうる。抗体は、ポリスチレンプレートまたはビーズ等を含むがこれらに限定されない固体支持体と結合してもよい。また、Fab’、Fv、F(ab’)2、およびまたは抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片、およびモノクローナル抗体も該用語により包含される。
【0034】
抗体は、例えばFv、Fab、および(Fab’)2および二価(即ち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))を含む様々な他の形態、ならびに一本鎖(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879−5883 (1988) and Bird et al., Science, 242, 423−426 (1988)、参照により本明細書に組み入れられる)に存在しうる(一般に、Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15−16 (1986)を参照)。
【0035】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は3つの超可変領域により分断される「フレームワーク」領域(FR)から成り、該超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(Lefranc et al, IMGT, the international ImMunoGeneTics information system. Nucleic Acids Res. 2009 vol. 37 (Database issue): D1006−12. Epub 2008 Oct 31を参照;imgt.orgのワールドワイド・ウェブサイトを参照し、以下本明細書で「IMGTシステム」と称する)。本明細書で論議される全ての抗体アミノ酸配列の付番はIMGTシステムに従う。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は相対的に種内で保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成する軽鎖および重鎖を合わせたフレームワーク領域であり、CDRを位置付け整列するのに役立つ。CDRは主として抗原のエピトープへの結合を担う。
【0036】
キメラ抗体とは、軽鎖および重鎖の遺伝子が通常、遺伝子操作により、異なる種に属する抗体の可変領域および定常領域の遺伝子から構築された抗体である。例えば、ニワトリまたはウサギのモノクローナル抗体に由来する遺伝子の可変部は、ガンマ1およびガンマ3などのヒト定常部に連結されうる。治療用キメラ抗体の例は、ニワトリまたはウサギの抗体に由来する可変または抗原結合ドメインおよびヒト抗体に由来する定常またはエフェクタードメインから成るハイブリッドタンパク質である(例えば、A.T.C.C.寄託番号CRL 9688の細胞により作製される抗Tacキメラ抗体)が、他の哺乳動物種が用いられてもよい。
【0037】
本明細書で用いられるように、「ヒト・フレームワーク」という用語は、ヒト抗体のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワークを指し、例えば抗体のヒト生殖細胞系配列のアミノ酸配列である。ある場合では、ヒト・フレームワークは完全にヒト・フレームワークであってもよく、この場合、フレームワークはヒト抗体、例えば生殖細胞系抗体のアミノ酸配列と同一の該配列を有する。
【0038】
本明細書で用いられるように、「ヒト化抗体」または「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒト抗体に由来し、対応して配置されたアミノ酸で置換された(例えば、フレームワーク領域、定常領域またはCDR内に)1以上のアミノ酸を含む非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体は、同じ抗体の非ヒト化版と比較して、ヒト宿主に免疫応答の低下を生じると予想される。
【0039】
本方法により設計および産生されるヒト化抗体は、抗原結合または他の抗体機能に実質的に影響を及ぼさない保存アミノ酸置換をさらに有しうると理解される。保存置換とは、下記の群から等の組み合わせが意図される:gly, ala; val, ile, leu; asp, glu; asn, gln; ser, thr; lys, arg; and phe, tyr。同じ群に存在しないアミノ酸は、「実質的に異なる」アミノ酸である。
【0040】
「特異的結合」という用語は、異なる被分析物の均一混合物に存在する特定の被分析物に選択的に結合する抗体の能力を指す。ある実施形態において、特異的結合の相互作用は、試料中の所望する被分析物と所望しない被分析物とを識別し、ある実施形態では約10から100倍以上(例えば約1000倍または10,000倍を上回る)であろう。
【0041】
ある実施形態において、抗体および被分析物が抗体/被分析物複合体で特異的に結合する場合のこれらの親和性は、10−6M未満、10−7M未満、10−8M未満、10−9M未満、10−9M未満、10−11M未満、もしくは約10−12M未満、またはそれ以下のKD(解離定数)により特徴付けられる。
【0042】
重鎖または軽抗体鎖の「可変領域」は、CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにフレームワーク領域を含む鎖のN末端成熟ドメインである。抗体の重鎖も軽鎖も可変ドメインを含む。全てのドメイン、CDRおよび残基の数は配列アラインメントおよび構造知識に基づいて割り当てられる。フレームワークおよびCDR残基の同定および付番はIMGTシステムにより定義される通りである。
【0043】
VHは抗体重鎖の可変ドメインである。VLは抗体軽鎖の可変ドメインである。
【0044】
本明細書で用いられるように、「単離される」という用語は、単離される抗体に照らして用いられる場合、抗体が精製前に結びつく他の構成要素から少なくとも60%遊離、少なくとも75%遊離、少なくとも90%遊離、少なくとも95%遊離、少なくとも98%遊離、およびさらに少なくとも99%遊離する対象抗体を指す。
【0045】
「治療」、「治療する」などの用語は、哺乳動物、例えば具体的にはヒトまたはマウスのあらゆる疾患または状態のあらゆる治療を言及するために本明細書で用いられ、a)疾患に罹りやすいが未だ疾患と診断されていない被験体に生じる疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を予防すること;b)疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を阻害すること、例えば患者でその進行を停止しおよび/またはその発病または兆候を遅らせること;ならびに/またはc) 疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を緩和すること、例えば状態もしくは疾患および/もしくはその症状を退行させることを含む。
【0046】
「被験体」、「宿主」、「患者」および「個体」という用語は本明細書でほとんど同じ意味で用いられ、診断または治療が望まれる任意の哺乳動物被験体、とりわけヒトを指す。他の被験体は、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含みうる。
【0047】
「天然の」抗体とは、例えばファージディスプレイにより作製された非天然対の抗体とは対照的に、抗体の重鎖および軽鎖免疫グロブリンが多細胞生物の免疫系により自然界で選択された抗体である。このように、ある抗体は任意のウイルス(例えばバクテリオファージM13)に由来する配列を含まない。脾臓、リンパ節および骨髄は、動物で天然の抗体を産生する組織の例である。
【0048】
細胞に核酸配列を挿入する内容において、「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、または「形質転換」または「形質導入」を意味し、真核細胞または原核細胞への核酸配列の取り込みについての言及を含み、該核酸配列は細胞に一過性に存在し、または細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、またはミトコンドリアDNA)に取り込まれ、自律レプリコンに変換されうる。
【0049】
「複数」という用語は、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも5000、または少なくとも10,000または少なくとも50,000以上を指す。ある場合では、複数は少なくとも10から50を含む。他の実施形態においては、複数は少なくとも50から1,000でありうる。
さらなる定義が本開示のいずれかにありうる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
トランスジェニック動物が提供される。ある実施形態において、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成るCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.フレームワーク領域;をコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン遺伝子に操作可能に連結されるb)i.機能遺伝子と同じ2から5の異なるアミノ酸から成るCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域のフレームワーク領域と同一のアミノ酸配列であるフレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン遺伝子座を含むゲノムを含む。複数の該偽遺伝子可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン遺伝子の転写可変領域に提供する。免疫グロブリン遺伝子座は免疫グロブリン軽鎖遺伝子座または免疫グロブリン重鎖遺伝子座でありうる。ある場合では、動物は本明細書に記載する重鎖および軽鎖の両遺伝子座を含みうる。
【0051】
本発明がさらに記載される前に、本発明が特定の記載実施形態に限定されるものでないことが理解されるべきであり、そのようなものとして、無論、変化しうる。本明細書で用いられる専門用語は特定の実施形態を記載する目的のみにあり、限定する意図はないことも理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0052】
値の範囲が提示される場合、明確に他を指示する文脈でない限り、下限の単位の10分の1まで、該範囲の上下限間の各介在値、および該規定範囲における任意の他の規定値または介在値が本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0053】
他に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似または等価な任意の方法および物質が本発明の実施または試験で使用できるが、好ましい方法および物質を以下に記載する。本明細書で言及する全ての刊行物は、引用される刊行物に関連する方法および/または物質を開示し説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形「1つの(a)」、「および」、および「その(the)」は、明確に他を指定する文脈でない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「1つの細胞(a cell)」についての言及は複数の細胞を含み、「1つの候補薬剤」についての言及は1以上の候補薬剤および当業者に知られるその等価物などについての言及を含む。さらに、特許請求の範囲は任意の選択要素を除くように記載してもよいことに留意する。このように、この記述は、請求の範囲の要素の列挙に関連する「専ら」、「唯一の」などの排他的用語の使用、または「否定的」限定の使用について、先行詞として役立つことを意図する。
【0055】
本明細書で論議される刊行物は、本出願の出願日前の開示についてのみ提示される。本明細書において、本発明が先行発明によって該刊行物に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、提示される刊行物の日付は実際の発行日と異なる可能性があり、自主的に確認する必要がありうる。
【0056】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物および特許が参照により組み入れられると具体的および個別的に示されるように、参照により本明細書に組み入れられ、引用される刊行物に関連する方法および/または物質を開示し説明するために参照により本明細書に組み入れられる。任意の刊行物の引用は、出願日前の開示についてであり、本発明が先行発明によって該刊行物に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、提示される刊行物の日付は実際の発行日と異なる可能性があり、自主的に確認する必要がありうる。
【0057】
この開示を読むと、当業者には明らかなように、本明細書に記載および説明される個々の実施形態は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、個別の構成要素、および他の幾つかの実施形態のいずれかの特性と容易に分離または組み合わされうる特性を有する。
列挙するいずれの方法も、列挙される事象順序または論理的に可能な任意の他の順序で実施できる。
【0058】
トランスジェニック動物
上述のように、トランスジェニック動物が提供される。ある実施形態において、動物は一次抗原レパートリーを開発するために遺伝子変換を用いる任意の非ヒト動物であってもよく、このように、動物は多様な異なる動物のいずれでもよい。一実施形態において、動物は、トリ、例えばニワトリもしくはシチメンチョウなどのキジ目の一員、もしくはアヒルもしくはガチョウなどのカモ目の一員、または哺乳動物、例えばウサギなどのウサギ目、もしくはウシ、ヒツジ、ブタもしくはヤギなどの家畜でありうる。特定の実施形態において、トランスジェニック動物は、非齧歯類(例えば、非マウスまたは非ラット)、非霊長類のトランスジェニック動物でありうる。
【0059】
この開示には、合成可変領域のアレイをコードする1以上の導入遺伝子を含むトランスジェニック・ニワトリに関するものもある。多数の動物の免疫グロブリン遺伝子座のヌクレオチド配列は該動物のゲノムの改変方法と同様に知られているため、以下に記載する一般概念は、任意の適切な動物、即ち一次抗原レパートリーを開発するために遺伝子変換を用いる任意の動物に容易に適合しうる。転写される免疫グロブリンの重鎖または軽鎖遺伝子の可変領域と、異なる可変領域を含み操作可能に連結された(上流)偽遺伝子との遺伝子変換による抗体多様性の生成は、例えば、Butler (Rev. Sci. Tech. 1998 17: 43−70), Bucchini (Nature 1987 326: 409−11), Knight (Adv. Immunol. 1994 56: 179−218), Langman (Res. Immunol. 1993 144: 422−46), Masteller (Int. Rev. Immunol. 1997 15: 185−206), Reynaud (Cell 1989 59: 171−83)およびRatcliffe (Dev. Comp. Immunol. 2006 30: 101−118)などの様々な刊行物に記載されている。
【0060】
ある実施形態において、トランスジェニック動物は発現(即ち、転写され、mRNAを産生し、続いて翻訳される)して抗体の軽鎖を産生する機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子、および、機能性軽鎖遺伝子と操作可能に連結される(これはニワトリの場合であり、多数の他の種はそのすぐ上流にある)複数の異なる偽遺伝子軽鎖可変領域を含む。該偽遺伝子の可変領域は、遺伝子変換により(即ち、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域の配列を偽遺伝子可変領域の配列と置換することにより)、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の配列を改変するという点で、機能性免疫グロブリン軽鎖と操作可能に連結される。トランスジェニック動物において、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域と偽遺伝子可変領域との遺伝子変換は、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域の配列をわずか1コドンから可変領域の全長まで改変する。ある場合では、偽遺伝子可変領域は、偽遺伝子の可変領域から少なくとも1つのCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)の配列を機能遺伝子の可変領域内に提供しうる。トランスジェニック動物により産生される抗体の軽鎖は、従って、偽遺伝子可変領域から機能性軽鎖遺伝子の可変領域内に提供されるいずれの配列によってもコードされる。
【0061】
同様に、トランスジェニック動物は、転写および翻訳されて抗体の重鎖を産生する機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子、および該機能性重鎖遺伝子と(例えば、そのすぐ上流で)操作可能に連結される複数の異なる偽遺伝子重鎖可変領域も含みうる。該偽遺伝子の可変領域は、遺伝子変換により、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の配列を改変するという点で、機能性免疫グロブリン軽鎖と操作可能に連結される。トランスジェニック動物において、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域と偽遺伝子可変領域との遺伝子変換は、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域の配列をわずか1コドンから可変領域の全長まで改変する。ある場合では、偽遺伝子可変領域は、偽遺伝子の可変領域から少なくとも1つのCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)の配列を機能遺伝子の可変領域に提供しうる。トランスジェニック動物により産生される抗体の重鎖は、従って、偽遺伝子可変領域から機能性重鎖遺伝子の可変領域内に提供されるいずれの配列によってもコードされる。
【0062】
トランスジェニック動物により産生される抗体は、従って、偽遺伝子可変領域から機能遺伝子の可変領域に提供されるいずれの配列によってもコードされる。異なる配列は動物の異なる細胞に提供されるため、動物の抗体レパートリーは、どの配列が偽遺伝子可変領域から機能遺伝子の可変領域に提供されるかにより決定される。
【0063】
特定の実施形態において、可変領域偽遺伝子によりコードされるフレームワークは、偽遺伝子が操作可能に連結される機能遺伝子のフレームワーク領域とアミノ酸配列で同一である。換言すれば、偽遺伝子によりコードされるFR1領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR1領域と同一であってもよく、偽遺伝子によりコードされるFR2領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR2領域と同一であってもよく、偽遺伝子によりコードされるFR3領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR3領域と同一であってもよく、ならびに偽遺伝子によりコードされるFR4領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR4領域と同一であってもよく、これにより、規定の重鎖および/または軽鎖のフレームワークをもつ抗体を産生できる。
【0064】
特定の実施形態において、可変領域偽遺伝子のフレームワークをコードするヌクレオチド配列は、偽遺伝子が操作可能に連結される機能遺伝子のフレームワークをコードするヌクレオチド配列と同一でありうる。換言すれば、偽遺伝子のFR1領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR1領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、偽遺伝子のFR2領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR2領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、偽遺伝子のFR3領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR3領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、ならびに偽遺伝子のFR4領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR4領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、これにより、規定のヌクレオチド配列をもつ機能遺伝子をもたらす。
【0065】
選択されるフレームワーク配列は、ヒトであってもよく、例えば、ヒト抗体の生殖細胞系配列に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一な配列を有しうることにより、ヒト・フレームワークを含む抗体を産生できる。
【0066】
特定の実施形態において、軽鎖生殖細胞系配列は、A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、およびO8を含むヒトVK配列から選択されるが、これらに限定されない。ある実施形態において、軽鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、およびV5−6から選択される。異なる生殖細胞系配列の記載については、PCT WO 2005/005604を参照のこと。
【0067】
他の実施形態において、重鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、VH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1、およびVH7−81から選択される。異なる生殖細胞系配列の記載については、PCT WO 2005/005604を参照のこと。
【0068】
幾つかの実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列はヒトであってもよく、即ち、ヒト抗体のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列または生殖細胞系配列を含みうる。これらの実施形態において、CDRおよびフレームワークの両方がヒトであってもよい。他の実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列は、ヒトではなく、代わりにヒト配列に少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%以上同一であってもよい。例えば、ヒト配列と比較して、導入され、転写される可変領域は1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸置換を含みうる。特定の実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列は、図11および12に示される可変領域と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%以上同一でありうる。一実施形態において、使用されるフレームワーク配列は、図11および12に示されるフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4または5以上の置換を含む。
【0069】
特定の実施形態において、定常ドメインをコードする領域、イントロンの部分、および機能遺伝子の3’UTRを含む軽鎖遺伝子座の部分は動物に内在性であり、機能遺伝子の可変領域を含む軽鎖遺伝子座の残部、イントロンの残部および偽遺伝子は、該動物に外来性であり、即ち機能性軽鎖遺伝子が作製され、偽遺伝子が遺伝子変換により機能性軽鎖遺伝子に配列を提供できるように組み換えられ、定常ドメイン、一部のイントロンおよび3’UTRに近位で動物に導入される。ある場合では、動物の軽鎖遺伝子座は、操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域を含む。該イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムおよび複数の偽遺伝子軽鎖可変領域に内在性であり、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である。あるいは、定常ドメインをコードする領域もトランスジェニック動物のゲノムに外来性でありうる。
【0070】
同様に、定常領域、イントロン領域の一部、および機能遺伝子の3’UTRを含む重鎖遺伝子座の一部は動物に内在性であり、機能遺伝子の可変ドメインを含む重鎖遺伝子座の残部、イントロンの残部および偽遺伝子は該動物にとって外来性であり、即ち機能遺伝子が作製され、偽遺伝子が遺伝子変換により機能遺伝子に配列を提供できるように組み換えられ、定常ドメイン、一部のイントロンおよび3’UTRに近位で動物に導入される。ある場合では、動物の重鎖遺伝子座は、操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域を含み、該イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムおよび複数の偽遺伝子重鎖可変領域に内在性であり、複数の偽遺伝子重鎖可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である。
【0071】
ある実施形態において、被験体のトランスジェニック動物により産生される抗体は、内在性定常ドメインおよび該動物に外来性である可変ドメインを含みうる。内在性定常領域がこれらの実施形態で使用されうるため、抗体はさらにクラススイッチおよび親和性成熟(動物が正常な免疫系の発達を経ることを可能にする)を経て、正常な免疫応答を開始しうる。特定の実施形態において、トランスジェニック・ニワトリは、IgM、IgYおよびIgAをコードする重鎖遺伝子座に3つの内在性定常領域を有する。B細胞発生の初期段階中、B細胞はIgMを発現する。親和性成熟が進行するにつれて、クラススイッチは定常領域をIgYまたはIgAに変換する。IgYは液性免疫を生体および新生ニワトリの両方に提供し、両ニワトリは卵黄内に沈着される蓄積によって約200 mgのIgYを受容する。IgAは主としてリンパ組織(例えば、脾臓、パイアー斑およびハーダー腺)および卵管で見出される。
【0072】
上述したように、軽鎖遺伝子座の偽遺伝子および機能遺伝子の両可変領域のコードされるフレームワーク領域が互いに同一でありうるのに対し、偽遺伝子の各々の可変領域によりコードされるCDR領域は互いに異なる(即ち、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR1領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR1領域をコードし、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR2領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR2領域をコードし、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR3領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR3領域をコードする)。重鎖遺伝子座についても同様に、偽遺伝子の各々の可変領域によりコードされるCDR領域は互いに異なる。
【0073】
ある場合では、軽鎖可変ドメイン、および/または重鎖可変ドメインによりコードされるCDR領域は、僅か2から5(即ち、2、3、4または5)の異なるアミノ酸残基から成り、この文脈において、「から成る」という用語は、CDR内の各アミノ酸の位置が2から5のアミノ酸残基群から独立して選択される1つのアミノ酸残基により占有されることを意味するつもりである。2〜5アミノ酸から成るCDRの例は本開示の実施例欄に記載される。ある実施形態では、2から5アミノ酸の少なくとも1つはチロシンまたはトリプトファン残基のような巨大アミノ酸であり、2から5アミノ酸の少なくとも1つはアラニン、グリシンまたはセリン残基のような小アミノ酸残基である。
【0074】
CDRは長さが多様でありうる。ある実施形態において、重鎖CDR1は長さ6から12のアミノ酸残基の範囲にあり、重鎖CDR2は長さ4から12のアミノ酸残基の範囲にあり、重鎖CDR3は長さ3から25のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR1は長さ4から14のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR2は長さ2から10のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR3は長さ5から11のアミノ酸残基の範囲にありうるが、これらの範囲外の長さのCDRを有する抗体も想定される。
【0075】
親和性成熟中に遺伝子変換と無関係に起きる突然変異の結果として生じる比較的少数のアミノ酸を除いて(これは、例えばアミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満で起きる)、トランスジェニック動物により産生され得られる抗体は、2から5の異なるアミノ酸のみから成る軽鎖および/または重鎖CDRを有しうる。例示実施形態において、CDRは、チロシンおよびトリプトファンから選択される25%から75%(例えば40%から60%)の巨大アミノ酸、およびアラニン、グリシン、およびセリンから選択される25%から75%(例えば40%から60%)の小アミノ酸と、残り(即ち、アミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満)の他の任意の天然アミノ酸から成る。偽遺伝子の各CDRにおけるアミノ酸の具体的な順序は無作為に作成されうる。
【0076】
軽鎖および/または重鎖遺伝子座に存在する導入偽遺伝子の可変領域数は変化し、特定の実施形態では、5〜30、例えば10から25の範囲でありうる。特定の実施形態において、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10以上)は、転写軽鎖可変領域に対して逆方向でありうる。同様に、特定の実施形態において、複数の偽遺伝子重鎖可変領域の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10以上)は、重鎖の転写可変領域に対して逆方向でありうる。特定の実施形態において、複数の偽遺伝子可変領域は交互の方向ではなく、ある場合では(図8で説明するように)、むしろ、転写可変領域に対して逆方向にある一連の少なくとも5または少なくとも10の隣接偽遺伝子領域を含む。一実施形態において、転写可変領域から最も遠位にある偽遺伝子領域は転写可変領域と同じ方向であり、最遠位領域と転写可変領域との間にある偽遺伝子領域は転写可変領域に対して逆方向である。
【0077】
上述したトランスジェニック動物は、動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座および/または重鎖遺伝子座の内在性可変領域を、組み換え構築された複数の偽遺伝子軽鎖可変領域と置換することにより作製されうる。抗体レパートリーを生成するために遺伝子変換を用いるトランスジェニック動物の作製方法は、多数の種の生殖細胞系免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子座の構造および/または配列のように(例えばButler Rev Sci Tech 1998 17:43−70 and Ratcliffe Dev Comp Immunol 2006 30: 101−118)知られており(例えば、鳥については、Sayegh, Vet. Immunol. Immunopathol. 1999 72:31−7 and Kamihira, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol. 2004 91: 171−89、およびウサギについては、Bosze, Transgenic Res. 2003 12 :541−53 and Fan, Pathol. Int. 1999 49: 583−94、およびウシについてはSalamone J. Biotechnol. 2006 124: 469−72を参照)、上述した動物は本開示の常法により作製されうる。
【0078】
トランスジェニック動物の作製方法が提供される。ある実施形態において、該方法は、適切な動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の可変領域を、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワーク領域をコードする軽鎖可変領域;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖可変領域によりコードされ対応するフレームワーク領域と同一の軽鎖フレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む核酸構築物と置換する工程を含む。構築物を組み込むと、軽鎖可変領域はトランスジェニック動物の機能性免疫グロブリン遺伝子座の転写可変領域になり、偽遺伝子可変領域は遺伝子変換により転写V領域の配列を改変する。特定の実施形態において、操作される遺伝子座は、偽V、転写V、ならびにDおよびJ遺伝子分節を含む内在性V領域を完全に置換するよう設計される。しかしながら、非コード配列(イントロン)は、中に含まれうる内在性調節要素を保存するために内在性配置に保たれうる。
【0079】
同様に、該方法は、動物の内在性免疫グロブリン重鎖遺伝子座の可変領域を、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワーク領域をコードする重鎖可変領域;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖可変領域によりコードされ対応するフレームワーク領域と同一の重鎖フレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域と置換する工程を含みうる。構築物を組み込むと、可変領域はトランスジェニック動物の機能性免疫グロブリン遺伝子座の転写可変領域になり、偽遺伝子V領域は遺伝子変換により転写可変領域の配列を改変する。遺伝子変換により、1以上の供与偽遺伝子から転写V領域に、小(例えば1〜10ヌクレオチド)、中(10〜30ヌクレオチド)、または大(>30ヌクレオチド)DNA分節が提供されうる。遺伝子変換は多数反復して生じ得るため、多重偽Vは活発に発現するV遺伝子に配列を提供しうる。遺伝子変換の過程は偽遺伝子の選択に関して極めて可変的であるため、各々が所定のリンパ球で利用される程度で、広く多様な抗体レパートリーがトランスジェニック動物をもたらす。
【0080】
容易に明らかなように、該方法は、まず動物(転写可変領域および偽遺伝子可変領域、ならびに間の全配列を含む)の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座における可変領域を含む領域を欠失させて、例えば定常領域配列と転写可変領域との間に定常領域配列およびイントロンの一部を残す工程;次いで転写軽鎖可変領域、イントロンの残部、および複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を哺乳動物の遺伝子座に付加する工程を含みうる。
【0081】
特定の実施形態において、図5および7で図式で説明するように、トランスジェニック動物の内在機能性免疫グロブリン遺伝子の少なくとも可変領域は、該トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子可変領域を置換することなく、複数の偽遺伝子可変領域および転写可変領域を含む核酸構築物により置換されうる。このように、得られる免疫グロブリン遺伝子座(重鎖または軽鎖の遺伝子座でありうる)は、転写可変領域の上流の導入偽遺伝子のアレイに加えて内在性偽遺伝子のアレイを含みうる。
【0082】
一度、対象のトランスジェニック動物が作製されると、抗原に対する抗体は、動物を抗原で免疫することにより容易に得られる。様々な抗原がトランスジェニック宿主動物を免疫するために使用できる。このような抗原は、微生物、例えばウイルスおよび単細胞生物(細菌および菌類など)、生存する、弱毒化した、または死んだ微生物断片、または微生物から単離された抗原性分子を含む。
【0083】
ある実施形態において、動物は、治療抗体を産生するために、GD2、EGF−R、CEA、CD52、CD20、Lym−1、CD6、補体活性化受容体(CAR)、EGP40、VEGF、腫瘍関連糖タンパク質TAG−72 AFP(アルファ−フェトプロテイン)、BlyS(TNFおよびAPOLに関連するリガンド)、CA125(癌抗原125)、CEA(癌胎児性抗原)、CD2(T−cell表面抗原)、CD3(TCRに関連するヘテロ多量体)、CD4、CD11a(インテグリン・アルファ−L)、CD14(単球分化抗原)、CD20、CD22(B細胞受容体)、CD23(低親和性IgE受容体)、CD25(IL−2受容体アルファ鎖)、CD30(サイトカイン受容体)、CD33(骨髄細胞表面抗原)、CD40(腫瘍壊死因子受容体)、CD44v6(白血球の接着を媒介する)、CD52 (CAMPATH−1)、CD80(CD28およびCTLA−4の共刺激因子)、補体成分C5、CTLA、EGFR、エオタキシン(サイトカインA11)、HER2/neu、HER3、HLA−DR、HLA−DR10、HLA クラスII、IgE、GPiib/iiia(インテグリン)、インテグリンaVs3、インテグリンa4s1およびa4s7、インテグリンs2、IFN−ガンマ、IL−1s、IL−4、IL−5、IL−6R(IL6受容体)、IL−12、IL−15、KDR (VEGFR−2)、lewisy、メソテリン、MUC1、MUC18、NCAM(神経細胞接着分子)、癌胎児性フィブロネクチン、PDGFsR(ベータ血小板由来増殖因子受容体)、PMSA、腎癌抗原G250、RSV、E−セレクチン、TGFベータ1、TGFベータ2、TNFα、DR4、DR5、DR6、VAP−1(血管接着タンパク質1)またはVEGFなどで免疫されうる。
【0084】
抗原は、アジュバントの有無に関わらず、任意の簡便な方法でトランスジェニック宿主動物に投与でき、所定の計画に従って投与できる。
【0085】
免疫後、免疫されたトランスジェニック動物からの血清または乳は、抗原に特異的な医薬品等級のポリクローナル抗体の精製用に分画できる。トランスジェニック鳥の場合、抗体は卵黄の分画によっても作製できる。濃縮され、精製された免疫グロブリン画分は、クロマトグラフィー(アフィニティー、イオン交換、ゲル濾過など)、硫酸アンモニウムなどの塩、エタノールなどの有機溶媒、またはポリエチレングリコールなどのポリマーを用いた選択的沈殿により得られうる。
【0086】
モノクローナル抗体を作製するため、抗体産生細胞、例えば脾臓細胞は、免疫されたトランスジェニック動物から単離され、ハイブリドーマ産生用の形質転換細胞株との細胞融合で使用され、あるいは抗体をコードするcDNAは標準的な分子生物学技術によりクローニングされ、トランスフェクション細胞で発現する。モノクローナル抗体の作製手法は当技術分野で十分に確立されている。例えば、欧州特許出願第0 583 980 A1号、米国特許第4,977,081号、WO 97/16537号、およびEP 0 491 057 B1号を参照のこと。これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。クローニングされたcDNA分子からのモノクローナル抗体のインビトロ産生は、Andris−Widhopf et al., J Immunol Methods 242:159 (2000)およびBurton, Immunotechnology 1:87 (1995)により記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0087】
このように、トランスジェニック動物に加えて、トランスジェニック動物を抗原で免疫する工程および抗原に特異的に結合する抗体をトランスジェニック動物から得る工程を含む方法も提供される。該方法は、トランスジェニック動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製する工程、およびハイブリドーマをスクリーニングして抗原に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを同定する工程を含みうる。
【0088】
抗体が既にヒト・フレームワーク領域を含まない場合、該方法は、抗体をヒト化する工程をさらに含みうる。この方法は、抗体の定常ドメインをヒト定常ドメインで交換し、キメラ抗体を作成する工程、およびある場合では、例えばCDRのグラフトまたは再浮上(resurfacing)等により抗体の可変ドメインをヒト化する工程を含みうる。ヒト型化は、Winter (Jones et al., Nature 321:522 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534 (1988)), Sims et al., J. Immunol. 151: 2296 (1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901 (1987), Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993)、米国特許第5,723,323号、第5,976,862号、第5,824,514号、第5,817,483号、第5,814,476号、第5,763,192号、第5,723,323号、第5,766,886号、第5,714,352号、第6,204,023号、第6,180,370号、第5,693,762号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,225,539号、第4,816,567号、PCT/:米国98/16280号、米国96/18978号、米国91/09630号、米国91/05939号、米国94/01234号、英国89/01334号、英国91/01134号、英国92/01755号、WO90/14443号、WO90/14424号、WO90/14430号、欧州特許第229246号の方法に従って実行でき、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられ、本明細書で引用される参照文献を含む。
【0089】
抗体組成物
抗体組成物が提供される。抗体は、産生される抗体のCDR(即ち、対象動物により産生される抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに/または重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域)を最小限に有し、一実施形態において、対象動物により産生される抗体の全可変ドメイン(即ち、CDRとフレームワーク)を含む。このような抗体組成物は、抗原に特異的に結合するポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含み、この作製方法は知られており、上述される。
【0090】
親和性成熟中に機能遺伝子の可変ドメインに対する非遺伝子変換に基づくアミノ酸変化に起因した比較的少数のアミノ酸(即ち、アミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満で生じる)を除いて、対象抗体の軽鎖および/または重鎖のCDRは上述した遺伝子座によりコードされる2〜5アミノ酸から成る。同様に、フレームワーク領域は、単量体型、製造の容易さ、高溶解度、および熱力学安定性などの望ましい特質を有することが知られる規定配列を含む。
【0091】
上記のように、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインは動物の免疫系により天然で対合する。このような抗体は、ある場合では、宿主細胞により翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)され、トランスジェニック動物の種に特有なグリコシル化パターンおよび組成を有しうる。
【0092】
ある実施形態において、トランスジェニック動物により産生される抗体が提供され、該抗体は可変ドメインと連結した定常ドメインを含む。該可変ドメインは、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワーク領域を含む軽鎖可変ドメイン;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワーク領域を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0093】
特定の実施形態において、得られる抗体は、図11および12に示される抗体のフレームワークと少なくとも80%(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるフレームワークを有しうる。
【0094】
スクリーニングの方法
対象トランスジェニック動物により産生される抗体は、目的の抗体を同定するためにスクリーニングされうる。一般に、この方法は、上述の方法を用いてモノクローナル抗体を産生する複数のハイブリッド細胞を産生する工程、および様々な検定の1つまたは組み合わせを用いて複数のモノクローナル抗体をスクリーニングする工程を含む。一般に、これらの検定は機能検定であり、下記の通りに分類されうる:抗体の結合親和性または特異性を検出する検定、および抗体が過程を阻害する能力を検出する検定。
【0095】
抗原との特異的な結合活性、または阻害活性を有するとして同定されるモノクローナル抗体は、目的のモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0096】
結合検定
これらの検定において、抗体は基質に特異的に結合する能力について試験される。抗体結合に照らして、「特異的に」という用語は、特異的抗原、即ちポリペプチド、またはエピトープに対する抗体の高結合性および/または高親和性結合を指す。多数の実施形態において、特異的抗原は、抗体産生細胞が単離された動物宿主を免疫するために使用される抗原(または抗原の断片もしくは細画分)である。抗原またはその断片に特異的に結合する抗体は、他の抗原に対する同じ抗体の結合よりも強力である。ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、弱いながらも検出可能なレベル(例えば、目的のポリペプチドに示される結合の10%以下)で他のポリペプチドに結合しうる。このような弱い結合またはバックグラウンド結合は、例えば適切な対照の使用により、対象ポリペプチドへの特異的な抗体結合と容易に識別できる。一般に、特異的抗体は、10−7 M以上、例えば10−8M以上(例えば、10−9M、10−10、10−11など)の結合親和性で抗原に結合する。一般に、10−6M以下の結合親和性をもつ抗体は、現在使用される従来方法を用いて検出可能なレベルで抗原に結合しないという点で有用ではない。
【0097】
典型的には、スクリーニング検定の実施において、抗体を産生する宿主細胞のライブラリーにより産生される抗体試料は、各抗体が、例えばプレート数およびプレート上の位置、または抗体を産生した宿主細胞培養物を同定できる他の識別子を用いて同定できる方法で、固体支持体上に置かれる。
【0098】
本発明の抗体は当技術分野で知られる任意の方法により免疫特異的結合についてスクリーニングされうる。使用できる免疫測定は、ほんの数例を挙げれば、ウェスタンブロットなどの技術を用いる競合および非競合検定系、放射免疫測定、ELISA(酵素結合免疫吸着測定)、「サンドウィッチ」免疫測定、免疫沈降測定、沈降素反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散測定、凝集測定、補体結合測定、免疫放射測定、蛍光免疫測定、およびプロテインA免疫測定を含むが、これらに限定されない。このような検定は日常的なものであり、当技術分野で周知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと。これは全体として参照により本明細書に組み入れられる)。例示的な免疫測定は以下に簡潔に記載する(が、限定を意図しない)。
【0099】
免疫沈降手順は一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはタンパク質阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジウム酸ナトリウム)を補足したRIPA緩衝液(1% NP−40またはTriton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、pH7.2の0.01Mリン酸ナトリウム、1%トラジロール)などの溶解緩衝液で細胞集団を溶解する工程、目的の抗体を細胞溶解物に添加する工程、セ氏4度で一定期間(例えば、1〜4時間)インキュベーションする工程、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加する工程、4oCで約1時間以上インキュベーションする工程、ビーズを溶菌緩衝液で洗浄する工程、ならびにビーズをSDS/試料緩衝液に再懸濁する工程を含む。特定の抗原を免疫沈降させる目的抗体の能力は、例えばウェスタンブロット分析により評価できる。当業者は、抗体の抗原への結合を増加させバックグラウンドを減少させるよう改変できるパラメータ(例えば、セファロースビーズで細胞溶解物を予め除去する)に関して精通しているであろう。
【0100】
ウェスタンブロット分析は一般に、タンパク質試料の調製、続いてポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて8%〜20%のSDS−PAGE)でのタンパク質試料の電気泳動、およびポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンなどの膜への分離タンパク質試料の転写を含む。転写後、膜はブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは脱脂乳を含むPBS)でブロックし、洗浄緩衝液(例えば、PBS−Tween20)で洗浄し、一次抗体(目的の抗体)でインキュベーションし、ブロッキング緩衝液で希釈する。このインキュベーション後、膜は洗浄緩衝液で洗浄し、酵素基質(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pまたは125I)と結合させた二次抗体(一次抗体を認識する、例えば抗ヒト抗体)でインキュベーションし、さらなる洗浄後、抗原の存在が検出されうる。当業者は、検出シグナルを増大させバックグランド・ノイズを減少させるよう改変できるパラメータに関して精通するであろう。
【0101】
ELISAは、抗原を調製する工程、96ウェル・マイクロタイター・プレートのウェルを抗原で被覆する工程、酵素基質(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物に結合させた目的の抗体を添加する工程、および一定期間インキュベーションする工程、および抗原の存在を検出する工程を含む。ELISAにおいて、目的の抗体は検出可能な化合物と結合させる必要はないが、代わりに、検出可能な化合物と結合させた二次抗体(目的の抗体を認識する)がウェルに添加されうる。さらに、ウェルを抗原で被覆するかわりに、抗体がウェルへ被覆しうる。この場合、検出可能な化合物と結合させた二次抗体は、目的とする抗原を被覆ウェルに添加した後に添加されうる。当業者は、検出シグナルを増大させるよう改変できるパラメータおよび当技術分野で知られるELISAの他の変形に関して精通するであろう。
【0102】
抗体の抗原への結合親和性および抗体−抗原相互作用のオフレート(off−rate)は競合結合検定により測定できる。競合結合検定の一例は、多量の非標識抗原の存在下で標識抗原(例えば、3Hまたは125I)を目的抗体とインキュベーションする工程、および標識抗原と結合した抗体を検出する工程を含む放射免疫測定である。特定抗原に対する目的抗体の親和性および結合オフレートはスキャッチャード・プロット分析によりデータから決定できる。二次抗体との競合も放射免疫測定を用いて決定できる。この場合、抗原は、多量の非標識二次抗体の存在下で、標識化合物(3Hまたは125I)と結合させた目的抗体とインキュベーションされる。
【0103】
本発明の抗体は、当技術分野で一般に知られる技術を用いて抗原を発現できるベクターまたはベクター単独でトランスフェクションされた細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳動物細胞)を免疫細胞化学方法を用いてスクリーニングしてもよい。抗原でトランスフェクションされた細胞に結合するが、ベクターのみでトランスフェクションされた細胞には結合しない抗体は、抗原特異的である。
【0104】
ある実施形態において、しかしながら、検定は抗原捕捉検定であり、抗体のアレイまたはマイクロアレイはこの目的で使用してもよい。ポリペプチドのマイクロアレイの作製方法および使用方法は当技術分野で知られている(例えば、米国特許第6,372,483号、第6,352,842号、第6,346,416号および第6,242,266号を参照)。
【0105】
阻害剤検定
ある実施形態において、検定は、第一化合物と第二化合物(例えば、2つの生体高分子化合物)との相互作用に対する抗体の特異的阻害を測定し、または特異的に反応(例えば、酵素反応)を阻害する。相互作用阻害検定において、1つの相互作用基質である、通常、タンパク質などの生体高分子化合物(例えば受容体)は、反応槽の固体支持体に結合しうる。抗体が反応槽に添加され、続いて、基質の検出可能な結合相手、通常、タンパク質などの生体高分子化合物(例えば受容体の放射標識リガンド)が添加される。槽の洗浄後、相互作用の阻害は、槽に存在する検出可能な結合相手の量を決定することにより測定されうる。相互作用の阻害は、抗体を含まない対照検定と比較して、結合相手の結合が約20%を超えて、約50%を超えて、約70%を超えて、約80%を超えて、または約90%を超えてもしくは95%以上減少する場合に生じる。
【0106】
反応阻害検定において、酵素は反応槽で固体支持体と結合しうる。抗体は通常、反応槽、続いて酵素の基質に添加される。多数の実施形態において、酵素と基質の反応産物が検出可能であり、一定時間後に、反応は通常停止する。反応が停止した後、反応阻害は槽に存在する検出可能な反応産物のレベルを決定することにより測定されうる。反応阻害は、抗体を含まない対照検定と比較して、反応速度が約20%を超えて、約50%を超えて、約70%を超えて、約80%を超えて、または約90%を超えてもしくは95%以上低下する場合に生じる。
【0107】
インビボ検定
ある実施形態において、モノクローナル抗体はインビボで試験される。一般に、該方法は、疾患または状態の動物モデルに対象モノクローナル抗体を投与する工程、およびモデル動物の疾患または状態に及ぼすモノクローナル抗体の影響を決定する工程を含む。本発明のインビボ検定は対照を含み、適切な対照はモノクローナル抗体が存在しない試料を含む。一般に、複数の検定混合物は、種々の濃度に対する異なる応答を得るために、異なる抗体濃度で並行して行われる。典型的には、これらの濃度の1つは、負の対照として、即ち、ゼロ濃度または検出レベル未満として、役立つ。
【0108】
目的のモノクローナル抗体は、動物モデルの疾患または状態の症状を調節する、即ち、抗体不在下の対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上までに該症状を増減するものである。一般に、目的のモノクローナル抗体は、対象動物を疾患または状態を患わない類似または同等の動物にさせる。本発明の方法および組成物を用いて同定された治療価値を有するモノクローナル抗体は、「治療」抗体と呼ばれる。
【0109】
目的の抗体を発現するハイブリッド細胞は免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする核酸を含むため、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸は、目的のモノクローナル抗体を発現する宿主細胞が同定される場合に同定されうる。このように、対象核酸は当業者に知られる様々な方法により同定されうる。同様な方法は、ハイブリドーマ技術を用いたモノクローナル抗体の産生において、宿主細胞培養物を同定するために用いられる(Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, First Edition (1988) Cold spring Harbor, N.Y.)。
【0110】
例えば、目的のモノクローナル抗体を同定すると、目的の抗体を発現する宿主細胞は、抗体試料毎に対応する宿主細胞培養物を列挙する「参照」表を用いて同定されうる。他のある実施形態において、抗体ライブラリー試料識別子を含む参照表、対応する発現カセットライブラリー試料識別子および/または宿主細胞識別子が対象核酸を同定するために使用されうる。
【0111】
一度同定されると、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸は回収され、特徴決定され、および当業者になじみのある技術を用いて操作されうる(Ausubel, et al, Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, (1995) and Sambrook, et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (2001) Cold Spring Harbor, N.Y.)。
【0112】
抗体の発現
目的のモノクローナル抗体を産生する幾つかの方法も提供される。一般に、これらの方法は、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗体産生に十分な条件下でインキュベーションする工程を含む。
【0113】
幾つかの実施形態において、目的のモノクローナル抗体を産生する方法は、目的のモノクローナル抗体用の同定発現カセットを適切なベクターに移す工程、および組み換えベクターを宿主細胞に移しモノクローナル抗体の発現を提供する工程を含む。幾つかの実施形態において、対象方法は、同定された重鎖および軽鎖から、少なくとも可変ドメインをコードする配列を免疫グロブリン重鎖および軽鎖の発現に適切なベクターに移す工程を含む。適切な定常ドメインをコードする配列および/または他の抗体ドメインをコードする配列がこの時点で可変ドメインをコードする配列に付加されてもよい。これらの核酸修飾は対象抗体のヒト化も可能にしうる。
【0114】
対象モノクローナル抗体は、抗体の合成について当技術分野で知られる任意の方法により、特に組み換え発現技術により、産生できる。
【0115】
対象モノクローナル抗体、またはその断片、誘導体もしくは類似体の組み換え発現は、通常、抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を要する。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写および翻訳の制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために使用できる。これらの方法は、例えば、インビトロ組み換えDNA技術および合成技術を含む。このように、本発明は、本発明の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0116】
発現ベクターは従来技術により宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞は次いで培養し対象抗体を産生する。大半の実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、宿主細胞で共発現し、免疫グロブリン分子全体の発現をもたらす。
【0117】
様々な宿主発現ベクター系は対象のモノクローナル抗体を発現するために利用されうる。これらは、抗体をコードする配列を含む組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体をコードする配列を含む組み換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピチア属);抗体をコードする配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;抗体をコードする配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイク・ウイルス、CaMV;;タバコ・モザイク・ウイルス、TMV)に感染した、または組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノム(メタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5 Kプロモーター)に由来するプロモーターを含む組み換え発現構築物を含む哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞など)を含むがこれらに限定されない。多数の実施形態において、大腸菌などの細菌細胞、および真核細胞は、組み換え抗体分子全体の発現用に使用される。例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒト・サイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーター要素などのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986); Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0118】
細菌系では、幾つかの発現ベクターは、発現する抗体分子向けの用途に応じて選択されうる。例えば、大量のタンパク質を産生すべき場合、抗体分子の医薬組成物を生成するため、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルな発現を指示するベクターが望ましい。このようなベクターは、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791 (1983))(抗体をコードする配列は、融合タンパク質が産生されるように、lac Zをコードする領域をインフレームでもつベクターに個別に連結されうる);pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101−3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24:5503−5509 (1989))などを含むがこれらに限定されない。pGEXベクターも、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来ポリペプチドを発現させるために使用されうる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、基質グルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出により溶解細胞から容易に精製できる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から切り離せるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むよう設計される。
【0119】
昆虫系においては、オートグラファ・カリフォミカ(Autographa califomica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は抗体を発現するためのベクターとして使用される。ウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。抗体をコードする配列はウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリン・プロモーター)の制御下に置かれる。
【0120】
哺乳動物宿主細胞において、幾つかのウイルスに基づく発現系は対象の抗体を発現するために利用されうる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的の抗体をコードする配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3部リーダー配列に連結されうる。このキメラ遺伝子は次いでインビトロまたはインビボの組み換えによりアデノウイルスゲノムに挿入されうる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)への挿入は、感染宿主で抗体分子を発現できる生存組み換えウイルスをもたらす(例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355−359 (1984)を参照)。発現効率は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネータ等の包含により増強されうる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51−544 (1987)を参照)。
【0121】
組み換え抗体の長期高収率産生のため、安定な発現が用いられうる。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株が操作されうる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞は免疫グロブリン発現カセットおよび選択可能なマーカーで形質転換できる。外来DNAの導入後、操作細胞は強化培地で1〜2日間増殖させた後、選択培地に移される。組み換えプラスミドの選択可能なマーカーは選択に対する耐性を与え、細胞はプラスミドを染色体に安定に組み込み、増殖して増殖巣を形成でき、巣は順にクローニングされ、細胞株に展開できる。このような操作細胞株は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用でありうる。
【0122】
それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞で使用できる単純ヘルペス・ウイルス・チミジン・キナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))、およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22:817 (1980))遺伝子を含むがこれらに限定されない幾つかの選択系が用いられうる。また、代謝拮抗剤耐性は、下記の遺伝子について選択の基礎として使用できる:メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77:357 (1980); O’Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるneo(Clinical Pharmacy 12:488−505; Wu and Wu, Biotherapy 3:87−95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharnacol. Toxicol. 32:573−596 (1993); Mulligan, Science 260:926−932 (1993); and Morgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191−217 (1993); TIB TECH 11(5):155−215 (1993));およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147 (1984))。組み換えDNA技術の分野で一般に知られる方法は、所望する組み換えクローンを選択するために日常的に適用され、このような方法は、例えば、Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990); and in Chapters 12 and 13, Dracopoli et al. (eds), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994); Colberre−Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1 (1981)に記載されている。
【0123】
宿主細胞は本発明の2つの発現ベクターを用いて共トランスフェクションされてもよく、第一のベクターは重鎖由来のポリペプチドをコードし、第二のベクターは軽鎖由来のポリペプチドをコードする。2つのベクターは異なる選択可能なマーカーおよび複製起点を含み、これらは重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等な発現を可能にする。あるいは、重鎖および軽鎖の両ポリペプチドをコードし発現できる単一ベクターが使用されてもよい。
【0124】
一度、本発明の抗体分子が産生されると、免疫グロブリン分子を精製するために当技術分野で知られる任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後に特異的抗原に対する親和性による)、およびサイジング・カラム・クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差異により、またはタンパク質を精製する他の任意の標準技術により、精製されうる。多数の実施形態において、抗体は細胞から培地中に分泌され、培地から収集される。
【0125】
有用性
当技術分野で知られるように、または本明細書に記載するように、本発明の少なくとも1つの抗体を用いて、例えば細胞、組織、器官、動物、または患者に治療上有効な量の抗体を投与または接触させることにより、細胞、組織、器官、動物または患者において、少なくとも1つの抗原関連疾患を調節または治療する方法も提供される。本発明は、細胞、組織、器官、動物、または患者において、肥満、免疫関連疾患、心臓血管疾患、感染病、悪性疾患または神経疾患の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない少なくとも1つの抗原関連疾患を調節または治療する方法も提供する。
【0126】
典型的には、病態の治療は、有効量または用量の少なくとも1つの抗体組成物を投与することにより達成される。該組成物は、合計して平均で、組成物中に含まれる活性剤の特異的活性に応じて、1投薬につき患者1キログラム当たり少なくとも約0.01から500ミリグラムの少なくとも1つの抗体、好ましくは単回または複数回投与につき少なくとも約0.1から100ミリグラムの抗体/キログラム患者となる。あるいは、有効な血清濃度は、単回または複数回の投与につき0.1−5000ng/mlの血清濃度を含み得る。適切な投薬は医師に知られており、無論、特定の病状、投与される組成物の特異的活性、および治療を受ける特定の患者に左右されるであろう。幾つかの事例において、所望の治療量に達するため、反復投与、即ち、特定の監視用量または定量の反復個別投与の提供を必要とし、所望する日用量または効果が達成されるまで個別投与が反復される。
【0127】
対象の抗体は、ある実施形態において、抗体が検出可能なマーカーと結合するまたは検出可能なマーカーと結合した二次抗体とともに一次抗体として使用される診断においても使用できる。検出可能なマーカーは、放射標識および非放射標識を含み、当業者に周知である。一般的な非放射標識は、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび蛍光分子などの検出可能な酵素を含む。蛍光分子はある波長の光を吸収し、他の波長で発光するため、例えば蛍光顕微鏡で可視化できる。分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーおよびフローソーターは周知であり、蛍光色素に共有結合させることにより蛍光にされた特異的分子を検出するためによく使用される。緑色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質の赤方シフト変異体、アミノクマリン酢酸(AMCA)、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、テトラメチルコーダミン(tetramethylchodamine)イソチオシアネート(TRITC)、テキサス・レッド、Cy3.0およびCy5.0などの蛍光色素は有用な標識の例である。
【0128】
蛍光マーカーが使用される場合、該分子は蛍光活性化細胞選別(FACS)などの細胞単離戦略に使用できる。蛍光活性化細胞選別において、蛍光分子で標識される細胞は、Becton−Dickinson (San Jose, Calif.) FACS IVサイトメーターなどのフロー・サイトメーターまたは同等な機器で電子的に選別される。蛍光分子は、特異的な細胞表面抗原を認識する抗体である。抗体は、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)などの蛍光マーカーに結合する。
【実施例】
【0129】
下記の実施例は、本発明のある実施形態および態様を証明しさらに説明するために提示されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0130】
実施例1
概要
簡潔には、ニワトリは生物物理学特性を備えたヒト・フレームワークを含む抗体を産生するように操作され、これは容易に作製され、最適な薬理特性を有する。操作されたニワトリの免疫グロブリン遺伝子は、同一のフレームワーク領域、ならびにセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩のランダム配列から成るCDRとともに20の合成偽遺伝子のアレイを有し、抗原に特異的な高親和性抗体を産生する。このニワトリ株は免疫され、モノクローナル抗体が回収される。
【0131】
VL偽遺伝子のアレイの遺伝子変換(全ての偽遺伝子は同一のフレームワーク領域を有し、CDRはセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩のランダムアレイから成る)は、インビトロ遺伝子変換により軽鎖を多様化し続けるウイルス形質転換されたニワトリ前B細胞株由来のDT40細胞を用いて証明される。さらに、DT40細胞は高い率で相同組み換えを受け、該組み換えはニワトリ機能性可変領域を組み換え可変領域で置換するための直接経路を提供する。
【0132】
DT40細胞のチキン軽鎖V領域のアレイを、単一のヒト・フレームワーク領域ならびにセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩から成るCDRに由来する合成アレイで置換するためのノックイン標的ベクターが創出される。単一ヒト・フレームワークにおける合成CDRの遺伝子変換はDT40細胞で証明される。
【0133】
合成ヒトV領域のアレイは、始原生殖細胞(PGC)のニワトリIgLおよびIgH遺伝子座に挿入される。遺伝改変されたPGCは鳥株を創出するために使用され、該株からヒト抗体が免疫後に得られる。これらの鳥は最初のトランスジェニック動物であり、予測可能な製造特性および薬理特性をもつ被操作ヒト抗体を得る。
【0134】
Vκ3フレームワーク配列は、最高の溶解度を有し、単量体として存在し、ならびに熱力学的に安定であるために使用される。VH3フレームワーク配列は、同じ理由で、ならびにVH3フレームワークが十分に発現することが示されたため、使用される。
【0135】
実施例2
機能性Vおよび偽遺伝子のアレイ
機能性V(即ち、V領域)は、VBaseデータベースで列挙されるヒトVκ3配列のフレームワーク、CDR1およびCDR2の共通配列を抽出することにより得られた。VK3のCDR3については共通配列が導き出せないため、VBaseからhumIGKV096配列が使用された。このVK3配列はゲノムDNAおよび生産的再編成で確認した。偽遺伝子は、フレームワーク領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3のチロシン(Y)、セリン(S)、およびトリプトファン(W)のランダム・アレイのようなVκ3の共通配列を用いるよう設計された。これらの配列は表1で以下に示す。
【0136】
表1.機能性Vκ3由来遺伝子および偽V(PSI)遺伝子におけるCDR1、CDR2およびCDR3のチロシン(Y)、セリン(S)、およびトリプトファン(W)の配列
【表1】
【0137】
偽遺伝子アレイのCDR領域は僅か3アミノ酸から構築された:それぞれ40/50/10%の比率でチロシン(Y)、セリン(S)およびトリプトファン(W)。この戦略において、チロシンおよびトリプトファンは一次抗原接触残基であると予測される一方、セリンは結合ポケット内に適切な間隔を提供する。該アレイは、YまたはWが任意のCDRのあらゆる位置に出現でき、あるいは十分な数の秩序配列をまとめて提供できるよう設計され、遺伝子変換を通して効率良く任意の可能な配列を生成する。この設計により、野生型ニワトリの偽遺伝子アレイからレパートリーを作製するために使用される同じ遺伝子変換過程を用いて、多様性が合成アレイから生じると推測される。
【0138】
このアレイの性能は、Y、SおよびW残基を含む模擬「抗原で選択される」CDR配列のパネルを創出することにより、コンピュータで試験した。アレイの適切な組成(表1に列挙)は、インビトロで最適と考えられる分布である、40%チロシン、50%セリン、および10%トリプトファンであった。シミュレーションされるCDR1(またはCDR3、両方とも6つの位置を有するため)のアミノ酸配列(SAAS)は、乱数発生器を用いて、0から0.4の値をチロシンに、>0.4から.9をセリンに、ならびに>0.9から1をトリプトファンに割り当てることで創出された。CDR1(またはCDR3)のこのシミュレーションの出力は表2に示す。
【0139】
表2.表1の偽遺伝子(PSI)アレイから予測される配列を作製するために必要なCDR1(またはCDR3)のシミュレーション・アミノ酸配列(SAAS)および遺伝子変換(GC)事象
【表2】
【0140】
表2のシミュレーション・アミノ酸配列、およびSAASを創出するために使用されうるPSIを達成するために必要な遺伝子変換の最小数は、手動で求め、「GC事象」の欄で示す。一般に、本発明者達は、僅か2または3の遺伝子変換様事象で、平均2.6で任意のSAASを創出できた。遺伝子変換頻度の公表推定値は1V遺伝子につき3〜6の独立事象に及ぶため、偽遺伝子アレイは、任意の抗原配列に極めて特異的なクローンを作製するのに十分な配列および機能的多様性を生成できるべきである。
【0141】
実施例3
遺伝子標的構築物
ゲノムの修飾は2段階で行われる。まず、遺伝子標的ベクターがニワトリDT−40細胞に導入され、内在性ニワトリ軽鎖偽V遺伝子(約20Kb配列)およびニワトリ機能性V領域(リーダー、VJおよび対応するイントロン配列を含む)の全アレイを除去する。標的ベクターの図式設計は図1で説明する。
【0142】
偽V25の上流配列は5’相同領域として使用され、J−CイントロンにおけるJの下流配列は3’相同領域として使用でき、相同組換えによる標的化を促進する。loxPに隣接し、β−アクチンプロモーターにより駆動するneoRカセットは、選別に使用された後、cre媒介性組み換えにより標的細胞で除去できる。さらに、attP部位およびプロモーターを欠くpuroR(3’末端にFRT配列をもつ)が標的ベクターに含まれる(以下の記載を参照)。これは、必要に応じて、合成Vsの他のアレイの組み込みを容易にする。得られる標的遺伝子座は全てのニワトリ偽Vおよび機能性Vのアレイを除去する。第二段階において、attB部位およびプロモーター(5’末端にFRT配列をもつ)を備えた置換ベクターにおける合成Vアレイ(図2でL−sVJとして示される合成偽Vsおよび機能性Vκ3の両方を備える)は、ファージphiC31インテグラーゼ媒介性部位特異的組み換えにより、attP部位で前標的遺伝子座に挿入される(図2)。正確な組み込み事象により、プロモーターおよびプロモーターを欠くpuroRはともにピューロ(puro)で選別できる。これにより、予め導入されたattP部位での正確な組み込みを、ニワトリ・ゲノムに存在する偽attP部位での取り込みに対してほぼ100%の効率までさらに強化される。プロモーター−puroR配列は、必要に応じて、再度FRTを介して除去できる。
【0143】
合成Vアレイの組立は図3および図4で説明する。具体的には、Clontech社により開発されたインフュージョン(In−Fusion)技術は、最終ベクターへの下流クローニング用に合成Vs小断片を作製するために用いられる。インフュージョン技術は末端で相同配列と15bb重複したDNA断片を効率良く「融合」できる。15bpの相同末端は遺伝子特異的PCRプライマーの末端に付加され得る。この技術は4以上のDNA片を継ぎ目無く効率的に組み立てるために用いられてきた。合成偽Vアレイを再構築するために、約25Kbにまたがる39の分節(セグメント)(内在性ニワトリIgL配列に由来する20の合成偽Vsおよび19の偽V間配列)がともに連結される。合成偽V遺伝子は遺伝子合成により得られる。偽V間配列はBAC DNAからPCRにより得られる。全cIgL遺伝子座を含むBACクローン(CH261−29C12)は、オークランド小児病院研究所(CHORI)から得られる。この過程で、15bpの相同末端は各分節の末端に付加される。最初に、3分節がインフュージョンによりともに組み立てられる。各分節は、隣接する分節またはベクターに相同な(色分けされた)15bp配列を含む。修飾pBluescript系中間ベクターはインフュージョン用の線状化ベクターDNAとして使用される。1回目のインフュージョン後、13の中間分節が存在する。これらの13の分節は、2回目のインフュージョンを経て、9以下の開始分節をそれぞれ含む5つの最終分節を得る。
【0144】
固有の制限部位が最終分節の指示位置に付加され、従来の制限部位媒介性クローニングによる全合成偽V遺伝子座の組立を容易にする。pBeloBAC系ベクターは、attBおよびプロモーター、および7つの固有制限部位(RE−1からRE−7)を含むように修飾され、合成Vアレイの最終組立てを可能にする。偽V1リーダーとリーダー−合成ヒトVJフレームワークの配列(図4のL−sVJ)との間に内在性ニワトリ配列を含むDNA断片は、全VL遺伝子座を再構築するためにベクターにクローニングされる。
【0145】
遺伝子変換の頻度は近接する遺伝子座の転写に影響を受け得るため、本発明者達は、除去を容易にする選択可能なマーカーに隣接するLoxまたはFRT部位を有する構築物を設計した。ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子を切除するため、クローンはCreリコンビナーゼを発現するプラスミド(Vector Biolabs)でトランスフェクションし、ピューロマイシンに対する耐性をコードする遺伝子を切除するため、クローンはフリパーゼ(Flipase)(Invitrogen)を発現するプラスミドでトランスフェクションされる。次いで、細胞は単一播種し、選択可能なマーカーを含まないクローンを得た。一度これらのクローンが見えると(通常5〜7日)、本発明者達はサザン解析を用いて、抗生物質耐性遺伝子が切除されたことを確認する。本発明者達は、次いで、1.5ng/mlのトリコスタチンAを培養物に添加し、遺伝子変換を強化する。次の4週間、本発明者達は、sIgM+表現型への復帰変異を監視し、ヒトV配列へのニワトリ偽V領域の寄与を査定する。
【0146】
実施例4
DT40細胞の培養およびトランスフェクション
DT40細胞は10%リン酸トリプトース培養液、55μMベータ−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、10%FBSおよび2%ニワトリ血清を補足したDMEMで増殖する。細胞は2.5x105細胞/mlで播種し、2から3日間隔で分割する。培地が過密になりすぎないよう注意する。
【0147】
トランスフェクション用に対数期の5x106個の細胞を収集し、PBSで洗浄し、ペレットにし、100μlのAmaxa V緩衝液に再懸濁する。5μgの線状化DNAを添加し、懸濁液はキュベットに移し、550Vおよび25μFの指数関数的減衰パルスを用いて電気穿孔する。電気穿孔直後に、細胞は、1.5mlエッペンドルフ・チューブの500μlの予熱した培地に入れ、37℃で静置する。20分後、細胞は40mlの培地に再懸濁し、100μlのアリコートは4つの96ウェル・プレートに入れる。トランスフェクションの翌日、選別用に使用される抗生物質(例えば、1mg/mlの2X濃度のピューロマイシン)を含む同体積(100μl)の培地を添加して、0.5mg/mlの最終ピューロマイシン濃度にする。5から7日以内に、コロニーは直径約2mmに増殖し、24ウェル・プレートに移す。コロニーは、次いで、上記と同じ培養条件を用いて拡大する。
【0148】
安定にトランスフェクションされたコロニーは、PCRにより分析して標的化を決定し、標的化はサザン解析により候補クローンで確認する。本発明者達はそれぞれの遺伝子改変についてサザン分析により少なくとも2つのクローンを同定する。
【0149】
実施例5
sIgM+復帰変異検定を用いた遺伝子変換の評価
遺伝子変換率はsIgM+復帰変異検定により監視する(Yang e al., J. Exp. Med. 203: 2919−2928, 2006)。この系において、VL遺伝子の128位に単一塩基挿入を有するフレームシフト変異のDT40−CL18により、軽鎖は内在性重鎖と対合できないため、細胞は表面IgM−である(Yang et al, 2006)。フレームシフト変異が遺伝子変換事象により復帰変異する場合、細胞は蛍光活性化細胞選別装置(FACS)により容易に同定されるsIgM+の表現型になる。DT40−CL18フレームシフト変異体からの培養開始4週後、約1.5%の細胞がsIgM+である。次いで、これらのクローンは回収され、V領域は機能性Vの多様性を十分に実証するために配列決定される。
【0150】
この適用において、機能性Vκ3遺伝子は共通配列であるため、CDRは、セリン、アラニンおよびチロシンに加えてトリプトファン、グリシン、バリン、グルタミンおよびアスパラギンから成る。合成偽Vsにおける4アミノ酸の蓄積は遺伝子変換の測定基準である。
【0151】
この適用においてsIgM復帰変異検定を用いるために、ヒト機能性V領域はCDR1にアンバー終止コドンを含むよう設計される。従って、導入遺伝子の野生型も変異版も代わりにDT40細胞のゲノムの導入attP部位に挿入される。野生型版は、機能性軽鎖が内在性重鎖と対合できIgM発現を再構築することの証拠を提供する。重鎖および軽鎖の定常領域はニワトリ起源であるため、正常な対合が生じそうであるが、ヒトおよびニワトリのV領域間で干渉の可能性がある。その通りだとすると、本発明者達はsIgM+復帰変異検定を利用できず、遺伝子変換事象の評価を専ら配列分析に依存するであろう。しかしながら、マウス可変領域がニワトリ定常領域に接合する場合に完全抗体が組み立てられるため、キメラ・ヒト−ニワトリ軽鎖がニワトリ重鎖と対合するという本発明者達の推測に対する信憑性を高める。さらに、Vκ3はニワトリ機能性Vsと約70%相同であり、この相同性レベルは生産的な対合を容易にすると予期される。
【0152】
4週間の培養期間の終わりに、導入遺伝子の変異版を発現する細胞はウサギ抗ニワトリIg(Sigma)で染色し、単一sIgM+細胞はFACSにより96ウェル・プレートへ選別される。これらのデータは、遺伝子変換が起きたという最初の示唆を提供し、本発明者達は細胞の約1.5%がsIgM+であると予測する(Yang et al, 2006)。細胞は5〜7日間増殖し、IgM mRNAは各ウェルから調製される。得られるcDNAは5’リーダー・ペプチド・プライマーおよび3’ CLプライマーを用いて増幅する。両プライマーはニワトリ起源であるため、遺伝子変換の程度に関わらず、VLを増幅する。アンプリコンはTOPO TAクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングされる。大腸菌形質転換体コロニー由来のプラスミドDNAは各ウェルから調製され、クローニングされた挿入物は配列決定される。配列は原型CDRと比較して分析し、チロシン、セリンおよびトリプトファンの蓄積は遺伝子変換の指標として用いられる。
【0153】
実施例6
ノックアウト・ベクターおよびDT40細胞における該ベクターのトランスフェクション
下記の実施例で提示されるデータはヒトIg軽鎖導入遺伝子が単一のフレームワーク領域を含むことを示し、上流のヒト合成偽遺伝子のアレイはニワトリB細胞株DT40のニワトリ軽鎖遺伝子座に挿入できる。遺伝子変換はニワトリB細胞の合成CDRを多様化する。
【0154】
ヒトV領域によるニワトリ軽鎖遺伝子座の置換は上記の通りに2段階で行った:chIgL遺伝子座のノックアウトおよび該遺伝子座のattP部位の置換、続いてインテグラーゼを用いたヒトV領域のノックイン。ノックアウト・ベクターはV、JおよびC領域を欠失し(図5)、ニワトリ偽遺伝子を残すように設計され、これは、ヒトVとの配列相同性が低いため(フレームワーク領域2のごく僅かな長さに弱い相同性)、遺伝子変換を妨げないと予測される。
【0155】
標的ベクター用の5’および3’相同アームは、ゲノムDNAのPCR増幅により調製され、ピューロマイシン、EGFPおよびプロモーターを欠くneo選択可能なカセットとともに組み立てられた。EGFPマーカーは、トランスフェクションされた細胞およびコロニーを同定し追跡するのに有用であり、とりわけ原生殖細胞の場合、細胞が増殖する支持細胞層が小コロニーの可視化を時折困難にするため有用である。さらに、EGFPは、UV光をヒナに照らすことにより原生殖細胞におけるノックアウトまたはノックインの生殖細胞系列伝達のスクリーニングおよび緑色蛍光の査定を容易にする。ピューロマイシン遺伝子はノックアウト・クローンの選別に用いられ、プロモーターを欠くneo遺伝子は後に偽遺伝子アレイのインテグラーゼ媒介性挿入の選別に使用される。attP部位はΦC31インテグラーゼによる組み換えのためneo遺伝子の前に配置された。loxP部位は後にCreリコンビナーゼにより選択可能なマーカーを除去するために含められた。
【0156】
ノックアウトベクターは野生型DT40細胞にトランスフェクションされ、ピューロマイシン耐性クローンが選別され、相同組み換えにより該ベクターを組み込んだクローンがスクリーニングされることにより、軽鎖をノックアウトした。DT40における軽鎖遺伝子の2つの対立遺伝子の内、一方は生殖細胞系立体配置にあり発現しないのに対して、他方はVJ再編成を経て軽鎖遺伝子を発現する。再編成された対立遺伝子は、内在性軽鎖の発現を除外するため、ノックアウトされてもよく、表面IgM−陰性細胞をもたらし、下流分析を平易にする。生殖細胞系対立遺伝子は、RAG−1が発現しないため、再編成できない。スクリーニングされた117クローンの内、8クローンは再編成された対立遺伝子のノックアウトを有し、10は生殖細胞系対立遺伝子のノックアウトを有し、全体頻度は約15%の標的化であり、DT40の期待度数であった。図6はスクリーニングの結果例を示す。
【0157】
図6の左パネルはノックアウトから得られた結果を示す。一方のプライマーは標的ベクターのゲノム隣接領域5’にあり(actgtgctgcaggtggctatg;配列番号:53)、他方のプライマーは選択可能なマーカーカセットにある(atacgatgttccagattacgctt;配列番号:54)。図6の第二パネルは対立遺伝子特異的PCRを示す。両プライマーはニワトリ軽鎖遺伝子座にあり(順方向プライマーGCGCTGACTCAGCCGTCCTC (配列番号:55);逆方向プライマーgagacgaggtcagcgactcac (配列番号:56))、VJイントロンが該対立遺伝子から欠失されたため、再編成対立遺伝子(R対立遺伝子)からより小さな産物を産生し、生殖細胞系対立遺伝子(G対立遺伝子)はイントロンを含み、より大きな断片を産生する。生殖系対立遺伝子のノックアウト(KO−G)において、R対立遺伝子のみが検出される。再編成対立遺伝子のノックアウト(KO−R)においては、G対立遺伝子のみが検出される。図6のパネルの第三セットはノックインについて得られた結果を示す。5’検定は、組み込みの5’側にβ−アクチン−neo融合を検出する(順方向プライマーctctgctaaccatgttcatgccttc (配列番号:57);逆方向プライマーAGTGACAACGTCGAGCACAGCT (配列番号:58))。3’検定はattR部位にわたる軽鎖に2プライマーを使用する(順方向プライマーcgcacacgtataacatccatgaa (配列番号:59);逆方向プライマーgtgtgagatgcagacagcacgc (配列番号:60))。ノックイン試料において、野生型対立遺伝子もノックイン対立遺伝子も検出されるのに対し、野生型試料においては、野生型断片のみが観察される。図6の第四パネルは、DT40クローン(KI)の2つのノックインでhuVK−chCLキメラ軽鎖の発現を示すRT−PCR結果を示す(huVK反応:順方向プライマーATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTC (配列番号:61);逆方向プライマーcaggtagctgctggccatatac (配列番号:62);B−アクチン反応順方向プライマーaacaccccagccatgtatgta (配列番号:63);B−アクチン反応逆方向プライマーtttcattgtgctaggtgcca (配列番号:64))。対照試料は親ノックアウト(KO)であった。
【0158】
実施例7
ノックインベクターおよびDT40細胞における該ベクターのトランスフェクション
機能性Vおよび偽遺伝子アレイは幾つかのニワトリおよびヒトIg配列から組み立てられた(図7)。ベクターは、機能性再編成ヒトVカッパ遺伝子(huVK)、ニワトリ軽鎖定常領域、合成VK偽遺伝子(SynVK)およびニワトリ・イントロンのアレイ、ならびに軽鎖の適切な発現用の調節配列を含む。機能性VKは幾つかの基準を満たし、下流の製造能力の基準もニワトリのB細胞発生を支持するための基準も満たす。使用される機能性VKおよびVHは、高レベルで発現し、適切な構造に折り畳まれ、互いに効率良く対合して機能性抗体分子を形成し、ニワトリで自己反応性B細胞をもたらす任意のニワトリ・エピトープを認識しない。
【0159】
挿入用のヒトVKおよびVH遺伝子の機能性対を選別するために、再編成された幾つかの機能性ヒトVsがヒトB細胞DNAからクローニングされた。次いで、16のVKおよび16のVH遺伝子は、高レベルで発現する機能性的抗体を形成する対を見出すために、組み合わせて発現した。選択されたVK配列のクローンE6はフレームワーク領域1の3アミノ酸変化を除いて生殖細胞系遺伝子VK3−15と同一であった。SynVK偽遺伝子アレイは、huVK E6と同一のフレームワーク領域、ならびにチロシンおよびトリプトファンを含むCDRを有するよう設計された。SynVK遺伝子が合成され、12偽遺伝子のアレイに組み立てられた。機能性ヒトVKはニワトリ・イントロン配列を用いて合成された後、ニワトリ軽鎖プロモーター、定常領域およびJ−Cイントロンとともにクローニングされた。得られるノックイン遺伝子座は、ニワトリ非コード調節配列を用いて、ニワトリ軽鎖定常領域にスプライシングされる完全ヒトV領域から成るキメラ軽鎖を発現する。最後に、ノックアウト対立遺伝子にベクターを挿入するため、本発明者達はattB部位およびβ−アクチンプロモーターを付加し、loxP部位は選択可能なマーカーおよびプラスミド骨格を最終的に切除するために含められた。ノックイン戦略は図7で説明する。
【0160】
SynVK挿入ベクターは遺伝子変換用に簡易な表面IgM (sIgM)復帰変異検定ができるよう設計された(Buerstedde, Reynaud et al. 1990. Light chain gene conversion continues at high rate in an ALV−induced cell line Embo J 1990 vol. 9 (3) pp. 921−7)。終止コドンは、全長軽鎖が発現しないように、「機能性」発現ヒトV領域のCDR1に導入された。軽鎖が存在しないと、DT40重鎖は細胞表面に輸送されず、ノックイン細胞はsIgM陰性である。終止コドンを含まないSynVK偽遺伝子によるCDR1の遺伝子変換は、軽鎖配列を修復し、その全長オープン・リーディング・フレームを復元する。次いで、軽鎖は重鎖に結合し、完全IgM複合体を形成し、細胞はsIgM陽性になる。DT40ノックイン・クローンはマウス抗ニワトリIgM抗体(Southern Biotechnology Associates)を用いてsIgM発現について染色し、フローサイトメトリーによりsIgM陽性細胞を選別し、配列レベルで遺伝子変換を詳細に分析するために、遺伝子変換された純粋な細胞集団を得ることができる。完全野生型E6 VK領域をもつベクター版も、キメラ軽鎖(ヒトV領域+ニワトリC領域)が十分に発現し、DT40重鎖と対合できることを検証するために作製され、ヤギ抗ヒトカッパ抗体はトランスフェクションされたDT40の表面上でヒト可変領域の発現を検証した。
【0161】
SynVK挿入ベクターは、CMV−インテグラーゼ発現構築物を用いて、IgLノックアウトDT40細胞内に共トランスフェクションされた。両構築物は、環状超らせんDNAとして導入された。ノックアウト細胞は、ノックアウト対立遺伝子のneo遺伝子がプロモーターを欠くために、G418選別に対して感受性があると予期され、SynVKベクターを挿入し、β−アクチンプロモーターをneo遺伝子と連結した後のみ、G418耐性が誘導される。SynVKベクターのトランスフェクション後、細胞は4または6 mg/ml G418 (ノックアウト細胞でいくらか観察されるバックグラウンドneo耐性のため、比較的高レベルの薬剤選択が必要とされた)で挿入選別された。コロニーが得られ、挿入の5’および3’側ならびにヒトVK機能遺伝子についてのPCR検定を用いて、8個の中から2コロニーがノックインを含むことが見出された。図2は該クローンの1つについてのPCR結果を示す。
【0162】
実施例8
DT40細胞における合成V領域の遺伝子変換の証明
軽鎖ノックインDT40クローンは、終止コドンの修復ならびにCDR1へのチロシンおよびトリプトファンの同時挿入をもたらす遺伝子変換事象が蓄積する時間を見越して、トランスフェクション後数週間増殖させた。細胞は幾つかの時点で試料採取し、マウス抗ニワトリIgM抗体を用いてsIgM発現について染色した。トランスフェクション後約2週間のノックインクローンにおいて、あるとしても、ごく僅かの細胞がsIgMを発現した。トランスフェクション後29〜41日目に、僅かな割合(0.2%)のsIgM陽性細胞が観察されたことにより、本発明者達はPCR用にFACSにより細胞を選別し、配列分析できた。僅か2つの偽遺伝子(2−SynVK)を含むノックイン構築物の初期版および12の偽遺伝子版(12−SynVK)をもつ細胞株が分析された。
【0163】
ゲノムDNAは分別されたsIgM+細胞から調製し、機能性huVK遺伝子はヒトVKリーダー配列およびhuVKの下流にあるイントロンにおいてプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCR産物はクローニングされ、単一コロニーは少量調製および配列決定用に採取した。高品質の配列が約350のPCRクローンから得られた。明白に偽遺伝子供与体と指定される確実な遺伝子変換が2−SynVKで86クローン、12−SynVKで157クローン観察された(図8)。それぞれの遺伝子変換事象は、チロシンまたはトリプトファンのいずれかを含む機能性Vに合成CDRを創出した。CDR1の終始コドンの修復が選択されたため、多数の遺伝子変換がCDR1のみで観察されたということになる。4配列において、遺伝子変換はCDR2でも観察され、CDR1を変換した同一の偽遺伝子が各事例でCDR2も変換したため、おそらく単一の長い遺伝子変換事象の結果であろう。幾つかの配列は明白な遺伝子変換を含んだが、特定の偽遺伝子供与体を指定することは不可能であった。これらの配列は、2つの重複する遺伝子変換事象、または単一の偽遺伝子による短い中断された遺伝子変換の結果であるからである。ニワトリVL偽遺伝子による遺伝子変換の証拠は観察されなかった。遺伝子変換経路の全てはSynVK偽遺伝子プールに由来するからである。DT40によりまたはTaqポリメラーゼの誤りにより導入されたかもしれない幾つかの点突然変異も観察された。しかしながら、1つの配列は点突然変異により終止コドンを修復し、これはsIgM発現で選別されたため、DT40由来の突然変異の可能性がある。
【0164】
2−SynVKおよび12−SynVKの両方を含む細胞において、SynVK9偽遺伝子を除く全てのSynV偽遺伝子が遺伝子変換に関与した(図8)。2−SynVKでは、近位の偽遺伝子は遠位の偽遺伝子より約9倍利用された。2つの偽遺伝子は機能性VKと比較して異なる方向にもあり、近位の偽遺伝子は逆方向であり、これは、近接または方向のいずれが遺伝子変換に関与する偽遺伝子の効率を決定する際により重要であるかという疑問を提起した。12のSynVK細胞において、遠位偽遺伝子および近位偽遺伝子は同様な頻度で用いられたため、機能性VKとの近接は遺伝子変換の頻度に影響を及ぼさないようだった。従って、方向は近接より重要であり、逆方向はより効率的であるかもしれない。
【0165】
2つのSynVKおよび12のSynVKを含む構築物は図8Aに図示し、付番されたSynVK偽遺伝子、機能性huVK遺伝子、およびニワトリ定常領域を示す。偽遺伝子は任意でアレイのクローニング前に付番され、番号順に組み立てられなかった。SynVKおよびhuVKの方向は上下の矢印で示す。各偽遺伝子が遺伝子変換で使用された回数を示す。観察される遺伝子変換事象の幾つかは特定の偽遺伝子を指定できなかったため、遺伝子変換事象の総数は僅かに多い。図8Bは遺伝子変換事象の例を示す。「機能性」huVKのCDR1配列が示される(入力)。終止コドンには下線を引く。表面IgM+ DT40から得られる配列は、右に示される遺伝子変換で使用されたSynVK偽遺伝子とともに、以下に示す。チロシンおよびトリプトファンはCDR1の全位置に蓄積した。ダッシュは入力配列との配列同一性を示す。
【0166】
偽遺伝子SynVK9は遺伝子変換が無く、SynVK3は僅か1事象であった。これらの2つの偽遺伝子はCDR1の第3コドンに巨大残基(チロシンまたはトリプトファン)を挿入するのに対し、他の偽遺伝子は全て該位置で野生型バリン残基を挿入する。特異的重鎖をもつこの人工DT40系において、該位置に巨大残基をもつ軽鎖が抗体を不活性化することは可能であり、これらの偽遺伝子による遺伝子変換でsIgM陽性復帰変異体を回復することは不可能である。
【0167】
上記で論議したこれらの結果は、ニワトリB細胞でのヒトVK領域の遺伝子変換を証明し、チロシンおよびトリプトファンを含む合成CDRを創出する。
【0168】
実施例9
最適なヒトVHおよびVLフレームワークの同定
cDNAは正常なヒト末梢血リンパ球から調製し、VH3およびVK3に特異的なプライマー対を用いてPCR増幅した。VH3プライマーは、5‘GGCTGCGATCGCCATGGAGTTTGGGCTKAGCTGG 3’ 順方向(配列番号:49)であり、5’ATGCGTTTAAACTTTACCCGGAGACAGGGAGAGG 3’逆方向(配列番号:50)であった。このプライマー対は、VH3/IgG1アイソタイプの完全重鎖に対応する1.5 kb DNA断片を増幅した。
【0169】
VK3プライマーは、5’GGCTGCGATCGCCATGGAACCATGGAAGCCCCAGCAC 3’順方向(配列番号:51)および5’ GGGGGTTTAAACACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCT 3’逆方向(配列番号:52)であった。このプライマー対は、VK3/CKアイソタイプの完全軽鎖に対応する700bp DNA断片を増幅した。
【0170】
アンプリコンは発現ベクターpF4a (Promega)に直接クローニングし、機能コード配列を有することを確認した。30の固有配列重鎖および30の固有配列軽鎖は発現レベルの評価に用いた。全ての実験において、プラスミドDNAは慎重に定量化し、一過性トランスフェクションで使用し、完全ヒトIgGタンパク質を産生した。該タンパク質は次いでELISAにより定量化した。まず、単一の機能性重鎖は30軽鎖のそれぞれと対合した。並行して、単一の軽鎖は30機能性重鎖のそれぞれと対合した。これにより、上位16の発現重鎖および上位16の軽鎖を選別でき、4つの8x8マトリクスを作成した。マトリクス例は図9に示す。
【0171】
上位2つの重鎖および軽鎖はこれらのマトリクスから選択され、プラスミドDNA濃度を変えることにより一過性トランスフェクションでさらに分析した。また、異なる対の相対的安定性は、タンパク質定量前に37°Cで長いインキュベーションにより評価した。図10に示されるこれらの実験結果は、発現レベルおよび安定性に最適な対がクローン「E6」軽鎖およびクローン「C3」重鎖であることを明白に証明する。これらのV遺伝子のフレームワーク領域は、従って、SynV軽鎖および重鎖遺伝子座の構築の基準としてそれぞれ使用された。E6およびC3クローンのヌクレオチド配列ならびにコードされるアミノ酸配列は図11および12に示される。
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は2009年8月13日に出願された米国仮出願第61/274,319号の利益を主張し、該仮出願は全体としてあらゆる目的で参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗体は特異抗原に結合するタンパク質である。一般に、抗体は標的に特異的であり、免疫エフェクター機構の媒介能を有し、ならびに長い血清半減期を有する。このような性質により、抗体は強力な治療になる。モノクローナル抗体は、癌、炎症、および心血管疾患を含む様々な状態を治療するために治療で使用される。現在、20を上回る治療抗体製品が市場に存在し、数百が開発中である。
【0003】
新規な抗体および該抗体の作製方法に一定の需要が存在する。
【発明の概要】
【0004】
トランスジェニック非ヒト動物が提供される。ある実施形態において、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワークをコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子と操作可能に連結されるb)i.該機能遺伝子のCDRと同じ2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域の軽鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワークをそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含むゲノムを含む。複数の該偽遺伝子軽鎖可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の転写可変領域に提供する。
【0005】
さらに、または上記の代替として、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸(例えば軽鎖と同じ2から5のアミノ酸)から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワークをコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子と操作可能に連結されるb)i.機能遺伝子と同じ2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域の重鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である重鎖フレームワークをそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含みうる。複数の該偽遺伝子重鎖可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の転写可変領域に提供する。
【0006】
トランスジェニック動物の作製方法および使用方法ならびに該方法により作製される抗体組成物も提供される。
【0007】
特許または出願の書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を添付した本特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて事務所から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の欠失戦略を模式的に説明する。
【図2】図2は、内在性ニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子の欠失後に、可変領域をコードする偽遺伝子の合成アレイをニワトリ免疫グロブリン軽鎖遺伝子座に付加する戦略を模式的に説明する。
【図3】図3は可変領域をコードする偽遺伝子のアレイを構築する戦略を模式的に説明する。
【図4】図4は可変領域をコードする偽遺伝子のアレイを挿入するベクターの構築戦略を模式的に説明する。
【図5】図5はニワトリIgL遺伝子座にattP部位を配置する戦略を模式的に説明する。
【図6】図6はニワトリIgLのノックアウトおよびノックイン・クローンのPCR分析結果を示す。
【図7】図7はノックインの作製戦略を模式的に説明する。
【図8】図8Aおよび図8Bは、CDR1の配列番号:1〜6についての遺伝子変換事象例を説明する。
【図9】図9は多様な重鎖および軽鎖配列の発現レベルを示す表である。
【図10】図10は、長いインキュベーション時間後に多様な抗体の安定性を示すグラフである。
【図11】図11はE6(軽鎖)の配列番号:53および54のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。
【図12】図12はC3(重鎖)の配列番号:55および56のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。
【0009】
定義
「決定する」、「測定する」、「評価する」、「査定する」および「検定する」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられ、任意の測定形態を指し、要素が存在するか否かの決定も含む。これらの用語は定量的および/または定性的な決定の両方を含む。査定は相対的でも絶対的でもよい。「の存在を決定する」とは、存在する何物かの量の決定および何物かが存在するか否かの決定を含む。
【0010】
「遺伝子」という用語は、プロモーター領域、コード配列、および3’UTRを含む核酸配列を指す。
【0011】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。
【0012】
「リーダー配列」とは、タンパク質のN末端部に存在し、細胞からタンパク質の成熟形態の分泌を促進するアミノ酸配列である。シグナル配列の定義は機能的配列である。細胞外タンパク質の成熟形態はシグナル配列を欠失し、該配列は分泌過程で切断される。
【0013】
「核酸」という用語は、DNA、RNA、一本鎖または二本鎖およびこれらの化学修飾を包含する。「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。
【0014】
「非ヒト」動物は、ヒトでない種の任意の動物を指す。
【0015】
「子孫」または「子」という用語は、特定の動物に由来し伝わる全ての未来世代を指す。従って、子孫のF1、F2およびF3世代等がこの定義に含まれるように、あらゆる継続世代の子孫がこの中に含まれる。
【0016】
「トランスジェニック動物」という語句は、外来核酸(即ち、動物に固有でない組み換え核酸)を含む細胞を含む動物を指す。外来核酸は動物の全細胞または動物の一部だが全てではない細胞に存在しうる。外来核酸分子は、「導入遺伝子」と呼ばれ、1つまたは多数の遺伝子、cDNA等を含みうる。導入遺伝子を受精卵母細胞または初期胚由来の細胞に挿入することにより、得られるトランスジェニック動物は、完全トランスジェニックでもよく、外来核酸をその生殖細胞系列に安定に伝えることができる。あるいは、外来核酸を含む組み換え細胞または組織を動物に移入、例えば移植することにより、外来核酸が導入され、部分トランスジェニック動物を作製してもよい。あるいは、トランスジェニック動物は、遺伝的に改変された体細胞由来の核移植により、または胚性幹細胞もしくは始原生殖細胞などの遺伝的に改変された多機能性細胞の移植により作製してもよい。
【0017】
「イントロン」という用語は、大半の真核生物において、多数の遺伝子配列の中間に見出されるDNAの配列を指す。これらのイントロン配列は転写されるが、mRNAがタンパク質に翻訳される前にmRNA前駆体転写産物から除去される。このイントロン除去の過程はイントロンの両側にある配列(エキソン)の同時スプライシングにより起こる。
【0018】
「操作可能に連結する」という用語は、一方の機能が他方に影響を受けるような一本鎖核酸断片上の核酸配列の関連性を指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現に作用できる(即ち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、プロモーターは該コード配列と操作可能に連結する。同様に、イントロンがコード配列と操作可能に連結する場合、イントロンはmRNAからスプライシングされ、コード配列の発現を提供する。遺伝子変換に照らして、2つの核酸配列は、一方の配列が遺伝子変換により他方に配列を「供与」できる場合に、操作可能に連結する。一方が遺伝子変換を介して他方に配列を供与できるという点で2つの配列が非連結である場合、供与する配列は他方の上流または下流であってもよく、2つの配列は、即ち他の介在遺伝子が存在しないという点で、互いに近接してもよい。「非連結」とは関連する遺伝要素が互いに密接に関連しないことを意味し、一方の機能が他方に影響を及ぼさない。
【0019】
「上流」および「下流」という用語は転写の方向に関して用いられる。
【0020】
「偽遺伝子」という用語は、開始コドンおよび/または終止コドンを含んでも含まなくてもよいオープン・リーディング・フレームを含む非転写核酸領域を記載するために用いられる。アミノ酸配列は、オープン・リーディング・フレームのヌクレオチド配列がコンピュータで翻訳され、アミノ酸配列を作成できるという意味で、偽遺伝子により「コード」されうる。重鎖および軽鎖の免疫グロブリン遺伝子座に照らして、偽遺伝子は、プロモーター領域、組み換えシグナル配列またはリーダー配列を含まない。
【0021】
「ホモ接合性」という用語は、同一の対立遺伝子が相同染色体上の同じ遺伝子座にあることを示す。対照的に、「ヘテロ接合性」とは、異なる対立遺伝子が相同染色体上の同じ遺伝子座にあることを示す。トランスジェニック動物は導入遺伝子についてホモ接合性でもヘテロ接合性でもよい。
【0022】
遺伝子に関して、「内在性」という用語は、遺伝子が細胞に固有であることを示し、即ち、遺伝子が非改変細胞ゲノムの特定の遺伝子座に存在することである。内在性遺伝子は(自然界で見出されるような)野生型細胞の該遺伝子座に存在する野生型遺伝子でありうる。内在性遺伝子は、野生型遺伝子と同じゲノムの遺伝子座に存在する場合に改変内在性遺伝子でありうる。このような改変内在性遺伝子の例は、外来核酸が挿入される遺伝子である。内在性遺伝子は核ゲノム、ミトコンドリアゲノム等に存在しうる。
【0023】
「構築物」という用語は、特異的ヌクレオチド配列の発現目的で作製された、または他の組み換えヌクレオチド配列の構築に使用される組み換え核酸、一般に組み換えDNAを指す。構築物はベクターまたはゲノムに存在しうる。
【0024】
「組み換え」という用語は、宿主細胞に本来存在しないポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。組み換え分子は、天然に存在しない方法でともに連結される2以上の天然の配列を含みうる。組み換え細胞は組み換えポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。細胞が組み換え核酸を受容する場合、該核酸は細胞にとって「外来性」である。
【0025】
「選択可能なマーカー」という用語は、宿主で発現できるタンパク質であって、導入核酸またはベクターを含む宿主を容易に選別できるタンパク質を指す。選択可能なマーカーの例として、抗菌剤(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、またはクロラムフェニコール)への耐性を与えるタンパク質、宿主細胞に栄養的利益などの代謝優位を与えるタンパク質、および細胞に機能性または表現型の優位(例えば細胞分割)を与えるタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いられる「発現」という用語は、ポリペプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて産生される過程を指す。該過程は転写および翻訳の両方を含む。
【0027】
細胞への核酸配列の挿入に照らして、「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、または「形質転換」または「形質導入」を意味し、真核細胞または原核細胞への核酸配列の取り込みについての言及を含む。該核酸配列は細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、またはミトコンドリアDNA)に取り込まれ、自律レプリコンに変換され、または一過性に発現する(例えば、トランスフェクションされたmRNA)。
【0028】
1つの遺伝子座を他で置換する内容において、「置換する」という用語は一段階手順または多段階手順を指す。
【0029】
「コード配列」という用語は、例えばインビボで、適切な調節要素の制御下にある場合、一度転写および翻訳されるとタンパク質を産生する核酸配列を指す。本明細書で用いられるコード配列は、連続ORFを有し、またはイントロンもしくは非コード配列の存在により中断されるORFを有しうる。この実施形態において、非コード配列はmRNAからスプライシングされ、成熟mRNAを産生する。偽遺伝子は非転写コード配列を含みうる。
【0030】
「と逆方向の」という用語は、異なる鎖上にあるコード配列を指す。例えば、転写領域が偽遺伝子に対して逆方向であると記載されるならば、転写領域によりコードされるアミノ酸配列は上鎖または下鎖によりコードされ、偽遺伝子によりコードされるアミノ酸配列は転写領域に対して他鎖によりコードされる。図8で説明するように、コード配列の方向は矢印により示されうる。
【0031】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書でほとんど同じ意味で用いられる。これらの用語は当業者によく理解されており、抗原に特異的に結合する1以上のポリペプチドから成るタンパク質を指す。抗体の一形態は抗体の基本的な構造単位を構成する。この形態は四量体であり、2つの同一な抗体鎖対から成り、各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖の可変領域は共に抗原への結合を担い、定常領域は抗体のエフェクター機能を担う。
【0032】
認識される免疫グロブリン・ポリペプチドは、カッパおよびラムダの軽鎖ならびにアルファ、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミューの重鎖または他の種の等価物を含む。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸)は、NH2−末端に約110アミノ酸の可変領域およびCOOH−末端にカッパまたはラムダの定常領域を含む。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは約446アミノ酸)は同様に可変領域(約116アミノ酸)および前記の重鎖定常領域の1つ、例えばガンマ(約330アミノ酸)を含む。
【0033】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、抗体または任意のアイソタイプの免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体断片を含み、Fab、Fv、scFv、およびFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むがこれらに限定されない。抗体は、例えば放射性同位体、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光タンパク質等で検出可能な程度に標識されうる。抗体は、特異的な結合対のメンバー、例えばビオチン(ビオチン−アビジン特異的結合対のメンバー)などの他の部分にさらに結合しうる。抗体は、ポリスチレンプレートまたはビーズ等を含むがこれらに限定されない固体支持体と結合してもよい。また、Fab’、Fv、F(ab’)2、およびまたは抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片、およびモノクローナル抗体も該用語により包含される。
【0034】
抗体は、例えばFv、Fab、および(Fab’)2および二価(即ち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))を含む様々な他の形態、ならびに一本鎖(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879−5883 (1988) and Bird et al., Science, 242, 423−426 (1988)、参照により本明細書に組み入れられる)に存在しうる(一般に、Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15−16 (1986)を参照)。
【0035】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は3つの超可変領域により分断される「フレームワーク」領域(FR)から成り、該超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている(Lefranc et al, IMGT, the international ImMunoGeneTics information system. Nucleic Acids Res. 2009 vol. 37 (Database issue): D1006−12. Epub 2008 Oct 31を参照;imgt.orgのワールドワイド・ウェブサイトを参照し、以下本明細書で「IMGTシステム」と称する)。本明細書で論議される全ての抗体アミノ酸配列の付番はIMGTシステムに従う。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は相対的に種内で保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成する軽鎖および重鎖を合わせたフレームワーク領域であり、CDRを位置付け整列するのに役立つ。CDRは主として抗原のエピトープへの結合を担う。
【0036】
キメラ抗体とは、軽鎖および重鎖の遺伝子が通常、遺伝子操作により、異なる種に属する抗体の可変領域および定常領域の遺伝子から構築された抗体である。例えば、ニワトリまたはウサギのモノクローナル抗体に由来する遺伝子の可変部は、ガンマ1およびガンマ3などのヒト定常部に連結されうる。治療用キメラ抗体の例は、ニワトリまたはウサギの抗体に由来する可変または抗原結合ドメインおよびヒト抗体に由来する定常またはエフェクタードメインから成るハイブリッドタンパク質である(例えば、A.T.C.C.寄託番号CRL 9688の細胞により作製される抗Tacキメラ抗体)が、他の哺乳動物種が用いられてもよい。
【0037】
本明細書で用いられるように、「ヒト・フレームワーク」という用語は、ヒト抗体のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワークを指し、例えば抗体のヒト生殖細胞系配列のアミノ酸配列である。ある場合では、ヒト・フレームワークは完全にヒト・フレームワークであってもよく、この場合、フレームワークはヒト抗体、例えば生殖細胞系抗体のアミノ酸配列と同一の該配列を有する。
【0038】
本明細書で用いられるように、「ヒト化抗体」または「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒト抗体に由来し、対応して配置されたアミノ酸で置換された(例えば、フレームワーク領域、定常領域またはCDR内に)1以上のアミノ酸を含む非ヒト抗体を指す。一般に、ヒト化抗体は、同じ抗体の非ヒト化版と比較して、ヒト宿主に免疫応答の低下を生じると予想される。
【0039】
本方法により設計および産生されるヒト化抗体は、抗原結合または他の抗体機能に実質的に影響を及ぼさない保存アミノ酸置換をさらに有しうると理解される。保存置換とは、下記の群から等の組み合わせが意図される:gly, ala; val, ile, leu; asp, glu; asn, gln; ser, thr; lys, arg; and phe, tyr。同じ群に存在しないアミノ酸は、「実質的に異なる」アミノ酸である。
【0040】
「特異的結合」という用語は、異なる被分析物の均一混合物に存在する特定の被分析物に選択的に結合する抗体の能力を指す。ある実施形態において、特異的結合の相互作用は、試料中の所望する被分析物と所望しない被分析物とを識別し、ある実施形態では約10から100倍以上(例えば約1000倍または10,000倍を上回る)であろう。
【0041】
ある実施形態において、抗体および被分析物が抗体/被分析物複合体で特異的に結合する場合のこれらの親和性は、10−6M未満、10−7M未満、10−8M未満、10−9M未満、10−9M未満、10−11M未満、もしくは約10−12M未満、またはそれ以下のKD(解離定数)により特徴付けられる。
【0042】
重鎖または軽抗体鎖の「可変領域」は、CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにフレームワーク領域を含む鎖のN末端成熟ドメインである。抗体の重鎖も軽鎖も可変ドメインを含む。全てのドメイン、CDRおよび残基の数は配列アラインメントおよび構造知識に基づいて割り当てられる。フレームワークおよびCDR残基の同定および付番はIMGTシステムにより定義される通りである。
【0043】
VHは抗体重鎖の可変ドメインである。VLは抗体軽鎖の可変ドメインである。
【0044】
本明細書で用いられるように、「単離される」という用語は、単離される抗体に照らして用いられる場合、抗体が精製前に結びつく他の構成要素から少なくとも60%遊離、少なくとも75%遊離、少なくとも90%遊離、少なくとも95%遊離、少なくとも98%遊離、およびさらに少なくとも99%遊離する対象抗体を指す。
【0045】
「治療」、「治療する」などの用語は、哺乳動物、例えば具体的にはヒトまたはマウスのあらゆる疾患または状態のあらゆる治療を言及するために本明細書で用いられ、a)疾患に罹りやすいが未だ疾患と診断されていない被験体に生じる疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を予防すること;b)疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を阻害すること、例えば患者でその進行を停止しおよび/またはその発病または兆候を遅らせること;ならびに/またはc) 疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状を緩和すること、例えば状態もしくは疾患および/もしくはその症状を退行させることを含む。
【0046】
「被験体」、「宿主」、「患者」および「個体」という用語は本明細書でほとんど同じ意味で用いられ、診断または治療が望まれる任意の哺乳動物被験体、とりわけヒトを指す。他の被験体は、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含みうる。
【0047】
「天然の」抗体とは、例えばファージディスプレイにより作製された非天然対の抗体とは対照的に、抗体の重鎖および軽鎖免疫グロブリンが多細胞生物の免疫系により自然界で選択された抗体である。このように、ある抗体は任意のウイルス(例えばバクテリオファージM13)に由来する配列を含まない。脾臓、リンパ節および骨髄は、動物で天然の抗体を産生する組織の例である。
【0048】
細胞に核酸配列を挿入する内容において、「導入される」という用語は、「トランスフェクション」、または「形質転換」または「形質導入」を意味し、真核細胞または原核細胞への核酸配列の取り込みについての言及を含み、該核酸配列は細胞に一過性に存在し、または細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、またはミトコンドリアDNA)に取り込まれ、自律レプリコンに変換されうる。
【0049】
「複数」という用語は、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも5000、または少なくとも10,000または少なくとも50,000以上を指す。ある場合では、複数は少なくとも10から50を含む。他の実施形態においては、複数は少なくとも50から1,000でありうる。
さらなる定義が本開示のいずれかにありうる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
トランスジェニック動物が提供される。ある実施形態において、トランスジェニック動物は、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成るCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.フレームワーク領域;をコードする転写可変領域を含む機能性免疫グロブリン遺伝子;ならびに該機能性免疫グロブリン遺伝子に操作可能に連結されるb)i.機能遺伝子と同じ2から5の異なるアミノ酸から成るCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.該転写可変領域のフレームワーク領域と同一のアミノ酸配列であるフレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む免疫グロブリン遺伝子座を含むゲノムを含む。複数の該偽遺伝子可変領域は、トランスジェニック動物の遺伝子変換により、ヌクレオチド配列を機能性免疫グロブリン遺伝子の転写可変領域に提供する。免疫グロブリン遺伝子座は免疫グロブリン軽鎖遺伝子座または免疫グロブリン重鎖遺伝子座でありうる。ある場合では、動物は本明細書に記載する重鎖および軽鎖の両遺伝子座を含みうる。
【0051】
本発明がさらに記載される前に、本発明が特定の記載実施形態に限定されるものでないことが理解されるべきであり、そのようなものとして、無論、変化しうる。本明細書で用いられる専門用語は特定の実施形態を記載する目的のみにあり、限定する意図はないことも理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0052】
値の範囲が提示される場合、明確に他を指示する文脈でない限り、下限の単位の10分の1まで、該範囲の上下限間の各介在値、および該規定範囲における任意の他の規定値または介在値が本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0053】
他に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似または等価な任意の方法および物質が本発明の実施または試験で使用できるが、好ましい方法および物質を以下に記載する。本明細書で言及する全ての刊行物は、引用される刊行物に関連する方法および/または物質を開示し説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形「1つの(a)」、「および」、および「その(the)」は、明確に他を指定する文脈でない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「1つの細胞(a cell)」についての言及は複数の細胞を含み、「1つの候補薬剤」についての言及は1以上の候補薬剤および当業者に知られるその等価物などについての言及を含む。さらに、特許請求の範囲は任意の選択要素を除くように記載してもよいことに留意する。このように、この記述は、請求の範囲の要素の列挙に関連する「専ら」、「唯一の」などの排他的用語の使用、または「否定的」限定の使用について、先行詞として役立つことを意図する。
【0055】
本明細書で論議される刊行物は、本出願の出願日前の開示についてのみ提示される。本明細書において、本発明が先行発明によって該刊行物に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、提示される刊行物の日付は実際の発行日と異なる可能性があり、自主的に確認する必要がありうる。
【0056】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物および特許が参照により組み入れられると具体的および個別的に示されるように、参照により本明細書に組み入れられ、引用される刊行物に関連する方法および/または物質を開示し説明するために参照により本明細書に組み入れられる。任意の刊行物の引用は、出願日前の開示についてであり、本発明が先行発明によって該刊行物に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきではない。さらに、提示される刊行物の日付は実際の発行日と異なる可能性があり、自主的に確認する必要がありうる。
【0057】
この開示を読むと、当業者には明らかなように、本明細書に記載および説明される個々の実施形態は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、個別の構成要素、および他の幾つかの実施形態のいずれかの特性と容易に分離または組み合わされうる特性を有する。
列挙するいずれの方法も、列挙される事象順序または論理的に可能な任意の他の順序で実施できる。
【0058】
トランスジェニック動物
上述のように、トランスジェニック動物が提供される。ある実施形態において、動物は一次抗原レパートリーを開発するために遺伝子変換を用いる任意の非ヒト動物であってもよく、このように、動物は多様な異なる動物のいずれでもよい。一実施形態において、動物は、トリ、例えばニワトリもしくはシチメンチョウなどのキジ目の一員、もしくはアヒルもしくはガチョウなどのカモ目の一員、または哺乳動物、例えばウサギなどのウサギ目、もしくはウシ、ヒツジ、ブタもしくはヤギなどの家畜でありうる。特定の実施形態において、トランスジェニック動物は、非齧歯類(例えば、非マウスまたは非ラット)、非霊長類のトランスジェニック動物でありうる。
【0059】
この開示には、合成可変領域のアレイをコードする1以上の導入遺伝子を含むトランスジェニック・ニワトリに関するものもある。多数の動物の免疫グロブリン遺伝子座のヌクレオチド配列は該動物のゲノムの改変方法と同様に知られているため、以下に記載する一般概念は、任意の適切な動物、即ち一次抗原レパートリーを開発するために遺伝子変換を用いる任意の動物に容易に適合しうる。転写される免疫グロブリンの重鎖または軽鎖遺伝子の可変領域と、異なる可変領域を含み操作可能に連結された(上流)偽遺伝子との遺伝子変換による抗体多様性の生成は、例えば、Butler (Rev. Sci. Tech. 1998 17: 43−70), Bucchini (Nature 1987 326: 409−11), Knight (Adv. Immunol. 1994 56: 179−218), Langman (Res. Immunol. 1993 144: 422−46), Masteller (Int. Rev. Immunol. 1997 15: 185−206), Reynaud (Cell 1989 59: 171−83)およびRatcliffe (Dev. Comp. Immunol. 2006 30: 101−118)などの様々な刊行物に記載されている。
【0060】
ある実施形態において、トランスジェニック動物は発現(即ち、転写され、mRNAを産生し、続いて翻訳される)して抗体の軽鎖を産生する機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子、および、機能性軽鎖遺伝子と操作可能に連結される(これはニワトリの場合であり、多数の他の種はそのすぐ上流にある)複数の異なる偽遺伝子軽鎖可変領域を含む。該偽遺伝子の可変領域は、遺伝子変換により(即ち、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域の配列を偽遺伝子可変領域の配列と置換することにより)、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の配列を改変するという点で、機能性免疫グロブリン軽鎖と操作可能に連結される。トランスジェニック動物において、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域と偽遺伝子可変領域との遺伝子変換は、機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子可変領域の配列をわずか1コドンから可変領域の全長まで改変する。ある場合では、偽遺伝子可変領域は、偽遺伝子の可変領域から少なくとも1つのCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)の配列を機能遺伝子の可変領域内に提供しうる。トランスジェニック動物により産生される抗体の軽鎖は、従って、偽遺伝子可変領域から機能性軽鎖遺伝子の可変領域内に提供されるいずれの配列によってもコードされる。
【0061】
同様に、トランスジェニック動物は、転写および翻訳されて抗体の重鎖を産生する機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子、および該機能性重鎖遺伝子と(例えば、そのすぐ上流で)操作可能に連結される複数の異なる偽遺伝子重鎖可変領域も含みうる。該偽遺伝子の可変領域は、遺伝子変換により、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の配列を改変するという点で、機能性免疫グロブリン軽鎖と操作可能に連結される。トランスジェニック動物において、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域と偽遺伝子可変領域との遺伝子変換は、機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域の配列をわずか1コドンから可変領域の全長まで改変する。ある場合では、偽遺伝子可変領域は、偽遺伝子の可変領域から少なくとも1つのCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)の配列を機能遺伝子の可変領域に提供しうる。トランスジェニック動物により産生される抗体の重鎖は、従って、偽遺伝子可変領域から機能性重鎖遺伝子の可変領域内に提供されるいずれの配列によってもコードされる。
【0062】
トランスジェニック動物により産生される抗体は、従って、偽遺伝子可変領域から機能遺伝子の可変領域に提供されるいずれの配列によってもコードされる。異なる配列は動物の異なる細胞に提供されるため、動物の抗体レパートリーは、どの配列が偽遺伝子可変領域から機能遺伝子の可変領域に提供されるかにより決定される。
【0063】
特定の実施形態において、可変領域偽遺伝子によりコードされるフレームワークは、偽遺伝子が操作可能に連結される機能遺伝子のフレームワーク領域とアミノ酸配列で同一である。換言すれば、偽遺伝子によりコードされるFR1領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR1領域と同一であってもよく、偽遺伝子によりコードされるFR2領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR2領域と同一であってもよく、偽遺伝子によりコードされるFR3領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR3領域と同一であってもよく、ならびに偽遺伝子によりコードされるFR4領域の全てのアミノ酸配列は、転写可変ドメインによりコードされるFR4領域と同一であってもよく、これにより、規定の重鎖および/または軽鎖のフレームワークをもつ抗体を産生できる。
【0064】
特定の実施形態において、可変領域偽遺伝子のフレームワークをコードするヌクレオチド配列は、偽遺伝子が操作可能に連結される機能遺伝子のフレームワークをコードするヌクレオチド配列と同一でありうる。換言すれば、偽遺伝子のFR1領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR1領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、偽遺伝子のFR2領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR2領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、偽遺伝子のFR3領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR3領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、ならびに偽遺伝子のFR4領域の全てをコードするヌクレオチド配列は、転写可変ドメインのFR4領域をコードするヌクレオチド配列と同一であってもよく、これにより、規定のヌクレオチド配列をもつ機能遺伝子をもたらす。
【0065】
選択されるフレームワーク配列は、ヒトであってもよく、例えば、ヒト抗体の生殖細胞系配列に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一な配列を有しうることにより、ヒト・フレームワークを含む抗体を産生できる。
【0066】
特定の実施形態において、軽鎖生殖細胞系配列は、A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、およびO8を含むヒトVK配列から選択されるが、これらに限定されない。ある実施形態において、軽鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、およびV5−6から選択される。異なる生殖細胞系配列の記載については、PCT WO 2005/005604を参照のこと。
【0067】
他の実施形態において、重鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、VH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1、およびVH7−81から選択される。異なる生殖細胞系配列の記載については、PCT WO 2005/005604を参照のこと。
【0068】
幾つかの実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列はヒトであってもよく、即ち、ヒト抗体のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列または生殖細胞系配列を含みうる。これらの実施形態において、CDRおよびフレームワークの両方がヒトであってもよい。他の実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列は、ヒトではなく、代わりにヒト配列に少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%以上同一であってもよい。例えば、ヒト配列と比較して、導入され、転写される可変領域は1以上のヌクレオチドまたはアミノ酸置換を含みうる。特定の実施形態において、導入され、転写される可変領域のヌクレオチド配列は、図11および12に示される可変領域と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%以上同一でありうる。一実施形態において、使用されるフレームワーク配列は、図11および12に示されるフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4または5以上の置換を含む。
【0069】
特定の実施形態において、定常ドメインをコードする領域、イントロンの部分、および機能遺伝子の3’UTRを含む軽鎖遺伝子座の部分は動物に内在性であり、機能遺伝子の可変領域を含む軽鎖遺伝子座の残部、イントロンの残部および偽遺伝子は、該動物に外来性であり、即ち機能性軽鎖遺伝子が作製され、偽遺伝子が遺伝子変換により機能性軽鎖遺伝子に配列を提供できるように組み換えられ、定常ドメイン、一部のイントロンおよび3’UTRに近位で動物に導入される。ある場合では、動物の軽鎖遺伝子座は、操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域を含む。該イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムおよび複数の偽遺伝子軽鎖可変領域に内在性であり、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である。あるいは、定常ドメインをコードする領域もトランスジェニック動物のゲノムに外来性でありうる。
【0070】
同様に、定常領域、イントロン領域の一部、および機能遺伝子の3’UTRを含む重鎖遺伝子座の一部は動物に内在性であり、機能遺伝子の可変ドメインを含む重鎖遺伝子座の残部、イントロンの残部および偽遺伝子は該動物にとって外来性であり、即ち機能遺伝子が作製され、偽遺伝子が遺伝子変換により機能遺伝子に配列を提供できるように組み換えられ、定常ドメイン、一部のイントロンおよび3’UTRに近位で動物に導入される。ある場合では、動物の重鎖遺伝子座は、操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域を含み、該イントロン領域、定常ドメインをコードする領域および3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムおよび複数の偽遺伝子重鎖可変領域に内在性であり、複数の偽遺伝子重鎖可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である。
【0071】
ある実施形態において、被験体のトランスジェニック動物により産生される抗体は、内在性定常ドメインおよび該動物に外来性である可変ドメインを含みうる。内在性定常領域がこれらの実施形態で使用されうるため、抗体はさらにクラススイッチおよび親和性成熟(動物が正常な免疫系の発達を経ることを可能にする)を経て、正常な免疫応答を開始しうる。特定の実施形態において、トランスジェニック・ニワトリは、IgM、IgYおよびIgAをコードする重鎖遺伝子座に3つの内在性定常領域を有する。B細胞発生の初期段階中、B細胞はIgMを発現する。親和性成熟が進行するにつれて、クラススイッチは定常領域をIgYまたはIgAに変換する。IgYは液性免疫を生体および新生ニワトリの両方に提供し、両ニワトリは卵黄内に沈着される蓄積によって約200 mgのIgYを受容する。IgAは主としてリンパ組織(例えば、脾臓、パイアー斑およびハーダー腺)および卵管で見出される。
【0072】
上述したように、軽鎖遺伝子座の偽遺伝子および機能遺伝子の両可変領域のコードされるフレームワーク領域が互いに同一でありうるのに対し、偽遺伝子の各々の可変領域によりコードされるCDR領域は互いに異なる(即ち、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR1領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR1領域をコードし、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR2領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR2領域をコードし、複数の偽遺伝子はそれぞれ他のCDR3領域の全てのアミノ酸配列と異なるCDR3領域をコードする)。重鎖遺伝子座についても同様に、偽遺伝子の各々の可変領域によりコードされるCDR領域は互いに異なる。
【0073】
ある場合では、軽鎖可変ドメイン、および/または重鎖可変ドメインによりコードされるCDR領域は、僅か2から5(即ち、2、3、4または5)の異なるアミノ酸残基から成り、この文脈において、「から成る」という用語は、CDR内の各アミノ酸の位置が2から5のアミノ酸残基群から独立して選択される1つのアミノ酸残基により占有されることを意味するつもりである。2〜5アミノ酸から成るCDRの例は本開示の実施例欄に記載される。ある実施形態では、2から5アミノ酸の少なくとも1つはチロシンまたはトリプトファン残基のような巨大アミノ酸であり、2から5アミノ酸の少なくとも1つはアラニン、グリシンまたはセリン残基のような小アミノ酸残基である。
【0074】
CDRは長さが多様でありうる。ある実施形態において、重鎖CDR1は長さ6から12のアミノ酸残基の範囲にあり、重鎖CDR2は長さ4から12のアミノ酸残基の範囲にあり、重鎖CDR3は長さ3から25のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR1は長さ4から14のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR2は長さ2から10のアミノ酸残基の範囲にあり、軽鎖CDR3は長さ5から11のアミノ酸残基の範囲にありうるが、これらの範囲外の長さのCDRを有する抗体も想定される。
【0075】
親和性成熟中に遺伝子変換と無関係に起きる突然変異の結果として生じる比較的少数のアミノ酸を除いて(これは、例えばアミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満で起きる)、トランスジェニック動物により産生され得られる抗体は、2から5の異なるアミノ酸のみから成る軽鎖および/または重鎖CDRを有しうる。例示実施形態において、CDRは、チロシンおよびトリプトファンから選択される25%から75%(例えば40%から60%)の巨大アミノ酸、およびアラニン、グリシン、およびセリンから選択される25%から75%(例えば40%から60%)の小アミノ酸と、残り(即ち、アミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満)の他の任意の天然アミノ酸から成る。偽遺伝子の各CDRにおけるアミノ酸の具体的な順序は無作為に作成されうる。
【0076】
軽鎖および/または重鎖遺伝子座に存在する導入偽遺伝子の可変領域数は変化し、特定の実施形態では、5〜30、例えば10から25の範囲でありうる。特定の実施形態において、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10以上)は、転写軽鎖可変領域に対して逆方向でありうる。同様に、特定の実施形態において、複数の偽遺伝子重鎖可変領域の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10以上)は、重鎖の転写可変領域に対して逆方向でありうる。特定の実施形態において、複数の偽遺伝子可変領域は交互の方向ではなく、ある場合では(図8で説明するように)、むしろ、転写可変領域に対して逆方向にある一連の少なくとも5または少なくとも10の隣接偽遺伝子領域を含む。一実施形態において、転写可変領域から最も遠位にある偽遺伝子領域は転写可変領域と同じ方向であり、最遠位領域と転写可変領域との間にある偽遺伝子領域は転写可変領域に対して逆方向である。
【0077】
上述したトランスジェニック動物は、動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座および/または重鎖遺伝子座の内在性可変領域を、組み換え構築された複数の偽遺伝子軽鎖可変領域と置換することにより作製されうる。抗体レパートリーを生成するために遺伝子変換を用いるトランスジェニック動物の作製方法は、多数の種の生殖細胞系免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子座の構造および/または配列のように(例えばButler Rev Sci Tech 1998 17:43−70 and Ratcliffe Dev Comp Immunol 2006 30: 101−118)知られており(例えば、鳥については、Sayegh, Vet. Immunol. Immunopathol. 1999 72:31−7 and Kamihira, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol. 2004 91: 171−89、およびウサギについては、Bosze, Transgenic Res. 2003 12 :541−53 and Fan, Pathol. Int. 1999 49: 583−94、およびウシについてはSalamone J. Biotechnol. 2006 124: 469−72を参照)、上述した動物は本開示の常法により作製されうる。
【0078】
トランスジェニック動物の作製方法が提供される。ある実施形態において、該方法は、適切な動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の可変領域を、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワーク領域をコードする軽鎖可変領域;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖可変領域によりコードされ対応するフレームワーク領域と同一の軽鎖フレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む核酸構築物と置換する工程を含む。構築物を組み込むと、軽鎖可変領域はトランスジェニック動物の機能性免疫グロブリン遺伝子座の転写可変領域になり、偽遺伝子可変領域は遺伝子変換により転写V領域の配列を改変する。特定の実施形態において、操作される遺伝子座は、偽V、転写V、ならびにDおよびJ遺伝子分節を含む内在性V領域を完全に置換するよう設計される。しかしながら、非コード配列(イントロン)は、中に含まれうる内在性調節要素を保存するために内在性配置に保たれうる。
【0079】
同様に、該方法は、動物の内在性免疫グロブリン重鎖遺伝子座の可変領域を、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワーク領域をコードする重鎖可変領域;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖可変領域によりコードされ対応するフレームワーク領域と同一の重鎖フレームワーク領域をそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域と置換する工程を含みうる。構築物を組み込むと、可変領域はトランスジェニック動物の機能性免疫グロブリン遺伝子座の転写可変領域になり、偽遺伝子V領域は遺伝子変換により転写可変領域の配列を改変する。遺伝子変換により、1以上の供与偽遺伝子から転写V領域に、小(例えば1〜10ヌクレオチド)、中(10〜30ヌクレオチド)、または大(>30ヌクレオチド)DNA分節が提供されうる。遺伝子変換は多数反復して生じ得るため、多重偽Vは活発に発現するV遺伝子に配列を提供しうる。遺伝子変換の過程は偽遺伝子の選択に関して極めて可変的であるため、各々が所定のリンパ球で利用される程度で、広く多様な抗体レパートリーがトランスジェニック動物をもたらす。
【0080】
容易に明らかなように、該方法は、まず動物(転写可変領域および偽遺伝子可変領域、ならびに間の全配列を含む)の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座における可変領域を含む領域を欠失させて、例えば定常領域配列と転写可変領域との間に定常領域配列およびイントロンの一部を残す工程;次いで転写軽鎖可変領域、イントロンの残部、および複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を哺乳動物の遺伝子座に付加する工程を含みうる。
【0081】
特定の実施形態において、図5および7で図式で説明するように、トランスジェニック動物の内在機能性免疫グロブリン遺伝子の少なくとも可変領域は、該トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子可変領域を置換することなく、複数の偽遺伝子可変領域および転写可変領域を含む核酸構築物により置換されうる。このように、得られる免疫グロブリン遺伝子座(重鎖または軽鎖の遺伝子座でありうる)は、転写可変領域の上流の導入偽遺伝子のアレイに加えて内在性偽遺伝子のアレイを含みうる。
【0082】
一度、対象のトランスジェニック動物が作製されると、抗原に対する抗体は、動物を抗原で免疫することにより容易に得られる。様々な抗原がトランスジェニック宿主動物を免疫するために使用できる。このような抗原は、微生物、例えばウイルスおよび単細胞生物(細菌および菌類など)、生存する、弱毒化した、または死んだ微生物断片、または微生物から単離された抗原性分子を含む。
【0083】
ある実施形態において、動物は、治療抗体を産生するために、GD2、EGF−R、CEA、CD52、CD20、Lym−1、CD6、補体活性化受容体(CAR)、EGP40、VEGF、腫瘍関連糖タンパク質TAG−72 AFP(アルファ−フェトプロテイン)、BlyS(TNFおよびAPOLに関連するリガンド)、CA125(癌抗原125)、CEA(癌胎児性抗原)、CD2(T−cell表面抗原)、CD3(TCRに関連するヘテロ多量体)、CD4、CD11a(インテグリン・アルファ−L)、CD14(単球分化抗原)、CD20、CD22(B細胞受容体)、CD23(低親和性IgE受容体)、CD25(IL−2受容体アルファ鎖)、CD30(サイトカイン受容体)、CD33(骨髄細胞表面抗原)、CD40(腫瘍壊死因子受容体)、CD44v6(白血球の接着を媒介する)、CD52 (CAMPATH−1)、CD80(CD28およびCTLA−4の共刺激因子)、補体成分C5、CTLA、EGFR、エオタキシン(サイトカインA11)、HER2/neu、HER3、HLA−DR、HLA−DR10、HLA クラスII、IgE、GPiib/iiia(インテグリン)、インテグリンaVs3、インテグリンa4s1およびa4s7、インテグリンs2、IFN−ガンマ、IL−1s、IL−4、IL−5、IL−6R(IL6受容体)、IL−12、IL−15、KDR (VEGFR−2)、lewisy、メソテリン、MUC1、MUC18、NCAM(神経細胞接着分子)、癌胎児性フィブロネクチン、PDGFsR(ベータ血小板由来増殖因子受容体)、PMSA、腎癌抗原G250、RSV、E−セレクチン、TGFベータ1、TGFベータ2、TNFα、DR4、DR5、DR6、VAP−1(血管接着タンパク質1)またはVEGFなどで免疫されうる。
【0084】
抗原は、アジュバントの有無に関わらず、任意の簡便な方法でトランスジェニック宿主動物に投与でき、所定の計画に従って投与できる。
【0085】
免疫後、免疫されたトランスジェニック動物からの血清または乳は、抗原に特異的な医薬品等級のポリクローナル抗体の精製用に分画できる。トランスジェニック鳥の場合、抗体は卵黄の分画によっても作製できる。濃縮され、精製された免疫グロブリン画分は、クロマトグラフィー(アフィニティー、イオン交換、ゲル濾過など)、硫酸アンモニウムなどの塩、エタノールなどの有機溶媒、またはポリエチレングリコールなどのポリマーを用いた選択的沈殿により得られうる。
【0086】
モノクローナル抗体を作製するため、抗体産生細胞、例えば脾臓細胞は、免疫されたトランスジェニック動物から単離され、ハイブリドーマ産生用の形質転換細胞株との細胞融合で使用され、あるいは抗体をコードするcDNAは標準的な分子生物学技術によりクローニングされ、トランスフェクション細胞で発現する。モノクローナル抗体の作製手法は当技術分野で十分に確立されている。例えば、欧州特許出願第0 583 980 A1号、米国特許第4,977,081号、WO 97/16537号、およびEP 0 491 057 B1号を参照のこと。これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。クローニングされたcDNA分子からのモノクローナル抗体のインビトロ産生は、Andris−Widhopf et al., J Immunol Methods 242:159 (2000)およびBurton, Immunotechnology 1:87 (1995)により記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0087】
このように、トランスジェニック動物に加えて、トランスジェニック動物を抗原で免疫する工程および抗原に特異的に結合する抗体をトランスジェニック動物から得る工程を含む方法も提供される。該方法は、トランスジェニック動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製する工程、およびハイブリドーマをスクリーニングして抗原に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを同定する工程を含みうる。
【0088】
抗体が既にヒト・フレームワーク領域を含まない場合、該方法は、抗体をヒト化する工程をさらに含みうる。この方法は、抗体の定常ドメインをヒト定常ドメインで交換し、キメラ抗体を作成する工程、およびある場合では、例えばCDRのグラフトまたは再浮上(resurfacing)等により抗体の可変ドメインをヒト化する工程を含みうる。ヒト型化は、Winter (Jones et al., Nature 321:522 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534 (1988)), Sims et al., J. Immunol. 151: 2296 (1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901 (1987), Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993)、米国特許第5,723,323号、第5,976,862号、第5,824,514号、第5,817,483号、第5,814,476号、第5,763,192号、第5,723,323号、第5,766,886号、第5,714,352号、第6,204,023号、第6,180,370号、第5,693,762号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,225,539号、第4,816,567号、PCT/:米国98/16280号、米国96/18978号、米国91/09630号、米国91/05939号、米国94/01234号、英国89/01334号、英国91/01134号、英国92/01755号、WO90/14443号、WO90/14424号、WO90/14430号、欧州特許第229246号の方法に従って実行でき、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられ、本明細書で引用される参照文献を含む。
【0089】
抗体組成物
抗体組成物が提供される。抗体は、産生される抗体のCDR(即ち、対象動物により産生される抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに/または重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域)を最小限に有し、一実施形態において、対象動物により産生される抗体の全可変ドメイン(即ち、CDRとフレームワーク)を含む。このような抗体組成物は、抗原に特異的に結合するポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含み、この作製方法は知られており、上述される。
【0090】
親和性成熟中に機能遺伝子の可変ドメインに対する非遺伝子変換に基づくアミノ酸変化に起因した比較的少数のアミノ酸(即ち、アミノ酸の10%未満、5%未満、3%未満、または1%未満で生じる)を除いて、対象抗体の軽鎖および/または重鎖のCDRは上述した遺伝子座によりコードされる2〜5アミノ酸から成る。同様に、フレームワーク領域は、単量体型、製造の容易さ、高溶解度、および熱力学安定性などの望ましい特質を有することが知られる規定配列を含む。
【0091】
上記のように、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインは動物の免疫系により天然で対合する。このような抗体は、ある場合では、宿主細胞により翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)され、トランスジェニック動物の種に特有なグリコシル化パターンおよび組成を有しうる。
【0092】
ある実施形態において、トランスジェニック動物により産生される抗体が提供され、該抗体は可変ドメインと連結した定常ドメインを含む。該可変ドメインは、a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.軽鎖フレームワーク領域を含む軽鎖可変ドメイン;ならびにb)i. 2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;およびii.重鎖フレームワーク領域を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0093】
特定の実施形態において、得られる抗体は、図11および12に示される抗体のフレームワークと少なくとも80%(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるフレームワークを有しうる。
【0094】
スクリーニングの方法
対象トランスジェニック動物により産生される抗体は、目的の抗体を同定するためにスクリーニングされうる。一般に、この方法は、上述の方法を用いてモノクローナル抗体を産生する複数のハイブリッド細胞を産生する工程、および様々な検定の1つまたは組み合わせを用いて複数のモノクローナル抗体をスクリーニングする工程を含む。一般に、これらの検定は機能検定であり、下記の通りに分類されうる:抗体の結合親和性または特異性を検出する検定、および抗体が過程を阻害する能力を検出する検定。
【0095】
抗原との特異的な結合活性、または阻害活性を有するとして同定されるモノクローナル抗体は、目的のモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0096】
結合検定
これらの検定において、抗体は基質に特異的に結合する能力について試験される。抗体結合に照らして、「特異的に」という用語は、特異的抗原、即ちポリペプチド、またはエピトープに対する抗体の高結合性および/または高親和性結合を指す。多数の実施形態において、特異的抗原は、抗体産生細胞が単離された動物宿主を免疫するために使用される抗原(または抗原の断片もしくは細画分)である。抗原またはその断片に特異的に結合する抗体は、他の抗原に対する同じ抗体の結合よりも強力である。ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、弱いながらも検出可能なレベル(例えば、目的のポリペプチドに示される結合の10%以下)で他のポリペプチドに結合しうる。このような弱い結合またはバックグラウンド結合は、例えば適切な対照の使用により、対象ポリペプチドへの特異的な抗体結合と容易に識別できる。一般に、特異的抗体は、10−7 M以上、例えば10−8M以上(例えば、10−9M、10−10、10−11など)の結合親和性で抗原に結合する。一般に、10−6M以下の結合親和性をもつ抗体は、現在使用される従来方法を用いて検出可能なレベルで抗原に結合しないという点で有用ではない。
【0097】
典型的には、スクリーニング検定の実施において、抗体を産生する宿主細胞のライブラリーにより産生される抗体試料は、各抗体が、例えばプレート数およびプレート上の位置、または抗体を産生した宿主細胞培養物を同定できる他の識別子を用いて同定できる方法で、固体支持体上に置かれる。
【0098】
本発明の抗体は当技術分野で知られる任意の方法により免疫特異的結合についてスクリーニングされうる。使用できる免疫測定は、ほんの数例を挙げれば、ウェスタンブロットなどの技術を用いる競合および非競合検定系、放射免疫測定、ELISA(酵素結合免疫吸着測定)、「サンドウィッチ」免疫測定、免疫沈降測定、沈降素反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散測定、凝集測定、補体結合測定、免疫放射測定、蛍光免疫測定、およびプロテインA免疫測定を含むが、これらに限定されない。このような検定は日常的なものであり、当技術分野で周知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと。これは全体として参照により本明細書に組み入れられる)。例示的な免疫測定は以下に簡潔に記載する(が、限定を意図しない)。
【0099】
免疫沈降手順は一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはタンパク質阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジウム酸ナトリウム)を補足したRIPA緩衝液(1% NP−40またはTriton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、pH7.2の0.01Mリン酸ナトリウム、1%トラジロール)などの溶解緩衝液で細胞集団を溶解する工程、目的の抗体を細胞溶解物に添加する工程、セ氏4度で一定期間(例えば、1〜4時間)インキュベーションする工程、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加する工程、4oCで約1時間以上インキュベーションする工程、ビーズを溶菌緩衝液で洗浄する工程、ならびにビーズをSDS/試料緩衝液に再懸濁する工程を含む。特定の抗原を免疫沈降させる目的抗体の能力は、例えばウェスタンブロット分析により評価できる。当業者は、抗体の抗原への結合を増加させバックグラウンドを減少させるよう改変できるパラメータ(例えば、セファロースビーズで細胞溶解物を予め除去する)に関して精通しているであろう。
【0100】
ウェスタンブロット分析は一般に、タンパク質試料の調製、続いてポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて8%〜20%のSDS−PAGE)でのタンパク質試料の電気泳動、およびポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンなどの膜への分離タンパク質試料の転写を含む。転写後、膜はブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは脱脂乳を含むPBS)でブロックし、洗浄緩衝液(例えば、PBS−Tween20)で洗浄し、一次抗体(目的の抗体)でインキュベーションし、ブロッキング緩衝液で希釈する。このインキュベーション後、膜は洗浄緩衝液で洗浄し、酵素基質(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pまたは125I)と結合させた二次抗体(一次抗体を認識する、例えば抗ヒト抗体)でインキュベーションし、さらなる洗浄後、抗原の存在が検出されうる。当業者は、検出シグナルを増大させバックグランド・ノイズを減少させるよう改変できるパラメータに関して精通するであろう。
【0101】
ELISAは、抗原を調製する工程、96ウェル・マイクロタイター・プレートのウェルを抗原で被覆する工程、酵素基質(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物に結合させた目的の抗体を添加する工程、および一定期間インキュベーションする工程、および抗原の存在を検出する工程を含む。ELISAにおいて、目的の抗体は検出可能な化合物と結合させる必要はないが、代わりに、検出可能な化合物と結合させた二次抗体(目的の抗体を認識する)がウェルに添加されうる。さらに、ウェルを抗原で被覆するかわりに、抗体がウェルへ被覆しうる。この場合、検出可能な化合物と結合させた二次抗体は、目的とする抗原を被覆ウェルに添加した後に添加されうる。当業者は、検出シグナルを増大させるよう改変できるパラメータおよび当技術分野で知られるELISAの他の変形に関して精通するであろう。
【0102】
抗体の抗原への結合親和性および抗体−抗原相互作用のオフレート(off−rate)は競合結合検定により測定できる。競合結合検定の一例は、多量の非標識抗原の存在下で標識抗原(例えば、3Hまたは125I)を目的抗体とインキュベーションする工程、および標識抗原と結合した抗体を検出する工程を含む放射免疫測定である。特定抗原に対する目的抗体の親和性および結合オフレートはスキャッチャード・プロット分析によりデータから決定できる。二次抗体との競合も放射免疫測定を用いて決定できる。この場合、抗原は、多量の非標識二次抗体の存在下で、標識化合物(3Hまたは125I)と結合させた目的抗体とインキュベーションされる。
【0103】
本発明の抗体は、当技術分野で一般に知られる技術を用いて抗原を発現できるベクターまたはベクター単独でトランスフェクションされた細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳動物細胞)を免疫細胞化学方法を用いてスクリーニングしてもよい。抗原でトランスフェクションされた細胞に結合するが、ベクターのみでトランスフェクションされた細胞には結合しない抗体は、抗原特異的である。
【0104】
ある実施形態において、しかしながら、検定は抗原捕捉検定であり、抗体のアレイまたはマイクロアレイはこの目的で使用してもよい。ポリペプチドのマイクロアレイの作製方法および使用方法は当技術分野で知られている(例えば、米国特許第6,372,483号、第6,352,842号、第6,346,416号および第6,242,266号を参照)。
【0105】
阻害剤検定
ある実施形態において、検定は、第一化合物と第二化合物(例えば、2つの生体高分子化合物)との相互作用に対する抗体の特異的阻害を測定し、または特異的に反応(例えば、酵素反応)を阻害する。相互作用阻害検定において、1つの相互作用基質である、通常、タンパク質などの生体高分子化合物(例えば受容体)は、反応槽の固体支持体に結合しうる。抗体が反応槽に添加され、続いて、基質の検出可能な結合相手、通常、タンパク質などの生体高分子化合物(例えば受容体の放射標識リガンド)が添加される。槽の洗浄後、相互作用の阻害は、槽に存在する検出可能な結合相手の量を決定することにより測定されうる。相互作用の阻害は、抗体を含まない対照検定と比較して、結合相手の結合が約20%を超えて、約50%を超えて、約70%を超えて、約80%を超えて、または約90%を超えてもしくは95%以上減少する場合に生じる。
【0106】
反応阻害検定において、酵素は反応槽で固体支持体と結合しうる。抗体は通常、反応槽、続いて酵素の基質に添加される。多数の実施形態において、酵素と基質の反応産物が検出可能であり、一定時間後に、反応は通常停止する。反応が停止した後、反応阻害は槽に存在する検出可能な反応産物のレベルを決定することにより測定されうる。反応阻害は、抗体を含まない対照検定と比較して、反応速度が約20%を超えて、約50%を超えて、約70%を超えて、約80%を超えて、または約90%を超えてもしくは95%以上低下する場合に生じる。
【0107】
インビボ検定
ある実施形態において、モノクローナル抗体はインビボで試験される。一般に、該方法は、疾患または状態の動物モデルに対象モノクローナル抗体を投与する工程、およびモデル動物の疾患または状態に及ぼすモノクローナル抗体の影響を決定する工程を含む。本発明のインビボ検定は対照を含み、適切な対照はモノクローナル抗体が存在しない試料を含む。一般に、複数の検定混合物は、種々の濃度に対する異なる応答を得るために、異なる抗体濃度で並行して行われる。典型的には、これらの濃度の1つは、負の対照として、即ち、ゼロ濃度または検出レベル未満として、役立つ。
【0108】
目的のモノクローナル抗体は、動物モデルの疾患または状態の症状を調節する、即ち、抗体不在下の対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上までに該症状を増減するものである。一般に、目的のモノクローナル抗体は、対象動物を疾患または状態を患わない類似または同等の動物にさせる。本発明の方法および組成物を用いて同定された治療価値を有するモノクローナル抗体は、「治療」抗体と呼ばれる。
【0109】
目的の抗体を発現するハイブリッド細胞は免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする核酸を含むため、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸は、目的のモノクローナル抗体を発現する宿主細胞が同定される場合に同定されうる。このように、対象核酸は当業者に知られる様々な方法により同定されうる。同様な方法は、ハイブリドーマ技術を用いたモノクローナル抗体の産生において、宿主細胞培養物を同定するために用いられる(Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, First Edition (1988) Cold spring Harbor, N.Y.)。
【0110】
例えば、目的のモノクローナル抗体を同定すると、目的の抗体を発現する宿主細胞は、抗体試料毎に対応する宿主細胞培養物を列挙する「参照」表を用いて同定されうる。他のある実施形態において、抗体ライブラリー試料識別子を含む参照表、対応する発現カセットライブラリー試料識別子および/または宿主細胞識別子が対象核酸を同定するために使用されうる。
【0111】
一度同定されると、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸は回収され、特徴決定され、および当業者になじみのある技術を用いて操作されうる(Ausubel, et al, Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, (1995) and Sambrook, et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (2001) Cold Spring Harbor, N.Y.)。
【0112】
抗体の発現
目的のモノクローナル抗体を産生する幾つかの方法も提供される。一般に、これらの方法は、目的のモノクローナル抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗体産生に十分な条件下でインキュベーションする工程を含む。
【0113】
幾つかの実施形態において、目的のモノクローナル抗体を産生する方法は、目的のモノクローナル抗体用の同定発現カセットを適切なベクターに移す工程、および組み換えベクターを宿主細胞に移しモノクローナル抗体の発現を提供する工程を含む。幾つかの実施形態において、対象方法は、同定された重鎖および軽鎖から、少なくとも可変ドメインをコードする配列を免疫グロブリン重鎖および軽鎖の発現に適切なベクターに移す工程を含む。適切な定常ドメインをコードする配列および/または他の抗体ドメインをコードする配列がこの時点で可変ドメインをコードする配列に付加されてもよい。これらの核酸修飾は対象抗体のヒト化も可能にしうる。
【0114】
対象モノクローナル抗体は、抗体の合成について当技術分野で知られる任意の方法により、特に組み換え発現技術により、産生できる。
【0115】
対象モノクローナル抗体、またはその断片、誘導体もしくは類似体の組み換え発現は、通常、抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を要する。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写および翻訳の制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために使用できる。これらの方法は、例えば、インビトロ組み換えDNA技術および合成技術を含む。このように、本発明は、本発明の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0116】
発現ベクターは従来技術により宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞は次いで培養し対象抗体を産生する。大半の実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、宿主細胞で共発現し、免疫グロブリン分子全体の発現をもたらす。
【0117】
様々な宿主発現ベクター系は対象のモノクローナル抗体を発現するために利用されうる。これらは、抗体をコードする配列を含む組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体をコードする配列を含む組み換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピチア属);抗体をコードする配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;抗体をコードする配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイク・ウイルス、CaMV;;タバコ・モザイク・ウイルス、TMV)に感染した、または組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノム(メタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5 Kプロモーター)に由来するプロモーターを含む組み換え発現構築物を含む哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞など)を含むがこれらに限定されない。多数の実施形態において、大腸菌などの細菌細胞、および真核細胞は、組み換え抗体分子全体の発現用に使用される。例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒト・サイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーター要素などのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986); Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0118】
細菌系では、幾つかの発現ベクターは、発現する抗体分子向けの用途に応じて選択されうる。例えば、大量のタンパク質を産生すべき場合、抗体分子の医薬組成物を生成するため、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルな発現を指示するベクターが望ましい。このようなベクターは、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791 (1983))(抗体をコードする配列は、融合タンパク質が産生されるように、lac Zをコードする領域をインフレームでもつベクターに個別に連結されうる);pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101−3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24:5503−5509 (1989))などを含むがこれらに限定されない。pGEXベクターも、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来ポリペプチドを発現させるために使用されうる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、基質グルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出により溶解細胞から容易に精製できる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から切り離せるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むよう設計される。
【0119】
昆虫系においては、オートグラファ・カリフォミカ(Autographa califomica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は抗体を発現するためのベクターとして使用される。ウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。抗体をコードする配列はウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリン・プロモーター)の制御下に置かれる。
【0120】
哺乳動物宿主細胞において、幾つかのウイルスに基づく発現系は対象の抗体を発現するために利用されうる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的の抗体をコードする配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3部リーダー配列に連結されうる。このキメラ遺伝子は次いでインビトロまたはインビボの組み換えによりアデノウイルスゲノムに挿入されうる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)への挿入は、感染宿主で抗体分子を発現できる生存組み換えウイルスをもたらす(例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355−359 (1984)を参照)。発現効率は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネータ等の包含により増強されうる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51−544 (1987)を参照)。
【0121】
組み換え抗体の長期高収率産生のため、安定な発現が用いられうる。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株が操作されうる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞は免疫グロブリン発現カセットおよび選択可能なマーカーで形質転換できる。外来DNAの導入後、操作細胞は強化培地で1〜2日間増殖させた後、選択培地に移される。組み換えプラスミドの選択可能なマーカーは選択に対する耐性を与え、細胞はプラスミドを染色体に安定に組み込み、増殖して増殖巣を形成でき、巣は順にクローニングされ、細胞株に展開できる。このような操作細胞株は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用でありうる。
【0122】
それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞で使用できる単純ヘルペス・ウイルス・チミジン・キナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))、およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22:817 (1980))遺伝子を含むがこれらに限定されない幾つかの選択系が用いられうる。また、代謝拮抗剤耐性は、下記の遺伝子について選択の基礎として使用できる:メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77:357 (1980); O’Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるneo(Clinical Pharmacy 12:488−505; Wu and Wu, Biotherapy 3:87−95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharnacol. Toxicol. 32:573−596 (1993); Mulligan, Science 260:926−932 (1993); and Morgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191−217 (1993); TIB TECH 11(5):155−215 (1993));およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147 (1984))。組み換えDNA技術の分野で一般に知られる方法は、所望する組み換えクローンを選択するために日常的に適用され、このような方法は、例えば、Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990); and in Chapters 12 and 13, Dracopoli et al. (eds), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994); Colberre−Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1 (1981)に記載されている。
【0123】
宿主細胞は本発明の2つの発現ベクターを用いて共トランスフェクションされてもよく、第一のベクターは重鎖由来のポリペプチドをコードし、第二のベクターは軽鎖由来のポリペプチドをコードする。2つのベクターは異なる選択可能なマーカーおよび複製起点を含み、これらは重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等な発現を可能にする。あるいは、重鎖および軽鎖の両ポリペプチドをコードし発現できる単一ベクターが使用されてもよい。
【0124】
一度、本発明の抗体分子が産生されると、免疫グロブリン分子を精製するために当技術分野で知られる任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後に特異的抗原に対する親和性による)、およびサイジング・カラム・クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差異により、またはタンパク質を精製する他の任意の標準技術により、精製されうる。多数の実施形態において、抗体は細胞から培地中に分泌され、培地から収集される。
【0125】
有用性
当技術分野で知られるように、または本明細書に記載するように、本発明の少なくとも1つの抗体を用いて、例えば細胞、組織、器官、動物、または患者に治療上有効な量の抗体を投与または接触させることにより、細胞、組織、器官、動物または患者において、少なくとも1つの抗原関連疾患を調節または治療する方法も提供される。本発明は、細胞、組織、器官、動物、または患者において、肥満、免疫関連疾患、心臓血管疾患、感染病、悪性疾患または神経疾患の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない少なくとも1つの抗原関連疾患を調節または治療する方法も提供する。
【0126】
典型的には、病態の治療は、有効量または用量の少なくとも1つの抗体組成物を投与することにより達成される。該組成物は、合計して平均で、組成物中に含まれる活性剤の特異的活性に応じて、1投薬につき患者1キログラム当たり少なくとも約0.01から500ミリグラムの少なくとも1つの抗体、好ましくは単回または複数回投与につき少なくとも約0.1から100ミリグラムの抗体/キログラム患者となる。あるいは、有効な血清濃度は、単回または複数回の投与につき0.1−5000ng/mlの血清濃度を含み得る。適切な投薬は医師に知られており、無論、特定の病状、投与される組成物の特異的活性、および治療を受ける特定の患者に左右されるであろう。幾つかの事例において、所望の治療量に達するため、反復投与、即ち、特定の監視用量または定量の反復個別投与の提供を必要とし、所望する日用量または効果が達成されるまで個別投与が反復される。
【0127】
対象の抗体は、ある実施形態において、抗体が検出可能なマーカーと結合するまたは検出可能なマーカーと結合した二次抗体とともに一次抗体として使用される診断においても使用できる。検出可能なマーカーは、放射標識および非放射標識を含み、当業者に周知である。一般的な非放射標識は、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび蛍光分子などの検出可能な酵素を含む。蛍光分子はある波長の光を吸収し、他の波長で発光するため、例えば蛍光顕微鏡で可視化できる。分光光度計、蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーおよびフローソーターは周知であり、蛍光色素に共有結合させることにより蛍光にされた特異的分子を検出するためによく使用される。緑色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質の赤方シフト変異体、アミノクマリン酢酸(AMCA)、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、テトラメチルコーダミン(tetramethylchodamine)イソチオシアネート(TRITC)、テキサス・レッド、Cy3.0およびCy5.0などの蛍光色素は有用な標識の例である。
【0128】
蛍光マーカーが使用される場合、該分子は蛍光活性化細胞選別(FACS)などの細胞単離戦略に使用できる。蛍光活性化細胞選別において、蛍光分子で標識される細胞は、Becton−Dickinson (San Jose, Calif.) FACS IVサイトメーターなどのフロー・サイトメーターまたは同等な機器で電子的に選別される。蛍光分子は、特異的な細胞表面抗原を認識する抗体である。抗体は、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)などの蛍光マーカーに結合する。
【実施例】
【0129】
下記の実施例は、本発明のある実施形態および態様を証明しさらに説明するために提示されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0130】
実施例1
概要
簡潔には、ニワトリは生物物理学特性を備えたヒト・フレームワークを含む抗体を産生するように操作され、これは容易に作製され、最適な薬理特性を有する。操作されたニワトリの免疫グロブリン遺伝子は、同一のフレームワーク領域、ならびにセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩のランダム配列から成るCDRとともに20の合成偽遺伝子のアレイを有し、抗原に特異的な高親和性抗体を産生する。このニワトリ株は免疫され、モノクローナル抗体が回収される。
【0131】
VL偽遺伝子のアレイの遺伝子変換(全ての偽遺伝子は同一のフレームワーク領域を有し、CDRはセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩のランダムアレイから成る)は、インビトロ遺伝子変換により軽鎖を多様化し続けるウイルス形質転換されたニワトリ前B細胞株由来のDT40細胞を用いて証明される。さらに、DT40細胞は高い率で相同組み換えを受け、該組み換えはニワトリ機能性可変領域を組み換え可変領域で置換するための直接経路を提供する。
【0132】
DT40細胞のチキン軽鎖V領域のアレイを、単一のヒト・フレームワーク領域ならびにセリン、チロシン、アラニンおよびアスパラギン酸塩から成るCDRに由来する合成アレイで置換するためのノックイン標的ベクターが創出される。単一ヒト・フレームワークにおける合成CDRの遺伝子変換はDT40細胞で証明される。
【0133】
合成ヒトV領域のアレイは、始原生殖細胞(PGC)のニワトリIgLおよびIgH遺伝子座に挿入される。遺伝改変されたPGCは鳥株を創出するために使用され、該株からヒト抗体が免疫後に得られる。これらの鳥は最初のトランスジェニック動物であり、予測可能な製造特性および薬理特性をもつ被操作ヒト抗体を得る。
【0134】
Vκ3フレームワーク配列は、最高の溶解度を有し、単量体として存在し、ならびに熱力学的に安定であるために使用される。VH3フレームワーク配列は、同じ理由で、ならびにVH3フレームワークが十分に発現することが示されたため、使用される。
【0135】
実施例2
機能性Vおよび偽遺伝子のアレイ
機能性V(即ち、V領域)は、VBaseデータベースで列挙されるヒトVκ3配列のフレームワーク、CDR1およびCDR2の共通配列を抽出することにより得られた。VK3のCDR3については共通配列が導き出せないため、VBaseからhumIGKV096配列が使用された。このVK3配列はゲノムDNAおよび生産的再編成で確認した。偽遺伝子は、フレームワーク領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3のチロシン(Y)、セリン(S)、およびトリプトファン(W)のランダム・アレイのようなVκ3の共通配列を用いるよう設計された。これらの配列は表1で以下に示す。
【0136】
表1.機能性Vκ3由来遺伝子および偽V(PSI)遺伝子におけるCDR1、CDR2およびCDR3のチロシン(Y)、セリン(S)、およびトリプトファン(W)の配列
【表1】
【0137】
偽遺伝子アレイのCDR領域は僅か3アミノ酸から構築された:それぞれ40/50/10%の比率でチロシン(Y)、セリン(S)およびトリプトファン(W)。この戦略において、チロシンおよびトリプトファンは一次抗原接触残基であると予測される一方、セリンは結合ポケット内に適切な間隔を提供する。該アレイは、YまたはWが任意のCDRのあらゆる位置に出現でき、あるいは十分な数の秩序配列をまとめて提供できるよう設計され、遺伝子変換を通して効率良く任意の可能な配列を生成する。この設計により、野生型ニワトリの偽遺伝子アレイからレパートリーを作製するために使用される同じ遺伝子変換過程を用いて、多様性が合成アレイから生じると推測される。
【0138】
このアレイの性能は、Y、SおよびW残基を含む模擬「抗原で選択される」CDR配列のパネルを創出することにより、コンピュータで試験した。アレイの適切な組成(表1に列挙)は、インビトロで最適と考えられる分布である、40%チロシン、50%セリン、および10%トリプトファンであった。シミュレーションされるCDR1(またはCDR3、両方とも6つの位置を有するため)のアミノ酸配列(SAAS)は、乱数発生器を用いて、0から0.4の値をチロシンに、>0.4から.9をセリンに、ならびに>0.9から1をトリプトファンに割り当てることで創出された。CDR1(またはCDR3)のこのシミュレーションの出力は表2に示す。
【0139】
表2.表1の偽遺伝子(PSI)アレイから予測される配列を作製するために必要なCDR1(またはCDR3)のシミュレーション・アミノ酸配列(SAAS)および遺伝子変換(GC)事象
【表2】
【0140】
表2のシミュレーション・アミノ酸配列、およびSAASを創出するために使用されうるPSIを達成するために必要な遺伝子変換の最小数は、手動で求め、「GC事象」の欄で示す。一般に、本発明者達は、僅か2または3の遺伝子変換様事象で、平均2.6で任意のSAASを創出できた。遺伝子変換頻度の公表推定値は1V遺伝子につき3〜6の独立事象に及ぶため、偽遺伝子アレイは、任意の抗原配列に極めて特異的なクローンを作製するのに十分な配列および機能的多様性を生成できるべきである。
【0141】
実施例3
遺伝子標的構築物
ゲノムの修飾は2段階で行われる。まず、遺伝子標的ベクターがニワトリDT−40細胞に導入され、内在性ニワトリ軽鎖偽V遺伝子(約20Kb配列)およびニワトリ機能性V領域(リーダー、VJおよび対応するイントロン配列を含む)の全アレイを除去する。標的ベクターの図式設計は図1で説明する。
【0142】
偽V25の上流配列は5’相同領域として使用され、J−CイントロンにおけるJの下流配列は3’相同領域として使用でき、相同組換えによる標的化を促進する。loxPに隣接し、β−アクチンプロモーターにより駆動するneoRカセットは、選別に使用された後、cre媒介性組み換えにより標的細胞で除去できる。さらに、attP部位およびプロモーターを欠くpuroR(3’末端にFRT配列をもつ)が標的ベクターに含まれる(以下の記載を参照)。これは、必要に応じて、合成Vsの他のアレイの組み込みを容易にする。得られる標的遺伝子座は全てのニワトリ偽Vおよび機能性Vのアレイを除去する。第二段階において、attB部位およびプロモーター(5’末端にFRT配列をもつ)を備えた置換ベクターにおける合成Vアレイ(図2でL−sVJとして示される合成偽Vsおよび機能性Vκ3の両方を備える)は、ファージphiC31インテグラーゼ媒介性部位特異的組み換えにより、attP部位で前標的遺伝子座に挿入される(図2)。正確な組み込み事象により、プロモーターおよびプロモーターを欠くpuroRはともにピューロ(puro)で選別できる。これにより、予め導入されたattP部位での正確な組み込みを、ニワトリ・ゲノムに存在する偽attP部位での取り込みに対してほぼ100%の効率までさらに強化される。プロモーター−puroR配列は、必要に応じて、再度FRTを介して除去できる。
【0143】
合成Vアレイの組立は図3および図4で説明する。具体的には、Clontech社により開発されたインフュージョン(In−Fusion)技術は、最終ベクターへの下流クローニング用に合成Vs小断片を作製するために用いられる。インフュージョン技術は末端で相同配列と15bb重複したDNA断片を効率良く「融合」できる。15bpの相同末端は遺伝子特異的PCRプライマーの末端に付加され得る。この技術は4以上のDNA片を継ぎ目無く効率的に組み立てるために用いられてきた。合成偽Vアレイを再構築するために、約25Kbにまたがる39の分節(セグメント)(内在性ニワトリIgL配列に由来する20の合成偽Vsおよび19の偽V間配列)がともに連結される。合成偽V遺伝子は遺伝子合成により得られる。偽V間配列はBAC DNAからPCRにより得られる。全cIgL遺伝子座を含むBACクローン(CH261−29C12)は、オークランド小児病院研究所(CHORI)から得られる。この過程で、15bpの相同末端は各分節の末端に付加される。最初に、3分節がインフュージョンによりともに組み立てられる。各分節は、隣接する分節またはベクターに相同な(色分けされた)15bp配列を含む。修飾pBluescript系中間ベクターはインフュージョン用の線状化ベクターDNAとして使用される。1回目のインフュージョン後、13の中間分節が存在する。これらの13の分節は、2回目のインフュージョンを経て、9以下の開始分節をそれぞれ含む5つの最終分節を得る。
【0144】
固有の制限部位が最終分節の指示位置に付加され、従来の制限部位媒介性クローニングによる全合成偽V遺伝子座の組立を容易にする。pBeloBAC系ベクターは、attBおよびプロモーター、および7つの固有制限部位(RE−1からRE−7)を含むように修飾され、合成Vアレイの最終組立てを可能にする。偽V1リーダーとリーダー−合成ヒトVJフレームワークの配列(図4のL−sVJ)との間に内在性ニワトリ配列を含むDNA断片は、全VL遺伝子座を再構築するためにベクターにクローニングされる。
【0145】
遺伝子変換の頻度は近接する遺伝子座の転写に影響を受け得るため、本発明者達は、除去を容易にする選択可能なマーカーに隣接するLoxまたはFRT部位を有する構築物を設計した。ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子を切除するため、クローンはCreリコンビナーゼを発現するプラスミド(Vector Biolabs)でトランスフェクションし、ピューロマイシンに対する耐性をコードする遺伝子を切除するため、クローンはフリパーゼ(Flipase)(Invitrogen)を発現するプラスミドでトランスフェクションされる。次いで、細胞は単一播種し、選択可能なマーカーを含まないクローンを得た。一度これらのクローンが見えると(通常5〜7日)、本発明者達はサザン解析を用いて、抗生物質耐性遺伝子が切除されたことを確認する。本発明者達は、次いで、1.5ng/mlのトリコスタチンAを培養物に添加し、遺伝子変換を強化する。次の4週間、本発明者達は、sIgM+表現型への復帰変異を監視し、ヒトV配列へのニワトリ偽V領域の寄与を査定する。
【0146】
実施例4
DT40細胞の培養およびトランスフェクション
DT40細胞は10%リン酸トリプトース培養液、55μMベータ−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、10%FBSおよび2%ニワトリ血清を補足したDMEMで増殖する。細胞は2.5x105細胞/mlで播種し、2から3日間隔で分割する。培地が過密になりすぎないよう注意する。
【0147】
トランスフェクション用に対数期の5x106個の細胞を収集し、PBSで洗浄し、ペレットにし、100μlのAmaxa V緩衝液に再懸濁する。5μgの線状化DNAを添加し、懸濁液はキュベットに移し、550Vおよび25μFの指数関数的減衰パルスを用いて電気穿孔する。電気穿孔直後に、細胞は、1.5mlエッペンドルフ・チューブの500μlの予熱した培地に入れ、37℃で静置する。20分後、細胞は40mlの培地に再懸濁し、100μlのアリコートは4つの96ウェル・プレートに入れる。トランスフェクションの翌日、選別用に使用される抗生物質(例えば、1mg/mlの2X濃度のピューロマイシン)を含む同体積(100μl)の培地を添加して、0.5mg/mlの最終ピューロマイシン濃度にする。5から7日以内に、コロニーは直径約2mmに増殖し、24ウェル・プレートに移す。コロニーは、次いで、上記と同じ培養条件を用いて拡大する。
【0148】
安定にトランスフェクションされたコロニーは、PCRにより分析して標的化を決定し、標的化はサザン解析により候補クローンで確認する。本発明者達はそれぞれの遺伝子改変についてサザン分析により少なくとも2つのクローンを同定する。
【0149】
実施例5
sIgM+復帰変異検定を用いた遺伝子変換の評価
遺伝子変換率はsIgM+復帰変異検定により監視する(Yang e al., J. Exp. Med. 203: 2919−2928, 2006)。この系において、VL遺伝子の128位に単一塩基挿入を有するフレームシフト変異のDT40−CL18により、軽鎖は内在性重鎖と対合できないため、細胞は表面IgM−である(Yang et al, 2006)。フレームシフト変異が遺伝子変換事象により復帰変異する場合、細胞は蛍光活性化細胞選別装置(FACS)により容易に同定されるsIgM+の表現型になる。DT40−CL18フレームシフト変異体からの培養開始4週後、約1.5%の細胞がsIgM+である。次いで、これらのクローンは回収され、V領域は機能性Vの多様性を十分に実証するために配列決定される。
【0150】
この適用において、機能性Vκ3遺伝子は共通配列であるため、CDRは、セリン、アラニンおよびチロシンに加えてトリプトファン、グリシン、バリン、グルタミンおよびアスパラギンから成る。合成偽Vsにおける4アミノ酸の蓄積は遺伝子変換の測定基準である。
【0151】
この適用においてsIgM復帰変異検定を用いるために、ヒト機能性V領域はCDR1にアンバー終止コドンを含むよう設計される。従って、導入遺伝子の野生型も変異版も代わりにDT40細胞のゲノムの導入attP部位に挿入される。野生型版は、機能性軽鎖が内在性重鎖と対合できIgM発現を再構築することの証拠を提供する。重鎖および軽鎖の定常領域はニワトリ起源であるため、正常な対合が生じそうであるが、ヒトおよびニワトリのV領域間で干渉の可能性がある。その通りだとすると、本発明者達はsIgM+復帰変異検定を利用できず、遺伝子変換事象の評価を専ら配列分析に依存するであろう。しかしながら、マウス可変領域がニワトリ定常領域に接合する場合に完全抗体が組み立てられるため、キメラ・ヒト−ニワトリ軽鎖がニワトリ重鎖と対合するという本発明者達の推測に対する信憑性を高める。さらに、Vκ3はニワトリ機能性Vsと約70%相同であり、この相同性レベルは生産的な対合を容易にすると予期される。
【0152】
4週間の培養期間の終わりに、導入遺伝子の変異版を発現する細胞はウサギ抗ニワトリIg(Sigma)で染色し、単一sIgM+細胞はFACSにより96ウェル・プレートへ選別される。これらのデータは、遺伝子変換が起きたという最初の示唆を提供し、本発明者達は細胞の約1.5%がsIgM+であると予測する(Yang et al, 2006)。細胞は5〜7日間増殖し、IgM mRNAは各ウェルから調製される。得られるcDNAは5’リーダー・ペプチド・プライマーおよび3’ CLプライマーを用いて増幅する。両プライマーはニワトリ起源であるため、遺伝子変換の程度に関わらず、VLを増幅する。アンプリコンはTOPO TAクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングされる。大腸菌形質転換体コロニー由来のプラスミドDNAは各ウェルから調製され、クローニングされた挿入物は配列決定される。配列は原型CDRと比較して分析し、チロシン、セリンおよびトリプトファンの蓄積は遺伝子変換の指標として用いられる。
【0153】
実施例6
ノックアウト・ベクターおよびDT40細胞における該ベクターのトランスフェクション
下記の実施例で提示されるデータはヒトIg軽鎖導入遺伝子が単一のフレームワーク領域を含むことを示し、上流のヒト合成偽遺伝子のアレイはニワトリB細胞株DT40のニワトリ軽鎖遺伝子座に挿入できる。遺伝子変換はニワトリB細胞の合成CDRを多様化する。
【0154】
ヒトV領域によるニワトリ軽鎖遺伝子座の置換は上記の通りに2段階で行った:chIgL遺伝子座のノックアウトおよび該遺伝子座のattP部位の置換、続いてインテグラーゼを用いたヒトV領域のノックイン。ノックアウト・ベクターはV、JおよびC領域を欠失し(図5)、ニワトリ偽遺伝子を残すように設計され、これは、ヒトVとの配列相同性が低いため(フレームワーク領域2のごく僅かな長さに弱い相同性)、遺伝子変換を妨げないと予測される。
【0155】
標的ベクター用の5’および3’相同アームは、ゲノムDNAのPCR増幅により調製され、ピューロマイシン、EGFPおよびプロモーターを欠くneo選択可能なカセットとともに組み立てられた。EGFPマーカーは、トランスフェクションされた細胞およびコロニーを同定し追跡するのに有用であり、とりわけ原生殖細胞の場合、細胞が増殖する支持細胞層が小コロニーの可視化を時折困難にするため有用である。さらに、EGFPは、UV光をヒナに照らすことにより原生殖細胞におけるノックアウトまたはノックインの生殖細胞系列伝達のスクリーニングおよび緑色蛍光の査定を容易にする。ピューロマイシン遺伝子はノックアウト・クローンの選別に用いられ、プロモーターを欠くneo遺伝子は後に偽遺伝子アレイのインテグラーゼ媒介性挿入の選別に使用される。attP部位はΦC31インテグラーゼによる組み換えのためneo遺伝子の前に配置された。loxP部位は後にCreリコンビナーゼにより選択可能なマーカーを除去するために含められた。
【0156】
ノックアウトベクターは野生型DT40細胞にトランスフェクションされ、ピューロマイシン耐性クローンが選別され、相同組み換えにより該ベクターを組み込んだクローンがスクリーニングされることにより、軽鎖をノックアウトした。DT40における軽鎖遺伝子の2つの対立遺伝子の内、一方は生殖細胞系立体配置にあり発現しないのに対して、他方はVJ再編成を経て軽鎖遺伝子を発現する。再編成された対立遺伝子は、内在性軽鎖の発現を除外するため、ノックアウトされてもよく、表面IgM−陰性細胞をもたらし、下流分析を平易にする。生殖細胞系対立遺伝子は、RAG−1が発現しないため、再編成できない。スクリーニングされた117クローンの内、8クローンは再編成された対立遺伝子のノックアウトを有し、10は生殖細胞系対立遺伝子のノックアウトを有し、全体頻度は約15%の標的化であり、DT40の期待度数であった。図6はスクリーニングの結果例を示す。
【0157】
図6の左パネルはノックアウトから得られた結果を示す。一方のプライマーは標的ベクターのゲノム隣接領域5’にあり(actgtgctgcaggtggctatg;配列番号:53)、他方のプライマーは選択可能なマーカーカセットにある(atacgatgttccagattacgctt;配列番号:54)。図6の第二パネルは対立遺伝子特異的PCRを示す。両プライマーはニワトリ軽鎖遺伝子座にあり(順方向プライマーGCGCTGACTCAGCCGTCCTC (配列番号:55);逆方向プライマーgagacgaggtcagcgactcac (配列番号:56))、VJイントロンが該対立遺伝子から欠失されたため、再編成対立遺伝子(R対立遺伝子)からより小さな産物を産生し、生殖細胞系対立遺伝子(G対立遺伝子)はイントロンを含み、より大きな断片を産生する。生殖系対立遺伝子のノックアウト(KO−G)において、R対立遺伝子のみが検出される。再編成対立遺伝子のノックアウト(KO−R)においては、G対立遺伝子のみが検出される。図6のパネルの第三セットはノックインについて得られた結果を示す。5’検定は、組み込みの5’側にβ−アクチン−neo融合を検出する(順方向プライマーctctgctaaccatgttcatgccttc (配列番号:57);逆方向プライマーAGTGACAACGTCGAGCACAGCT (配列番号:58))。3’検定はattR部位にわたる軽鎖に2プライマーを使用する(順方向プライマーcgcacacgtataacatccatgaa (配列番号:59);逆方向プライマーgtgtgagatgcagacagcacgc (配列番号:60))。ノックイン試料において、野生型対立遺伝子もノックイン対立遺伝子も検出されるのに対し、野生型試料においては、野生型断片のみが観察される。図6の第四パネルは、DT40クローン(KI)の2つのノックインでhuVK−chCLキメラ軽鎖の発現を示すRT−PCR結果を示す(huVK反応:順方向プライマーATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTC (配列番号:61);逆方向プライマーcaggtagctgctggccatatac (配列番号:62);B−アクチン反応順方向プライマーaacaccccagccatgtatgta (配列番号:63);B−アクチン反応逆方向プライマーtttcattgtgctaggtgcca (配列番号:64))。対照試料は親ノックアウト(KO)であった。
【0158】
実施例7
ノックインベクターおよびDT40細胞における該ベクターのトランスフェクション
機能性Vおよび偽遺伝子アレイは幾つかのニワトリおよびヒトIg配列から組み立てられた(図7)。ベクターは、機能性再編成ヒトVカッパ遺伝子(huVK)、ニワトリ軽鎖定常領域、合成VK偽遺伝子(SynVK)およびニワトリ・イントロンのアレイ、ならびに軽鎖の適切な発現用の調節配列を含む。機能性VKは幾つかの基準を満たし、下流の製造能力の基準もニワトリのB細胞発生を支持するための基準も満たす。使用される機能性VKおよびVHは、高レベルで発現し、適切な構造に折り畳まれ、互いに効率良く対合して機能性抗体分子を形成し、ニワトリで自己反応性B細胞をもたらす任意のニワトリ・エピトープを認識しない。
【0159】
挿入用のヒトVKおよびVH遺伝子の機能性対を選別するために、再編成された幾つかの機能性ヒトVsがヒトB細胞DNAからクローニングされた。次いで、16のVKおよび16のVH遺伝子は、高レベルで発現する機能性的抗体を形成する対を見出すために、組み合わせて発現した。選択されたVK配列のクローンE6はフレームワーク領域1の3アミノ酸変化を除いて生殖細胞系遺伝子VK3−15と同一であった。SynVK偽遺伝子アレイは、huVK E6と同一のフレームワーク領域、ならびにチロシンおよびトリプトファンを含むCDRを有するよう設計された。SynVK遺伝子が合成され、12偽遺伝子のアレイに組み立てられた。機能性ヒトVKはニワトリ・イントロン配列を用いて合成された後、ニワトリ軽鎖プロモーター、定常領域およびJ−Cイントロンとともにクローニングされた。得られるノックイン遺伝子座は、ニワトリ非コード調節配列を用いて、ニワトリ軽鎖定常領域にスプライシングされる完全ヒトV領域から成るキメラ軽鎖を発現する。最後に、ノックアウト対立遺伝子にベクターを挿入するため、本発明者達はattB部位およびβ−アクチンプロモーターを付加し、loxP部位は選択可能なマーカーおよびプラスミド骨格を最終的に切除するために含められた。ノックイン戦略は図7で説明する。
【0160】
SynVK挿入ベクターは遺伝子変換用に簡易な表面IgM (sIgM)復帰変異検定ができるよう設計された(Buerstedde, Reynaud et al. 1990. Light chain gene conversion continues at high rate in an ALV−induced cell line Embo J 1990 vol. 9 (3) pp. 921−7)。終止コドンは、全長軽鎖が発現しないように、「機能性」発現ヒトV領域のCDR1に導入された。軽鎖が存在しないと、DT40重鎖は細胞表面に輸送されず、ノックイン細胞はsIgM陰性である。終止コドンを含まないSynVK偽遺伝子によるCDR1の遺伝子変換は、軽鎖配列を修復し、その全長オープン・リーディング・フレームを復元する。次いで、軽鎖は重鎖に結合し、完全IgM複合体を形成し、細胞はsIgM陽性になる。DT40ノックイン・クローンはマウス抗ニワトリIgM抗体(Southern Biotechnology Associates)を用いてsIgM発現について染色し、フローサイトメトリーによりsIgM陽性細胞を選別し、配列レベルで遺伝子変換を詳細に分析するために、遺伝子変換された純粋な細胞集団を得ることができる。完全野生型E6 VK領域をもつベクター版も、キメラ軽鎖(ヒトV領域+ニワトリC領域)が十分に発現し、DT40重鎖と対合できることを検証するために作製され、ヤギ抗ヒトカッパ抗体はトランスフェクションされたDT40の表面上でヒト可変領域の発現を検証した。
【0161】
SynVK挿入ベクターは、CMV−インテグラーゼ発現構築物を用いて、IgLノックアウトDT40細胞内に共トランスフェクションされた。両構築物は、環状超らせんDNAとして導入された。ノックアウト細胞は、ノックアウト対立遺伝子のneo遺伝子がプロモーターを欠くために、G418選別に対して感受性があると予期され、SynVKベクターを挿入し、β−アクチンプロモーターをneo遺伝子と連結した後のみ、G418耐性が誘導される。SynVKベクターのトランスフェクション後、細胞は4または6 mg/ml G418 (ノックアウト細胞でいくらか観察されるバックグラウンドneo耐性のため、比較的高レベルの薬剤選択が必要とされた)で挿入選別された。コロニーが得られ、挿入の5’および3’側ならびにヒトVK機能遺伝子についてのPCR検定を用いて、8個の中から2コロニーがノックインを含むことが見出された。図2は該クローンの1つについてのPCR結果を示す。
【0162】
実施例8
DT40細胞における合成V領域の遺伝子変換の証明
軽鎖ノックインDT40クローンは、終止コドンの修復ならびにCDR1へのチロシンおよびトリプトファンの同時挿入をもたらす遺伝子変換事象が蓄積する時間を見越して、トランスフェクション後数週間増殖させた。細胞は幾つかの時点で試料採取し、マウス抗ニワトリIgM抗体を用いてsIgM発現について染色した。トランスフェクション後約2週間のノックインクローンにおいて、あるとしても、ごく僅かの細胞がsIgMを発現した。トランスフェクション後29〜41日目に、僅かな割合(0.2%)のsIgM陽性細胞が観察されたことにより、本発明者達はPCR用にFACSにより細胞を選別し、配列分析できた。僅か2つの偽遺伝子(2−SynVK)を含むノックイン構築物の初期版および12の偽遺伝子版(12−SynVK)をもつ細胞株が分析された。
【0163】
ゲノムDNAは分別されたsIgM+細胞から調製し、機能性huVK遺伝子はヒトVKリーダー配列およびhuVKの下流にあるイントロンにおいてプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCR産物はクローニングされ、単一コロニーは少量調製および配列決定用に採取した。高品質の配列が約350のPCRクローンから得られた。明白に偽遺伝子供与体と指定される確実な遺伝子変換が2−SynVKで86クローン、12−SynVKで157クローン観察された(図8)。それぞれの遺伝子変換事象は、チロシンまたはトリプトファンのいずれかを含む機能性Vに合成CDRを創出した。CDR1の終始コドンの修復が選択されたため、多数の遺伝子変換がCDR1のみで観察されたということになる。4配列において、遺伝子変換はCDR2でも観察され、CDR1を変換した同一の偽遺伝子が各事例でCDR2も変換したため、おそらく単一の長い遺伝子変換事象の結果であろう。幾つかの配列は明白な遺伝子変換を含んだが、特定の偽遺伝子供与体を指定することは不可能であった。これらの配列は、2つの重複する遺伝子変換事象、または単一の偽遺伝子による短い中断された遺伝子変換の結果であるからである。ニワトリVL偽遺伝子による遺伝子変換の証拠は観察されなかった。遺伝子変換経路の全てはSynVK偽遺伝子プールに由来するからである。DT40によりまたはTaqポリメラーゼの誤りにより導入されたかもしれない幾つかの点突然変異も観察された。しかしながら、1つの配列は点突然変異により終止コドンを修復し、これはsIgM発現で選別されたため、DT40由来の突然変異の可能性がある。
【0164】
2−SynVKおよび12−SynVKの両方を含む細胞において、SynVK9偽遺伝子を除く全てのSynV偽遺伝子が遺伝子変換に関与した(図8)。2−SynVKでは、近位の偽遺伝子は遠位の偽遺伝子より約9倍利用された。2つの偽遺伝子は機能性VKと比較して異なる方向にもあり、近位の偽遺伝子は逆方向であり、これは、近接または方向のいずれが遺伝子変換に関与する偽遺伝子の効率を決定する際により重要であるかという疑問を提起した。12のSynVK細胞において、遠位偽遺伝子および近位偽遺伝子は同様な頻度で用いられたため、機能性VKとの近接は遺伝子変換の頻度に影響を及ぼさないようだった。従って、方向は近接より重要であり、逆方向はより効率的であるかもしれない。
【0165】
2つのSynVKおよび12のSynVKを含む構築物は図8Aに図示し、付番されたSynVK偽遺伝子、機能性huVK遺伝子、およびニワトリ定常領域を示す。偽遺伝子は任意でアレイのクローニング前に付番され、番号順に組み立てられなかった。SynVKおよびhuVKの方向は上下の矢印で示す。各偽遺伝子が遺伝子変換で使用された回数を示す。観察される遺伝子変換事象の幾つかは特定の偽遺伝子を指定できなかったため、遺伝子変換事象の総数は僅かに多い。図8Bは遺伝子変換事象の例を示す。「機能性」huVKのCDR1配列が示される(入力)。終止コドンには下線を引く。表面IgM+ DT40から得られる配列は、右に示される遺伝子変換で使用されたSynVK偽遺伝子とともに、以下に示す。チロシンおよびトリプトファンはCDR1の全位置に蓄積した。ダッシュは入力配列との配列同一性を示す。
【0166】
偽遺伝子SynVK9は遺伝子変換が無く、SynVK3は僅か1事象であった。これらの2つの偽遺伝子はCDR1の第3コドンに巨大残基(チロシンまたはトリプトファン)を挿入するのに対し、他の偽遺伝子は全て該位置で野生型バリン残基を挿入する。特異的重鎖をもつこの人工DT40系において、該位置に巨大残基をもつ軽鎖が抗体を不活性化することは可能であり、これらの偽遺伝子による遺伝子変換でsIgM陽性復帰変異体を回復することは不可能である。
【0167】
上記で論議したこれらの結果は、ニワトリB細胞でのヒトVK領域の遺伝子変換を証明し、チロシンおよびトリプトファンを含む合成CDRを創出する。
【0168】
実施例9
最適なヒトVHおよびVLフレームワークの同定
cDNAは正常なヒト末梢血リンパ球から調製し、VH3およびVK3に特異的なプライマー対を用いてPCR増幅した。VH3プライマーは、5‘GGCTGCGATCGCCATGGAGTTTGGGCTKAGCTGG 3’ 順方向(配列番号:49)であり、5’ATGCGTTTAAACTTTACCCGGAGACAGGGAGAGG 3’逆方向(配列番号:50)であった。このプライマー対は、VH3/IgG1アイソタイプの完全重鎖に対応する1.5 kb DNA断片を増幅した。
【0169】
VK3プライマーは、5’GGCTGCGATCGCCATGGAACCATGGAAGCCCCAGCAC 3’順方向(配列番号:51)および5’ GGGGGTTTAAACACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCT 3’逆方向(配列番号:52)であった。このプライマー対は、VK3/CKアイソタイプの完全軽鎖に対応する700bp DNA断片を増幅した。
【0170】
アンプリコンは発現ベクターpF4a (Promega)に直接クローニングし、機能コード配列を有することを確認した。30の固有配列重鎖および30の固有配列軽鎖は発現レベルの評価に用いた。全ての実験において、プラスミドDNAは慎重に定量化し、一過性トランスフェクションで使用し、完全ヒトIgGタンパク質を産生した。該タンパク質は次いでELISAにより定量化した。まず、単一の機能性重鎖は30軽鎖のそれぞれと対合した。並行して、単一の軽鎖は30機能性重鎖のそれぞれと対合した。これにより、上位16の発現重鎖および上位16の軽鎖を選別でき、4つの8x8マトリクスを作成した。マトリクス例は図9に示す。
【0171】
上位2つの重鎖および軽鎖はこれらのマトリクスから選択され、プラスミドDNA濃度を変えることにより一過性トランスフェクションでさらに分析した。また、異なる対の相対的安定性は、タンパク質定量前に37°Cで長いインキュベーションにより評価した。図10に示されるこれらの実験結果は、発現レベルおよび安定性に最適な対がクローン「E6」軽鎖およびクローン「C3」重鎖であることを明白に証明する。これらのV遺伝子のフレームワーク領域は、従って、SynV軽鎖および重鎖遺伝子座の構築の基準としてそれぞれ使用された。E6およびC3クローンのヌクレオチド配列ならびにコードされるアミノ酸配列は図11および12に示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
をコードする転写軽鎖可変領域を含む機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写軽鎖可変領域の前記フレームワーク領域と同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワーク領域
をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域
を含む免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含むゲノムを含むトランスジェニック非ヒト動物であって、
該複数の偽遺伝子軽鎖可変領域が該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子と操作可能に連結され、該トランスジェニック動物における遺伝子変換によりヌクレオチド配列を該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の該転写軽鎖可変領域に提供するトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項2】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.重鎖フレームワーク
をコードする転写重鎖可変領域を含む機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写重鎖可変領域の前記フレームワーク領域と同一の前記アミノ酸配列である重鎖フレームワーク領域
をそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域
を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座をさらに含み、複数の該偽遺伝子重鎖可変領域は、該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子と操作可能に連結され、該トランスジェニック動物における遺伝子変換によりヌクレオチド配列を該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の該転写重鎖可変領域に提供する、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項3】
前記2から5のアミノ酸の少なくとも1つが、チロシンまたはトリプトファン残基であり、ならびに前記2から5のアミノ酸の少なくとも1つがアラニン、グリシンまたはセリン残基である、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項4】
前記軽鎖フレームワークが、ヒト・フレームワークである、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項5】
前記軽鎖フレームワークが、ヒト生殖細胞系フレームワークと同一のアミノ酸配列である、請求項4記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項6】
前記トランスジェニック動物が、ニワトリ、ウサギ、ウシ、ヒツジまたはヤギである、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項7】
前記免疫グロブリン軽鎖遺伝子座が、
操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域、および3’非翻訳領域(該イントロン領域、該定常ドメインをコードする領域、および該3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムに内在性である)、ならびに
操作可能な連結で、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および転写可変領域(複数の該偽遺伝子軽鎖可変領域および該転写可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である)を含む、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項8】
前記免疫グロブリン軽鎖遺伝子座が、少なくとも10の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項9】
前記トランスジェニック動物が、前記トランスジェニック動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の前記内在性可変領域を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換することにより作製される、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項10】
前記トランスジェニック動物が、前記トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子軽鎖可変領域を置換することなく、トランスジェニック動物の内在性機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の少なくとも前記可変領域を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換することにより作製される、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項11】
前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つが前記転写可変領域に対して逆方向にある、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項12】
請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物を抗原で免疫する工程;および該抗原に特異的に結合する抗体を該トランスジェニック動物から得る工程を含む方法。
【請求項13】
前記トランスジェニック動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製する工程;および該ハイブリドーマをスクリーニングし、前記抗原に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを同定する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記トランスジェニック動物のリンパ球に由来する前記重鎖および軽鎖の可変領域をコードする核酸をPCRを用いて増幅する工程、および前記増幅核酸を用いて組み換え抗体を発現する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記抗体をヒト化する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
を含む転写軽鎖可変領域;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写軽鎖可変領域の前記軽鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワーク
をそれぞれ含む複数の偽遺伝子軽鎖可変領域
をコードする核酸構築物で、非ヒト動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の少なくとも前記可変領域を置換する工程を含む方法。
【請求項17】
方法が、
a)まず前記トランスジェニック動物の前記内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座における前記可変領域を欠失させる工程;次いで
b)前記転写軽鎖可変領域および前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を該トランスジェニック動物の前記遺伝子座に付加する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子軽鎖可変領域を置換することなく、前記トランスジェニック動物の内在性機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記核酸の前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つが前記転写軽鎖可変領域に対して逆方向にある、請求項16記載の方法。
【請求項20】
定常ドメイン;および
該定常ドメインと連結される可変ドメインを含む、トランスジェニック動物により産生される抗体であって、
該可変ドメインが、
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
を含む軽鎖可変ドメイン;ならびに
a)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.重鎖フレームワーク
を含む重鎖可変ドメイン
を含む抗体。
【請求項1】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
をコードする転写軽鎖可変領域を含む機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写軽鎖可変領域の前記フレームワーク領域と同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワーク領域
をそれぞれコードする複数の偽遺伝子軽鎖可変領域
を含む免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含むゲノムを含むトランスジェニック非ヒト動物であって、
該複数の偽遺伝子軽鎖可変領域が該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子と操作可能に連結され、該トランスジェニック動物における遺伝子変換によりヌクレオチド配列を該機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の該転写軽鎖可変領域に提供するトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項2】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.重鎖フレームワーク
をコードする転写重鎖可変領域を含む機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写重鎖可変領域の前記フレームワーク領域と同一の前記アミノ酸配列である重鎖フレームワーク領域
をそれぞれコードする複数の偽遺伝子重鎖可変領域
を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子座をさらに含み、複数の該偽遺伝子重鎖可変領域は、該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子と操作可能に連結され、該トランスジェニック動物における遺伝子変換によりヌクレオチド配列を該機能性免疫グロブリン重鎖遺伝子の該転写重鎖可変領域に提供する、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項3】
前記2から5のアミノ酸の少なくとも1つが、チロシンまたはトリプトファン残基であり、ならびに前記2から5のアミノ酸の少なくとも1つがアラニン、グリシンまたはセリン残基である、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項4】
前記軽鎖フレームワークが、ヒト・フレームワークである、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項5】
前記軽鎖フレームワークが、ヒト生殖細胞系フレームワークと同一のアミノ酸配列である、請求項4記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項6】
前記トランスジェニック動物が、ニワトリ、ウサギ、ウシ、ヒツジまたはヤギである、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項7】
前記免疫グロブリン軽鎖遺伝子座が、
操作可能な連結で、イントロン領域、定常ドメインをコードする領域、および3’非翻訳領域(該イントロン領域、該定常ドメインをコードする領域、および該3’非翻訳領域はトランスジェニック動物のゲノムに内在性である)、ならびに
操作可能な連結で、複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および転写可変領域(複数の該偽遺伝子軽鎖可変領域および該転写可変領域はトランスジェニック動物のゲノムに外来性である)を含む、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項8】
前記免疫グロブリン軽鎖遺伝子座が、少なくとも10の偽遺伝子軽鎖可変領域を含む、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項9】
前記トランスジェニック動物が、前記トランスジェニック動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の前記内在性可変領域を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換することにより作製される、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項10】
前記トランスジェニック動物が、前記トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子軽鎖可変領域を置換することなく、トランスジェニック動物の内在性機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の少なくとも前記可変領域を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換することにより作製される、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項11】
前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つが前記転写可変領域に対して逆方向にある、請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項12】
請求項1記載のトランスジェニック非ヒト動物を抗原で免疫する工程;および該抗原に特異的に結合する抗体を該トランスジェニック動物から得る工程を含む方法。
【請求項13】
前記トランスジェニック動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製する工程;および該ハイブリドーマをスクリーニングし、前記抗原に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを同定する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記トランスジェニック動物のリンパ球に由来する前記重鎖および軽鎖の可変領域をコードする核酸をPCRを用いて増幅する工程、および前記増幅核酸を用いて組み換え抗体を発現する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記抗体をヒト化する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
を含む転写軽鎖可変領域;ならびに
b)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.該転写軽鎖可変領域の前記軽鎖フレームワークと同一のアミノ酸配列である軽鎖フレームワーク
をそれぞれ含む複数の偽遺伝子軽鎖可変領域
をコードする核酸構築物で、非ヒト動物の内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座の少なくとも前記可変領域を置換する工程を含む方法。
【請求項17】
方法が、
a)まず前記トランスジェニック動物の前記内在性免疫グロブリン軽鎖遺伝子座における前記可変領域を欠失させる工程;次いで
b)前記転写軽鎖可変領域および前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域を該トランスジェニック動物の前記遺伝子座に付加する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記トランスジェニック動物の内在性偽遺伝子軽鎖可変領域を置換することなく、前記トランスジェニック動物の内在性機能性免疫グロブリン軽鎖遺伝子を、前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域および前記転写可変領域を含む核酸構築物で置換する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記核酸の前記複数の偽遺伝子軽鎖可変領域の少なくとも1つが前記転写軽鎖可変領域に対して逆方向にある、請求項16記載の方法。
【請求項20】
定常ドメイン;および
該定常ドメインと連結される可変ドメインを含む、トランスジェニック動物により産生される抗体であって、
該可変ドメインが、
a)i.2から5の異なるアミノ酸から成る軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.軽鎖フレームワーク
を含む軽鎖可変ドメイン;ならびに
a)i.該2から5の異なるアミノ酸から成る重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3領域;および
ii.重鎖フレームワーク
を含む重鎖可変ドメイン
を含む抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−501525(P2013−501525A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524850(P2012−524850)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045210
【国際公開番号】WO2011/019844
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510238823)クリスタル バイオサイエンス インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】CRYSTAL BIOSCIENCE INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045210
【国際公開番号】WO2011/019844
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510238823)クリスタル バイオサイエンス インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】CRYSTAL BIOSCIENCE INC.
【Fターム(参考)】
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