説明

有害物質の除去方法及び有害物質除去フィルター

【課題】大気中の、又は喫煙時においてタバコから発生する有害物質、例えばダイオキシン類やピレン等を、DNAを用いて効果的に除去し得る方法及び有害物質の除去フィルターを提供する。
【解決手段】少なくとも、二本鎖DNA1と、他の高分子化合物と、フィルター繊維体2とからなり、他の高分子化合物は、二本鎖DNA1の有する前記有害物質除去効果に悪影響を与えず、かつ二本鎖DNA1と混合され得、フィルター繊維体2に対して物理的な力又は化学的結合もしくはそれら両方の結合によって付着し得る高分子化合物であり、前記二本鎖DNA1が、前記フィルター繊維体2のうち少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、該二本鎖DNA1及び該他の高分子化合物の混合物の形態にて前記フィルター繊維体2に保持されて、インターカレーションにより有害物質を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする有害物質除去フィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、大気中のダイオキシン類又は喫煙時においてタバコから発生する有害物質を除去し得るフィルター、詳細には、二本鎖DNA及び該二本鎖DNAが保持されたフィルター繊維体からなり、有害物質を、二本鎖DNAの塩基対と塩基対の間にインターカレーションさせることによってより効果的に除去し得るフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
従来、環境汚染の一因となっている空気中の有害物質、有害微生物等を除去する手段として、ハニカム、多孔性セラミックス、ガラス繊維若しくは金属繊維又は炭素繊維に担持した再生セルロース、木材パルプ、おがくず、椰子がら、石炭、フェノール、合成繊維等の原料から作製した粒状、粉末又は繊維状活性炭素材やゼオライトを主体としたフィルターが使用され、これらの材料はある程度有効であることが知られている。有害物質等を除去するその他の手段として、特許文献1は、光触媒作用を有する機能性粉末(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等)が活性炭素繊維に担持されていることを特徴とする光触媒を利用した空気清浄フィルターを開示し、また一方で、喫煙によりタバコから発生する有害物質の除去手段として、特許文献2は、少なくともCaO、B23、SiO2、及びAl23
で構成された多孔質ガラスを含むたばこ煙用フィルターを開示している。
【特許文献1】特開2002−355299号公報
【特許文献2】特開2001−95552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで近年において、ダイオキシン類による大気汚染や、喫煙による健康障害がさらに注目されるようになっており、大気中に存在するダイオキシン類や、喫煙時にタバコから発生する有害物質がこれまで以上に効果的に除去される方法を望む声が多くなりつつある。
ところが、上述の空気中の有害物質、有害微生物等を除去し得るフィルターをエアコン、ファンヒーター、空気清浄機、電気掃除機、ドライヤー等種々の電気・電子機器に使用する場合においては、室内の埃や塵を除去する効果は有するものの、ダイオキシン類を効果的に除去することは残念ながら困難であった。
かかる事情に鑑み、本発明は、空気中に存在するダイオキシン類や喫煙時にタバコから発生するピレン、その他の人体に有害な化学物質をより効果的に除去し得る方法、及び該有害物質除去フィルター並びに該フィルターが備えられた紙巻タバコ、タバコホルダー等の喫煙具、マスク類、電気・電子機器類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
すなわち、
本願に係る第1の発明は、有害物質を含有する気体より該有害物質を捕捉して除去する有害物質除去フィルターであって、少なくとも、二本鎖DNAと、該二本鎖DNAを保持するフィルター繊維体とからなり、前記二本鎖DNAは、前記フィルター繊維体のうち少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、遊離の状態でフィルター繊維間に保持されて、インターカレーションにより有害物質を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする有害物質除去フィルターに関する。
上記有害物質除去フィルターにおいて、好ましくは、前記二本鎖DNAは、繊維状又は
フィルムの形態にある。
第2の発明は、有害物質を含有する気体より該有害物質を捕捉して除去する有害物質除去フィルターであって、少なくとも、二本鎖DNAと、他の高分子化合物と、該二本鎖DNA及び該他の高分子化合物を保持するフィルター繊維体とからなり、前記二本鎖DNAは、前記フィルター繊維体のうち少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、該二本鎖DNA及び該他の高分子化合物の混合物の形態にて前記フィルター繊維体に保持されて、インターカレーションにより有害物質を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする有害物質除去フィルターに関する。
第3の発明は、有害物質を含有する気体より該有害物質を捕捉して除去する有害物質除去フィルターであって、少なくとも、二本鎖DNAと、該二本鎖DNAを保持するフィルター繊維体とからなり、前記二本鎖DNAは、前記フィルター繊維体のうち少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、固定化により該フィルター繊維体に保持されて、インターカレーションにより有害物質を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする有害物質除去フィルターに関する。
さらに好ましい態様として、第4の発明は、前記二本鎖DNAは、紫外線照射によって前記フィルター繊維体に固定化されて保持されていることを特徴とする第3の発明記載の有害物質除去フィルターに関する。
第5の発明は、前記二本鎖DNAは、シッフ塩基の生成による化学結合によって、前記フィルター繊維体に、又は前記フィルター繊維体の内部に含まれるガラスビーズに固定化されて保持されていることを特徴とする第3の発明記載の有害物質除去フィルターに関する。
第6の発明は、前記二本鎖DNAは、ゲル状態又はゲル、好ましくはアクリルアミドゲルから水分を除去して得られた多孔質体の形態にてフィルター繊維体に固定化されて保持されていることを特徴とする第3の発明記載の有害物質除去フィルターに関する。
第7の発明は、前記二本鎖DNAは、スペーサーを介してフィルター繊維体に結合されたソラーレンを二本鎖DNA間にインターカレーションすることにより前記フィルター繊維体に固定化されて保持されていることを特徴とする第3の発明記載の有害物質除去フィルターに関する。
第8の発明は、前記二本鎖DNAは、カップリング剤によって前記フィルター繊維体に固定化されて保持されていることを特徴とする第3の発明記載の有害物質除去フィルターに関する。
また、本発明は、有害物質除去フィルターの製造方法にも関する。
その一つの発明は、二本鎖DNA水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて水分を除去することにより、二本鎖DNAを遊離の状態で該フィルター繊維間に保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
二つ目の発明は、二本鎖DNAと他の高分子化合物の混合物の水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて水分を除去することにより、二本鎖DNAを該フィルター繊維体に保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
三つ目の発明は、二本鎖DNA水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて紫外線照射することにより、二本鎖DNAを前記フィルター繊維体に固定化させて保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
四つ目の発明は、二本鎖DNAと他の高分子化合物の混合物の水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて紫外線照射することにより、二本鎖DNAを前記フィルター繊維体に固定化させて保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
五つ目の発明は、二本鎖DNAを、シッフ塩基の生成による化学結合により、フィルター繊維体に、又はフィルター繊維体の内部に含まれるガラスビーズに固定化させて保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
六つ目の発明は、スペーサーを介してフィルター繊維体に結合されたソラーレンを二本鎖DNA間にインターカレーションすることにより、該二本鎖DNAを前記フィルター繊
維体に固定化させて保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
七つ目の発明は、二本鎖DNAを、水及びゲル形成物質と共にゾル状態でフィルター繊維体内に浸透させ、次いで乾燥、場合により凍結乾燥により水分を除去することにより、二本鎖DNAをゲル状態又はゲルから水分を除去して得られた多孔質体の形態にて該フィルター繊維体に保持させることを特徴とする有害物質除去フィルターの製造方法に関する。
上記の各発明において、前記有害物質は、代表的にはダイオキシン類である。
また、本発明は、有害物質除去フィルターを用いた装置、器具、用品等に関する。具体的には、
一つ目の発明は、第1ないし第8の発明のうちいずれか1つの発明記載の有害物質除去フィルターが備えられたマスク類に関する。
二つ目の発明は、第1ないし第8の発明のうちいずれか1つの発明記載の有害物質除去フィルターが備えられた防毒マスクに関する。
三つ目の発明は、調温又は調温調湿された気体を使用する電気・電子機器において、該気体の流通路に装備される気体濾過装置であって、第1ないし第8の発明のうちいずれか1つの発明記載の有害物質除去フィルターを備えてなることを特徴とする気体濾過装置に関する。
四つ目の発明は、空気又は加熱された空気が機器外に流出し又は機器内に流入するか若しくは機器内部を流通する電気・電子機器において、該空気の流出口、流入口又は流通路に装備される空気濾過装置であって、第1ないし第8の発明のうちいずれか1つの発明記載の有害物質除去フィルターを備えてなることを特徴とする空気濾過装置に関する。
五つ目の発明は、第1ないし第8の発明のうちいずれか1つの発明記載の有害物質除去フィルターが備えられた焼却炉の集塵又は除塵用フィルター装置に関する。
とりわけ、本発明は、有害物質除去フィルター装備の紙巻タバコ、タバコホルダーに関する。すなわち、
そのうちの一つの発明は、吸口側の端部にフィルター部が設けられた紙巻タバコであって、
該フィルター部の内部には、少なくとも、二本鎖DNAと、該二本鎖DNAを保持するフィルター繊維体とからなる有害物質除去フィルターが充填されており、前記二本鎖DNAは、前記フィルター繊維体のフィルター繊維間に遊離の状態で保持されて、インターカレーションによりダイオキシン類を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする紙巻タバコに関する。
二つ目の発明は、吸口側の端部にフィルター部が設けられた紙巻タバコであって、
該フィルター部の内部には、少なくとも、二本鎖DNAと、ポリアクリル酸ナトリウムと、該二本鎖DNA及び該ポリアクリル酸ナトリウムを保持するフィルター繊維体とからなる有害物質除去フィルターが充填されており、前記二本鎖DNAは、該二本鎖DNA及び該他の高分子化合物の混合物の形態にて前記フィルター繊維体に保持されて、インターカレーションによりダイオキシン類を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする紙巻タバコに関する。
三つ目の発明は、一方側より紙巻タバコを挿入し得るタバコホルダーの内側には、少なくとも、二本鎖DNAと、該二本鎖DNAを保持するフィルター繊維体からなる有害物質除去フィルターが充填されており、前記二本鎖DNAは、前記フィルター繊維体のフィルター繊維間に遊離の状態で保持されて、インターカレーションによりダイオキシン類を捕捉し得るものとなっていることを特徴とするタバコホルダーに関する。
【発明の効果】
【0005】
大気中の、又は喫煙時においてタバコから発生する有害物質、例えばダイオキシン類を、二本鎖DNAを用いて効果的に除去し得る方法及び有害物質を除去し得るフィルターが提供され、該フィルターは、例えばタバコ、タバコホルダー等の喫煙具、マスク類、防毒
マスク、調温又は調温調湿された気体を使用する電気・電子機器、例えばエアコン、ファンヒーター、加湿器等に装備される気体濾過装置、空気又は加熱された空気が機器外に流出し又は機器内に流入するか若しくは機器内部を流通する電気・電子機器、例えば電気掃除機、ドライヤー、空気清浄機等に装備される空気濾過装置、マイナスイオン発生機、焼却炉の集塵・除塵用フィルター装置、煙突、自動車のマフラー等において好適に実用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面の簡単な説明
図1は、二本鎖DNA粉末が散布されるフィルター繊維体を示した図であり、図2は、図1の部分拡大図であり、図3は、シッフ塩基の生成による化学結合によりセルロース繊維に二本鎖DNAを固定化し、本発明の有害物質除去フィルターを得る工程を示した図であり、図4は、シッフ塩基の生成による化学結合によりガラスビーズに二本鎖DNAを固定化する工程を示した図であり、図5は、図4に示す工程により得られた、二本鎖DNAが固定化されたガラスビーズを、フィルター繊維体に保持させてなる本発明の有害物質除去フィルターを示した図であり、図6は、スペーサーを介してフィルター繊維体に結合されたソラーレンを示した図であり、図7は、ソラーレンが用いられた本発明の有害物質除去フィルターの模式図であり、図8は、二本鎖DNA水溶液に浸漬されたフィルター繊維体を示した図であり、図9(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたタバコの斜視図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図であり、図10(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたタバコホルダーの斜視図であり、(b)は(a)のB−B線における断面図であり、図11(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたマスクの分解斜視図であり、(b)は該マスクの側面図であり、図12(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたエアコンの斜視図であり、(b)はエアコンに備えられた本発明のフィルターの斜視図であり、図13は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられた防毒マスクの斜視図である。
【0007】
発明を実施するための最良の形態
本発明で用いるDNAは、螺旋型を有する二本のポリヌクレオチド鎖(二重螺旋)からなり、例えばサケ、ニシン、タラ等の魚類の白子(精巣)から得られるDNA、もしくはウシ、ブタ、ニワトリ等の哺乳動物もしくは鳥類の胸腺から得られるDNAが好ましい。二本鎖DNAは、二本のポリヌクレオチド鎖の糖−リン酸骨格から、構造的相補性を有する平面的な塩基同士が螺旋の軸に対して垂直に、らせんの中央部に向かって突出し合い、水素結合で結合している。DNAの二本鎖の塩基対と塩基対の間には、B型構造の場合、幅約1.1nm、高さ0.34nmの隙間があり、平面構造を有する小分子はこの隙間に入り込むことが可能であり、これをインターカレーションと呼ぶ。この現象は小分子の電荷や疎水性により促進される場合がある。本発明者らは、ダイオキシン類などの人間にとっての有害な物質は複数のベンゼン環からなるものが多く、平面構造を有することから、二本鎖DNAを利用して、大気中からダイオキシンや、または喫煙時にタバコから発生する有害物質をもより効果的に除去することが可能であることを見出した。
本発明における有害物質除去フィルターは、かかる二本鎖DNAの有する特性が利用されたものであり、少なくとも、二本鎖DNA及び該二本鎖DNAを保持し得るフィルター繊維体からなる。したがって、ダイオキシン類等有害物質を含有する気体が本発明の有害物質除去フィルターの二本鎖DNAと接触すると、有害物質は該二本鎖DNAにインターカレーションすることによって捕捉され除去され得る。
なお、本発明において使用されるフィルター繊維体とは繊維の集合体を意味するが、必ずしも繊維に限定されず、形状が繊維に類似し、二本鎖DNAを保持し得る能力があり、かつ有害物質を含有する気体が透過出来るものであれば何であってもよい。好ましくは、例えば紙等のセルロース繊維、ガラス繊維、天然繊維、合成繊維、例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はナイロン樹脂、ハニカム等が挙げられる。
【0008】
本発明の有害物質除去フィルターは、二本鎖DNAがフィルター繊維体のうち、少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、遊離の状態、すなわち二本鎖DNAが複数のフィルター繊維間を移動し得る自由の状態でフィルター繊維間に保持されてなる態様をとれば十分な有害物質除去効果を奏するが、フィルター繊維体の全体にわたって二本鎖DNAが保持されていてももちろん構わない。本発明においては、二本鎖DNAがフィルター繊維体から脱落しない状態で存在していれば、該二本鎖DNAはフィルター繊維体に保持されていると言うものとする。また、使用される二本鎖DNAの形態としては特に制限されず、粉末、繊維状又はフィルムの形態が挙げられる。
【0009】
二本鎖DNAを遊離の状態でフィルター繊維間に保持させる方法は特に制限されず、種々の態様が挙げられる。例えば図1に示すように、動物組織から抽出・精製した後、凍結乾燥等により粉末、繊維状又はフィルムの形態とした二本鎖DNA1の所定量を、使用するフィルター繊維体2の全体にわたってほぼ均等となるように直接に散布するか、或いはまぶす等により接触させ、フィルター繊維体2の繊維間に保持させる方法が挙げられる。かようにフィルター繊維体2に保持された二本鎖DNA1は、図1の部分拡大図である図2に示すように、フィルター繊維体2を構成する複数の繊維2’の間において、該繊維間から脱落してしまうことなく保持されている。
【0010】
また本発明の有害物質除去フィルターは好ましくは、二本鎖DNAが、フィルター繊維体のうち、少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、該二本鎖DNAと他の高分子化合物の混合物の形態にて該フィルター繊維体に保持されてなる態様である。他の高分子化合物を併用することによって、水分の除去後には、二本鎖DNAはフィルター繊維体に、二本鎖DNAが単独でフィルター繊維体に保持されるよりもより強く保持される。したがって、本発明の有害物質除去フィルターの使用中において、二本鎖DNAがフィルター繊維体から剥離してしまうおそれがより低く、長期間の使用においても安定した有害物質の除去効果を発揮し得る。使用される高分子化合物は二本鎖DNAの有する有害物質除去効果に悪影響を与えず、かつ二本鎖DNAと混合され得、フィルター繊維体に対して物理的な力により、例えば分子間力、静電気力により、又は化学的結合により、例えば共有結合、イオン結合、配位結合により、もしくはそれら両方の結合によって付着し得るものであれば何であっても良く、アクリル酸塩、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等や、セルロース類、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩類等が挙げられる。
【0011】
また本発明の有害物質除去フィルターは、二本鎖DNAが、フィルター繊維体のうち、少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、該フィルター繊維体に固定化されて保持されてなる態様も好ましく、かかる態様においては、二本鎖DNAがフィルター繊維に固定化されることによってより良く保持される為、二本鎖DNAがフィルター繊維体からより脱落しにくくなる。したがって、かような本発明の有害物質除去フィルターは、長時間の使用によっても、二本鎖DNAがフィルター繊維体から脱落して有害物質を除去する効果が低下してしまうおそれが極めて低いという効果を奏する。
【0012】
前述の、二本鎖DNAがフィルター繊維体に固定化されて保持されてなる態様の一つとして、二本鎖DNAが紫外線照射によってフィルター繊維体に固定化されて保持されている有害物質除去フィルターが挙げられ、かかる態様において、紫外線は好適には250nmないし270nmの範囲内の波長にて二本鎖DNAに照射される。
【0013】
別の態様として二本鎖DNAは、シッフ塩基の生成による化学結合によって前記フィルター繊維体に固定化されて保持されている有害物質除去フィルターも挙げることが出来る。例えば、フィルター繊維体としてセルロース繊維に二本鎖DNAを固定化し、本発明の
有害物質除去フィルターを得る工程を示すところの図3に示すように、セルロース繊維(I)にNaIO4を、25℃にて1時間作用させ(a)、セルロース分子中の一部がアル
デヒド化されたセルロース繊維(II)を得た後、5mg/mLの二本鎖DNAを添加して80℃にて8時間さらに作用させ(b)、二本鎖DNAがセルロース繊維に固定化されて保持されてなる有害物質除去フィルター(III)を得ることが出来る。また、シッフ塩基の生成による化学結合によって二本鎖DNAが固定化された有害物質除去フィルターの別の例として、二本鎖DNAがあらかじめシッフ塩基の生成による化学結合によってガラス表面に固定化されたガラスビーズが、フィルター繊維体に保持されてなる態様を挙げることも出来る。二本鎖DNAをガラスビーズに固定化する工程は、図4に示すように、二本鎖DNAに、NaIO4を25℃にて3時間作用させ(a)、アルデヒド化された二
本鎖DNAを得、次に該アルデヒド化された二本鎖DNAに、アミノ化されたガラスビーズを25℃にて3時間作用させて(b)得られた中間体に対して、NaBH3CNを添加
し6時間反応させることによって(c)行われる。結果として得られた、二本鎖DNAが固定化されたガラスビーズは、図5に示すように、フィルター繊維体のフィルター繊維間に、例えば遊離の状態で保持されることによって、本発明の有害物質除去フィルターを構成する。
【0014】
二本鎖DNAがフィルター繊維体に固定されて保持されてなる他の態様として挙げられるのは、二本鎖DNAが、ゲル状態又はゲルから水分を除去して得られた多孔質体の形態にてフィルター繊維体に固定化されて保持されてなる有害物質除去フィルターである。該フィルターは、例えば二本鎖DNA水溶液にフィルター繊維体を浸漬し、該水溶液にポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤を添加してゲル状態と為した後に、該フィルター繊維体をゲルから引き上げるか、又は引き上げた後に該フィルター繊維体に付着したゲルから水分を除去して、多孔質体の形態と為すことによっても得ることも出来るし、また、二本鎖DNAを水及びゲル形成物質、例えばアクリルアミド又はシリカゲル等と共にゾル状態と為し、フィルター繊維体を該ゾル中に浸漬するか或いはフィルター繊維体に塗布、噴霧等して付着させた後、乾燥又は凍結乾燥によりゲル状態と為すか、又はさらに水分を除去して多孔質体の形態と為すことにより得ることも出来る。ゲル形成物質としては、他にゼラチン、寒天等が挙げられる。
【0015】
二本鎖DNAをフィルター繊維体に固定化して保持させてなるより好ましい態様の一つは、二本鎖DNAが、スペーサーを介してフィルター繊維体に結合されたソラーレンを二本鎖DNA間にインターカレーションすることにより該フィルター繊維体に固定化されて保持されてなる有害物質除去フィルターである。例えば、図6に示すように、ソラーレン(X部分)がスペーサーとしてのポリアルキレン基(Y部分、nは1以上の整数である)に結合し、さらに該ポリアルキレン基が、少なくとも一部がリン酸化処理されたフィルター繊維体に結合された構造において、二本鎖DNAに前記ソラーレンをインターカレーションして捕捉することにより構成される態様が挙げられる。かかる態様において、ソラーレンは平面構造を有している為に、図7に示すように、二本鎖DNAの塩基対aと塩基対bの間の隙間にインターカレーションすることによって該二本鎖DNAに捕捉され、結果として、スペーサーであるポリアルキレン基を介して、フィルター繊維体に固定されて保持される。また、この時に、紫外線を照射することによって二本鎖DNAはソラーレンに強固に固定され得るが、紫外線に替えて可視光を照射することによっても、二本鎖DNAはソラーレンに強固に固定され得る。また、可視光を用いて固定を行えば、紫外線を用いて固定する場合とは異なり、二本鎖DNAが乾燥していなくとも、例えば水中においても二本鎖DNAをソラーレンに十分強く固定することが出来る為、紫外線を用いた場合と比較して固定化の条件が比較的制約を受けない。ソラーレンが用いられた本発明のフィルターにおいて、ダイオキシン類等の有害物質は、図7に示すように、二本鎖DNAの塩基対と塩基対の間の複数の隙間のうち、ソラーレンがインターカレーションしている隙間以外の隙間にインターカレーションすることによって、捕捉、除去される。かかる態様におい
て使用されるスペーサーは、ポリアルキレン基の他、ポリエチレングリコール基であっても構わない。
【0016】
本発明の有害物質除去フィルターは、二本鎖DNAがカップリング剤によりフィルター繊維体に固定化されて保持されてなる態様であっても良い。本有害物質除去フィルターは、二本鎖DNAをシリカゲル、シランカップリング剤、及び必要に応じて添加剤と共に混合して水溶液又は分散液の形態とし、該水溶液又は分散液に支持体を浸漬するか或いはフィルター繊維体に塗布、噴霧等して該繊維体内に浸透させた後、水分を除去することにより得ることが出来る。かかる態様は、主として無機材料からなるフィルター繊維体と有機材料である二本鎖DNAをより強固に保持させる場合において特に効果的である。好ましいカップリング剤としては、例えばシランカップリング剤が挙げられる。
【0017】
本発明の有害物質除去フィルターは、二本鎖DNA水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて水分を除去することにより、二本鎖DNAを遊離の状態で該フィルター繊維間に保持させることによっても得ることが出来る。例えば、二本鎖DNA水溶液を刷毛等でフィルター繊維体に塗布した後に室温において又は温風若しくは加熱器を用いて好ましくは60℃以下で乾燥しても本発明の有害物質除去フィルターが得られるし、又は図8に示すように、適当な濃度の二本鎖DNA水溶液3にフィルター繊維体4を適当な時間の間浸漬し、二本鎖DNA水溶液3から引き上げた後に好ましくは二本鎖DNAが熱変性を起こさない60℃以下の条件にて乾燥することによっても得られる。
【0018】
また、本発明の有害物質除去フィルターは、二本鎖DNA水溶液をフィルター繊維体内に浸透させた後において、又は二本鎖DNAと他の高分子化合物の混合物の水溶液をフィルター繊維体内に浸透させた後において、さらに紫外線照射によって二本鎖DNAをフィルター繊維体に固定させて保持させる方法をとっても得られる。
【0019】
本発明で処理可能な有害物質は多岐にわたるが、二本鎖DNAへのインターカレーションを利用することから、特に平面的な立体構造を有する有機化合物、例えば芳香族環を有する化合物を好ましく処理することができる。特にジベンゾ−p−ジオキシン(DD)、ジベンゾフラン(DF)、ビフェニル(BP)、ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDDS)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFS)、コプラナーPCB等のダイオキシン類の処理に本発明は非常に有効である。
【0020】
本発明の有害物質除去フィルターは、種々の製品、例えばタバコ、タバコホルダー等の喫煙具、マスク類、防毒マスク、焼却炉の集塵・除塵用フィルター装置、煙突、自動車のマフラー、マイナスイオン発生機等において好適に備えることが可能である。また、調温又は調温調湿された気体を使用する電気・電子機器において、該気体の流通路に装備される気体濾過装置においても好適に使用され得る。調温又は調温調湿された気体を使用する電気・電子機器は、例えばエアコン、ファンヒーター、加湿器等が挙げられる。かかる電気・電子機器に装備される気体濾過装置は、該機器に取り込まれた気体が温度調節又は温度調節及び湿度調節される箇所から該機器より流出されるまでの間のいずれかの箇所において、例えばエアコンの場合、該エアコン内部にて所定の温度に調節された気体が、エアコン内部から流出される箇所において設置される。さらに、気体濾過装置はフィルターを含んだ構成をなし、これによって該装置を通過する気体に含まれる埃、塵は除去され、清浄な気体となって機器外へと流出される。本発明の有害物質除去フィルターはまた、空気又は加熱された空気が機器外に流出し又は機器内に流入するか若しくは機器内部を流通する電気・電子機器において、該空気の流出口、流入口又は流通路に装備される空気濾過装置においても使用され得る。冷却器、空冷、かかる電気・電子機器は、空気清浄機、電気掃除機、ドライヤー、自動車のエンジンの冷却装置等が挙げられる。かかる機器に装備される空気濾過装置はフィルターを備えてなる構成を為し、機器内に取り込まれた空気又は
加熱された空気は該装置を通過する時に濾過され、埃、ゴミ類が除去された状態となる。空気濾過装置は、例えば電気掃除機においては、埃、ゴミ類と共に吸引された空気が、機外へと流出されるまでの間のいずれかの箇所において設置され、該空気に含まれる埃、ゴミ類は、空気濾過装置を通過する時にフィルターにより除去される。
【0021】
上述したように、本発明の有害物質除去フィルターは二本鎖DNAをフィルター繊維体に保持させてなるが、保持されるべき二本鎖DNA量は、存在する有害物質の濃度に応じて適宜決定されてよい。例えばダイオキシン類は大気中に10-12g/m3のオーダーで存在している為に、フィルター繊維体に保持された二本鎖DNAは、該フィルター繊維体のうち、有害物質を含有する気体が透過する領域の容積(m3)あたり、少なくとも10-9
gのオーダー以上であれば、十分にダイオキシン類を除去し得る。
本発明の有害物質除去フィルターはまた、二本鎖DNA及びフィルター繊維体の他に、用途に応じて種々の添加剤、例えば着色剤、消臭剤等をも共に用いられていても構わない。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
本発明の有害物質除去フィルターを用いたタバコの一態様を図9(a)及び(b)に示す。図9(a)はタバコ5の斜視図を示し、図9(b)は、(a)のA−A線における断面図である。タバコ5は、その吸口部6内に化学又は天然繊維層7及び隣接して、化学又は天然繊維層7に二本鎖DNA8が遊離状態で保持された有害物質除去フィルター9が設けられている。有害物質除去フィルター9の存在により、喫煙によって生じるナフタレン等の有害物質は二本鎖DNA8により効果的に捕捉され、減少された上で人体に吸収される為に健康保持の面において非常に好ましい。のみならず、タバコ独特の風味は有害物質除去フィルター9の影響により低下することは少なく、嗜好品としての品質は損なわれない。
【0023】
実施例2
本発明の有害物質除去フィルターを用いたタバコホルダーの一態様を図10(a)及び(b)に示す。図10(a)はタバコホルダー10の斜視図を示し、図10(b)は、(a)のB−B線における断面図である。タバコホルダー10は、タバコ挿入口11、吸口12とを有する。そしてタバコホルダー10は、その内部において、二の化学又は天然繊維層13が配置され、その間には、化学又は天然繊維層14と該繊維層14に遊離状態で保持された粉末状態の二本鎖DNA15とが有害物質除去フィルター16を形成して充填された構造をなしている。タバコをタバコ挿入口11に挿入し、そして喫煙した場合、生じるナフタレン等の有害物質は、有害物質除去フィルター16に保持された二本鎖DNA15により効果的に捕捉され、減少された上で人体に吸収される為に健康上においてより好ましい。
【0024】
実施例3
本発明の有害物質除去フィルターをガーゼとして用いたマスクの一態様を図11(a)及び(b)に示す。図11(a)はマスク17の分解斜視図を示し、図11(b)はマスク17の側面図である。マスク17は、耳紐18、二のガーゼ19及び該二のガーゼ19の間に配置された、本発明の有害物質除去フィルターとしての有害物質除去ガーゼ20からなる構造を為し、有害物質除去ガーゼ20は、ガーゼ19と同様の材質のガーゼに二本鎖DNAを紫外線照射により固定せしめてなる。以上のごとく構成されたマスク17を外出時に着用すれば、アレルギー症状を引き起こし易い花粉の人体への吸収が防止されるだけでなく、有害物質除去ガーゼ20に保持された二本鎖DNAが、外気中に浮遊する有害
微生物、ダイオキシン類等の有害物質を非常に有効に捕捉し、もって人体への吸収をより良好に防止し得る。
【0025】
実施例4
本発明の有害物質除去フィルターをエアフィルターとして用いたエアコンを図12(a)に示す。図12(a)はエアコン21の斜視図を示し、図12(b)はエアコン21に使用された有害物質除去フィルター22の斜視図である。また有害物質除去フィルター22は、エアコンに使用される従来のフィルターに二本鎖DNA23をシランカップリング剤を用いて保持せしめてなる構造を有している。エアコン21を使用することによって、室内に浮遊している埃等が有害物質除去フィルター22に捕捉、除去される他、室外から入り込む有害微生物、ダイオキシン類等の有害物質をも有害物質除去フィルター22により有効に除去される為、室内の空気を清浄な状態に保つことができる。
【0026】
実施例5
また、本発明の有害物質除去フィルターを用いた防毒マスクの一態様として、防毒マスク24を斜視図として図13に示す。防毒マスク24は、マスク面体25、ヘッドバンド26、フィルター収納枠27及び二本鎖DNAがHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターに紫外線照射によって保持されてなり、フィルター収納枠27内に収納されている有害物質除去フィルター28からなる。微粒子の捕捉能力が高いHEPAフィルターに二本鎖DNAをさらに保持させることによって有害物質の除去効果がさらに高まり、例えば有毒ガスが充満しやすい火災現場等においては、防毒マスク24を着用することにより、人体への有毒ガスの吸収がより良好に防止され得る。
【0027】
また、本発明の有害物質除去フィルターの有害物質除去効果を調べる為に、以下の試験を行った。
【0028】
試験例1
本発明の有害物質除去フィルター及び従来のフィルターをそれぞれ用いたタバコを喫煙した場合において、発生する各種有害物質の除去効果に関する実験を行った。
i)タバコの作製
試作例1:従来のタバコ用フィルター繊維層を二本鎖DNA及びポリアクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液に10秒間浸漬し、その後該水溶液から引き上げ、40℃にて乾燥させた。かように作成された本発明の有害物質除去フィルターをタバコ用のフィルターとして用いて、本発明のResearch Cigarette 2R4F(商品名、米国、ケンタッキー大学)タバコAを製造した。
試作例2:従来のタバコ用フィルター繊維層を二本鎖DNA及びポリアクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液に10秒間浸漬し、その後該水溶液から引き上げ、40℃にて乾燥させた。かように作成された本発明の有害物質除去フィルターを活性炭と共にタバコ用のフィルターとして用いて、本発明のResearch Cigarette 2R4F(商品名、米国、ケンタッキー大学)タバコBを製造した。
試作例3:従来のタバコ用フィルター繊維層のみをタバコのフィルターに用いて、Research Cigarette 2R4F(商品名、米国、ケンタッキー大学)Cを製造した。
試作例4:従来のタバコ用フィルター繊維層及び活性炭をタバコのフィルターに用いて、Research Cigarette 2R4F(商品名、米国、ケンタッキー大学)Dを製造した。
ii)喫煙方法
HamburgII自動喫煙装置に、上記で得られたタバコA、B、C及びDのそれぞれの主流煙(空気:タバコ煙=7:3)を1puff/35ml/2秒で20本/日、計
10回喫煙させた。そして、排気された総気体に含まれる各種化学物質量を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】


表1の結果より、本発明の有害物質除去フィルターが用いられたタバコAは、従来のタバコ用フィルター繊維層が用いられたタバコC及びDと比較して、表1に示された全ての化学物質の捕捉、除去効果が上回ったことが分かる。また、本発明の有害物質除去フィルターを活性炭と共にフィルターとして用いたタバコBは、タバコAよりもさらに一層各種化学物質の除去効果が優れていることが分かった。
【0029】
試験例2
本試験例においては、本発明の有害物質除去フィルターを用い、大気中のダイオキシン類、具体的にはポリ塩化ジベンゾ−パラ−ダイオキシン(PCDDS)、ポリ塩化ジベン
ゾフラン(PCDFS)及びコプラナーPCBの除去効果に関する試験を行った。
i)エアフィルターの作製
市販の空気清浄機のエアフィルター(縦20cm×横30cm)に粉末状のDNA1000mgを、該エアフィルターの全領域にわたって均一に散布し、その後260nmの波長の紫外線を照射して二本鎖DNAを該エアフィルターに保持させ、本発明の有害物質除去フィルターを得た。
ii)測定方法
都市Tの屋外において、i)で得られた有害物質除去フィルターを取り付けた空気清浄機を稼動して該清浄機から排出される気体を採取し、該気体についてダイオキシン類の濃度を測定した。なお、ダイオキシン類の濃度測定は、「ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル」(平成12年6月 環境庁大気保全局大気規制課)にしたがって行った。
空気清浄機すなわち取り付けられた本発明のフィルターを通過する前と通過した後の大気中のダイオキシン類の毒性等量を表2に示す。
【表2】


表2の結果から、本発明の有害物質除去フィルターを通過した大気中のダイオキシン類の毒性等量は、フィルターを通過する前の大気中のダイオキシン類の毒性等量と比較して1/10程度となっており、本発明の有害物質除去フィルターが非常に優れたダイオキシン類の捕捉、除去効果を有するものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、二本鎖DNA粉末が散布されるフィルター繊維体を示した図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、シッフ塩基の生成による化学結合によりセルロース繊維に二本鎖DNAを固定化し、本発明の有害物質除去フィルターを得る工程を示した図である。
【図4】図4は、シッフ塩基の生成による化学結合によりガラスビーズに二本鎖DNAを固定化する工程を示した図である。
【図5】図5は、図4に示す工程により得られた、二本鎖DNAが固定化されたガラスビーズを、フィルター繊維体に保持させてなる本発明の有害物質除去フィルターを示した図である。
【図6】図6は、スペーサーを介してフィルター繊維体に結合されたソラーレンを示した図である。
【図7】図7は、ソラーレンが用いられた本発明の有害物質除去フィルターの模式図である。
【図8】図8は、二本鎖DNA水溶液に浸漬されたフィルター繊維体を示した図である。
【図9】図9(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたタバコの斜視図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたタバコホルダーの斜視図であり、(b)は(a)のB−B線における断面図である。
【図11】図11(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたマスクの分解斜視図であり、(b)は該マスクの側面図である。
【図12】図12(a)は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられたエアコンの斜視図であり、(b)はエアコンに備えられた本発明のフィルターの斜視図である。
【図13】図13は、本発明の有害物質除去フィルターが備えられた防毒マスクの斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1,8,15,23 二本鎖DNA 2,4 フィルター繊維体 2’ 繊維 3 二本鎖DNA水溶液 5 タバコ 6 吸口部 7,13,14 化学又は天然繊維層 9,16,22,28 有害物質除去フィルター 10 タバコホルダー
11 タバコ挿入口 12 吸口 17 マスク 18 耳紐 19 ガーゼ 20 有害物質除去ガーゼ 21 エアコン 24 防毒マスク 25 マスク面体 26 ヘッドバンド 27 フィルター収納枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含有する気体より該有害物質を捕捉して除去する有害物質除去フィルターであって、
少なくとも、二本鎖DNAと、他の高分子化合物と、該二本鎖DNA及び該他の高分子化合物を保持するフィルター繊維体とからなり、
前記他の高分子化合物は、前記二本鎖DNAの有する前記有害物質除去効果に悪影響を与えず、かつ前記二本鎖DNAと混合され得、前記フィルター繊維体に対して物理的な力又は化学的結合もしくはそれら両方の結合によって付着し得る高分子化合物であり、
前記二本鎖DNAが、前記フィルター繊維体のうち少なくとも有害物質を含有する気体が透過する領域において、該二本鎖DNA及び該他の高分子化合物の混合物の形態にて前記フィルター繊維体に保持されて、インターカレーションにより有害物質を捕捉し得るものとなっていることを特徴とする有害物質除去フィルター。
【請求項2】
有害物質が、二本鎖DNAへインターカレーションできる平面的な立体構造を有する芳香族化合物類である、請求項1に記載の有害物質除去フィルター。
【請求項3】
他の高分子化合物が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩類から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の有害物質除去フィルター。
【請求項4】
二本鎖DNAへインターカレーションできる平面的な立体構造を有する芳香族化合物類が、ナフタレン、アセナフチレン、アセナフテン、9H−フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ベンゾ[a]アントラセン、クリセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、インデノ[1,2,3−c・d]ピレン、ベンゾ[g,h,i]ペリレン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、トリフェニレン、ベンゾ[i]フルオランテン、及びジベンゾ[a,c]アントラセンから選ばれた1種以上である、請求項2又は3に記載の有害物質除去フィルター。
【請求項5】
二本鎖DNAへインターカレーションできる平面的な立体構造を有する芳香族化合物類が、ジベンゾ−p−ジオキシン(DD)、ジベンゾフラン(DF)、ビフェニル(BP)、ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDDS)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCD
S)及びコプラナーPCBから選ばれた1種以上である、請求項2又は3に記載の有害
物質除去フィルター。
【請求項6】
二本鎖DNAへインターカレーションできる平面的な立体構造を有する芳香族化合物類が、ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDDS)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PC
DFS)及びコプラナーPCBから選ばれた1種以上である、請求項2又は3に記載の有
害物質除去フィルター。
【請求項7】
他の高分子化合物と二本鎖DNAの混合物の水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて水分を除去することにより、前記二本鎖DNAを該フィルター繊維体に保持させることを特徴とする、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の有害物質除去フィルターの製造方法。
【請求項8】
他の高分子化合物と二本鎖DNAの混合物の水溶液をフィルター繊維体内に浸透させ、続いて250nmないし270nmの範囲内にある波長の紫外線の照射により、前記二本鎖DNAを前記フィルター繊維体に固定化させて保持させることを特徴とする、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の有害物質除去フィルターの製造方法。
【請求項9】
吸口側の端部にフィルター部が設けられた紙巻タバコであって、
該フィルター部の内部には、少なくとも、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の有害物質除去フィルターが活性炭と共に充填されていることを特徴とする紙巻タバコ。
【請求項10】
吸口側の端部にフィルター部が設けられた紙巻タバコであって、
該フィルター部の内部には、少なくとも、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の有害物質除去フィルターが充填されていることを特徴とする紙巻タバコ。
【請求項11】
一方側より紙巻タバコを挿入し得るタバコホルダーの内側には、少なくとも、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の有害物質除去フィルターが充填されていることを特徴とするタバコホルダー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−68254(P2008−68254A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210990(P2007−210990)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【分割の表示】特願2004−570884(P2004−570884)の分割
【原出願日】平成15年4月16日(2003.4.16)
【出願人】(598043054)日生バイオ株式会社 (21)
【Fターム(参考)】