説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】電気特性が良好で、放熱効果が高い有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、照明装置、面状光源、及び表示装置を提供する。
【解決手段】透明な第1電極、前記第1電極に接して設けられる補助電極、第2電極、並びに前記第1電極および第2電極の間に配置される発光層を含む積層体と、前記積層体が設けられる支持基板と、前記積層体の前記支持基板側とは反対側から前記積層体を覆って設けられる封止基板と、前記支持基板の少なくとも一方の表面、または、前記封止基板の少なくとも一方の表面に設けられ、熱放射率が0.70以上の高熱放射性を有する放熱層とを有し、前記補助電極の電気抵抗値が、前記第1電極の電気抵抗値よりも低く、前記補助電極が、枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極と、有機発光層とを含んで構成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、電圧を印加すると、各電極から正孔および電子がそれぞれ注入され、注入された正孔と電子が有機発光層において再結合することによって発光する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、無機エレクトロルミネッセンス素子に比べると低電圧での駆動が可能であり、また高輝度で発光することが可能なので、有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置や照明装置に用いることが検討されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層からの光は、一対の電極のうちの少なくとも一方側から取出されるので、光が取出される側の電極は、透明である必要がある。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明導電膜が形成された透明導電膜付き透明板に形成され、この透明導電膜を透明電極として用いることによって、発光層からの光を有機エレクトロルミネッセンス素子の外に効率的に取出している。
【0004】
上記透明電極は、金属膜などから成る不透明な電極に比べると電気抵抗が高い。有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた装置では、発光面積が大きくなるにつれて大面積の透明電極が必要となる。大面積の透明電極を用いる場合、透明電極の抵抗が高いので、その電圧降下も大きくなり、電圧降下に起因する発光輝度のムラが無視できない程度に大きくなるという問題がある。
【0005】
上述の透明電極の電圧降下に起因する問題を解決するために、透明電極よりも電気抵抗が低い補助電極を透明電極に電気的に接続した有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面状発光装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。この面状発光装置では、電源に接続される接続端子から近い部分では前記補助電極を太くし、遠い部分では前記補助電極を細くしている。接続端子から近い部分では、太い補助電極のために電流値が高く発光強度が強い一方で、開口率が小さくなり、また、接続端子から遠い部分では、細い補助電極のために電流値が小さく発光強度が弱い一方で、開口率が大きくなるので、全体としての発光輝度のムラを抑制した面状発光装置を実現している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた場合でも、接続端子から遠い部分では電流値が小さくなるために、発光輝度のムラを十分に抑制することができなかった。また、開口率を調整することによって発光輝度のムラを抑制するので、光の利用効率が低下するという問題があった。
【0007】
また有機エレクトロルミネッセンス素子は、駆動中の温度上昇により経時的な劣化が促進されるので、結果として発光効率が低下する。そこで、発光効率の経時的な低下を抑制するために、有機エレクトロルミネッセンス素子が発する熱を素子外に放熱する方策が種々検討されており、放熱性を高める手法として、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する一部の部材に熱伝導性の高い材料を採用することが提案されている(例えば、特許文献2など)。また、有機エレクトロルミネッセンス素子の内部構造の一部に放熱膜を設けることも提案されている(例えば、特許文献3など)。
【0008】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子の内部構造の一部、例えば発光層の側面または各素子を区画する隔壁部などに放熱膜などの熱放射性の層を設けても、発光層を含む積層体との接触面積が小さく、これだけでは積層体から熱放射性の層に熱が効率的に伝達せず、有機エレクトロルミネッセンス素子に生じる熱が効率的に放熱されない。
【0009】
【特許文献1】特開2004−014128号公報
【特許文献2】特開2004−186045号公報
【特許文献3】特開2006−244847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、発光効率が高い有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、下記構成を採用した有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、及び表示装置を提供する。
【0012】
[1] 陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極である透明な第1電極、前記第1電極に接して設けられる補助電極、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極、並びに前記第1電極および第2電極の間に配置される発光層を含む積層体と、
前記積層体が設けられる支持基板と、
前記積層体の前記支持基板側とは反対側から前記積層体を覆って設けられる封止基板と、
前記支持基板の少なくとも一方の表面、または、前記封止基板の少なくとも一方の表面に設けられ、熱放射率が0.70以上の高熱放射性を有する放熱層とを有し、
前記補助電極の電気抵抗値が、前記第1電極の電気抵抗値よりも低く、
前記補助電極が、枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
[2] 前記放熱層の熱放射率が0.85以上である、上記[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
[3] 前記放熱層の熱伝導率が1W/mK以上である、上記[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
[4] 前記放熱層の熱伝導率が200W/mK以上である、上記[3]に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
[5] 前記放熱層が黒色系材料を含む、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
[6] 前記放熱層が高熱伝導性層と黒色系材料層を含む積層構造層である、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
[7] 前記高熱伝導性層が、アルミニウム、銅、銀、これらから選ばれる2種以上の合金、セラミックス材料、および高熱伝導性の樹脂からなる群より選ばれる材料で形成されてなる、上記[6]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
[8] 前記支持基板がガラス基板であり、該ガラス基板の少なくとも一方の表面に前記放熱層が設けられている、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
[9] 前記ガラス基板の前記積層体側とは反対側の表面に前記放熱層が設けられている、上記[8]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
[10] 前記ガラス基板の両表面に前記放熱層が設けられている、上記[8]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
[11] 前記ガラス基板の前記積層体側とは反対側の表面に前記放熱層が設けられ、かつ、前記ガラス基板の前記積層体側の表面に高熱伝導性を有する伝熱層が設けられている、上記[8]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
[12] 前記伝熱層が、アルミニウム、銅、銀、これらから選ばれる2種以上の合金、セラミックス材料、および高熱伝導性の樹脂からなる群より選ばれる材料で形成されてなる、上記[11]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
[13] 前記封止基板がガラス基板であり、該封止基板の少なくとも一方の表面に前記放熱層が設けられている、上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
[14] 前記第2補助電極の線幅を前記第1補助電極の線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることを特徴とする、上記[1]〜[13]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
[15] 上記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
【0027】
[16] 上記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする面状光源。
【0028】
[17] 上記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、透明電極の抵抗による電圧降下を低減し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能で、発熱除去効率が高く、発光効率が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
したがって、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明装置、バックライトとしての面状光源、フラットパネルディスプレイ等の表示装置として好ましく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、以下の説明において示す図面における各部材の縮尺は実際と異なる場合がある。
【0031】
本発明にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極である透明な第1電極、前記第1電極に接して設けられる補助電極、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極、並びに前記第1電極および第2電極の間に配置される発光層を含む積層体と、
前記積層体が設けられる支持基板と、
前記積層体の前記支持基板側とは反対側から前記積層体を覆って設けられる封止基板と、
前記支持基板の少なくとも一方の表面、または、前記封止基板の少なくとも一方の表面に設けられ、熱放射率が0.70以上の高熱放射性を有する放熱層とを有し、
前記補助電極の電気抵抗値が、前記第1電極の電気抵抗値よりも低く、
前記補助電極が、枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有することを、特徴としている。
【0032】
かかる基本的構成を有する本発明の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を、図1に示す。なお、以下の説明において、支持基板10の厚み方向の一方を上方(または上)といい、支持基板10の厚み方向の他方を下方(または下)という場合がある。この上下関係の表記は、説明の便宜上、設定したもので、必ずしも実際に有機エレクトロルミネッセンス素子が製造される工程および使用される状況に適用されるものではない。
【0033】
第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子1は、支持基板10上に、有機発光層を含む積層体20が形成されている。積層体20は、封止基板30によって全体が覆われ、封止基板30と支持基板10とが接着部40にて密封されている。このように積層体20は、封止基板30と支持基板10とによって、外界から遮断されている。支持基板10の外側の表面、すなわち、積層体20が形成される側とは反対側の表面に、放熱層60が設けられている。
【0034】
有機エレクトロルミネッセンス素子1は、素子で発生した熱を、放熱層60により支持基板10内で拡散させて均熱化を促進すると共に、放熱層60が材質的に有する高い熱放射機構により、支持基板10から外界へと熱をより積極的に逃がしている。そのため、素子の温度上昇を抑制する効果が大きい。また、放熱層60を支持基板10に付属して設ける構成を採用しており、有機エレクトロルミネッセンス素子の内部構造、例えば、有機発光層を含む積層体や積層体を区画する隔壁(バンク)などの構造設計を複雑化する必要がなく、簡素な構造の素子とすることができる。
【0035】
(基板)
有機エレクトロルミネッセンス素子1を構成する基板として、支持基板10と封止基板30がある。
支持基板10は、一方の表面に積層体20が搭載される。封止基板30は支持基板10上の積層体20を覆い、素子を封止する。
各基板を構成する材料としては、電極等を形成し、有機物の層を形成する際に変性しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板、金属板、これらを積層したものなどが用い得る。さらに、プラスチック、高分子フィルムなどに低透水化処理を施したものを用いることもできる。また、基板は、市販のものが入手可能であり、あるいは、公知の方法によって製造することもできる。支持基板10の形状としては、積層体20を搭載できる平面状の領域を有する形状であることが好適である。また、封止基板30の形状は、支持基板10と貼り合わせて、積層体20を封止できるものであればよく、図1のように箱形でもよいし、あるいは、平板状であってもよい(不図示)。
【0036】
上記支持基板10に搭載した積層体20を封止する封止基板30との間は、図1では、空隙50が設けられており、この空隙は空気などの気体層もしくは真空層(減圧層)となっている。この空隙50は気体層とすることも可能であり、樹脂を充填して樹脂層とすることも可能である。気体層の熱伝導性よりは樹脂層の熱伝導性の方が高いので、空隙50に樹脂を充填して樹脂層を形成することが、好ましい。
【0037】
また、上述のように、封止基板30を平板状とする場合では、図2に示すように、支持基板10上に搭載した積層体20の露出部分全体を覆うように樹脂層51を形成し、樹脂層51の上に平板状の封止基板30aを設置する。この場合、封止基板30aは支持基板10に平行となるように設置する。
樹脂層51を形成するための樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂およびウレタン樹脂などの1種または2種以上の複合材料などが挙げられる。また、樹脂層51は、ディスペンサー等により、ライン状塗布または間欠的塗布により樹脂液を基板上に載せ、減圧雰囲気中で、樹脂液を挟んで封止基板を支持基板に圧着させ、熱または光照射により樹脂を硬化させることにより、支持基板と封止基板との間に樹脂層を形成することができる。
【0038】
有機EL素子1において基板となり得るものとしては、上記のような材料が挙げられるが、取り扱いの容易さなどの観点からは、ガラス基板が好適である。その反面、ガラス基板は、放熱性が低い材料である。本発明にかかる有機EL素子は放熱性の向上が図れるため、ガラス基板などの放熱性が低い材料を基板として用いる場合に好適に適用され得る。
【0039】
(放熱層)
放熱層は、熱に対する2種の特性、すなわち、熱伝導性と熱放射性の内の少なくとも熱放射性の高い材料から形成される層であり、好ましくは、熱伝導性と熱放射性が双方共に高い材料で形成される層である。本明細書において、熱伝導とは、物質の移動や放射によるエネルギー輸送なしに熱が物体の高温部から低温部に移る現象をいう(岩波理化学辞典、岩波書店、1998年、第5版)。また、熱放射とは、物体から熱エネルギーが電磁波として放出される現象、あるいはその電磁波のことをいう(岩波理化学辞典、同上)。
【0040】
熱放射性の高い材料の好ましい熱放射率としては、例えば、0.70以上、より好ましくは0.85以上が挙げられる。熱を逃がすという観点から、熱放射率の上限は特に規定するに及ばない。熱放射率とは、ある温度の物質の表面から放射されるエネルギー量と、前記ある温度と同温度の黒体(あらゆる波長の電磁波を完全に吸収する理想的な物体)から放射されるエネルギー量の比率のことをいう。熱放射率は、フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)に従って測定することができる。熱放射性の高い材料としては、黒色系材料が挙げられ、黒色塗料の顔料成分などを好適に用い得る。黒色系材料としては、例えば、カーボン材料とプラスチック材料との混合材料(カーボンプラスチック)、所定の金属元素などをドーピングしたTiO、チタニアと所定の金属微粒子とが分散したコロイド、Feなどが例示される。
【0041】
熱伝導性の高い材料の好ましい熱伝導率としては、例えば1W/mK以上、より好ましくは10W/mK以上、さらに好ましくは200W/mKが挙げられる。熱を逃がすという観点から、熱伝導率の上限は特に規定するに及ばない。熱伝導率は、物体内部の等温面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量のことをいう(岩波理化学事典、同上)。熱伝導率は、例えば、ASTM D5470(American Society For Testing and D5470)の方法により測定することができる。熱伝導性の高い材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、これらから選ばれる2種以上の合金、セラミックス材料、および高熱伝導性の樹脂から選ばれる材料などが挙げられる。高熱伝導性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0042】
放熱層は、単層で形成されてもよいし、2つ以上の複数の層を有する層であってもよい。単層とする場合には、例えば、樹脂材料中に高熱伝導性の微粒子を分散させると共に、黒色系の顔料を混合し、この樹脂材料を基板に塗布して層を形成するなどの形態が挙げられる。
【0043】
また、複数の層を含む放熱層としては、例えば、高熱伝導性のシート状材料の一面または両面に、黒色系の顔料を含む塗料を塗布し、高熱伝導性シート上に高熱放射性材料の被膜を形成させた複合シートを作成し、これを基板に貼り合わせて形成することができる。また、他の形態として、高熱伝導性のシート材と、高熱放射性のシート材とを貼り合わせた複合シートを用いてもよい。高熱伝導性層および高熱放射性層は、それぞれ複数重ねて用いてもよい。
【0044】
シート状の放熱層を、基板に設ける場合、接着剤を用いて貼り付け加工してもよい。接着剤を用いる場合、アクリル系接着剤やエポキシ系接着剤などの熱伝導性の高いものが好適に用いられる。また、ガラス基板の場合、ガラスとの接着性にも優れる点で、アクリル系接着剤などの接着剤を好適に用い得る。
【0045】
(伝熱層)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、支持基板の少なくとも一方の表面に前記放熱層が設けられることを特徴としている。支持基板の一方の表面にのみ放熱層が設けられる場合、支持基板の他方の表面に熱伝導性が高い材料で形成される伝熱層を設けてもよい。
【0046】
伝熱層を形成する熱伝導性の高い材料としては、前記放熱層に用いてもよい「熱伝導性の高い材料」と同様の材料を使用することができる。
すなわち、伝熱層を構成する熱伝導性の高い材料の好ましい熱伝導率としては、例えば1W/mK以上、より好ましくは10W/mK以上、さらに好ましくは200W/mKが挙げられる。熱を逃がすという観点から、熱伝導率の上限は特に規定するに及ばない。熱伝導率は、物体内部の等温面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量のことをいう(岩波理化学事典、同上)。熱伝導率は、例えば、ASTM D5470(American Society For Testing and D5470)の方法により測定することができる。伝熱層を構成する熱伝導性の高い材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、セラミック材料、および高熱伝導性の樹脂などが挙げられる。高熱伝導性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0047】
次に、本実施形態における積層体20の構成を説明する。
まず、前記支持基板10上に陽極(第2電極)205が配置されている。この陽極(第2電極)205の上に発光部206が配置され、その上に透明な陰極(第1電極)207が配置されている。この陰極207上に、第1補助電極202と第2補助電極203とからなる補助電極204が配置されている。前記発光部206は、発光層210を必須に有しており、その他に、必要に応じて陽極205と発光層210との間に設けられる層209と、必要に応じて設けられる陰極207と発光層210との間に設けられる層とを有する場合がある。
【0048】
なお、第1の実施形態では、陽極205が第2電極であり、透明な陰極207が第1電極であるが、第1電極が陽極であり、第2電極が陰極である有機エレクトロルミネッセンス素子であっても本発明を好適に適用することができる。
【0049】
(補助電極)
第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記補助電極204は、透明な陰極(第1電極)207の表面上に配置され、前記第1電極に電気的に接続された枠状の第1補助電極202と、前記第1補助電極202の枠内に配置され、前記第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極202よりも線幅の狭い第2補助電極203とを備える。
【0050】
第1の実施形態においては、透明な陰極207の表面上に第1補助電極202及び第2補助電極203を上記のような形態で配置することにより、透明な陰極207の電圧降下を十分に抑制することができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラを十分に抑制することが可能となる。
【0051】
第1補助電極202及び第2補助電極203とからなる補助電極204の配置形態としては、例えば、図3〜図6に示す配置形態を挙げることができる。
【0052】
図3に示す配置形態においては、透明な陰極207上に形成された補助電極204は、矩形枠状の第1補助電極202aと、第1補助電極202aの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極202aに電気的に接続されている第2補助電極203aとから構成されている。前記第2補助電極203aは、前記第1補助電極202aより線幅が狭く、複数の各第2補助電極203aは互いに直角に交差した格子状に配置されている。
【0053】
また、図3に示す配置形態においては、透明な陰極207上に形成された補助電極204は、矩形枠状の第1補助電極202bと、第1補助電極202bの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極202bに電気的に接続されている第2補助電極203bとから構成されている。前記第2補助電極203bは前記第1補助電極202bより線幅が狭く、複数の各第2補助電極203bは互いに平行に配列されている。
【0054】
また、図4に示す配置形態においては、透明な陰極207上に形成された補助電極204は、矩形枠状の第1補助電極202cと、第1補助電極202cの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極202cに電気的に接続されている第2補助電極203cとから構成されている。前記第2補助電極203cは前記第1補助電極202cより線幅が狭く、複数の各第2補助電極203cはハニカム構造の各六角形の各辺を構成するように配列されている。
【0055】
さらに、図5に示す配置形態においては、透明な陰極207上に形成された補助電極204は、矩形枠状の第1補助電極202dと、第1補助電極202dの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極202dに電気的に接続されている第2補助電極203dとから構成されている。前記第2補助電極203dは線幅が前記第1の補助電極202dより狭い二種類の細線電極から構成されている。すなわち、前記第2補助電極203dは、互いに直角に交差した主幹路的な複数の第1の細線電極203d−1と、これら第1の細線電極203d−1に囲まれた領域の内部、もしくは前記第1補助電極202dと第1の細線電極203d−1とで囲まれた領域の内部に形成された第2の細線電極203d−2とから構成されている。
【0056】
図5の配置形態では、前記第1の細線電極203d−1は格子状に配置され、その格子状の各枠内に複数の第2の細線電極203d−2が格子状に配列されている。前記第2の細線電極203d−2は、通常、好ましくは、前記第1の細線電極203d−1よりも線幅がさらに狭く形成されている。
【0057】
このような補助電極の配置形態を取ることにより、発光面積がさらに大きな素子においても、本発明の効果を得ることができる。
【0058】
ここで、枠状の第1補助電極202の枠形状としては、第1補助電極202内に第2補助電極203が形成され得るものであれば、特に限定されず、例えば、矩形状、円形状等が可能である。また第1補助電極2は、光が透過する主たる領域を囲むように設けられることが好ましい。第1補助電極202の線幅は、電気抵抗および有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積に応じて適宜選択することができ、1〜50mmの範囲であることが好ましく、3〜20mmの範囲であることがより好ましい。
【0059】
第2補助電極203が設けられる前記第1補助電極202の枠内は、発光部206からの光が透過する主たる領域であるので、第2補助電極203の線幅は、光の透過を阻害しないような寸法であることが好ましい。かかる観点から、第2補助電極203を構成する細線電極の線幅(以下、「第2補助電極の線幅」という)は、光の利用効率の観点から、1〜200μmの範囲であることが好ましく、10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0060】
また、この第1の実施形態においては、前記第2補助電極203の線幅を前記第1補助電極20との線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることが好ましく、1/500〜1/20であることがより好ましい。線幅の比が前記範囲内であれば、光の利用効率を更に向上させるとともに、発光輝度のムラを更に抑制することができる傾向となる。
【0061】
このような第1補助電極202及び第2補助電極203は、透明な陰極(第1電極)207よりも電気抵抗が低い。補助電極の材料としては、通常は10S/cm以上の電気伝導度を有する導電材料が使用される。かかる導電材料の具体例としては、アルミニウム、銀、クロミニウム、金、銅、タンタル等の金属材料を挙げることができる。これらの中でも、電気伝導度の高さ、および材料のハンドリングの容易さの観点から、アルミニウム、クロミニウム、銅、銀がより好ましい。
【0062】
第1補助電極202及び第2補助電極203からなる補助電極204が透明な陰極(第1電極)207に接する面積は、第1電極207の抵抗による電圧降下を低減するという目的から、広ければ広い程良い。したがって、第1補助電極202及び第2補助電極203の材料として金属を用いた場合には、素子の発光する面積に対する補助電極204で被われる面積の割合に換算すると、補助電極204が透明な陰極(第1電極)207に接する面積は、少なくとも20%であることが好ましく、より好ましくは、30%以上である。
【0063】
他方、補助電極204は発光部206からの光を透過させる透明な陰極(第1電極)207に接して設けられるため、光をできるだけ遮断しないように、補助電極204の占有面積はできるだけ少ない方がよい。かかる観点からは、素子の発光する面積に対する補助電極204で被われる面積の割合は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0064】
これらを勘案すると、素子の発光する面積に対する補助電極204で被われる面積の割合は、20%以上であり且つ90%以下であることが好ましく、30%以上であり且つ80%以下であることがより好ましい。
【0065】
さらに、第1補助電極202及び第2補助電極203の厚みは、面抵抗が所望の値となるように適宜選択することができ、例えば10〜500nmであり、好ましくは20〜300nmであり、より好ましくは50〜150nmである。
【0066】
さらに、第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記第1補助電極202及び前記第2補助電極203が、前記透明な陰極(第1電極)207の表面のうち、発光部206側の表面上に配置されていてもよいが、前記透明な陰極(第1電極)207と、前記第1補助電極202及び前記第2補助電極203との電気的な接続をより確実にするという観点から、発光部206と反対側の表面上に配置されていることが好ましい。
【0067】
第1補助電極202及び第2補助電極203を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等により補助電極の構成材料から成る膜を形成した後に、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン形成する方法が挙げられる。
【0068】
続いて、補助電極204以外の積層体20の構成要素について、以下に詳しく説明する。
【0069】
(陽極(第2電極))
陽極(第2電極)205としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物や金属の薄膜が好適に利用でき、用いる有機層により適宜、選択して用いられる。具体的には、金属では、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属やIII−B族金属などを用いることができる。より具体的な例を示すと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、またはこれら金属を少なくとも1種類以上含む合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が挙げられる。合金の例としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。
陽極205の作製方法としては、真空蒸着法(前述した実施形態の電子ビーム蒸着法を含む)、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
また、前記有機の導電膜に用いられる材料、金属酸化物、金属硫化物、金属、およびカーボンナノチューブなどの炭素材料から成る群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む混合物から成る薄膜を陽極に用いても良い。
【0070】
陽極205には、光を反射させる材料を用いてもよく、該材料としては、仕事関数3.0eV以上の金属、金属酸化物、金属硫化物が好ましい。
【0071】
陽極205の膜厚は、電気伝導度を考慮して、適宜選択することができるが、例えば5nm〜10μmであり、好ましくは10nm〜1μmであり、さらに好ましくは20nm〜500nmである。
【0072】
また、発光層10への電荷注入を容易にするという観点から、陽極205の発光層10側の表面上に、フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性高分子、Mo酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物等の1〜200nmの層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚10nm以下の層を設けてもよい。
【0073】
(陽極と発光層との間に設けられる層)
第1の実施形態において、必要に応じて陽極と発光層との間に設けられる層209としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。
【0074】
上記正孔注入層は、陽極(第2電極)205からの正孔注入効率を改善する機能を有する層であり、上記正孔輸送層とは、正孔注入層または陽極により近い層(正孔輸送層)からの正孔注入を改善する機能を有する層である。また、正孔注入層または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を電子ブロック層と称することがある。電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0075】
(正孔注入層)
正孔注入層は、上述のように、陽極と正孔輸送層との間、または陽極と発光層との間に設けることができる。正孔注入層を構成する材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、特に制限はない。例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0076】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば、正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0077】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
【0078】
また、正孔注入層の厚みとしては、5〜300nm程度であることが好ましい。この厚みが5nm未満では、製造が困難になる傾向があり、他方、300nmを超えると、駆動電圧、および正孔注入層に印加される電圧が大きくなる傾向となる。
【0079】
(正孔輸送層)
正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
【0080】
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0081】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0082】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0083】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0084】
正孔輸送層の厚みは、特に制限されないが、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、1〜1000nm程度であることが好ましい。この厚みが前記下限値未満となると、製造が困難になる、または正孔輸送の効果が十分に得られないなどの傾向があり、他方、前記上限値を超えると、駆動電圧および正孔輸送層に印加される電圧が大きくなる傾向がある。したがって正孔輸送層の厚みは、上述のように、好ましくは、1〜1000nmであるが、より好ましくは、2nm〜500nmであり、さらに好ましくは、5nm〜200nmである。
【0085】
(発光層)
発光層210は、本実施形態においては有機発光層であることが好ましく、通常、主として蛍光または燐光を発光する有機物(低分子化合物および高分子化合物)を有する。なお、さらにドーパント材料を含んでいてもよい。本実施形態において用いることができる発光層を形成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0086】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどが挙げられる。
【0087】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体など、中心金属に、Al、Zn、BeなどまたはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体などを挙げることができる。
【0088】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0089】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0090】
(ドーパント材料)
発光層210中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加することができる。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、発光層10の厚さは、通常約20〜2000Åである。
【0091】
(発光層の成膜方法)
有機物を含む発光層210の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を基体の上又は上方に塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒の具体例としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に正孔輸送材料を溶解させる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0092】
発光材料を含む溶液を基体の上又は上方に塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
【0093】
(陰極と発光層との間に設けられる層)
前記発光層210と陰極(第1電極)207との間に、必要に応じて、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等の層211が積層される。
【0094】
上記電子注入層は、陰極(第1電極)207からの電子注入効率を改善する機能を有する層であり、上記電子輸送層は、電子注入層または陰極により近い層(電子輸送層)からの電子注入を改善する機能を有する層である。また、電子注入層もしくは電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を正孔ブロック層と称することがある。正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、ホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0095】
(電子注入層)
電子注入層は、先に述べたように、電子輸送層と陰極との間、または発光層210と陰極207との間に設けられる。電子注入層としては、発光層の種類に応じて、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは前記金属を一種類以上含む合金、あるいは前記金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、あるいは前記物質の混合物などが挙げられる。
【0096】
前記アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
【0097】
前記アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0098】
さらに、金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物、および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
【0099】
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していても良い。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0100】
(電子輸送層)
電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
【0101】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0102】
(陰極(第1電極))
陰極(第1電極)207は、透明な導電性電極であり、その材料としては、例えば導電性金属酸化物や導電性有機物などを用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZO、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用い得る。なお、陰極を2層以上の積層構造としてもよい。なお、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0103】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法(前述した実施形態の電子ビーム蒸着法を含む)、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、および金属薄膜を圧着するラミネート法等が用いられる。
【0104】
透明な陰極(第1電極)207の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができ、例えば5nm〜10μmであり、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは20nm〜500nmである。
【0105】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における、陽極205から陰極207までの層構成の組み合わせ例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
l)陽極/発光層/電子注入層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
n)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0106】
また、本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、2層以上の発光層を有していてもよく、2層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子としては、以下のq)に示す層構成を挙げることができる。
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を一つの繰り返し単位として、以下のr)に示す前記繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
r) 陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(該繰り返し単位)/(該繰り返し単位)/・・・/陰極
上記層構成p)およびq)において、陽極、電極、陰極、発光層以外の各層は必要に応じて削除することができる。
ここで、電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0107】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、本実施の形態のように基板側に陽極が配置されるのが通常であるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。
【0108】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0109】
次に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の第2の実施形態を、図7を参照して説明する。
第2の実施形態と、上述の第1の実施形態との違いは、第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では発光部206からの光を透明な陰極(第1電極)207を透過させて透明な封止基板30から外部へ出射するトップエミッション型の素子であったのに対し、第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子が発光部226からの光を透明な陽極(第1電極)225を透過させて透明な支持基板10から外部へ出射するボトムエミッション型の素子である点にある。
【0110】
第2の実施形態では、発光部226からの光を透過させる透明な第1電極が透明陽極225であり、この第1電極225の支持基板10側の表面に補助電極224が形成されている。補助電極224は、上述の第1の実施形態における補助電極204と形状、寸法、構成材料は、同一でよく、上述のように、透明な陽極(第1電極)225に接して設けられている点が異なる。
透明な陽極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物や金属の薄膜であって、透過率の高いものが好適に利用でき、用いる有機層により適宜、選択して用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)から成る薄膜や、金、白金、銀、銅、アルミニウム、またはこれらの金属を少なくとも1種類以上含む合金等、さらに導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜等が用いられる。光透過率の高さ、パターニングの容易さから、陽極としては、ITO、IZO、酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
また、第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子2では、封止基板31の外側の表面、すなわち積層体20とは反対側の表面に放熱層61が設けられている。封止基板31はガラス基板または可塑性を有するシート状の材料が用いられており、封止基板31と支持基板10とは融着されている。すなわち、図7に示すように、放熱層61を封止基板30側に設けてもよい。
なお、図7に示す素子構造においては、封止基板31と積層体20との間に空隙50aが形成されているが、この空隙50aには樹脂を充填し、樹脂層を形成することが好ましい。また、この樹脂層を形成することにより、空隙50aを気体層とする場合よりも素子の放熱が向上するので好ましい。樹脂層を形成する場合、陰極227と封止基板31との間にも介在させることが好ましい。
【0111】
上記第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記第1の実施形態と同様に、透明電極の抵抗による電圧降下を低減し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能となり、高い放熱効果を有する。前記放熱効果により、素子内の温度ムラが低減され、その結果、素子の長寿命化(信頼性向上)が期待できる。
【0112】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態およびその変形例について図8から図12を参照しつつ説明する。図8に、第3の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子3A(以下、「第3の実施形態の素子」という場合がある)の断面図を示す。図8中、第1の実施形態と同様である部材については図1と同じ符号を付し、以下、第1の実施形態と異なる点を主として説明する。
【0113】
有機エレクトロルミネッセンス素子3Aでは、支持基板の積層体側とは反対側の表面に、放熱層63が設けられている。放熱層63は、2つの層で構成されている。一方の層は、黒色塗装層(黒色系材料層)63aであり、他方の層はアルミニウム層(高熱伝導性層)63bである。図8に示すように、2層の内のアルミニウム層63bが支持基板10に接触して設けられている。有機発光層の発熱により生じた熱は、支持基板10に伝わる。支持基板10としてガラス基板のような放熱性の低い材料が用いられている場合は特に、熱が支持基板10に停滞してしまいやすい。しかし、有機エレクトロルミネッセンス素子3Aにおいては、高熱伝導性を有するアルミニウム層63bが支持基板10に接触して設けられていることにより、支持基板10およびアルミニウム層63bでの熱分布の分散化を促し、また熱を支持基板10の外部へと逃がすことを助ける。さらに、アルミニウム層63bの支持基板10側と反対側の表面は、黒色塗料を塗布して形成された黒色塗装層63aが設けられており、黒色塗装層63aに伝達された熱の外界への放射が促進される。なお、有機エレクトロルミネッセンス素子3Aは、光を遮蔽する黒色塗装層63aが支持基板に設けられているため、封止基板側から採光するトップエミッションタイプの素子である。
【0114】
放熱層63を支持基板10に設ける方法には特に制限はなく、方法の一例としては、黒色塗料をアルミニウムシートの一方の表面に塗布して、黒色塗装層63aが形成されたシートを作製し、これを支持基板10に接着剤(不図示)など用いて接着する形態が挙げられる。また、他の形態としては、支持基板10に予めアルミニウムを蒸着させておき、蒸着したアルミニウムに黒色塗料を塗布して黒色塗装層を形成する形態が挙げられる。
なお、図8に示す素子構造においては、封止基板30と積層体20との間に空隙50が形成されているが、この空隙50には樹脂を充填し、樹脂層を形成することが好ましい。
【0115】
図9に、第3の実施形態の素子の一変形例である有機エレクトロルミネッセンス素子3Bを示す。有機エレクトロルミネッセンス素子3Aでは支持基板10の一方の表面にのみ放熱層63が設けられていたが、有機エレクトロルミネッセンス素子3Bにおいては、支持基板10の両方の表面に放熱層63が設けられている。このように支持基板10の両面に放熱層63を設けることにより積層体20を熱源とする熱を、支持基板10全体へとより円滑に伝達させることができ、熱分散性をより向上させ得る。
図9に示す例では、支持基板10と放熱層63は、積層体20から外側に向かって順に(図面上、積層体20から下方に向かって順に)次の順序で構成される。
(I)アルミニウム層63b/黒色塗装層63a/支持基板10/黒色塗装層63a/アルミニウム層63b
【0116】
黒色塗装層63aとアルミニウム層63bの位置は、電極形成等の設計上の都合などにより変更し得る。例えば、図10〜13に示すような変形例が可能である。図10に示す変形例では、支持基板と放熱層は、積層体20(不図示)から順に次の順序で構成している。なお、以下、図10から図13において積層体20等の上部構成は図9と同様なので省略している。
(II)黒色塗装層63a/アルミニウム層63b/支持基板10/アルミニウム層63b/黒色塗装層63a
【0117】
さらに、下記(III)、(IV)および(V)の順に積層してもよい(不図示)。
(III)黒色塗装層63a/アルミニウム層63b/支持基板10/黒色塗装層63a/アルミニウム層63b
(IV)アルミニウム層63b/黒色塗装層63a/支持基板10/アルミニウム層63b/黒色塗装層63a
(V)アルミニウム層63b/黒色塗装層63a/支持基板10/黒色塗装層63a/アルミニウム層63b/黒色塗装層63a
放熱性の観点からは、(V)に示す順序に積層することが好ましい。
【0118】
図11に、第3の実施形態の素子のさらに他の変形例を示す。有機エレクトロルミネッセンス素子3Bでは、黒色塗装層63aおよびアルミニウム層63bの2層を含む放熱層63が設けられたが、図11に示す変形例では、アルミニウム層63bの両面に黒色塗装層63aが設けられている。このように、黒色塗装層63aを両面に設ける形態は、より放熱性を高め得るという点において、好ましい一形態である。
【0119】
図12に、第3の実施形態の素子のさらに別の変形例を示す。図12に示す変形例では、支持基板10の積層体側の表面(図12では、支持基板10の上面)には、放熱層63は設けられず、伝熱層65が設けられている。この伝熱層65は、該変形例では、アルミニウム層である。有機エレクトロルミネッセンス素子の内面側には、黒色塗装層を設けたくない場合などに採用し得る。
【0120】
図13に示す変形例では、支持基板10の積層体側の表面に黒色塗装層63aとアルミニウム層63bとの2層からなる放熱層が設けられ、支持基板10の積層体側と反対側には、黒色塗装層63a/アルミニウム層63b/黒色塗装層63aの3層からなる放熱層が設けられている。
なお、図9に示す素子構造においては、封止基板30と積層体20との間に空隙50が形成されているが、この空隙50には樹脂を充填し、樹脂層を形成することが好ましい。
【0121】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について図14を参照しつつ説明する。図14に、第4の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子4A(以下、「第4の実施形態の素子」という)の断面図を示す。図14中、第3の実施形態と同様である部材については図1と同じ符号を付し、以下、第1の実施形態と異なる点を主として説明する。
【0122】
有機エレクトロルミネッセンス素子4Aでは、放熱層63は、支持基板には設けられず、封止基板30の上面に設けられている。このように、放熱層63は封止基板側に設けることもできる。有機エレクトロルミネッセンス素子4Aは支持基板10側から採光するボトムエミッションタイプの素子となる。
なお、図14に示す素子構造においては、封止基板30と積層体20との間に空隙50が形成されているが、この空隙50には樹脂を充填し、樹脂層を形成することが好ましい。
【0123】
(有機エレクトロルミネッセンス装置)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を1または2つ以上搭載した装置である。有機エレクトロルミネッセンス装置は、例えば、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、照明装置などとすることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、素子の放熱性に優れている。そのため、輝度バラツキが少なく、高寿命な装置とし得る。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、透明電極の抵抗による電圧降下を低減し、発光輝度のムラを抑制し、均一な発光が可能である。
照明装置は高輝度であることが要求されるため、高電力を印可する要請が強く、発熱量も多くなりがちである。そのため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、照明装置として特に好適である。
【0124】
有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した有機エレクトロルミネッセンス装置を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示装置が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置するパッシブマトリックス用基板、あるいは薄膜トランジスタを配置した画素単位で制御を行うアクティブマトリックス用基板を用いればよい。さらに、発光色の異なる発光材料を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0125】
さらに、前記面状の発光装置は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0126】
以下、実施試験例、作製例を示しつつ、本発明についてより詳細に説明するが、本発明は下記の例示に限定されるものではない。
【0127】
まず、実施試験例1〜5では、放熱層を設けることによる放熱性の向上効果について検討した。
実施試験例1〜5における検証実験は、図15に示すような試験装置を用いて行った。熱源として自作のポイントヒーターを用い、ガラス、熱放射率の高い素材が被覆されたアルミニウムシートなどを用いて評価をおこなった。図15に示すように試験台80の上にホットプレート81を設け、その中央部には、円柱形状の熱伝導部83が設けられている。熱伝導部83は真鍮製であり、また、熱伝導部83の側面外周部には断熱シート82が巻かれている。熱伝導部83の上端部には試験基板保持ガラス12が設けられている。そして、試験基板保持ガラス12上に、被試験体となる試験基板15が載置される。試験基板15上面部の上方には温度センサー84が配置される。この温度センサー84を用いて当試験基板15の上面部からの放射熱を測定することによって、試験基板15の温度が測定される。
【0128】
図16に、試験基板保持ガラス12上に載置された試験基板15の平面図を示す。試験基板15上に示すA〜Kの符号は、温度センサー84による試験基板15の測定位置を示す。また、中央部の点線は、試験基板保持ガラス12の下にある熱伝導部83の上端面の透視図である。このように中央部に熱源を設け、試験基板15の一方の角部から中央部さらに対角にある他方の角部まで複数の位置を測定することにより、試験基板15の熱拡散性を測定することができる。
【0129】
各試験基板の評価は次の要領にて行った。まず、放熱効果については、最大温度(試験基板の中心部)の低下レベルを指標とした。具体的には、比較試験例1(ガラス基板のみ)における試験基板の最大温度(中心部の温度)を最大温度の最高値とし、この最高値を他の試験基板の中心部の最大温度から引いた差として求めた。最大温度が低く、最大温度の差がマイナス側に大きくなるほど熱放射性が優れることを示す。また、均熱性(熱分散性)については、各試験基板内での測定位置ごとの温度により示される温度分布を指標とした。試験基板内での温度分布に偏りが少ないほど、均熱化に優れることを示す。
【0130】
(実施試験例1)
実施試験例1として、図17に示す試験基板を用いた。実施試験例1の試験基板として、ガラス基板11(厚さ0.7mm)に、熱放射率が高い黒色塗装を施した高熱伝導性アルミニウムシートとガラス基板に接着させるための接着材からなるシート(神戸製鋼社製、商品名:コーべホーネツ・アルミ(KS750)、熱伝導率230W/mK、熱放射率0.86)を設けた基板を作製した。したがって、実施試験例1の試験基板は、試験基板保持ガラス12から順に、ガラス基板11/アルミニウム層63b/黒色塗装層63aが順次積層された積層体として構成されている。
【0131】
ホットプレートの設定温度は、比較試験例1の試験ガラス基板が90℃になる温度を基準とし、その温度になるように設定して試験基板を加熱した。測定点の温度の揺らぎが±0.2℃の範囲に収まる状態で温度が安定したと判断し、図16に示すA〜Kの位置について温度センサー84を用いて、温度を測定した。
【0132】
(実施試験例2)
試験基板として、図18に示すものを用いた点以外は、上記実施試験例1と同様にして、試験基板の熱放射性および均熱性について試験をした。実施試験例2の試験基板は、図18に示すように、ガラス基板の両面に放熱層が貼付されている。すなわち、実施試験例2の試験基板は、試験基板保持ガラス12側から順に、黒色塗装層63a/アルミニウム層63b/ガラス基板11/アルミニウム層63b/黒色塗装層63aが順次積層された積層体として構成されている。
【0133】
(実施試験例3)
試験基板として、図19に示すものを用いた点以外は、上記実施試験例1と同様にして、試験基板の熱放射性および均熱性について試験をした。実施試験例3の試験基板は、図19に示すように、ガラス基板の外面側(積層体が形成される側とは反対側)表面に放熱層が貼付され、他方、内面側表面にはアルミニウムシート(伝熱層65)が貼付されている。したがって、実施試験例3の試験基板は、試験基板保持ガラス12側から順に、アルミニウム層(伝熱層)65/ガラス基板11/アルミニウム層(高熱伝導性層)63b/黒色塗装層(黒色材料層)63aが順次積層された積層体で構成されている。
【0134】
(比較試験例1)
試験基板として、図20に示すものを用いた点以外は、上記実施試験例1と同様にして、試験基板の熱放射性および均熱性について試験をした。比較試験例1の試験基板としては、図20に示すように、ガラス基板11単体が用いられた。
【0135】
(比較試験例2)
試験基板として、図21に示すものを用いた点以外は、上記実施試験例1と同様にして、試験基板の熱放射性および均熱性について試験をした。比較試験例2の試験基板は、図21に示すように、ガラス基板11の積層体が形成される側の表面にアルミニウムシート(伝熱層65)が貼付されている。したがって、比較試験例2における試験基板は、試験基板保持ガラス12から順に、アルミニウム層(伝熱層)65/ガラス基板11が順次積層された積層体で構成されている。
【0136】
(評価)
以上の実施試験例1〜3、並びに比較試験例1および2についての上記検証試験結果を図22および(表1)に示す
【0137】
【表1】

【0138】
(表1)は最大温度および最大・最小温度差の一覧を示す。最大温度は、各試験基板について最も高い温度を示した値であり、各試験基板の中央部の温度を示す。また括弧内の数値は、各試験基板における最高温度から比較例1の最大温度(すなわち、90.0℃)を差し引いた値である。また、最大−最少温度の数値は、同一試験基板内での最大値および最小値の差であり、均熱性(熱分散性)の指標である。
【0139】
(表1)に示されるとおり、実施試験例1〜3のいずれも、比較試験例1および2よりも最大温度が低く、最大温度を示す中央部において熱をより多く逃がしていることが明らかになった。また、比較試験例1および2の方が最大・最小温度差の値が大きく、同一基板内での温度差が大きいことが明らかになった。
【0140】
図22に示されるように、比較試験例1および2においては、試験基板周辺部の測定位置A〜CおよびI〜Kが約40〜55℃程度であるのに対し、基板中央部の測定位置D〜Hにおいては、約80〜90℃程度と顕著な温度差が認められた。このように比較試験例1および2に供された試験基板は、均熱性(熱分散性)が低いことが明らかとなった。
【0141】
これに対し、実施試験例1〜3については、測定位置A〜K間における温度分布が、およそ70〜80℃程度の間でなだらかに分布していることが明らかとなった。すなわち、実施試験例1〜3に供された試験基板は、均熱性(熱分散性)が高いことが明らかとなった。
【0142】
(作製例1)ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
以下の方法で、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。まず、30×40mmサイズの有機エレクトロルミネッセンス素子用のITO透明導電膜パターンおよびCrパターンが複数個形成された200×200mmガラス基板を作製した。ITO透明導電膜はスパッタ法で膜厚約150nm成膜し、Crはスパッタ法で200nmをパターニングした。
【0143】
次に、ITOおよびCrパターン付きガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(HCスタルク社製、Bytron P TP AI 4083)の懸濁液を用いて、スピンコート法により成膜し、オーブン上で200℃、20分間の乾燥をして60nmの厚さの正孔注入層を形成した。その後で、有機エレクトロルミネッセンス素子周囲の不要部分の正孔注入層を水で浸したワイパーで拭き取り除去した。
【0144】
次に、シクロヘキサノンとキシレンを1:1に混合した溶媒を用いて高分子有機発光材料(ルメーションGP1300、サメイション社製)の1.5重量%の溶液を作製し、この溶液を用いてスピンコート法により、正孔注入層を形成した基板上に塗布し発光層を形成した。その後で素子周辺部の不要部分の発光層を有機溶剤で拭き取った後、真空乾燥(圧力1×10-4Pa以下、温度約170℃、15分加熱)を行った。
【0145】
その後、蒸着チャンバーに基板を移し、陰極マスクとアライメントしたあとで陰極を蒸着する。陰極は、抵抗加熱法にてBa金属を加熱し蒸着速度約2Å/sec、膜厚50Åにて蒸着、電子ビーム蒸着法を用いてAlを蒸着速度約10Å/sec、膜厚1000Åにて蒸着した。陰極形成後、蒸着室から大気には曝露せず、不活性雰囲気下のグローブボックスに移す。
【0146】
ついで、黒色塗装が施された高熱伝導性材料からなるシート材(放熱層)を貼り付けたガラス封止基板(厚さ0.7mm)を準備した。黒色塗装が施された放熱層には、熱放射率が高い黒色塗装を施した高熱伝導性アルミニウムシートとガラス基板に接着させるための接着材からなるシート(神戸製鋼社製、商品名:コーベホーネツ・アルミ(KS750)、熱伝導率230W/mK、熱放射率:0.86)を用いた。上記放熱層のガラス封止基板への接着は、熱硬化性樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)を使用し、接着エリアは周辺部とした。ガラス封止基板へ放熱層を接着した後、ガラス封止基板を不活性雰囲気下のグローブボックスに入れて、陰極形成された基板と位置合せをしたあとで貼り合せ、さらに真空に保った後で大気圧に戻し、加熱により素子基板と封止基板を固定し高分子有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。なお用いた熱硬化性樹脂の硬化前の粘度は50mPa・sであった。
【0147】
(作製例2)ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
作製例2では、上記作製例1における素子基板と封止基板の材料組み合わせが反対である。すなわち、支持基板に黒色塗装が施された高熱伝導性材料からなる材料を貼り付けた基板を用い、封止基板にはガラス基板を用い、全面封止を行なっている。これにより封止基板側から光を取り出すいわゆるトップエミッション型の素子において、作製例1と同様に表面温度分布が均一な素子を作製することができる。
【0148】
(作製例3)
以下の作製例3では、透明な第1電極に補助電極を形成した場合の効果を確認するために、透明な第1電極(陽極)の基板側の表面に補助電極を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造し、支持基板の外表面にフィルムを設けない状態で、発光特性の向上効果を確認した。
なお、合成例1、2において用いた下記構造式(A)〜(C)で表される化合物A〜Cは、国際公開2000/046321号パンフレットに記載された方法に従って合成した。
【0149】
【化1】

【0150】
【化2】

【0151】
【化3】

【0152】
(合成例1)
下記一般式(1)で表される高分子化合物1を以下の方法により合成した。
【0153】
【化4】

【0154】
先ず、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名:Aliquat336)0.91gと、上記化合物A5.23gと、上記化合物C4.55gとを反応容器(200mLセパラブルフラスコ)に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、トルエン70mLを加え、酢酸パラジウム2.0mg、トリス(o−トリル)ホスフィン15.1mgを加えた後に、還流させて混合溶液を得た。
【0155】
得られた混合溶液に、炭酸ナトリウム水溶液19mLを滴下後、還流下で終夜攪拌した後、フェニルホウ酸0.12gを加えて7時間攪拌した。その後、300mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加えて4時間攪拌した。
【0156】
次いで、攪拌後の混合溶液を分液した後、シリカゲル−アルミナカラムに通し、トルエンで洗浄した後に、メタノールに滴下してポリマーを沈殿させ、その後、得られたポリマーを濾過、減圧乾燥した後にトルエンに溶解させた。得られたトルエン溶液を再度メタノールに滴下して沈殿物を生じさせ、この沈殿物を濾過、減圧乾燥して高分子化合物1を6.33g得た。得られた高分子化合物1のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.2×10であり、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×10であった。
【0157】
(合成例2)
下記一般式(2)で表される高分子化合物2を以下の方法により合成した。
【0158】
【化5】

【0159】
先ず、化合物B22.5gと2,2’−ビピリジル17.6gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1500gを加え、混合溶液を得た。得られた混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)31gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
【0160】
次に、得られた反応溶液を冷却した後、この溶液に、25質量%アンモニア水200mL/メタノール900mL/イオン交換水900mL混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。その後、生成した沈殿物を濾過して回収し、この沈殿物を減圧乾燥した後、トルエンに溶解させた。そして、得られたトルエン溶液を濾過して不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通過させることにより精製した。
【0161】
次に、精製後のトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。そして、このトルエン溶液を、約3質量%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。その後、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、洗浄後のトルエン溶液を回収した。
【0162】
次いで、洗浄後のトルエン溶液をメタノール中にそそぎ込み、沈殿物を生じさせ、この沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して高分子化合物2を得た。得られた高分子化合物2のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.2×10であり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.0×10であった。
【0163】
支持基板としてガラス基板(100mm×100mm)を用いた。支持基板の温度を120℃にして、Crターゲット及びスパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタリング法により、膜厚1000nmのCrを前記支持基板に堆積させた。このときの製膜圧力は0.5Pa、スパッタリングパワーは2.0kWであった。Cr膜の上にフォトレジストを塗布し、さらに110℃で90秒間ベークした。次に、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部と前記開口部の枠内に、縦×横のピッチがそれぞれ300μm×100μm、縦×横の線幅がそれぞれ70μm×30μmからなる格子型の開口部とを有するフォトマスクを通して、200mJのエネルギーで露光し、0.5質量%の水酸化カリウム水溶液によって現像後、130℃で110秒間ポストベークした。次いで、Cr用エッチング液に、40℃、120秒間浸漬し、Crのパターニングを行い、次に2質量%水酸化カリウム水溶液に浸漬することで、レジスト残渣を剥離し、Crからなる補助電極(第1補助電極及び第2補助電極)を形成した。
【0164】
次に、補助電極が形成された基板上に第1電極を形成した。具体的には、基板温度を120℃にし、第1電極材料としてITO焼成ターゲット、スパッタリングガスとしてArを用いて、DCスパッタリング法により、膜厚3000nmのITOを堆積させた。このときの製膜圧力は0.25Pa、スパッタリングパワーは0.25kWであった。その後、200℃のオーブンで40分間アニール処理を行った。その後、第1電極が形成された基板を60℃の弱アルカリ性洗剤、冷水、50℃の温水をもちいて超音波洗浄し、50℃の温水から引き上げて乾燥した後、20分間UV/O洗浄を行った。
【0165】
次に、0.45μm径のフィルター及び0.2μm径のフィルターをそれぞれ用いて、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液を2段階濾過し、2段階目に濾過した溶液を用いて、前記洗浄後の基板にスピンコート法により80nmの厚みで薄膜を形成し、大気雰囲気下においてホットプレート上で、200℃で15分間熱処理し、正孔注入層を形成した。
【0166】
次いで、合成例1、2で得られた高分子化合物1及び高分子化合物2を重量比で1:1の比で計り取り、トルエンに溶解させ、1質量%の高分子溶液を作製した。上記正孔注入層が形成された基板上に、作製した高分子溶液をスピンコート法により80nmの膜厚で製膜した後、窒素雰囲気下のホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、発光層を形成した。
【0167】
その後、前記発光層が形成された基板を真空蒸着機に導入し、陰極としてLiF、Ca、Alを順次それぞれ、2nm、5nm、200nmの厚みで蒸着し、第2電極を形成した。なお、この蒸着工程においては、真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0168】
最後に、不活性ガス中で、第2電極が形成された基板における第2電極の表面をガラス板で覆い、さらに4辺を光硬化樹脂で覆った後に、光硬化樹脂を硬化させることで保護層を形成して、有機エレクトロルミネッセンス発光素子を得た。
【0169】
(参考例1)
上記作製例3において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部のみを有するフォトマスクを用いた以外は、作製例3と同様にして、比較用の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を作製した。
【0170】
(参考例2)
上記作製例3において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部を有さず、縦×横のピッチがそれぞれ300μm×100μm、縦×横の線幅がそれぞれ70μm×30μmからなる格子型の開口部を有するフォトマスクを用いた以外は、作製例3と同様にして、比較用の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を作製した。
【0171】
(補助電極形成効果の評価)
作製例3及び参考例1,2で得られた有機エレクトロルミネッセンス発光素子の発光特性を評価した。具体的には、素子全体に8Vの電圧を印加した際の発光輝度を測定し、さらに発光面の様子を目視にて観察した。得られた結果を下記(表2)に示す。
【0172】
【表2】

(表2)に示した結果から明らかなように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【図2】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極、発光層、陰極を有してなる積層体と封止基板との間に樹脂層が形成されている状態を示す断面構成図である。
【図3】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図4】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図5】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図6】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の他の一例を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態を示す断面図である。
【図15】検証実験装置の側面を示す図である。
【図16】検証実験装置上に載置される試験基板および測定位置を示す平面図である。
【図17】実施試験例1に供された試験基板の断面図を示す図である。
【図18】実施試験例2に供された試験基板の断面図を示す図である。
【図19】実施試験例3に供された試験基板の断面図を示す図である。
【図20】比較試験例1に供された試験基板の断面図を示す図である。
【図21】比較試験例2に供された試験基板の断面図を示す図である。
【図22】検証試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0174】
1、2、3A、3B、4A 有機エレクトロルミネッセンス素子
10 支持基板
11 ガラス基板
12 試験基板保持ガラス
15 試験基板
20 有機発光層を含む積層体
30、31 封止基板
40 接着部
50、50a 空隙
51 樹脂層
60、61 放熱層
63 2層で構成される放熱層
63a 黒色塗装層
63b アルミニウム層(高熱導電性層)
64 3層で構成される、高熱伝導性および放熱層
65 伝熱層(アルミニウム層)
80 試験台
81 ホットプレート
82 断熱シート
83 熱伝導部(熱源、真鍮)
84 温度センサー
10 支持基板
202,202a,202b,202c,202d 第1補助電極
203,203a,203b,203c,203d 第2補助電極
204 補助電極
205 陽極(第2電極)
206 発光部
207 透明陰極(第1電極)
209 陽極と発光層との間に設けられる層
210 発光層
211 陰極と発光層との間に設けられる層
222 第1補助電極
223 第2補助電極
224 補助電極
225 透明陽極(第1電極)
226 発光部
227 陰極(第2電極)
229 陽極と発光層との間に設けられる層
230 発光層
231 陰極と発光層との間に設けられる層
A〜K(図16において) 測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極である透明な第1電極、前記第1電極に接して設けられる補助電極、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極、並びに前記第1電極および第2電極の間に配置される発光層を含む積層体と、
前記積層体が設けられる支持基板と、
前記積層体の前記支持基板側とは反対側から前記積層体を覆って設けられる封止基板と、
前記支持基板の少なくとも一方の表面、または、前記封止基板の少なくとも一方の表面に設けられ、熱放射率が0.70以上の高熱放射性を有する放熱層とを有し、
前記補助電極の電気抵抗値が、前記第1電極の電気抵抗値よりも低く、
前記補助電極が、枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記放熱層の熱放射率が0.85以上である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記放熱層の熱伝導率が1W/mK以上である請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記放熱層の熱伝導率が200W/mK以上である請求項3に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記放熱層が黒色系材料を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記放熱層が高熱伝導性層と黒色系材料層を含む積層構造層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記高熱伝導性層が、アルミニウム、銅、銀、これらから選ばれる2種以上の合金、セラミックス材料、および高熱伝導性の樹脂からなる群より選ばれる材料で形成されてなる請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記支持基板がガラス基板であり、該ガラス基板の少なくとも一方の表面に前記放熱層が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記ガラス基板の前記積層体側とは反対側の表面に前記放熱層が設けられている請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記ガラス基板の両表面に前記放熱層が設けられている請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記ガラス基板の前記積層体側とは反対側の表面に前記放熱層が設けられ、かつ、前記ガラス基板の前記積層体側の表面に高熱伝導性を有する伝熱層が設けられている請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記伝熱層が、アルミニウム、銅、銀、これらから選ばれる2種以上の合金、セラミックス材料、および高熱伝導性の樹脂からなる群より選ばれる材料で形成されてなる請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記封止基板がガラス基板であり、該封止基板の少なくとも一方の表面に前記放熱層が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記第2補助電極の線幅を前記第1補助電極の線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする面状光源。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−80307(P2010−80307A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248247(P2008−248247)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】