説明

有価印刷物の真偽確認構造

【課題】特殊な装置を用いなくても、簡単に真偽確認をすることができ、有価印刷物の偽造及び盗用による複製を確実に回避して、信頼性と安全性を高めることができる有価印刷物の真偽確認構造を提供することを目的とする。また、真偽確認用の高価な装置を必要とせず設備コストが低減されると共に、印刷のコストも低減される有価印刷物の真偽確認構造を提供することを他の目的とする。
【解決手段】シート片状の有価印刷物1の表て面10の一部の小区域11に、肉眼では判別不可能な超微細字2を整然と多数個配設した真偽確認パターン印刷部3を備える。かつ、真偽確認の際に真偽確認パターン印刷部3に接近乃至重ね合わせて超微細字2に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金券やチケット等の有価印刷物の真偽確認構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有価印刷物(商品券、チケット、図書券、各種証明書等)の真偽確認構造は、基材(紙片)に、複数の特殊インキを組み合わせて印刷して、赤外分析法の一つである顕微正反射法によって、識別するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−9694公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の顕微正反射法は、非常に高価かつ大きな赤外分光分析装置によって行われるため、装置を一般の売店や金券ショップ等に設置させることは実質的に不可能なので、売店等で有価印刷物の真偽確認を行うことができない。しかも、複数の特殊インキを組み合わせて印刷するのは非常に手間が掛かり、印刷コストも大きくなってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、特殊な装置を用いなくても、簡単に真偽確認をすることができ、有価印刷物の偽造及び盗用による複製を確実に回避して、信頼性と安全性を高めることができる有価印刷物の真偽確認構造を提供することを目的とする。
また、真偽確認用の高価な装置が必要ないことから設備コストを低減できると共に、印刷のコストも低減できる有価印刷物の真偽確認構造を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造は、シート片状の有価印刷物の一部の小区域に、肉眼では判別不可能な超微細字を整然と多数個配設した真偽確認パターン印刷部と、真偽確認の際に上記真偽確認パターン印刷部に接近乃至重ね合わせて上記超微細字に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体と、を備えた。
【0006】
また、上記超微細字が色彩を有する。また、上記有価印刷物がチケットである。あるいは、上記有価印刷物が金券である。さらに、上記真偽確認パターン印刷部の上記超微細字を整然と配設した配置ピッチと、上記ドットレンズ体の配置ピッチとの間に、3%〜20%の差を与えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造は、シート片状の有価印刷物の一部の小区域に、肉眼では判別不可能な超微細字を整然と多数個配設した真偽確認パターン印刷部と、真偽確認の際に真偽確認パターン印刷部に接近乃至重ね合わせて超微細字に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体と、を備えているので、モアレ現象を利用して、簡単に、有価印刷物の真偽を確かめることができる。また、ドットレンズ体は、シート片状で非常にコンパクト、かつ、安価なので、売店や金券ショップ等のあらゆる店舗が所有でき、真偽確認を行うことができる。よって、有価印刷物の偽造及び盗用による複製を確実に防止・回避できて、有価印刷物の信頼性と安全性を高めることができる。
また、真偽確認のための高価な装置が不要なので、設備コストを低減することができる。しかも、超微細字は、微細製版を使えば簡単に印刷可能であることから、大掛かりな設備は不要なので、印刷コストも低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1〜図3に示したように、本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造は、シート片状の有価印刷物1の一部の小区域11に配設された真偽確認パターン印刷部3を備える。有価印刷物1は、金券やチケットであり、金額や図柄や文字等の表示印刷部12が、基材となる紙片の表て面10、又は、表て面10及び裏面に、全体に印刷されたものである。そして、真偽確認パターン印刷部3は、表示印刷部12の中に埋没する(紛れ込む)ように、配設されている。図例においては、一枚の有価印刷物1の表て面10の下隅部に、左右一対の真偽確認パターン印刷部3,3が配設されている。
そして、図3と、他の例である図5に示したように、真偽確認パターン印刷部3は、肉眼では判別不可能な超微細字2…を整然と多数個配設したものである。具体的には、複数列の超微細字2…の直線状の列が、X字状に直交するように配設されている。超微細字2は、図3で示したアルファベットや図5で示した片仮名以外にも、数字や平仮名等でもよい。また、図示省略するが、有価印刷物1が、裏面にも、上述と同じ真偽確認パターン印刷部3を有するのもよい。
【0009】
また、本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造は、真偽確認の際に真偽確認パターン印刷部3に接近乃至重ね合わせて超微細字2に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体4を備えている。ドットレンズ体4は、図4に示したように、薄板(シート片)状の平板材7の表て面7aに、緩やかな弯曲面を有するように突設された微小膨出部5…が、所定の配置ピッチP5 をもって整然と配設されたものである。微小膨出部5…の配置のパターンは超微細字2…と同様であり、複数列の微小膨出部5…の直線状の列が、X字状に直交するように配設されている。隣り合う微小膨出部5,5の間には、微細な谷部6が形成されている。
また、真偽確認パターン印刷部3の超微細字2を整然と配設した配置ピッチP2 と、ドットレンズ体4の微小膨出部5…の配置ピッチP5 との間には、3%〜20%の差が与えられている(図4,図5参照)。そして、真偽確認パターン印刷部3にドットレンズ体4を接近乃至重ね合わせた際に、両者の僅かなズレによりモアレが生じることで(以下、「モアレ現象」という。)、図3に示したように、超微細字2…に基づいて拡大立体視像が発生(発現)する。差が3%未満であると、拡大立体視像が十分な状態で発生せず、また、20%超過であると、立体視像が不鮮明となってしまう。
【0010】
また、図3に於て、超微細字2…は、有価印刷物1に、上下方向を向く状態で配設されているが、ドットレンズ体4を通して、90°横倒した状態の立体視像が発生している。超微細字2の立体視像の向きが、実際に印刷された向きとどの程度傾斜するかは、超微細字2の色彩や、両配置ピッチP2 ,P5 の差に応じて、90°や45°等、相違する。超微細字2…は、黒色であったり、あるいは、青、赤、紫等の様々な色彩に形成される。
なお、ドットレンズ体4は、例えば、透明性を有するポリエチレンやアクリル樹脂製板材から成り、また、上述のような形状に限定されず、突起部の形状や配置は設計変更自由である。
【0011】
そして、上述のように、真偽確認パターン印刷部3は、表示印刷部12の中に埋没するように配設されていることから、肉眼では、有価印刷物1が、真偽確認パターン印刷部3を有していることを識別しにくく、表示印刷部12のデザイン性は損なわれない。
なお、有価印刷物1は上述のものに限定されず、一枚の有価印刷物1に配設される真偽確認パターン印刷部3の数量や、配設位置は変更自由であり、例えば、表て面10の4隅部に、パターン印刷部3が一つずつ配設されたり、あるいは、表て面10の中央乃至その近傍に、パターン印刷部3が配設されるのもよい。また、図例では、パターン印刷部3を、多数の超微細字2…が矩形状を成すように配設されたものとなっているが、例えば、円形に形成されてもよい。
なお、超微細字2は、微細製版(ドットレンズ体4によってモアレ現象を発生させることができるような製版)によって印刷されるものなので、図1の有価印刷物1を一般的なコピー機で印刷しても、ドットレンズ体4によって拡大立体視像が発生するような真偽確認パターン印刷部3を複製することはできない。
【0012】
次いで、本発明の真偽確認構造の使用方法について説明すると、図1に示した有価印刷物1が、例えば、デパートや金券ショップに持ち込まれたら、店員は、図2に示したドットレンズ体4を有価印刷物1の真偽確認パターン印刷部3に接近乃至重ね合わせる。すると、図3に示したように、超微細字2…と、ドットレンズ体4の多数の微小膨出部5…とのモアレ現象によって、超微細字2…に基づいて拡大立体視像が発生し、店員は、この有価印刷物1が、偽造や複製をしたものではなく、微細製版によって印刷された本物の金券やチケットであることを確認できる。また、真偽確認パターン印刷部3は、表示印刷部12の中に埋没されるように配設されていることから、肉眼では、パターン印刷部3を識別しづらいため、表示印刷部12のデザイン性は損なわれない。なお、予め、パターン印刷部3を配設する位置(例えば、有価印刷部1の表て面10の隅部)をおおよそ特定しておけば、肉眼では識別しにくいパターン印刷部3の位置にドットレンズ体4を迅速に重ね合わせることができるので、好ましい。
【0013】
以上のように、本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造は、シート片状の有価印刷物1の一部の小区域11に、肉眼では判別不可能な超微細字2を整然と多数個配設した真偽確認パターン印刷部3と、真偽確認の際に真偽確認パターン印刷部3に接近乃至重ね合わせて超微細字2に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体4と、を備えているので、ドットレンズ体4を、真偽確認パターン印刷部3に接近乃至重ね合わせることで、モアレ現象を利用して、簡単に、有価印刷物1の真偽を確かめることができる。また、ドットレンズ体4は、シート片状で非常にコンパクト、かつ、安価なので、売店や金券ショップ等のあらゆる店舗が所有でき、真偽確認を行うことができる。よって、有価印刷物1の偽造及び盗用による複製を確実に防止・回避できて、有価印刷物1の信頼性と安全性を高めることができる。
また、真偽確認のための高価な装置が不要なので、設備コストを低減することができる。しかも、超微細字2は、微細製版を使えば簡単に印刷可能であることから、特殊な印刷機等の設備は不要であり、印刷コストも低減できる。
【0014】
また、超微細字2が色彩を有することで、色彩の違いによって、超微細字2の拡大立体視像が、様々なパターンの向きとなって発生する。よって、有価印刷物1の種類に応じて超微細字2の色彩を違えることで、拡大立体視像の向きを変えることができ、確認し易くなると共に、一層、偽造防止を図ることができる。
【0015】
また、有価印刷物1がチケットであれば、コンサート会場等で、チケットの真偽確認を行うことができ、チケットの信頼性と安全性を向上させることができる。しかも、真偽確認を簡単かつ迅速に行えるので、来場した多くの観客のチケットの真偽確認を行うとしても、時間が掛からない。
【0016】
また、有価印刷物1が金券であれば、売店や金券ショップ等で、金券の真偽確認を行うことができ、金券の信頼性と安全性を向上させることができる。しかも、真偽確認は、簡単かつ迅速に行えて、時間が掛からない。
【0017】
また、真偽確認パターン印刷部3の超微細字2を整然と配設した配置ピッチP2 と、ドットレンズ体4の配置ピッチP5 との間に、3%〜20%の差を与えたので、鮮明な拡大立体視像を確実に発生させることができ、効率よく真偽確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る有価印刷物の真偽確認構造の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】ドットレンズ体を示す正面図である。
【図3】説明用要部正面図である。
【図4】図2のイ−イ拡大断面図である。
【図5】真偽確認パターン印刷部の他の例を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 有価印刷物
2 超微細字
3 真偽確認パターン印刷部
4 ドットレンズ体
11 小区域
2 配置ピッチ
5 配置ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート片状の有価印刷物(1)の一部の小区域(11)に、肉眼では判別不可能な超微細字(2)を整然と多数個配設した真偽確認パターン印刷部(3)と、真偽確認の際に上記真偽確認パターン印刷部(3)に接近乃至重ね合わせて上記超微細字(2)に基づいて拡大立体視像を発生させるためのシート片状のドットレンズ体(4)と、を備えたことを特徴とする有価印刷物の真偽確認構造。
【請求項2】
上記超微細字(2)が色彩を有する請求項1記載の有価印刷物の真偽確認構造。
【請求項3】
上記有価印刷物(1)がチケットである請求項1又は2記載の有価印刷物の真偽確認構造。
【請求項4】
上記有価印刷物(1)が金券である請求項1又は2記載の有価印刷物の真偽確認構造。
【請求項5】
上記真偽確認パターン印刷部(3)の上記超微細字(2)を整然と配設した配置ピッチ(P2 )と、上記ドットレンズ体(4)の配置ピッチ(P5 )との間に、3%〜20%の差を与えた請求項1,2,3又は4記載の有価印刷物の真偽確認構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−49648(P2008−49648A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230315(P2006−230315)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(598056504)株式会社ネストン (1)
【Fターム(参考)】