説明

最適化されたミニ遺伝子及びそれによってコードされるペプチド

【課題】複数のHLAエピトープを含み、HLAクラスIプロセシング経路に提示されるポリエピトープ構築物を設計する方法を提供する。
【解決手段】(i)複数のHLAエピトープを連結部エピトープの数が最小になるように分類し;(ii)K、R、N、Q、G、A、S、C及びTから選択される隣接アミノ酸残基を、ポリエピトープ構築物に含まれるHLAエピトープのC+1位に導入し;(iii)ポリエピトープ構築物に含まれる2つのエピトープ間にアミノ酸スペーサー残基を導入し、スペーサーがCTL連結部エピトープ又はHTL連結部エピトープの出現を妨げ;(iv)最小数の連結部エピトープを有し、最小数のアミノ酸スペーサー残基を有し、K、R、N、G、A、S、C又はTの最大数を各HLAエピトープに対してC+1位に有する1つ以上のポリエピトープ構築物を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1999年12月28日に出願した米国仮出願第60/173,390号に対して優先権を主張する。米国仮出願第60/173,390号は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は、連邦政府資金に補助されて行われた。従って、米国政府は、ここで本発明に対して一定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は、生物学の分野に関する。特に、本発明は、ポリエピトープワクチン及び増大した免疫原性を提供するためのこのようなワクチンを設計する方法に関する。特定の実施形態では、ポリエピトープワクチンは、最適化された免疫原性の構築物を提供するミニ遺伝子によってコードされる。
【背景技術】
【0004】
多重エピトープ(「ミニ遺伝子」)ワクチンに関する技術が開発されている。いくつかの独立した研究によって、複数のエピトープに対する同時免疫応答の誘導が達成され得ることが確立された。例えば、多数のT細胞特異性に対する応答が誘導され得、そして検出され得る。自然状況では、Doolanら[Immunity,第7巻(1):97−112(1997):非特許文献1]は、1人のドナー由来のPBMCを用いて17もの多くの異なるP.falciparumエピトープに対するリコール(recall)T細胞応答を同時に検出した。同様に、Bertoni及び共同実験者[J Clin Imvest,第100巻(3):503−13(1997):非特許文献2]は、1人のドナーにおいて12の異なるHBV由来エピトープに対する同時応答を検出した。多重エピトープDNAミニ遺伝子ワクチンでの免疫に関して、複数のT細胞応答が誘導されたいくつかの例が報告されている。例えば、全てのエピトープが免疫原性及び/又は抗原性である約10個のMHCクラスIエピトープから構成されるミニ遺伝子ワクチンが報告されている。特に、9のEBVエピトープから構成されるミニ遺伝子ワクチン[Thomsonら,Proc Natl Acad Sci USA,第92巻(13):5845−9(1995):非特許文献3]、7のHIVエピトープから構成されるミニ遺伝子ワクチン[Woodberryら,J Virol,第73巻(7):5320−5(1999):非特許文献4]、10のマウスエピトープから構成されるミニ遺伝子ワクチン[Thomsonら,J Immunol,第160巻(4):1717−23(1998):非特許文献5]及び10の腫瘍由来エピトープから構成されるミニ遺伝子ワクチン[Mateoら,J Immunol,第163巻(7):4058−63(1999):非特許文献6]が活性であることが示されている。HBV及びHIVに由来する9の異なるHLA−A2.1拘束エピトープ及びHLA−A11拘束エピトープをコードする多重エピトープDNAプラスミドが全てのエピトープに対してCTLを誘導したことも示されている[Ishiokaら,J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999):非特許文献7]。
【0005】
従って、複数のMHCクラスI(すなわち、CTL)エピトープを含むミニ遺伝子ワクチンが設計され得、そして提示及び認識が全てのエピトープについて得られ得る。しかし、多重エピトープ構築物の免疫原性は、多数の変動要因(そのうちの多くはこれまで未知である)によって強く影響されるようである。例えば、異なるワクチン構築物の状況で発現された同じエピトープの免疫原性(又は抗原性)は、数桁の大きさにわたって変動し得る。従って、多重エピトープワクチン構築物を最適化するためのストラテジーを同定する必要性が存在する。このような最適化は、強力な免疫応答の誘導に関して、そして最終的には臨床的効力のために重要である。従って、本発明は、多数のエピトープを含むポリエピトープワクチンの抗原性及び免疫原性を最適化するためのストラテジー、ならびにこれらのストラテジーに従って生成された最適化されたポリエピトープワクチン(特にミニ遺伝子ワクチン)を提供する。
【0006】
以下の段落は、ミニ遺伝子免疫原性、エピトーププロセシングならびにクラスI及びクラスIIのMHC分子と一緒での抗原提示細胞(APC)上での提示に潜在的に影響を与える主な変動要因のいくつかの短い概説を提供する。
【0007】
(免疫優性)
複雑な外来病原体によってコードされる数千の可能なペプチドのうち、ごく一部が、最終的にMHCクラスI抗原に結合し得、従って、T細胞によって認識され得るペプチド形態になる。多重エピトープワクチンの開発に対して明らかな潜在的影響のある、この現象は、免疫優性(immunodominance)として公知である[Yewdellら,Annu Rev Immunol,17:51−88(1999):非特許文献8]。いくつかの主な変動要因が、免疫優性に寄与する。本明細書中では、本発明者らは、細胞内プロセシングの結果として定性的条件及び定量的条件の両方で適切なペプチドの生成に影響を与える変動要因を記載する。
【0008】
(連結部エピトープ)
連結部エピトープは、2つの他のエピトープの並列に起因して作製されるエピトープとして定義される。新たなエピトープは、第1エピトープに由来するC末端セクション、及び第2エピトープに由来するN末端セクションから構成される。連結部エピトープの作製は、以下の理由から、クラスI拘束エピトープ及びクラスII拘束エピトープについての多重エピトープミニ遺伝子ワクチンの設計における潜在的問題である。第1に、HLAトランスジェニック実験動物において免疫原性について代表的に試験される、ヒトエピトープから構成されるか又はヒトエピトープを含むミニ遺伝子を開発する場合、マウスエピトープの作製は、所望でない免疫優性効果を生じ得る。第2に、ヒトHLAクラスI分子又はヒトHLAクラスII分子についての意図しない新たなエピトープの作製は、ワクチンレシピエントにおいて、標的によって誘導されるT細胞応答である、感染細胞又は腫瘍によって発現されない、新たなT細胞特異性を惹起し得る。これらの応答は、当然無関係及び無効であり、そして所望でない免疫優性効果を生じることによって、逆効果でさえあり得る。
【0009】
連結部エピトープの存在は、種々の異なる実験状況において実証されている。Gefter及び共同実験者は最初に、2つの異なるクラスII拘束エピトープが並列しており、そして共直線的に合成された系における効果を実証した[Perkinsら,J Immunol,第146巻(7):2137−44(1991):非特許文献9]。この効果は、極めて顕著であるので、エピトープの免疫系認識はこれらの新たな連結部エピトープによって完全に「サイレンス」になり得る[Wangら,Cell Immunol,第143巻(2):284−97(1992):非特許文献10]。連結部エピトープに対するヘルパーT細胞もまた、合成リポペプチドを用いた免疫の結果としてヒトにおいて観察された。この合成リポペプチドは、HLA−A2拘束HBV由来免疫優性CTLエピトープ及びユニバーサル破傷風トキソイド由来HTLエピトープから構成されていた[Livingstonら,J Immunol,第159巻(3):1383−92(1997):非特許文献11]。従って、連結部エピトープの作製は、ポリエピトープ構築物の設計における主な考慮事項である。
【0010】
本発明は、この問題と取り組み、かつ連結部エピトープの出現を回避又は最少化する方法を提供する。
【0011】
(隣接領域)
クラスI拘束エピトープは、複雑なプロセスによって作製される[Yewdellら,Annu Rev Immunol,17:51−88(1999):非特許文献12]。エンドプロテアーゼを伴う制限されたタンパク質分解及びエキソプロテアーゼによる潜在的なトリミングの次に、抗原プロセシングに関連したトランスポーター(TAP)分子による小胞体(ER)膜を横切ったトランスロケーションが起こる。抗原性ペプチドの生成に関与する主な細胞質ゾルプロテアーゼ複合体及びそれらの前駆体は、プロテオソームである[Niedermannら,Immunity,第2巻(3):289−99(1995):非特許文献13]が、CTL前駆体のERトリミングもまた実証されている[Pazら,Immunity,第11巻(2):241−51(1999):非特許文献14]。エピトープのC末端及びN末端に直接隣接する残基がエピトープ生成の効率に影響を有するか否かについて長い間議論されている。
【0012】
プロセシングされたエピトープの収率及び利用可能性は、免疫原性の決定に主な変動要因として関連しており、従って免疫応答の大きさが、MHCによって結合され、そしてT細胞認識のために提示されるエピトープの量に直接比例し得るという点でミニ遺伝子の能力全体に主な影響を明らかに有し得る。いくつかの研究は、これがこの場合、実際にそうであるという証拠を提供した。例えば、エピトープ密度に対して本質的に比例するウイルス特異的CTLの誘導[Wherryら,J Immunol,第163巻(7):3735−45(1999):非特許文献15]が観察されている。さらに、予めプロセシングされた最適なエピトープをコードする組換えミニ遺伝子を用いて、全長タンパク質を用いて天然で観察されるよりも高レベルのエピトープ発現を誘導した[Antonら,J Immunol,第158巻(6):2535−42(1997):非特許文献16]。一般に、ミニ遺伝子のプライミングは、抗原全体でのプライミングよりも有効であることが示されている[Restifoら,J Immunol,第154巻(9):4414−22(1995):非特許文献17;Ishiokaら,J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999):非特許文献18]が、いくつかの例外が注目されている[Iwasakiら,Vaccine,第17(15−16):2081−8(1999):非特許文献19]。
【0013】
初期研究によって、エピトープ内の残基[Hahnら,J Exp Med,第176巻(5):1335−41(1992):非特許文献20]が免疫原性を主に調節することが結論付けられた。エピトープを無関係の遺伝子又は同じ遺伝子だが異なる位置にグラフト化することに大部分基づく他の研究によっても同様の結論に到達した[Chiminiら,J Exp Med,第169巻(1):297−302(1989):非特許文献21;Hahnら,J Exp Med,第174巻(3):733−6(1991):非特許文献22]。しかし、他の実験[Del Valら,Cell,第66巻(6):1145−53(1991):非特許文献23;Hahnら,J Exp Med,第176巻(5):1335−41(1992):非特許文献24]によって、CTLエピトープに直接隣接して位置する残基が認識に直接影響を与え得ることが示唆された[Couillinら,J Exp Med,第180巻(3):1129−34(1994):非特許文献25;Bergmannら,J Virol.第68巻(8):5306−10(1994):非特許文献26]。ミニ遺伝子ワクチンの状況では、この論争が再燃した。Shastri及び共同実験者[Shastriら,Immunol,第155巻(9):4339−46(1995):非特許文献27]は、N末端隣接残基を変動させることによってT細胞応答が顕著には影響されないが、単一のC末端隣接残基の付加によって阻害されたことを見出した。最も劇的な阻害は、C末端隣接残基としてのイソロイシン、ロイシン、システイン及びプロリンについて観察された。対照的に、Gileadi[Gileadiら,Eur J Immunol,第29巻(7):2213−22(1999):非特許文献28]は、マウスインフルエンザウイルスエピトープのN末端に位置する残基の関数としての顕著な効果を報告した。Bergmann及び共同実験者は、芳香族、塩基性及びアラニン残基が効率的なエピトープ認識を支持し、一方、G残基及びP残基が強く阻害性であることを見出した[Bergmannら,J Immunol,第157巻(8):3242−9(1996):非特許文献29]。対照的に、Lippolis[Lippolisら,J Virol,第69巻(5):3134−46(1995):非特許文献30]は、隣接残基の置換は、認識をもたらさないと結論付けた。しかし、プロテオソーム特異性に影響を与えないようである、かなり保存的な置換のみが試験された。
【0014】
これらの影響の特異性、そして一般に天然のエピトープの特異性は、プロテオソーム特異性とおおよそ相関するようである。例えば、プロテオソーム特異性は、部分的にトリプシン様であり[Niedermannら,Immunity,第2巻(3):289−99(1995):非特許文献31]、塩基性アミノ酸の後ろで切断される。それにもかかわらず、カルボキシル側の疎水性残基及び酸性残基の効率的な切断もまた可能である。これらの特異性と一致するのは、Sherman及び共同実験者の研究であり、この研究によって、p53エピトープのC末端の後ろの位置でのRからHへの変異が、このタンパク質のプロテオソーム媒介プロセシングに影響を与えることが見出された[Theobaldら,J Exp Med,第188巻(6):1017−28(1998):非特許文献32]。いくつかの他の研究[Hankeら,J Gen Virol,第79巻(第1部):83−90(1998):非特許文献33;Thomsonら,Proc Natl Acad Sci USA,第92巻(13):5845−9(1995):非特許文献34]は、ミニ遺伝子が最小エピトープを利用して構築され得ること、及びこれらの隣接配列が必要とされないようであることを示したが、隣接領域の使用によるさらなる最適化の可能性もまた認められた。
【0015】
まとめると、HLAクラスIエピトープについて、CTLエピトープのプロセシング及び提示に対する隣接領域の効果は、未だに不確定である。調節領域の改変の効果の系統的分析は、ミニ遺伝子ワクチンについて行われていない。従って、ヒトクラスI一般によって拘束されたエピトープをコードするミニ遺伝子ワクチンを利用した分析が必要とされている。本発明は、このような分析を提供し、従って、免疫原性及び抗原性について最適化されたポリエピトープワクチン構築物、ならびにこのような構築物を設計する方法を提供する。
【0016】
HLAクラスIIペプチド複合体もまた、HLAクラスIプロセシングとは異なる複雑な一連の事象の結果として生成される。このプロセシング経路は、インバリアント鎖(Ii)との会合、特化された区画へのその輸送、CLIPへのIiの分解及びHLA−DMによって触媒されたCLIP除去を含む(概説については[Blumら,Crit Rev Immunol,第17巻(5−6):411−7(1997):非特許文献35;Arndtら,Immunol Res,第16巻(3):261−72(1997):非特許文献36]を参照のこと)。さらに、Ii分解において種々のカテプシン一般、ならびに特にカテプシンS及びカテプシンLの潜在的に重大な役割が存在する[Nakagawaら,Immunity,第10巻(2):207−17(1999):非特許文献37]。しかし、機能的エピトープの生成に関して、このプロセスは、いくらか選択性が低いようであり[Chapman H.A.,Curr Opin Immunol,第10巻(1):93−102(1998):非特許文献38]、そして多くのサイズのペプチドがMHCクラスIIに結合し得る[Huntら,Science,第256巻(5065):1817−20(1992):非特許文献39]。大部分又は全ての可能なペプチドは、生成されるようである[Moudgilら,J Immunol,第159巻(6):2574−9(1997):非特許文献40;及びThomsonら,J Virol,第72巻(3):2246−52(1998):非特許文献41]。従って、隣接領域の問題と比較して、連結部エピトープの生成は、特定の実施形態において、より深刻な懸念であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Immunity,第7巻(1):97−112(1997)
【非特許文献2】J Clin Imvest,第100巻(3):503−13(1997)
【非特許文献3】Proc Natl Acad Sci USA,第92巻(13):5845−9(1995)
【非特許文献4】J Virol,第73巻(7):5320−5(1999)
【非特許文献5】J Immunol,第160巻(4):1717−23(1998)
【非特許文献6】J Immunol,第163巻(7):4058−63(1999)
【非特許文献7】J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999)
【非特許文献8】Annu Rev Immunol,17:51−88(1999)
【非特許文献9】J Immunol,第146巻(7):2137−44(1991)
【非特許文献10】Cell Immunol,第143巻(2):284−97(1992)
【非特許文献11】J Immunol,第159巻(3):1383−92(1997)
【非特許文献12】Annu Rev Immunol,17:51−88(1999)
【非特許文献13】Immunity,第2巻(3):289−99(1995)
【非特許文献14】Immunity,第11巻(2):241−51(1999)
【非特許文献15】J Immunol,第163巻(7):3735−45(1999)
【非特許文献16】J Immunol,第158巻(6):2535−42(1997)
【非特許文献17】J Immunol,第154巻(9):4414−22(1995)
【非特許文献18】J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999)
【非特許文献19】Vaccine,第17(15−16):2081−8(1999)
【非特許文献20】J Exp Med,第176巻(5):1335−41(1992)
【非特許文献21】J Exp Med,第169巻(1):297−302(1989)
【非特許文献22】J Exp Med,第174巻(3):733−6(1991)
【非特許文献23】Cell,第66巻(6):1145−53(1991)
【非特許文献24】J Exp Med,第176巻(5):1335−41(1992)
【非特許文献25】J Exp Med,第180巻(3):1129−34(1994)
【非特許文献26】J Virol.第68巻(8):5306−10(1994)
【非特許文献27】Immunol,第155巻(9):4339−46(1995)
【非特許文献28】Eur J Immunol,第29巻(7):2213−22(1999)
【非特許文献29】J Immunol,第157巻(8):3242−9(1996)
【非特許文献30】J Virol,第69巻(5):3134−46(1995)
【非特許文献31】Immunity,第2巻(3):289−99(1995)
【非特許文献32】J Exp Med,第188巻(6):1017−28(1998)
【非特許文献33】J Gen Virol,第79巻(第1部):83−90(1998)
【非特許文献34】Proc Natl Acad Sci USA,第92巻(13):5845−9(1995)
【非特許文献35】Crit Rev Immunol,第17巻(5−6):411−7(1997)
【非特許文献36】Immunol Res,第16巻(3):261−72(1997)
【非特許文献37】Immunity,第10巻(2):207−17(1999)
【非特許文献38】Curr Opin Immunol,第10巻(1):93−102(1998)
【非特許文献39】Science,第256巻(5065):1817−20(1992)
【非特許文献40】J Immunol,第159巻(6):2574−9(1997)
【非特許文献41】J Virol,第72巻(3):2246−52(1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ポリエピトープワクチンの効力を最適化するために有用なパラメーターの開示を提供する。ポリエピトープ構築物及びこのような構築物をコードする核酸(ミニ遺伝子)もまた開示する。
【0019】
1つの局面において、本発明は、複数のHLAエピトープを含むかつHLAクラスIプロセシング経路に提示される、ポリエピトープ構築物を設計するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:(i)この複数のHLAエピトープを選別して連結部エピトープの数を最小化する工程;(ii)このポリエピトープ構築物に含まれるHLAエピトープのC+1位に、以下からなる群より選択される隣接アミノ酸残基を導入する工程:K、R、N、Q、G、A、S、C及びT;(iii)このポリエピトープ構築物に含まれる2つのエピトープ間に1以上のアミノ酸スペーサー残基を導入する工程であって、このスペーサーは、CTL又はHTL連結部エピトープの発生を妨げる、工程;及び(iv)最小数の連結部エピトープ、最小数のアミノ酸スペーサー残基、及び各HLAエピトープに対するC+1位での最大数のK、R、N、G、A、S、C又はTを有する、1以上のポリエピトープ構築物を選択する工程。いくつかの実施形態において、これらのスペーサー残基は、公知のHLAクラスII一次アンカー残基ではない残基から独立して選択される。特定の実施形態において、このスペーサー残基の導入は、HTLエピトープの発生を妨げる。このようなスペーサーは、しばしば、G、P及びNからなる群より独立して選択される、少なくとも5アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GPGPGである。
【0020】
いくつかの実施形態において、このスペーサー残基の導入は、CTLエピトープの発生を妨げ、そしてさらに、このスペーサーは、A及びGからなる群より独立して選択される1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸残基である。しばしば、隣接残基が、CTLエピトープのC+1位で導入され、そしてこれは、K、R、N、G及びAからなる群より選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、隣接残基は、スペーサー配列に隣接する。本発明の方法はまた、このポリエピトープ構築物によって含まれる1つのHLAエピトープのC末端に隣接する1つのHLAエピトープのN末端残基を、K、R、N、G及びAからなる群より選択される残基で置換する工程を包含する。
【0022】
本発明の方法はまた、ポリエピトープ構築物の構造を予測する工程、及びさらに、最大の構造(すなわち、HLAプロセシング経路によってプロセシングされ、この構築物に含まれるエピトープの全てを生じる)を有する1以上の構築物を選択する工程を、さらに包含する。
【0023】
別の局面において、本発明は、請求項1〜9のいずれかに従う方法を使用して調製された、ポリエピトープ構築物を提供する。しばしば、このポリエピトープ構築物に含まれるエピトープは、ミニ遺伝子にコードされる。好ましい実施形態において、このミニ遺伝子にコードされるポリエピトープ構築物は、図9に示されるようなHIV−TT、図9に示されるHIV−DG又は図9に示されるHIV−TCである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、各々20〜25の異なるCTLエピトープを組み込んだ3つの異なる複数エピトープ構築物のデータを示す。
【図2】図2は、2つの異なる合成ポリペプチドを示し(図2a)、ここで、第1の構築物は、直線的に同時合成された4つの異なるエピトープを組み込み、そして第2の構築物は、GPGPGスペーサーを組み込む。図2bは、等モル量の同じペプチドのプール(各ペプチド3マイクログラム)によって誘導される応答と比較して、2ナノモルのこれらの異なる構築物が、IAb陽性マウスにおける種々のエピトープに対して、増殖性応答をプライムする能力を示す。
【図3】図3は、複数エピトープDNA構築物の構造を示す。HLA制限が各エピトープの上に示され、A*0201エピトープは太字である。HLA結合親和性(IC50nM)を、各エピトープの下に示す。(a)コードされたエピトープの順序を示すHIV−FTの概略図。(b)HBV特異的構築物の概略図。Core18に対するC+1アミノ酸は、矢印で示される。Core18のC1位に1つのアミノ酸挿入を有するHBV特異的構築物は、HBV.1Xとして示される。
【図4】図4は、HLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウス中のHIV−FTにおけるHLA−A*0201エピトープの免疫原性を示す。(a)エピトープPol498(丸)、Vpr62(三角)、Gag386(四角)に対する代表的なCTL応答。各ペプチドの存在下(塗りつぶされた記号)又は非存在下(塗りつぶされていない記号)での、Jurkat−HLA−A*0201/Kb標的細胞に対する51Cr放出アッセイにおいて、細胞傷害性をアッセイした。(b)HLA−A*0201/KbトランスジェニックマウスにおけるHIV−FTの免疫原性のCTL応答の要約。棒線は、陽性培養物の相乗平均CTL応答を示す。陽性CTL培養物の頻度もまた示した。
【図5】図5は、エピトープの免疫原性についてのC+1アミノ酸の影響を示す。種々のミニ遺伝子提示94エピトープ/C+1アミノ酸の組合せからのCTL応答を組み込むデータベースは、目的の頻度(%)を決定するために分析され、ここで、特定の組合せが最適なCTL応答と関連する。CTL応答は、測定された培養物のうち少なくとも30%において、100SU又は20LUを超える場合に、最適であるとみなされた。所定のエピトープ/C+1アミノ酸の組合せが観察された回数もまた、提供される。
【図6】図6は、HBV特異的構築物に対するCTL応答を示す。(a)HLA−A*0201/KbトランスジェニックマウスのDNA免疫化後の、Core18エピトープに対するCTL応答。(b)HLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウスを、Core18のC+1位で1つのアミノ酸挿入によって変更された構築物でDNA免疫化した後の、HBV Core18に対するCTL応答。
【図7】図7は、HBV.1(陰影のある棒線)及びHBV.1K(斜線した棒線)トランスフェクト細胞株における、HBV Core18提示のレベルを示す。エピトープ提示を、ペプチド特異的CTL株を使用して数量化した。HBV Pol455の提示を、比較目的で示す。
【図8】図8は、HIV−1ミニ遺伝子でトランスフェクトされた221A2Kb標的細胞についてのデータを示す。これらのトランスフェクトされた細胞を、HLAトランスジェニックマウス由来でありそして種々のHIV誘導CTLエピトープに特異的なCTL株に対してエピトープを提示するその能力についてアッセイした。異なるCTL株の抗原感受性における差異を補正するために、APCとして非トランスフェクト細胞を用いて、ペプチド用量滴定を並行して行った。
【図9】図9は、本発明の方法を使用して最適化したHIVポリエピトープ構築物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中で引用された、すべての刊行物、特許及び特許出願が、すべての目的のために、それらの全体において本明細書中で参考として援用される。
【0026】
(定義)
本発明は、以下の定義を参照して、より良好に理解され得る。
【0027】
本開示を通して、「結合データ」結果を、しばしば、用語「IC50」で表す。IC50は、参照ペプチドの結合の50%阻害が観察される、結合アッセイにおけるペプチドの濃度である。このアッセイを行う条件(すなわち、律速のHLAタンパク質濃度及び標識ペプチド濃度)を考慮すると、これらの値は、KD値と近似する。結合を測定するためのアッセイは、例えば、PCT公開WO94/20127及びWO94/03205に、詳細に記載される。アッセイ条件が変化する場合に、そして使用する特定の試薬(例えば、HLA調製物など)に依存して、IC50値が、(しばしば、劇的に)変化し得ることに留意するべきである。例えば、過剰濃度のHLA分子は、所定のリガンドの見かけ上測定されるIC50を増加させる。あるいは、結合は、参照ペプチドと関連して表される。特定のアッセイがより高感度又はより低感度になるにつれて、試験したペプチドのIC50は幾分変化し得るが、参照ペプチドに対する結合は、有意には変化しない。例えば、その参照ペプチドのIC50が10倍増加するような条件下で行うアッセイにおいて、試験ペプチドのIC50値もまた、約10倍シフトする。従って、あいまい性を回避するために、ペプチドが良好な結合因子であるか、中程度の結合因子であるか、弱い結合因子であるか又はネガティブな結合因子であるかの評価は、一般に、標準ペプチドのIC50に対する、そのIC50に基づく。結合はまた、以下を使用するアッセイ系を含む、他のアッセイ系を使用して測定され得る:生細胞(例えば、Ceppelliniら、Nature 339:392,1989;Christnickら、Nature 352:67、1991;Buschら、Int.Immunol.2:443、19990;Hillら、J.Immunol.147:189、1991;del Guercioら、J.Immunol.154:685,1995)、界面活性剤溶解物を使用する無細胞系(例えば、Cerundoloら、J.Immunol.21:2069,1991)、固定した精製MHC(例えば、Hillら、J.Immunol.152,2890,1994;Marshallら、J.Immunol.152:4946,1994)、ELISA系(例えば、Reayら、EMBO J.11:2829,1992)、表面プラズモン共鳴(例えば、Khilkoら、J.Biol.Chem.268:15425,1993);高フラックス可溶相アッセイ(high flux soluble phase assay)(Hammerら、J.Exp.Med.180:2353,1994)、及びクラスI MHCの安定化又はアセンブリの測定(例えば、Ljunggrenら、Nature 346:476、1990;Schumacherら、Cell 62:563、1990;Townsendら、Cell 62:285、1990;Parkerら、J.Immunol.149;1896,1992)。
【0028】
エピトープ中の残基位置の「カルボキシル末端」又は「カルボキシル末端位置」との表示は、ペプチドのカルボキシル末端に最も近い、そのエピトープの末端の残基位置をいい、これは、以下に定義されるような従来の命名法を使用して命名される。「C+1」とは、そのエピトープのC末端残基の直後の残基又は位置をいい、すなわち、そのエピトープのC末端に隣接する残基をいう。そのポリエピトープ構築物のカルボキシル末端に存在するエピトープの「カルボキシル末端位置」は、そのポリペプチドのカルボキシル末端に対応してもよいし、実際には対応しなくてもよい。好ましい実施形態において、最適化されたポリエピトープ構築物において使用されるエピトープは、モチーフ保有エピトープであり、そしてこのエピトープのカルボキシル末端は、特定のモチーフに対応する一次アンカー残基について規定される。
【0029】
エピトープ中の残基位置の「アミノ末端」又は「アミノ末端位置」との表示は、ペプチドのアミノ末端に最も近い、そのエピトープの末端の残基位置をいい、これは、以下に定義されるような従来の命名法を使用して命名される。「N−1」とは、エピトープのアミノ末端(位置番号1)でそのエピトープに直ぐ隣接する残基又は位置をいう。そのポリエピトープ構築物のアミノ末端に存在するエピトープの「アミノ末端位置」は、そのポリペプチドのアミノ末端に対応してもよいし、実際には対応しなくてもよい。好ましい実施形態において、最適化されたポリエピトープ構築物において使用されるエピトープは、モチーフ保有エピトープであり、そしてこのエピトープのアミノ末端は、特定のモチーフに対応する一次アンカー残基について規定される。
【0030】
「コンピューター」又は「コンピューターシステム」は、一般に、以下を備える:プロセッサー;少なくとも1つの情報記憶/検索装置(例えば、ハードドライブ、ディスクドライブ又はテープドライブなど);少なくとも1つの入力装置(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、又はマイクロホンなど);及びディスプレイ構造。さらに、コンピューターは、ネットワークと連絡する通信チャネルを備え得る。このようなコンピューターは、多かれ少なかれ、上記に列挙したものを備え得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「構築物」は、一般に、天然に存在しない組成物を示す。構築物は、合成技術(例えば、組換えDNAの調製及び発現又は核酸又はアミノ酸についての化学合成技術)によって、生成され得る。構築物はまた、結果としてその形態が天然において見出されないように、ある材料への別の材料の付加又は合併(affiliation)によって生成され得る。「ポリエピトープ構築物」は、複数のエピトープを含む。
【0032】
「交差反応結合」とは、1より多いHLA分子がペプチドに結合することを示し;同義語は、縮重(degenerate)結合である。
【0033】
「潜在(criptic)エピトープ」は、単離されたペプチドでの免疫によって応答を誘導するが、そのエピトープを含むインタクトなタンパク質全体が抗原として使用される場合に、その応答は、インビトロで交差反応性でない。
【0034】
「ドミナント(dominant)エピトープ」は、ネイティブ抗原全体での免疫に際して免疫応答を誘導するエピトープである(例えば、Sercarzら、Annu.Rev.Immunol.11:729−766,1993を参照のこと)。このような応答は、単離されたペプチドエピトープとは、インビトロで交差反応性である。
【0035】
特定のアミノ酸配列に関して、「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセットであるか、又はT細胞の状況下では、T細胞レセプタータンパク質及び/又は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)レセプターによる認識に必要な残基である。インビボ又はインビトロでの免疫系の設定において、エピトープは、免疫グロブリン、T細胞レセプター又はHLA分子によって認識される部位を共に形成する、分子の集団的特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造及び三次ペプチド構造及び電荷のような)である。本開示全体を通して、エピトープ及びペプチドは、しばしば、交換可能に使用される。しかし、本発明のエピトープより大きくかつ本発明のエピトープを含む単離又は精製されたタンパク質又はペプチド分子は、なお本発明の範囲内にあることが理解される。
【0036】
「隣接残基」は、エピトープの次に位置する残基である。隣接残基は、エピトープのN末端又はC末端に隣接する位置で導入又は挿入され得る。
【0037】
「免疫原性ペプチド」又は「ペプチドエピトープ」とは、そのペプチドがHLA分子を結合しそしてCTL応答及び/又はHTL応答を誘導するような、対立遺伝子特異的モチーフ又はスーパーモチーフを含むペプチドである。従って、本発明の免疫原性ペプチドは、適切なHLA分子に結合し得、そしてその後、この免疫原性ペプチドが由来する抗原に対して、細胞傷害性T細胞応答又はヘルパーT細胞応答を誘導し得る。
【0038】
「ヘテロクリティックアナログ」は、所定の用量に対する応答の増加又は同じ応答を達成するために要求される量の低さによって測定されるような、特異的T細胞に対する増加された効力を有するペプチドとして、本明細書中に定義される。ヘテロクリティックアナログの利点としては、その抗原が、より強力であり得るか又はより経済的(なぜなら、より低い量が、同じ効果を達成するために必要とされるからである)であり得ることが挙げられる。さらに、改変されたエピトープは、抗原特異的T細胞非応答性(T細胞寛容性)を克服し得る。
【0039】
「ヒトリンパ球抗原」又は「HLA」は、ヒトクラスI又はクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質(例えば、Stitesら、Immunology、第8版、Lange Publishing,Los Altos,CA(1994)を参照のこと)である。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「HLAスーパータイプ又はHLAファミリー」とは、共有するペプチド結合特異性に基づいてグループ化したHLA分子のセットを記載する。特定のアミノ酸モチーフを保有するペプチドに対して幾分類似した結合親和性を共有するHLAクラスI分子は、このようなHLAスーパータイプにグループ化される。用語HLAスーパーファミリー、HLAスーパータイプファミリー、HLAファミリー及びHLA xx様分子(ここで、xxは、特定のHLA型を示す)は、同義である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、HLAクラスI分子に関する「高親和性」とは、50nM以下のIC50又はKD値での結合として定義され;「中程度の親和性」とは、約50nMと約500nMとの間のIC50又はKD値での結合である。HLAクラスII分子への結合に関する「高親和性」とは、100nM以下のIC50又はKD値での結合として定義され;「中程度の親和性」とは、約100nMと約1000nMとの間のIC50又はKD値での結合である。
【0042】
「IC50」は、参照ペプチドの結合の50%阻害が観察される、結合アッセイにおけるペプチドの濃度である。アッセイを行う条件(すなわち、律速のHLAタンパク質濃度及び標識ペプチド濃度)を考慮すると、これらの値は、KD値と近似する。
【0043】
2以上のペプチド配列の状況下で、用語「同一」又はパーセント「同一性」とは、配列比較アルゴリズムを使用してか又は手動の整列化及び目視検査によって測定されるように、比較ウインドウにわたる最大一致について比較及び整列化した場合に、同じであるか又は特定のパーセンテージの同一アミノ酸残基を有する、2以上の配列又は部分配列をいう。
【0044】
ポリエピトープ構築物中の特定の位置(例えば、このエピトープのC末端に、そのC末端側で隣接して)でアミノ酸残基を「導入する」とは、所望の残基が特定の位置(例えば、そのエピトープに隣接して)にあるようにか、又は有害な残基がこのエピトープのC末端に隣接しないように、複数のエピトープを構成することを包含する。この用語はまた、特定の位置でアミノ酸残基(好ましくは、好ましいアミノ酸残基又は中間体アミノ酸残基)を挿入することを含む。アミノ酸残基はまた、1つのアミノ酸残基の別のアミノ酸残基での置換によって、配列に導入され得る。好ましくは、このような置換は、例えば、同時係属U.S.S.N.09/260,714(1999年3月1日出願)及び出願PCT/US00/19774に示される、アナログ化原理に従って作製される。
【0045】
句「単離された」又は「生物学的に純粋」とは、そのネイティブ状態において見い出される場合に通常その物質に付随する成分を、実質的又は本質的に含まない物質をいう。従って、本発明に従う単離されたペプチドは、好ましくは、そのインサイチュ環境下でそのペプチドに通常会合する物質を含まない。
【0046】
「連結」又は「結合」とは、ペプチドを機能的に接続するための当該分野で公知の任意の方法をいい、これらには、組換え融合、共有結合、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合、及び静電結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「主要組織適合遺伝子複合体」又は「MHC」は、生理的免疫応答を担う細胞性相互作用の制御において役割を担う遺伝子のクラスターである。ヒトにおいて、MHC複合体はまた、HLA複合体として公知である。MHC複合体及びHLA複合体の詳細な説明については、Paul、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,第3版、Raven Press,New York,1993を参照のこと。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「ペプチドの中間」とは、アミノ末端でもカルボキシル末端でもないペプチドの位置をいう。
【0049】
「結合ペプチドの最小数」とは、本明細書で用いられる場合、無作為な選択基準を用いて作製されたものよりも少ない結合ペプチドの数をいう。
【0050】
用語「モチーフ」は、規定された長さのペプチドにおける残基のパターンをいう。一般に、クラスI HLAモチーフについて約8〜約13アミノ酸及びクラスII HLAモチーフについて約6〜約25アミノ酸のペプチドであり、これは、特定のHLA分子によって認識される。ペプチドモチーフは、代表的には、各々のヒトHLA対立遺伝子によってコードされる各々のタンパク質について異なり、そして一次アンカー残基及び二次アンカー残基のパターンにおいて異なる。
【0051】
「陰性な(negative)結合残基」又は「有害な(deterious)残基」は、ペプチドエピトープにおける特定の位置(代表的には一次アンカー位置ではない)に存在する場合に、ペプチドの対応するHLA分子に対するペプチドの結合親和性の減少を生じさせるアミノ酸である。
【0052】
「最適化された」ポリエピトープ構築物は、連結部エピトープの発生を最小化するためのエピトープのソート、エピトープのC末端又はN末端に隣接する隣接残基の挿入、及び連結部エピトープの発生を防止するためか又は隣接残基を提供するためのスペーサー残基のさらなる挿入による構築物の増加した免疫原性又は抗原性をいう。最適化されたポリエピトープ構築物の免疫原性又は抗原性における増加は、最適化されたパラメータに基いて構築されていないポリエピトープ構築物と比較して測定される。そして当該分野で公知のアッセイ(例えば、トランスジェニック動物における免疫原性の評価、ELISPOT、インターフェロンγ遊離アッセイ、テトラマー染色、クロム遊離アッセイ、及び樹状細胞に対する提示)が用いられる。
【0053】
用語「ペプチド」は、本明細書中において「オリゴペプチド」と相互変換可能に使用され、(代表的には、隣接するアミノ酸のα−アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって)互いに連結される一連の残基(代表的にはL−アミノ酸)を示す。本発明の好ましいCTL誘導ペプチドは、13以下の残基長であり、そして通常、約8残基と約11残基との間(好ましくは9又は10残基)からなる。好ましいHTL誘導オリゴペプチドは、約50残基長未満であり、そして通常、約6残基と約30残基との間からなり、より通常には、約12残基と25残基との間、そしてしばしば約15残基と20残基との間からなる。
【0054】
「汎DR結合ペプチド又はPADRETMペプチド」は、1つ以上のHLAクラスIIDR分子に結合する分子のファミリーのメンバーである。PADRETMファミリーの分子を定義するパターンは、HLAクラスIIスーパーモチーフとして考えられ得る。PADREは、ほとんどのHLA−DR分子に結合し、そしてインビトロ及びインビトロでヒトヘルパーTリンパ球(HTL)応答を刺激する。
【0055】
「薬学的に受容可能な」は、一般に、非毒性の、不活性な、及び/又は薬理学的に適合性の組成物をいう。
【0056】
「HLAクラスIプロセシング経路に提示された」は、ポリエピトープ構築物が細胞に導入された結果、HLAクラスIプロセシング経路により大部分がプロセスされることを意味する。代表的に、ポリエピトープ構築物は、ポリエピトープ構築物をコードする発現ベクターを用いて細胞に導入される。クラスIIプロセシング経路へのエピトープの侵入機構は定義されていないが、このようなミニジーンによりコードされるHLAクラスIIエピトープはまた、クラスII分子に提示される。
【0057】
「一次アンカー残基」又は「一次MHCアンカー」は、免疫原性ペプチドとHLA分子との間の接触点を提供することが理解されるペプチド配列に沿った特定位置におけるアミノ酸である。規定された長さのペプチド内の1〜3個(通常は2個)の一次アンカー残基は、一般に、免疫原性ペプチドについての「モチーフ」を規定する。これらの残基は、結合溝(groove)自身の特定のポケットにおいて埋没するこれらの側鎖を有する、HLA分子のペプチド結合溝(groove)と密接に接触して適合することが理解される。1つの実施形態において、例えば、HLAクラスIエピトープの一次アンカー残基は、本発明に従って9残基ペプチドエピトープの位置2(アミノ末端位から)及びカルボキシル末端位に配置される。各々のモチーフ及びスーパーモチーフについての一次アンカー位置は、PCT/US00/27766、PCT/US00/19774の表I及び表IIIに示される。さらに、アナログペプチドは、これらの一次アンカー位置における特定の残基の存在又は非存在を変更することによって作製され得る。このようなアナログを使用して、特定のモチーフ又はスーパーモチーフを含むペプチドの結合親和性を調節する。
【0058】
「乱雑な認識」は、種々のHLA分子の状況下において、別々のペプチドが同一のT細胞クローンによって認識されることである。乱雑な認識又は結合は、交差反応性結合と同義である。
【0059】
「防御免疫応答」又は「治療的免疫応答」は、感染性因子又は腫瘍抗原由来の抗原に対するCTL応答及び/又はHTL応答をいい、いくつかの場合これは、疾患の症状、副作用、又は進行を予防するか又は少なくとも部分的に抑制する。免疫応答はまた、ヘルパーT細胞の刺激によって促進された抗体応答を含み得る。
【0060】
用語「残基」は、アミド結合又はアミド結合模倣物によってペプチド又はタンパク質に組み込まれるアミノ酸又はアミノ酸模倣物をいう。
【0061】
「二次アンカー残基」は、ペプチドにおける一次アンカー位置以外の位置での、ペプチド結合に影響し得るアミノ酸である。二次アンカー残基は、結合したペプチドの中である位置でのアミノ酸の無秩序な分布によって期待されるより有意に高い頻度で生じる。二次アンカー残基は、「二次アンカー位置」で生じるといわれる。二次アンカー残基は、高い親和性もしくは中程度の親和性で結合するペプチドの中でより高頻度で存在する残基、又はさもなくば高い親和性もしくは中程度の親和性の結合と関連する残基として同定され得る。例えば、アナログペプチドは、これらの二次アンカー位置における特定の残基の存在又は非存在を変更することによって作製され得る。このようなアナログを使用して、特定のモチーフ又はスーパーモチーフを含むペプチドの結合親和性を良好に調節する。用語「固定されたペプチド」は、アナログペプチドをいうためにしばしば用いられる。
【0062】
「エピトープをソーティングする」は、ポリエピトープ構築物におけるエピトープの順番を決定又は設計することをいう。
【0063】
「スペーサー」は、ポリエピトープ構築物の2つのエピトープ間に挿入されて連結部エピトープの発生を防ぐ配列をいう。HLA クラスIIエピトープについて、スペーサーは、5アミノ酸又はそれ以上の長さであり、そしてスペーサー配列中のアミノ酸残基(例えば、G、P、又はN)は、代表的にはHLAクラスIIモチーフの一次アンカー残基であることが知られていない(例えば、PCT/US00/19774)。
【0064】
「サブドミナント(subdominant)エピトープ」は、エピトープを含む抗原全体での免疫に際して応答をほとんど引き起こさないか又は全く引き起こさないが、単離されたペプチドでの免疫によって応答が得られ得るエピトープであり、そして(潜在エピトープの場合とは異なり)この応答は、タンパク質全体を使用してインビトロ又はインビトロでの応答をリコールする場合に、検出される。
【0065】
「スーパーモチーフ」は、2つ以上のHLA対立遺伝子によってコードされるHLA分子によって共有されるペプチド結合特異性である。好ましくは、スーパーモチーフ保有ペプチドは、2つ以上のHLA抗原によって高い親和性又は中程度の親和性(本明細書中に規定される)で認識される。
【0066】
「合成ペプチド」は、天然に存在しないが、化学合成又は組換えDNA技術のような方法を使用してヒトが作製したペプチドをいう。
【0067】
「TCR接触残基」又は「T細胞レセプター接触残基」は、T細胞レセプターにより結合されると考えられているエピトープ中のアミノ酸残基であり、本明細書では任意の一次MHCアンカーではないと定義される。T細胞レセプター接触残基は、ペプチドにおける位置/位置として定義され、野生型のペプチドを用いて誘導されるIFNγ産生と比較して、試験されたすべてのアナログがネガティブなIFNγ産生を誘導する。
【0068】
ペプチド化合物を記載するのに用いられる命名法は、伝統的な慣例に従う。ここで、アミノ基は各アミノ酸残基の左側に表わし(N末端)、そしてカルボキシル基は右側に表わす(C末端)。アミノ酸残基の位置がペプチドエピトープにおいて言及される場合、アミノからカルボキシルの方向に番号付けされる(位置1は、エピトープ、もしくはその一部であり得るペプチド又はタンパク質のアミノ末端にもっとも近い位置である)。式の表現に関する本発明の選択された特定の実施形態において、(詳細には示さないが)アミノ末端基及びカルボキシル末端基は、そうではないと特定されない限り、生理的なpH値でとると考えられる形態である。アミノ酸構造式において、各残基は、一般に、標準的な三文字又は一文字表示で表わされる。アミノ酸残基のL体は、大文字の一文字又は頭文字が大文字の三文字表示で表わされ、D体を有するこれらのアミノ酸のD体は、小文字の一文字又は小文字の三文字表示で表わされる。グリシンは、不斉炭素原子を有さず、単に「Gly」又はGと言及される。アミノ酸表記を以下に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
アミノ酸の「化学的特性」は次のように定義される:芳香族(F、W、Y);脂肪族疎水性(L、I、V、M);低極性(S、T、C);大極性(Q、N);酸性(D、E);塩基性(R、H、K);プロリン;アラニン;及びグリシン。
本明細書で用いられる略語は次のようなものである:
【0071】
【表1a】

【0072】
本出願は、11/10/98に出願したU.S.S.N.09/189,702(これは3/4/94に出願したU.S.S.N.08/205,713(これは、11/29/93に出願した08/159,184(これは6/4/93に出願した08/073,205(これは、3/5/93に出願した08/027,146のCIPであり、現在取下げられている)のCIPであり、現在取下げられている)のCIPであり、現在取下げられている)のCIPである)に関連し得る。本出願はまた、U.S.S.N.09/226,775(これは、U.S.S.N.08/815,396(これは、現在取下げられているU.S.S.N.60/013,113の利益を主張している)のCIPである)に関連し得る。さらに、本出願は、U.S.S.N.09/017,735(これは、取下げられたU.S.S.N.08/589,108;U.S.S.N.08/753,622、U.S.S.N.08/822,382、取下げられたU.S.S.N.60/013,980、U.S.S.N.08/454,033、U.S.S.N.09/116,424、及びU.S.S.N.08/349,177のCIPである)に関連し得る。本出願はまた、U.S.S.N.09/017,524、U.S.S.N.08/821,739、取下げられたU.S.S.N.60/013,833、U.S.S.N.08/758,409、U.S.S.N.08/589,107、U.S.S.N.08/451,913、U.S.S.N.08/186,266、U.S.S.N.09/116,061、及びU.S.S.N.08/347,610(これは、U.S.S.N.08/159,339(これは、取下げられたU.S.S.N.08/103,396(これは、取下げられたU.S.S.N.08/027,746(これは、取下げられたU.S.S.N.07/926,666のCIPである)のCIPである)のCIPである)のCIPである)に関連し得る。本出願はまた、U.S.S.N.09/017,743、U.S.S.N.08/753,615;U.S.S.N.08/590,298、U.S.S.N.09/115,400、及びU.S.S.N.08/452,843(これは、U.S.S.N.08/334,824(これは、取下げられたU.S.S.N.08/278,634のCIPである)のCIPである)に関連し得る。本出願はまた、仮のU.S.S.N.60/087,192、及びU.S.S.N.09/009,953(これは取下げられたU.S.S.N.60/036,713、及び取下げられたU.S.S.N.60/037,432のCIPである)に関連し得る。さらに、本出願は、U.S.S.N.09/098,584及びU.S.S.N.09/239,043に関連し得る。本出願はまた、同時係属中の5/30/00に出願されたU.S.S.N.09/583,200、3/1/99に出願されたU.S.S.N.09/260,714、及び10/6/00に出願されたU.S.仮出願「Heteroclitic Analogs And Related Methods」(代理人事件整理番号018623−015810US)に関連し得る。上記の出願はすべて、本明細書中で参考として援用される。
【0073】
(特定の実施形態の説明)
(発明の詳細な説明)
(I.緒言)
本発明は、最適化された免疫原性を有する多重エピトープワクチンを設計する方法に関する。好ましい実施形態では、このワクチンは、CTLエピトープ及びHTLエピトープを含む。本発明に従うワクチンは、有意に民族に偏らない集団範囲を考慮し、そして、好ましくは、異なるウイルス又は他の抗原性単離物に関して保存されたエピトープに焦点を合わせ得る。このワクチンは、応答の大きさ(magnitude)及び広さ(breadth)に関して最適化され得、そして最も単純なエピトープ立体配置を可能にし得る。最終的に、一般的方法を提供して、ヒトにおけるポリエピトープワクチンの免疫原性を評価する。
【0074】
本発明の方法は、本明細書中で特定される原理に基づいてポリエピトープ構築物を設計する工程を包含する。1つの局面では、本発明は、単一プロモーターのミニ遺伝子ワクチンを用いて、特定のCTLエピトープ及びHTLエピトープに対する応答の同時誘導を提供する。このようなミニ遺伝子構築物は、多くの異なるエピトープ(好ましくは10個を越え、頻繁に、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は70個以上を越える)を含み得る。
【0075】
ポリエピトープ構築物を設計する際に、以下を考慮する:
(i)ポリエピトープ構築物中へ取り込まれるエピトープが分類されて、形成される連結部エピトープの数を最小化する順序を提供する。いくつかの実施形態では、分類は、コンピューターにより行われる。好ましくは、エピトープの順位付けの際の第2の考慮すべきこととして、エピトープが、CTL免疫原性を生成するエピトープのN末端の残基が、別のCTLエピトープのC末端に並べられるように、配置される。
【0076】
(ii)免疫原性を増強する隣接残基が、エピトープの隣接位置に挿入される。特定の実施形態では、隣接残基は、CTLエピトープのC+1位に挿入される。
【0077】
(iii)スペーサー配列をエピトープの間に挿入して、連結部エピトープの発生を防ぐ。特定の実施形態では、スペーサー配列はまた、残基がCTLエピトープのC末端に隣接するように、リンカーのN末端で免疫原性を生じる残基を含み得る。
【0078】
HTL連結部エピトープを防ぐ特定の実施形態では、任意の公知のHLAクラスIIアンカー残基に対応しないアミノ酸残基からなるスペーサーが用いられる(例えば、二者択一のG残基及びP残基(GPスペーサー)は、2つのHTLエピトープ間に含まれる)。
【0079】
本発明の別の局面(上記考慮(ii))は、エピトープに隣接する位置(例えば、エピトープのC末端に直に隣接する位置)の特定のアミノ酸残基の導入又は置換に関与し、それにより、この部位に導入又は置換された特定の残基を含まない構築物と比較して、増加した抗原性及び免疫原性を有するポリエピトープ構築物(すなわち、最適化ミニ遺伝子)を生成する。ポリエピトープ構築物を最適化する方法は、エピトープのC+1位(すなわち、エピトープのC末端に直に隣接する位置)に隣接残基(好ましくは、K、N、G、R、又はA)を導入する工程を包含する。代替の実施形態では、免疫原性を低下させるのに寄与する残基(すなわち、負電荷の残基、例えば、D,脂肪族残基(I、L、M、V)又は芳香族非トリプトファン(trytophan)残基)が、置換される。隣接残基は、適切なエピトープを配置することにより導入されて、望ましい隣接残基を提供し得るか、又は特定の残基を挿入し得る。
【0080】
(最適化ポリエピトープワクチン構築物を設計する際に考慮すべきこと)
背景の節において述べたように、10個までのエピトープをコードするミニ遺伝子が、多数の異なるエピトープに対する応答を誘導するために用いられている。実験的ミニ遺伝子であるpMin.1に関するデータが、公開されている[Ishiokaら、J.Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]。目的の無数の疾患の兆候に取り組む、最適化免疫原性を有するミニエピトープ構築物を設計及び評価するためのパラメーターが、本明細書中に開示される。
【0081】
設計パラメータは、多数の研究に基づいて特定される。ポリエピトープ構築物の予備的な評価の際に、3つの異なる多重エピトープ構築物(20〜25個の異なるCTLエピトープを各々含む)に関するデータを示す(図1)。1つの構築物は、HIV誘導エピトープに基づき、他の2つは、HCV誘導エピトープ(それぞれ、HCV1及びHCV2)に組み入れる。これらの異なるミニ遺伝子の免疫原性は、A2 HLAトランスジェニックマウス又はA11 HLAトランスジェニックマウスのいずれかにおいて測定される(A1、A24、及びB7制限エピトープは評価されない)。
【0082】
従って、単回のi.m.DNAワクチン注射の11日後、8〜14個の異なる例示的エピトープに対する応答を、CTL活性を測定するアッセイ(本明細書中に記載される、クロム放出又はインサイチュIFN産生のいずれか)を利用して評価する前に、6日目に単回のインビトロでの再刺激をした。エピトープ特異的CTLの刺激は、HIV−1、HCV1及びHCV2の場合、それぞれ、試験されるエピトープの6/8(75%)、10/14(72%)、13/14(93%)について実証し得る。従って、多数のエピトープに対するCTL応答を同時刺激し得る、多重エピトープミニ遺伝子が、容易に設計され得る。しかし、いくつかのエピトープのCTL刺激が検出されず、そして考慮される36の事例のうちのいくつかでは、応答はまれであるか、少なくとも103(1000倍)を越える大きさで、有意に変化する、ことが強調されるべきである。これらの結果は、ミニ遺伝子構築物のより慎重な分析及び最適化が必要とされることを強く示唆する。
【0083】
特定のエピトープを刺激する最適下限の能力が、ミニ遺伝子のサイズに関与する可能性もまた試験される。実際、ほとんどの既報は、10個までのエピトープのミニ遺伝子を記載し、そして20個のエピトープのミニ遺伝子が報告されているいくつかの例で、2又は3個のエピトープのみに対する活性が測定される。この可能性に取り組むために、2つのより小さなミニ遺伝子(HIV−1.1及びHIV1.2、各々10個のエピトープを含み、そしてHIV−1ミニ遺伝子の半分に対応する)を合成し、そして試験した。4つの例示的エピトープに対する応答を測定した。
【0084】
【表2】

【0085】
より小さなミニ遺伝子により誘導された応答は、20個のエピトープ構築物により誘導された応答よりに匹敵するか、むしろ低いことを見出した(表1)。従って、ミニ遺伝子のサイズに関係する因子は、特定のエピトープに対する観察された最適下限での刺激を説明できないと考えられ、従って、他のパラメータ(本明細書中に開示される)を用いて有効なポリエピトープ構築物設計する。
【0086】
(結合モチーフの最小化)
ポリエピトープ構築物を設計する際の考慮すべきことの1つは、エピトープをお互いに隣接して配置する場合の連結部エピトープの不慮の生成である。ミニ遺伝子におけるこのようなエピトープの存在は、ミニ遺伝子の能力に有意に影響し得る。この望まれない効果を防ぐためのストラテジーは、ポリエピトープワクチン又はミニ遺伝子ワクチンの開発への適用のために、本明細書中で開示される。連結部エピトープは、初めに、エピトープを分類することにより最小化されて、連結部エピトープの数が最小化される順序を特定する。このような分類手順は、コンピューター、又は目(必要な場合、すなわち、ポリエピトープ構築物に含まれるエピトープの数に依存して)を用いて行われ得る。
【0087】
例えば、パターンを見つけ出すコンピュータプログラム(例えば、Panorama)は、多重エピトープミニ遺伝子の設計に使用され得る。多くの異なるエピトープ配列が、特定のミニ遺伝子構築物を設計する際に考慮され得れ得る。コンピュータプログラムは、入力として、考慮される特定のセットのエピトープ、及びこれらのモチーフを保有する任意の連結部エピトープが存在するか否かを評価するために走査されるモチーフを受け入れる。例えば、プログラムは、ミニ遺伝子の形成をシミュレートし得、ユーリスティック(euristic)コンピュータアルゴリズムにおいて、接合部のモチーフの存在を避けるか又は最小化するためにエピトープ対を調べる。このプログラムは、例えば、1秒当たり6×105(約50万)のミニ遺伝子の構成を評価し得る。あまり好ましくない代替物(より時間を消費するので)として、非コンピュータ援助分析が実行され得る。
【0088】
先のパラグラフに記載されるように、コンピュータプログラムを使用する10−エピトープ構築物の完全な分析は、10の階乗(約3.6×106)の組み合わせを調べることが必要であり、6秒間で完了し得る。14−エピトープ構築物は、2日で完全に分析され得る。しかし、分析時間は、より大きなミニ遺伝子が考慮されるので、非常に迅速に増加する。完全な分析は、必要とされず、プログラムは、任意の所望の長さの時間で実行され得る。この場合において、最小の数の連結部エピトープを提供する構成が提供される。
【0089】
このタイプのアプローチの結果の例は、表2に提示される。25のエピトープを組み込むHCV1ミニ遺伝子に含まれる同じエピトープの10個の異なるランダムな組合せにおける接合部モチーフの数(2日間のコンピュータ分析の結果であった)を、表に提示した。非最適化組合せにおいて、多数のA2、A11及びKbモチーフが、25〜38の範囲、平均31で見出された。比較して、2つのこのような接合部モチーフのみが、HCV1ミニ遺伝子組合せに提示される。結論として、コンピュータプログラムは、ミニ遺伝子構築物に提示される接合部モチーフの数を効果的に最小化するために利用され得る。
【0090】
【表3】

【0091】
(クラスII連結部エピトープの除去及びクラスII制限応答についてのインビボの試験)
連結部エピトープを除く際のさらなるエレメントとして、スペーサー配列が、並列した場合に連結部エピトープを作製する2つのエピトープ間に挿入され得る。
【0092】
HTLエピトープについての連結部エピトープの問題を補正するために、少なくとも5個のアミノ酸の長さのスペーサーを2つのエピトープ間に挿入する。このようなスペーサーに組み込まれるアミノ酸残基は、好ましくは、HLAクラスII結合モチーフのいずれに対しても一次アンカー残基であることが公知ではないアミノ酸残基である。このような残基には、G、P、及びNが挙げられる。好ましい実施形態において、配列GPGPGを有するスペーサーが2つのエピトープ間に挿入される。以前の研究によって、GPスペーサーがクラスII結合相互作用を破壊する際に特に効果的であることが示された[Setteら、J.Immunol.,143:1268−73(1989)]。全ての公知のヒトクラスII結合モチーフ及びマウスIAb(HLAトランスジェニックマウスによって発現されるクラスII)は、4つの残基が離れて配置される、この主要なアンカー位置におけるG又はPのいずれかに寛容ではない。このアプローチは、いずれのクラスII制限エピトープも連結部エピトープとして形成され得ないことを事実上保証する。
【0093】
この設計の考察を確認する例において、本発明者らは、HIV誘導HTLエピトープを組み込むポリペプチドを合成した。これらのエピトープは、広範に交差反応性のHLA DR結合エピトープである。次いで、これらのエピトープがまたマウスIAbクラスII分子に効果的に結合することが決定された。考慮された2つの異なる合成ポリペプチドを示す図は、図2aに示される。
【0094】
第1の構築物は、直線的に配置された4つの異なるエピトープを組込み、一方、第2の構築物は、GPGPGスペーサーを組み込む。三つの潜在的連結部エピトープに対応する合成ペプチドをまた合成した。
【0095】
2ナノモルのこれらの異なる構築物がIAb陽性マウス内の種々のエピトープに対する増殖性の応答についてプライムする能力を試験し、そして等モル量のプールの同じペプチド(3マイクログラムのそれぞれのペプチド)によって誘発される応答と比較した。詳細には、3匹のマウスのグループに、CFAエマルジョンを注射し、注射の11日後、それらのリンパ節細胞をインビトロでさらに3日間培養し、そしてチミジン取り込みを、24時間の培養において測定した。高親和性IAb結合能力に基づいて予期されるように、全ての4つのエピトープが良好な増殖応答を誘導したことが見出された(図2b)。4.9〜17.9の範囲の刺激指数(SI)値は、これらのペプチドがプールに注入された場合に観測された。しかし、同じエピトープを組み込む直線状ポリペプチドが試験される場合、Pol335に対して指向される応答が失われる。これは、Gag171及びPol335にわたる連結部エピトープに対して指向される応答の出現と関連した。GPGPGスペーサーの使用は、おそらく、連結部エピトープを破壊することによって、この問題を除去し、そしてPol335応答を回復した。観測される応答は、単離されたペプチドのプールで観測されたものと同じ大きさであった。
【0096】
これらの結果は、複数HIV誘導クラスIIエピトープに対する応答が同時に誘導され得ることを示し、これらはまた、HTLエピトープ候補を組み込む種々の構築物の免疫原性を調査するためにどうのようにIAb/DR交差反応性が利用され得るかを示す。最後に、これらは、適切なスペーサーが、クラスII連結部エピトープを効果的に破壊するように使用され得、これらは、それ以外に効果的なワクチン免疫原性を干渉しないことを示す。
【0097】
クラスI制限応答の場合において、天然に存在する連結部エピトープ及びエピトープ特異的応答の結果としての阻害の1つのケースが、McMichael及び共同研究者によって提示された[Tusseyら、Immunity、第3巻(1):65−77(1995)]。クラスIについての連結部エピトープの問題を取り組むために、類似の分析が実行され得る。例えば、特定のコンピュータプログラムを使用して、選択されたマウスモチーフについて及び最も一般的なヒトクラスI HLA A及びBモチーフについてスクリーニングすることによって、潜在的なクラスI制限連結部エピトープを同定する。
【0098】
スペーサー配列もまた、同様にCTL連結部エピトープを妨げるために使用され得る。しばしば、A又はGのような非常に少しの残基が好ましいスペーサー残基である。Gはまた、HLAクラスI結合モチーフの好ましい一次アンカー残基(例えば、PCT/US00/24802を参照のこと)として比較的まれに存在する。これらのスペーサーは、種々の長さであり得、例えば、スペーサー配列は、代表的には、1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸残基の長さであり得、時々、それより長い。より短い長さは、しばしば、ポリエピトープ構築物を作製する際に物理的束縛のため、好ましい。
【0099】
(CTLミニ遺伝子免疫原性に対する隣接領域の影響)
ミニ遺伝子を設計する際に考慮される別の因子は、CTLエピトープのC末端に隣接する位置に免疫原性を支持する残基を挿入することである。
【0100】
このような残基の識別が本明細書中に開示される。隣接領域は、少なくともいくつかの場合において、CTLエピトープの明かな提示を調節し得る。しかし、隣接領域の効果の調節の制限された分析のみが、これまでに実行されており、全ての場合(Ishioka、1989の研究[Ishiokaら、J.Immunol、第162巻(7):3915−25(1999)])を除く)において、エピトープは、マウスMHCによって制限された。これは、マウス及びヒトのMHCモチーフがC末端において異なる傾向があり、次いで、プロテオソーム切断性能によって異なって影響し得るので、特に関連する。さらに、たとえあるにしても、マウスプロテオソーム及びヒトプロテオソームならびに/又はERプロテアーゼ間の特異性を処理する際に潜在的な差を考慮した研究はほとんどない。従って、マウス対ヒトのエピトープを利用する実験は、異なる結果を生み出し得、隣接残基について「支配する」。免疫原性を増加する残基、及び従って、免疫原性を最適化するためにポリエピトープ構築物に挿入される残基を同定する研究が本明細書中に開示される。
【0101】
エピトープが発現された分子の状況は、しばしば、HLAトランスジェニックマウスにおけるエピトープに特異的なCTLのプライミングの頻度及び/又は大きさに劇的に影響した。二つの例を表3に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
pMin5ミニ遺伝子において発現されるHBV Core18エピトープの免疫原性は、pMin1ミニ遺伝子の場合に観測されるよりも、約200倍低い大きさであった。同様に、HCV1ミニ遺伝子の状況において発現されるHCV Core132エピトープの免疫原性は、最低限であり、行われた12の異なる独立したCTL実験/培養のうちの2つのみにおいて有意なT細胞が明かにプライムした。これら2つの陽性の実験は、100SUのIFN−γの応答を生成した。しかし、同じエピトープがHCV2ミニ遺伝子の状況で発現された場合、陽性の応答が、17/18のケースで観測され、約5倍高い平均の大きさを有する。
【0104】
(HLA−A*0201/KbトランスジェニックマウスにおけるHIV−FTの免疫原性)
HIV多重エピトープDNAワクチン(HIV−FT(図3a))は、20HIV誘導CTLエピトープをコードする。これら20のエピトープのうち、8つがHLA−A*0201によって制限され、9つがHLA−A*1101によって制限され、3つがHLA−B*070118によって制限された。全てのエピトープが、良好な親和性を有する関連の制限エレメントに結合した。HLA−A*0201制限されたエピトープの全てが、粗い類似性の親和性を有する精製されたHLA−A*0201に結合し、19〜192nMの範囲のIC50値(図3a)を有する。HIV−FTへの封入のために選択されたHLA−A*0201エピトープは、HIV−1感染された個体において認識され、また、IFAを用いて乳化され、そしてHLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウスをプライムするために利用される場合、リコールCTL応答をプライミングする際に非常に効果的であった。構築物は、それらの間にいずれの介在するスペーサー配列もなしに連続してエピトープをコードするように設計され、コンセンサスIgκシグナル配列を、小胞体へのコードする抗原の輸送を容易にするように、構築物の5’末端に融合した(Ishiokaら、J.Immunol、第162巻:3915−3925、1999)。
【0105】
HIV−FTがリコールCTL応答をインビボでプライムする能力は、HLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウスの筋内免疫化によって評価された。100μgのHIV−FTプラスミドDNAで免疫化した動物由来の脾細胞を、HIV−FTにコードされるHLA−A*0201エピトープのそれぞれで刺激し、そして6日間の培養後、ペプチド特異的CTL活性についてアッセイした。HIV−FTにおけるエピトープの3つに対する代表的なCTL応答を図4aに示す。異なる実験由来の結果をより簡便に集計するために、各脾細胞培養物についての細胞毒性のパーセントの値を、先に記載されたように溶解単位で表現した(Vitielloら、J.Clin.Invest95:341−349、1995)。HIV−FTにコードされる8つのHLA−A*0201制限エピトープのうち、Pol498、Env134、Pol448、Vpr62、Nef221、及びGag271は、DNA免疫化に続いて、CTL応答をプライムした(図4b)。CTL応答の大きさは、Pol498に対する50LU近くの大きさからNef221及びGag271に対する4LUの小ささまで、10倍の範囲を越えて変化した。同様に、リコールCTL応答の頻度は、エピトープ間で変化し、Pol498エピトープは、このケースの94%において応答を誘発し、一方、Gag271に対するCTL応答は、この実験の31%のみにおいて検出された。結論として、HIV−FT(任意のスペーサーアミノ酸を有さないエピトープを連続してコードする)を用いるDNA免疫化は、分析されたエピトープの大部分に対してリコールCTL応答の誘発を生じた。しかし、応答の大きさ及び頻度は、エピトープ間で大きく変化した。
【0106】
(トランスフェクトされた細胞株におけるエピトープ免疫原性とHIV−FTエピトープ提示との間の相関)
HIV−FTにおけるHLA−A*0201エピトープの示差的な免疫原性を、次いで評価した。示差的なMHC結合活性は、全てのエピトープがHLA−A*0201に高い親和性で結合する(図3a)ので、除外され得る。さらに、HLA−A*0201/KbトランスジェニックマウスにおけるTCR特異性の適切なレパートリーの欠如はまた、全てのエピトープが、IFAにおいて乳化された最適に予備処理されたペプチドと比較可能な、HLAトランスジェニックマウスの免疫化に続くCTL応答を生成するので、除外され得る。T細胞認識のために提示される各エピトープの相対量の変化は、エピトープ免疫原性における差で少なくとも部分的に説明され得る。
【0107】
これを試験するために、HLA−A*0201/Kb遺伝子を発現するヒトT細胞株のJurkat細胞(Vitielloら、J.Exp.Med.173,1007−1015,1991)を、エピソームベクターにおいて発現されるHIV−FTでトランスフェクトした。ヒト細胞株を、ヒトとマウスとの間のプロセシング能力の差違に関連し得る任意の可能な人工産物を排除するための使用のために選択した。このトランスフェクトされた細胞株は、抗原プロセシング能力を伴うMHC提示と一致し、そしてヒトにおける使用のためのCTLエピトープベースのDNAワクチンの引き続く開発のための可能な支持を提供する。
【0108】
ペプチド特異的CTL株は、HIV−FT、Pol 498、Env 134、Pol 448及びNef 221においてコードされるHLA−A*0201エピトープの4種のトランスフェクトされた標的における存在を検出した。これらのエピトープの各々が産生されそして提示されるレベルを定量化するために、様々なエピトープに対して特異的なCTL株を、トランスフェクトしていない標的及び可変量の各エピトープと共にインキュベートした。これらのCTL用量応答曲線を標準曲線として使用して、HIV−FTをトランスフェクトした標的細胞に応答して観察される濃度と等価なレベルのIFN−γ分泌を引き起こすペプチドの濃度を決定した。この値は、「ペプチド等価用量」と称され、そしてトランスフェクトされた細胞で提示されるエピトープの量の相対測定値として理解される。
【0109】
表5は、HIV−FTにおいてコードされるHLA−A*0201エピトープの7種についての分析の所見を要約する。ペプチド等価用量は、Nef 221の33.3ng/mlの高さから、Gag 271、Gag 386及びPol 774の0.4ng/ml未満のペプチド等価まで変化した。累積的に、これらの結果Nah、HIV−FTでトランスフェクトしたヒト細胞株において、異なるHLA−A*0201制限エピトープの提示のレベルにおいて少なくとも100倍のバリエーションが存在することを示す。抗原性アッセイにおいて検出可能なレベルで提示された全てのエピトープは又はインビボで免疫原性であった。免疫原性であるが抗原性ではないエピトープは、Gag 271のみであった。この場合において、HIV−FTでのHLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウスの免疫化は、試験された培地の3分の1未満で、弱いCTL応答を引き起こした。抗原性分析の感度の限界より下で提示された他の2つのエピトープであるGag 386及びPol 774は、非免疫原性であった。結論として、これらの結果は、HIV−FT免疫化によって引き起こされるCTL応答における異質性は、最適以下のエピトープ提示に少なくとも一部起因し得ることを示唆する。
表5.HIV−FT免疫原性及び抗原性の比較
【0110】
【表5】

【0111】
1 大きさは、LU(参照)として表される;エピトープ当量に対する相関係数 R+0.44。
2 陽性培養物の頻度(培養物の数>2LU/試験した総数);ペプチド当量に対する相関係数 R+0.8。
3 大きさは、ng/mlで表す。
4 独立実験の数。
【0112】
(隣接アミノ酸はワクチン接種後のインビボにおけるCTLエピトープ免疫原性に影響する)
本明細書中に記載されるように、個々のCTLエピトープに隣接する特定のアミノ酸は、タンパク質分解に対する抗原の感受性を変えることによってエピトープがプロセシングされる効率に影響する1つの因子である。エピトープ免疫原性に対する隣接アミノ酸の影響を試験するために、免疫原性データを、配列に介在することなく最小のCTLエピトープをコードする多数の無関係の実験用多重エピトープDNA構築物で免疫したHLA−A*0201、−A*1101、及び−B*0701トランスジェニックマウスから得た。94の異なるエピトープ/隣接残基の組み合わせを示すデータベースは、エピトープ免疫原性に対する直後の隣接アミノ酸の可能な影響を決定するように編集した。所定のエピトープ及び隣接アミノ酸の組み合わせは、重複性に起因する分析の人為的なゆがみを防止するために一回のみ含まれた。HLAトランスジェニックにおけるエピトープの免疫原性は、培養物の少なくとも30%において100SU又は20LUより大きな値が測定された場合に、最適であるとみなした。CTL応答を、代表的に、4個のカテゴリーの1つでスコア付けした:(+++)、顕著である−200LU又は1000SUより大きい:(++)、良好−20〜200LU又は100〜1000SU;(+)、中程度−2〜20LU又は10〜100SU;及び(+/−)、弱い又は陰性−2LLU又は10SU未満。最適な応答 対 最適以下の応答の数は、隣接位置におけるアミノ酸の化学的タイプに基づいて分類され、そして有意な差はχ2統計試験を使用して決定される。
【0113】
この分析は、エピトープのアミノ末端に存在するアミノ酸のタイプと免疫原性と間のいずれの関係をも見出さなかった。しかし、カルボキシル末端の隣接残基であるC+1残基の有意な効果が同定された。正電荷のアミノ酸、K又はRは、最も頻繁に、最適なCTL応答と関連し、その頻度は68%であった(図5)。C+1残基におけるアミノ酸N及びQの存在はまた、試験された以下のケース:エピトープが、C+1位でNに隣接されている場合の55.5%において強いCTL応答に関連し、これらは、3/4の場合で最適なCTL応答を引き起こした。一般的に、C、G、A、T及びSのような小さな残基は、分析に利用可能な組み合わせの54%において強い応答を引き起こす中間のCTL応答を促進した。逆に、芳香族アミノ酸及び脂肪族アミノ酸により隣接されたエピトープは、それぞれ、その場合の36%及び17%のみで最適なインビボ応答を引き起こした。負電荷の残基Dは、最適以下のCTL応答を生じた。C+1アミノ酸のエピトープ免疫原性に対する影響は、χ2統計試験(P<0.03)を使用して統計学的に有意であることが見出された。エピトープ免疫原性に対する有意な影響は、類似の分析をC+1位より遠位のC末端残基について行った場合には示されなかった。
【0114】
(エピトープ免疫原性に対するC1残基の効果の直接評価)
C+1隣接位置におけるアミノ酸の好ましい型対欠失型のアミノ酸の効果を直接評価するために、2つの多重エピトープ構築物(HBV.1及びHBV.2と称される(図3b))もまた評価した。HIV−FTを用いた場合、これらのHBV構築物は、スペーサーに介入することなくエピトープを経時的にコードした。実際に、HBV.1及びHBV.2は、pMin1におけるHIV−1エピトープ(以前に特徴付けられた実験的多重エピトープ構築物(Ishioka、前出))を類似のHBV由来エピトープで置換することによって生成された。
【0115】
HBV.1について、HIV−1エピトープは、高度に免疫原性のHBV Core 18エピトープに直接従うHIV−1エピトープをHBV Pol 562エピトープで置換した。これは、C+1残基をKからFに変えた。さらなるエピトープのHBV Pol 629を、HBV Core 18とPol 562エピトープとの間に挿入すること(C+1アミノ酸をK残基で置換する変化)によって第2の構築物であるHBV.2を生成した。これらの異なる状況において存在するCore 18エピトープの免疫原性が、HLA−A*0201/Kbトランスジェニックマウスにおいて評価された場合、Core 18エピトープはHBV.1において実質的に非免疫原性であるが、HBV.2において強力な免疫原性であることが決定された(図6a)。このエピトープのインビボ免疫原性の現象は、本発明者らの以前の分析によって示された通りであった。
【0116】
C1隣接アミノ酸のCTLエピトープ免疫原性に対する影響をさらに試験するために、Core 18エピトープに対してC+1位で単一のアミノ酸の挿入だけHBV.1とは異なる構築物のセット(図3c)を評価した。C+1位においてW、Y又はLにより隣接されている場合、Core 18エピトープに対してCTL応答はほとんどか又は全く観察されなかった(図6b)。逆に、単一のK残基の挿入は、Core 18に対するCTL応答を劇的に増加した。この応答は、Core 18エピトープがpol 629により隣接されているHBV.2、エピトープのN末端においてKを有するエピトープにおいて観察された応答に匹敵した。このCore 18CTL応答の増強はまた、R、C、N又はGの挿入においても観察された。これらの挿入の効果は特異的である。なぜなら、これらの構築物内の他のエピトープの免疫原性は、CTL応答における有意な変化を示さなかったからである(データは示さず)。結論として、これらのデータは、C+1アミノ酸はエピトープ免疫原性に劇的に影響し得ることを示す。
【0117】
(CTLエピトープ免疫原性における変化は存在する量と相関する)
異なるC+1残基に関連するCore 18の免疫原性の変化がタンパク質分解切断に対する差示的な感受性の結果である場合、エピトープ提示のレベルの大きな差が異なる構築物において検出可能であるべきである。これを試験するために、トランスジェニックマウス20において発現される同じHLA−A*0201/Kb遺伝子を発現するJurkat細胞を、HBV.1又はHBV.1Kのいずれかを発現するエピトープベクターでトランスフェクトした。このCore 18エピトープは、KがC+1位にある場合、105より高いレベルでされ、これを同じ位置のFの存在に匹敵した(図7)。pol 455の提示が10倍未満だけ変化したため、Core 18提示のこの差違は、標的細胞株の間の遺伝子発現の差違に起因する。これらのデータは、C+1位におけるアミノ酸が、多重エピトープDNAワクチンにおけるエピトープ提示の効率に影響を与え得るという著しい効果を示す。従って、これらのデータは、DNAワクチンにおけるCTLエピトープの免疫原性が、エピトープ提示のレベルに影響する設計の考察により最適化され得ることを示す。このタイプの最適化は、他の形態を使用して送達されるエピトープベースのワクチン(例えば、ウイルスベクターならびに当業者に公知の他の発現ベクター)に適用可能である。なぜなら、この効果は、抗原が転写及び翻訳された後に発揮されるからである。
【0118】
要約すると、隣接残基について、A、C又はGの様な非常に小さな残基、Q、W、K又はRのような大きな残基のいずれかが、一般的に良好な又は顕著な応答に関連することが見出された。ミニ遺伝子における終止コドンによるC+1残基の非存在、又はS又はTのような中間サイズの残基の存在は、より中間の応答パターンに関連した。最後に、負電荷の残基であるD、脂肪族(V、I、L、M)又は芳香族非トリプトファン残基(Y、F)の場合において、比較的乏しい応答が観察された。これらの結果は、エピトープのC末端に隣接する特定の残基が、応答の頻度及び大きさに劇的に影響し得ることを示す。C+1位における隣接残基はまた、スペーサー配列と組み合わせて導入され得る。従って、免疫原性を支持する残基、好ましくは、K、R、N、A又はGは、スペーサーの隣接残基として含まれる。
【0119】
(ポリエピトープ構築物の分類及び最適化)
本発明を使用してポリエピトープ構築物を開発するために、ポリエピトープ構築物に含めるためのエピトープは、本明細書中で規定されるパラメーターを使用して分類及び最適化される。分類及び最適化は、コンピューターを使用して、又は少数のエピトープの場合には、コンピューターを使用せずに実施され得る。
【0120】
コンピューターによる最適化は、代表的に、以下のように実施され得る。以下は、エピトープの組み合わせを同定及び最適化するコンピューター化システム(すなわち、接合エピトープの最小数、及び隣接残基の最大数を提供する)の例を提供する。
【0121】
エピトープの分類の1つの構成要素は、「Junctional Analyzer」である。例えば、このプログラムは、その操作のためのプログラムを特定するテキストファイルを使用する。5つのタイプの入力データがこのプログラムに与えられる:1)処理するペプチドのセット;2)C+1位及びN−1位に現れる場合の各アミノ酸の重量のセット;3)接合部の検出において使用するモチーフのセット:4)各対のペプチド環に挿入されるアミノ酸の最大数;5)プログラムの作動を制御するための他の値。このプログラムは、ペプチドの全ての可能な対を評価し、そして接合部の数、C+1及びN−1の重量を計算し、そしてそれらを所定の式に従って合わせる。現在、この式は、この2つの重量の積÷接合部の数である。接合物の数がゼロである場合、この積を0.5で割る。ペプチド部位を評価するための他の式は、いつでもこのプログラムに容易に加えられ得る。このプログラムからの出力は、最大機能結果を生じる挿入をペプチドの各対について列挙するテキストファイルである。このファイルはまた、ペプチドの元のリスト及びプロセシングの次の工程を行う2つのプログラムのいずれかの作動を制御するコマンドを含む。これら2つのプログラムは、「Exhaustive J Search」及び「Stochastic J Search」である。
【0122】
「Exhaustive J Search」は、ペプチドの全ての順列を調べ、機能結果の最大の和を有する1つを選択する。このプログラムは、最大の機能の和を有する順列を見出す。しかしながら、順列の因数の特徴に起因して、これは、最大12又は13のペプチドについてのみしか使用できない。13ペプチドについての推定実行時間は、2.9時間であり、14ペプチドについては約40時間である。「Stochastic J Search」は、順列配列の多くの領域を検索し、そしてこれが見出す最良の機能和を報告するように設計されている。現存の最大関数の総数を満たすか又は越える順列のみを報告することによって、順列配列のさらに広い領域を検索することが可能となる。この技術は、20ペプチドもの多くのペプチドを用いて成功した。20ペプチドの徹底的な検索を行うための時間は、1.3×105年のオーダーである。
【0123】
このプログラムは以下のように作動し得る:
これらのパラメーターを、このプログラムに入力する:
1.分類するエピトープ。
2.上記のような、アミノ酸C+1及びN−1の「重量」。
3.接合エピトープを検出するためのモチーフ。
4.最大スペーシング残基。
5.プログラム選択肢を制御するパラメーター。
【0124】
Junctional Analyzer Programは、次いで、以下を実行する:
1.全てのエピトープ対を生成する。
2.ペプチドの各対について、接合エピトープの最小数及びスペーシング残基のC+1及びN−1の寄与による最大効果を生じる挿入のセットを決定する。
3.各対の最適スペーシング残基及び最適接合の値を出力する。
【0125】
14個以上のエピトープがポリエピトープ構築物に含まれる場合、推計検索が、使用される。推計検索プログラムは、モンテカルロ技術(当業者に公知である)を使用して、順列空間の多数の領域を試験し、ペプチドの最適な配列の最良の推定値を見出す。
【0126】
14個未満のエピトープが含まれる場合、網羅的プログラムが使用される。この網羅的検索プログラムは、全てのエピトープ対に関する最適化関数の和について最良の値を有するものを見出すために、ポリエピトープ構築物を構成するエピトープの全ての順列を調べる。これは、全てが試験されるので、「最良」の順列を見出すことが保証されている。
【0127】
プログラムアウトプットは、エピトープの最良の配置の列挙を提供する。多くの順列が評価関数の同じ値を有するので、いくつかは、他の因子が最適な配置を選択する際に考慮され得るように、生成される。
【0128】
この系のプログラム分析を用いて作製されたポリエピトープ構築物の例は、図9に提供される。
【0129】
電荷分布、疎水性/親水性領域分析、又は折り畳みの推測のような他の因子がまた、ミニ遺伝子構築物をさらに最適化するために評価関数に組込まれ得る。
【0130】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)が、種々のレベルの組成に関して記載され得る。この組成の一般的な考察に関しては、例えば、Albertsら,Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)ならびにCantor及びSchimmel,Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照のこと。「一次構造」は、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」は、ポリペプチド内の位置的に順番に並んだ三次元構造をいう。これらの構造は、一般的にドメインとして知られている。ドメインは、ポリペプチドのコンパクトな単位を形成するポリペプチドの一部である。代表的なドメインは、より小さい組成の区分(例えば、β−シート及びα−ヘリックスのストレッチ)から構成される。「三次構造」は、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」は、独立した三次単位の非共有結合によって形成された三次元構造をいう。
【0131】
電荷分布、疎水性/親水性領域分析、又は折り畳みの推測のような構造の推定が、当業者に公知の配列分析プログラムを用いて実行され得、例えば、疎水性ドメイン及び親水性ドメインが同定され得る(例えば、Kyte & Doolittle,J.Mol.Biol.157:105−132(1982)及びStryer,Biochemistry(第3版、1988)を参照のこと;任意の多数のインターネットベースの配列分析プログラム(例えば、dot.imgen.bcm.tmc.eduにおいて見出されるようなプログラム)もまた参照のこと)。
【0132】
ポリエピトープ構築物の三次元構造モデルがまた、作製され得る。これは、一般的に、分析されるアミノ酸配列をコンピューターシステムに入力することによって実行される。このアミノ酸配列が、タンパク質の一次配列又はサブ配列を示し、これは、タンパク質の構造情報をコードする。次いで、タンパク質の三次元構造モデルが、当業者に公知のソフトウェアを用いて、コンピューターシステムとの対話によって作製される。
【0133】
このアミノ酸配列は、目的タンパク質の二次構造、三次構造及び4次構造を形成するのに必要な情報をコードする一次構造を示す。ソフトウェアは、構造モデルを作製するために一次配列によってコードされる特定のパラメーターを調べる。このパラメーターは、「エネルギーターム」といわれ、そして主に、静電気ポテンシャル、疎水性ポテンシャル、溶媒が近接可能な表面、及び水素結合を含む。二次エネルギータームとしては、ファン・デル・ヴァールスポテンシャルが挙げられる。生物学的分子は、累積的な様式でエネルギータームを最小化する構造を形成する。従って、コンピュータープログラムは、二次構造モデルを作製するために一次構造又はアミノ酸配列でコードされるこれらのタームを使用する。
【0134】
次いで、二次構造でコードされるタンパク質の三次構造が、二次構造のエネルギータームに基づいて形成される。使用者は、さらなる可変、例えば、タンパク質が膜結合であるかもしくは可溶性であるか、その体内での位置、及びその細胞での位置(例えば、細胞質、表面、又は核)を入力し得る。二次構造のエネルギータームを伴ったこれらの可変は、三次構造モデルを形成するために使用される。三次構造のモデリングにおいて、コンピュータープログラムは、二次構造の疎水性表面を同種のものと一致させ、そして二次構造の親水性表面を同種のものと一致させる。
【0135】
HLAプロセシング機構に最も容易に接近し得るこれらのポリエピトープ構築物が、次いで、選択される。
【0136】
(II.多重エピトープ性ワクチンの免疫原性の評価)
多重エピトープ性ミニ遺伝子の開発は、MHCへのペプチド結合の種特異性に起因して、特有のチャレンジを示す。異なる種由来の異なるMHC型は、異なるセットのペプチドに結合する傾向がある[Rammenseeら,Immunogenetics,Vol.41(4):178−228(1995)]。結果として、通常の実験動物においてヒトエピトープを構成する構築物を試験することは不可能である。この限定を克服するための代替物は、一般的に利用可能である。これらとしては、以下が挙げられる:1)非ヒトMHCによって制限されるエピトープを組み込んでいる類似の構築物を試験すること;2)非ヒトMHCによって制限されるコントロールエピトープに対する信頼;3)ヒトMHCと非ヒトMHCとの間の交差反応性に対する信頼;4)HLAトランスジェニック動物の使用;及び5)インビボにおいてヒト細胞を利用する抗原性アッセイ。以下は、抗原性及び免疫原性を分析するための技術開発の簡単な概略である。
【0137】
(クラスI HLAトランスジェニック)
エピトープを同定する目的のため[Setteら,J Immunol,Vol.153(12):5586−92(1994);Wentworthら、Int Immunol,Vol.8(5):651−9(1996);Engelhardら,J.Immunol,Vol.146(4):1226−32(1991);Manら,Int Immunol,Vol.7(4):597−605(1995);Shiraiら,J Imntunol,Vol.154(6):2733−42(1995)]、及びワクチンを開発する目的のため[Ishiokaら,J Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]のHLAトランスジェニックマウスの有用性は確立されている。発行されている報告のほとんどは、HLA A*0201/Kbマウスの使用を研究しているが、B*27マウス、及びB*3501マウスもまた利用可能であることに注意すべきである。さらに、HLA A*11/Kbマウス[Alexanderら,J.Immunol,Vol.159(10):4753−61(1997)]、ならびにHLA B7/Kbマウス及びHLA A1/Kbマウスもまた、作製されている。
【0138】
38個の異なる可能性のあるエピトープからのデータが、A2.1/KbトランスジェニックマウスのA2.1−制限CTLレパートリーとA2.1+ヒトのA2.1−制限CTLレパートリーとの間の重複レベルを決定するために分析された[Wentworthら,Eur J Immunol,Vol.26(1):97−101(1996)]。ヒト及びマウスの両方において、約500nMのMHCペプチド結合親和性の閾値は、インビボにおいてCTLエピトープを誘発するペプチドの能力と相関する。インビボでのヒトデータとインビボでのマウスデータとの間の高いレベルの一致が、85%の高い結合ペプチドで、58%の中程度の結合因子で、そして83%の低い/陰性結合因子で観察された。同様の結果がまた、HLA A11トランスジェニックマウス及びHLA B7トランスジェニックマウスを用いて得られた[Alexanderら,J Immunol,Vol.159(10):4753−61(1997)]。従って、HLAトランスジェニックマウスのT細胞レセプターレパートリーとヒトCTLとの間に存在する広範な重複に起因して、トランスジェニックマウスは、本明細書中に記載されるポリエピトープ構築物の免疫原性を評価するのに価値がある。
【0139】
HLA A11マウスに関連するようなTAP輸送の異なる特異性は、HLA−A11トランスジェニックマウスの免疫原性の評価に関する使用を妨げない。マウスTAP及びヒトTAPの両方は、疎水性末端を有するペプチドを効率的に輸送するが、ヒトTAPのみが、正に荷電したC末端を有するペプチド(例えば、A3、A11、及び他のA3スーパータイプのメンバーによって結合されるもの)を効率的に輸送することが報告されている。この関係は、A2、A1、又はB7には適用されない。なぜなら、マウスTAPもヒトTAPも両方とも、A2、B7、又はA1によって結合されるペプチドを等しく輸送し得るべきであるからである。この理解と一致して、Vitiello[Vitielloら,J Exp Med,Vol.173(4):1007−15(1991)]及びRotzschke[Rotzschke O,Falk K.,Curr Opin Immunol,Vo1.6(1):45−51(1994)]は、プロセシングがマウス細胞及びヒト細胞において類似していることを示唆しているが、Cerundolo[Rotzschke O,Falk K.,Curr Opin Immunol,Vol.6(1):45−51(1994)]は、マウス細胞対ヒト細胞での差異を示唆し、マウス細胞及びヒト細胞の両方は、HLA A3分子を発現する。しかし、HLA A11トランスジェニックを用いて、インビボにおいてT細胞及びB細胞上でのHLA分子の発現が、観察され、これは、報告されたマウスTAPの不利な特異性が、インビボにおいてA11/Kb分子の安定化も輸送も妨げなかったことを示唆する[Alexanderら,J Immunol,Vol.159(10):4753−61(1997)]。これらのデータは、荷電したC末端を有するペプチドがA11分子でトランクフェクトされたマウス細胞から溶出され得たという以前の観察と一致する[Maie(1994)]。複合抗原(例えば、インフルエンザ)及び最も重要には多重エピトープ性ミニ遺伝子によってコードされるA11制限エピトープ[Ishiokaら,J Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]に対するHLA A11マウスにおける応答がまた、検出されている。従って、TAPの問題は、トランスジェニックマウスとあまり関係がないようである。
【0140】
HLAトランスジェニックマウスの使用に潜在的に関連する別の問題は、HLA発現及び結合特異性に対するβ2ミクログロブリンの影響の可能性である。ヒトβ2が、マウスβ2ミクログロブリンよりも、より高い親和性及び安定性でヒトMHC及びマウスMHCの両方を結合することが周知である[Shieldsら,Mol Immunol Vol.35(14−15):919−28(1998)]。MHC重鎖及びβ2のより安定な複合体が、MHCクラスIの外因性の充填を促進することもまた周知である[Vitielloら,Science,Vol.250(4986):1423−6(1990)]。本発明者らは、HLA/Kb及びヒトβ2に対してダブルトランスジェニックであるマウスを作製することによって、この可変の潜在的な効果を試験した。ヒトβ2の発現は、HLA B7/Kbマウスの場合有利であり、そしてHLA A1トランスジェニックマウスの場合には、良好な発現レベルを達成するのに完全に必須であった。従って、HLA/Kb及びβ2のダブルトランスジェニックマウスは、本発明者らによって、現在日常的に交配され、利用されている。従って、HLAトランスジェニックマウスは、4つの主要なHLA特異性(すなわち、A2、A11、B7及びA1)のモデルHLA制限認識に対して使用され得、そして他のHLA特異性に対するトランスジェニックマウスは、免疫原性の評価のための適切なモデルとして作製され得る。
【0141】
(クラスIエピトープに対する抗原性試験)
数回の独立した系統の実験が、細胞表面上のクラスI/ペプチド複合体密度がT細胞プライミングのレベルと相関し得ることを示している。従って、エピトープが生成されそしてAPC表面上に提示されるレベルを測定することによって、インビトロで、ヒト細胞中のミニ遺伝子ワクチンの能力を間接的に評価する道が提供される。HLA クラスIトランスジェニックマウスの使用を補完するものとして、この手段は、ヒト細胞におけるプロセシングを研究するの有利である[Ishiokaら,Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]。
【0142】
プロセスされたペプチドを実験的に定量するいくつかの可能な手段が、利用可能である。細胞表面上のペプチドの量は、APC表面から溶出されたペプチドの量を測定することによって定量され得る[Sijtsら,Immunol,Vol.156(2):683−92(1996);Demotzら,Nature,Vol.342(6250):682−4(1989)]。あるいは、ペプチド−MHC複合体の数は、感染又はトランスフェクトされた標的細胞によって誘導される溶解又はリンホカイン放出の量を測定し、次いで、等レベルの溶解又はリンホカイン放出を得るのに必要なペプチドの濃度を決定することによって、概算され得る[Kageyamaら,J Immunol,Vol.154(2):567−76(1995)]。
【0143】
類似の手段がまた使用されて、ミニ遺伝子がトランスフェクトされた細胞株中のエピトープ提示が測定される。詳細には、HLAトランスジェニックマウスにおいて免疫原性であるミニ遺伝子構築物はまた、同じミニ遺伝子でトランスフェクトされたヒト細胞によって最適なエピトープにプロセスされ、そしてトランスジェニックマウスにおいて観察された応答の大きさは、トランスフェクトされたヒト標的細胞で観察された抗原性と相関する[Ishiokaら,J Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]。
【0144】
抗原性アッセイを用いて、エピトープの順番が異なるか又は隣接残基が異なる多数の関連ミニ遺伝子が、APCにトランスフェクトされ得、そして上記可変物のエピトープ提示に対する影響が、評価され得る。これは、相対的に大多数の異なる構築物が評価される必要がある試験に対して、好ましい系であり得る。これは多数のエピトープ特異的CTLを必要するが、高度に感受性のCTL株の作製を可能にし[Alexander−Millerら,Proc Natl Acad Sci U S A,Vol.93(9):4102−7(1996)]、そしてまたこれらを多数に増殖することを可能にする[Greenberg P.D.,Riddell S.R.,Science,Vol.285(5427):546−51(1999)]プロトコルが、この潜在的な問題と取り組むために開発された。
【0145】
このトランスフェクションのために選択された細胞が、インビボでAPC機能を実施する細胞の反映でない場合、誤解されやすい結果が得られ得ることも気に留めておくべきである。B細胞系列の細胞(「専門的」APCとして知られる)は、トランスフェクションのレシピエントとして代表的に使用される。このタイプのトランスフェクトされたB細胞の使用は、この分野では受容された手技である。さらに、本明細書中、以下により詳細に記載されるように、トランスフェクトされたヒトB細胞を用いるインビトロデータと、HLAトランスジェニックマウスを利用するインビボの結果との間の良好な関係がすでに注目されている。
【0146】
(HTL反応の測定)
好ましい実施形態において、クラスII拘束免疫応答を誘導するように、ワクチン構築物が至適化される。クラスIIエピトープを含むポリエピトープ性の構築物を評価する1つの方法は、HLA−DRトランスジェニックマウスを用いることである。いくつかの群を産出し、そしてHLA−DRトランスジェニックマウスを特徴付けた[Taneja V.,David C.S.Immunol. Rev,169巻:67〜79(1999)]。
【0147】
代替方法も存在する。これは、特定のヒトMHC分子と実験動物によって発現された特定のMHC分子との間の交差反応性に拠る。Bertoni及び同僚(共同研究者)[Bertoniら、J. Immunol.161巻(8):4447〜55(1998)]は、かなりの交差反応性が、特定のHLAクラスI上位タイプと特定のPATR分子(チンパンジーによって発現された)との間で実証され得ることに注目している。クラスII[Gelukら、J.Exp.Med.第177巻(4):979〜87(1993)]及びクラスI分子[Dzurisら、J.Immunol.,1999年7月]のレベルにおいて、ヒトとマカクとの間の交差反応性もまた注目されている。結局、ヒトHLA B7上位タイプによって認識されたモチーフは、マウスクラスI Ldによって認識されたモチーフと本質的に同じであることもまた注目され得る[Rammenseeら、Immunogenetics,第41巻(4):178〜228)1995)]。マウスにおいてHLA DR拘束エピトープを試験することに関連して、DR1及びIAbのモチーフ中に類似性が存在することが、Wallらによって示されている[Wallら、J.Immunol.,152:4526〜36(1994)]。本発明者らは、慣用的に、本発明者らのトランスジェニックマウスを採血して、この偶然の類似性を利用する。さらに、本発明者らはまた、本発明者らのペプチドのほとんどがIAbに結合することを示しており、その結果、本発明者らは、CTL及びHTL免疫原性の研究のためにこれらのマウスを用いる。
【0148】
(臨床サンプル由来の免疫応答測定又は定量)
ワクチン力価を評価するための重大な要素は、それが免疫応答を誘導する能力を評価することである。免疫原に対する、ならびに共通のリコール抗原に対する、CTL及びHTL応答の分析を共通に用いており、それらは当該分野で公知である。使用したアッセイは、クロム遊離アッセイ、リンホカイン分泌アッセイ及びリンパ球増殖アッセイを含んだ。
【0149】
ELISPOTアッセイ、細胞内サイトカイン染色、及びテトラマー(4量体)染色のような、より鋭敏な(感受性の)アッセイが、当該分野で利用可能になっている。これらの新しい方法は、一般のCTL及びHTLアッセイよりも10〜100倍鋭敏であると見積もられる[Murali−Krishnaら、Immunity、第8巻(2):177〜87(1998)]。なぜなら、従来の方法は、インビトロで増殖し得るT細胞のサブセットのみを測定し、そして実際、記憶T細胞区分の画分のみを代表する[Ogg G.S.,McMichael A.J.,Curr Opin Immunol.第10巻(4):393〜6(1998)]からである。HIVの場合特に、これらの技術を用いて、以前の技術では検出不能であった、患者からの抗原特異的CTL応答を測定した[Oggら,Science 第279巻(5359):2103〜6(1998);Grayら.,J Immunol,第162巻(3):1780〜8(1999);Oggら、J.Virol.第73巻(11):9153〜60(1999);Kalamsら、J.Virol.第73巻(8):6721〜8(1999);Larssonら.,AIDS、第13巻(7):767〜77(1999);Corneら,J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol,第20巻(5):442〜7(1999)]。
【0150】
比較的ほとんど例外なく、新鮮に単離された細胞の直接活性は、従来のアッセイ手段では実証することが困難であった[Ogg G.S.,McMichael A.J.,Curr Opin Immunol,第10巻(4):393〜6(1998)]。しかし、より新しい技術の感度の増大により、研究者は、感染したヒト又は実験動物から新鮮に単離した細胞からの応答を検出することが可能になった[Murali−Krishnaら、Immunity,第8巻(2):177〜87(1998);Ogg G.S.McMichael A.J.,Curr Opin Immunol.第10巻(4):393〜6(1998)]。インビトロ再刺激工程に依存しないこれらの敏感な(鋭敏な)アッセイの利用性により、自然の感染及び癌におけるCTL機能の研究がかなり容易になった。対照的に、実験ワクチンの有効性を判定するための終点として利用したアッセイは、通常、1つ以上のインビトロ再刺激工程と組み合わせて実施される[Ogg G.S.,McMichael A.J.,Curr Opin Immunol,第10巻(4):393〜6(1998)]。実際、ほとんど例外なく[Hankeら、Vaccine、第16巻(4):426〜35(1998)](Allenら、提出)、新鮮に単離したクラスI拘束CD8+T細胞を、CTL応答を惹起するように設計された実験ワクチンを用いた免疫に応答して実証することは困難であった。鋭敏なアッセイ(例えば、ELISPOT又はインサイチュIFN−ガンマ ELISA)の使用を、再刺激工程とを組み合わせて、最大の感度を達成した;MHC4量体がまたこの目的に用いられる。
【0151】
MHC4量体(テトラマー)は、Altman及び共同研究者によって1996年に最初に記載された。彼らは、可溶性HLA−A2クラスI分子を生成した。この分子は、蛍光マーカーでタグ化された4量体中に一緒に複合体化されたCTLエピトープを含むHIV特異的ペプチドで折り畳まれた。これらを用いて、このエピトープを認識するHIV感染個体由来のT細胞の集団を標識する[Ogg G.S.,McMichael A.J.,Curr Opin Immunol,第10巻(4):393〜6(1998)]。次いで、これらの細胞をフローサイトメトリーによって定量した。これにより、このエピトープに特異的なT細胞の頻度測定が得られる。この技術は、HIV研究において、ならびに他の感染疾患において非常に人気となった[Ogg G.S.,McMichael A.J.,Curr Opin Immunol,第10巻(4):393〜6(1998);Oggら、Science、第279巻(5359):2103〜6(1998);Grayら.,J.Immunol.第162巻(3):1708〜8(1999);Oggら、J Virol,第73巻(11):9153〜60(1999);Kalamsら、J.Virol,第73巻(8):6721〜8(1999)]。しかし、HLA多形性は、この4量体技術が規定されたHLA/ペプチド組み合わせに依存するという点で、この技術の一般的適用性を限定し得る。しかし、種々のペプチド(HIV由来ペプチドを含む)が、A2、A3及びB7上位タイプの異なるメンバーという状況では、ペプチド特異的CTL株によって認識されることが示されている[Threlkeldら、J.Immunol,第159巻(4):1648〜57(1997);Bertoniら、J.Clin Invest,第100巻(3):503〜13(1997)]。まとめると、これらの観察により、所定のMHC/ペプチド組み合わせに対するT細胞レセプター(TCR)が、同じ上位タイプ由来の異なるMHC分子によって示される同じペプチドに対して検出可能な親和性を有し得ることが実証される。
【0152】
防御ワクチンの有効性が、長期永続性記憶応答の誘導と主に関連する状況では、再刺激アッセイが最も適切であり、そしてワクチン誘導性免疫学的反応をモニターするための鋭敏な測定であり得る。逆に、治療ワクチンの場合、活性の主な免疫学的関連は、一次アッセイによって最も適切に測定された、エフェクターT細胞機能の誘導であり得る。従って、鋭敏なアッセイの使用により、ワクチンの有効性の免疫学的モニタリングのためのストラテジーを最も適切に試験することが可能になる。
【0153】
(トランスフェクトされたヒトAPCにおける多重エピトープミニ遺伝子の抗原性)
抗原性アッセイを実施して、ヒト細胞におけるエピトーププロセシング及び提示を評価する。エピトープベースのミニ遺伝子ワクチンを用いてヒト標的細胞を効率的にトランスフェクトするためのエピソームベクターを、このような分析を実施するために用いる。
【0154】
例えば、221A2Kb標的細胞を、HIV−1ミニ遺伝子ワクチンでトランスフェクトした。221 A2Kb標的細胞は、HLAトランスジェニックマウス中で発現されるA2Kb遺伝子を発現するが、内因性クラスIは発現しない[Shimizu Y,DeMars R.,J Immunol,第142巻(9):3320〜8(1989)]。HLAトランスジェニックマウス由来のCTL株に対して抗原を提示する能力について、これらのトランスフェクトされた細胞をアッセイし、そして種々のHIV由来CTLエピトープに対して特異的であった。異なるCTL株の抗原感受性における差異を補正するため、APCとしてトランスフェクトされていない細胞を用いる、ペプチド用量力価測定を、平行して行った。代表的なデータを図8に示す。HIV Pol 498特異的CTLの場合、トランスフェクトした標的細胞は、378pg/mlのIFN−γの放出を誘導した。ペプチド用量反応の検討によって、48ng/mlの外因的に添加されたペプチドは、同様のレベルのIFN−γ放出を達成するために必要であったことが示された。これらの結果は、外因性に添加されたペプチドの48ng/mlに等量である、比較的大量のPol498エピトープが、トランスフェクトされた細胞によって示されることを実証する。
【0155】
【表6】

【0156】
比較すると、Gag 271エピトープに特異的なCTLを利用して、25pg/ml未満のγIFNを検出した。トランスフェクトしていない標的細胞を用いたコントロールペプチド力価測定は、このネガティブな結果が、利用される特定のCTL株の感受性が乏しいことに起因し得ないことを示した。なぜなら0.2pg/ml程度の少ない「ペプチド等量(peptide equivalents)」(PE)が検出され得るからである。従って、Gag271エピトープは、効率的にプロセシングされず、そしてHIV−1トランスフェクトされた標的細胞において提示されないようである。プロセシングの効率の適切な定量として「ペプチド等量(peptide equivalents)」図を利用して、Pol 498エピトープに比べて、少なくとも200倍少ないGag271が、トランスフェクトされた標的によって提示されると見積もられ得る。
【0157】
HIV−1に含まれる4つの異なるエピトープについての種々の独立した決定の結果を表4にまとめる。HIV−1トランスフェクトされた細胞から生成された各エピトープの量は、Pol 498についての30.5 PEからGag 271についての0.2 PE未満の低さまでにわたった。2つのエピトープEnv 134及びNef 221は、それぞれ、6.1 PE及び2.1 PEの中間値を伴った。
【0158】
これらの結果は、次に、HIV−1構築物での免疫後の各エピトープについて観察されたインビボ免疫原性値と相関した。Pol 498エピトープはまた、予測どおり、最も免疫原性であった。Env 134エピトープ及びNef 221エピトープ(これについての中間値免疫原性が、インビボで観察された)はまた、トランスフェクトされたヒト細胞による中間の効率で、インビトロでプロセシングされた。結局、Gag 271(これについてはインビトロプロセシングは観察され得ない)はまた、頻度及び大きさの両方において、至適以下のインビボ免疫原性を伴った。
【0159】
これらのデータは、いくつかの重要な意味を有する。第一に、それは、所定のミニ遺伝子内に含まれる異なるエピトープが、プロセシングされそして異なる効率で提示され得ることを示唆する。第二に、それは、免疫原性が、生成されたプロセシングされたエピトープの量と比例していることを示唆する。最後に、これらの結果により、ヒト用途の多重エピトープワクチンの至適化の目的のためのトランスジェニックマウスの使用の重要な確証(バリデーション)が提供される。
【0160】
(III.ポリエピトープ構築物の調製)
ポリペプチド構築物中に封入するためのエピトープは、代表的には、例えば、PCT出願PCT/US00/27766、又はPCT/US00/19774に記載のように、HLAクラスI又はクラスII結合モチーフを保有する。
【0161】
ポリエピトープ構築物中に存在する複数のHLAクラスII又はクラスIエピトープは、同じ抗原、又は異なる抗原に由来し得る。例えば、ポリエピトープ性構築物は、1つ以上のHLAエピトープを含み得る。このHLAエピトープは、同じウイルスの2つの異なる抗原、又は異なるウイルスの2つの異なる抗原に由来し得る。ポリエピトープ性構築物への封入のためのエピトープは、例えば、HLA対立遺伝子特異的モチーフ又はスーパーモチーフを含むエピトープを選択するためのコンピューターを用いることにより、当業者によって選択され得る。本発明のポリエピトープ性構築物はまた、1つ以上の広範に交差反応的な結合をするか、又は普遍的な、HLAクラスIIエピトープ、例えば、PADRETM(Epimmune,San Diego,CA),(例えば、米国特許第5,736,142号に記載されている)、又はPADREファミリー分子をコードし得る。
【0162】
普遍的なHLAクラスIIエピトープは、所定の抗原に応答して活性化される細胞の数を増加するために、他のHLAクラスI及びクラスIIエピトープと有利に組み合わせられ得、そしてHLA反応性対立遺伝子の広範な集団を提供する。従って、本発明のポリエピトープ性構築物は、抗原に特異的なHLAエピトープ、普遍的HLAクラスIIエピトープ、又は特定のHLAエピトープ及び少なくとも1つの普遍的HLAクラスIIエピトープの組み合わせ、を含み得る。
【0163】
HLAクラスIエピトープは、約8〜約13アミノ酸長、詳細には、8、9、10、又は11アミノ酸長である。HLAクラスIIエピトープは、一般に、約6〜約25アミノ酸長、詳細には約13〜21アミノ酸長である。HLAクラスI又はIIエピトープは、目的の任意の所望の抗原に由来し得る。目的の抗原は、ウイルス抗原、表面レセプター、腫瘍抗原、癌遺伝子、酵素、又は任意の病原体、細胞もしくは分子(免疫応答が所望される)であり得る。エピトープは、1つ以上のHLA対立遺伝子に結合する能力に基づいて選択され得る。天然に存在する配列のアナログであるエピトープはまた、本明細書において記載されるポリエピトープ性構築物に含まれ得る。このようなアナログペプチドは、例えば、PCT出願PCT/US97/03778、PCT/US00/19774、及び同時係属のU.S.S.N.09/260,714(3/1/99出願)に記載されている。
【0164】
ポリエピトープ構築物は、当該分野で周知の方法論を使用して作製され得る。例えば、そのポリエピトープ構築物を含むポリペプチドは、合成されそして連結され得る。しかし、代表的には、ポリエピトープ構築物は、組換えDNA技術を使用して、ミニ遺伝子として作製され得る。
【0165】
(IV.発現ベクター及びミニ遺伝子の構築)
本発明のポリエピトープ構築物は、代表的には、そのポリエピトープ構築物をコードするミニ遺伝子を含む発現ベクターとして提供される。このような発現ベクターの構築は、例えば、PCT/US99/10646に記載されている。この発現ベクターは、生物の適切な細胞中でそのミニ遺伝子をコードする転写単位を発現し得る、少なくとも1つのプロモーターエレメントを、その抗原が発現されかつ適切なHLA分子に標的化されるように含む。例えば、ヒトへの投与のために、ヒト細胞において機能するプロモーターエレメントが、その発現ベクター中に組み込まれる。
【0166】
本発明は、組換え遺伝学の分野における慣用技術に依存する。本発明における使用の一般的方法を開示する基本的教科書としては、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989);Kriegler、Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1994);Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(Gait編、1984);Kuijpers、Nucleic Acids Research 18(17):5197(1994);Dueholm、J.Org.Chem.59;5767〜5773(1994);Methods in Molecular Biology、第20巻(Agrawal編);ならびにTijssen、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes(例えば、第1部第2章「Overviw of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」(1993))が挙げられる。
【0167】
エピトープをコードする核酸は、標準技術に従って、ミニ遺伝子中にアセンブルされる。一般に、ミニ遺伝子エピトープをコードする核酸配列は、オリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅技術を使用して単離されるか、又は化学合成される。組換えクローニング技術もまた、適切な場合に使用され得る。所望のエピトープを増幅する(そのミニ遺伝子をアセンブルするためにPCRを使用する場合)か、又はその所望のエピトープをコードする(そのミニ遺伝子をアセンブルするために合成オリゴヌクレオチドを使用する場合)かのいずれかである、オリゴヌクレオチド配列が選択される。
【0168】
プライマーを使用する増幅技術が、代表的には、DNAもしくはRNAから選り抜きのエピトープをコードする配列を増幅及び単離するために使用される(米国特許4,683,195号及び同第4,68,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照のこと)。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びリガーゼ連鎖反応(LCR)のような方法が、mRNAか、cDNAか、ゲノムライブラリーか、又はcDNAライブラリーから、エピトープ核酸配列を直接増幅するために使用され得る。制限エンドヌクレアーゼ部位が、そのプライマーに組み込まれ得る。そのPCR反応により増幅されたミニ遺伝子が、アガロースゲルから精製され得、そして適切なベクター中にクローン化され得る。
【0169】
合成オリゴヌクレオチドもまた、ミニ遺伝子を構築するために使用され得る。この方法は、その遺伝子のセンス鎖及び非センス鎖の両方を示す、一連の重複するオリゴヌクレオチドを使用して実施される。次いで、これらのDNAフラグメントがアニールされ、連結され、そしてクローン化される。市販されていないオリゴヌクレオチドは、Van Devanterら、Nucleic Acids Res.12:6159〜6168(1984)に記載されるような自動合成機を使用して、Beaucage及びCaruthers、Tetrahedron Letts.22:1859〜1862(1981)により最初に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法に従って、化学合成され得る。オリゴヌクレオチドの精製は、ネイティブアクリルアミドゲル電気泳動か、又はPearson及びReanier、J.Chrom.255:137〜149(1983)に記載されるようなアニオン交換HPLCのいずれかによってである。
【0170】
そのミニ遺伝子のエピトープは、代表的には、直接転写のための強力なプロモーター及び他の調節配列(例えば、エンハンサー及びポリアデニル化部位)を含む発現ベクター中にサブクローニングされる。適切なプロモーターは、当該分野で周知であり、そして例えば、Sambrookら及びAusubelらに、記載されている。哺乳動物細胞のための真核生物発現系は、当該分野で周知であり、そして市販されている。そのようなプロモーターエレメントとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーター及びSV40プロモーターが、挙げられる。
【0171】
この発現ベクターは、代表的には、宿主細胞中でのそのミニ遺伝子の発現に必要なさらなるエレメントすべてを含む、転写単位及び発現カセットを含む。従って、代表的発現カセットは、そのミニ遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターと、その転写物の効率的ポリアデニル化に必要なシグナルとを含む。そのカセットのさらなるエレメントとしては、エンハンサー、及び機能的スプライス部位及びアクセプター部位を有するイントロンが、挙げられ得る。
【0172】
プロモーター配列に加え、その発現カセットはまた、効率的終結を提供するように、その構造遺伝子の下流に転写終結領域を含む。その終結領域は、そのプロモーター配列と同じ遺伝子から得られてもよいし、又は異なる遺伝子から得られてもよい。
【0173】
その遺伝情報を細胞中に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核生物細胞中での発現のために使用される従来のベクターのいずれもが、使用され得る。真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターが、代表的には、真核生物発現ベクター(例えば、SV40ベクター、CMVベクター、パピローマウイルスベクター及びエプスタイン−バーウイルス由来のベクター)中で使用される。
【0174】
本発明のポリエピトープ構築物は、プラスミドベクター及びウイルス性ベクターもしくは細菌性ベクターを含む、種々のベクターから発現され得る。ウイルス発現ベクターの例としては、弱毒化ウイルス宿主(例えば、ワクシニアウイルスもしくは鶏痘ウイルス)が挙げられる。このアプローチの例として、ワクシニアウイルスが、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとして使用される。腫瘍を保有する宿主中への導入の際に、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現し、それにより、宿主のCTL応答及び/又はHTL応答を惹起する。免疫プロトコルにおいて有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。
【0175】
治療投与もしくは免疫のために有用な広範な種類の他のベクター(例えば、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、非ウイルスベクター(例えば、BCG(カルメット−ゲラン杆菌)ベクター、Salmonella typhiベクター、無毒化炭疽毒素ベクターなど)が、当業者に明らかである。
【0176】
このポリエピトープ構築物の免疫原性及び抗原性は、本明細書中に記載されるように評価される。
【0177】
(ターゲッティング配列)
本発明の発現ベクターは、MHCターゲッティング配列に作動可能に連結された、1つ以上のMHCエピトープをコードする。MHCターゲッティング配列の使用は、MHC分子アセンブリの部位へそのペプチドエピトープを指向させそして細胞表面に輸送することによって、抗原単独の送達と比較して、抗原に対する免疫応答を増強し、それにより、T細胞への結合及びT細胞の活性化に利用可能なMHC分子−ペプチドエピトープ複合体の数の増加を提供する。
【0178】
MHCクラスIターゲッティング配列(例えば、細胞質ゾル経路もしくは小胞体にMHCクラスIエピトープペプチドを標的化する配列)が、本発明において使用され得る(例えば、Rammenseeら、Immunogenetics 41:178〜228(1995)を参照のこと)。例えば、細胞質ゾル経路は、その細胞の内側で発現される内因性抗原をプロセシングする。特定のいかなる理論によっても拘束されることは望まないが、細胞質ゾルタンパク質は、プロテアソームのエンドペプチダーゼ活性により少なくとも部分的には分解され、その後TAP分子(プロセシングに関連するトランスポーター)により小胞体へと輸送されると考えられている。小胞体において、この抗原は、MHCクラスI分子に結合する。小胞体シグナル配列は、この細胞質ゾルプロセシング経路を迂回し、そして内因性抗原を直接小胞体へと標的化し、小胞体において、ペプチドフラグメントへのタンパク質分解が生じる。このようなMHCクラスIターゲッティング配列は、当該分野で周知であり、そして例えば、Igκからのシグナル配列、組織プラスミノゲンアクチベーターからのシグナル配列、又はインスリンからのシグナル配列のような、シグナル配列が挙げられる。好ましいシグナルペプチドは、ヒトIgκ鎖配列である。小胞体シグナル配列はまた、MHCクラスI分子アセンブリの部位である、小胞体へとMHCクラスIIエピトープを標的化するために使用され得る。
【0179】
MHCクラスIIターゲッティング配列(例えば、ペプチドをエンドサイトーシス経路へと標的化する配列)もまた、本発明において使用され得る。これらのターゲッティング配列は、代表的には、細胞外抗原がエンドサイトーシス経路に入るように指向し、これにより、その抗原がリソソーム区画へと転移され、そのリソソーム区画において、その抗原は、MHCクラスII分子への結合のために抗原ペプチドへとタンパク質分解される。外因性抗原の通常のプロセシングと同様に、MHCクラスIIエピトープをエンドサイトーシス経路のエンドソームへと指向し、かつ/又は続いてリソソームへと指向する配列が、MHCクラスIIターゲッティング配列であり、リソソームで、このMHCクラスIIエピトープは、MHCクラスII分子に結合し得る。例えば、本発明において有用なMHCクラスIIターゲッティング配列のグループは、リソソームターゲッティング配列であり、これは、ポリペプチドをリソソームに局在化させる。MHCクラスII分子は代表的には、リソソームにおけるエンドサイトーシスされた抗原のタンパク質分解性プロセシングに由来する抗原ペプチドに結合するので、リソソームターゲッティング配列は、MHCクラスIIターゲッティング配列として機能し得る。リソソームターゲッティング配列は、当該分野で周知であり、そしてAugustら(1997年5月27日発行の米国特許第5,633,234号(本明細書中に参考として援用される))により記載されるような、リソソームタンパク質LAMP−1及びLAMP−2中に見出される配列が挙げられる。
【0180】
リソソームターゲッティング配列を含む他のリソソームタンパク質としては、HLA−DMが挙げられる。HLA−DMは、MHCクラスII分子への抗原ペプチドの結合を促進する際に機能する、エンドソーム/リソソームタンパク質である。このHLA−DMはリソソーム中に位置するので、HLA−DMは、MHCクラスII分子ターゲッティング配列として機能し得るリソソームターゲッティング配列を有する(Copierら、J.Immunol.157:1017〜1027(1996)(本明細書中に参考として援用される))。
【0181】
常在性リソソームタンパク質HLA−DOもまた、リソソームターゲッティング配列として機能し得る。上記の常在性リソソームタンパク質LAMP−1及びHLA−DM(これらは、タンパク質をリソソームへと標的化する特定のTyr含有モチーフをコードする)とは対照的に、HLA−DOは、HLA−DMとの会合によってリソソームへと標的化される(Liljedahlら、EMBO J.15:4817〜4824(1996)(これは、本明細書中で参考として援用される))。従って、HLA−DMとの会合を生じるHLA−DOの配列は、結果的には、リソソームへのHLA−DOのトランスロケーションは、MHCクラスIIターゲッティング配列として使用され得る。同様に、HLA−DOのマウスホモログであるH2−DOは、MHCクラスIIターゲッティング配列を駆動するために使用され得る。MHCクラスIIエピトープは、HLA−DOもしくはH2−DOに融合され得、そしてリソソームへと標的化され得る。
【0182】
別の例において、B細胞レセプターサブユニットであるIg−α及びIg−βの細胞質ドメインは、抗原のインターナリゼーションを媒介し、そして抗原提示の効率を増大する(Bonnerotら、Immunity 3:335〜347(1995)(本明細書中で参考として援用される))。従って、このIg−αタンパク質及びIg−βタンパク質の細胞質ドメインは、MHCクラスIIターゲッティング配列として機能し得、このMHCクラスIIターゲッティング配列は、MHCクラスIIエピトープを、MHCクラスII分子へのプロセシング及び結合のためのエンドサイトーシス経路へと標的化する。
【0183】
MHCクラスIIエピトープをエンドサイトーシス経路へと指向させるMHCクラスIIターゲッティング配列の別の例は、ポリペプチドが分泌されるように指向する配列であり、このポリペプチドは、エンドソーム経路に入り得る。ポリペプチドが分泌されるように指向するこれらのMHCクラスIIターゲッティング配列は、内因性細胞外抗原がプロセシングされてMHCクラスII分子に結合するペプチドになる、通常の経路を模倣する。ポリペプチドが小胞体を通り最終的には分泌されるのを指向するように機能する任意のシグナル配列が、その分泌されたポリペプチドがエンドソーム経路/リソソーム経路に入り得、かつMHCクラスII分子に結合し得る分子へと切断され得る限り、MHCクラスIIターゲッティング配列として機能し得る。
【0184】
別の例において、Iiタンパク質は、小胞体中のMHCクラスII分子に結合し、この小胞体で、このタンパク質は、小胞体中に存在するペプチドがこのMHCクラスII分子へ結合するのを妨げるように機能する。従って、Iiタンパク質へのMHCクラスIIエピトープの融合は、そのMHCクラスIIエピトープを小胞体及びMHCクラスII分子へと標的化する。例えば、Iiタンパク質のCLIP配列が除去され得、そしてMHCクラスIIエピトープ配列で置換され得、そのMHCクラスIIエピトープが小胞体を指向するようにされ得、小胞体で、そのエピトープはMHCクラスIi分子に結合する。
【0185】
いくつかの場合において、抗原自体は、MHCクラスII又はI標的化配列として機能し得、そして免疫応答を刺激するために普遍的なMHCクラスIIエピトープに融合され得る。細胞質ウイルス抗原は一般に、MHCクラスI分子(長期生存細胞質タンパク質(例えば、MHCクラスII分子処理経路に入り得るインフルエンザマトリックスタンパク質))との複合体として処置及び提示される(Gueguen & Long,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14692−14697(1996)を参照のこと(これは、本明細書中で参考として援用される))。従って、長期生存細胞質タンパク質は、MHCクラスII標的化配列として機能し得る。例えば、普遍的なMHCクラスIIエピトープに融合されたインフルエンザマトリックスタンパク質をコードする発現ベクターは、インフルエンザに対する免疫応答を刺激するために、インフルエンザ抗原及び普遍的MHCクラスIIエピトープをMHCクラスII経路に標的化するために、有利に使用され得る。
【0186】
MHCクラスII標的化配列として機能する抗原の他の例としては、粒子を自発的に形成するポリペプチドが挙げられる。このポリペプチドは、それらを生成する細胞から分泌され、そして粒子を自発的に形成し、この粒子は、エンドサイトーシス(例えば、レセプター媒介エンドサイトシス)によって抗原提示細胞に取り込まれるか又は食菌作用によって飲み込まれる。この粒子は、エンドソーム/リソソーム経路に入った後、抗原ペプチドにタンパク質分解的に切断され得る。
【0187】
粒子を自発的に形成する1つのこのようなポリペプチドは、HBV表面抗原(HBV−S)である(Diminskyら、Vaccine 15:637−647(1997);Le Borgneら,Virology 240:304−315(1998)(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される))。粒子を自発的に形成する別のポリペプチドは、HBVコア抗原である(Kuhroberら、International Immunol.9:1203−1212(1997)(これは、本明細書中で参考として援用される))。粒子を自発的に形成するなお別のポリペプチドは、酵母Tyタンパク質である(Weberら、Vaccine 13:831−834(1995)(これは、本明細書中で参考として援用される))。例えば、普遍的なMHCクラスIIエピトープに融合されたHBV−S抗原を含む発現ベクターは、HBVに対する免疫応答を刺激するために、HBV−S抗原及び普遍的MHCクラスIIエピトープをMHCクラスII経路に標的化するために、有利に使用され得る。
【0188】
(インビボでの投与)
本発明はまた、本発明の発現ベクターを個体に投与することによって、免疫応答を刺激するための方法を提供する。免疫応答を刺激するために、本発明の発現ベクターの投与は、有利である。なぜなら、本発明の発現ベクターは、MHCエピトープをMHC分子に標的化し、従って、発現ベクターによってコードされる抗原によって活性化されるCTL及びHTLの数を増加させるからである。
【0189】
最初に、本発明の発現ベクターは、所望の免疫応答を刺激する際に最適な活性を有する発現ベクターを決定するために、マウスにおいて、スクリーニングされる。従って、初期の研究は、可能な場合、MHC標的化配列のマウス遺伝子を用いて実施される。本発明の発現ベクターの活性を決定する方法は、当該分野で周知であり、そして例えば、以下の実施例II及びIIIに記載されるように、T細胞活性化を測定するための3H−チミジンの取り込み、及びCTL活性を測定するための51Crの放出が挙げられる。実施例IVに記載される実験に類似の実験が、免疫応答得を刺激する際に、活性を有する発現ベクターを決定するために実施される。活性を有する発現ベクターは、さらに、ヒトにおいて試験される。コードされたマウス配列に対する潜在的な有害な免疫学的応答を回避するために、活性を有する発現ベクターが、MHCクラスII標的化配列がヒト遺伝子から誘導されるように改変される。例えば、種々のMHCクラスII標的化配列を含む遺伝子のヒトホモログの類似領域の置換は、本発明の発現ベクターに置換される。ヒトMHCクラスII標的化配列(例えば、以下の実施例Iに記載されるなもの)が、ヒトにおける免疫応答を刺激する際に活性について試験される。
【0190】
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア及び本発明の発現ベクターを含む薬学的組成物に関する。薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野で公知であり、そして水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルジョンが挙げられ、生理学的に緩衝化された生理食塩水、アルコール/水溶液あるいは他の溶媒又はビヒクル(例えば、グリコール、グリセロール、オイル(例えば、オリーブ油)又は注射可能な有機エステル)を含む。
【0191】
薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、発現ベクターを安定化させるか、又は発現ベクターの吸収を増加させるように機能する、生理学的に受容可能な化合物を含み得る。このような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース又はデキストラン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート化剤、低分子量ポリペプチド、抗菌剤、不活性気体あるいは他の安定化剤又は賦形剤が挙げられる。発現ベクターが、さらに、他の成分(例えば、ペプチド、ポリペプチド及び炭水化物)と複合体化され得る。発現ベクターはまた、例えば、ワクチン銃を使用して個体に投与され得る粒子又はビーズに複合体化され得る。当業者は、薬学的に受容可能なキャリア(生理学的に受容可能な化合物を含む)の選択が、例えば、発現ベクターの投与の経路に依存することを知る。
【0192】
本発明はさらに、免疫応答を刺激するための本発明の発現ベクターを含む薬学的組成物を投与する方法に関する。これらの発現ベクターは、Donnellyら(Ann.Rev.Immunol.15:617−648(1997));Felgnerら(米国特許第5,580,859号(1996年12月3日に発行));Felgnerら(米国特許第5,703,055号(1997年12月30日に発行));及びCarsonら(米国特許第5,679,647号(1997年10月21日に発行))(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、当該分野で周知の方法によって投与される。1つの実施形態において、ミニ遺伝子が、裸の核酸として投与される。
【0193】
本発明の発現ベクターを含む薬学的組成物は、種々の経路(例えば、経口、膣内、直腸、又は非経口的に(例えば、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、槽内))によってか、又は例えば皮膚パッチ又は経皮的イオン導入の各々を使用して、皮膚を介する受動的な吸収又は容易化された吸収によって、被験体における免疫応答を刺激するために投与され得る。さらに、この組成物は、注射、挿管によって、又は局所的に投与され得、これらの後者は、例えば、軟膏又は粉末の直接的な適用によって受動的であり得るか、あるいは鼻スプレー又は吸入剤を使用して積極的であり得る。発現ベクターはまた、局所スプレーとして投与され得、この場合において、この組成物の1つの成分は、適切な噴霧剤である。薬学的組成物はまた、所望ならば、リポソーム、マイクロスフィア又は他のポリマーマトリックスに組込まれ得る(Felgnerら、米国特許第5,703,055号;Gregoriadis、Liposome Technology、第I巻〜第III巻(第2版、1993)、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)。例えば、リン脂質又は他の脂質からなるリポソームは、比較的に、作製及び投与が簡単である、非毒性で、生理学的に受容可能かつ代謝安定的なキャリアである。
【0194】
本発明の発現ベクターは、動物身体の組織の間隙空間に送達され得る(Felgnerら、米国特許第5,580,859号及び同第5,703,055号)。本発明の発現ベクターの筋肉への投与は、特に有効な投与方法であり、経皮注射及び皮下注射ならびに経皮投与を含む。例えば、イオン導入による、経皮投与は、本発明の発現ベクターを筋肉に送達するために有効な方法である。本発明の発現ベクターの表皮投与もまた、使用され得る。表皮投与は、刺激剤に対する免疫応答を刺激するために、表皮の最も外側の層を機械的に又は化学的に刺激する工程を包含する(Carsonら、米国特許第5,679,647号)。
【0195】
免疫応答を刺激するための、本発明の発現ベクターを投与する他の有効な方法は、粘膜投与を含む(Carsonら、米国特許第5,679,647号)。粘膜投与について、最も有効な投与方法は、発現ベクター及び薬学的組成物を含む適切なエアロゾルの鼻腔内の投与を含む。座剤及び局所調製物はまた、生殖部位、膣部位及び眼部位の粘膜組織への発現ベクターの送達のために有効である。さらに、発現べクターは、粒子に複合体化され得、そしてワクチン銃によって投与され得る。
【0196】
投与される投薬量は、投与の方法に依存し、そして一般に、約0.1μg〜約200μgの間である。例えば、この投薬量は、約0.05μg/kg〜約50mg/kg、特に約0.005〜5mg/kgであり得る。有効用量は、発現ベクターの投与の後に、免疫応答を測定することによって決定され得る。例えば、発現ベクターによってコードされるMHCクラスIIエピトーピ又はMHCクラスIエピトープに特異的な抗体の産生が当該分野で周知の方法(ELISA又は他の免疫学的アッセイを含む)によって測定され得る。さらに、Tヘルパー細胞の活性化又はCTL応答が、当該分野で周知の方法(T細胞活性化を測定するための3H−チミジンの取り込み、及びCTL活性を測定するための51Crの放出を含む)によって測定され得る(以下の実施例II及び実施例IIIを参照のこと)。
【0197】
本発明の発現ベクターを含む薬学的組成物は、哺乳動物、特にヒトに、予後又は治療目的のために投与され得る。本発明の発現ベクターを使用して処置又は予防され得る疾患の例としては、HBV、HCV、HIV及びCMVでの感染、ならびに前立腺癌、腎臓癌、頭部癌、リンパ腫、尖圭コンジローム及び後天性免疫不全症候群(AIDS)が挙げられる。
【0198】
治療適用において、本発明の発現ベクターは、癌、自己免疫疾患を既に被る個体、又はウイルスに感染した個体に投与される。疾患の潜伏期又は急性期にある疾患は、適切ならば、他の処置とは別に又は他の処置と組合せて、本発明の発現ベクターで処置され得、全ての普遍的なMHCクラスIIエピトープを発現するものを含む。
【0199】
治療的適用及び予後適用において、本発明の発現ベクターを含む薬学的組成物は、抗原に対する有効な免疫応答を惹起するに十分な量で、及び疾患の徴侯又は症状を緩和するに十分な量で患者に投与される。投与するための、疾患の徴侯又は症状を緩和するに十分な発現ベクターの量は、治療有効用量といわれる。治療有効用量を達成するために十分な発現ベクターの量は、本発明の発現べクターを含む薬学的組成物、投薬の様式、処置される疾患の状態及び重篤度、患者の体重及び一般的な健康状態、ならびに処方医師の判断に依存する。
【実施例】
【0200】
(実施例)
以下の実施例は、この特許請求された発明を例示するために提供され、この特許請求された発明を制限するために提供されていない。本明細書中に記載される実施例及び実施形態は、例示目的のみのためであり、そしてその観点における種々の改変又は変化が、当業者に示唆され、そして添付の特許請求の範囲のこの適用及び範囲の意図及び範囲内に含まれることが理解される。
【0201】
実施例1〜9は、多重エピトープ構築物の免疫原性及び抗原性を評価するためのアッセイの例を提供する。
【0202】
(実施例1:)
(抗原性アッセイ)
DNA、ペプチド/IFA又はリポペプチドで初回刺激したトランスジェニックマウスの脾細胞から高親和性ペプチド特異的CTL株を作製した。手短に言うと、トランスジェニックマウス由来の脾細胞を、0.1μg/mlペプチド及びLPS芽細胞で刺激した。初回刺激の10日後、及びその後毎週、細胞を、0.1μg/mlペプチドで1時間、LPS芽細胞をパルスして、再刺激した。CTL株を、上記のようにインサイチュIFN−γELISAでの再刺激後に5日アッセイした。あるいは、例えば、標的化された病原菌に感染した患者、又は標的化された疾患(例えば、癌)を有する患者に由来するCTL株が使用され得る。トランスジェニックマウス又は患者のいずれかからも入手可能ではない特定のCTL株は、当該分野の専門技術に基づいて正常なドナーのPBMCから作製される。
【0203】
これらのアッセイにおいて使用され得る標的細胞はトランスジェニックマウスに由来するCTL株について、A2.1/Kb、A11/Kb、A1/Kb、又はB7/KbでトランスフェクトされたJurkat細胞又は.221細胞である。すべてのこれらの細胞株が、現在我々に入手可能である(Epimmune Inc.,San Diego,CA)。ヒトCTL株の場合では、適切なヒトHLA対立遺伝子でトランスフェクトされた.221細胞が利用される。現在.221細胞は、A2及びA1でトランスフェクトされ、そして、A11、A24及びB7トランスフェクト体を作製する。代替的な実施形態において、標的細胞に関して意外な問題生じる場合、LPS芽細胞及びEBV形質転換株は、それぞれ、マウス及びヒトCTL株について利用される。
【0204】
抗原性についてアッセイするために、連続的に希釈したCTLを105標的細胞及び1〜10-6μg/mlで変化する多重ペプチド濃度でインキュベートした。さらに、CTLを、目的のミニ遺伝子を含むエピソームのベクターでトランスフェクトした標的細胞とインキュベートした。エピソーマルのベクターは、当該分野で公知である。
【0205】
ミニ遺伝子でトランスフェクトされたAPC内の天然のプロセシングによって産生されたペプチドの相対量は、以下のように定量される。トランスフェクトされた標的細胞の認識の際にCTL株によって産生されたIFN−γの量が記録される。同一量のIFN−γを生成するのに必要な合成ペプチドの量は、同一のCTL株が、ペプチドの公知の濃度と平行してインキュベートされる場合に産生される標準曲線から内挿される。
【0206】
(実施例2:)
(マウス、免疫化及び細胞培養)
この研究において使用されたHLA−A2.1Kbの誘導[Vitielloら、J Exp Med,第173巻(4):1007−15(1991)]及びA11/Kb[Alexanderら、J Immunol,第159巻(10):4753−61(1997)]トランスジェニックマウスが記載されている。HLA B7 Kb及びA1/Kbトランスジェニックマウスは、マウスで利用可能である(Epimmune Inc.,San Diego,CA)。HLA DE2、DE3及びDE4トランスジェニックマウスは、C.David(Mayo Clinic)から獲得される。非トランスジェニックH2bマウスは、Charles River Laboratories又は他の販売元から購入される。免疫化は、以前に記載されたように行なわれる[Ishiokaら、J Immunol,Vol.162(7):3915−25(1999)]。全ての細胞を10% FBS、4mM L−グルタミン、50μM 2−ME、0.5mMピルビン酸ナトリウム、100μg/mlストレプトマイシン及び100U/mlペニシリンで補充したHEPES(Gibco Life Technologies)を有するRPMI 1640培地からなる培養培地中で増殖した。
【0207】
HLAトランスジェニックマウス及び抗原性アッセイを試験及びCTL応答の最適化の目的のために使用した。HLA−DRとIAbとの間の天然の交差反応性はまた、HTL応答を試験するために使用され得る。この評価は、多エピトープ性構築物の抗原性及び免疫原性の評価を提供する。
【0208】
(実施例3:)
(増殖アッセイ)
HTLエピトープの免疫応答を誘導する能力を評価するために、増殖アッセイのようなアッセイをしばしば行なう。例えば、マウスDC4 Tリンパ球は、DynaBeads Mouse CD4(L3T4)(Dynal)を使用して脾臓単一細胞懸濁液から免疫磁気的に単離した。手短に言うと、2×107脾細胞を4℃で40分間5.6×107磁気ビーズとインキュベートし、次いで、3回洗浄した。磁気ビーズをDetachaBead Mouse CD4(Dynal)を使用して脱着した。単離したCD4 Tリンパ球(2×105細胞/ウェル)を平底の96マイクロタイタープレートで3連で5×105の放射した(3500rad)同系の脾細胞と培養した。最終濃度20、1、0.05及び0μg/mlの濃度まで精製されたペプチドをウェルに添加し、そして、細胞を全4日間培養した。収穫の約14時間前、1μCiの3H−チミジン(ICN)を各ウェルに添加した。ウェルをFiltermate Harvester(Packard)を使用してUnifilter GF/Bプレート(Packard)上に収穫した。3H−チミジン取り込みをTopCountTMマイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard)を使用して、液体シンチレーション計算によって測定した。
【0209】
(実施例4:)
51クロム放出アッセイ)
CTL活性を測定するためのこのアッセイは、当該分野で公知である。このアッセイは、51Cr標識標的集団から放出された51Crの割合を測定することによって、T細胞集団の溶解活性を定量する[Brunnerら、Immunology,Vol.14(2):181−96(1968)]。クロム放出アッセイに由来するデータは、通常CTL頻度/106細胞としてか[制限希釈分析、LDA;[Current Protocols in Immunology,第1巻、John Wiley&Sons,Inc.,USA 1991 第3章;Manual of Clinical Laboratory Immunology,第5版、ASM Press、1997 R節]、又はより厄介でない大量のCTL活性の定量的な評価[溶解単位;LUアッセイ]によってのいずれかで通常発現される。LUアッセイにおいて、51Crアッセイにおいて産生された標準E:T比対パーセント細胞障害性データ曲線は、106エフェクター細胞あたりの溶解単位に変換され、1LUは、標的細胞の30%溶解を達成するのに必要な溶解活性として定義される[Wunderlick,J.,Shearer,G.,及びLivingstom,A.、J.Coligan,A.Kruisbeek,D.Margulies,E.Shevach,及びW.Strober編、Current Protocols in Immunology,第1巻、「Assays for T cell function;induction and mesurement of cytotoxic T lymphocyte activity」John Wiley&Sons,Inc.,USA,p.3.11.18]。LU計算は、応答の定量を可能とし、従って、異なった実験値を容易に比較する。
【0210】
(実施例5:)
(インサイチュIFN−γELISA)
インサイチュIFN−γELISAアッセイを開発し、そして、新たに単離された脾細胞及びペプチド再刺激された脾細胞の両方について最適化した(例えば、McKinney,D.M.,Skvoretx,R.,Mingsheng,Q.,Ishioka,G.,Sette,A.Characterization Of An In Situ IFN−γ ELISA Assay Which is Able to Detect Specific Peptide Responses From Freshly Isolated Splenocytes Induced by DNA Minigene immunization、出版中、を参照のこと)。このアッセイは、ELISPOTアッセイに基づくが、可溶性の色原体(chromagen)を利用し、ハイスループット分析に容易に適合性となる。初回刺激アッセイ及び再刺激アッセイの両方において、この技術は、これらの他のアッセイにおいて検出可能でないインサイチュELISAにおいて反応が観察されるという点で、伝統的な上清ELISA又は51Cr放出アッセイのいずれかよりもより感受性である。細胞あたりの基礎に基づいて、インサイチュELISAの感受性は、約1IFN−γ分泌細胞/104プレート細胞である。
【0211】
96ウェルELISAプレートを、4℃で一晩、抗IFN−γ(ラット抗マウスIFN−α mAb、クローンR4−6A2,Pharmingen)でコートし、次いで、PBS中10%FBSで室温で2時間ブロッキングした。連続希釈した原発性脾細胞又はCTLを、5%CO2で37℃で、ペプチド及び105Jurkat A2.1/Kb細胞/ウェルと共に20時間培養した。翌日、細胞を洗浄し、そして、ウェルに分泌されたIFN−γの量をサンドイッチELISAで検出し、ビオチン化α−IFN−γ(ラット抗マウスIFN−γ mAb、クローンZMG1.2、Pharmingen)を使用して、分泌されたIFN−γを検出した。HRP結合ストレプトアビジン(Zymed)及びTMB(ImmunoPure(登録商標)TMB Substrate Kit,Pierce)を、製造業者の指示に従って、呈色発生について使用した。吸光度をLabsystems Multiskan RC ELISAプレートリーダー上で、450nmで読み取った。インサイチュIFN−γ ELISAデータを、特定のペプチドに応答して100pgのIFN−γを分泌する細胞の数に基づいて、ペプチドの非存在下のIFNのバックグラウンド量について修正した、分泌単位(SU)で評価した。
【0212】
(実施例6:)
(ELISPOTアッセイ)
ELISPOTアッセイは、特定のリンホカイン(通常、IFN−γ)を産生及び放出するために誘導される個々の細胞の能力を測定することによって、所定のペプチドについてのT細胞特異性の頻度を定量する。ELISPOTアッセイの増加した感受性は、感染したヒト又は実験動物から新たに単離された細胞からの応答を研究者が検出するのを可能にした[Murali−Krishnaら、Immunity,第8巻(2):177−87(1998);Oggら、Science,第279巻(5359:2103−6(1998)]。ELISPOTアッセイは、最終工程まで、IFN−γ ELISAについて上記のように行なわれ、ここで、ExtrAvidin−AP(Sigma,1:500希釈)を、HRP−ストレプトアビジンの代わりに使用する。製造業者の指示に従って、基質5−BCIP(BioRad)を使用して色を発生させた。位相差顕微鏡を使用して、スポットを計算した。あるいは、Zeiss KS ELISPOTリーダーを利用して、スポットを計算した。この場合、BCIP/NBT基質を使用した。
【0213】
ELISPOTアッセイを慣例的に利用して、免疫応答を定量化した。スポットを手動で計算され得るが、しかし、好ましい形態で、ZeissからのKS ELISPOTリーダー、スポットを認識及び計測するように特異的に設計されたソフトウェアを用いた顕微鏡ベースの系が使用される。
【0214】
(実施例7:)
(四量体染色)
四量体染色は、ペプチドエピトープ、クラスI抗原及びエピトープに特異的なT細胞レセプター間の相互作用に基づいたエピトープ特異的ヒトCD8+Tリンパ球を検出するフローサイトメトリー技術である。このアッセイは、新たに単離された血液サンプル中のエピトープ特異的ヒトCD8+Tリンパ球の迅速な定量を可能にする。種々のHIVペプチド/HLA組み合わせのMHC四量体が、例えば、NIH貯蔵庫(Tetramer Core Facility:http://www.miaid.nih.gov/reposit/tetramer/index.html)から獲得される。エピトープ特異的細胞を標識するために、100μl用量中1×106PBMCを適切な四量体ならびにヒトCD3及びCD8を認識するモノクローナル抗体の5μg/mlで、40分間暗黒下でインキュベートした(PharMingen,SanDiego,CA又はBioSource,Camarillo,CAを含む販売元から異なった蛍光クロム結合形態で入手可能である)。細胞を洗浄して、分析の前に、FACsan又はFACSCaliburフローサイトメトリーを使用して、パラホルムアルデヒド固定した(Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose,CA)。サンプルデータをCellQuestソフトウェアを使用して分析した。
【0215】
(実施例8:)
(臨床サンプルからのアッセイ)
患者又は志願者からの凍結PBMCサンプルにおける特定のCD8+CTL活性を評価するための種々のアッセイが用いられ得る。ELISOT、クロム遊離、インサイチュIFN−γ遊離、増殖、及びテトラマーアッセイはすべて、種々の実験モデル(例えば、マウス及び/又は霊長類起源の実験モデル)からの応答を評価するのに有用である。
【0216】
これらのアッセイのマウス版の実験方法は、上述されており、そしてこれらは、記載(Livingstonら,J.Immunol,第159巻(3):1383−92(1997);Heathcoteら,Hepatology,第30巻(2):531−6(1999);Livingstonら,J.Immunol,第162巻(5):3088−95(1999))されるようにヒトの系について適合され、そして当業者に認識されるものにさらに適合される。このアッセイを完了させるために必要な凍結PBMCサンプルの量についての計算については、実施例14においてより詳細に記載される。
【0217】
(実施例9:)
(トランスジェニック動物)
トランスジェニックマウス(HLA−A2.1/KbH2b;HLA−A11/Kb;HLA−A1/Kb,HLA−B7/Kb)は、10〜100μl容量中の100μgまでのDNA又はペプチドの用量を用いて前頸骨筋において筋内で免疫されるか、又は尾底(base of the tail)において皮下で免疫される。DNAは生理食塩水中に処方され、そしてペプチドは不完全フロイントアジュバンド中に処方される。11〜12日後、この動物をCO2窒息させて屠殺し、脾臓を回収し、そしてインビトロでのCTL機能の決定のための細胞供給源として用いる。代表的に、実験グループあたり3〜6匹のマウスを用いる。さらに、非免疫マウス由来の脾臓を、CTL培養物の再刺激のためのAPC供給源として用いる。8〜12週齢の雄と雌の両方を用いる。
【0218】
(実施例10:)
(複数のCTL及びHTLエピトープに対する同時応答の誘導の実証)
(CTLエピトープストリングの構築及び試験)
この実施例は、複数のCTL及びHTLエピトープを試験することに関する実施例を提供する。例えば、単一のプロモーターの制御下で10〜12の異なるCTLエピトープを含むエピトープストリングが合成され、そして標準的なプラスミドpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego)又はNGVL(National Gene Vector Laboratory,University of Michigan)由来のプラスミドに組み込まれる。これらの構築物は、標準的なシグナル配列及び汎用のHTLエピトープ、PADRETMを含む。エピトープの各セットは、集団範囲の均衡がとれるよう選択される。試験及び最適化を容易にするために、トランスジェニックマウスにおける免疫原性及び/又はヒトにおける抗原性であることが示されたようなエピトープの均衡のとれた提示が含まれる。
【0219】
本明細書に記載されるように、これらのCTLエピトープの特異的な順序は、コンピュータプログラム、EPISORTTMの使用により、クラスI結合モチーフを最小化するよう選択される。順序の最適化に関する最善の努力にも関わらず、潜在的な結合エピトープが本発明に従う構築物中になお存在する場合、対応するペプチドが合成されて、HLAトランスジェニックマウスにおけるこのようなエピトープに対するCTL応答がモニターされる。一般に、結合モチーフの最小化は好都合であり、そして適している。しかし、任意の結合エピトープに対する応答が検出される場合、これらの結合エピトープは、短い1つから2つの残基のスペーサー(例えば、K、AK、KA、KK、又はA)の使用により分断される(これらのスペーサーは、先の節で議論した予想されるタンパク質分解性の切断の嗜好に適合する)。
【0220】
最適化された構築物の究極的な使用はヒトワクチンであるので、最適化されたヒトコドンが用いられる。しかし、HLAトランスジェニックマウスにおける最適化プロセスを容易にするために、可能であるならばいつでも、マウスに対しても最適であるヒトコドンを選択することに注意が払われる。ヒト及びマウスコドンの使用法は非常に類似している(http://www.kazusa.or.jp/codonにおけるコドン使用のデータベース)。
【0221】
種々のミニ遺伝子ワクチン構築物でトランスフェクトされたヒト細胞は、抗原性アッセイにおいて用いられ得る。このアッセイは、インビボでのHLAトランスジェニックマウスにおける試験と平行に行なわれる。これら2つの異なるアッセイ系の有効性により、異なるコドンの使用に起因するミニ遺伝子ワクチンの効果の間のいくつかの潜在的な矛盾に取り組む。
【0222】
代表的に、プラスミド構築物の抗原性及び免疫原性試験は、平行に行なわれる。トランスジェニックマウスにおけるインビボでの試験は、A2、A11、B7、及びA1 HLAトランスジェニックマウスに対して行なわれる。本発明者らの研究室において十分に構築されたプロトコルにしたがって、心臓毒の前処理をされたマウスは、100μgの各プラスミドを腹腔内に注射され、そして11日後に応答を評価される(Ishiokaら,J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999))。アッセイとして、新鮮な単離された細胞からのELISPOT、ならびに再刺激された細胞培養物からのインターフェロンγ遊離アッセイ及び細胞障害性クロム遊離アッセイが挙げられる。上述の技術はすべて、当該分野で十分に構築されている。最初の試験は、HLAトランスジェニック動物における免疫原性がすでに十分に実証されている8HLA A2、9HLA A11、及び6HLA B7拘束エピトープに照準を合わせる。これらのエピトープに対する応答の同時測定は、問題にならない。というのも、トランスジェニックマウスの大きなコロニーは、すでにこれらのHLA型について「内部で」構築されているからである。複数の読み出しアッセイ(multiple readout assay)において4〜6のマウスのグループが、6〜10の異なるエピトープに対する応答を測定するのに適している。HLA A1 トランスジェニックマウスにおけるHLA A1−拘束、HIV由来エピトープの試験が、代表的に用いられる。しかし、問題に出くわした場合、ヒトAPCを用いる抗原性試験が、代替のストラテジーとして用いられ得るか、又はトランスジェニックマウスの研究を補完するために用いられ得る。
【0223】
本明細書中で報告される研究の中で記載されているように、トランスジェニックマウスにおける免疫原性と抗原性との間の関連を広げる目的で、抗原性試験が用いられて、Pol498、Env134、Nef221、Gag271のようなエピトープに対する応答が評価される。これらに対して高い親和性のCTL系はすでに内部で利用可能である。本明細書中で記載されるように、そして本発明者らの研究室内で慣用的に適用されるように、さらなる適切なCTL系を生成する目的で、アジュバンド中で乳化されたペプチド、又はリポペプチドを用いたHLAトランスジェニックマウスの直接の免疫が用いられて、抗原性アッセイにおいて使用するための系が生成される。
【0224】
インビボでの最適化実験が適さないようなエピトープに対する主要な読み出しとして、抗原性アッセイはまた用いられる。これらのエピトープとして、A24、及びおそらくはA1拘束エピトープ、ならびにHLAトランスジェニックマウスにおいて非免疫原性である任意のエピトープが挙げられる。このような場合のいずれかにおいて、本発明者らは、HIVに曝された個体から生じたヒトCTL系を用いる。あるいは、本発明者らは、GMCSF/IL4誘導性樹状細胞及び末梢血リンパ球を用いて、インビボでのCTL誘導のためにCTL系を生成する(Celisら、Proc Natl Acad Sci USA,第91巻(6):2105−9(1994))。
【0225】
このミニ遺伝子をコードするエピソームベクターが生成され、そして適切なヒト細胞系にトランスフェクトされて、標的細胞を生成する。例えば、ヒトT細胞系Jurkatが用いられ得るが、リンパ芽球状細胞系もまた首尾よく用いられている。ヒト起源のCTL細胞系を用いる実験のために、十分に特徴付けられたHLA適合性の、ホモ接合型の、EBV細胞系が、精製されたMHCの供給源として、及び標的細胞として一般に用いられ、そしてミニ遺伝子トランスフェクションのレシピエントとして用いられる。HLAトランスジェニックマウス由来のCTL系を用いる実験のために、適合するHLA/Kbキメラ構築物でトランスフェクトされた、クラスIネガティブの、EBVで形質転換された変異細胞系221(Shimizu Y,DemarsR,J Immunol,第142巻(9):3320−8(1989))のコレクションが、このミニ遺伝子トランスフェクションのレシピエントとして用いられる。このような細胞は、CTL系に対してペプチド抗原を効果的に提示する(Celisら,Proc Natl Acad Sci USA,第91巻(6):2105−9(1994))。
【0226】
(HTLエピトープストリングの構築及び試験)
単一のプロモーターの制御下で3〜5の異なるHTLエピトープを含むエピトープストリングが合成され、そして標準的なプラスミドpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego)中に組み込まれる。全ての構築物は、Ig−α標的化配列を含む。試験及び最適化を容易にするために、所定のミニ遺伝子に対するエピトープの各セットは、IAbマウスにおいて免疫原性であることがすでに公知であるエピトープのバランスの良い提示を提供するよう選択される。このエピトープの順序は、EPISORTプログラムの使用による連結エピトープの提示を最小化するよう選択される。さらに、連結に対応する全てのペプチドが合成され、そしてIAbに対する結合について試験される。そして、最も重要には、14の異なるDR分子のパネル(世界的に最も一般的なDR対立遺伝子変異体の代表である)に対する結合について試験される(Southwoodら,J Immunol,第160巻(7):3363−73(1998))。したがって、目的の抗原に指向されないHTLエピトープは、これらのプラスミド内で作製されない。しかし、良いDR結合能を有する(したがって、インビボで潜在的なDR拘束免疫原性を有する)結合領域が検出され、GPGPGのようなスペーサーが導入されてこれらを排除する。本明細書に記載されるように、すべての構築物において、クラスI結合モチーフの数はまた最小化される。
【0227】
実験用ワクチンプラスミドは、HLA DRトランスジェニックマウス及び/又はH2bハプロタイプのマウスを用いて免疫原性について試験される。増殖及び/又はサイトカイン産生が測定される(IL5、IFN−γ)。代表的なプロトコルにおいて、心臓毒処理されたマウスは、各プラスミド100μgを用いて筋肉内注射され、そして11日後に応答を評価される(Ishiokaら,J Immunol,第162巻(7):3915−25(1999))。
【0228】
(CTLとHTLエピトープとの間の相互作用についての試験)
上記の活性は、小さい、機能的なブロックのエピトープを産生する。これは、すべての分析可能なエピトープに対する同時応答/抗原性を実証するために用いられる。これらのブロックは、さらに最適化に供される(これについては次の実施例に記載される)。これらの同じミニ遺伝子を用いて、免疫優性が評価される。詳細には、すべてのCTLプラスミドが一つに混合されるか、又はすべてのHTLプラスミドが一つに混合される。次いで、ミニ遺伝子プールを用いて得られた結果が、別々に注射された同じミニ遺伝子を用いて得られた結果と比較される。
【0229】
これらのミニ遺伝子プラスミドはまた、CTLエピトープへの応答についてのHTLエピトープの効果を決定するためにも用いられる。詳細には、HTL及びCTL含有プラスミドがプールされ、そしてマウスに注射され、そして選択されたエピトープへのCTL及びHTLの応答が、本明細書に記載されるように測定される。しばしば、例えば、標的抗原由来のHTLエピトープの存在が、CTLミニ遺伝子においてプラスミド含有汎DR結合エピトープ(例えば、PADRETM、又はPADREファミリー分子)を用いて得られた応答レベルを超えて、CTL応答を増強するか否かを決定される。代表的に、PADREが抗原由来HTLエピトープを標的化する応答を阻害又は増加させる否かもまた決定される。又は逆に、目的の抗原由来のHTLエピトープがPADREへの応答を阻害又は増加させるか否かも決定される。
【0230】
多数のエピトープへの応答は、この方法を用いて達成される。構築物のプールは、より弱いいくつかのエピトープに対する応答を阻害し得る可能性がある。この場合、プーリング実験は最適化後に繰り返される。
【0231】
(実施例11:)
(CTL及びHTLミニ遺伝子構築物の最適化)
この実施例は、実施例10に記載されるCTL及びHTL構築物の最適化について記載する。抗原性及び免疫原性についての隣接する残基の潜在的な影響もまた、最適化したミニ遺伝子構築物において評価される。これらの研究は、隣接残基(「スペーサー」と同義語であり、効果的なプロセシングを促進するために設計される)の含有を含む。
【0232】
このような分析は、次のようにして実施され得る。第1に、実施例10に記載されるようなCTLマルチエピトープ構築物の試験結果が、活性と3残基隣接エピトープのN及びC末端での特定の残基の存在との間の傾向及び関係について分析される。応答の大きさに関して準最適化(suboptimal)されているエピトープ(準最適化CTLプライミングが注目される)が隣接領域最適化についての標的である。それぞれのCTLミニ遺伝子ワクチンについて、最適化された配置を有するコードされる10〜12の異なるCTLエピトープ、「第2世代」ミニ遺伝子ワクチンが、産生される。
【0233】
第一の最適化設計は、最適以下の性能に関連したすべてのエピトープについてC+1位に、アラニン(A)残基又はリジン(K)残基のいずれかを導入することである。第二の最適化設計は、抗原性に関連した、標的抗原(例えば、HIV)中において天然に存在する残基を、C+1位に導入することである。
【0234】
選択されたエピトープについて、さらなる改変もまた導入される。特に、エピトープのC末端及びN末端に他の残基スペーサーを導入することの効力もまた研究される。実施例10に記載のミニ遺伝子ワクチンの分析結果によると、研究された残基は、さらに、例えば、G、Q、W、S及びTを含み得る。連結部エピトープがこれらの改変によって作製される場合、連結部エピトープを排除する代替的エピトープ順序が、本明細書中に記載されるように、合理的に設計される。すべての第二世代構築物を、本明細書中に記載のように、抗原性及び免疫原性について試験する。
【0235】
これらの改変の結果として、ミニ遺伝子の特定の改変に対応する、活性におけるバリエーションを同定する。普遍的で有益な効果を有する特定の改変が見出される。これを確認するために、すべてのエピトープ(また、受容可能な抗原性及び免疫原性を示したもの)が同一改変に供された、さらなるミニ遺伝子ワクチンの作製及び試験を実施する。いくつかの場合、活性の増加は、いくつかのエピトープについて注目されるが他のエピトープについては注目されないか、又は、さほど望ましくはないものの、特定の改変は、いくつかの活性を増加させるが、他のエピトープの活性を減少させる。いくつかの場合、有害であること又は効果を有さないことが証明された改変を排除しつつ、さらなるミニ遺伝子ワクチンが、有益な改変を保持するように設計され、そして試験される。
【0236】
これらのミニ遺伝子ワクチンは、a)最少の推定連結部エピトープが提示され;及びb)以前のミニ遺伝子ワクチンにおいて機能的ではなかったエピトープが、ここで、より有効な新規の状況下にあるように設計される。
【0237】
HTLミニ遺伝子ワクチンについて、「第一世代」ミニ遺伝子ワクチンから得られるデータを、連結部エピトープ、及びミニ遺伝子内のエピトープ位置、ならびにスペーサー(例えば、GPGPGスペーサー)に対する近接性に関しての傾向について研究する。特定の傾向が検出された場合、第二世代のミニ遺伝子ワクチンを、これらの傾向に基づいて設計する。あるいは、最適以下の活性を生ずるミニ遺伝子の場合、他の標的ストラテジー(例えば、Ii及びLAMPに基づくもの)の潜在的有効性を再評価し、そして標的なし及び単純なリーダー配列標的に対して比較する。
【0238】
この節に記載されるCTL又はHTLミニ遺伝子ワクチンのいずれかの活性において大きなバリエーションが検出された場合、この結果は、ミニ遺伝子活性に影響を及ぼす立体配置効果又は「長距離(long−range)」効果のような影響と一致する。これらの変量は、現在の分子生物学的技術及び細胞生物学的技術によって分析され得る。例えば、種々のミニ遺伝子でトランスフェクトされた細胞株を、ノーザン分析又はプライマー伸長アッセイ[Current Protocols in Molecular Biology、第3巻、John Wiley&Sons,Inc.USA 1999]により、mRNAの発現レベル及び安定性について分析し得る。
【0239】
すべてのミニ遺伝子ワクチンにおいて、MYC/hisのような抗体タグもまた含められ得る。このタグは、タンパク質発現レベルの試験を可能にする。MYC/hisタグ[Mansteinら、Gene、第162巻(1):129−34(1995)]を含ませることはまた、パルス−チェイス実験によって、発現産物の安定性を決定することを可能にする。次いで、これらのアッセイの結果を、抗原性及び免疫原性の実験の結果と比較し得る。この結果を、傾向及び一般的規則の存在、ならびに試験された異なる変量間の相関について調査する。
【0240】
(実施例12)
(選択されたエピトープの効率的送達を可能にする、最も単純なプラスミド立体配置の決定)
実施例11及び12に記載の実験は、ミニ遺伝子ワクチン設計に関する変量に取り組むために設計される。理想的には、ヒトにおいて使用され得るベクターは、プログラム全体を通して使用されるが、ワクチンエピトープ最適化研究についてのDNAワクチンプラスミドは、使用され得、次いでヒトでの使用に適切なベクターへと切り換えられ得る。実際のベクター選択は、いくつかの変量に依存する。例えば、信頼できる供給源(例えば、National Gene Vector Laboratory(University of Michigan))を通した、ヒトでの使用に適切なベクターの利用能が要因である。
【0241】
本実施例では、最適化されたミニ遺伝子はまた、エピトープのより多くのブロックを形成するように連結される。すべての構築物は、好ましくは、それぞれ、CTLミニ遺伝子の場合にはPADRE及びリーダー配列標的、そしてHTLエピトープミニ遺伝子の場合にはIg−αを組み込むように設計される。詳細には、10〜12のCTLエピトープミニ遺伝子の2対を連結して、2つの20〜24のCTLエピトープミニ遺伝子を生成する。エピトープの連結によって、より小さなミニ遺伝子と比較して最適以下の(減少した)活性を生じる場合には、代替的な組み合わせ及び連結順序を研究する。次いで、最適の活性を生じる20〜24のCTLエピトープミニ遺伝子の特定の対を連結し、そして結果として生じる、すべてのCTLエピトープを含むミニ遺伝子を、活性について比較する。再度、2つの代替的配向を企図して研究する。この構築物の比較的大きなサイズが理由で、標的配列の特異的作用が確認される。なぜなら、リーダー配列標的は、小さなサイズのミニ遺伝子に対してより有効であるが、より大きなサイズの構築物は、ユビキチンシグナルによって最も効率的に標的化され得ることが可能であるからである。詳細には、いかなる特異的標的配列をも含まない特定の構築物を生成し、そしてユビキチン分子の添加によって分解について標的化される構築物と比較する。
【0242】
同様のストラテジーを、HTLについて使用する。3〜5のHTLエピトープミニ遺伝子の2つの対を連結して、2つの7〜9のHTLエピトープミニ遺伝子を生成する。再度、これらのエピトープの連結が最適以下の(減少した)活性を生じる場合には、代替的な組み合わせ及び連結順序を研究する。最適の活性を生じる7〜9のCTLエピトープミニ遺伝子の特定の対を連結し、そして結果として生じる、すべてのHTLエピトープを含むミニ遺伝子を、活性について比較する。再度、2つの代替的配向を企図して研究する。
【0243】
これらの結果に基づき、パネル(例えば、HIVエピトープ)を効率的に送達し得る最適化プラスミド立体配置を、臨床試験評価のために選択する。当然のことながら、目的(感染又は疾患関連)の任意の抗原由来のエピトープを、単独でか又は組み合わせにおいて使用し得る。この立体配置は、1以上のHTLエピトープミニ遺伝子及び1以上のCTLエピトープミニ遺伝子を伴う。すべてのエピトープを効率的に送達し得る、1つの長CTLミニ遺伝子及び1つの長HTLミニ遺伝子の組み合わせが最も好ましい。なぜなら、これは、ワクチンの臨床的開発をさらに単純化するからである。同時注射された場合に2つのミニ遺伝子間に所望されない相互作用が観察される場合、同一動物であるが異なる注射部位又は異なる時点での異なるプラスミドの注射を試験する。あるいは、すべての所望のエピトープをコードする単一のCTLミニ遺伝子及びHTLミニ遺伝子が同定されない場合、ミニ遺伝子のプールを、さらなる開発のために考慮する。
【0244】
(実施例13)
(多重エピトープワクチンでの免疫後に誘導されるCD8+リンパ球応答の評価及び特徴付け)
CD8+リンパ球応答を、主にELISPOT技術により測定する。ELISPOTアッセイは、当該分野において公知であり、そして本発明者らの研究室において通常使用されている。自動化されたZeiss ELISPOTリーダーもまた、本明細書中に示されるように使用する。CD8+応答を測定するために利用されるアッセイは、主に、新たに単離された細胞及びインビトロでペプチドにより再刺激された細胞におけるIFN−γ ELISPOTアッセイである。さらに、選択された場合には、クロム放出アッセイが利用され、これもまた再刺激された細胞を用い、そして結果を、ELISPOTアッセイの場合に観察された結果と関連付ける。選択されたペプチド/MHCの組み合わせにおける四量体染色もまた実施する。小見出し「臨床サンプルからの免疫応答の測定及び定量」のもとで、背景の節においてより詳細に考察されるように、ワクチンによって標的化される多数の潜在的なHLA/ペプチドの組み合わせが、一次臨床アッセイとしての四量体染色試薬の使用を非実用的にし得ることに留意すべきである。
【0245】
臨床アッセイが開発され、そして確認される。この活性のタイミングは、臨床的ワクチンミニ遺伝子の選択後であり、かつ臨床試験において登録される個体由来の実際のサンプルが利用可能である前の期間と一致する。CTL評価のためのアッセイは、当該分野での経験事項、例えば、実験HBVワクチンの第I相及び第II相試験におけるCTL評価のためのアッセイを確立するにおける経験事項(Theradigm[Livingstonら、J Immunol、第159巻(3):1383−92(1997);Heathcoteら、Hepatology 第30巻(2):531−6(1999);Livingstonら、J Immunol 第162巻(5):3088−95(1999)])に基づいて確立し得る。詳細には、例えば、HIV感染した、ワクチン接種されていないボランティア由来のFicoll精製PBMCと同様に、正常被験体由来のFicoll精製PBMCを使用し得る。先に記載したように、他の抗原性標的を、本発明に従って使用し得る。
【0246】
利用されるエピトープは、A2、A3、及びB7インフルエンザ由来のスーパータイプエピトープ[Gianfraniら、Eur.J.of Immunol.(1999)]、ならびにEnnis及び共同研究者らによって記載されたエピトープ[Tamuraら、J Virol.第72巻(11):9404−6(1998)]のセットである。これは、アッセイの確証を可能にし、そして処置される患者集団における基線応答レベルを規定する。
【0247】
アッセイを確立した後、臨床サンプルを評価する。一般的なアッセイストラテジーは以下の通りである。凍結された材料として出荷されたPBMCアリコートを使用する。APCについて、ペプチドでパルス(pulse)された自己PBMCを代表的に使用する。なぜなら、ポリエピトープ構築物において使用されるエピトープは、多様なMHCクラスI対立遺伝子の大きなコレクションによって拘束され、APCとして分類されたEBV株及び標的の使用を非実用的にする。
【0248】
非刺激及び刺激されたペプチドの両方の培養物を評価する。いくらかの応答が、刺激されていない培養物において検出され得るが、より弱い応答/エピトープは、1つ又は2つのインビトロ刺激を必要とし得る。アッセイ手順を、以下のように実施し得る。例えば、約50個のクラスI拘束エピトープに対する応答がアッセイされる場合、約7個のペプチドの7個のプールが使用され得る。ペプチドのプールもまた、再刺激のために使用される。PADREエピトープに対する応答もまた測定する。ポジティブな結果を生じるペプチドプールの場合、個々のペプチドをアッセイして、観察された応答を担うエピトープを同定する。ポジティブコントロールとしては、破傷風トキソイド全体及び/又はマイトジェンPHA、ならびにインフルエンザウイルス由来エピトープのプールが挙げられる。潜在的連結部エピトープもまた合成され、そして単一プールとして試験される。
【0249】
次いで、少数の選択された応答物ペプチド及び個体の場合、四量体染色を、新鮮なサンプル又は再刺激されたサンプルのいずれかに対して実施し、そしてELISPOTデータと関連付ける、共通の対立遺伝子(例えば、A*0201、A*0301、A*1101、及びA*0702)に結合した選択されたペプチドについての四量体のみ生成されることに留意すべきである。これらの四量体が、同一ペプチドに対する応答についてポジティブであるが、所定のスーパータイプの他のメンバーによって拘束される細胞を染色する能力を試験する。これらの結果は、治療の診断用/代理マーカーとしてのこれらの試薬の広範な利用能を決定するにおいて興味深い。
【0250】
これらの分析において必要とされる細胞の量に関して、標準的なアッセイは、例えば、7つのペプチド群、1つのネガティブコントロール及び2つのポジティブコントロール(合計10群)を含み得る。各々2×105細胞/ウェルでの二連の試験について、これは、10×2×2×105=4×106細胞に対応する。解凍後の50%の回収率の控えめな仮定は、約106個のPBMC/mlの血液の見積もりを与える。臨床被験体におけるPBMC計数の大きなバリエーションは予期されない。なぜなら、すべての個体が健常なボランティア又はHIV感染患者の場合には、HAART治療レシピエントのいずれかであるからである。結論として、4〜8mlの血液に由来する1アリコートのPBMCが、通常、一回のアッセイに十分である。アッセイは、どのペプチドがポジティブであるかを決定することを可能にするため、及び/又は最大の感受性についてインビトロで再刺激されるのを可能にするため、あるいは両方のいずれかのために、通常、繰り返される必要がある。従って、合計3〜4アリコートが、合計約20mlの血液に対応して必要とされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のHLAエピトープを含み、そしてHLAクラスIプロセシング経路に提示されるポリエピトープ構築物を設計するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)複数のHLAエピトープを、連結部エピトープの数が最小になるように分類する工程;
(ii)K、R、N、Q、G、A、S、C及びTからなる群から選択される隣接アミノ酸残基を、該ポリエピトープ構築物に含まれるHLAエピトープのC+1位に導入する工程;
(iii)該ポリエピトープ構築物によって含まれる2つのエピトープの間に、1つ以上のアミノ酸スペーサー残基を導入する工程であって、ここで、該スペーサーは、CTL連結部エピトープ又はHTL連結部エピトープの出現を妨げる、工程;
(iv)最小数の連結部エピトープを有し、最小数のアミノ酸スペーサー残基を有し、そしてK、R、N、G、A、S、C又はTの最大数を各HLAエピトープに対してC+1位に有する1つ以上のポリエピトープ構築物を選択する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記スペーサー残基が、公知でないHLAクラスII一次アンカー残基である残基から独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペーサー残基を導入する工程がHTLエピトープの出現を妨げ、そしてさらにスペーサーが、G、P、及びNからなる群から独立して選択される少なくとも5つのアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スペーサーがGPGPGである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スペーサー残基を導入する工程がHTLエピトープの出現を妨げ、そしてさらに、該スペーサーが、A及びGからなる群から独立して選択される1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸残基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記隣接残基が、CTLエピトープのC+1位に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接残基が、K、R、N、G及びAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記隣接残基が、スペーサーアミノ酸残基に隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエピトープ構築物に含まれるHLAエピトープのC末端に隣接するHLAエピトープのN末端残基を、K、R、N、G、及びAからなる群から選択される残基で置換する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエピトープ構築物の構造を予測する工程をさらに包含し、そしてさらに、前記選択する工程が、1つ以上のポリエピトープ構築物を選択する工程を含み、ここで、該ポリエピトープ構築物は、細胞に導入される場合に、該ポリエピトープ構築物中に含まれるエピトープの全てがHLAプロセシング経路によって生成されるように、該HLAプロセシング経路によってプロセシングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法を用いて調製される、ポリエピトープ構築物。
【請求項12】
前記ポリエピトープ構築物に含まれる前記エピトープが、ミニ遺伝子によってコードされる、請求項11に記載のポリエピトープ構築物。
【請求項13】
前記ミニ遺伝子によってコードされる前記ポリエピトープ構築物が、図9に示されるHIV−TTである、請求項12に記載のポリエピトープ構築物。
【請求項14】
前記ミニ遺伝子によってコードされる前記ポリエピトープ構築物が、図9に示されるHIV−DGである、請求項12に記載のポリエピトープ構築物。
【請求項15】
前記ミニ遺伝子によってコードされる前記ポリエピトープ構築物が、図9に示されるHIV−TC構築物である、請求項12に記載のポリエピトープ構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−168592(P2011−168592A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−56001(P2011−56001)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2001−548133(P2001−548133)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(507364090)ファルメクサ インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】