説明

有機ダイオードベースの識別・認証装置の製造方法、装置、及び使用方法

製造方法は、装置のパッケージ前に、複数のランダムに分布した損傷による黒点を形成するために、少なくとも1つの有機ダイオードをガスに曝すステップを備える。曝す時間を増やすことで、黒点のサイズをランダムに大きくすることができる。電界発光により見える黒点の表面分布は、この分布に関連付けられた物体を、信頼できる方法で識別できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の識別・認証のための装置の製造方法に関し、装置内にランダムに分布した複数の識別素子の形成を含むものである。
【背景技術】
【0002】
文献WO−A−01/57831は、物体、植物、又は生物の識別・認証のための方法及び装置を説明する。この方法は、少なくとも2つの非混合ボディの不均一・硬化混合からのボリューム識別子(volume identifier)の生成を実行する。ボリューム識別子は、識別子の唯一性を保証する形状及び位置について、ランダム(random)で統計的に再生不能な不均一性を有する。図1に示されるように、液状又は糊状の製品とのガス状混合物の場合、この同じガスの気泡1の形状で不均一性が得られる。直径がランダムな気泡は混合物内のランダムな位置に形成され、識別要素1としての役割を果たすことができる。識別要素1はボリューム内に沈んでおり、直接触れることは出来ない。従って、紙支持体上のバーコードのように、すり減ったり傷ついたりしない。また、この方法は、固体粒子を硬化物と混合することにより実行することができ、これらの粒子の分布は製品が凝固するとランダムに固定され、識別要素を形成する。
【0003】
識別子が作られた後、複数の一連の画像によってデジタル化され、識別子を3次元で正確に復元することを可能にする。この3次元画像はデータベースに格納される。識別子は、物体に起因する。識別子は物体を認証するために使用することが出来る。そして、3次元での復元を可能にする複数の角度によってデジタル化される。そして、データベース内のデータとの比較により識別子の信頼性を即座に検証するためにデータベースが検索される。このような3次元の識別子は改ざんすることが出来ない。しかし、異なる視覚からの一連の画像の取得後に3次元に復元するため、この識別子の使用は比較的複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、物体、植物、人物、動物、またはサービスを、簡素かつ改ざん出来ないように、識別・認証する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、装置が少なくとも1つの有機発光ダイオードを有し、方法が、前記ダイオードを、前記装置のパッケージ前に、電界発光により見えるランダムに分布した黒点の形状の損傷による識別要素(1)を形成するために、前記ダイオードを少なくとも1つのガスに曝す段階を備えるという事実により達成される。
【0006】
また、本発明は、この方法によって得られ、表面にランダムに分布し電界発光によって見える黒点の形状の識別要素を有する有機ダイオードを備える装置に関する。
【0007】
さらに、本発明は、ダイオードに電源を入れ、黒点の表面分布を測定し、この分布と、物体と関連付けて事前に記録された画像とを識別のために比較する、この装置の使用方法に関する。
【0008】
他の利点及び特徴は、限定しない例示のため、かつ添付の図面で示される、以下の本発明の特定の実施形態の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術による識別子を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の上面を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の上面を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の上面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2に示される実施形態によれば、物体の認証・識別装置は複数のランダムに分布した識別要素(identification element)1を備える。このような装置は、少なくとも1つの有機発光ダイオード2を備えており、有機ダイオードを少なくとも1つのガスに曝し、ダイオードの損傷により、電界発光により可視となるランダムに分布した黒点(black spot)の形状の識別要素を形成し、損傷を止めるためにダイオードをパッケージすることにより実現される。
【0011】
有機ダイオードに基づく識別子は、通常、少なくとも1つの電界発光による放射性の有機層により覆われたアノードとカソードとを有するもので得られる。有機ダイオードの主な欠点の1つ、すなわち湿気に対する感度が実際に使用される。有機ダイオードが空気に曝されたとき、実際にいくつかの点で損傷し、黒点を形成する。構造欠陥によるこの損傷は、有機ダイオードの製造方法がうまく習得されている場合、すなわち有機ダイオードが蒸気の状態の水が侵入することを防止する不活性雰囲気(ガス又はアルゴン)中のグローブボックス(glove-box)内で作られる場合、通常の状況下では起こらない。本発明は、識別子を形成するために、ランダムで、それゆえ再生不能な分布を示すこれらの構造欠陥を使用する。
【0012】
黒点は、発光できなくなるピンホール形状の領域に対応する。従って、ダイオードの電源を入れたとき、通常は見えない黒点が電界発光により現れる。本発明は、有機発光ダイオードをパッケージ前に数分間環境室(environmental chamber)内で大気又は制御された雰囲気に曝すことで黒点を意図的に出現させる。
【0013】
ダイオードは、環境室内で水蒸気に曝すことが好ましい。損傷は、有機ダイオードへの水蒸気の侵入に対応する。
【0014】
そして、ダイオードは、例えば窒素(N)又はアルゴン(Ar)の不活性ガスを含むパッケージに封入されることが好ましい。このパッケージは、以後のダイオードへの水分子の侵入を防止する黒点の表面分布の固定を可能にする。黒点はこれ以上変更されないため、再生不能かつ偽造されないランダムなパターンを生成する。各点は、有機ダイオードベースの識別子(organic diode-based identifier)2を実現するために、識別要素1を構成する。
【0015】
パッケージは、接着されたガラスカバーを用いた従来の方法か、又は、酸化物及び/又は窒化物及び/又はポリマー材料と共に薄層内にパッケージすることによるモノリシック(monolithic)な方法で行うことができる。ゲッター(getter)は残留湿気を吸収するために、ガラスカバーの下に配置することが好ましい。
【0016】
ダイオードが作られたとき、大気又はガスへ有機ダイオードを曝す時間の増加により、黒点の直径を大きくすることができる。ダイオードの構造欠陥のサイズに基づいて、実際にガスの侵入は多かれ少なかれ大きく、ダイオードの損傷は多かれ少なかれ早くなる。図3に示されるように、黒点は分布し、サイズはランダムである。このさらなるランダムなサイズは、識別の安全性を極めて大きく増すことができる。
【0017】
図4に示される別の実施形態によれば、識別子2はスクリーンを形成する棒状又はマトリクス状に配置された複数の要素的ダイオード(elemental diode)から構成することができる。これは、黒点の表面分布をさらに複雑にして、より安全性を高めることができる。要素的ダイオードの数は、例えば数百とすることができ、各要素的ダイオードはスクリーン画素を構成する。
【0018】
このような識別子は物体を認証できるように設計される。物体が意味するものは、あらゆるタイプの植物、生物、有形財、又はサービスである。組み立てられた時点で、識別子に電源が入れられ、黒点の表面分布の画像が保存され、好ましくはデジタル化される。この画像はデータベースに事前に記録し、物体と関連付けておくことができる。物体が認証されるとき、識別子に電源が入れられ、黒点の表面分布が例えばカメラによって測定され、物体の真偽を検証するために、データベースに事前に登録された画像と比較される。
【0019】
このような識別子は、黒点のランダムな分布により改ざんすることができない。表面分布で認証が行われ、3次元識別子よりも極めて簡便に実行できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムに分布した複数の識別要素(1)の形成を有する物体の識別・認証装置の製造方法であって、前記装置は少なくとも1つの有機発光ダイオードを有し、前記ダイオードを、前記装置のパッケージ前に、電界発光により見えるランダムに分布した黒点の形状の損傷による前記識別要素(1)を形成するために、前記ダイオードを少なくとも1つのガスに曝す段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガスは水蒸気であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記識別要素(1)の形成後に、前記装置は、不活性雰囲気で密封されたケース(casing)にパッケージされることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージケースにゲッターが配置されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法で得られる識別装置であって、少なくとも1つの有機ダイオードと、電界発光で見えるランダムに分布した黒点の形状である複数の識別要素(1)とを備えることを特徴とする識別装置。
【請求項6】
前記黒点のサイズはランダムであることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
スクリーンを形成する複数の有機ダイオードを備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の装置の使用方法であって、ダイオードの電源を入れ、黒点の表面分布を測定し、この分布と、識別のために物体と関連付けられている事前に記録された画像とを比較することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−509449(P2011−509449A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538826(P2010−538826)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001698
【国際公開番号】WO2009/101295
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】