説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光効率が高く、繰り返し使用時での安定性の優れた有機EL素子。
【解決手段】陽極と陰極とからなる一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が、ホスト材料50.0〜99.999重量%と、ドーパント材料0.001〜50.0重量%とからなり、前記ドーパント材料の内1種類以上は特定の9,10−ビジアリールアントラセン化合物であり、前記ホスト材料の内1種類以上はN−アリール−ベンズイミダゾリル金属錯化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面光源、表示等に使用される有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと記す)素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、表示装置の大型化に伴い占有空間の少ない平面表示素子についての要求が増大しているが、このような平面表示素子のうち一つとして有機発光ダイオードとも呼ばれる有機EL素子の技術が急速に発展しており、既に様々な試作品が発表されている。
【0003】
有機EL素子は、電子注入電極(陰極)と正孔注入電極(陽極)の間に形成された有機膜に電荷を注入すると、電子と正孔とが対を成した後、消滅しながら光を放つ素子である。プラスチックのようなフレキシブルな透明基板上にも素子を形成できるばかりでなく、プラズマディスプレイパネルや無機エレクトロルミネッセンスディスプレイに比べて低い電圧(10V以下)で駆動が可能で、また電力消耗が比較的少なく、色感に優れているという長所がある。
【0004】
さらに、有機EL素子は、緑、青、赤の3つの色を表すことができ、次世代のカラーディスプレイ素子として多くの人々の関心の対象となっている。
【0005】
有機EL素子の中でも、緑色発光を示す有機EL素子は、その有用性から様々な材料を用いた素子の研究が進められてきたが、ホスト材料の中に微量のドーパントを共蒸着などの方法によって混入させて発光層を形成し、ドーパントからの発光を得るという方法が有効な方法として検討されている。(C. W. Tang, S. A. VanSlyke, and C. H. Chen, Applied Physics Letters vol. 65, 3610 (1989))。
【0006】
また、アントラセン構造を有する有機EL素子については、例えば、特開平8−53397号公報、特開平11−87060号公報、特開2002−313573号公報、特開2003−313156号公報が知られている。
【0007】
さらに、o―(N―アリール―2―ベンズイミダゾリル)フェノール配位子を有する有機金属錯体化合物を有する有機EL素子として、例えば、特開平10−330744号公報が知られている。
【非特許文献1】C. W. Tang, S. A. VanSlyke, and C. H. Chen, Applied Physics Letters vol.65, 3610 (1989)
【特許文献1】特開平8−53397号公報
【特許文献2】特開平10−330744号公報
【特許文献3】特開平11−87060号公報
【特許文献4】特開2002−313573号公報
【特許文献5】特開2003−313156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、発光効率が高く、繰り返し使用時での安定性の優れた有機EL素子の提供にある。本発明者らが鋭意検討した結果、発光層にド-パントとして一般式[1]で示される化合物とホストとして一般式[2]で表される化合物とを含んでなる有機EL素子は、その発光効率が高く、繰り返し使用時での安定性も優れていることを見出し本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、陽極と陰極とからなる一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が、ホスト材料50.0〜99.999重量%と、ドーパント材料0.001〜50.0重量%とからなり、前記ドーパント材料内少なくとも1種類以上は下記一般式[1]で表される化合物であり、前記ホスト材料の内少なくとも1種類以上は下記一般式[2]で表される化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0010】
一般式[1]
【化3】

【0011】
[式中、R1 〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。X1〜X4 は、それぞれ独立に、O、S、C=O、SO2 、(CH2 x−O−(CH2 y、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換の脂肪族環残基を表す。ここで、xおよびyは、それぞれ独立に、0〜20の正の整数を表すが、x+y=0となることはない。R1〜R4もしくはR5〜R8は隣接した置換基同士で結合して環を形成してもよい。]
【0012】
一般式[2]
【化4】

【0013】
[式中、nは2または3を表し、Mは二価または三価の金属を表す。Gは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基を表す。Z1〜Z8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアミノ基、シアノ基、アミド基、スルホニル基、カルボニル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基を表す。ただし、Z1〜Z8は隣接した置換基同士で環を形成してもよい。]
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機EL素子用材料を用いて作成した有機EL素子は、従来に比べて低い駆動電圧で発光し長寿命であるため、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。本発明における一般式[1]で示される化合物のR1 〜R28 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。
【0016】
本発明において、ハロゲン原子としては弗素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0017】
置換もしくは未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等の炭素数1〜20の未置換直鎖状又は分枝状アルキル基の他、2−フェニルイソプロピル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、α,α−ジトリフルオロメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基等の炭素数1〜20の置換アルキル基が挙げられる。
【0018】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の未置換アルコキシル基の他、1,1,1−テトラフルオロエトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、オクチルフェノキシ基等の炭素数1〜20の置換アルコキシル基が挙げられる。
【0019】
置換もしくは未置換のアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、ナフチル基、5−メチルナフチル基、アントリル基、ピレニル基等の炭素数6〜18の置換もしくは未置換のアリール基が挙げられる。
【0020】
置換もしくは未置換の複素環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピロール基、ピラニル基、チオピラニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、イミダゾール基、ピリミジニル基、ピリジニル基、トリアジニル基、インドリニル基、キノリル基、プリニル基等が挙げられる。
【0021】
置換もしくは未置換のアミノ基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
また、隣接する置換基同士で、それぞれ互いに結合して、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等を形成しても良い。
【0023】
本発明における一般式[1]で示される化合物のX1 〜X4 は、それぞれ独立に、O、S、C=O、SO2 、(CH2x−O−(CH2y、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換の脂肪族環残基を表す。ここで、xおよびyは、それぞれ独立に、0〜20の正の整数を表すが、x+y=0となることはない。
【0024】
置換または未置換のアルキレン基としては炭素数1〜20のアルキレン基もしくはその置換体が挙げられる。
【0025】
置換または未置換の脂肪族環残基としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、4−メチルシクロヘキシル環、シクロヘプチル環等の炭素数5〜7の脂肪族環の二価の残基が挙げられる。
【0026】
1 〜X4 の置換アルキレン基又は置換脂肪族環残基の置換基としてはR1 〜R28 で示した置換基がある。X1 〜X4 の置換アルキレン基として好ましいものは、2−フェニルイソプロピレン基、ジクロロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ベンジレン基、α−フェノキシベンジレン基、α,α−ジメチルベンジレン基、α,α−メチルフェニルベンジレン基、ジフェニルメチレン基、α−ベンジルオキシベンジレン基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式[1]で表される化合物の内、好ましいものとしては、下記一般式[3]で表される化合物が挙げられる。
【0028】
一般式[3]
【化5】

【0029】
[式中、R1 〜R2 8 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。X1 〜X4 は、それぞれ独立に、O、S、C=O、SO2 、(CH2x−O−(CH2y、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換の脂肪族環残基を表す。ここで、xおよびyは、それぞれ独立に、0〜20の正の整数を表すが、x+y=0となることはない。R1 〜R4 もしくはR5 〜R8 は隣接した置換基同士で結合して新たな環を形成してもよい。]
【0030】
さらに、上記一般式[3]で表される化合物の内、さらに好ましいものとして、下記一般式[4]で表される化合物が挙げられる。
【0031】
一般式[4]
【化6】

【0032】
[式中、R1〜R2 8 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。Y1 〜Y8 は、置換もしくは未置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素数6〜16のアリール基を表す。R1 〜R4 もしくはR5 〜R8 は隣接した置換基同士で結合して新たな環を形成してもよい。]
ここでいうアルキル基およびアリール基の具体例は、前記のR1 〜R2 8 で記述したアルキル基およびアリール基が挙げられる。
【0033】
この化合物の中で、一般式[1]、[3]、[4]で表されるような芳香族環を有している置換基を持つ化合物、もしくは一般式[1]、[3]、[4]のR1 〜R8 の隣接する置換基同士で環を形成している化合物は、ガラス転移点や融点が高くなり電界発光時における有機層中、有機層間もしくは、有機層と金属電極間で発生するジュール熱に対する耐性(耐熱性)が向上するので、有機EL素子の発光材料として使用した場合、高い発光輝度を示し、長時間発光させる際にも有利である。本発明の化合物は、これらの置換基に限定されるものではない。
【0034】
以下に、本発明の一般式[1]、[3]、[4]の化合物の代表例を、表1に具体的に例示するが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【0035】
【表1】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】
次に本発明における一般式[2]で示される化合物のMは二価または三価の金属を表す。
【0047】
Mの具体例としては、二価の金属である場合にはBe,Mg,Sr,Ba,Ca,Zn,Cd,Hg,Pd,Cu等が挙げられ、三価の金属である場合にはAl,Ga,In,Tl等が挙げられる。
【0048】
本発明における一般式[2]で示される化合物のGは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基を表す。ここでいうハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基の具体例は、前記のR1 〜R2 8 で記述したハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基が挙げられる。
【0049】
本発明における一般式[2]で示される化合物のZ1〜Z8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアミノ基、シアノ基、アミド基、スルホニル基、カルボニル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基である。ここでいうハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基の具体例は、前記のR1 〜R2 8 で記述したハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基が挙げられる。
【0050】
以下に本発明の一般式[2]の化合物の代表例を、表2に具体的に例示するが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【0051】
【表2】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機化合物薄膜を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために正孔注入材料、正孔輸送材料もしくは電子注入材料、電子輸送材料を含有しても良い。電子注入材料とは陰極から電子を注入され得る能力を持つ材料であり、電子輸送材料とは注入された電子を発光層へ輸送する能力を持つ材料である。正孔注入材料とは、陽極から正孔を注入され得る能力を持つ材料であり、正孔輸送材料とは、注入された正孔を発光層へ輸送する能力を持つ材料である。
【0066】
多層型としては、陽極/正孔注入帯域/発光層/陰極、陽極/発光層/電子注入帯域/陰極、陽極/正孔注入帯域/発光層/電子注入帯域/陰極の多層構成で積層した有機EL素子がある。
【0067】
本発明の一般式[1]で示される化合物は、固体状態において強い蛍光を持つ化合物であり、発光層内におけるドーピング材料として発光層中にて最適の割合でドーピングすることにより、高い発光効率および発光波長の選択が可能である。又、ド-ピング材料には、一般式[1]と共に一般式[1]以外の化合物を用いる事で青から赤色、さらには白色の発光を得ることができる。
【0068】
発光層には、発光材料およびドーピング材料に加えて、必要があれば正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。
【0069】
有機EL素子は、多層構造にすることによりクエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。また、必要があれば、発光材料、ドーピング材料、キャリア注入を行う正孔注入材料や電子注入材料を二種類以上組み合わせて使用することも出来る。更に、正孔注入層、発光層および電子注入層はそれぞれ二層以上の層構成により形成されていてもよく、正孔もしくは電子が効率よく電極から注入され、効率よく層中で輸送され得る素子構造が選択される。
【0070】
有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と
称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、更にはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
【0071】
陰極に使用される導電性材料としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられる。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、加熱の温度、雰囲気、真空度により制御され適切な比率が選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0072】
有機EL素子では、効率良く発光させるために、用いられる陽極、陰極のうち少なくとも一方は素子の発光波長領域において十分透明であることが望ましく、基板もまた透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性を確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。
【0073】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング等の湿式成膜法の何れの方法でも適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、各層は適切な膜厚に設定する必要がある。膜が厚すぎる場合には、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり、その結果として効率が悪くなる。また、膜が薄すぎる場合には、ピンホール等が発生し、電圧を印加しても十分な発光輝度が得られない。通常用いられる膜厚としては5nmから10μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲が更に好ましい。
【0074】
湿式成膜法の場合には、各層を形成する材料をクロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解あるいは分散することにより有機化合物薄膜を形成する。
【0075】
乾式あるいは湿式成膜法から調製される何れの薄膜においても、成膜性の向上、ピンホール防止等の目的の為に適切な樹脂あるいは添加剤を使用してもよい。この様な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、
ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げることができる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0076】
正孔注入材料としては、正孔を注入する能力を持ち、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。具体的な例としては、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
電子注入材料としては、電子を注入する能力を持ち、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層または正孔注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。例としては、キノリン金属錯体、オキサジアゾール、ベンゾチアゾール金属錯体、ベンゾオキサゾール金属錯体、ベンゾイミダゾール金属錯体、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、正孔注入材料に電子受容性物質、電子注入材料に電子供与性物質を添加することによる増感も可能である。
【0079】
本発明により得られた有機EL素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上の為に素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル等を封入して素子全体を保護することも可能である。
【0080】
本発明の有機EL素子からの発光を効率よく取り出すためには、発光を取り出す面の基板の材質が充分透明であることが望ましく、具体的には素子からの発光の発光波長領域における透過率が50%以上、好ましくは90%以上であることが望ましい。これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラスの他、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等の透明性ポリマーが推奨される。
【0081】
以上述べたように、本有機EL素子は、低駆動電圧と高輝度を示す緑色発光素子である。故に、本有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。本例では、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。
【0083】
実施例1
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を、窒素ガスを用いて乾燥し、さらにUV/オゾン洗浄した後、蒸着装置の基板ホルダーに固定した後、蒸着槽を3×10-6Torrに減圧した。まず、ITO透明電極上に、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(3”−メチルフェニル)アミノ〕ビフェニルを、蒸着速度0.2nm/sec で75nmの厚さに蒸着し、正孔輸送層とした。次いで、アントラセン化合物として表1の化合物3と、o―(N―アリール―2―ベンズイミダゾリル)フェノール配位子を有する有機金属錯体化合物として表2の化合物41を、異なる蒸着源から、蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに共蒸着(重量比0.5:100)し、発光層とした。次に、トリス(8−キノリノラート)アルミニウムを、蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着し、電子輸送層とした。さらにその上に、マグネシウムと銀を、蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに共蒸着(重量比10:1)して陰極とし、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。尚、蒸着は、蒸着槽の減圧状態を保ったまま実施した。作製した有機電界発光素子に、直流電圧を印下したところ、最高輝度51000cd/m2 の緑色の発光が確認された。この素子は駆動電圧5Vでの輝度が3000cd/m2であった。さらに発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命は10000時間であった。
【0084】
実施例2〜実施例18
化合物3の代わりに表3に示すアントラセン化合物を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。それぞれの素子に、乾燥雰囲気下、直流電圧を印下したところ、青緑〜緑の発光が確認された。これらの素子における、最高輝度および駆動電圧5Vでの輝度および発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表3に示す。これらの素子はいずれも、駆動電圧5Vでの輝度が2000cd/m2以上であり、発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命は8000時間以上であった。
【0085】
【表3】

【0086】
比較例1〜比較例2
化合物3の代わりに下記に示すC545T(比較例1)、ジメチルキナクリドン(比較例2)を用いる以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。それぞれの素子に、乾燥雰囲気下、直流電圧を印下したところ、青緑〜緑の発光が確認された。これらの素子における、最高輝度および駆動電圧5Vでの輝度および発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命を表4に示す。これらの素子はいずれも、駆動電圧5Vでの輝度が100cd/m2未満であり、発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命は100時間未満であった。
【0087】
【化7】

【0088】
【化8】

【0089】
【表4】

【0090】
実施例19〜実施例35
化合物41の代わりに表5に示すo―(N―アリール―2―ベンズイミダゾリル)フェノール配位子を有する有機金属錯体化合物を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。それぞれの素子に、直流電圧を印下したところ、青緑〜緑の発光が確認された。これらの素子における、最高輝度および駆動電圧5Vでの輝度および発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表5に示す。これらの素子はいずれも、駆動電圧5Vでの輝度が2000cd/m2以上であり、発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命は8000時間以上であった。
【0091】
【表5】

【0092】
比較例3〜5
化合物41の代わりに公知の化合物であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq3)(比較例3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)(比較例4)、4,4’−ビス〔N−フェニル−N−(1”−ナフチル)アミノ〕ビフェニル(α−NPD)(比較例5)を用いる以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。これらの素子における、最高輝度および駆動電圧5Vでの輝度および発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命を表5に示す。これらの素子はいずれも、駆動電圧5Vでの輝度が45cd/m2未満であり、発光輝度500cd/m2で定電流駆動したときの半減寿命は95時間未満であった。
【0093】
【表6】

【0094】
以上述べた実施例から明らかなように、本発明の有機EL素子は低電圧駆動時での発光輝度の向上と長寿命化を達成することが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極とからなる一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が、ホスト材料50.0〜99.999重量%と、ドーパント材料0.001〜50.0重量%とからなり、前記ドーパント材料の内少なくとも1種類以上は下記一般式[1]で表される化合物であり、前記ホスト材料の内少なくとも1種類以上は下記一般式[2]で表される化合物である有機エレクトロルミネッセンス素子。
一般式[1]
【化1】

[式中、R1〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。X1〜X4 は、それぞれ独立に、O、S、C=O、SO2 、(CH2x−O−(CH2y、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換の脂肪族環残基を表す。ここで、xおよびyは、それぞれ独立に、0〜20の正の整数を表すが、x+y=0となることはない。R1〜R4もしくはR5〜R8は隣接した置換基同士で結合して環を形成してもよい。]
一般式[2]
【化2】

[式中、nは2または3を表し、Mは二価または三価の金属を表す。Gは水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基を表す。Z1〜Z8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアミノ基、シアノ基、アミド基、スルホニル基、カルボニル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基を表す。ただし、Z1〜Z8は隣接した置換基同士で環を形成してもよい。]