説明

有機体収納袋および有機体収納袋を用いた遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法

【課題】遺体の腐敗及び臭気を簡単に抑制することができる低コストの有機体収納袋を提供し、さらに、上記有機体収納袋を用いて腐敗及び臭気を抑制しながら遺体を保存する方法を提供すること。
【解決手段】遺体を収納するための有機体収納袋1は、遺体を出し入れするための開閉可能な開口3を有する透明な袋、上記袋本体2の内部の脱気処理を行うために上記袋に設けられた脱気口4、および上記袋に入れた遺体から生じるガスの臭気強度を低下させ外部に排出するために上記袋に設けられた活性炭筒5からなり、上記袋本体内には脱酸素剤9を備える。上記有機体収納袋を用いた遺体の保存方法は、上記有機体収納袋に遺体を入れて開口を閉じた後、上記脱気口を使用して脱気処理を行うことにより、遺体の腐敗および腐敗による臭気を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害や事故発生時の事故死等による遺体保存の際に、遺体の腐敗および腐敗による臭気を抑制することができる有機体収納袋および上記有機体収納袋を用いて遺体の腐敗遅延および腐敗による臭気抑制を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、台風、火災等の災害や大きな事故等で多数の死者が出た場合、多数の遺体を死亡場所から遺体の保管場所まで搬送し、遺体を保存しておく必要がある。このような災害や事故による死亡の場合、遺体には大きな損傷を伴う場合が多く、保存や搬送の際にも十分な注意を要する。
【0003】
遺体の簡易な保存方法としては、遺体を毛布で包んだり袋に入れて保存する方法がいられており、その状態で死亡場所から担架や台車、車にて遺体の保管場所に搬送を行われる場合が多い。この時に用いられる袋として、特許文献1に示すような死体収納袋が発明されている。これ以外にも、遺体の腐敗を防ぐための冷却装置を備えた死体収納袋等も発明として開示されている。
【特許文献1】実開平5−56129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大きな災害や大事故による遺体は、損傷が激しい場合が多く、特に夏季には高温多湿等の気象条件により、遺体の腐敗の進行がさらに進み、それに伴って臭気が発生するという問題がある。
【0005】
また多数の死者が出た場合には、全ての遺体を保管場所に搬送するには時間がかかり、現場において迅速な遺体の保存が求められるが、従来の収納袋等では、臭気の抑制が不充分であったり、冷却装置を稼動するための電源が常時必要であったり、装置が高価なために、多数の死者に対応するだけの数量を準備できないといった問題点があった。
【0006】
本願発明は、簡単に遺体の腐敗及び臭気を抑制することができる低コストの有機体収納袋を提供することを目的とし、さらに、上記有機体収納袋を用いた遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の有機体収納袋は、遺体を収納するための有機体収納袋であって、遺体を出し入れするための開閉可能な開口を有する透明な袋本体、上記袋本体の内部の脱気処理を行うために上記袋本体に設けられた脱気口、および上記袋本体に入れた遺体から生じるガスの臭気強度を低下させ外部に排出するために上記袋本体に設けられた開閉可能な活性炭筒からなり、上記袋本体内部には脱酸素剤を備えることを特徴とする。
【0008】
そして、上記活性炭筒には、酸性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭および中性ガス用活性炭が直列に配置されることが好ましい。
【0009】
また、上記袋本体内部にアルコール揮散剤を備えることが好ましい。
【0010】
脱気処理の際に遺体の顔がつぶれないように、透明で硬質な材質からなる顔収納部を備えることが好ましい。
【0011】
上記袋本体全体を覆う不透明なカバーを有することが好ましい。
【0012】
遺体を出し入れするための開閉可能な上記開口が、袋本体の上面に設けられたことが好ましい。
【0013】
本願発明の遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法は、上述の有機体収納袋を用いた遺体の保存方法であって、袋本体に設けられた開口から遺体を入れて開口を閉じ、上記脱気口を使用して袋本体内部の脱気処理を行い、袋本体内部に備えられた脱酸素剤により袋本体内部の酸素を除去して遺体の腐敗を抑制し、遺体よりガスが生じると活性炭筒を通してガスを排出することにより臭気を抑制することを特徴とする。
【0014】
また、上記袋本体に遺体と共に保冷剤を入れて遺体の腐敗および腐敗による臭気を抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の有機体収納袋は、遺体を収納するための有機体収納袋であって、遺体を出し入れするための開閉可能な開口を有する透明な袋本体、上記袋本体の内部の脱気処理を行うために上記袋本体に設けられた脱気口、および上記袋本体に入れた遺体から生じるガスの臭気強度を低下させ外部に排出するために上記袋本体に設けられた開閉可能な活性炭筒からなり、上記袋本体内部には脱酸素剤を備えることにより、遺体の腐敗及び遺体から発生する臭気を抑制することができる。
【0016】
そして、上記活性炭筒には、酸性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭および中性ガス用活性炭が直列に配置されることにより、遺体から発生する様々な種類のガスの臭気を効果的に抑制することができる。
【0017】
上記袋本体内部にアルコール揮散剤を備えることにより、さらに腐敗の進行を抑制することができる
【0018】
脱気処理の際に遺体の顔がつぶれないように、透明で硬質な材質からなる顔収納部を備えることにより、脱気処理を行った際に遺体の顔が変形するのを防ぐことができ顔の変形により遺体の確認ができなくなるのを防止する。
【0019】
上記袋本体全体を覆う不透明なカバーを有することにより、遺体が全裸の場合、運搬する際に目隠しの役割をすることができる。
【0020】
遺体を出し入れするための開閉可能な上記開口が、袋本体の上面に設けられたことにより、遺体の出し入れが容易になる。
【0021】
本願発明の遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法は、上述の有機体収納袋を用いた遺体の保存方法であって、袋本体に設けられた開口から遺体を入れて開口を閉じ、上記脱気口を使用して袋本体内部の脱気処理を行い、袋本体内部に備えられた脱酸素剤により袋本体内部の酸素を除去して遺体の腐敗を抑制し、遺体よりガスが生じると活性炭筒を通してガスを排出することにより臭気を抑制することにより、遺体の腐敗遅延および腐敗による臭気抑制を簡単にそして低コストで行うことが可能となる。
【0022】
上記袋本体に遺体と共に保冷剤を入れて遺体の腐敗および腐敗による臭気を抑制することにより、さらに長い時間、遺体の保存が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を図を用いて以下に詳細に説明する。図1は本発明の有機体収納袋1の平面図であり、図2は有機体収納袋1の斜視図である。
【0024】
本発明の有機体収納袋1は、遺体6を出し入れするための開閉可能な開口3を有する透明な袋本体2、上記袋本体2の内部の脱気処理を行うために上記袋本体2に設けられた脱気口4、および上記袋本体2に入れた遺体6から生じるガスの臭気強度を低下させ外部に排出するために上記袋本体2に設けられた活性炭筒5からなり、袋本体2内部には脱酸素剤9を備えている。
【0025】
遺体6から生じるガスの臭気は、アンモニア系(アンモニア等)、硫黄系(メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル等)および有機酸系(イソ酪酸、ノルマル−及びイソ吉草酸等)に大別されるので、腐敗ガスも、アルカリ性、酸性および中性と様々なので、上記活性炭筒5には、酸性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭および中性ガス用活性炭が直列に配置されており、各種の臭気に対応するようにしている。
【0026】
開口3には、袋本体2に遺体6を出し入れするためのファスナーが設けてあり、本実施形態では袋本体2の側面に開口3を設けているが、開口3の位置は特に限定するものではなく、袋本体2の正面あるいは底面でも良い。
【0027】
図8に示すのが開口3を袋本体2の上面に設けた場合の図である。開口3を袋本体2の上面に設けることにより、図8(b)に示すように上から遺体6を出し入れすることができるので、遺体6の出し入れがスムーズになる。
【0028】
脱気口4は掃除機等を使用して脱気処理を行うために開閉可能となっており、掃除機等をセットし脱気口4を開いて内部の空気を脱気した後、脱気口4を閉じて内部に空気が流入しないようにする。
【0029】
袋本体2の材質としては、KOP(ポリ塩化ビニリデンコートOPP)、PVF(ポリフッ化ビニル)、ガスバリアナイロン、ガスバリアPET等を用いる。KOPは、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)の片面または両面にポリ塩化ビニリデン(PVDC樹脂、サラン樹脂)をコートしたもので、PVDC樹脂をコートすることによってガスバリア性、防湿性、保香性などが優れたものとなっており、本発明の有機体収納袋1に求められる性質を満たすことができる。
【0030】
PVF(ポリフッ化ビニル)は機械的強度および耐候性に優れたフッ素樹脂であり、ガスバリアナイロンは二軸延伸成形により高強度で酸素バリア性に優れたナイロン樹脂である。また、ガスバリアPETは強度及びガスバリア性が大きく改良されたPETである。これらの材質は、本発明の有機体収納袋1に求められる強度やガスバリア性といった性質を満たすことができるものであり、全て透明な材質であるので、遺体6の状態を有機体収納袋1を開けることなくいつでも確認することができる。
【0031】
袋本体2の内部には、遺体6の腐敗を抑制するために脱酸素剤9と共にアルコール揮散剤10を入れておくことが好ましい。脱酸素剤9およびアルコール揮散剤10により袋本体2内部の酸素を除去し、好気性菌の発生を抑制する。
【0032】
脱酸素剤9は、袋本体2内の空気に含まれる酸素を吸収し、限りなく酸素ゼロに近い密閉空間を作り出すことにより、好気性菌の発生を抑制することができる。脱酸素剤9は鉄系又は有機系の自立反応型を用いる。脱酸素剤9は空気を透過する袋に必要量入ったものであり、この袋に入った脱酸素剤9を袋本体2内に必要量いれておく。このとき、袋本体2内に直接入れても良く、あるいは、脱酸素剤9を入れておくポケットを袋本体2内部に設けておいても良い。
【0033】
アルコール揮散剤10は、アルコールの抗菌力を利用した品質保持剤であり、アルコールが揮散することにより、好気性菌の発生を抑制することができる。アルコール揮散剤10は空気を透過する袋に必要量入ったものであり、この袋に入ったアルコール揮散剤10を袋本体2内に必要量いれておく。このとき、袋本体2内に直接入れても良く、あるいは、脱酸素剤9を入れておくポケットを袋本体2内部に設けておいても良い。
【0034】
遺体6から発生するガスを活性炭筒5によって臭気強度を低下させて外部に排気するが、その時、発生するガスの臭気強度を4から1に低下させるだけの活性炭を活性炭筒5に用いれば、外部に排出されたガスの臭気が気ならない程度に抑制することができる。
【0035】
以下に、遺体6の腐敗により発生する臭気の主な成分であるアンモニア、メチルメルカプタン、ノルマル酪酸の臭気強度を4から1に低下させるために活性炭がどの程度必要であるかを検討する。下記の表1は、アンモニア、メチルメルカプタン、ノルマル酪酸の臭気強度と濃度の関係を示す表である。ここでは、1m×2mの大きさの有機体収納袋1を用いる。上記有機体収納袋1の容量は315Lとなる。
【0036】
【表1】

【0037】
アンモニア(NH)の臭気強度を4から1に低下させるのにどれだけアンモニアを活性炭で吸着すればよいかを求める。
臭気強度4(10ppm)の場合1袋当りの量
315L×10ppm=3.15ml
臭気強度1(0.1ppm)の場合1袋当りの量
315L×0.1ppm=0.0315ml
アンモニアの臭気強度を4から1にするために必要な活性炭によるアンモニアの吸着量は、
3.15−0.0315=3.12ml
となり、活性炭により有機体収納袋1の1袋当り3.12mlのアンモニアを吸着しなければならない。
活性炭の使用量を本実施形態では100g、平衡吸着量を2wt%とすると、有機体収納袋1における活性炭筒5の活性炭による吸着可能なアンモニアの量は、
100g×2wt%=2g≒0.18mol≒4.0L
となる。
活性炭筒5の活性炭によるアンモニアの吸着可能な量は4.0Lとなり、この吸着可能な量は、先に求めた臭気強度を4から1に下げるために活性炭により吸着されなければならないアンモニアの量3.12mlよりもはるかに多いので、有機体収納袋1は遺体6の腐敗により生じるアンモニアを十分に吸着可能であることがわかる。
【0038】
メチルメルカプタン(CHSH)の臭気強度を4から1に低下させるのにどれだけメチルメルカプタンを活性炭で吸着すればよいかを求める。
臭気強度4(0.03ppm)の場合1袋当りの量
315L×0.03ppm=9.45μl
臭気強度1(0.0001ppm)の場合1袋当りの量
315L×0.0001ppm=0.031μl
メチルメルカプタンの臭気強度を4から1にするために必要な活性炭による吸着量はメチルメルカプタンの吸着量は、
9.45−0.031=9.42μl
となり、活性炭により有機体収納袋1の1袋当り9.42μlのメチルメルカプタンを吸着しなければならない。
活性炭の使用量を本実施形態では100g、平衡吸着量を0.6wt%とすると、有機体収納袋1における活性炭筒5の活性炭による吸着可能なメチルメルカプタンの量は、
100g×0.6wt%=0.6g≒0.0125mol≒0.28L
となる。
活性炭筒5の活性炭によるメチルメルカプタンの吸着可能な量は0.28Lとなり、この吸着可能な量は、先に求めた臭気強度を4から1に下げるために活性炭により吸着されなければならないメチルメルカプタンの量9.42μlよりもはるか多いので、有機体収納袋1は遺体6の腐敗により生じるメチルメルカプタンを十分に吸着可能であることがわかる。
【0039】
ノルマル酪酸(CCOOH)の臭気強度を4から1に低下させるのにどれだけノルマル酪酸を活性炭で吸着すればよいかを求める。
臭気強度4(0.02ppm)の場合1袋当りの量
315L×0.02ppm=6.3μl
臭気強度1(0.0001ppm)の場合1袋当りの量
315L×0.0001ppm=0.031μl
ノルマル酪酸の臭気強度を4から1にするために必要な活性炭によるノルマル酪酸の吸着量は、
6.3−0.031=6.2μl
となり、活性炭により有機体収納袋1の1袋当り6.2μlのノルマル酪酸を吸着しなければならない。
活性炭の使用量を本実施形態では100g、平衡吸着量を11wt%とすると、有機体収納袋1における活性炭筒5の活性炭による吸着可能なノルマル酪酸の量は、
100g×11wt%=11g≒0.125mol≒2.8L
となる。
活性炭筒5の活性炭によるノルマル酪酸の吸着可能な量は、2.8Lとなり、この吸着可能な量は、先に求めた臭気強度を4から1に下げるために活性炭により吸着されなければならないノルマル酪酸の量6.2μlよりもはるかに多いので、有機体収納袋1は遺体6の腐敗により生じるノルマル酪酸を十分に吸着可能である。
【0040】
次に、脱気処理の際に遺体6の顔がつぶれないように、顔収納部7を備えた有機体収納袋1の実施形態について説明する。図3に示すのが本実施形態の有機体収納袋1である。
【0041】
図3に示すように、上述の実施形態の有機体収納袋1の上部に顔収納部7が設けられている。顔収納部7は、遺体6の顔を収納するために透明で硬質な材質からなり、略円筒形をなしている。
【0042】
遺体6を収納する時に、顔を顔収納部7に入れ、顔から下の体の部分は袋本体2に入れる。この状態で、脱気口4に掃除機等をセットし内部の脱気を行っても、顔収納部7は袋本体2よりも硬質な材質からなるので、袋本体2の部分がつぶれても、顔収納部7が完全につぶれることはない。これにより、遺体6の顔が変形することを防ぐことができる。
【0043】
本発明の有機体収納袋1の袋本体2は透明な材質でできており、中に収納した遺体6が外から見えるので、遺体6が全裸であったり運搬の際に遺体6を隠す必要がある場合には、袋本体2を覆う不透明なカバーを掛けることができる。
【0044】
カバーは、袋本体2よりも一回り大きい袋状のものでも良く、また有機体収納袋1全体を覆う1枚のカバーであってもよい。これらを用いて遺体6が直接見えないようにすることができ、さらに直射日光による腐敗の促進を押えることもできる。
【0045】
次に、上述の有機体収納袋1を用いて遺体6の腐敗遅延および臭気抑制方法について説明する。
【0046】
図2,4,5を用いて説明する。図4に示すように、まず有機体収納袋1の開口3のファスナーを開いて遺体6を収納する。この時、袋本体2内部に、脱酸素剤9およびアルコール揮散剤10をセットしておく。遺体6収納後、ファスナーを閉めて、脱気口4に掃除機8をセットする(図5参照)。
【0047】
脱気口4を開いて、掃除機8により袋本体2内部の脱気を行う。十分に脱気を行ったら、脱気口4を閉じて掃除機8を取り外す(図2参照)。
【0048】
しばらくは、内部の空気がほとんど無い状態になっているので、密閉した状態で置いておく。遺体6からガスが発生し、袋本体2が膨らんできたら活性炭筒5を開いて内部のガスを排出する。この時に、内部のガスは活性炭筒5を通ることにより臭気強度が下げられた状態で外部に排出される。このように、活性炭筒5により内部のガスの臭気は外に漏れることは無くなる。
【0049】
さらに遺体6の腐敗を抑制するために、袋本体2の中に保冷剤をいれることもできる。特に夏場の遺体6の腐敗が早い時期には、保冷剤を適量用いることにより、効果的に遺体6の腐敗を抑制することができる。
【0050】
本発明の効果を確認するために試料動物としてハムスター(ブルーサファイアハムスター、オス、約50g)を用いて、臭気発生及び腐敗の状況を調べるための実験を行った。
【0051】
試料動物(ハムスター)13を10L容器に入れ、容器内に窒素を注入し絶命させる。この試料動物を5匹用意する。上記5匹の試料動物を用いて5種類の条件で実験を行う。各実験では以下の条件を共通として行う。
1.試料動物13を脱気口4を設けた1Lテドラーバッグ(袋本体)11に入れヒートシールにより密閉する。
2.1Lテドラーバッグ11をさらに5Lテドラーバッグ12に入れ、5Lテドラーバッグ12に設けた排出口14より内部のガスを吸引排出し密閉する。
3.5Lテドラーバッグ12を、温度/湿度測定機とともに発泡スチロール製の箱に入れ、日光および風雨が当らない屋外環境で保存する。
4.1週間後に、5Lテドラーバッグ12の内部(1Lテドラーバッグ11の外部)に1Lの空気を入れ、この希釈ガスの臭気成分(アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素)の濃度を検知管で測定するとともに、試料動物13の外観の変化を調べる。
【0052】
上記条件以外に、アルコール揮散剤10および脱酸素剤9の有無、活性炭筒5による活性炭吸着の有無、脱気口4による脱気の有無の3種類の条件の組合わせにより5種類の設定(比較例1〜4、実施例1)について説明する。
【比較例1】
【0053】
比較例1は、上記1〜5の条件のみで実験を行う。つまり、試料動物13から発生するガスに対して全く処理を行わないで、臭気成分の測定および外観の変化を調べる。
【比較例2】
【0054】
比較例2は、上記1〜5の条件に加えて、条件2の1Lテドラーバッグ11を密閉した後に、1Lテドラーバッグ11のシートが完全に試料動物13に密着しない程度に、脱気口4により内部の空気を吸引し脱気を行う。つまり、比較例1に脱気を加えたものとなる。
【比較例3】
【0055】
比較例3は、比較例2の1Lテドラーバッグ11内部の脱気を行う前に、条件1の試料動物13を、脱気口4を設けた1Lテドラーバッグ11に入れヒートシールにより密閉する際、腐敗抑制剤としてアルコール揮散剤10および脱酸素剤9を試料動物13とともに1Lテドラーバッグ11に入れておく。つまり、比較例1にアルコール揮散剤10および脱酸素剤9を加え脱気を行ったものとなる。
【比較例4】
【0056】
比較例4は、1Lテドラーバッグ11に設けられた脱気口4による脱気に加え、1Lテドラーバッグ11に活性炭筒5を取り付けて、試料動物13から発生するガスの活性炭吸着を行う。活性炭筒5には活性炭として、酸性ガス用、塩基性ガス用、中性ガス用活性炭の3種類を用いている。比較例4は、比較例2に、活性炭筒5による活性炭吸着を加えたものとなる。
【実施例1】
【0057】
実施例1は、本発明の有機体収納袋の実施例であり、比較例1〜4の条件を全て満たしたものとなる。つまり、腐敗抑制剤としてアルコール揮散剤10および脱酸素剤9を試料動物13とともに1Lテドラーバッグ11に入れてから、1Lテドラーバッグ11の密閉を行い脱気口4により脱気を行う。そして活性炭筒5により試料動物13から発生するガスの活性炭吸着を行う。従って、実施例1は、比較例1に、アルコール揮散剤10および脱酸素剤9を用い、脱気口4による内部のガスの脱気及び活性炭筒5による活性炭吸着を行ったものとなる。この実験の概略図を図6に示す。
【0058】
上記実験条件を整理し、表にすると以下の表1となる。
【0059】
【表1】

【0060】
この実験を行った7日間の温度及び湿度の変化を表にすると以下の表2となる。
【0061】
【表2】

【0062】
この表2から、この実験が行われたのは特に試料動物の腐敗が進行し臭気が発生しやすい高温、多湿の条件であることがわかる。
【0063】
次に、7日後の希釈ガスの臭気成分(アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素)の濃度を検知管で測定した結果を以下の表3に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
以上の実験結果より、臭気抑制対策を全く行っていない比較例1に対し、何らかの臭気抑制対策を行っている比較例2〜4は、臭気成分の低減効果は認められる。しかし、比較例2〜4では、全ての臭気成分を十分に低下させるものではない。これに対し、実施例1においては、全ての臭気成分が検出下限値以下となっており、臭気抑制が十分に行われていることが確認できる。
【0066】
従って、本発明のように、アルコール揮散剤および脱酸素剤を用い、脱気を行い、発生する臭気ガスを活性炭吸着させる全ての条件を満たすことにより、臭気抑制に十分な効果を発揮することがわかる。
【0067】
次に、外観の変化について比較を行う。各実験の7日後の外観を図7に示す。(a)が比較例1、(b)が比較例2、(c)が比較例3、(d)が比較例4、(e)が実施例1の外観の写真である。
【0068】
比較例1の外観は、液状物が試料動物13から多量に生成され、外観を判別するのが困難になっている。比較例2および3の外観は、液状物が試料動物13から多量に生成され、外観が判別しにくくなっている。比較例4の外観は、試料動物13から少量の液状物が生成されているが、外観の判別は可能である。実施例1の外観は、液状物の生成は見られず、十分に外観の判別が可能である。
【0069】
以上から、比較例1〜3では腐敗の抑制は全くされておらず、外観の判別が困難であることがわかる。比較例4では、外観の判別は可能であるが、液状物の生成が見られ、腐敗の抑制が十分ではない。これに対し、実施例1では、液状物の生成も見られず、外観の判別も十分に可能であることから、本発明の目的とする腐敗の抑制が十分に達成されている。
【0070】
この実験から、本発明の有機体収納袋は、有機体からの臭気の発生および腐敗の抑制に対し、十分な効果を有していることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の有機体収納袋の概略平面図。
【図2】本発明の有機体収納袋の斜視図。
【図3】顔収納部を有する有機体収納袋の斜視図
【図4】遺体を入れようとしている状態の有機体収納袋の斜視図。
【図5】遺体を入れ掃除機にて脱気している状態の有機体収納袋の斜視図。
【図6】実施例1の概略図。
【図7】実験後の試料動物の外観の変化を表す写真。(a)が比較例1、(b)が比較例2、(c)が比較例3、(d)が比較例4、(e)が実施例1の外観をあらわす。
【図8】(a)開口を袋本体の上面中央部に設けた場合の有機体収納袋の斜視図であり、(b)袋本体の上面中央に設けられた開口を開いた状態の有機体収納袋の斜視図。
【符号の説明】
【0072】
1 有機体収納袋
2 袋本体
3 開口
4 脱気口
5 活性炭筒
6 遺体
7 顔収納部
8 掃除機
9 脱酸素剤
10 アルコール揮散剤
11 1Lのテドラーバッグ
12 5Lのテドラーバッグ
13 試料動物
14 排出口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体を収納するための有機体収納袋であって、遺体を出し入れするための開閉可能な開口を有する透明な袋本体、上記袋本体の内部の脱気処理を行うために上記袋本体に設けられた脱気口、および上記袋本体に入れた遺体から生じるガスの臭気強度を低下させ外部に排出するために上記袋本体に設けられた開閉可能な活性炭筒からなり、上記袋本体内部には脱酸素剤を備えることを特徴とする有機体収納袋。
【請求項2】
上記活性炭筒には、酸性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭および中性ガス用活性炭が直列に配置されることを特徴とする請求項1に記載の有機体収納袋。
【請求項3】
上記袋本体内部にアルコール揮散剤を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の有機体収納袋。
【請求項4】
脱気処理の際に遺体の顔がつぶれないように、透明で硬質な材質からなる顔収納部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機体収納袋。
【請求項5】
上記袋本体全体を覆う不透明なカバーを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機体収納袋。
【請求項6】
遺体を出し入れするための開閉可能な上記開口が、袋本体の上面に設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機体収納袋。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の有機体収納袋を用いた遺体の保存方法であって、袋本体に設けられた開口から遺体を入れて開口を閉じ、上記脱気口を使用して袋本体内部の脱気処理を行い、袋本体内部に備えられた脱酸素剤により袋本体内部の酸素を除去して遺体の腐敗を抑制し、遺体よりガスが生じると活性炭筒を通してガスを排出することにより臭気を抑制することを特徴とする遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法。
【請求項8】
上記袋本体に遺体と共に保冷剤を入れて遺体の腐敗および腐敗による臭気を抑制することを特徴とする請求項7に記載の遺体の腐敗遅延および臭気抑制方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−a】
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【図7−b】
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【図7−c】
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【図7−d】
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【図7−e】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−111498(P2007−111498A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36955(P2006−36955)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(398027218)昭栄薬品株式会社 (4)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)