説明

有害物処理装置及び有害物処理方法

【課題】有害物を含む物体に薬液を噴霧して有害物の粉塵化や地中浸透化を防止する有害物封じ込め処理を短時間に行い得る、有害物処理装置、方法を提供する。
【解決手段】集積された有害物を含む物体の上側及び両側を閉塞するように設置された分解可能な仮設テント10と、仮設テント10内に設置されるノズル支持部材16に適宜の間隔を隔てて支持される複数の薬液供給ノズル22と、薬液供給ノズルに薬液を供給する薬液供給手段23と、薬液供給ノズル22に高圧空気を供給する高圧空気供給手段と、を備えてなる。薬液供給ノズル22に薬液供給手段23より薬液を供給すると共に高圧空気供給手段24により高圧空気を供給し薬液供給ノズル22から有害物を含む物体に薬液を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト等の有害構造物を含んだ瓦礫や解体材等の物体に薬液を噴霧して有害構造物の粉塵化や地中浸透化を防止することにより有害構造物を封じ込める有害物処理装置及び有害物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の断熱、耐火、防火および結露防止等を目的としてアスベスト繊維を含有する吹付剤を建築構造物の内部の鉄骨材や壁面に吹き付けることにより、該鉄骨材や壁面がアスベスト構造体で被覆された建築構造物が今までに多数建設されてきた。しかし、その後、アスベスト繊維が老朽化すると、粉塵化して空気中に飛散し、この粉塵化し飛散したアスベスト繊維を人体、特に呼吸器が吸収した場合、中皮腫や肺ガンの発生原因となり極めて危険であることが分かり、アスベストの人体への害は深刻な社会問題となっており、アスベストの除去が緊急の課題となっている。また、原子炉事故により発生した放射能汚染物質の安定化、飛散防止が緊急の課題となっている。
【0003】
アスベスト構造体は、除去するのが最良であるが、完全に除去することは不可能または困難である。そこで、立地条件、周辺環境及び経済性等の事情から、アスベスト構造体の粉塵化を防止し得る薬液を吹き付けてアスベスト構造体の粉塵化を防止することによりアスベストの封じ込め処理が行われている。例えば、アスベスト構造体が存在する建造物の解体前、又は解体途中に、薬液をアスベスト構造体の被覆面に噴霧することにより、アスベスト構造体の粉塵化を防止する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
アスベスト構造体の粉塵化を防止する処理が行われていない建造物が超巨大地震や津波などの災害により損壊され瓦礫や解体材等が集積された物体にはアスベスト構造体が含まれているので、アスベスト封じ込め処理が必要とされている。従来において、集積されたアスベスト構造体が含まれる瓦礫や解体材等の物体について、アスベスト構造体の粉塵化を防止する処理は、もっぱら人為作業により行われている。すなわち、作業者が防塵マスク、保護メガネ及び保護衣を着用し、噴霧薬液供給ノズルを持ち、アスベストを含んだ物体に向け噴霧作業を行っている。
【0005】
他方、従来において、集積されたアスベスト構造体を含んだ瓦礫や解体材等の物体に対し、人為作業によらないで短時間に効率よくかつ安全に行えるアスベスト処理方法は提案されていない。これは放射能汚染物質についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−056492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した集積されたアスベスト構造体を含んだ物体に薬液を含浸させアスベストを封じ込め処理を行う人為作業は、作業者が薬液供給ノズルを保持し吹き付け方向を変えながら適切と思われる長い時間、薬液噴霧を行うものであった。またこの作業において、作業者は、噴霧の均一性について梯子の上に上がって目視により何度も確認することを必要としていた。このため、この人為作業は、労働環境・作業内容が劣悪であるいわゆる3Kの作業であり、経験や勘を必要としており、しかも一人で処理できる一日当たりの容量は20m3程度の少なく効率が低いものであった。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、アスベスト構造体等の有害物を含む物体に薬液を噴霧して有害物の粉塵化や地中浸透化を防止し有害物封じ込める処理を、有害物を含む物体の集積場所にて短時間に大量にかつ安全高品質で行い得る、有害物処理装置及び有害物処理方法を提供することを目的としている。本明細書において有害物とは、アスベスト、放射能汚染物質、悪臭物質、有害薬品を含んだ物質、PCBを含んだ物質、水銀を含んだ物質、有害金属を含んだ物質、発ガン性物質等である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の有害物処理装置は、集積された有害物を含む物体の上側及び両側を閉塞するように設置された分解可能な仮設テントと、前記仮設テント内に設置されるノズル支持部材に適宜の間隔を隔てて支持される複数の薬液噴霧薬液供給ノズルと、前記薬液噴霧薬液供給ノズルに薬液を供給する薬液供給手段と、前記薬液噴霧薬液供給ノズルに高圧空気を供給する高圧空気供給手段と、を備え、前記薬液噴霧薬液供給ノズルから薬液を噴霧し前記有害物を含む物体に吹き付けることを特徴とする。
【0010】
また上記目的を達成するために、本発明の有害物処理方法は、集積された有害物を含む物体の上側及び両側を閉じる仮設テントを設置すると共に、前記仮設テント内に適宜の間隔を隔てて複数の薬液噴霧薬液供給ノズルを設置し、前記薬液噴霧薬液供給ノズルに薬液供給手段より薬液を供給すると共に高圧空気供給手段により高圧空気を供給し当該各薬液噴霧薬液供給ノズルから前記有害物を含む物体に薬液を噴霧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、集積した有害物を含む物体の上側及び両側を仮設テントで閉じて、該仮設テント内に設置する複数の薬液噴霧薬液供給ノズルから薬液を有害物構造体を含む物体に吹き付けるので、薬液を有害物を含む物体に対して有効かつ広範囲に均一に吹き付けることができ、有害物を含む物体の集積場所にて短時間に大量にかつ安全高品質で行い得る、有害物処理装置及び有害物処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアスベスト処理装置にかかる概略の正面図である。
【図2】図1に示すアスベスト処理装置の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアスベスト処理装置にかかる概略の正面図である。
【図4】図3に示すアスベスト処理装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る有害物処理装置及び方法の実施形態について、アスベスト処理を例とし、図面に基づいて説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1,図2は、本発明の第1の実施形態に係るアスベスト処理装置を示す。
このアスベスト処理装置100は、空地等に集積されたアスベスト構造体を含む物体Gの上側及び両側の少なくとも三方を閉塞するように設置される分解可能な仮設テント10と、仮設テント10内においてアスベスト構造体を含む物体の上側で水平方向に延びて設置されるノズル支持部材16に適宜の間隔を隔てて支持される複数の噴霧装置20とを備えている。
【0015】
ノズル支持部材16は、仮設テント10の骨組11に支持される。噴霧装置20は、薬液供給ノズル22と、薬液供給ノズル22に薬液を供給する薬液供給手段23と、薬液供給ノズル22に高圧空気を供給する高圧空気供給手段24とが一体にユニット化されてなり、薬液供給ノズル22から薬液を噴霧しアスベスト構造体を含む物体に吹き付ける。
【0016】
このアスベスト処理装置100は、仮設テント10内の上部に設置される湿潤度センサ27と、仮設テント10外に設置されるモニタ28とからなる薬液吹付状態確認手段を備え、アスベスト構造体に対する薬液の吹き付け度合いを湿潤度センサ27で検出し、モニタ28で確認し得る構成であることが好ましい。
【0017】
以下、詳細に説明する。
<仮設テント>
仮設テント10は、鉄あるいはアルミ製の軽量型材を分解可能に組み立ててなる骨組11と、この骨組11に被せて山脈状に集積されたアスベスト構造体を含む物体の上側及び両側(山脈状の集積方向に直交する方向である両側)を閉塞するテント本体17とを含んでなる。
【0018】
骨組11は、アスベスト構造体を含む物体Gの片側に複数位置と反対側の各対抗位置に立てられる複数対の支柱12と、同じ側の支柱12の上端同士並びに下端同士を連結する集積方向(長手方向)に沿った縦梁13と、両側の対応する位置の支柱12の上端同士を連結する集積方向に直交する方向に沿った横梁14と、支柱12と縦梁13又は横梁14とで作るコーナー部及び縦梁13と横梁14とで作るコーナー部に直角三角形のトラスを形成するための筋交い15とを含み、フック及びボルトナット等の連結具(図示しない)を用いて分解可能に組み立てられてなる。ノズル支持部材16は、アスベスト構造体の上側で横梁14の方向に適度の間隔をあけてかつ縦梁13と平行に延びて複数有し、各両端を横梁14に支持されている。
【0019】
テント本体17は、内面が薬液に対して撥液性を有する合成樹脂シートあるいは軽い合成繊維シートであって、内面に紐等の係止手段(図示しない)が付設されていて、該係止手段により骨組11に係止される。テント本体17は、アスベスト構造体が仮設テント10よりも長く山脈状に集積される場合には、アスベスト構造体の上側及び両側を閉塞することで足りるが、長尺に集積する方向の両端においても梁から垂れる寸法を調整して集積されたアスベスト構造体を含む物体に接触又は近接し得る構成であることが望ましい。テント本体17は、アスベスト構造体が仮設テント10内に収まる容積として集積される場合には、アスベスト構造体の上側及び四方の側面を閉塞するように設ける。
【0020】
このアスベスト処理装置100は、集積されたアスベスト構造体を含む物体の両側に、例えばアングル材を縦断面が三角山になるように伏せてなるレール19がアスベスト構造体を含む物体の長尺な集積方向に延びて敷設され、この両側一対のレール上に、仮設テント10の骨組11を構成している各支柱の下端に備えられたブレーキ付き走行輪18が乗り、仮設テント10が一位置でのアスベスト処理が済む毎にその隣接位置に移動して固定される構成であることが好ましい。
【0021】
<噴霧装置>
噴霧装置20は、上述した各ノズル支持部材16に適宜間隔を隔てて支持される複数のブラケット21と、各ブラケット21に載置された薬液供給ノズル22、薬液供給手段23及び高圧空気供給手段24を備え一体にユニット化されてなる。
【0022】
薬液供給ノズル22は、薬液と高圧空気とを供給されることにより薬液をミクロン〜サブミクロンオーダーの超微細粒にして噴霧し得る噴霧機能を有する。
薬液供給ノズル22は、各ブラケット21の下面より下側に位置されて往復旋回される旋回アーム25の旋回端に支持されるように、各ブラケット毎に1つ又は複数設けられ、薬液の噴霧方向を斜め下方として往復旋回して下方向の広い範囲に均一に薬液を噴霧し得る。
【0023】
薬液供給手段23は、薬液を貯留する薬液タンク23aと、薬液タンク23a内の薬液を薬液供給ノズル22に供給する薬液供給手段としてのポンプ23bとを有し、ポンプ23bの吐出口と薬液供給ノズル22の薬液供給口とが薬液供給ホースで接続される。高圧空気供給手段24は、エアコンプレッサが用いられる。該エアコンプレッサ24の吐出口と薬液供給ノズル22の高圧空気供給口とが高圧空気供給ホースで接続される。ポンプ23bを駆動するモータ(図示しない)の端子及びエアコンプレッサを駆動するモータ(図示しない)の端子並びに前記旋回アーム25のアクチュエータと、仮設テントの外に設置される仮設電源とが給電ケーブルで接続され、給電が行われ、ポンプ23bとエアコンプレッサ24が駆動し薬液供給ノズル22への薬液供給と高圧空気供給とが行われ、薬液供給ノズル22が往復旋回して薬液噴霧を行うようになっている。なお、各噴霧装置20毎にバッテリを設置してもよい。仮設テント10の内側面にファン26を設置する。
【0024】
湿潤度センサ27は、仮設テント10内の適宜の位置、具体的には、骨組11あるいはブラケット21に支持される。湿潤度センサ27によってアスベスト構造体への薬液の含浸量を検出し、仮設テント10外に設置するモニタ28により、各湿潤度センサ27から得られる電気量を湿潤度として数値表示及びグラフ表示し、アスベスト構造体への薬液の含浸量を確認する。湿潤度センサ27は、抵抗式、画像式、光透過度式のいずれを採用しても良い。
【0025】
アスベスト構造体に対して薬液の吹き付けが確実に行われたことか否かの確認として、仮設テント10内の適宜の位置、具体的には、骨組11あるいはブラケット21に支持されるように湿潤度センサ27を設置すると共に、仮設テント10外にモニタ28を設置する。
【0026】
次に、上述したアスベスト処理装置の設置からアスベスト処理を実施するまでの方法について説明する。
まず、集積された被処理対象のアスベスト構造体を含む物体Gの上側及び両側を密閉状態に覆うための仮設テント10の骨組11を組み立て、両側にレール19を敷設して、両レール19に仮設テント10の各支柱の下端に付設した走行輪18を載せ。てブレーキを掛けて仮設テント10を位置決めする。続いて、仮設テント10のテント本体17を骨組11に被せる。次に、仮設テント10内にあってアスベスト構造体を含む物体Gの上方を水平方向に延びるノズル支持部材16を設置する。次に、ノズル支持部材16に間隔を隔てて支持され高圧空気を供給されて下方のアスベスト構造体を含む物体Gに薬液を噴霧し得る薬液供給ノズルを有する複数の噴霧装置20を設置し、さらに湿潤度センサ27を設置し、仮設テント10外にモニタ28を設置する。
【0027】
噴霧装置20の設置は、まず、各ノズル支持部材16に複数のブラケット21を適宜間隔を隔てて取付ける。次に、各ブラケット21に薬液供給ノズル22と薬液供給手段23と高圧空気供給手段24とを適宜の順序で載置して一体にユニット化する噴霧装置20を組み立てる。各薬液供給ノズルに薬液を供給するための薬液供給手段23及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段24を設置し、薬液供給ノズル22に薬液と高圧空気を供給し該薬液供給ノズルから薬液を噴霧しアスベスト構造体を含む物体に吹き付ける。
【0028】
仮設電源を投入し、薬液の吹き付け作業を開始する。仮設電源をONにすると、ポンプ23b及びエアコンプレッサ24が稼働し、エアコンプレッサ24によって高圧空気が各薬液供給ノズル22に供給されると共に、薬液タンク23Aに貯留された薬液がポンプ23bによって各薬液供給ノズル22に供給され、各薬液供給ノズル22は、薬液を超微細粒径の霧状にして噴射しアスベスト構造体に向かって吹き付ける。
【0029】
霧状の薬液は、仮設テント内に設置するファンにより瓦礫や解体材等の物体の内部の微細隙間へ侵入拡散していくと共に、ミスト粒子が細かいためブラウン運動が起こり、アスベスト構造体の微細な空隙まで薬剤が行き渡っていく。仮設テント10は、噴霧薬液が瓦礫や解体材等の物体に有効に含浸させるために噴霧薬液が仮設テント10内に留める役目を果たす。そして、薬液供給ノズル22からの噴射が継続するので、次第にアスベスト構造体に含浸する薬液濃度が高まっていく。薬液供給ノズル22から噴霧される薬液は、ファン26により隅々に送り込まれ、瓦礫や解体材等の物体のアスベスト構造体に均一化に含浸する。
【0030】
薬液含浸量の度合いは、便宜的に湿潤度センサ27の湿潤度として換算でき、モニタ28にグラフ表示や数値表示でき、霧状薬液のアスベスト構造体への必要量の含浸が行われたことを確認することができる。必要量の含浸が行われたら、仮設電源をOFFにして、仮設テント10を隣接エリアに移動し薬液の吹き付け作業を繰り返す。
【0031】
アスベスト処理を終えたら分解して撤去し、その後に、アスベスト構造体を含む物体Gの廃棄処理を行うことで、作業者の安全が守られる。
【0032】
以上のように、このアスベスト処理装置及び方法によれば、集積したアスベスト構造体を含む物体Gの上側及び両側を仮設テント10で閉じて、該仮設テント10内に設置する複数の薬液噴霧薬液供給ノズル22から薬液をアスベスト構造体を含む物体Gに吹き付けるので、薬液をアスベスト構造体を含む物体Gに対して有効かつ広範囲に均一に吹き付けることができ、アスベスト構造体を含む物体Gの集積場所にて短時間に大量にかつ安全高品質で行い得る。
【0033】
<第2の実施形態>
図3,図4は、本発明の第2の実施形態に係るアスベスト処理装置を示す。
このアスベスト処理装置100Aは、空地等に集積されたアスベスト構造体を含む物体Gの上側及び両側の少なくとも三方を閉塞するように設置される分解可能な仮設テント10Aを備えている。仮設テント10Aの骨組11とノズル支持部材16とテント本体17は、第1の実施形態の場合と同一である。該仮設テント10Aは走行輪を備えていない点が第1の実施形態の場合と相違する。
【0034】
このアスベスト処理装置100Aは、仮設テント10A内においてアスベスト構造体を含む物体の上側で水平方向に延びて設置されるノズル支持部材16に適宜の間隔を隔てて支持され薬液と高圧空気とを供給され薬液噴霧を行う複数の薬液供給ノズル22を備えている。薬液供給ノズル22は、ノズル支持部材に支持される図示しない往復スライダ又は往復旋回アーム29に支持されて一定範囲内を移動しつつ薬液を噴霧しアスベスト構造体を含む物体Gに吹き付ける。仮設テント10A内の一側には第1の実施形態の場合と同様にファン26が設置される。
【0035】
薬液供給手段23Aと高圧空気供給手段24Aは、第1の実施形態の場合のように各薬液供給ノズル22の近傍に備えている構成ではない。このアスベスト処理装置100Aは、仮設テント10Aの外に設置される隔離室30を備え、この隔離室30に、全ての薬液供給ノズル22に対して、薬液を供給するための薬液供給手段23A及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段24Aと、薬液供給手段23A及び高圧空気供給手段24Aには分配手段(図示しない)が設けられ、分配手段を介して薬液の供給、高圧空気の供給が行われる。その他、隔離室30には、仮設電源とモニタ28が設置される。
【0036】
このアスベスト処理装置100Aは、アスベスト構造体に対する薬液の吹き付け度合いを湿潤度センサ27で検出し、隔離室30内のモモニタ28で確認し得る。
【0037】
その他の構成は、第1の実施形態に係るアスベスト処理装置と同一であるので説明を省略する。
【0038】
<その他の実施形態>
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0039】
第1の実施形態に係るアスベスト処理装置100の複数の噴霧装置20は、アスベスト構造体を含む物体の上側に設置され薬液を下向きに噴霧し得る構成に限定されるものでなく、アスベスト構造体を含む物体の斜め上側や側方に位置して設置され、薬液を斜め下向きあるいは横向きに噴霧し得る構成であってもよい。ノズル支持部材16として、仮設テント10の骨組11である支柱12や縦梁13と横梁14を利用してもよい。高圧空気供給手段24は、エアコンプレッサではなく、小型エアポンプ又は空気ボンベで代用してもよい。
【0040】
<使用する薬液>
アスベスト構造体は、セメントモルタルを接着剤にしてアスベスト繊維を鉄骨や壁面材に吹き付けて泡状態で固定したものであり、隙間の空気層によって耐火、結露防止などに効果を発揮するものであるので、薬液がアスベスト繊維に含浸した後も引き続いてアスベスト繊維に泡状の隙間が確保されることが重要である。このため、使用する薬液を、アスベスト構造体の表面だけに塗膜を作ってしまう薬剤は不適であるので使用せず、(a)耐火性能を満足する無機物を主成分とすること、(b)アスベスト層内部への浸透性に優れること、(c)施工後の変質が無いか、極めて少ないこと、(d)アルカリ性を有し、セメントモルタルを痛めないか、強化するものであること、(e)有害物を含まないこと、の特性に有する薬剤を選択して使用するものとし、そして、薬液を圧縮空気の圧力で超微細粒径の霧状に噴射し得る薬液供給ノズルを採用し、薬剤をミクロンオーダーの超微細粒径の霧状にして噴霧すると、この霧状の薬剤が、アスベスト繊維の空隙を塞ぐことなくこの空隙の隅々に侵入してアスベスト繊維に含浸しアスベスト構造体の粉塵化を防止することができる。
【0041】
<蓄電池の使用>
各種対策を施しても、薬液供給用ホースと高圧空気供給用ホースと動力ケーブルとによじれや絡み等のトラブルが発生する可能性があるときには、天井の噴霧装置に蓄電池を載せてコード・ホースレスとし、よじれや絡み等のトラブルを防止してもよい。
【0042】
<蛍光剤入り薬液の使用>
公知の蛍光剤入り薬液を使用する方法がある。この場合、適切な間隔で入り口を設け、内部に入り紫外線ライト(ブラックライト)を照射し、その反射光を監視することで湿潤度を測定することができる。反射光は目視で監視してもよいし、照度計で測定してもよい。事例のように、テレビカメラでモニタしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100,100A アスベスト処理装置、
10,10A 仮設テント、
16 ノズル支持部材、
20 噴霧装置、
22 薬液供給ノズル、
23,23A 薬液供給手段、
24,24A 高圧空気供給手段、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積された有害物を含む物体の上側及び両側を閉塞するように設置された分解可能な仮設テントと、
前記仮設テント内に設置されるノズル支持部材に適宜の間隔を隔てて支持される複数の薬液供給ノズルと、
前記薬液供給ノズルに薬液を供給する薬液供給手段と、
前記薬液供給ノズルに高圧空気を供給する高圧空気供給手段と、を備え、
前記薬液供給ノズルから薬液を噴霧し前記有害物を含む物体に吹き付けることを特徴とする有害物処理装置。
【請求項2】
前記各薬液供給ノズルが一定範囲を移動可能に設置されてなることを特徴とする請求項1に記載の有害物処理装置。
【請求項3】
前記薬液供給ノズルと、前記薬液供給手段と、前記高圧空気供給手段とが一体の噴霧装置としてユニット化され、複数の前記噴霧装置が、前記ノズル支持部材に適宜間隔を隔てて支持されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有害物処理装置。
【請求項4】
前記薬液供給手段及び前記高圧空気供給手段が前記仮設テント外に設置されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有害物処理装置。
【請求項5】
集積された有害物を含む物体の上側及び両側を閉じる仮設テントを設置すると共に、前記仮設テント内に適宜の間隔を隔てて複数の薬液供給ノズルを設置し、前記薬液供給ノズルに薬液供給手段より薬液を供給すると共に高圧空気供給手段により高圧空気を供給し当該各薬液供給ノズルから前記有害物を含む物体に薬液を噴霧することを特徴とする有害物処理方法。
【請求項6】
前記複数の薬液供給ノズルが、前記仮設テント内の上部において水平方向に延びて設置されるノズル支持部材に沿って一定範囲を移動して前記有害物を含む物体に薬液を噴霧することを特徴とする請求項5に記載の有害物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237115(P2012−237115A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105562(P2011−105562)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(511033209)株式会社ハイアス安全エコ (5)
【Fターム(参考)】