説明

有機ホウ素化合物の製造方法

【課題】医農薬や生理活性物質の中間体あるいは最終生成物として有用な有機ホウ素化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】アリル化合物類を、触媒の存在下にジボロン化合物とカップリング反応に付することを特徴とする、光学活性アリルホウ素化合物、又はラセミ若しくは光学活性ボリルシクロプロパンの一方又は混合物の製造方法である。触媒として銅(I)錯体を用いることが好ましい。銅(I)錯体の対イオンはアルコキシドであるか、又はヒドリドであることが好ましい。銅(I)錯体がホスフィン配位子を有することも好ましい。ホスフィン配位子は不斉ホスフィン配位子であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ホウ素化合物の製造方法に関する。本製造方法によって得られる有機ホウ素化合物は、カルボニル化合物とジアステレオ選択的に反応してホモアリルアルコールを与える反応をはじめとして、有機合成の反応剤として幅広く利用される。
【背景技術】
【0002】
アリルホウ素化合物はカルボニル化合物とジアステレオ選択的に反応し、ホモアリルアルコールを与えるため、有機合成において有用な反応剤として知られている。例えばアルデヒドとの反応でE体のアリルホウ素化合物からはアンチ体のホモアリルアルコールが得られ、Z体からはシン体のホモアリルアルコールを合成することができる。
【0003】
光学活性アリルホウ素化合物も同様にカルボニル化合物を穏やかな条件で選択的にアリル化し、不斉転写を伴って光学活性ホモアリルアルコールを与えるため有用な反応剤である。しかし、既存の合成法ではキラル補助基が化学量論量以上必要である上、合成に多段階を要する(非特許文献1参照)。一方、光学活性アリルホウ素化合物を触媒的不斉合成によって合成した例はほとんど無く、光学活性パラジウム触媒を用いて、アレン化合物をジボリル化する比較的特殊な例しか知られていない(非特許文献2参照)。ニつの例は共に複雑な骨格を持つ化合物や官能基化した化合物への適用が困難である。
【0004】
以上の技術とは別に、銅(I)−ホスフィン錯体触媒を用いたアリル炭酸エステルとジボロンからの選択的アリルホウ素化合物の合成法が開発されている(非特許文献3参照)。この反応では、ホウ素置換基が脱離基に対してγ位へ選択的に導入される。光学活性なアリル炭酸エステルを用いた場合では、高効率な不斉転写を伴って光学活性アリルホウ素化合物を効率よく合成できる。この方法はこれまでに合成が困難であった、官能基を持つアリルホウ素化合物、多置換のアリルホウ素化合物を選択的に合成できる有用な方法である。しかし光学活性なアリル炭酸エステルを必要とするところ、出発原料に光学活性部位をもたない化合物から光学活性アリルホウ素化合物を合成した例は報告されていない。
【0005】
アリルホウ素化合物とは別に、シクロプロパン骨格は天然物をはじめ、液晶などの機能性材料等、有機化合物において広く見られる構造である。特にシクロプロパン環を有する天然物やその誘導体は、薬理活性や生合成、不斉合成等において内外の多くの研究者の興味を引いている。1884年にWilliam Henry Perkinによってはじめてシクロプロパン誘導体が合成されてから120年以上が経過した今でも盛んに研究が行われている。
【0006】
シクロプロパン骨格を有する天然物の多くは、シクロプロパン環内に複数の不斉点を有しているため、その不斉合成は特に重要である。現在、シクロプロパン合成法として最も多用されているのが、Simmons-Smith反応をはじめとする金属カルベノイドの発生を利用した手法である。過去20年間に不斉合成が大きく発展し、不斉補助基を利用した手法(非特許文献4参照)や、遷移金属触媒を利用したエナンチオ選択的な手法(非特許文献5参照)が開発されている。
【0007】
これらは分子内に存在する二重結合を足がかりとしてシクロプロパン環を構築する手法である。これに対し近年、カップリング反応を利用してあらかじめ合成したシクロプロパン骨格を分子内に直接導入する手法が開発されている。シクロプロパン上にホウ素置換基を有するボリルシクロプロパンを合成し、有機合成で汎用されているSuzuki-Miyauraカップリング反応に適用すると、シクロプロパン骨格が導入された生成物が得られる。現在までに複数の研究グループから報告がなされている(非特許文献4及び非特許文献6参照)。
【0008】
ここでさらに光学活性なボリルシクロプロパンを合成できれば、光学活性なシクロプロパン骨格を導入することが出来る。しかしこの場合、光学活性なボリルシクロプロパンのより効率の良い合成が課題となる。
【0009】
現在までに報告されている、光学活性ボリルシクロプロパン合成法は、以下の二つの手法に大別できる。まず、以前から研究されてきた手法として、ホウ素上にあらかじめキラル補助基を導入し、カルベノイドの発生を利用してジアステレオ選択的にシクロプロパン環を構築する手法が挙げられる(非特許文献7参照)。一方、最近、不斉触媒を用いる二置換シクロプロペンに対するエナンチオ選択的なヒドロホウ素化反応が報告された(非特許文献8参照)。不斉補助剤を用いる合成では、基質に対して等量以上の不斉源が必要となり、選択性も極めて高いとは言えない。一方、触媒的不斉合成は少量の不斉源から高いエナンチオ選択性で目的物を得られるため有用な手法であるが、光学活性ボリルシクロプロパンに関してはこの一例しか報告されておらず、エステル置換基により活性化された基質に限られるなど、基質の適用範囲に制限がある。
【0010】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.25(1986)1028-1030.
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.126(2004)16328-16329.
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.127(2005)16034-16035.
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.38(1997)2809-2812.
【非特許文献5】Angew.Chem.Int.Ed.41(2002)2953-2956.
【非特許文献6】Synlett.41(1996)893-895.
【非特許文献7】J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1 (2000)4293-4300.
【非特許文献8】J.Am.Chem.Soc.125(2003)7198-7199.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、有機合成の反応剤として有用な有機ホウ素化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、アリル化合物に対し、触媒の存在下、ジボロン化合物を作用させることで高いエナンチオ選択性をもって光学活性アリルホウ素化合物又は光学活性なボリルシクロプロパン化合物が得られることを見出した。また、本発明は光学活性触媒を用いた場合に限られず、光学活性体でない触媒を用いた場合であっても、アリル化合物として置換シリル基等の特定の基を有するものを用いた場合には、ボリルシクロプロパン化合物が得られることも、今回新たに見出された事実である。
【0013】
即ち、本発明は、一般式(1)
【化7】

で表されるアリル化合物を、触媒の存在下に下記一般式(2)
【化8】

で表されるジボロン化合物とカップリング反応に付することを特徴とする、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される有機ホウ素化合物の製造方法を提供するものである。
【化9】

【化10】

【発明の効果】
【0014】
本発明の有機ホウ素化合物の製造方法は、優れた反応触媒活性及び/又は光学的な選択性を伴い進行する製造工程であることから、産業的に極めて有用である。また、本発明により製造される有機ホウ素化合物は医農薬や生理活性物質の中間体あるいは最終生成物として重要であり、例えば抗生物質の合成中間体として極めて有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の製造方法における出発原料であるアリル化合物は、一般式(1)で表される。一般式(1)中、Rで表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基等が挙げられる。
【0016】
一般式(1)中、Rで表されるシクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜7のシクロアルキル基が挙げられる。具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)中、Rで表されるアラルキル基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が挙げられる。具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、2−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、1−フェニルペンチル基、2−フェニルペンチル基、3−フェニルペンチル基、4−フェニルペンチル基、5−フェニルペンチル基、1−フェニルヘキシル基、2−フェニルヘキシル基、3−フェニルヘキシル基、4−フェニルヘキシル基、5−フェニルヘキシル基、6−フェニルヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)中、Rで表されるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)中、Rで表される脂肪族複素環基としては、例えば5員又は6員の脂肪族複素環基が好ましく、異種原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる脂肪族複素環基が挙げられる。具体的にはピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)中、Rで表される芳香族複素環基としては、例えば5員又は6員の単環の芳香族複素環基や多環の芳香族複素環基が好ましく、異種原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる芳香族複素環基が挙げられる。具体的にはピリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フルフリル基、ピラニル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中、Rで表されるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、或いは環状でもよい。例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)中、Rで表されるアラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられる。具体的にはベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)中、Rで表されるアリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられる。具体的にはフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)中、Rで表されるアルキルオキシカルボニル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。例えば炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基が挙げられる。具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
一般式(1)中、Rで表されるアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数8〜12のアラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。具体的にはベンジルオキシカルボニル基、フェニルエトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0026】
置換アルキル基としては、上記アルキル基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基又は保護基を有するアミノ基等の置換基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0027】
置換シクロアルキル基としては、上記シクロアルキル基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基又は保護基を有するアミノ基等の置換基で置換されたシクロアルキル基が挙げられる。
【0028】
置換アラルキル基としては、上記アラルキル基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基置換アミノ基等の置換基で置換されたアラルキル基が挙げられる。
【0029】
置換アリール基としては、上記アリール基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基置換アミノ基等の置換基で置換されたアリール基、又は上記アリール基の隣接した2個の水素原子がアルキレンジオキシ基等の置換基で置換されたアリール基が挙げられる。
【0030】
置換脂肪族複素環基としては、上記脂肪族複素環基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基で置換された脂肪族複素環基が挙げられる。
【0031】
置換芳香族複素環基としては、上記芳香族複素環基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基で置換された芳香族複素環基が挙げられる。
【0032】
置換アルコキシ基としては、上記アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基又は保護基を有するアミノ基等の置換基で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
【0033】
置換アラルキルオキシ基としては、上記アラルキルオキシ基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基置換アミノ基等の置換基で置換されたアラルキルオキシ基が挙げられる。
【0034】
置換アリールオキシ基としては、上記アリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基置換アミノ基等の置換基で置換されたアリールオキシ基、又は上記アリールオキシ基の隣接した2個の水素原子がアルキレンジオキシ基等で置換されたアリールオキシ基が挙げられる。
【0035】
置換シリル基としては、シリル基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基置換アミノ基等の置換基で置換されたシリル基が挙げられる。
【0036】
上記置換基、即ち、置換アルキル基、置換シクロアルキル基、置換アラルキル基、置換アリール基、置換脂肪族複素環基、置換芳香族複素環基、置換アルコキシ基、置換アラルキルオキシ基、置換アリールオキシ基及び置換アミノ基における各置換基を以下に説明する。
【0037】
アルキル基、シクロアルキル基及びアルコキシ基は、上記と同じである。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0038】
アルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。
【0039】
ハロゲン化アルキル基としては、例えば上記アルキル基がハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、沃素化等。)された炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。具体的にはクロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0040】
アルキル基置換アミノ基としては、アミノ基の水素原子の1個又は2個が上記アルキル基及び/又は上記シクロアルキル基で置換されたアミノ基が挙げられる。アルキル基置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等のジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0041】
保護基としては、アミノ保護基として用いられるものであれば何れも使用可能であり、例えば「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS Second Edition(JOHN WILEY & SONS, INC.)」にアミノ保護基として記載されているものが挙げられる。アミノ保護基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
アルキル基、シクロアルキル基及びアラルキル基は、上記と同じである。アシル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でも良い。カルボン酸由来の例えば炭素数2〜7のアシル基が挙げられる。具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。アルキルオキシカルボニル基としては、tert−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
保護基を有するアミノ基は、上記保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。保護基を有するアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、tert−ブチルオキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
環状アミノ基としては、ブチレン基、ペンチレン基等のアルキレン鎖、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2NHCH2CH2−、−CH2CH2OCO−基等が窒素原子に結合した環状アミンが挙げられ、その具体例としては、モルホリノ基、ピペリジノ基、1,3−オキサゾリン−2−オン−1−イル基等が挙げられる。
【0045】
次に、一般式(1)において、Eで表される脱離基について説明する。Eで示される炭酸エステルとしては、例えばメチル炭酸、エチル炭酸、イソプロピル炭酸、tert−ブチル炭酸などのアルキル炭酸エステル、ベンジル炭酸エステルが挙げられる。
【0046】
一般式(1)において、Eで示されるカルボン酸エステルとしては、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0047】
一般式(1)において、Eで示されるエーテルとしては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基、ベンジルオキシ基が挙げられる。
【0048】
一般式(1)において、Eで示されるリン酸エステルとしては、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェートなどのアルキルリン酸エステル、ベンジルリン酸エステルが挙げられる。
【0049】
一般式(1)において、Eで示されるスルホン酸エステルとしては、メタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、トリフルオロメタンスルホン酸エステルが挙げられる。
【0050】
一般式(1)で表されるアリル化合物は、トランス体及びシス体のいずれもとりうるが、両者は反応活性やエナンチオ選択性が異なるため、所望の目的物をより効率よく得られる構造異性体を選択する必要がある。
【0051】
本発明の製造方法においては、一般式(1)で表されるアリル化合物を、一般式(2)で表されるジボロン化合物と反応させる。一般式(2)で表されるジボロン化合物の使用量は、用いるアリル化合物、使用する反応容器、反応の形式、経済性などによって異なるが、通常アリル化合物類に対して、モル比で好ましくは0.5〜100倍、更に好ましくは1〜5倍の範囲から適宜選択される。
【0052】
一般式(2)で表されるジボロン化合物におけるXは、酸素原子や窒素原子等の孤立電子対を有する原子であればその種類に特に制限はない。孤立電子対を有していることで、該孤立電子対が、隣接するホウ素の空軌道と作用し、ジボロン化合物の反応性が適切なものとなる。一般式(2)において、4つのXは同一でもよく、或いは異なっていてもよい。隣り合う2つのXは他の原子を介して環を形成していてよく、或いは環を形成していなくてもよい。
【0053】
一般式(2)で表されるジボロン化合物において、環を形成している原子団としては例えば以下の(2a)ないし(2c)に示すものが挙げられる。環を形成していない原子団としては例えば以下の(2d)ないし(2f)に示すものが挙げられる。
【0054】
【化11】

【0055】
一般式(1)で表されるアリル化合物と、一般式(2)で表されるジボロン化合物との反応は触媒の存在下に行われる。触媒としては、両者の反応に対して触媒能を有する物質であればその種類に特に制限はないが、反応性の点から一価の銅の錯体、即ち銅(I)錯体を用いることが好ましい。特に、銅(I)錯体として、対イオンがアルコキシド又はヒドリドであるものを用いると、反応性が一層良好になる点から好ましい。
【0056】
銅(I)錯体における対イオンがアルコキシドである場合、該アルコキシドとしてはメトキシド、エトキシド、イソプロピルオキシド等が挙げられる。特にtert−ブトキシドであることが、反応性の点から好ましい。
【0057】
触媒として銅(I)錯体を用いる場合、該錯体はホスフィン配位子を有するものであることが、光学活性有機ホウ素化合物を高エナンチオ選択性で得ることができる点から好ましい。ホスフィン配位子としては、同一の又は異なる単座配位子、二座配位子等が挙げられる。特に二座配位子を用いることが好ましい。
【0058】
ホスフィン配位子の具体例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、ラセミのTol−BINAPなどが挙げられる。
【0059】
特にホスフィン配位子として、下記の一般式(5)で表される光学活性化合物(以下、この化合物をXantphosとも言う)を用いることが、有機ホウ素化合物を高収率で得ることができる点から好ましい。
【0060】
【化12】

【0061】
またホスフィン配位子として、不斉ホスフィン配位子を用いることも、光学活性有機ホウ素化合物を高エナンチオ選択性で得ることができる点から好ましい。この不斉ホスフィン配位子としては、同一の又は異なる単座配位子、二座配位子等が挙げられる。特に二座配位子を用いることが好ましい。
【0062】
不斉ホスフィン配位子の具体例としては、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン(CAMP)、1,2−ビス(アニシルフェニルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、1,2−ビス(アルキルメチルホスフィノ)エタン(BisP*)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン(NORPHOS)、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(CYCPHOS)、1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン(DEGPHOS)、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)ベンゼン(DuPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)エタン(BPE)、1−((置換ホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(UCAP−Ph)、1−(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−(置換ホスホラノ)ベンゼン(UCAP−DM)、1−((置換ホスホラノ)−2−(ビス(3,5−ジ(t−ブチル)−4−メトキシフェニル)ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−DTBM)、1−((置換ホスホラノ)−2−(ジ−ナフタレン−1−イル−ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−(1−Nap))、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン(BPPFA)、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール(BPPFOH)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ジシクロペンタン(BICP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−(5,5’,6,6’,7,7’,8,8’,−オクタヒドロビナフチル) (H8−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(TOL−BINAP)、2,2’−ビス(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(DM−BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(BICHEP)、((5,6),(5’6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビスジフェニルホスフィン) (SEGPHOS)、((5,6),(5’6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((5,6),(5’6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビス(3,5−ジ(tert−ブチル)−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)等が挙げられる。
【0063】
特にホスフィン配位子として、下記の一般式(6)で表される光学活性ホスフィンである2,3−ビス(アルキルメチルホスフィノ)キノキサリン(以下、この化合物をQuinoxPとも言う)を用いることが、光学活性有機ホウ素化合物を高エナンチオ選択性で得ることができる点から好ましい。
【0064】
【化13】

【0065】
一般式(5)中、R4で表される嵩高いアルキル基としては、例えばイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基等が挙げられる。入手の容易さの点でtert−ブチル基であることが好ましい。
【0066】
本発明の製造方法において、触媒の使用量は、用いるアリル化合物の種類、使用する反応容器、反応の形式、経済性などによって異なるが、アリル化合物に対して、通常モル比で好ましくは1/100,000〜1/2倍、更に好ましくは1/1,000〜1/10倍の範囲から適宜選択される。
【0067】
本発明の製造方法は、必要に応じて溶媒中で行うことができる。溶媒は、出発原料であるアリル化合物や、生成物である有機ホウ素化合物を溶解し、かつ各反応試剤と反応しないものであることが好ましい。
【0068】
溶媒の具体例としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、或いは2種以上適宜組み合わせて用いても良い。これらの溶媒のうち、特にTHF、トルエン、DMIを用いることが好ましい。
【0069】
溶媒の使用量は、出発原料であるアリル化合物の溶解度や経済性により決定される。例えば溶媒としてテトラヒドロフランを用いた場合、用いる出発原料によっては0.01質量%以下の低濃度から無溶媒あるいは無溶媒に近い状態で反応を行うことができる。通常、溶媒の使用量は、0.05〜10質量%、好ましくは0.10〜5質量%の範囲から適宜選択される。
【0070】
反応温度は、経済性等を考慮して、通常−80〜100℃、好ましくは0〜30℃の範囲から適宜選択される。
【0071】
反応時間は、用いる触媒の種類や使用量、用いる出発原料の種類や濃度、反応温度等の反応条件等により異なるが、一般に、数分から数十時間の間で反応は進行する。通常、好ましくは1分〜1ヶ月、更に好ましくは10分〜48時間の範囲から適宜選択される。
【0072】
本発明の製造方法は、反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0073】
本発明の製造方法により得られた有機ホウ素化合物は、医農薬や生理活性物質の中間原料として用いられ、例えば抗生物質の合成中間体として有用である。本発明の製造方法によって得られる有機ホウ素化合物類は、一般式(3)で表されるアリルホウ素化合物類と、一般式(4)で表されるボリルシクロプロパン類に大別される。反応機構的には、両者ともに共役部分において水素原子の移動及び結合の転位を伴うという点で同じであり、本質的な違いはない。
【0074】
例えば、一般式(1)で表されるアリル化合物において、Rが−C24Phで、Eが−CH2OCO2Meであるものを用い、触媒として2座ホスフィン配位子が配位した銅(I)アルコキシ錯体を用いた場合には、以下の反応機構に従いアリルホウ素化合物が生成すると本発明者らは推測している。
【0075】
【化14】

【0076】
上記の反応機構においては、先ずアルコキシ銅10とジボロン11とから生成したボリル銅中間体12に対し、アリル化合物13の炭素−炭素二重結合が配位し、配位錯体14が生成する。このとき、銅中心はテトラヘドラル型の構造をとり、炭素―炭素二重結合とホウ素―銅(I)結合が平行で、アリル化合物13における脱離基のβ位に銅が位置するジオメトリが最も安定である。その後、ホウ素と銅がsyn付加し、アルキル銅中間体15が生成する。続いて銅と脱離基がanti−β−脱離することで、目的とするアリルホウ素化合物(S)−16が生成する。そして同時に生成した銅カルボネート錯体17が脱炭酸し、それによって生じたアルコキシ銅10とジボロン11がトランスメタル化することで、ボリル銅中間体12が再生する。
【0077】
一方、一般式(1)で表されるアリル化合物において、Rが−Si(CH33で、Eが−CH2OCO2Meであるものを用い、触媒として2座ホスフィン配位子が配位した銅(I)アルコキシ錯体を用いた場合には、以下の反応機構に従いボリルシクロプロパン化合物が生成すると本発明者らは推測している。
【0078】
【化15】

【0079】
上記の反応機構においては、先ず、触媒前駆体であるアルコキシ銅20とジボロン21とのメタセシス反応によって、触媒サイクルにおける活性種であるボリル銅錯体22が生じる。このボリル銅錯体22は、アリル化合物23の二重結合に付加する。この付加はsynで起こるものと推定されている。付加によって生じたアルキル銅中間体24においては、炭酸銅化合物25の脱離を伴いながら閉環反応が進行する。それによって目的物であるボリルシクロプロパン化合物26が生じる。ボリルシクロプロパン化合物26と同時に生成する炭酸銅化合物25は、脱炭酸してアルコキシ銅20が再生する。
【0080】
本発明の製造方法において、一般式(3)で表されるアリルホウ素化合物類と、一般式(4)で表されるボリルシクロプロパン類のうち、どちらがより多く得られるかは、出発原料であるアリル化合物の構造に依存する。例えば、一般式(1)で表されるアリル化合物として、同式中、Rがアラルキル基又は置換アラルキル基のものを用いると、一般式(3)で表される光学活性アリルホウ素化合物が主として生成する。また一般式(1)で表されるアリル化合物として、同式中、Rがアリール基、置換アリール基又は置換シリル基のものを用いると、一般式(4)で表されるラセミ又は光学活性ボリルシクロプロパン化合物が主として生成する。
【0081】
本発明の製造方法において、一般式(3)で表されるアリルホウ素化合物類と、一般式(4)で表されるボリルシクロプロパン類のうち、どちらかを選択的に得たい場合には、触媒や溶媒などを適切に選択し、より有利な生成物比が得られる製造条件を選択すればよい。あるいは、一般式(3)で表されるアリルホウ素化合物類と、一般式(4)で表されるボリルシクロプロパン類との混合物を生成物させ、晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィー又は分取HPLCなどにより所望の有機ホウ素化合物を単離してもよい。
【0082】
本発明の製造方法において、一般式(4)で表されるボリルシクロプロパン類は、ラセミ体であるか又は光学活性なものである。このボリルシクロプロパン類は、構造的にトランス体及びシス体の両方をとることができる。本発明者らの経験上、トランス体の異性体の方が、若干リッチな混合物である傾向がある。トランス体及びシス体のうち、どちらかを選択的に得たい場合には、触媒や溶媒などを適切に選択し、より有利な生成物比が得られる製造条件を選択すればよい。あるいは、トランス体及びシス体の混合物を生成物させ、晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィー又は分取HPLCなどにより所望の異性体を単離してもよい。
【0083】
本発明の有機ホウ素化合物の製造方法は、優れた反応触媒活性及び/又は光学的な選択性を伴い進行する製造工程であることから、短工程で所望の有機ホウ素化合物類を得ることができる。したがって産業的に極めて有用なものである。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。しかしながら本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
すべての合成操作はテフロン(登録商標)コートされたゴムセプタムでシールした試験管を使って行なった。試験管は加熱-真空-冷却して乾燥させたものを使用した。反応はアルゴンあるいは窒素雰囲気下で行なった。
【0086】
ホスフィン配位子であるXantphosはOrganometallics,14(1995)3081-3089の手順にて調製した。銅(I)錯体であるCu(O-t-Bu)は(Inorg.Chem.29(1990)3680-3685に従い、CuClとLi(O-t-Bu)の混合物を真空昇華することによって調製した。QuinoxPはシグマアルドリッチ社で販売されている試薬を使用した。他の光学活性リンリガンドはStrem Chemicals,Incから購入した。使用溶媒は関東化学社の脱水級を購入しこれをさらに凝固−融解法により脱気し、モレキュラーシーブ4Aで脱水して使用した。
【0087】
NMRスペクトルはVarian Gemini 2000(1H; 300MHz、13C; 75.4MHz、31P; 121.4MHz)NMR装置を使用した。内部標準としてテトラメチルシラン(1H)、重クロロホルム(13C)を使用し、外部標準として85%リン酸(31P)を使用した。GC分析は島津社GC-14B FID検出器を使用した。質量分析はJEOL社JMS-700TZにてESI法又はAPCI法で測定した。
【0088】
出発原料である一般式(1)で表されるアリル化合物は非特許文献3に従い、標準的な手順を用い、相当するアリルアルコールから調製した。
【0089】
〔実施例1〕
4,5,5,5-テトラメチル-2-[(3S)-5-フェニル-1-ペンテン-3-イル]-1,3,2-ジオキサボロランの合成
アルゴン雰囲気下グローブボックスにてCu(O-t-Bu)(3.4mg、0.025mmol)、(R,R)-ビス(tert-ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(略称(R,R)-QuinoxP)(8.4mg、0.025mmol)をバイアル容器に入れ、乾燥THF(0.5mL)を入れて撹拌し黄色スラリーとした。ビス(ピナコラト)ジボロン(254mg、1.0mmol)を加えたところ混合物は黄色から赤紫色に変化した。アリル化合物(メチル炭酸―5−フェニル−2−ペンテン―1−イルエステル)(0.5mmol)を混合物に加えたところ、ガスが発生し、30分の間、内温がわずかに上昇するのが観察された。反応後、反応混合物を直接カラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン:酢酸エチル=95.5:0.5-95:5)にかけ、表題の有機ホウ素化合物を得た。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDl3,δ): 1.24(s,12H), 1.66-1.83(m,1H), 1.83-1.95(m,2H), 2.51-2.73(m,2H), 4.96-5.07(m,2H), 5.75-5.90(m,1H), 7.12-7.30(m,5H). 13C-NMR(CDl3,δ): 24.5, 24.6, 29.8(br), 32.1, 35.1, 83.2, 114.1, 125.7, 128.3, 128.6, 139.3, 142.8. [α]29.5D=-5.12(c 1.04, CHCl3), IR(neat, cm-1): 3027(m), 2978(m), 2928(m), 1631(m), 1320(s), 1141(s). HRMS-APCI(m/z): [M+Na]+ calcd for C17H25O2BNa, 295.1845; found, 295.1836.
【0090】
〔実施例2ないし11〕
アリル化合物、ホスフィン配位子、溶媒など種々変更し、実施例1と同様の手順により光学活性アリルホウ素化合物を得た。結果はまとめて表1に示した。なお、表中pinは、ピナコラートを表す(以下のすべての表において同じ)。
【0091】
【表1】

【0092】
〔実施例12ないし15〕
アリル化合物を種々変更し、実施例1と同様の手順によりボリルシクロプロパン及びアリルホウ素化合物を得た。結果はまとめて表2に示した。
【0093】
【表2】

【0094】
表2において、用いたアリル化合物類は、非特許文献3に基づき、相当するアリルアルコール類から標準的手順にて合成した。
【0095】
実施例13において用いられるアリル化合物((E)−2b)について説明すると、同化合物の化学名は(E)−3−(ジメチルフェニルシリル)−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。同定データを以下に示す。1H-NMR(CDCl3,δ) 0.35(s,6H), 3.80(s,3H), 4.68(t,J=1.5Hz,2H), 6.12(dd,J=1.8Hz,2H), 7.35-7.52(m,5H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -3.0, 54.8, 69.9, 127.9, 129.2, 131.7, 133.9, 138.0, 140.4, 155.7.
【0096】
実施例13において得られるボリルシクロプロパン((E)−3b)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(ジメチルフェニルシリル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) -0.17(ddd,3J=5.8,7.1,8.3Hz,1H), -0.076(ddd,3J=8.3,8.5,9.4Hz,1H), 0.18(d,J=4.4Hz,6H), 0.56(ddd,3J=7.1,8.5Hz,2J=3.0Hz,1H), 0.87(ddd,3J=5.8,9.4Hz,2J=3.0Hz,1H), 1.22(s,12H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -4.4, -4.1, 2.3, 7.8, 24.5, 24.6, 82.9, 127.7, 128.9, 134.0, 139.0.
【0097】
実施例14において用いられるアリル化合物((E)−2c)について説明する。化学名は(E)−3−(ジフェニルメチルシリル)−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.63(s,3H), 3.80(s,3H), 4.7(d,J=4.2Hz,2H), 6.1-6.3(m,2H), 7.4-7.5(m,10H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -4.2, 54.7, 69.6, 127.9, 129.1, 129.5, 134.8, 135.8, 142.5, 155.6.
【0098】
実施例14において得られるボリルシクロプロパン((E)−3c)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(ジフェニルメチルシリル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) -0.15(ddd,3J=5.8,8.7,9.4Hz,1H), -0.35(ddd,3J=7.0,8.7,9.4Hz,1H), 0.45(s,3H), 0.56(ddd,3J=7.0,8.7Hz,2J=3.0Hz,1H), 0.96(ddd,3J=5.8,9.3Hz,2J=3.0Hz,1H), 1.23(s,12H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -5.6, -3.0, 1.0, 7.7, 24.5, 24.6, 83.0, 127.71, 127.73, 129.23, 129.26, 135.0, 136.57, 136.60.
【0099】
実施例15において用いられるアリル化合物((E)−2d)について説明する。化学名は(E)−3−[ジメチル(2−プロピルオキシ)シリル]−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。この化合物は、Org.Lett.7(2005)3001-3004に記載の反応を利用して合成した。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.20 (s,6H), 1.15(d,J=6.3Hz,6H), 3.81(s,3H), 4.0(sept,J=6.1Hz,1H), 4.68(dd,J=4.8,1.4Hz,2H), 5.94-6.00(dd,J=5.9,1.1Hz,1H), 6.20(dt,J=4.7,8.9Hz,1H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -1.6, 25.6, 54.8, 65.1, 69.7, 131.6, 140.4, 155.6.
【0100】
実施例15において得られるボリルシクロプロパン((E)−3d)について説明する。化学名は2−[(E)−2−[ジメチル(2−プロピルオキシ)シリル]シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。
【0101】
〔実施例16ないし22〕
アリル化合物、触媒及び溶媒など種々変更し、実施例1と同様の手順によりボリルシクロプロパン及びアリルホウ素化合物を得た。結果はまとめて表3に示した。
【0102】
【表3】

【0103】
実施例16において用いられるアリル化合物((Z)−2a)について説明する。化学名は(Z)−3−(トリメチルシリル)−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.15(d,J=0.6Hz,9H), 3.80(d,J=0.9Hz,3H), 4.70(d,J=6.6Hz,2H) (s,6H), 5.85(dd,J=15,1Hz,1H), 6.40(ddt,J=15,6.6,1Hz,1H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -0.30, 54.7, 67.6, 135.3, 140.4, 155.8. IR(neat,cm-1) 2958(m), 1749(s), 1614(l), 1443(m), 1347(m), 1248(s), 959(m), 836(s), 764(m).
【0104】
〔実施例23及び24〕
アリル化合物を変更し、触媒を不斉触媒とし、実施例1と同様の手順により光学活性ボリルシクロプロパン及びアリルホウ素化合物を得た。結果はまとめて表4に示した。
【0105】
【表4】

【0106】
実施例23において得られる光学活性ボリルシクロプロパン((S,S)−3a)について説明する。化学名は(1S,2S)−2−[(E)−2−[トリメチルシリル]シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) -0.27(ddd,3J=5.5,5.6,8.25Hz,1H), -0.15(m,1H), -0.068(s,9H), 0.51(ddd,3J=7.1,8.25Hz,2J=2.7Hz,1H), 0.78(ddd,3J=5.6,9.5Hz,2J=2.7Hz,1H), 1.22(s,12H). 13C-NMR(CDCl3,δ) -2.8, -2.9, 3.4, 7.7, 24.5, 82.8.
【0107】
(1S,2S)−3aのee純度はキラルGC分析(Chiradex G−TA,65℃、(S,S)異性体: t=47.0分、(R,R)異性体: t=58.8分)で決定された。[α]19D=+24.4(c 1.2, CHCl3).
【0108】
実施例23において得られる光学活性ボリルシクロプロパン((S,S)−3a)の絶対配置は新モッシャー法を用いて決定した。サンプルを過酸化水素酸化によりアルコールとし、(−)体及び(+)体のMTPA酸クロライドから(R)体及び(S)体のエステルへと誘導した。そして各々のMTPAエステルの1H−NMRチャートを解析することにより、主生成物は(S,S)体であると決定した。
【0109】
〔実施例25ないし35〕
アリル化合物、触媒及び溶媒など種々変更し、実施例1と同様の手順によりボリルシクロプロパンを得た。結果はまとめて表5に示した。
【0110】
【表5】

【0111】
実施例25において得られるボリルシクロプロパン((E)−3e)について説明する。化学名は2−[(E)−2−フェニルシクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.30(ddd,3J=5.5,6.8,9.7Hz,1H), 1.01(ddd,3J=5.3,9.7Hz,2J=3.7Hz,1H), 1.16(ddd,3J=6.8,9.7Hz,2J=3.7Hz,1H), 1.25(s,12H), 2.10(ddd,3J=6.8,9.7,3.7Hz,1H), 7.07-7.27(m,5H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 4.5, 14.9, 21.7, 24.5, 24.6, 83.1, 125.6, 125.7, 128.3, 143.5. IR(neat,cm-1) 3027(s), 2978(m), 2931(s), 1605(m), 1418(l), 1356(l), 1319(l), 1216(l), 1142(l), 859(l), 760(m), 750(m), 696(l), 670(l).
【0112】
〔実施例36ないし42〕
アリル化合物及び触媒などを種々変更し、実施例1と同様の手順によりボリルシクロプロパンを得た。結果はまとめて表6に示した。
【0113】
【表6】

【0114】
〔実施例43ないし55〕
アリル化合物及び触媒などを種々変更し、実施例1と同様の手順によりボリルシクロプロパンを得た。結果はまとめて表7に示した。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例44において用いられるアリル化合物((Z)−2e)について説明する。化学名は(Z)−3−フェニル−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。この化合物は、J.A.C.S.123(2001)12168-12175.)に基づいて合成した。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 3.80(s,3H), 4.91(dd,J=1.6,6.5Hz,2H), 5.85(dt,J=12,6.6Hz,1H), 6.91(d,J=12Hz,1H), 7.22-7.39(m,5H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 54.7, 64.7, 125.2, 127.7, 128.4, 128.7, 133.5, 135.9, 144.8.
【0117】
実施例45において得られるボリルシクロプロパン((E)−3f)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(4−メチルフェニル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.26(ddd,3J=5.4,6.8,9.6Hz,1H), 0.97(ddd,3J=5.2,9.6Hz,2J=3.6Hz,1H), 1.12(ddd,3J=6.8,8.1Hz,2J=3.6Hz,1H), 1.25(d,J=3.8Hz,12H), 2.07(ddd,3J=5.2,8.1,3.6Hz,1H), 2.29(s,3H), 7.02(dd,J=8.1,23.1Hz,4H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 4.2, 14.7, 20.8, 21.5, 24.5, 24.6, 83.1, 125.7, 129.0, 135.1, 140.3. IR(neat,cm-1) 2978(m), 2927(m), 1518(m), 1420(l), 1407(m), 1353(l), 1319(l), 1218(m), 859(l), 797(m), 661(m).
【0118】
実施例46において得られるボリルシクロプロパン((E)−3g)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(2−メチルフェニル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.15(ddd,3J=5.9,6.4,9.5Hz,1H), 1.01(ddd,3J=5.7,9.5Hz,2J=3.6Hz,1H), 1.13(ddd,3J=6.4,8.0Hz,2J=3.6Hz,1H), 1.26(s,12H), 2.09(ddd,3J=5.7,5.9,3.6Hz,1H), 2.40(s,3H), 7.01-7.12(m,4H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 2.2, 12.1, 19.5, 20.2, 24.55, 24.6, 83.1, 125.6, 125.1, 125.9, 129.6, 140.9. IR(neat,cm-1) 2978(m), 2931(m), 1605(m), 1493(m), 1417(s), 1318(s), 1215(m), 1143(s), 859(m), 757(m), 732(m), 669(m).
【0119】
実施例47において得られるボリルシクロプロパン((E)−3h)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(2,4−ジメチルフェニル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.11(ddd,3J=6.1,6.5,9.5Hz,1H), 0.99(ddd,3J=5.9,9.5Hz,2J=3.3Hz,1H), 1.10(ddd,3J=6.5,7.8Hz,2J=3.3Hz,1H), 1.26(s,12H), 2.05(ddd,3J=5.9,6.1,3.3Hz,1H), 2.28(s,3H), 2.36(s,3H), 6.94(d,J=15.2Hz,3H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 2.8, 12.0, 19.3, 19.9, 20.74, 24.5, 83.0, 125.7, 126.3, 130.5, 135.4, 137.8.
【0120】
実施例49において用いられるアリル化合物((E)−2j)について説明する。化学名は(E)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 3.81(d,J=3.0Hz,6H), 4.77(dd,J=0.6,6.6Hz,2H), 6.17(dt,J=6.6,16Hz,1H), 6.86(d,J=16Hz,1H), 6.86(d,J=8.8Hz,2H),7.34(d,J=8.8Hz,2H).
【0121】
実施例49において得られるボリルシクロプロパン((E)−3j)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(4−メトキシフェニル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.22(ddd,3J=5.6,6.8,10Hz,1H), 0.93(ddd,3J=5.3,10Hz,2J=3.7Hz,1H), 1.10(ddd,3J=6.8,7.8Hz,2J=3.7Hz,1H), 1.26(s,12H), 2.07(ddd,3J=5.3,5.6,3.7Hz,1H), 3.77(s,3H), 6.78-7.28(m,4H).
【0122】
実施例50において用いられるアリル化合物((Z)−2j)について説明する。化学名は(Z)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペン−1−イル メチル炭酸エステルである。同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 3.81(d,J=6.3Hz,6H), 4.90(dd,J=1.4,6.6Hz,2H), 5.75(dt,J=6.6,12Hz,1H), 6.64(d,J=12Hz,1H), 6.90(d,J=1.9Hz,2H),7.17(d,J=8.8Hz,2H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 55.4, 55.8, 114.5, 124.1, 129.2, 130.8, 133.8, 156.5, 159.8.
【0123】
実施例51において得られるボリルシクロプロパン((E)−3k)について説明する。化学名は2−[(E)−2−(4−フルオロフェニル)シクロプロピル]−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランである。 同定データを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,δ) 0.23(ddd,3J=5.6,6.8,9.7Hz,1H), 0.94(ddd,3J=5.4,8.1Hz,2J=3.8Hz,1H), 1.13(ddd,3J=6.8,8.1Hz,2J=3.8Hz,1H), 1.25(d,J=2.7Hz,12H), 2.08(dt,1H), 6.89-7.06(m,4H). 13C-NMR(CDCl3,δ) 4.2, 14.6, 21.0, 24.6, 83.2, 114.8, 115.1, 127.1, 127.2, 138.9, 139.0, 159.6, 162.8.
【0124】
〔実施例56及び57〕
アリル化合物を変更し、触媒を不斉触媒とし、実施例1と同様の手順により光学活性ボリルシクロプロパンを得た。結果はまとめて表8に示した。
【0125】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

で表されるアリル化合物を、触媒の存在下に下記一般式(2)
【化2】

で表されるジボロン化合物とカップリング反応に付することを特徴とする、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される有機ホウ素化合物の製造方法。
【化3】

【化4】

【請求項2】
一般式(1)で表されるアリル化合物として、同式中、Rがアラルキル基又は置換アラルキル基のものを用い、一般式(3)で表される光学活性アリルホウ素化合物を主として生成させる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表されるアリル化合物として、同式中、Rがアリール基、置換アリール基又は置換シリル基のものを用い、一般式(4)で表されるラセミ又は光学活性ボリルシクロプロパン化合物を主として生成させる請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
触媒が銅(I)錯体である請求項1ないし3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
銅(I)錯体の対イオンがアルコキシドである請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
銅(I)錯体の対イオンがヒドリドである請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
銅(I)錯体がホスフィン配位子を有するものである請求項4ないし6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
ホスフィン配位子が一般式(5)
【化5】

で表される化合物である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
ホスフィン配位子が不斉ホスフィン配位子である請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
不斉ホスフィン配位子が一般式(6)
【化6】

で表される光学活性ホスフィンである請求項9記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−260734(P2008−260734A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106170(P2007−106170)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】