説明

有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒

【課題】
PCBなどの有機ハロゲン化合物を迅速に処理でき、活性が低下しても容易に性能を回復でき長期間連続使用可能な触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】
有機ハロゲン化合物または有機ハロゲン化合物を含む液体と、アルカリ化合物と水素供与体との混合液を、マイクロ波を照射しながら触媒に接触させて有機ハロゲン化合物を処理する有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒であって、
前記触媒は、樹脂系吸着剤からなる担体に貴金属を担持したものであることを特徴とする有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ハロゲン化合物の処理に用いられる触媒に関し、より詳しくは、マイクロ波を照射しながら有機ハロゲン化合物を処理する際に用いられる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニル(以下、PCBと呼ぶ)は、人体に極めて有害であり、1973年に特定化学物質に指定され、現在ではその製造、輸入、使用が禁止されている。PCBを技術的に安全に分解することは難しいと考えられており、PCBの安全かつ効率的な無害化処理方法の確立が望まれている。
【0003】
このような背景から、PCB等の有機ハロゲン化合物を無害化処理する方法が数多く検討されてきた。その中でも、本発明者らはPCB又はPCBを含む絶縁油に水素供与体とアルカリ化合物を混合し、マイクロ波を照射しながら触媒に接触させて、低温かつ短時間でPCBを無害化処理できる方法を開発した(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2に記載の無害化処理方法では、触媒としてパラジウムを5%担持した活性炭(以下、5%Pd/Cと呼ぶ)を用いている。この5%Pd/Cでも実用に耐える処理速度を達成しているが、PCBの処理期限が迫っており、さらなる処理速度の向上が求められている。
【0005】
また、5%Pd/Cでは、PCBを無害化処理する場合に、絶縁油に微量に含まれる不純物によって劣化して触媒の活性が低下し、経時的に処理速度が低下する問題があった。そのため、本発明者らは分解能が低下した触媒の再生処理方法についても開発を進めてきた(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の触媒の再生方法では、劣化した触媒をイソプロピルアルコールと水で洗浄する。しかし、触媒の原料となるパラジウムの価格高騰を踏まえ、処理コストをさらに低減するため、より簡易な処理で活性が再生し、長期間連続的に使用可能な触媒が求められている。
【0006】
一方、PCBを脱塩素化して無害化処理するだけでなく、吸着剤によりPCBを吸着分離する方法も開発されてきた(例えば、特許文献4参照)。特許文献4の分離方法では、有機ハロゲン化合物を低塩素化PCBの吸着性能に優れた活性炭等で吸着処理した後で、さらに高塩素化PCBの吸着性能に優れたイオン交換樹脂によって2段階で吸着処理する。しかし、この吸着分離だけでは法令で定められる基準(0.5ppm)までPCB濃度を低下するのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3970900号公報(請求項1参照)
【特許文献2】特許第3976329号公報(請求項1参照)
【特許文献3】特開2008−272584号公報(請求項1参照)
【特許文献4】特開2007−69055号公報(請求項1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、PCBなどの有機ハロゲン化合物を迅速に処理でき、活性が低下しても容易に性能を回復でき長期間連続使用可能な有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機ハロゲン化合物の処理速度の高い触媒について鋭意検討を行った。貴金属を担持する担体の材質、形状を変化させて試験を行った結果、全く予期しないことに樹脂系吸着剤を担体とした触媒により、有機ハロゲン化合物の処理速度を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係わる有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒は、有機ハロゲン化合物または有機ハロゲン化合物を含む液体と、アルカリ化合物と水素供与体との混合液を、マイクロ波を照射しながら触媒に接触させて有機ハロゲン化合物を処理する有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒であって、前記触媒は、樹脂系吸着剤からなる担体に貴金属を担持したものであることを特徴とする。
【0011】
担体に樹脂系吸着剤を用いることで、貴金属による脱塩化促進作用に加えて、有機ハロゲン化合物の吸着分離作用が発揮されて、有機ハロゲン化合物の処理速度を大幅に向上できる。なお、ここでいう樹脂系吸着剤には、合成吸着剤だけでなくイオン交換樹脂も含まれる。
また、樹脂系吸着剤(特にイオン交換樹脂)は、不純物の除去が容易であり、触媒活性を簡易かつ短時間で再生できる。また、活性炭と比較して、洗浄しても崩れにくく形状を保ちやすいので、より長期間使用できる。
【0012】
ここで、前記樹脂系吸着剤は、比誘電率が1.0〜5.0のマイクロ波透過性の樹脂からなることが好ましい。担体をマイクロ波透過性の樹脂とすることで、マイクロ波が触媒充填部の内部まで浸透しやすくなり、さらに処理速度が向上する。
【0013】
また、前記樹脂系吸着剤は、スチレン系樹脂、アクリルエステル系樹脂からなることが好ましい。スチレン系樹脂やアクリルエステル系樹脂は吸着性能が高く、マイクロ波透過性にも優れ、入手も容易であり、有機ハロゲン化合物処理用の触媒として好適である。
【0014】
また、前記有機ハロゲン化合物は、PCB、ダイオキシン類及びそれらの組合せからなる群より選択されるものであることが好ましい。
また、前記アルカリ化合物は、NaOHおよびKOHから選ばれた少なくとも一種であることが好ましく、前記水素供与体は、イソプロピルアルコールであることが好ましい。
また、前記貴金属は、パラジウム、ルテニウム、白金及びそれらの組合せからなる群より選択されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒によれば、PCBなどの有機ハロゲン化合物を迅速に処理でき、活性が低下しても容易に性能を回復でき長期間連続使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0017】
本発明の実施形態では、有機ハロゲン化合物または有機ハロゲン化合物を含む液体と、アルカリ化合物と水素供与体との混合液を、マイクロ波を照射しながら触媒に接触させて有機ハロゲン化合物を処理する有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒を対象とする。
【0018】
本実施形態では、特に樹脂系吸着剤からなる担体に貴金属を担持した触媒を用いることに特徴がある。ここで、樹脂系吸着剤とはPCB等の有機ハロゲン化合物を吸着する性能を有する樹脂のことである。樹脂系吸着剤には、吸着剤用に製造された合成吸着剤だけでなく、他用途に製造された樹脂で優れた吸着性能を有するもの(例えばイオン交換樹脂)も広く含まれる。
【0019】
担体に樹脂系吸着剤を用いることで、貴金属による脱塩化促進作用に加えて、有機ハロゲン化合物の吸着分離作用が発揮されて、担体に活性炭を用いた場合よりも有機ハロゲン化合物の処理速度を大幅に向上できる。なお、後述する実施例によれば、鉱物系の吸着剤(シリカゲル、ゼオライト)を担体として用いても有機ハロゲン化合物の処理は可能であったが、処理速度は(担体に活性炭を用いた場合と比較して)向上しなかった。
【0020】
また、樹脂系吸着剤(特にイオン交換樹脂)は、不純物の除去が容易であり、触媒活性を簡易かつ短時間で回復できる。さらに、活性炭と比較して、洗浄しても崩れにくく形状を保ちやすいので、より長期間連続的に使用できる。その結果、同一の触媒を繰り返し使用でき、触媒の使用量を削減して有機ハロゲン化合物の処理コストを低減できる。
【0021】
ここで、樹脂系吸着剤は、比誘電率が1.0〜5.0のマイクロ波透過性の樹脂であることが好ましい。担体をマイクロ波透過性の樹脂とすることで、マイクロ波が触媒充填部の内部まで浸透しやすくなり、さらに処理速度が向上する。参考として樹脂の比誘電率の一覧を表1に示す。
【表1】

【0022】
担体をマイクロ波透過性の樹脂とするのは、特に温度制御しながら有機ハロゲン化合物の処理を行う場合に有利である。マイクロ波の照射により触媒充填部が均等に温度上昇するため、上限温度に達しにくくマイクロ波を連続的に照射できるためである。
【0023】
一方で、マイクロ波に対して発熱特性を有する活性炭を担体として用いた場合には、マイクロ波照射中に活性炭が発熱し、特に触媒充填部表層の温度が上昇しやすい。触媒温度が上限温度に達すると、マイクロ波の照射を制限して自然冷却するまで待つ必要があり、マイクロ波の照射効率が低下してしまう。
【0024】
樹脂の種類は所要の吸着特性を有していれば特に限定されず、スチレン系、アクリルエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリビニルピロリドン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスルホン系、ポリテトラフルオロエチレン系の樹脂が例示できる。この中でも特にスチレン系樹脂やアクリルエステル系樹脂が好ましい。有機ハロゲン化合物の吸着性能が高く、マイクロ波透過性にも優れ(表1参照)、入手や取り扱いも容易なためである。
【0025】
樹脂系吸着剤の形状は粒状のものがよく、粒子径は75μm〜5mmが好ましく、5mmを超える場合はハンドリングが悪くなり、75μm未満の場合はカラム等に充填させた際に詰りやすくなる。より好ましくは150μm〜3mmである。
【0026】
担体に担持させる貴金属は、特に限定されるものではなく、有機ハロゲン化合物の脱塩素化反応を促進し得るものであればよい。触媒における貴金属の担持量は、触媒全量に対する割合で1〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
【0027】
担持させる貴金属としては、パラジウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム及び白金が挙げられるが、脱塩素化効率の高さを考慮すると、パラジウム、ルテニウム、白金又はそれらの混合液が好ましく、特にパラジウムが好ましい。
【0028】
有機ハロゲン化合物としては、PCB;ダイオキシン類;トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族塩素化合物及びそれらの2種以上の混合液からなる群から選択される有機ハロゲン化合物が挙げられる。その中でも、本実施形態の触媒の処理対象としては、PCB、ダイオキシン類及びそれらの組合せからなる群より選択される有機ハロゲン化合物がより好ましい。
【0029】
有機ハロゲン化合物は、柱上変圧器、大型トランス、OFケーブル絶縁油タンク、安定器等に充填又は保存されているもの等が挙げられる。また、有機ハロゲン化合物を含む液体とは、濃度を問わず有機ハロゲン化合物を含む絶縁油等の液体のことを指す。
【0030】
混合液には、水素供与体が添加されるが、安全性が高く、低コストで入手可能であり、しかも有機ハロゲン化合物の分解効率が高く、反応制御が容易で、難分解性のPCBの分解効率が高い点より、イソプロピルアルコールが好適に用いられる。
【0031】
イソプロピルアルコール以外の化合物も、有機ハロゲン化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物であれば、本発明の効果を阻害しない範囲でイソプロピルアルコールと併用することができる。このような水素供与体としては、例えば、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物等が挙げられる。
【0032】
また、混合液には、有機ハロゲン化合物から脱離した塩素を捕捉するためのアルカリ化合物も添加されるが、脱塩素化効率が高く、低コストで入手可能で、ハンドリング性が良く、しかもイソプロピルアルコールへの溶解性に優れている点より、NaOH、KOH等のアルカリ化合物が好適に用いられる。アルカリ化合物は単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0033】
分解処理に用いられるアルカリ化合物及びイソプロピルアルコールの量は限定されないが、通常、アルカリ化合物は有機ハロゲン化合物の対塩素比で1.0〜1.5当量、イソプロピルアルコールは有機ハロゲン化合物に対し容量比で5〜50%使用するのが好ましい。また、アルカリ化合物はイソプロピルアルコールに対して0.1〜50%(wt/vol)使用するのが好ましく、より好ましくは0.1〜10%(wt/vol)である。アルカリ化合物が少なすぎると分解反応が進行しなくなり、一方、多すぎるとアルカリ化合物がイソプロピルアルコールに溶解しきれなくなる。
【0034】
有機ハロゲン化合物の処理方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、容器に触媒と混合液を入れ撹拌しながらマイクロ波を照射するバッチ方式や、触媒カラムにマイクロ波を照射しながら混合液を流通させるカラム流通方式を用いることができる。
【0035】
反応温度は200℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは15〜80℃の範囲である。反応温度を15℃以上にすることにより、分解反応が進行する。一方、200℃を超える場合は、脱塩素化反応は十分進むが、副生物が生成し易くなり、経済性にも劣るものとなる。
【0036】
照射するマイクロ波の出力や周波数、照射方法は、特に限定されるものではなく、反応温度が所定の範囲に保持できるよう電気的に制御すればよい。出力が低すぎる場合は水素発生量が少なくなり、出力が高すぎる場合はマイクロ波の利用率が悪くなるため、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲とするのが望ましい。マイクロ波の周波数は1〜300GHzが望ましい。1GHz未満又は300GHzを超える周波数範囲では、触媒や水素供与体の加熱が不十分となる。
【0037】
マイクロ波の照射は連続照射、間欠照射のいずれの方法であってもよいが、電気的に制御しながら連続照射するのが好ましい。マイクロ波発振器としては、マグネトロン等のマイクロ波発振器や、固体素子を用いたマイクロ波発振器等を適宜用いることができる。
【0038】
以上説明の通り、本実施形態の有機ハロゲン化合物処理用の触媒によれば、PCBなどの有機ハロゲン化合物を迅速に処理でき、活性が低下しても容易に性能を回復して長期間連続使用することが可能となる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0040】
〈予備試験〉
本試験に先立ち、主に担体を活性炭とした場合に、担体の形状がPCBの分解性能に与える影響について把握するため予備試験を行った。
【0041】
〔比較例1〕
KC−400(4塩化ビフェニール、鐘淵化学(株)製)を10ppm含有する絶縁油1種2号100mlを五口フラスコに用意した。そこにアルカリ化合物としてKOH0.6gを、水素供与体としてイソプロピルアルコール20mlを、担体として活性炭(ダイアホープ008、粒径75μm〜3mm)にパラジウムを5wt%担持した触媒8gを添加した。窒素ガスで置換後、マグネチックスターラーで撹拌しながら、混合液の温度を60℃に維持しながら周波数2.45GHzのマイクロ波を照射した。
【0042】
〔比較例2〜3〕
Pd/C触媒の担体として、比較例2ではハニカム活性炭(セラミックと活性炭を混ぜたものをハニカム状に成型焼成させたもの)を用い、比較例3ではフェルト活性炭(カーボン繊維をフェルト状に加工したもの)を用いた。両方のパラジウム担持率は5wt%とした。それぞれ必要量分(8g)を切り取り、ハニカム活性炭はサイコロ状に、フェルト活性炭は切れ端状にして五口フラスコに添加した。それ以外の条件は、比較例1と同じとした。
【0043】
〔比較例4〕
さらに、担体の材質変化の影響も見るため、触媒の担体としてゼオライト(粒径75μm〜3mm)を用いた。それ以外の条件は比較例1と同じとした。
表2に、予備試験の結果として比較例1〜4について混合液中のPCB濃度の経時変化を示す。
【表2】

【0044】
比較例1のPCB濃度が最も速く低下していることから、活性炭の形状は粒状が最も良いことが分かる。さらに、比較例4のPCB濃度の低下が最も遅いことから、担体としてゼオライトは適していないことも分かる。
【0045】
〈本試験〉
担体の材質(樹脂系吸着剤、活性炭、鉱物系吸着剤)がPCBの分解性能に与える影響について把握するため担体の材質を変化させて本試験を行った。
【0046】
〔実施例1〕
KC−400(4塩化ビフェニール、鐘淵化学(株)製)を10ppm含有する絶縁油1種2号150mlを容器に用意した。それにアルカリ化合物としてKOH0.9gを、水素供与体としてイソプロピルアルコール30mlを添加し撹拌して被処理油を得た。
一方、触媒カラムに、担体としてスチレン樹脂系吸着剤(XAD−16)にパラジウムを5wt%担持した触媒8gを充填した。なお、本樹脂は湿潤により膨張するため、充填カラム内での膨張分の体積を考慮して触媒量を設定した。この触媒カラムにダイアフラム式定量ポンプを用いて被処理油を10ml/分で通液すると共に、混合液の温度を60℃に維持しながら周波数2.45GHzのマイクロ波を照射した。マイクロ波照射中に定期的に混合液をサンプリングしてPCB濃度を測定した。
【0047】
〔実施例2〕
担体としてアクリルエステル樹脂系吸着剤(Supelite DAX−8)を用いた以外は、実施例1と同じとした。
【0048】
〔比較例5〕
比較例5では、触媒カラムに担体として活性炭(ダイアホープ008、粒径75μm〜3mm)にパラジウムを5wt%担持した触媒12gを充填した。なお、触媒量は実施例1,2とカラム充填時の体積をあわせた。その他の条件は実施例1と同じとした。
【0049】
〔比較例6〕
比較例6では、担体として、やしがら活性炭(ダイアソーブW10−30、粒径1m〜3mm)を用い、その他の条件は比較例5と同じとした。
【0050】
〔比較例7〕
比較例7では、担体として、シリカゲル球(直径3mm程度)を用い、その他の条件は比較例5と同じとした。
表3に、担体の材質試験の結果として実施例1〜2と比較例5〜7について混合液中のPCB濃度の経時変化を示す。
【表3】

【0051】
PCB濃度の低下は、実施例の方が比較例よりも大幅に速くなっており、担体に樹脂系吸着剤を用いることの有用性が確認できた。例えば、試験時間1時間後のPCB濃度は、公知例で用いられている比較例5と比較して、実施例1では約1/18(=0.4ppm/7.1ppm)に、実施例2でも約1/4(=1.8ppm/7.1ppm)に低下している。
また、比較例7のPCB濃度の低下が最も遅いことから、前述の比較例4の結果とも併せると、担体として鉱物系吸着剤(ゼオライト、シリカゲル)を用いる場合は、処理に時間がかかることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物または有機ハロゲン化合物を含む液体と、アルカリ化合物と水素供与体との混合液を、マイクロ波を照射しながら触媒に接触させて有機ハロゲン化合物を処理する有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒であって、
前記触媒は、樹脂系吸着剤からなる担体に貴金属を担持したものであることを特徴とする有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項2】
前記樹脂系吸着剤は、比誘電率が1.0〜5.0のマイクロ波透過性の樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項3】
前記樹脂系吸着剤は、スチレン系樹脂、アクリルエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項4】
前記有機ハロゲン化合物は、PCB、ダイオキシン類及びそれらの組合せからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項5】
前記アルカリ化合物は、NaOHおよびKOHから選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項6】
前記水素供与体は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。
【請求項7】
前記貴金属は、パラジウム、ルテニウム、白金及びそれらの組合せからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理に用いられる触媒。

【公開番号】特開2011−88038(P2011−88038A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241644(P2009−241644)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】