説明

最適形状の設計方法及び設計システム

本発明は、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状を容易且つ的確に設計することが可能な最適形状の設計方法及びこれを用いた最適形状の設計システムを提供することを可能にすることを目的としている。 そして、その構成は、CAD部2bにより定義された緩衝材4のCADデータMと、力学的応答量算出部2cにより検出された力学的応答量と、製作可否検出部2dにより検出された製作可否情報と、コスト算出部2eにより検出された製作コスト情報との相関関係を検出し、該相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材4の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる緩衝材4の最適形状が検出されるまで緩衝材4のCADデータMを変更し、その変更したCADデータMに基づいて前記相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて緩衝材4の最適形状を検出する最適化制御部2aを設けて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状の設計方法及び設計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状の設計においては、板状緩衝材の緩衝性能データを参考にして、力学的設計条件を満足する緩衝厚さと受圧面積を決定し、これ等を満足するように緩衝材形状を形成した後、成型性の可否判断及び製作コストを算出し、これ等の条件で最適形状が得られるまで再検討を繰り返す設計が行われている。
【0003】
従来の構造最適化方法としては、特開平9−44551号公報(特許文献1)に記載されたように、製品を梱包する各種緩衝部材のCAD(ComputerAided Design)データを予めライブラリ群に格納しておき、この中から目的の緩衝部材に応じて適宜選択することで緩衝部材の設計を行うものが提案されている。
【0004】
また、特開2002−7487号公報(特許文献2)に記載されたように、被緩衝物の最大減速度が設計許容値を満足する緩衝材体積の最小値を検出し、緩衝材体積が最小体積であるときの剛性を最大とする緩衝材形状に基づいて構造物の最適形状を求めるものが提案されている。
【0005】
また、特開2000−331035号公報(特許文献3)に記載されたように、設計対象の最大重量、最小寿命、最小信頼性、最小強度、耐久性、最小環境運転条件、基準に対する適応度、コスト等の顧客の部品要求条件をパラメータとして設定するものも提案されている。
【0006】
また、特開2001−297118号公報(特許文献4)に記載されたように、最適化領域を入力することで緩衝材の最適形状が得られ、リブやボス等の追加/削除によるトポロジ(位相・形態)変化を伴う緩衝材の形状を短時間に最適化出来るものも提案されている。
【0007】
また、特開平3−224063号公報(特許文献5)に記載されたように、緩衝材の設計仕様、初期形状、設計パラメータの適用範囲、境界条件を入力することで設計仕様を満足する最適モデルを設計するものも提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−44551号公報
【特許文献2】特開2002−7487号公報
【特許文献3】特開2000−331035号公報
【特許文献4】特開2001−297118号公報
【特許文献5】特開平3−224063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の従来例では、設計検討の繰り返しを少なくするためには、設計者の勘や経験が必須であったため、設計の自動化が困難であった。また、力学的設計条件を満足する緩衝厚さと受圧面積を決定してから、その他の評価項目を確認するため、最終の設計結果は真の最適解とはなり難いという問題があった。
【0010】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状を容易且つ的確に成型可否及び製作コストまで考慮して設計することが可能な最適形状の設計方法及びこれを用いた最適形状の設計システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明に係る最適形状の設計方法の代表的な構成は、緩衝包装に使用する緩衝材の設計データに基づいて作成された該緩衝材のCADデータとして定義された緩衝材形状について、落下衝撃時に被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出すると共に、前記CADデータとして定義された緩衝材形状について製作可否を検出し、前記緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を検出し、前記相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状を検出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る最適形状の設計システムの代表的な構成は、緩衝包装に使用する緩衝材の設計データを入力する入力手段と、前記入力手段により入力された緩衝材の設計データに基づいて緩衝材形状を定義するCAD手段と、前記CAD手段により定義された緩衝材形状について、被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出する力学的応答量算出手段と、前記CAD手段により定義された緩衝材形状について製作可否を検出する製作可否検出手段と、前記CAD手段により定義された緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量算出手段により検出された力学的応答量と、前記製作可否検出手段により検出された製作可否情報との相関関係を検出し、該相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状を検出する最適化制御手段と、前記最適化制御手段により検出された前記緩衝材の最適形状を出力表示するための表示手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る最適形状の設計方法によれば、緩衝包装に使用する緩衝材の設計データに基づいて作成された該緩衝材のCADデータと、そのCADデータとして定義された緩衝材形状について、落下衝撃時に被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量と、製作可否との相関関係を検出し、その相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる緩衝材の最適形状が検出されるまで緩衝材のCADデータを変更し、その変更した緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、力学的応答量と、製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる緩衝材の最適形状を検出することで、緩衝材の最適形状を容易且つ的確に設計することが出来る。
【0014】
本発明に係る最適形状の設計システムによれば、入力手段により入力された緩衝材の設計データに基づいてCAD手段により定義されたCADデータと、CAD手段により定義された緩衝材形状について、力学的応答量算出手段により算出された被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量と、製作可否検出手段により検出された製作可否情報との相関関係を検出し、その相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる緩衝材の最適形状が検出されるまで緩衝材のCADデータを変更し、その変更した緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、力学的応答量と、製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となるように最適化制御手段が緩衝材の最適形状を検出し、表示手段により、その緩衝材の最適形状を出力表示することが出来る。これにより、緩衝材の最適形状を容易且つ的確に設計することが出来る。
【0015】
本発明は、上述の如き構成と作用とを有するので、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状を容易且つ的確に成型可否及び製作コストまで考慮して設計することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明に係る最適形状の設計システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は最適形状検出時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は被緩衝物と、その被緩衝物を包装する緩衝材の設計初期段階での形状をCADデータで示した図である。
【図4】図4は緩衝材のCADデータと、力学的応答量と、製作可否と、製作コストとの相関関係を示す図である。
【図5】図5は最適形状を求める過程において設計条件を満足しない緩衝材の形状の一例をCADデータで示した図である。
【図6】図6は緩衝材の最適形状の一例をCADデータで示した図である。
【図7】図7は緩衝材の設計初期段階での他の形状をCADデータで示した図である。
【符号の説明】
【0017】
1…入力装置
2…演算処理装置
2a…最適化制御部
2b…CAD部
2c…力学的応答量算出部
2d…製作可否検出部
2e…コスト算出部
3…表示装置
4…緩衝材
4a…孔
4b…スリット
5…被緩衝物
M,M1〜M8,Mopt…CADデータ
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図により本発明に係る最適形状の設計方法及び設計システムの一実施形態を具体的に説明する。
【0019】
図1において、1は設計対象の緩衝包装に使用する緩衝材として、成形金型を用いて製作される物品である緩衝材4を設計するために必要とする設計データを入力するための入力手段としての入力装置であって、パーソナルコンピュータ等に設けられたキーボードやマウス或いはインターネット等の通信回線を介して設計データを入力可能な入力装置である。
【0020】
2は入力装置1により入力された設計データに基づいて所定の演算処理を行って緩衝材4の最適形状を演算する演算処理装置であり、3は演算処理装置2で演算された緩衝材4の最適形状を出力表示するための表示手段となるCRT(ブラウン管)或いはプリンタ等の表示装置である。この表示装置3はデータベース・ファイル等に格納された設計結果を読み込んで出力表示する機能も備えている。
【0021】
演算処理装置2は、その演算処理部で行う演算処理を制御し、緩衝材4の最適形状を検出する最適化制御手段となる最適化制御部2aと、入力装置1により入力された緩衝材4の設計データに基づいて該緩衝材4の緩衝材形状を定義するCAD手段となるCAD部2bと、このCAD部2bで定義された緩衝材4の緩衝材形状について、落下衝撃時に被緩衝物5に生じる最大減速度、最大変位及び緩衝材4の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出する力学的応答量算出手段となる力学的応答量算出部2cと、CAD部2bで定義された緩衝材4の緩衝材形状について製作可否を検出する製作可否検出手段となる製作可否検出部2dと、CAD部2bで定義された緩衝材4の緩衝材形状について製作コストを検出するコスト算出手段となるコスト算出部2e等を有して構成されている。
【0022】
最適化制御部2aでは、図4に示して後述するように、CAD部2bで緩衝材4の設計データに基づいて作成されたCADデータと、力学的応答量算出部2cで検出された力学的応答量と、製作可否検出部2dで検出された製作可否情報と、コスト算出部2eで検出された製作コスト情報との相関関係を検出すると共に、この相関関係に基づいて製作可能で且つ力学的応答量が緩衝材4の設計条件を満足し、且つ最小製作コストとなるような緩衝材4の最適形状が検出されるまで該緩衝材4のCADデータを変更し、その変更したCADデータに基づいて、該CADデータと、力学的応答量算出部2cで新たに検出された力学的応答量と、製作可否検出部2dで再度検出された製作可否情報と、コスト算出部2eで新たに検出された製作コスト情報とに基づいて先の相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて力学的応答量が緩衝材4の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる緩衝材4の最適形状を検出する最適化演算処理を行う。
【0023】
本実施形態では、製作可否検出部2dにより製作可能を検出する場合、緩衝材4と成形金型とを離型する際に図3、図5、図6及び図7に示す抜き方向aに対して垂直な複数の平面で分割される各断面の断面形状の外周が該抜き方向aから投影して交差しないことで製作可能を検出している。
【0024】
また、力学的応答量算出部2cにより検出する力学的応答量として、本実施形態では、落下衝撃時に緩衝材4により包装される被緩衝物5に生じる最大減速度、最大変位及び緩衝材4の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つを検出するように設定している。
【0025】
次に、図2を用いて、本発明に係る最適形状の設計方法により緩衝材4の最適形状が検出されるまでの処理手順の一例について説明する。先ず、ステップS1において、入力装置1としてキーボード或いはインターネット等の通信回線等を経由して、設計対象の緩衝材4の設計データを入力する。
【0026】
例えば、緩衝包装用の緩衝材4の最適形状を設計する場合には、設計データとして、被緩衝物5の形状、重量、落下高さ、落下方向、設計許容値(例えば、被緩衝物5に生じる最大減速度、底付き或いは緩衝材4からの脱落を判定するための被緩衝物5の最大変位、長期使用時の緩衝材4のへたりを判定するための緩衝材4のクリープ変位等の機械的応答量の許容値等)、外箱及び緩衝材4に使用する素材の機械的物性値(例えば、応力、緩衝厚さと最大減速度、瞬間最大歪み、クリープ歪みの関係等)を入力する。また、段ボール箱等の外箱の寸法、外箱に収める被緩衝物5の位置等も必要に応じて設計条件として入力する。
【0027】
尚、外箱、緩衝材4に使用する素材の機械的物性値は、それ等の各種データを格納した記憶装置或いはデータベース・ファイルを用意しておき、ここから、用いる素材に応じて機械的物性値を検索し、これを利用するようにしても良い。
【0028】
演算処理装置2ではこれ等の設計データが入力されると、図2のステップS2に移行し、緩衝材4の設計初期形状をCAD部2bを用いて、例えば、図3に示すようなCADデータM1を作成する。このときに、設計変数となる形状データ(例えば、寸法、角度、リブや穴の有無等)を定義しておく。
【0029】
尚、この設計初期形状は新たに作成する方法以外に、先に設計した事例のCADデータMをデータベース等から選択して使用しても良い。このとき、更にデータベースに格納されている図3及び図7に示すような異なる緩衝材4の設計初期形状を複数選択し、複数選択された緩衝材4の設計初期形状と各々の設計初期形状に含まれる前記形状データを設計変数として定義するようにしても良い。
【0030】
次いで、ステップS3、ステップS4及びステップS5に移行し、ステップS1で入力された設計データ及びステップS2で定義したCADデータMについて以下の処理を夫々のステップS3,S4,S5で行う。
【0031】
ステップS3では、力学的応答量算出部2cにおいて前記ステップS2で定義したCADデータMに対して、被緩衝物5に生じる最大減速度等といった設計許容値との大小を比較する力学的応答量を算出する。
【0032】
この力学的応答量の算出には、緩衝材4に使用する素材の機械的物性値に対応する力学的応答量をその場で適宜入力するか、或いは予めシステムのデーターベースに格納されている緩衝材4に使用する素材の機械的物性値から該当する力学的応答量を検索エンジンにより検索して入力するか、或いは緩衝材4に使用する素材の機械的物性値が関係式で表されていれば、その関係式により力学的応答量の計算を行う。
【0033】
一方、ステップS4では、製作可否検出部2dにおいて、前記ステップS2で定義したCADデータMに対し、成形金型を用いて製作される場合の離型のための抜き勾配が適切に施されているか否かを検出することにより製作可否を検出する。
【0034】
この成形可否検出は抜き方向aと垂直な複数の平面で分割した緩衝材4の各々の断面が該抜き方向aに対して、その断面積が徐々に小さくなり且つ断面の外周或いは内周が抜き方向aから見たときに他の断面の外周或いは内周と交差していないことを調べるプログラムを用いたり、或いは一部のCADソフト(例えば、Solid Works Corporation製のSolid Works;商品名)に備わっている抜き勾配確認機能を適用して検出しても良い。
【0035】
また、ステップS5では、コスト算出部2eにおいて、前記ステップS2で定義したCADデータMに対して製作コストを算出する。例えば、緩衝材4としてビーズ発泡成型品を使用する場合には、材料費として素材使用量に相当するCADデータMの体積に素材単価を乗じた値、加工費として成形機のランニングコスト等が適用され、製作コストが算出される。
【0036】
また、緩衝材4として押出発泡品を使用する場合には、材料費として原反単価を板取りを考慮した原反取数で割った値、加工費としてカット費、熱貼加工費、抜き型代等が適用され、製作コストが算出される。
【0037】
そして、ステップS6に移行し、ステップS3、ステップS4及びステップS5で算出された力学的応答量、製作可否情報、製作コスト情報を用いて、図3に示すCADデータM1の設計変数と力学的応答量、製作可否及び製作コストとの相関関係を、例えば、図4に示すグラフのように導き、この相関関係に基づいて製作可能で且つ力学的応答量が設計対象の緩衝材4の設計許容値を満足し、且つ製作コストが最小となる緩衝材4の最適形状を求める。
【0038】
設計対象の緩衝材4の最適形状を求める過程において、例えば、図4及び図5に示すCADデータM2のように設計条件を満足しない(製作不可能、力学的応答量が設計許容値を超える)、或いは製作コストがより安価になる緩衝材形状が存在し得る場合には最適形状が求まるまでステップS6から前記ステップS2に移行し、図4に示すように、CADデータMを変更して力学的応答量、製作可否及び製作コストとの相関関係を更新し、最終的に最適形状を求める。
【0039】
図4は図3に示すCADデータM1から開始して、順次、CADデータM2,M3,…,M8と変更し、9回目に、例えば、図6に示すような緩衝材4の最適形状のCADデータMoptが得られた様子を示す。設計対象の緩衝材4の最適形状を求める最適化制御部2aには、例えば、Engineous Software Inc.製のiSight(商品名)といった汎用最適化プログラムが適用される。
【0040】
図7は緩衝材の設計初期段階での他の形状をCADデータで示した図である。図7中、4aは緩衝材4の4隅に穿設される孔であり、4bは該孔4aから緩衝材4の開口部まで延長されたスリットである。このように、データベースに格納されている前述した図3及び図7に示すような異なる緩衝材4の設計初期形状を複数選択し、複数選択された緩衝材4の設計初期形状と各々の設計初期形状に含まれる前記形状データを設計変数として定義するようにしても良い。
【0041】
本実施形態では、設計変数としてCADデータMを用いているため、求められた最適形状に対して、その図面や機械加工用のNCデータを作成する作業が容易となる。
【0042】
更に、力学的応答量だけではなく、製作可否や製作コストも最適化の条件に加えているため、加工性、経済性も含めたより生産性の高い最適形状を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の活用例として、緩衝包装に使用する緩衝材の最適形状の設計方法及び設計システムに利用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝包装に使用する緩衝材の設計データに基づいて作成された該緩衝材のCADデータとして定義された緩衝材形状について、落下衝撃時に被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出すると共に、前記CADデータとして定義された緩衝材形状について製作可否を検出し、
前記緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を検出し、
前記相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、
その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状を検出することを特徴とする最適形状の設計方法。
【請求項2】
緩衝包装に使用する緩衝材の設計データに基づいて作成された該緩衝材のCADデータとして定義された緩衝材形状について、落下衝撃時に被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出すると共に、前記CADデータとして定義された緩衝材形状について製作可否を検出すると共に、前記CADデータとして定義された緩衝材形状について製作コストを検出し、
前記緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否及び前記製作コストとの相関関係を検出し、
前記相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、
その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて、該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否及び前記製作コストとの相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる前記緩衝材の最適形状を検出することを特徴とする最適形状の設計方法。
【請求項3】
前記緩衝材は成形金型を用いて製作される物品であって、該物品と成形金型とを離型する際に抜き方向に対して垂直な複数の平面で分割される各断面の断面形状の外周が該抜き方向から投影して交差しないことで製作可能を検出することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の最適形状の設計方法。
【請求項4】
緩衝包装に使用する緩衝材の設計データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された緩衝材の設計データに基づいて緩衝材形状を定義するCAD手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材形状について、被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出する力学的応答量算出手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材形状について製作可否を検出する製作可否検出手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量算出手段により検出された力学的応答量と、前記製作可否検出手段により検出された製作可否情報との相関関係を検出し、該相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否との相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能となる前記緩衝材の最適形状を検出する最適化制御手段と、
前記最適化制御手段により検出された前記緩衝材の最適形状を出力表示するための表示手段と、
を有することを特徴とする最適形状の設計システム。
【請求項5】
緩衝包装に使用する緩衝材の設計データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された緩衝材の設計データに基づいて緩衝材形状を定義するCAD手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材形状について、被緩衝物に生じる最大減速度、最大変位及び前記緩衝材の長期使用時に生じるクリープ変位のうちの少なくとも1つからなる力学的応答量を検出する力学的応答量算出手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材形状について製作可否を検出する製作可否検出手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材形状について製作コストを検出するコスト算出手段と、
前記CAD手段により定義された緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量算出手段により検出された力学的応答量と、前記製作可否検出手段により検出された製作可否情報と、前記コスト算出手段により検出された製作コスト情報との相関関係を検出し、該相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる前記緩衝材の最適形状が検出されるまで前記緩衝材のCADデータを変更し、その変更した前記緩衝材のCADデータに基づいて該緩衝材のCADデータと、前記力学的応答量と、前記製作可否及び前記製作コストとの相関関係を更新し、その更新された相関関係に基づいて前記力学的応答量が前記緩衝材の設計条件を満足し、且つ製作可能で、且つ最小製作コストとなる前記緩衝材の最適形状を検出する最適化制御手段と、
前記最適化制御手段により検出された前記緩衝材の最適形状を出力表示するための表示手段と、
を有することを特徴とする最適形状の設計システム。
【請求項6】
前記緩衝材は成形金型を用いて製作される物品であって、前記製作可否検出手段は該物品と成形金型とを離型する際に抜き方向に対して垂直な複数の平面で分割される各断面の断面形状の外周が該抜き方向から投影して交差しないことで製作可能を検出することを特徴とする請求の範囲第4項または第5項に記載の最適形状の設計システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/010782
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511977(P2005−511977)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007088
【国際出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】