有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池
【課題】アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であり、比較的容易に製造することができる有機ラジカル化合物、それを用いた非水電解質二次電池用電極および該電極を用いた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物を活物質として含み、該有機ラジカル化合物は導電剤としてのカーボンに担持されていることを特徴とする。
【解決手段】繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物を活物質として含み、該有機ラジカル化合物は導電剤としてのカーボンに担持されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ラジカル電池に有用な有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、存在する電池の種類は化学電池と物理電池の二つに分けられる。化学電池とはエネルギーを化学反応によって直接に直流電流に変換する電池である。この化学電池には一次電池、二次電池、燃料電池、生物電池が分類される。一方、物理電池は、光や熱による物理変化によって生じるエネルギーを電気エネルギーに変換するものである。物理電池には太陽電池、熱電池、原子力電池等が分類される。
【0003】
また、近年、自動車、ノート型パソコン、携帯電話などの急速な市場拡大に伴い、これらに用いられる、柔軟性が高く、高速充電が可能であり、環境性に優れた二次電池への要求が高まっている。
【0004】
そして、このような二次電池として、有機化合物を用いた電池に関する関心が高まっており、適用可能な材料の開発が進められている。
【0005】
より具体的には、例えば、軽量で大きなエネルギー密度を持つ電池として、活物質に硫黄化合物や有機化合物が用いられた電池が開発されている。この電池としては、例えば、ジスルフィド結合を有する活物質(有機硫黄化合物)を正極に用いた電池が知られている。この電池は、ジスルフィド結合の生成、解離を伴う電気化学的酸化還元反応を原理として利用したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この電池では、電子を放出して放電すると、硫黄同士が結合するため、ジスルフィド結合の再結合の効率が小さく、充電効率が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、二次電池としての充電効率を向上させるとともに、電池の軽量化を図るべく、ニトロキシドラジカルを有する化合物を活物質として正極に用いた電池の開発がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
また、本願発明者等により、有機ラジカル化合物を使用した有機ラジカル電池が提案されている。この有機ラジカル化合物は、ポリアセチレン骨格に安定炭素化水素ラジカルを有するポリマーであり、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−50297号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hiroyuki Nishide, Shigeyuki Iwase, Yong-Jin Pu, Takeo Suga, Kentaro Nakahara and Masaharu Satoh, Electrochemica Acta 50, 2004, 827-831
【非特許文献2】Katsuya Inoue, Thesis, The University of Tokyo, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記非特許文献1に記載の電池では、放電時の還元反応において、ニトロキシドラジカルがアニオンに変化すると、このアニオンが水素イオンと結合して劣化するため、正極の活物質が極めて不安定になり、電池の劣化が大きくなるという問題があった。
【0012】
また、上記非特許文献2に記載の電池では、有機ラジカル化合物の製造工程数が多い(13工程)ため、製造工程が複雑になるとともに、コストアップになるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であり、比較的容易に製造することができる有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、本発明の第1の有機ラジカル化合物は、還元された状態において下記式(I)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(II)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする。
【0017】
【化2】
【0018】
また、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、下記式(2)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0019】
【化3】
【0020】
ここで、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、還元された状態において下記式(III)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(IV)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする。
【0021】
【化4】
【0022】
また、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、走査速度が0.05V/sであり、走査範囲が−0.4V〜1.0V(vs.RHE)であるサイクリックボルタンメトリーにより求めた酸化電位が−0.2〜−0.16Vの範囲内Vの範囲内にあり、還元電位が0.6〜0.8Vの範囲内にあることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第3の有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(3)または式(4)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
また、本発明の第4の有機ラジカル化合物は、下記式(5)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0027】
【化7】
【0028】
また、本発明の電池用電極は、本発明の第1〜第4の有機ラジカル化合物のいずれかの有機ラジカル化合物を活物質として含むことを特徴とする。
【0029】
ここで、本発明の電極用電池は、有機ラジカル化合物が、導電材としてのカーボンに担持されていることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の電池は、正極、負極、及び正極と負極との間に介在し、電解質を含有するセパレーターとを備え、活物質の酸化還元反応を充放電過程おいて使用する電池であって、正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電池用電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の有機ラジカル化合物は、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であり、比較的容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る電池の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電池の構成を示す側面図である。
【図3】中間生成物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図4】中間生成物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のESRスペクトルデータのグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の結晶構造を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のESRスペクトルデータのグラフである。
【図12】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図13】紫外可視吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図14】紫外可視吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図15】サイクリックボルタモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がポリアセチレンに連結した構造を有するものであり、繰り返し単位中に、下記式(6)で表されるラジカル構造単位を有するアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物である。
【0034】
【化8】
【0035】
この有機ラジカル化合物の放充電による酸化還元反応を、以下の反応スキーム1に示す。本実施形態の有機ラジカル化合物は、以下の反応スキーム1に示すように、還元された状態において式(I)で示されるアニオン部分構造をとり、酸化された状態において式(II)で示されるカチオン部分構造をとり、繰り返し充電及び放電を行うことができる。
【0036】
ここで、反応スキーム1に示す式(6)で表される中性状態(ポリラジカル状態)、式(1)で表される有機ラジカル化合物が電子を失い、酸化された状態(ポリカチオン状態であって、式(II)の状態)、及び式(6)で表される有機ラジカル化合物が電子を受け取り、還元された状態(ポリアニオン状態であって、式(I)の状態)のいずれの状態においても、極めて安定している点に特徴がある。
【0037】
<反応スキーム1>
【化9】
【0038】
なお、ここで言う「極めて安定」とは、室温下において、大気や水分等と反応を起こさずに、図1に示す3つの状態(即ち、ポリラジカル状態、ポリカチオン状態、及びポリアニオン状態)が、長時間維持できることを言う。
【0039】
従って、上記式(6)で表される有機ラジカル化合物を電極の活物質として使用することにより、電極の活物質が極めて安定化するため、上記従来技術とは異なり、電池の劣化を防止することができる。その結果、長期間使用可能な二次電池を提供することが可能になる。
【0040】
また、上記反応スキーム1で示すポリアニオンは青色を有しており、ポリラジカル及びポリカチオンはオレンジ色を有しているが、いずれも透明でフレキシブル性を有している。従って、本実施形態の有機ラジカル化合物を電極の材料として使用することにより、電極の種類に対応させて、当該電極を容易に加工することが可能になる。
【0041】
次に、本実施形態における有機ラジカル化合物の製造方法の概略を以下の反応スキーム2に示す。
【0042】
<反応スキーム2>
【化10】
【0043】
式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得るには、まず、式(7)のフルオレンをエタノール等のアルコールに溶解し、式(7)のフルオレンが溶解したアルコール溶液に、4−ブロモベンズアルデヒドと水酸化カリウムを加えて、還流することにより、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得る。
【0044】
次いで、式(8)に示す化合物を酢酸等のカルボン酸に懸濁させて、この懸濁液に臭素を滴下して攪拌後、還流を行い、式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得る。
【0045】
次いで、式(9)に示す化合物をジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に溶解させた後、この溶解液にフルオレンを溶解させる。次いで、この溶解液にカリウムtert−ブトキシドを溶解させて攪拌を行った後、塩酸溶液を加えることにより、式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0046】
次いで、式(10)に示す化合物と3−メチル−1−ブチン−3−オールをヨウ化銅と混合し、この混合物を、テトラヒドロフラン(THF)とトリエチルアミンの混合液に溶解させる。次いで、この溶解液に、トリフェニルフォスフィン、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドを加え、攪拌した後、混合液を濾過し、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィーを行うことにより、式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0047】
次いで、式(11)に示す化合物をトルエン等の溶媒に溶解させた後、この溶解液に水素化ナトリウムを加えて還流する。その後、反応液に水を加え、ジクロロメタンにより分液を行い、有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、濃縮を行う。そして、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィーを行うことにより、式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0048】
次いで、式(12)に示す化合物をトルエン等の溶媒に溶解させた後、この溶解液にトリエチルアミンを加え、凍結乾燥を行う。次いで、トルエンに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(12)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、攪拌を行う。その後、メタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィーによって。所定のフラクションを分取し、式(13)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0049】
そして、式(13)に示す化合物とカリウムtert-ブトキシドとをジメチルホルムアミドに溶解して、室温で撹拌後、蒸留水にフェリシアン化カリを溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、室温で撹拌することにより、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であるポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル)を得る。
【0050】
なお、反応スキーム2に示すように、式(12)に示す化合物を得た後、以下の反応によっても、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得ることができる。
【0051】
即ち、式(12)に示す化合物とカリウムtert-ブトキシドとをジメチルホルムアミドに溶解して撹拌し、蒸留水にフェリシアン化カリを溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、室温で撹拌することにより、式(14)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル得た後、式(14)に示す化合物をトルエンに溶解させ、この溶解液にトリエチルアミンを加え、凍結乾燥を行う。次いで、トルエンに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(14)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、攪拌を行う。その後、エタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィーによって所定のフラクションを分取し、式(6)に示す有機ラジカル化合物を得る。
【0052】
このように、本実施形態においては、上記従来技術に比し、有機ラジカル化合物の製造工程数が少ない(7工程)ため、製造工程が容易になるとともに、コストアップを抑制することが可能になる。
【0053】
なお、有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がモノアセチレンに連結した構造を有する、上記式(14)で表されるラジカル構造を有するモノアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であってもよい。
【0054】
この有機ラジカル化合物の放充電による酸化還元反応を、以下の反応スキーム3に示す。この有機ラジカル化合物は、以下の反応スキーム3に示すように、還元された状態において式(III)で示されるアニオン部分構造をとり、酸化された状態において化学式(IV)で示されるカチオン部分構造をとり、繰り返し充電及び放電を行うことができる。この場合も、反応スキーム3に示す式(14)で表される中性状態(モノラジカル状態)、式(14)で表される有機ラジカル化合物が電子を失い、酸化された状態(ポリカチオン状態であって、式(IV)の状態)、及び式(14)で表される有機ラジカル化合物が電子を受け取り、還元された状態(ポリアニオン状態であって、式(III)の状態)のいずれの状態においても、極めて安定している。
【0055】
<反応スキーム3>
【化11】
【0056】
また、有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(15)または下記式(16)で表されるラジカル構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であっても良い。
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
更に、有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がモノジアセチレンに連結した構造を有する、下記式(17)で表されるラジカル構造を有するモノアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であってもよい。
【0060】
【化14】
【0061】
次に、本実施形態における電池について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電池の構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る電池の構成を示す側面図である。なお、ここでは、電池として、二次電池を例に挙げて説明する。
【0062】
図1、図2に示すように、二次電池1は、正極リード10が形成された正極2と、負極リード11を有する負極3と、正極2と負極3との間に介在する電解質を含有するセパレーター4とを備え、図1、図2に示すように、シート形状を有している。即ち、本実施形態の二次電池1では、正極2と負極3とが、セパレーター4を介して、対向するように重ね合った構成を有している。
【0063】
そして、本実施形態においては、上述の正極2及び負極3の少なくとも一方が、上述の有機ラジカル化合物を活物質として含む構成としている。即ち、上述の有機ラジカル化合物は、二次電池1において、正極2、負極3の活物質として機能し、充電反応および放電反応等の電極反応に直接寄与する構成となっている。
【0064】
以下、正極に、上述の有機ラジカル化合物を含有する電極を使用する場合を例に挙げて説明する。
【0065】
正極2は、図1、図2に示すように、アルミニウム等の金属により形成された金属体2aと、当該金属体2aの表面に設けられ、上述の有機ラジカル化合物、カーボン、及びバインダからなる電極活物質膜2bとにより構成されている。
【0066】
カーボンは、有機ラジカル化合物を含有する正極2のインピーダンスを低下させて、エネルギー密度、出力特性を向上させるとともに、導電性を向上させるためのものであり、また、有機ラジカル化合物を担持する役割を有する。
【0067】
このカーボンとしては、特に限定されないが、例えば、グラファイト、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、カーボンナノチューブやフラーレン等の炭素繊維等が使用できる。なお、これらを単体で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0068】
また、バインダは、有機ラジカル化合物とカーボンとを接着するためのものであり、このバインダとしては、特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料やフッ素系ゴムやスチレン・ブタジエン共重合ゴム等の合成ゴムを使用することができる。
【0069】
なお、正極2を形成する際には、まず、有機ラジカル化合物とカーボンとを、バインダが溶解された溶液に加えて混合してスラリーを形成し、このスラリーを金属体2a上に滴下することにより、金属体2aの表面に電極活物質膜2bを形成する。この際、有機ラジカル化合物とカーボンとバインダとを所定の配合比で混合することが好ましい。例えば、カーボン100質量部に対して、有機ラジカル化合物を50〜100質量部配合する構成とすることができる。
【0070】
また、本実施形態における有機ラジカル化合物は、金属のような伝導電子を有するため、上述のカーボン、及びバインダーを使用せず、有機ラジカル化合物のみで正極2を形成する構成としてもよい。このような構成により、電池容量を向上させることができるとともに、正極2を形成する際に、コストダウンを図ることが可能になる。
【0071】
負極3は、図1、図2に示すように、リチウム等の金属により形成された金属体3aと銅等の金属により形成された金属体3bとにより構成されている。
【0072】
セパレーター4としては、電解質を含有する樹脂層により構成されており、この電解質は、正極と負極との間の荷電担体輸送を行うものである。
【0073】
セパレーター4を構成する樹脂層としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の高分子材料により形成されたものを使用することができる。
【0074】
また、電解質としては、溶媒に電解質塩を溶解した電解質溶液を使用することができる。このような溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の有機溶媒を使用することができる。なお、これらの溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0075】
また、電解質塩としては、例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等を使用することができる。なお、電解質として、上述の電解質塩の代わりに、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン系重合体、アクリルニトリル系重合体等の固体電解質を使用する構成としてもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、シート形状を有する二次電池1を例に挙げて説明したが、二次電池1の形状は、特に限定されない。
【0077】
また、本実施形態の二次電池は、自動車、ノート型パソコン、携帯電話、カード、あるいは高容量であるが充電速度の遅い二次電池の充電を助ける補助電池等に使用することができる。
【0078】
なお、本実施形態の有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がポリアセチレンに連結した構造を有するものであり、ポリアセチレン骨格に有機ラジカルを共役系で結合させ、ラジカルポリマー自体に伝導性を持たせたものであるが、ポリマー骨格は、ポリアセチレン骨格に限定されず、ポリアセチレン骨格以外のポリマー骨格に、本実施形態の炭化水素からなる有機ラジカルを共役系で結合させたものであっても良い。
【0079】
このようなポリマー骨格としては、例えば、ポリエチレン骨格、ポリプロピレン骨格、ポリアクリル酸骨格、ポリアクリロニトリル骨格等が挙げられる。
【0080】
そして、この場合も、上記式(6)で表される有機ラジカル化合物の場合と同様に、これらのポリマー骨格を有する有機ラジカル化合物を、電極の活物質として使用することにより、電極の活物質が極めて安定化するため、上記従来技術とは異なり、電池の劣化を防止することができる。その結果、長期間使用可能な二次電池を提供することが可能になる。
【実施例】
【0081】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0082】
(有機ラジカル化合物の合成)
式(7)のフルオレン化合物10g(60.2mmol)を、窒素気流下でフラスコに加え、次いで、エタノール300mlを加えて溶解した。次いで、式(7)のフルオレンが溶解したエタノール溶液に、4−ブロモベンズアルデヒド11.13g(60.2mmol)と水酸化カリウム6.8g(120.03mmol)を加えて、2時間、還流を行った。なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過することにより、黄色を有する、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。式(8)に示す化合物の収量は16.33gであり、収率は81.5%であった。
【0083】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0084】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d7.75(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.69(d, 2H, J = 7.40 Hz), 7.57(d, 2H, J = 8.40 Hz), 7.55(s, 1H), 7.50(d, 1H, J = 7.60), 7.48(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.37(t, 1H, J = 7.60 Hz), 7.31(t, 2H, J = 7.20 Hz), 7.20-7.10(m,3H), 7.06(t, 1H, J = 8.00 Hz).
本実施形態における核磁気共鳴法(1HNMR)の測定は、測定装置として、JEOL AL400(日本電子(株)製)を使用し、内部基準としてテトラメチルシランを使用するとともに、周波数を400MHzに設定して行った。
【0085】
次いで、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレン1g(0.3mmol)を、窒素気流下でフラスコに加え、次いで、酢酸11mlを加えて懸濁させ、この懸濁液に臭素0.155mlを滴下して、1時間、攪拌し、その後、1時間、還流を行った。
【0086】
なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、淡黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過するとともに、少量のエタノールで洗浄することにより、淡黄色を有する、式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。式(9)に示す化合物の収量は1.11gであり、収率は89.7%であった。
【0087】
また、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0088】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.81(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.71(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.619(s, 1H), 7.625(d, 2H, J = 8.00Hz), 7.43(t, 1H, J=7.20 Hz), 7.39-7.32(m, 3H), 7.25-7.21(m, 2H), 6.89(t, 1H, J = 7.6 Hz), 6.29(d, 1H, J = 8.00 Hz ).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(9)に示す化合物4.21g(10.22mmol)を入れ、これにジメチルホルムアミド83mlを加えて溶解させた後、この溶解液にフルオレン1.7g(10.22mmol)を加えて溶解させた。次いで、この溶解液に、カリウムtert−ブトキシド4.59g(40.86mmol)を加えて、2時間、攪拌を行った後、1.8Mの塩酸溶液76.6mlを加えて、橙色を有する固体が析出した。次いで、この固体を濾過して、真空乾燥を行うとともに、エーテル及びヘキサンを使用して再結晶化させることにより、白色を有する、式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(10)に示す化合物の収量は4.92gであり、収率は96.8%であった。
【0089】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0090】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.73(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.65(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 1H, J = 7.20 Hz), 7.46(t, 1H, J = 7.60 Hz) 7.36-7.32(m, 3H), 7.27-7.21(m, 3H), 7.10(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.09(t, 1H, J = 8.00 Hz), 6.52(d, 2H, J = 8.40 Hz) 6.45(s, 1H), 5.96(d, 1H, J = 8.40 Hz).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(10)に示す化合物1g(2.01mmol)とヨウ化銅50.37mg(2.64mmol)と3−メチル−1−ブチン−3−オール168mgと混合し、この混合物を、テトラヒドロフラン10mlとトリエチルアミン5mlの混合液に溶解させた。次いで、この溶解液に、トリフェニルフォスフィン85.62mg(0.326mmol)とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド45.56mg(0.0663mmol)を加え、48時間、攪拌した。その後、混合液を濾過し、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開溶媒はジクロロメタン)を行うことにより、式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(11)に示す化合物の収量は0.71gであり、収率は70.5%であった。
【0091】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0092】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.80(d 1H, J = 7.60 Hz), 7.67(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.58(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.49(d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.40(t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.35-7.28(m, 3H), 7.25-7.14(m, 3H), 6.77(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.74(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.53(d, 2H, J = 6.80 Hz), 6.39(s, 1H), 5.91(d, 1H, J = 8.00 Hz), 1.49(s, 6H).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(11)に示す化合物3.53g(7.05mmol)を入れ、フラスコに、トルエン200mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液に水素化ナトリウム0.51g(21.25mmol)を加えて、3時間、還流を行った。還流後、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンにより分液を行った。次いで、有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、濃縮を行った。そして、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ジエチルエーテル:クロロホルム=4:1)を行うことにより、式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(12)に示す化合物の収量は2.32gであり、収率は74.3%であった。
【0093】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0094】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 8.40 Hz), 7.72(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.64(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 2H, J = 7.60 Hz) 7.45(t, 1H, J =7.60 Hz) 7.36-7.30(m, 3H), 7.25-7.11(m, 3H), 7.10 (d, 2H, J = 8.40 Hz), 6.82(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.60(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.44(s, 1H), 5.94(d, 1H, J = 8.00 Hz), 2.99(s, 1H).
次いで、ドライアップを行ったシュレンク管に、式(12)に示す化合物300mg(0.678mmol)を入れ、シュレンク管に、トルエン4mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液にトリエチルアミン94.7μl(0.678mmol)を加えて、凍結乾燥を3回行った。次いで、トルエン1.5mlに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)3.13mg(6.78×10−6mol)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(12)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、25℃の条件下で、24時間、攪拌を行った。攪拌終了後、12時間、放置し、反応液にメタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC)によって、5.8×106 〜 3.0×104のフラクションを分取し、式(13)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。
【0095】
なお、上述の式(12)に示す化合物、及び得られた化合物のIRスペクトルの結果から、生成物が式(13)に示す化合物であることを確認した。
【0096】
より具体的には、IRスペクトルの測定は、測定装置として、赤外分光計(日本分光(株)製、JASCO FT/IR−660plus)を使用し、KBr錠剤(120mg)と測定する試料を1000回すりつぶして、加圧することにより、KBrディスクを作製し、これを測定することにより行った。式(12)に示す化合物のIRスペクトルデータを図3に示すとともに、得られた化合物のIRスペクトルデータを図4に示す。
【0097】
図3に示すように、3250cm−1付近に、≡C−H伸縮に由来するピークが検出され、また、図4に示すように、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出された。このことから、図3においては、C≡C伸縮が存在するが、図4においては存在しないため、ポリマーが得られていることが判り、生成物が式(13)に示す化合物であることを確認した。
【0098】
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(13)に示す化合物27.42mg(6.20×10−5mol)とカリウムtert-ブトキシド10.45mg(9.31×10−5mol)を入れ、ジメチルホルムアミド10.9mlに溶解して、24時間、室温で撹拌した。次いで、40分間、脱気を行った蒸留水10mlにフェリシアン化カリ22.44mg(6.82×10−5mol)を溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、12時間、室温で撹拌した。なお、攪拌後、赤色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過して、乾燥させることにより、赤色を有する、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得た。式(6)に示す有機ラジカル化合物の収量は21.5mgであり、収率は78.6%であった。
【0099】
なお、得られた化合物のIRスペクトル、及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0100】
IRスペクトルの測定は、上述の式(13)に示す化合物の測定と同様にして行った。得られた化合物のIRスペクトルデータを図5に示す。図5に示すように、上述の図4の場合と同様に、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出され、ポリアセチレン鎖が存在していることが判る。
【0101】
また、ESRスペクトルの測定は、測定装置(Bruker社製、ESP300E X−Band)を使用し、Oxford社製、液体ヘリウムクライオスタットすることにより行った。得られた化合物のESRスペクトルデータを図6に示す。図6に示すように、室温(300K)から4Kにおいて、g値が2.0024〜2.0025であり、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0102】
以上より、生成物が、式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0103】
また、式(6)に示す有機ラジカル化合物の磁化率を測定した。磁化率の測定は、測定装置として、SQUID磁束計(QUANTUM DESIGN社製、QUANTUM DESIGN MPMS5S SQUID)を使用し、薬用のカプセルに測定用の試料を入れた後、そのカプセルをストローの中に入れて固定し、SQUID磁束計に挿入することにより行った。得られた化合物の磁化率の温度依存性(χmT−Tプロット)を図7に示す。
【0104】
図7に示すように、得られた化合物の磁化率の温度依存性の挙動が、キュリー挙動とは異なり、温度と共に上昇することが判る。また、得られた化合物の磁化率の温度依存性(χm−Tプロット)を図8に示す。図8に示すように、高温極限において、磁化率の値が0に漸近しないことが判る。換言すると、高温極限において、磁化率の値が0に漸近するキュリー常磁性の挙動とは異なることが判り、高温極限において、磁化率の値が0に漸近しないことから、パウリの常磁性の挙動が含まれていると考えられる。即ち、式(6)に示す有機ラジカル化合物は、温度に依存することなく、一定の磁化率を有し、金属のような伝導電子を有する(即ち、金属のように電気が流れる性質を有する)ことが判る。
【0105】
また、式(12)に示す化合物を得た後、式(14)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを経由して、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を合成した。
【0106】
具体的には、まず、ドライアップを行ったフラスコに、式(12)に示す化合物664.77mg(1.5mmol)とカリウムtert-ブトキシド0.253mg(2.25mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド28mlに溶解して、2時間、室温で撹拌した。次いで、蒸留水22mlにフェリシアン化カリ0.544mg(1.65mmol)を溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、1時間、室温で撹拌した。次いで、この反応溶液を濾過し、得られた固体を少量のジエチルエーテルで洗浄することにより、式(14)に示す化合物を得た。
【0107】
なお、得られた化合物の単結晶X線解析、磁化率及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(14)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0108】
単結晶X線解析は、測定装置(Bruker社製、CCD APEX)を使用し、Mo Kα0.71Åを使用することにより行った。得られた化合物の結晶構造を図9に示す。なお、図9に示す結晶構造においては、全て炭素の位置を示している。
【0109】
また、得られた化合物の単位格子パラメータを以下に示す。
【0110】
単位格子の寸法:a=33.278Å、b=9.589Å、c=15.097Å、V=4729Å3、α=90°、β=100.994°、γ=90°
結晶構造:R1=0.0484、wR2=0.1345、GOF=1.168
また、磁化率の測定は、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。得られた化合物の磁化率の温度依存性(χmT−Tプロット)を図10に示す。
【0111】
図10より、300Kにおける磁化率の値は、0.36emu mol−1であり、理論値である0.36emu mol−1とほぼ一致している。なお、理論値は、常時性磁化率の一般式であるχ=Ng2μB2S(S+1)/3kTを使用して、この一般式に、N=6.02×1023、g=2.00232、μB=9.274×10−24JT−1、S=0.5、k=1.380×10−23JK−1、及びT=300Kを代入することにより、計算した。
【0112】
また、ESRスペクトルは、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。得られた化合物のESRスペクトルデータを図11に示す。図11に示すように、室温(300K)から4.3Kにおいて、g値が2.0024〜2.0039であり、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0113】
以上より、生成物が式(14)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0114】
次いで、ドライアップを行ったシュレンク管に、式(14)に示す化合物308mg(0.698mmol)を入れ、シュレンク管に、トルエン15mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液にトリエチルアミン97.49μl(0.698mmol)を加えて、凍結乾燥を3回行った。次いで、トルエン2mlに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)3.22mg(6.98×10−6mol)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(14)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、25℃の条件下で、24時間、攪拌を行った。攪拌終了後、反応液にエタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC)によって、5.8×106 〜 3.0×104のフラクションを分取し、式(6)に示される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得た。
【0115】
なお、得られた化合物のIRスペクトル、及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0116】
IRスペクトルの測定は、上述の式(13)に示す化合物の測定と同様にして行った。得られた化合物のIRスペクトルデータを図12に示す。図12に示すように、上述の図5の場合と同様に、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出され、ポリアセチレン鎖が存在していることが判る。また、図5に示すIRスペクトルと同様の形を有することから、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることが判る。
【0117】
なお、ESRスペクトルは、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。また、測定されたESRスペクトルは、図6に示すスペクトルと同様のスペクトルとなり、室温(300K)から4Kにおいて、g値が2.0024〜2.0025であったため、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0118】
以上より、生成物が、式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0119】
(安定性評価)
次いで、合成した式(6)に示す有機ラジカル化合物(ポリラジカル)、上記式(I)で示されるアニオン部分構造(ポリアニオン)、及び式(II)で示されるカチオン部分構造(ポリカチオン)の紫外可視吸収スペクトル(UV−visスペクトル)の測定を行い、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンの安定性を評価した。なお、紫外可視吸収スペクトルは、日立(株)製の分光光度計(HITACH U−3300)により、石英キュベット(光路長:1cm)用いて、25℃にて測定した。また、ポリマーの溶媒として、クロロホルムを使用し、ポリラジカル及びポリアニオンの溶媒として、ジメチルフランを使用した。以上の結果を、図13に示す。
【0120】
図13に示すように、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンのいずれの状態においても、紫外可視吸収スペクトルの分光吸収カーブが測定されており、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンのいずれの状態においても、極めて安定していることが判る。
【0121】
なお、上記式(14)に示す化合物(モノラジカル)、及び上記式(III)で示されるアニオン部分構造(モノアニオン)についても、同様に紫外可視吸収スペクトルの測定を行い、安定性を評価した。なお、溶媒として、ジメチルフランを使用した。以上の結果を、図14に示す。
【0122】
図14に示すように、モノラジカル、及びモノアニオンのいずれの状態においても、紫外可視吸収スペクトルの分光吸収カーブが測定されており、モノラジカル、及びモノアニオンのいずれの状態においても、極めて安定していることが判る。
【0123】
<電気化学的測定(CV測定)>
次いで、ポテンショスタット(北斗電工(株)製、HSV−100)を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)法により、酸化還元ピーク強度の測定を行った。この際、対極に白金電極、参照極に標準水素電極、作用極に式(14)に示す化合物からなる薄膜を使用し、これらにリード線を取り付け、電解液に浸漬して測定した。なお、電解液には、塩化テトラノルマルブチルアンモニウムを使用した。
【0124】
なお、電気化学測定は、室温(25℃)で行い、電極電位は、可逆水素電極(RHE)電位基準で表示した。また、サイクリックボルタンメトリーは、0.05V/sの走査速度、及び−0.4V〜1.0V(vs.RHE)の走査範囲で行ない、掃引は、合計で3回行った。得られたサイクリックボルタモグラム(サイクリックボルタンメトリーで測定したグラフ)を図15に示す。
【0125】
図15に示すように、3回の掃引を行った後でも、サイクリックボルタモグラムが殆ど変化しておらず、酸化・還元の可逆反応性が極めて高いことが判る。なお、この場合、図15に示すように、酸化電位は−0.2〜−0.16Vの範囲内にあり、また、還元電位は0.6〜0.8Vの範囲内にあることが判る。
【0126】
(二次電池の作製)
セパレーターは以下のように作製した。まず、ポリフッ化ビニリデン600mgに、1mol/ lのLiPF6電解塩を含むエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合した。次いで、この混合液に、N-メチルピロリドン11.3gの溶液を加えて室温で撹拌した。次いで、ポリフッ化ビニリデンを溶解させ、ポリフッ化ビニリデンの電解質溶液を作製した後、縦3cm、横3cmの溝をつけたガラス板上に電解質溶液を滴下し、約70 ℃で真空乾燥させることにより、厚みが0.1mmのセパレーターを作製した。なお、電解質溶液の滴下操作は、電解質溶液を3〜 4回滴下した後、乾燥させた。
【0127】
正極は以下のように作製した。まず、フラスコに、合成した有機ラジカル化合物60.80mg、及びグラファイト60.20mgを入れ、これに、上述のセパレーターの作製の際に使用したポリフッ化ビニリデンの電解溶液を200.00mgとN-メチルピロリドン2mlを加え、窒素気流下で混合し、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを、正極リード10が形成されたアルミ板(縦1.5cm、横1.5cm)上に滴下し、70℃で真空引きして、乾燥させ、厚みが0.2mmの正極を作製した。
【0128】
また、負極には、負極リードが形成された銅板(縦2.0cm、横2.0cm)とリチウム板(縦1.5cm、横1.5cm)とを重ね合わせた、縦が15mm、横が15mmであり、全体の厚みが2mmのものを使用した。
【0129】
なお、リチウム板は、この状態では酸化皮膜を有するため、メタノールで金属光沢面を形成した。
【0130】
次いで、以上のように作製した、正極、電解質膜、及び負極を、正極2と負極3との間にセパレーターを介在させ、正極と負極とを、セパレーターを介して、対向するように重ね合わせた状態で、プレス機を使用してプレスすることにより、二次電池を作製した。
【0131】
なお、上述のリチウム板の金属光沢面の形成は、電池作製の直前に行い、リチウムが酸化されないように電池の作製を行った。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の活用例としては、有機ラジカル電池に有用な有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池が挙げられる。
【符号の説明】
【0133】
1 二次電池
2 正極
2a 金属体
2b 電極活物質膜
3 負極
3a 金属体
3b 金属体
4 セパレーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ラジカル電池に有用な有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、存在する電池の種類は化学電池と物理電池の二つに分けられる。化学電池とはエネルギーを化学反応によって直接に直流電流に変換する電池である。この化学電池には一次電池、二次電池、燃料電池、生物電池が分類される。一方、物理電池は、光や熱による物理変化によって生じるエネルギーを電気エネルギーに変換するものである。物理電池には太陽電池、熱電池、原子力電池等が分類される。
【0003】
また、近年、自動車、ノート型パソコン、携帯電話などの急速な市場拡大に伴い、これらに用いられる、柔軟性が高く、高速充電が可能であり、環境性に優れた二次電池への要求が高まっている。
【0004】
そして、このような二次電池として、有機化合物を用いた電池に関する関心が高まっており、適用可能な材料の開発が進められている。
【0005】
より具体的には、例えば、軽量で大きなエネルギー密度を持つ電池として、活物質に硫黄化合物や有機化合物が用いられた電池が開発されている。この電池としては、例えば、ジスルフィド結合を有する活物質(有機硫黄化合物)を正極に用いた電池が知られている。この電池は、ジスルフィド結合の生成、解離を伴う電気化学的酸化還元反応を原理として利用したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この電池では、電子を放出して放電すると、硫黄同士が結合するため、ジスルフィド結合の再結合の効率が小さく、充電効率が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、二次電池としての充電効率を向上させるとともに、電池の軽量化を図るべく、ニトロキシドラジカルを有する化合物を活物質として正極に用いた電池の開発がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
また、本願発明者等により、有機ラジカル化合物を使用した有機ラジカル電池が提案されている。この有機ラジカル化合物は、ポリアセチレン骨格に安定炭素化水素ラジカルを有するポリマーであり、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−50297号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hiroyuki Nishide, Shigeyuki Iwase, Yong-Jin Pu, Takeo Suga, Kentaro Nakahara and Masaharu Satoh, Electrochemica Acta 50, 2004, 827-831
【非特許文献2】Katsuya Inoue, Thesis, The University of Tokyo, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記非特許文献1に記載の電池では、放電時の還元反応において、ニトロキシドラジカルがアニオンに変化すると、このアニオンが水素イオンと結合して劣化するため、正極の活物質が極めて不安定になり、電池の劣化が大きくなるという問題があった。
【0012】
また、上記非特許文献2に記載の電池では、有機ラジカル化合物の製造工程数が多い(13工程)ため、製造工程が複雑になるとともに、コストアップになるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であり、比較的容易に製造することができる有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、本発明の第1の有機ラジカル化合物は、還元された状態において下記式(I)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(II)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする。
【0017】
【化2】
【0018】
また、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、下記式(2)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0019】
【化3】
【0020】
ここで、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、還元された状態において下記式(III)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(IV)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする。
【0021】
【化4】
【0022】
また、本発明の第2の有機ラジカル化合物は、走査速度が0.05V/sであり、走査範囲が−0.4V〜1.0V(vs.RHE)であるサイクリックボルタンメトリーにより求めた酸化電位が−0.2〜−0.16Vの範囲内Vの範囲内にあり、還元電位が0.6〜0.8Vの範囲内にあることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第3の有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(3)または式(4)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
また、本発明の第4の有機ラジカル化合物は、下記式(5)のラジカル構造を有することを特徴とする。
【0027】
【化7】
【0028】
また、本発明の電池用電極は、本発明の第1〜第4の有機ラジカル化合物のいずれかの有機ラジカル化合物を活物質として含むことを特徴とする。
【0029】
ここで、本発明の電極用電池は、有機ラジカル化合物が、導電材としてのカーボンに担持されていることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の電池は、正極、負極、及び正極と負極との間に介在し、電解質を含有するセパレーターとを備え、活物質の酸化還元反応を充放電過程おいて使用する電池であって、正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電池用電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の有機ラジカル化合物は、アニオン、ラジカル、及びカチオンの3つの状態で極めて安定であり、比較的容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る電池の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電池の構成を示す側面図である。
【図3】中間生成物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図4】中間生成物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のESRスペクトルデータのグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の結晶構造を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物の磁化率の温度依存性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のESRスペクトルデータのグラフである。
【図12】本発明の実施形態に係る有機ラジカル化合物のIRスペクトルデータのグラフである。
【図13】紫外可視吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図14】紫外可視吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図15】サイクリックボルタモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がポリアセチレンに連結した構造を有するものであり、繰り返し単位中に、下記式(6)で表されるラジカル構造単位を有するアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物である。
【0034】
【化8】
【0035】
この有機ラジカル化合物の放充電による酸化還元反応を、以下の反応スキーム1に示す。本実施形態の有機ラジカル化合物は、以下の反応スキーム1に示すように、還元された状態において式(I)で示されるアニオン部分構造をとり、酸化された状態において式(II)で示されるカチオン部分構造をとり、繰り返し充電及び放電を行うことができる。
【0036】
ここで、反応スキーム1に示す式(6)で表される中性状態(ポリラジカル状態)、式(1)で表される有機ラジカル化合物が電子を失い、酸化された状態(ポリカチオン状態であって、式(II)の状態)、及び式(6)で表される有機ラジカル化合物が電子を受け取り、還元された状態(ポリアニオン状態であって、式(I)の状態)のいずれの状態においても、極めて安定している点に特徴がある。
【0037】
<反応スキーム1>
【化9】
【0038】
なお、ここで言う「極めて安定」とは、室温下において、大気や水分等と反応を起こさずに、図1に示す3つの状態(即ち、ポリラジカル状態、ポリカチオン状態、及びポリアニオン状態)が、長時間維持できることを言う。
【0039】
従って、上記式(6)で表される有機ラジカル化合物を電極の活物質として使用することにより、電極の活物質が極めて安定化するため、上記従来技術とは異なり、電池の劣化を防止することができる。その結果、長期間使用可能な二次電池を提供することが可能になる。
【0040】
また、上記反応スキーム1で示すポリアニオンは青色を有しており、ポリラジカル及びポリカチオンはオレンジ色を有しているが、いずれも透明でフレキシブル性を有している。従って、本実施形態の有機ラジカル化合物を電極の材料として使用することにより、電極の種類に対応させて、当該電極を容易に加工することが可能になる。
【0041】
次に、本実施形態における有機ラジカル化合物の製造方法の概略を以下の反応スキーム2に示す。
【0042】
<反応スキーム2>
【化10】
【0043】
式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得るには、まず、式(7)のフルオレンをエタノール等のアルコールに溶解し、式(7)のフルオレンが溶解したアルコール溶液に、4−ブロモベンズアルデヒドと水酸化カリウムを加えて、還流することにより、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得る。
【0044】
次いで、式(8)に示す化合物を酢酸等のカルボン酸に懸濁させて、この懸濁液に臭素を滴下して攪拌後、還流を行い、式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得る。
【0045】
次いで、式(9)に示す化合物をジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒に溶解させた後、この溶解液にフルオレンを溶解させる。次いで、この溶解液にカリウムtert−ブトキシドを溶解させて攪拌を行った後、塩酸溶液を加えることにより、式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0046】
次いで、式(10)に示す化合物と3−メチル−1−ブチン−3−オールをヨウ化銅と混合し、この混合物を、テトラヒドロフラン(THF)とトリエチルアミンの混合液に溶解させる。次いで、この溶解液に、トリフェニルフォスフィン、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドを加え、攪拌した後、混合液を濾過し、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィーを行うことにより、式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0047】
次いで、式(11)に示す化合物をトルエン等の溶媒に溶解させた後、この溶解液に水素化ナトリウムを加えて還流する。その後、反応液に水を加え、ジクロロメタンにより分液を行い、有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、濃縮を行う。そして、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィーを行うことにより、式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0048】
次いで、式(12)に示す化合物をトルエン等の溶媒に溶解させた後、この溶解液にトリエチルアミンを加え、凍結乾燥を行う。次いで、トルエンに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(12)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、攪拌を行う。その後、メタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィーによって。所定のフラクションを分取し、式(13)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得る。
【0049】
そして、式(13)に示す化合物とカリウムtert-ブトキシドとをジメチルホルムアミドに溶解して、室温で撹拌後、蒸留水にフェリシアン化カリを溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、室温で撹拌することにより、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であるポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル)を得る。
【0050】
なお、反応スキーム2に示すように、式(12)に示す化合物を得た後、以下の反応によっても、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得ることができる。
【0051】
即ち、式(12)に示す化合物とカリウムtert-ブトキシドとをジメチルホルムアミドに溶解して撹拌し、蒸留水にフェリシアン化カリを溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、室温で撹拌することにより、式(14)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリル得た後、式(14)に示す化合物をトルエンに溶解させ、この溶解液にトリエチルアミンを加え、凍結乾燥を行う。次いで、トルエンに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(14)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、攪拌を行う。その後、エタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィーによって所定のフラクションを分取し、式(6)に示す有機ラジカル化合物を得る。
【0052】
このように、本実施形態においては、上記従来技術に比し、有機ラジカル化合物の製造工程数が少ない(7工程)ため、製造工程が容易になるとともに、コストアップを抑制することが可能になる。
【0053】
なお、有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がモノアセチレンに連結した構造を有する、上記式(14)で表されるラジカル構造を有するモノアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であってもよい。
【0054】
この有機ラジカル化合物の放充電による酸化還元反応を、以下の反応スキーム3に示す。この有機ラジカル化合物は、以下の反応スキーム3に示すように、還元された状態において式(III)で示されるアニオン部分構造をとり、酸化された状態において化学式(IV)で示されるカチオン部分構造をとり、繰り返し充電及び放電を行うことができる。この場合も、反応スキーム3に示す式(14)で表される中性状態(モノラジカル状態)、式(14)で表される有機ラジカル化合物が電子を失い、酸化された状態(ポリカチオン状態であって、式(IV)の状態)、及び式(14)で表される有機ラジカル化合物が電子を受け取り、還元された状態(ポリアニオン状態であって、式(III)の状態)のいずれの状態においても、極めて安定している。
【0055】
<反応スキーム3>
【化11】
【0056】
また、有機ラジカル化合物は、繰り返し単位中に、下記式(15)または下記式(16)で表されるラジカル構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であっても良い。
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
更に、有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がモノジアセチレンに連結した構造を有する、下記式(17)で表されるラジカル構造を有するモノアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物であってもよい。
【0060】
【化14】
【0061】
次に、本実施形態における電池について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電池の構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る電池の構成を示す側面図である。なお、ここでは、電池として、二次電池を例に挙げて説明する。
【0062】
図1、図2に示すように、二次電池1は、正極リード10が形成された正極2と、負極リード11を有する負極3と、正極2と負極3との間に介在する電解質を含有するセパレーター4とを備え、図1、図2に示すように、シート形状を有している。即ち、本実施形態の二次電池1では、正極2と負極3とが、セパレーター4を介して、対向するように重ね合った構成を有している。
【0063】
そして、本実施形態においては、上述の正極2及び負極3の少なくとも一方が、上述の有機ラジカル化合物を活物質として含む構成としている。即ち、上述の有機ラジカル化合物は、二次電池1において、正極2、負極3の活物質として機能し、充電反応および放電反応等の電極反応に直接寄与する構成となっている。
【0064】
以下、正極に、上述の有機ラジカル化合物を含有する電極を使用する場合を例に挙げて説明する。
【0065】
正極2は、図1、図2に示すように、アルミニウム等の金属により形成された金属体2aと、当該金属体2aの表面に設けられ、上述の有機ラジカル化合物、カーボン、及びバインダからなる電極活物質膜2bとにより構成されている。
【0066】
カーボンは、有機ラジカル化合物を含有する正極2のインピーダンスを低下させて、エネルギー密度、出力特性を向上させるとともに、導電性を向上させるためのものであり、また、有機ラジカル化合物を担持する役割を有する。
【0067】
このカーボンとしては、特に限定されないが、例えば、グラファイト、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、カーボンナノチューブやフラーレン等の炭素繊維等が使用できる。なお、これらを単体で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0068】
また、バインダは、有機ラジカル化合物とカーボンとを接着するためのものであり、このバインダとしては、特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料やフッ素系ゴムやスチレン・ブタジエン共重合ゴム等の合成ゴムを使用することができる。
【0069】
なお、正極2を形成する際には、まず、有機ラジカル化合物とカーボンとを、バインダが溶解された溶液に加えて混合してスラリーを形成し、このスラリーを金属体2a上に滴下することにより、金属体2aの表面に電極活物質膜2bを形成する。この際、有機ラジカル化合物とカーボンとバインダとを所定の配合比で混合することが好ましい。例えば、カーボン100質量部に対して、有機ラジカル化合物を50〜100質量部配合する構成とすることができる。
【0070】
また、本実施形態における有機ラジカル化合物は、金属のような伝導電子を有するため、上述のカーボン、及びバインダーを使用せず、有機ラジカル化合物のみで正極2を形成する構成としてもよい。このような構成により、電池容量を向上させることができるとともに、正極2を形成する際に、コストダウンを図ることが可能になる。
【0071】
負極3は、図1、図2に示すように、リチウム等の金属により形成された金属体3aと銅等の金属により形成された金属体3bとにより構成されている。
【0072】
セパレーター4としては、電解質を含有する樹脂層により構成されており、この電解質は、正極と負極との間の荷電担体輸送を行うものである。
【0073】
セパレーター4を構成する樹脂層としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の高分子材料により形成されたものを使用することができる。
【0074】
また、電解質としては、溶媒に電解質塩を溶解した電解質溶液を使用することができる。このような溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の有機溶媒を使用することができる。なお、これらの溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0075】
また、電解質塩としては、例えばLiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等を使用することができる。なお、電解質として、上述の電解質塩の代わりに、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン系重合体、アクリルニトリル系重合体等の固体電解質を使用する構成としてもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、シート形状を有する二次電池1を例に挙げて説明したが、二次電池1の形状は、特に限定されない。
【0077】
また、本実施形態の二次電池は、自動車、ノート型パソコン、携帯電話、カード、あるいは高容量であるが充電速度の遅い二次電池の充電を助ける補助電池等に使用することができる。
【0078】
なお、本実施形態の有機ラジカル化合物は、炭化水素からなるラジカル骨格がポリアセチレンに連結した構造を有するものであり、ポリアセチレン骨格に有機ラジカルを共役系で結合させ、ラジカルポリマー自体に伝導性を持たせたものであるが、ポリマー骨格は、ポリアセチレン骨格に限定されず、ポリアセチレン骨格以外のポリマー骨格に、本実施形態の炭化水素からなる有機ラジカルを共役系で結合させたものであっても良い。
【0079】
このようなポリマー骨格としては、例えば、ポリエチレン骨格、ポリプロピレン骨格、ポリアクリル酸骨格、ポリアクリロニトリル骨格等が挙げられる。
【0080】
そして、この場合も、上記式(6)で表される有機ラジカル化合物の場合と同様に、これらのポリマー骨格を有する有機ラジカル化合物を、電極の活物質として使用することにより、電極の活物質が極めて安定化するため、上記従来技術とは異なり、電池の劣化を防止することができる。その結果、長期間使用可能な二次電池を提供することが可能になる。
【実施例】
【0081】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0082】
(有機ラジカル化合物の合成)
式(7)のフルオレン化合物10g(60.2mmol)を、窒素気流下でフラスコに加え、次いで、エタノール300mlを加えて溶解した。次いで、式(7)のフルオレンが溶解したエタノール溶液に、4−ブロモベンズアルデヒド11.13g(60.2mmol)と水酸化カリウム6.8g(120.03mmol)を加えて、2時間、還流を行った。なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過することにより、黄色を有する、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。式(8)に示す化合物の収量は16.33gであり、収率は81.5%であった。
【0083】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0084】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d7.75(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.69(d, 2H, J = 7.40 Hz), 7.57(d, 2H, J = 8.40 Hz), 7.55(s, 1H), 7.50(d, 1H, J = 7.60), 7.48(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.37(t, 1H, J = 7.60 Hz), 7.31(t, 2H, J = 7.20 Hz), 7.20-7.10(m,3H), 7.06(t, 1H, J = 8.00 Hz).
本実施形態における核磁気共鳴法(1HNMR)の測定は、測定装置として、JEOL AL400(日本電子(株)製)を使用し、内部基準としてテトラメチルシランを使用するとともに、周波数を400MHzに設定して行った。
【0085】
次いで、式(8)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)エチレン1g(0.3mmol)を、窒素気流下でフラスコに加え、次いで、酢酸11mlを加えて懸濁させ、この懸濁液に臭素0.155mlを滴下して、1時間、攪拌し、その後、1時間、還流を行った。
【0086】
なお、還流後、反応溶液を室温に戻すと、淡黄色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過するとともに、少量のエタノールで洗浄することにより、淡黄色を有する、式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンを得た。式(9)に示す化合物の収量は1.11gであり、収率は89.7%であった。
【0087】
また、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(9)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−ブロモ−2−(p−ブロモフェニル)エチレンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0088】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.81(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.71(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.619(s, 1H), 7.625(d, 2H, J = 8.00Hz), 7.43(t, 1H, J=7.20 Hz), 7.39-7.32(m, 3H), 7.25-7.21(m, 2H), 6.89(t, 1H, J = 7.6 Hz), 6.29(d, 1H, J = 8.00 Hz ).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(9)に示す化合物4.21g(10.22mmol)を入れ、これにジメチルホルムアミド83mlを加えて溶解させた後、この溶解液にフルオレン1.7g(10.22mmol)を加えて溶解させた。次いで、この溶解液に、カリウムtert−ブトキシド4.59g(40.86mmol)を加えて、2時間、攪拌を行った後、1.8Mの塩酸溶液76.6mlを加えて、橙色を有する固体が析出した。次いで、この固体を濾過して、真空乾燥を行うとともに、エーテル及びヘキサンを使用して再結晶化させることにより、白色を有する、式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(10)に示す化合物の収量は4.92gであり、収率は96.8%であった。
【0089】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(10)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(p−ブロモフェニル)−3−(2’’,2’’’-ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0090】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.73(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.65(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 1H, J = 7.20 Hz), 7.46(t, 1H, J = 7.60 Hz) 7.36-7.32(m, 3H), 7.27-7.21(m, 3H), 7.10(d, 2H, J = 8.80 Hz), 7.09(t, 1H, J = 8.00 Hz), 6.52(d, 2H, J = 8.40 Hz) 6.45(s, 1H), 5.96(d, 1H, J = 8.40 Hz).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(10)に示す化合物1g(2.01mmol)とヨウ化銅50.37mg(2.64mmol)と3−メチル−1−ブチン−3−オール168mgと混合し、この混合物を、テトラヒドロフラン10mlとトリエチルアミン5mlの混合液に溶解させた。次いで、この溶解液に、トリフェニルフォスフィン85.62mg(0.326mmol)とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド45.56mg(0.0663mmol)を加え、48時間、攪拌した。その後、混合液を濾過し、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開溶媒はジクロロメタン)を行うことにより、式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(11)に示す化合物の収量は0.71gであり、収率は70.5%であった。
【0091】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(11)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−3’’’’’−メチル−3’’’’’−オール−2’’’’’プロピニル-フェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0092】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.80(d 1H, J = 7.60 Hz), 7.67(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.58(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.49(d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.40(t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.35-7.28(m, 3H), 7.25-7.14(m, 3H), 6.77(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.74(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.53(d, 2H, J = 6.80 Hz), 6.39(s, 1H), 5.91(d, 1H, J = 8.00 Hz), 1.49(s, 6H).
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(11)に示す化合物3.53g(7.05mmol)を入れ、フラスコに、トルエン200mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液に水素化ナトリウム0.51g(21.25mmol)を加えて、3時間、還流を行った。還流後、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンにより分液を行った。次いで、有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、濃縮を行った。そして、得られた反応物に対して、カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ジエチルエーテル:クロロホルム=4:1)を行うことにより、式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。式(12)に示す化合物の収量は2.32gであり、収率は74.3%であった。
【0093】
なお、得られた固体の1HNMRスペクトルデータから、生成物が式(12)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンであることを確認した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
【0094】
1H NMR (400MHz, CDCl3) : d8.40(d, 1H, J = 8.00 Hz), 7.86(d, 1H, J = 8.40 Hz), 7.72(d, 1H, J = 7.60 Hz), 7.64(d, 2H, J = 7.60 Hz), 7.55(d, 2H, J = 7.60 Hz) 7.45(t, 1H, J =7.60 Hz) 7.36-7.30(m, 3H), 7.25-7.11(m, 3H), 7.10 (d, 2H, J = 8.40 Hz), 6.82(t, 1H, J = 7.60 Hz), 6.60(d, 2H, J = 8.00 Hz), 6.44(s, 1H), 5.94(d, 1H, J = 8.00 Hz), 2.99(s, 1H).
次いで、ドライアップを行ったシュレンク管に、式(12)に示す化合物300mg(0.678mmol)を入れ、シュレンク管に、トルエン4mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液にトリエチルアミン94.7μl(0.678mmol)を加えて、凍結乾燥を3回行った。次いで、トルエン1.5mlに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)3.13mg(6.78×10−6mol)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(12)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、25℃の条件下で、24時間、攪拌を行った。攪拌終了後、12時間、放置し、反応液にメタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC)によって、5.8×106 〜 3.0×104のフラクションを分取し、式(13)に示すポリ1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)−1−プロペンを得た。
【0095】
なお、上述の式(12)に示す化合物、及び得られた化合物のIRスペクトルの結果から、生成物が式(13)に示す化合物であることを確認した。
【0096】
より具体的には、IRスペクトルの測定は、測定装置として、赤外分光計(日本分光(株)製、JASCO FT/IR−660plus)を使用し、KBr錠剤(120mg)と測定する試料を1000回すりつぶして、加圧することにより、KBrディスクを作製し、これを測定することにより行った。式(12)に示す化合物のIRスペクトルデータを図3に示すとともに、得られた化合物のIRスペクトルデータを図4に示す。
【0097】
図3に示すように、3250cm−1付近に、≡C−H伸縮に由来するピークが検出され、また、図4に示すように、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出された。このことから、図3においては、C≡C伸縮が存在するが、図4においては存在しないため、ポリマーが得られていることが判り、生成物が式(13)に示す化合物であることを確認した。
【0098】
次いで、ドライアップを行ったフラスコに、式(13)に示す化合物27.42mg(6.20×10−5mol)とカリウムtert-ブトキシド10.45mg(9.31×10−5mol)を入れ、ジメチルホルムアミド10.9mlに溶解して、24時間、室温で撹拌した。次いで、40分間、脱気を行った蒸留水10mlにフェリシアン化カリ22.44mg(6.82×10−5mol)を溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、12時間、室温で撹拌した。なお、攪拌後、赤色の固体が析出した。次いで、この反応溶液を濾過して、乾燥させることにより、赤色を有する、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得た。式(6)に示す有機ラジカル化合物の収量は21.5mgであり、収率は78.6%であった。
【0099】
なお、得られた化合物のIRスペクトル、及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0100】
IRスペクトルの測定は、上述の式(13)に示す化合物の測定と同様にして行った。得られた化合物のIRスペクトルデータを図5に示す。図5に示すように、上述の図4の場合と同様に、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出され、ポリアセチレン鎖が存在していることが判る。
【0101】
また、ESRスペクトルの測定は、測定装置(Bruker社製、ESP300E X−Band)を使用し、Oxford社製、液体ヘリウムクライオスタットすることにより行った。得られた化合物のESRスペクトルデータを図6に示す。図6に示すように、室温(300K)から4Kにおいて、g値が2.0024〜2.0025であり、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0102】
以上より、生成物が、式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0103】
また、式(6)に示す有機ラジカル化合物の磁化率を測定した。磁化率の測定は、測定装置として、SQUID磁束計(QUANTUM DESIGN社製、QUANTUM DESIGN MPMS5S SQUID)を使用し、薬用のカプセルに測定用の試料を入れた後、そのカプセルをストローの中に入れて固定し、SQUID磁束計に挿入することにより行った。得られた化合物の磁化率の温度依存性(χmT−Tプロット)を図7に示す。
【0104】
図7に示すように、得られた化合物の磁化率の温度依存性の挙動が、キュリー挙動とは異なり、温度と共に上昇することが判る。また、得られた化合物の磁化率の温度依存性(χm−Tプロット)を図8に示す。図8に示すように、高温極限において、磁化率の値が0に漸近しないことが判る。換言すると、高温極限において、磁化率の値が0に漸近するキュリー常磁性の挙動とは異なることが判り、高温極限において、磁化率の値が0に漸近しないことから、パウリの常磁性の挙動が含まれていると考えられる。即ち、式(6)に示す有機ラジカル化合物は、温度に依存することなく、一定の磁化率を有し、金属のような伝導電子を有する(即ち、金属のように電気が流れる性質を有する)ことが判る。
【0105】
また、式(12)に示す化合物を得た後、式(14)に示す1−(2,2’−ビフェニレニル)−2−(4’’’’−エチニルフェニル)−3−(2’’,2’’’−ビフェニレニル)アリルを経由して、式(6)で表される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を合成した。
【0106】
具体的には、まず、ドライアップを行ったフラスコに、式(12)に示す化合物664.77mg(1.5mmol)とカリウムtert-ブトキシド0.253mg(2.25mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド28mlに溶解して、2時間、室温で撹拌した。次いで、蒸留水22mlにフェリシアン化カリ0.544mg(1.65mmol)を溶解させた水溶液を反応溶液に滴下し、1時間、室温で撹拌した。次いで、この反応溶液を濾過し、得られた固体を少量のジエチルエーテルで洗浄することにより、式(14)に示す化合物を得た。
【0107】
なお、得られた化合物の単結晶X線解析、磁化率及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(14)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0108】
単結晶X線解析は、測定装置(Bruker社製、CCD APEX)を使用し、Mo Kα0.71Åを使用することにより行った。得られた化合物の結晶構造を図9に示す。なお、図9に示す結晶構造においては、全て炭素の位置を示している。
【0109】
また、得られた化合物の単位格子パラメータを以下に示す。
【0110】
単位格子の寸法:a=33.278Å、b=9.589Å、c=15.097Å、V=4729Å3、α=90°、β=100.994°、γ=90°
結晶構造:R1=0.0484、wR2=0.1345、GOF=1.168
また、磁化率の測定は、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。得られた化合物の磁化率の温度依存性(χmT−Tプロット)を図10に示す。
【0111】
図10より、300Kにおける磁化率の値は、0.36emu mol−1であり、理論値である0.36emu mol−1とほぼ一致している。なお、理論値は、常時性磁化率の一般式であるχ=Ng2μB2S(S+1)/3kTを使用して、この一般式に、N=6.02×1023、g=2.00232、μB=9.274×10−24JT−1、S=0.5、k=1.380×10−23JK−1、及びT=300Kを代入することにより、計算した。
【0112】
また、ESRスペクトルは、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。得られた化合物のESRスペクトルデータを図11に示す。図11に示すように、室温(300K)から4.3Kにおいて、g値が2.0024〜2.0039であり、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0113】
以上より、生成物が式(14)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0114】
次いで、ドライアップを行ったシュレンク管に、式(14)に示す化合物308mg(0.698mmol)を入れ、シュレンク管に、トルエン15mlを加えて溶解させた。次いで、この溶解液にトリエチルアミン97.49μl(0.698mmol)を加えて、凍結乾燥を3回行った。次いで、トルエン2mlに2,5−ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド(二量体)3.22mg(6.98×10−6mol)を溶解させた溶液を用意し、この溶液を式(14)に示す化合物が溶解したトルエン溶液に加えて、25℃の条件下で、24時間、攪拌を行った。攪拌終了後、反応液にエタノールを加えて固体を析出させ、この固体をろ過した後、クロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC)によって、5.8×106 〜 3.0×104のフラクションを分取し、式(6)に示される構造単位を有するポリアセチレン系ポリマーからなる有機ラジカル化合物を得た。
【0115】
なお、得られた化合物のIRスペクトル、及びESRスペクトルの結果から、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0116】
IRスペクトルの測定は、上述の式(13)に示す化合物の測定と同様にして行った。得られた化合物のIRスペクトルデータを図12に示す。図12に示すように、上述の図5の場合と同様に、3000cm−1付近に、=C−H伸縮に由来するピークが検出され、ポリアセチレン鎖が存在していることが判る。また、図5に示すIRスペクトルと同様の形を有することから、生成物が式(6)に示す有機ラジカル化合物であることが判る。
【0117】
なお、ESRスペクトルは、上述の測定装置を使用して、上述と同様の測定条件で測定した。また、測定されたESRスペクトルは、図6に示すスペクトルと同様のスペクトルとなり、室温(300K)から4Kにおいて、g値が2.0024〜2.0025であったため、炭素上にラジカルが存在することが判る。
【0118】
以上より、生成物が、式(6)に示す有機ラジカル化合物であることを確認した。
【0119】
(安定性評価)
次いで、合成した式(6)に示す有機ラジカル化合物(ポリラジカル)、上記式(I)で示されるアニオン部分構造(ポリアニオン)、及び式(II)で示されるカチオン部分構造(ポリカチオン)の紫外可視吸収スペクトル(UV−visスペクトル)の測定を行い、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンの安定性を評価した。なお、紫外可視吸収スペクトルは、日立(株)製の分光光度計(HITACH U−3300)により、石英キュベット(光路長:1cm)用いて、25℃にて測定した。また、ポリマーの溶媒として、クロロホルムを使用し、ポリラジカル及びポリアニオンの溶媒として、ジメチルフランを使用した。以上の結果を、図13に示す。
【0120】
図13に示すように、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンのいずれの状態においても、紫外可視吸収スペクトルの分光吸収カーブが測定されており、ポリラジカル、ポリアニオン、及びポリカチオンのいずれの状態においても、極めて安定していることが判る。
【0121】
なお、上記式(14)に示す化合物(モノラジカル)、及び上記式(III)で示されるアニオン部分構造(モノアニオン)についても、同様に紫外可視吸収スペクトルの測定を行い、安定性を評価した。なお、溶媒として、ジメチルフランを使用した。以上の結果を、図14に示す。
【0122】
図14に示すように、モノラジカル、及びモノアニオンのいずれの状態においても、紫外可視吸収スペクトルの分光吸収カーブが測定されており、モノラジカル、及びモノアニオンのいずれの状態においても、極めて安定していることが判る。
【0123】
<電気化学的測定(CV測定)>
次いで、ポテンショスタット(北斗電工(株)製、HSV−100)を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)法により、酸化還元ピーク強度の測定を行った。この際、対極に白金電極、参照極に標準水素電極、作用極に式(14)に示す化合物からなる薄膜を使用し、これらにリード線を取り付け、電解液に浸漬して測定した。なお、電解液には、塩化テトラノルマルブチルアンモニウムを使用した。
【0124】
なお、電気化学測定は、室温(25℃)で行い、電極電位は、可逆水素電極(RHE)電位基準で表示した。また、サイクリックボルタンメトリーは、0.05V/sの走査速度、及び−0.4V〜1.0V(vs.RHE)の走査範囲で行ない、掃引は、合計で3回行った。得られたサイクリックボルタモグラム(サイクリックボルタンメトリーで測定したグラフ)を図15に示す。
【0125】
図15に示すように、3回の掃引を行った後でも、サイクリックボルタモグラムが殆ど変化しておらず、酸化・還元の可逆反応性が極めて高いことが判る。なお、この場合、図15に示すように、酸化電位は−0.2〜−0.16Vの範囲内にあり、また、還元電位は0.6〜0.8Vの範囲内にあることが判る。
【0126】
(二次電池の作製)
セパレーターは以下のように作製した。まず、ポリフッ化ビニリデン600mgに、1mol/ lのLiPF6電解塩を含むエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液(混合比1:1)からなる電解液1400 mgを混合した。次いで、この混合液に、N-メチルピロリドン11.3gの溶液を加えて室温で撹拌した。次いで、ポリフッ化ビニリデンを溶解させ、ポリフッ化ビニリデンの電解質溶液を作製した後、縦3cm、横3cmの溝をつけたガラス板上に電解質溶液を滴下し、約70 ℃で真空乾燥させることにより、厚みが0.1mmのセパレーターを作製した。なお、電解質溶液の滴下操作は、電解質溶液を3〜 4回滴下した後、乾燥させた。
【0127】
正極は以下のように作製した。まず、フラスコに、合成した有機ラジカル化合物60.80mg、及びグラファイト60.20mgを入れ、これに、上述のセパレーターの作製の際に使用したポリフッ化ビニリデンの電解溶液を200.00mgとN-メチルピロリドン2mlを加え、窒素気流下で混合し、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを、正極リード10が形成されたアルミ板(縦1.5cm、横1.5cm)上に滴下し、70℃で真空引きして、乾燥させ、厚みが0.2mmの正極を作製した。
【0128】
また、負極には、負極リードが形成された銅板(縦2.0cm、横2.0cm)とリチウム板(縦1.5cm、横1.5cm)とを重ね合わせた、縦が15mm、横が15mmであり、全体の厚みが2mmのものを使用した。
【0129】
なお、リチウム板は、この状態では酸化皮膜を有するため、メタノールで金属光沢面を形成した。
【0130】
次いで、以上のように作製した、正極、電解質膜、及び負極を、正極2と負極3との間にセパレーターを介在させ、正極と負極とを、セパレーターを介して、対向するように重ね合わせた状態で、プレス機を使用してプレスすることにより、二次電池を作製した。
【0131】
なお、上述のリチウム板の金属光沢面の形成は、電池作製の直前に行い、リチウムが酸化されないように電池の作製を行った。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の活用例としては、有機ラジカル電池に有用な有機ラジカル化合物およびそれを用いた電池用電極、電池が挙げられる。
【符号の説明】
【0133】
1 二次電池
2 正極
2a 金属体
2b 電極活物質膜
3 負極
3a 金属体
3b 金属体
4 セパレーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化1】
【請求項2】
前記有機ラジカル化合物が、還元された状態において下記式(I)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(II)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする請求項1に記載の有機ラジカル化合物。
【化2】
【請求項3】
下記式(2)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化3】
【請求項4】
前記有機ラジカル化合物が、還元された状態において下記式(III)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(IV)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする請求項3に記載の有機ラジカル化合物。
【化4】
【請求項5】
走査速度が0.05V/sであり、走査範囲が−0.4〜1.0V(vs.RHE)であるサイクリックボルタンメトリーにより求めた酸化電位が−0.2〜−0.16Vの範囲内Vの範囲内にあり、還元電位が0.6〜0.8Vの範囲内にあることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の有機ラジカル化合物。
【請求項6】
繰り返し単位中に、下記式(3)または下記式(4)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化5】
【化6】
【請求項7】
下記式(5)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化7】
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機ラジカル化合物を活物質として含むことを特徴とする電池用電極。
【請求項9】
前記有機ラジカル化合物が、導電材としてのカーボンに担持されていることを特徴とする請求項8に記載の電池用電極。
【請求項10】
正極、負極、及び該正極と該負極との間に介在し、電解質を含有するセパレーターとを備え、活物質の酸化還元反応を充放電過程おいて使用する電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項8または請求項9に記載の電池用電極であることを特徴とする電池。
【請求項1】
繰り返し単位中に、下記式(1)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化1】
【請求項2】
前記有機ラジカル化合物が、還元された状態において下記式(I)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(II)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする請求項1に記載の有機ラジカル化合物。
【化2】
【請求項3】
下記式(2)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化3】
【請求項4】
前記有機ラジカル化合物が、還元された状態において下記式(III)で示されるアニオン構造をとり、酸化された状態において下記式(IV)で示されるカチオン構造をとることを特徴とする請求項3に記載の有機ラジカル化合物。
【化4】
【請求項5】
走査速度が0.05V/sであり、走査範囲が−0.4〜1.0V(vs.RHE)であるサイクリックボルタンメトリーにより求めた酸化電位が−0.2〜−0.16Vの範囲内Vの範囲内にあり、還元電位が0.6〜0.8Vの範囲内にあることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の有機ラジカル化合物。
【請求項6】
繰り返し単位中に、下記式(3)または下記式(4)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化5】
【化6】
【請求項7】
下記式(5)のラジカル構造を有することを特徴とする有機ラジカル化合物。
【化7】
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機ラジカル化合物を活物質として含むことを特徴とする電池用電極。
【請求項9】
前記有機ラジカル化合物が、導電材としてのカーボンに担持されていることを特徴とする請求項8に記載の電池用電極。
【請求項10】
正極、負極、及び該正極と該負極との間に介在し、電解質を含有するセパレーターとを備え、活物質の酸化還元反応を充放電過程おいて使用する電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項8または請求項9に記載の電池用電極であることを特徴とする電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−74209(P2012−74209A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217453(P2010−217453)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人科学技術振興機構が実施した平成19年度地域イノベーション創出総合支援事業「シーズ発掘試験」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人科学技術振興機構が実施した平成19年度地域イノベーション創出総合支援事業「シーズ発掘試験」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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