説明

有機光電池及び当該電池を含むモジュール

本発明は、基材、基材上に形成した第1の電極、1つの電子ドナー材料と1つの電子アクセプター材料とを含む有機光能動媒体、及び導電性グリッドを含む第2の電極を含み、第1の電極が基材と第2の電極との間に位置している有機光電池に関する。この電池は第1の電極上に形成した絶縁性グリッドを含む。導電性グリッドは絶縁性グリッド上に形成される。絶縁性グリッドと導電性グリッドとで、光能動媒体を受け入れるための開口部を画定しており、そしてそれらは、基材上に第1の電極、絶縁性グリッド、及び導電性グリッドを被着後に光能動媒体を受け入れるのに適合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電池の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池は、光にさらされたときに電気を発生する電子部品である。
【0003】
「第1世代」の電池は、厚さがほぼ百ミクロン程度でありp−n接合を作るためにp型ドープ領域とn型ドープ領域とを有するバルクの半導体ウエハ(一般にシリコンで製作される)が間に挿入された2つの電極からなる。この半導体は、内部に光が吸収されて電子−正孔対を生じさせる、光能動媒体と呼ばれるものを形成する。これらの電子と正孔がそれぞれの電極に向かって移動すると、電極をまたいで電位が発生して、電流源が生み出される。
【0004】
電池効率と呼ばれる、受け取る太陽エネルギーと発生する電気エネルギーとの比率は、最上の電池の場合で約25%である。
【0005】
しかし、シリコンウエハを製造するのに用いられる方法は大変にエネルギー集約的である。更に、シリコンは希少である。従って、シリコンの使用量が少なくそれほどエネルギー集約的でない製造方法を見いだすことが非常に有利なことであった。
【0006】
「第2世代」の電池は、使用する材料がより少ないという主要な利点を有している。それらは「薄膜」を使用する。薄膜(厚さがミクロン程度)の材料が基材、例えばガラス基材の上に被着される。薄膜を使って、電極と半導体層とが形成される。半導体は、例えば非晶質シリコン(a−Si)、二セレン化銅インジウム(CIS)、あるいはテルル化カドミウム(CdTe)である。
【0007】
第2世代の電池を製造するのはそれほど費用がかからない。CIS電池の場合で19%に達することがあるそれらの効率は、第1世代の電池のそれより低いが、効率と製造コストとの比率はより良好である。
【0008】
「第3世代」の電池はこの比率をさらに向上させようとしている。
【0009】
第3世代の電池の中では、有機光電池と呼ばれるものが特に優れている。これらの電池は、有機の(ポリマー又は「小分子」の)半導体を基礎材料とする光能動媒体を使用する。
【0010】
これらの電池は、特に2つの利点を有する。光能動媒体は費用のかからない方法を使用する液剤塗布によって被着させることができ、また選ばれる基材は軟質であることができて、それによりロール・ツー・ロール法などの特に経済的な製造技術を用いることを可能にする。
【0011】
本発明は、より詳しく言えば、
・基材、
・基材上に形成した第1の電極、
・電子ドナーと電子アクセプターとを含む有機光能動媒体、及び、
・導電性メッシュ材料を含む第2の電極、
を含み、第1の電極が基材と第2の電極との間に位置している、有機光電池に関する。
【0012】
国際公開第2007/002376号パンフレットには、図2を参照して、連続膜により形成したアノードが上に被着している基材と、アノード上に被着されてそれ自体が続けて光能動媒体により覆われた電子遮断材料の膜と、正孔遮断材料の膜と、メッシュのカソードと、接着膜と、基材とを含む光電池が記載されている。
【0013】
このような電池を製作するためには、第1の電極と遮断膜が基材上に、例えば第1の製造現場で被着される。第1の電極を設けた基材は、その後、光能動媒体を液剤塗布により被着させ、この光能動媒体の被着後に第2の電極を被着させるため、例えば別の製造現場へ送られる。第2の電極は、光能動媒体を被着させる以前には、一部分でも基材上に被着させることができない。
【0014】
光能動媒体には、特に液剤塗布による被着が簡単であり使用する材料の量が少ないために、費用がかからないという利点があるが、電池の値段は、特に2つの電極を製作するのに使用される工程のために、依然として比較的高いままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2007/002376号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一つの目的は、エネルギー効率と製造費との比率を良好にするため、製造コストが相対的に低い有機光電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明の一つの対象は、前述のタイプの光電池であって、当該電池は第1の電極の上に形成された絶縁性メッシュを含むこと、絶縁性メッシュの上に導電性メッシュが形成されていて、絶縁性メッシュと導電性メッシュは一緒になって光能動媒体を受け入れるための開口部を画定し、当該開口部は第1の電極、絶縁性メッシュ及び導電性メッシュを基材上に被着後に光能動媒体を受け入れることができることを特徴とする光電池である。
【0018】
絶縁性メッシュは、第2の電極を第1のものから電気的に絶縁するように第1の電極上に形成される。
【0019】
このような電池は、絶縁性メッシュのため、及び絶縁性メッシュと導電性メッシュとのこの特別な配置のために、光能動媒体を被着させる以前に第1の電極と少なくとも第2の電極の一部分とを所定の基材上に被着させるのを可能にする。その結果、光能動媒体を被着させる以前の基材の付加価値が高くなる。更に、製造工程が実施するのに容易であり、且つ、電極の製造コストを、例えば第1の電極と導電性メッシュとを同じ被着チャンバーで形成することにより、最適化することができる。
【0020】
本発明による光電池は更に、光能動媒体を費用のかからない方法を使用して液剤塗布により被着するのを可能にし、そして選ばれる基材は軟質でよく、それによりロール・ツー・ロール法などのような特に経済的な製造技術を用いることを可能にする。
【0021】
従って、このような電池の製造コストは比較的低い。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、電池は、個別に又は任意の技術的に可能な組み合わせで適用される、次の構成要件のうちの1つ以上を含む。その構成要件とは、
・受け入れ用の開口部を第1の電極により又は第1の電極と絶縁性メッシュとの間に挿入した膜によりふさぐこと、
・導電性メッシュを少なくとも1つの電気的に導電性の膜により形成すること、
・導電性メッシュがマスクを介して被着することにより得るのを可能にする形態を有すること、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュが同じマスクを介して被着することにより得るのを可能にする形態を有すること、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュが不規則且つランダムな開口部のパターンを画定すること、
・導電性メッシュにより画定される受け入れ用開口部が絶縁性メッシュにより画定される受け入れ用開口部に達していること、
・受け入れ用開口部が不連続で間隔を開けていること、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュの開口部の平均径が5〜100μm、好ましくは6〜20μmであること、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュの開口部の境界となるストランドの平均幅が500nm〜10μm、好ましくは600nm〜2μmであること、
・絶縁性メッシュのストランドが平均高さを有し、絶縁性メッシュの膜が第1の電極と第2の電極との短絡を防ぐのに十分な、絶縁性メッシュのストランドの厚さについての抵抗を得るのに適切な抵抗率を有すること、
・開口部の平均径、ストランドの平均幅、ストランドの平均高さ、及び導電性メッシュの導電性膜の抵抗率を、例えば、導電性メッシュが1〜20Ω/□、好ましくは5〜15Ω/□、より好ましくは8〜10Ω/□のシート抵抗を有するように選ぶこと、
・第2の電極が電気伝導性の有機材料製の少なくとも1つの導電性有機膜を含み、この導電性有機膜は光能動媒体を覆っていること、
・導電性有機膜が導電性メッシュの開口部を少なくとも部分的に充填していること、
・導電性有機膜が絶縁性メッシュの開口部を少なくとも部分的に充填していること、
・光能動媒体が絶縁性メッシュの開口部を少なくとも部分的に充填していること、
・光能動媒体が導電性メッシュの開口部を部分的にでさえ充填していないこと、
・電池が光能動媒体と導電性メッシュとの間に、第2の電極がカソードの場合には正孔遮断膜を含み、第2の電極がアノードの場合には電子遮断膜を含むこと、
・第2の電極が導電体製の少なくとも1つの導電性膜を含み、導電性メッシュが当該少なくとも1つの導電性膜を含んでいること、
・第1の電極が導電体製の少なくとも1つの導電性膜を含むこと、
・導電性メッシュの導電性膜が例えば、10-3Ω・cm以下の、例として10-5Ω・cm以下の抵抗率を有すること、
・導電性メッシュの厚さが例えば100〜2000nmであること、
・絶縁性メッシュが誘電体製の絶縁性膜を少なくとも1つ含むこと、
・絶縁性メッシュの絶縁性膜が105Ω・cm以上の、例えば107Ω・cm以上の抵抗率を有すること、
・第1の電極の前記少なくとも1つの導電性膜が連続であること、
である。
【0023】
本発明のもう一つの対象は、直列に接続した複数の光電池を含む光起電力モジュールであって、光電池が上述したとおりのものであり、光電池kの第2の電極が直接隣接した光電池k+1の第1の電極と電気的に連絡し、そして光電池k+1の第2の電極が直接隣接した光電池k+2の第1の電極と電気的に連絡しており、kは1〜N−2の数、Nは当該モジュール中の光電池の数であることを特徴とする光起電力モジュールである。
【0024】
本発明のもう一つの対象は、次の工程、すなわち、
・第1の電極を形成するよう、基材上に電気伝導性材料製の少なくとも1つの第1の導電性膜を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの第1の膜上にマスクを形成する工程、
・絶縁性メッシュを形成するよう、前記マスクを介して誘電体製の少なくとも1つの絶縁性膜を被着させる工程、
・第2の電極の導電性メッシュを形成するよう、前記マスクを介して導電性材料製の少なくとも1つの第2の導電性膜を被着させる工程、
・前記マスクを除去する工程、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュとで画定される開口部を少なくとも部分的に充填するよう、液剤塗布により光能動媒体を被着させる工程、
を連続して含む光電池を製造するための方法である。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、前記方法は、個別に又は任意の技術的に可能な組み合わせで適用される、次の構成要件のうちの1つ以上を含む。その構成要件とは、
・マスクを形成する工程が、
・・溶媒中に分散した安定コロイド粒子の液剤を基礎材料とする膜を被着させる工程、及び、
・・メッシュを被着させるためのマスクを形成する間隙の網状組織が得られるまで、前記膜を乾燥させる工程、
を含むこと、
・コロイド粒子の液剤を浸漬塗布により被着させること、
・当該方法が、第2の電極を前記少なくとも1つの第2の導電性膜で形成するよう、光能動媒体上及び導電性メッシュ上に導電性材料製の少なくとも1つの導電性有機膜を被着させる工程を含むこと、
である。
【0026】
本発明のもう一つの対象は、次の工程、すなわち、
・第1の電極を形成するよう、基材上に電気伝導性材料製の少なくとも1つの第1の導電性膜を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの第1の導電性膜上にマスクを形成する工程、
・絶縁性メッシュを形成するよう、前記マスクを介して誘電体製の少なくとも1つの絶縁性膜を被着させる工程、
・第2の電極の導電性メッシュを形成するよう、前記マスクを介して導電性材料製の少なくとも1つの第2の導電性膜を被着させる工程、
・前記マスクを除去する工程、
・絶縁性メッシュと導電性メッシュとで画定される開口部を少なくとも部分的に充填するよう、液剤塗布により光能動媒体を被着させる工程、
を連続して含む光起電力モジュールを製造するための方法である。
【0027】
本発明の特定の実施形態によれば、前記方法は、個別に又は任意の技術的に可能な組み合わせで適用される、次の構成要件のうちの1つ以上を含む。その構成要件とは、
・当該方法が更に、第2の電極を導電性メッシュで形成するよう、光能動媒体上に、そして任意選択的に導電性メッシュ上に、導電性材料製の少なくとも1つの導電性有機膜を被着させる工程を含むこと、
・当該方法が更に、
・・前記少なくとも1つの第2の導電性膜を被着後且つ前記光能動媒体の被着前に、モジュールを複数の光電池に分割するため、事前に被着させた膜を基材の長さに沿った複数の第1の平行な線に沿ってレーザーアブレーションし、前記少なくとも1つの第1の導電性膜、前記少なくとも1つの絶縁性膜、及び前記少なくとも1つの第2の導電性膜を、第1の線に沿って除去するようレーザーを設定し、第1のレーザーアブレーションにより第1の線に沿って形成したスリットを光能動媒体で充填する第1のレーザーアブレーション工程、
・・前記光能動媒体を被着後且つ前記少なくとも1つの導電性有機膜の被着前に、第1の線に隣接した第2の平行な線に沿って行う第2のレーザーアブレーション工程であり、光能動媒体、前記少なくとも1つの絶縁性膜、及び前記少なくとも1つの第2の導電性膜を、第2の線に沿って除去するが、前記少なくとも1つの第1の導電性膜は除去しないようレーザーを設定し、第2のレーザーアブレーションにより第2の線に沿って形成したスリットを前記少なくとも1つの導電性有機膜で充填する第2のレーザーアブレーション工程、及び、
・・前記少なくとも1つの導電性有機膜の被着後、第1の線の反対側の第2の線に隣接した第3の平行な線に沿って行う第3のレーザーアブレーション工程であり、前記少なくとも1つの導電性有機膜、光能動媒体、前記少なくとも1つの第2の導電性膜、及び前記少なくとも1つの絶縁性膜を、第3の線に沿って除去するが、前記少なくとも1つの第1の導電性膜は除去しないようレーザーを設定する第3のレーザーアブレーション工程、
を含むこと、
である。
【0028】
本発明は、添付の図面を参照して単に一例として記載する以下の説明を読むことでよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による光電池の部分模式断面図である。
【図2】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図3】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図4】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図4a】典型的なマスクの上面図である。
【図4b】典型的なマスクの上面図である。
【図5】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図6】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図7】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図8】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図9】電池製造方法の工程を説明する、図1に類似した図である。
【図10】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【図11】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【図12】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【図13】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【図14】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【図15】ともに直列に接続した複数の図1に示した光電池を含む光起電力モジュールの製造を説明する部分模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による光電池1は、有機光電池である。
【0031】
「有機光電池」という表現は一般に、有機の光能動媒体、すなわち有機半導体から主として構成された光能動媒体を有する光電池を意味するものと理解される。しかし、本発明は、言うまでもなく、以下に記載する有機及び無機の半導体に限定されない。
【0032】
有機半導体は、単結合と二重結合とが規則正しく交代し、電子が主鎖に沿って非局在化するのを可能にしていることを特徴とし、それらは共役系と称される。有機半導体は、低モル質量の分子、一般に「小分子」と呼ばれるものと、ポリマーとの、2つのカテゴリーに分類することが可能である。「有機半導体」という表現は、ガリウム、シリコンなどを基礎材料とする通常の無機半導体を除いて、全ての有機半導体を意味し、また有機/無機混成半導体も意味するものと理解される。
【0033】
本発明による有機光電池1は、図1に例示したように、基材2、第1の電極4、第2の電極6、第1の電極4と第2の電極6とを分離する絶縁性メッシュ8、そして第1の電極4及び第2の電極6と電気的に連絡するよう配置された有機光能動媒体10を含む。
【0034】
図面は、基材2とその他の膜4、6、8、10との厚さの違いがかなりあり、例えば約500倍異なるので、より明確にするため、一定の縮尺にはなっていない。更に、図面は模式的であり、電池のメッシュとモジュールは、言うまでもなくもっと多くのストランドを含む。
【0035】
基材2は、電池1の様々な構成要素を形成する材料膜を被着するための支持体として働く。基材2の上面2Aに、被着した種々の膜が上面2Aの平面に平行な膜を形成する。
【0036】
第1の電極4は、電気伝導性材料の連続膜12により形成され、この材料は基材2上に直接被着させるか、あるいは1以上の膜、例えばSi34又はSnZnOを挿入して、被着させる。
【0037】
「膜B上に形成した(又は被着した)膜A」という表現は、本書全体を通して、膜B上に直接形成した、従って膜Bと接触している膜Aを意味するか、あるいは膜Aと膜Bとの間に1以上の膜を挿入して膜B上に形成した膜Aを意味するものと理解される。
【0038】
膜12はその範囲の全体にわたり連続である。
【0039】
絶縁性メッシュ8は、第1の電極4上に、誘電体製でありメッシュの形をした絶縁性膜13を被着させることにより得られる。被着は、下記でより詳しく説明するように、マスクを通して行われる。こうして、第1の電極は基材2と絶縁性メッシュ8との間に位置する。
【0040】
「メッシュ」という用語は、ストランドにより形成された所定材料の配列を意味するものと理解され、ストランドはそれらの間に貫通開口部を画定するとともに互いに接合する。各ストランドはメッシュの任意の他のストランドに、それら2つのストランドがそれぞれ接合する場合には直接接続され、あるいはメッシュの他のストランドを通して接続される。
【0041】
第2の電極6は、導電性メッシュ14と、液剤塗布によって被着される、任意選択的である導電性有機膜16とを含む。
【0042】
導電性メッシュ14は、絶縁性メッシュ8の上に、その絶縁性メッシュを形成するのに使用した同じマスクを介して、電気伝導性材料製の膜15を、あるいは多層積重体を被着させることにより得られる。
【0043】
絶縁性メッシュ8と導電性メッシュ14は、第1の電極4上に並列して被着される。絶縁性メッシュ8は、第1の電極4と導電性メッシュ14との間に挟まれる。
【0044】
導電性メッシュ14を被着後、そして導電性有機膜16の被着前に、光能動媒体10を被着させる。
【0045】
光能動媒体10は、導電性メッシュ14の開口部14Aを通してそれを被着させることによって絶縁性メッシュ8の開口部8Aに配置される。こうして開口部8Aは、第1の電極4、絶縁性メッシュ8及び導電性メッシュ14を被着後に、開口部14Aとともに、光能動媒体10を受け入れるための光能動媒体受け入れ用開口部を画定する。
【0046】
導電性有機膜16は、光能動媒体10の上と導電性メッシュ14の上に被着される。こうして導電性有機膜16は光能動媒体10を覆い、光能動媒体10と導電性メッシュ14との間に電気伝導性媒体を供給する。
【0047】
それらは同じマスクを通して被着されるので、メッシュ8と14は同一の断面を持ち、すなわちそれらは基材2の上面2Aの平面に平行な面を通して断面が同一であり、そしてメッシュ8と14はそれらのそれぞれの開口部8A、14Aが相互に向き合い、相互に達するように揃えられる。
【0048】
メッシュ8と14はおのおの、受け入れ用開口部を画定するそれぞれの開口部8Aと14Aを多数有する。
【0049】
受け入れ用開口部8A、14Aは、不連続であり間隔をあけている。それらは第1の電極4によりふさがれ、すなわち第1の電極が開口部の底を画定している。しかし、別の実施形態として、受け入れ用開口部8A、14Aは絶縁性メッシュ8と第1の電極4との間に挿入された連続膜によりふさがれる。
【0050】
導電性有機膜16は、第1の電極4の反対側で受け入れ用開口部8A、14Aをふさぐ。別の実施形態として、中間膜を挿入することもできる。光能動媒体と導電性有機膜16を被着させる前には、受け入れ用開口部8A、14Aは盲開口部であるということに注目すべきである。その後それらは、導電性有機膜16又は中間膜の被着によってふさがれる。
【0051】
メッシュ8、14のそれぞれのストランド8B、14Bは、電池1の厚さ“h”に沿って延在する。こうしてメッシュ8と14は、厚さ“h”に沿って一緒に連続のメッシュパターンを形成する。
【0052】
メッシュ8と14のストランド8B、14Bによって形成されるパターンは、下記でより詳しく説明するようにマスクがコロイド懸濁液を乾燥させひびを入れさせて作られるので、不規則でランダムである。
【0053】
開口部8A、14Aは、例えば5〜100μm、好ましくは6〜20μmの平均径“D”を有する。ストランド8Bと14Bは、例えば500nm〜10μm、好ましくは600nm〜2μmの平均幅“L”を有する。(本書の全体を通して、範囲はそれらの境界を含むということに注意すべきである)。
【0054】
開口部の平均径Dとストランドの平均幅Lとの比は、例えば5〜20、好ましくは10〜20である。
【0055】
絶縁性メッシュ8は、例えば50nm〜2μmの厚さを有する。
【0056】
導電性メッシュ14は、例えば100nm〜2μmの厚さを有する。
【0057】
開口部8A、14Aの平均径Dとストランド8B、14Bの平均幅L及び高さHの寸法は、いくつかのパラメーター、すなわち電極6のエネルギー透過率、第2の電極6の抵抗、絶縁性メッシュ8のストランド8Bの厚さについての抵抗、及び製造コスト、の折衷の結果である。
【0058】
開口部の平均径Dとストランドの平均幅Lとの比を最大にすると、第2の電極6を通り抜けるエネルギーの透過率が最大になる。
【0059】
しかし、第2の電極6の抵抗はストランドの幅Lが減少するにつれて増大する。この場合、この抵抗は、ストランドの断面積を増加させてそれにより抵抗を減少させるように、ストランドの平均高さH、すなわち導電性メッシュ14の厚さを増加させることで低下させてもよい。
【0060】
とは言え、ストランドの平均高さHが増加すると、それを被着させるのに要する時間が増加するので、導電性メッシュの製造コストの上昇を招くことがある(使用する製造技術に依存して)。
【0061】
電極パラメーターを最適化するこの例は、メッシュの様々な幾何学的パラメーター間の必要な妥協を説明するものである。
【0062】
絶縁性メッシュ8のストランド8Bは平均高さHを有し、絶縁性メッシュ8の膜は、絶縁性メッシュ8のストランド8Bの厚さについて、第1の電極4と第2の電極6との短絡を防ぐのに十分な抵抗を得るのに適した抵抗率を有する。
【0063】
例えば、絶縁性メッシュ8の絶縁膜は105Ω・cm以上の、例えば107Ω・cm以上の、抵抗率を有する。
【0064】
開口部14Aの平均径D、ストランド14Bの平均幅L、ストランド14Bの平均高さH、及び導電性メッシュ14の導電性膜15の抵抗率は、例えば、導電性メッシュ14が1〜20Ω/□、好ましくは5〜15Ω/□、より好ましくは8〜10Ω/□のシート抵抗を持つように選ばれる。(シート抵抗は、定義により基材2に対して平行に測定されることに注目すべきである)。
【0065】
例えば、導電性メッシュ14の導電性膜15は、10-3Ω・cm以下、例えば10-5Ω・cm以下の、抵抗率を有する。
【0066】
説明した例において、光能動媒体10は絶縁性メッシュ8の開口部8Aに配置されて、メッシュ8の開口部8Aを部分的に充填する。
【0067】
上で説明したように、導電性有機膜16は、光能動媒体10と導電性メッシュ14との電気的連絡を確実にする。
【0068】
しかし、別の実施形態として、光能動媒体は絶縁性メッシュ8の開口部8Aを完全に充填し、そして導電性メッシュ14の開口部14Aを少なくとも部分的に充填する。この場合、光能動媒体が導電性メッシュ14と接触するので、導電性有機膜16は任意選択的なものとなる。
【0069】
一般に、光電池1は、光能動媒体10が第1の電極4及び第2の電極6と接触するように構成される。
【0070】
「電気的に連絡」という表現は、必ずしも「接触」を意味せず、例えば正孔及び/又は電子遮断膜が光能動媒体10と電極4、6との間に挿入されることに注目すべきである。
【0071】
光能動媒体10は、ここでは、電子ドナーと電子アクセプターとの混合物を含む単一の光媒体膜で形成される。とは言え、別の実施形態として、それは例えば、一方が電子ドナーであり他方が電子アクセプターである2つの膜であることができよう。
【0072】
第2の電極6の導電性有機膜16は、絶縁性メッシュ8と導電性メッシュ14の開口部8A、14Aの残りの容積を、少なくとも部分的に充填する。
【0073】
上で説明したように、こうして導電性膜16は、光能動媒体10及び導電性メッシュ14とを電気的に接続するために配置される。この構成は、電荷の抽出を向上させる効果を有し、そしてそれは特に、第2の電極6を導電性有機膜16のない別の実施形態と比べより透明にするのを可能にするという利点を有する。
【0074】
導電性有機膜16は、例えば、導電性メッシュ14の開口部を完全に充填し導電性メッシュ14を覆うのに十分厚い。この場合、それは、電池1の範囲の全体にわたり連続である上面18を画定する。
【0075】
次に、本発明による電池1と、膜の特定の特性を作るのに用いられる好ましい材料を、より詳しく説明する。
【0076】
光が基材2の反対側から説明した電池1に入るようにする。従って第1の電極4は、「反射性」であるように選ばれ、それに対し第2の電極6は「透明」であるように選ばれる。とは言え、特定の用途については、例えば光電池を含み、半透明であることが望まれるグレージングユニットでは、第1の電極4と第2の電極6は両方とも透明であるように選ぶことができよう。
【0077】
説明した例では、第1の電極4はカソードであり、それに対し第2の電極はアノードである。
【0078】
この場合、第1の電極4は、第2の電極6より仕事関数が小さい金属で作られる。これは、例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Mg(マグネシウム)、あるいはCa(カルシウム)でよい。
【0079】
説明した第1の電極4は、単一の膜12により形成されるが、別の実施形態としては、それは2以上の膜(例えば上述の金属から選ばれた種々の金属の多層)の多層積重体(多層とも呼ばれる)を含む。
【0080】
第1の電極4は、例えば、0.01〜1Ω/□のシート抵抗を有する。
【0081】
第1の電極4の膜は、例えば、マグネトロンスパッタリングで被着される。
【0082】
絶縁性メッシュ8は、好ましくは、マグネトロンスパッタリングで被着させることのできる誘電体で製作される。これは、例えば、SiO2(酸化ケイ素)あるいはSi34(窒化ケイ素)であることができる。
【0083】
説明した絶縁性メッシュ8は、単一の膜13を含むが、別の実施形態としては、絶縁性メッシュ8は2以上の膜の多層からなる。
【0084】
絶縁性メッシュ8の膜13は、例えば、マグネトロンスパッタリングにより、例として反応性マグネトロンスパッタリングにより、被着される。
【0085】
導電性メッシュ14は、例えば、単一の、例えばITO(酸化スズインジウム)で製作される、膜からなり、あるいは2以上の膜の多層、例えば銀ベースの多層からなる。
【0086】
導電性メッシュ14の厚さは、例えば100〜2000nmである。
【0087】
導電性メッシュ14の膜は、例えばマグネトロンスパッタリング、例として反応性マグネトロンスパッタリングにより被着される。
【0088】
導電性有機膜16は、例えば、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))膜又はITOナノ粒子のコロイド懸濁液である。導電性膜16は、例えば、スロットコーティングで被着される。これはまた、高い仕事関数を有し、マグネトロンスパッタリングで被着される、透明な導電性膜(又は多層)、例えばITO又はZnO:Alであることができ、あるいは光能動媒体10と直接接触する下層として例えばITO又はZnO:Alなどの高仕事関数材料の膜を有するAgベースの多層であることができる。
【0089】
別の実施形態として、電池1は2以上の有機膜16の多層を含む。
【0090】
導電性有機膜16(又は導電性有機膜の多層)は、例えば、10〜2000nmの厚さを有する。
【0091】
有機の光能動媒体10は、例えば、電子ドナーと電子アクセプターとの混合物の溶液である。これは、例えば、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))とPCBM([6,6]−フェニル−C61酪酸メチルエステル)の溶液でよい。
【0092】
有機光能動媒体10の厚さは、例えば1〜2000nm、例として1〜300nm、である。
【0093】
基材2は、例えばガラス、プラスチック又は金属で製作される。それは好ましくは軟質である。それは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPI(ポリイミド)から製作される。別の実施形態としては、それは複数の材料の膜を含む。
【0094】
光電池1が透明であることが所望される用途では、基材2は、例えば、透明でありそして透明な電極4、6と結合されるように選ばれる。
【0095】
本発明による有機光電池には多数の利点がある。
【0096】
上で説明したように、光電池1は、有機光能動媒体10を被着させる以前に第2の電極の全部又は一部を被着させることを可能にする。
【0097】
こうして、第1の電極4、絶縁性膜8、及び第2の電極6の少なくとも一部を、所定の被着チャンバー内で被着させ、それにより必要な工具の数を減らし製造コストを低下させることができる。
【0098】
第2の電極6のうちの第2の部分、すなわち導電性有機膜16(これな任意選択的なものである)は、マグネトロンスパッタリングを必要とせず、これの被着は液剤塗布により行われる、ということに注目すべきである。
【0099】
導電性有機膜16だけ、すなわち導電性メッシュなしでは、十分でなく、その導電率は十分高くない、ということにも注目すべきである。
【0100】
これには、光能動媒体10が後に被着される基材2の付加価値を増大させるという利点もある。
【0101】
第2の電極6の構造も、良好な透明性と良好な伝導性を可能にし、これは少なくとも一部がメッシュである第2の電極6の構造のためであり、絶縁性メッシュ8の開口部に光能動媒体10が配置されているためである。
【0102】
測定されるシート抵抗は現実に9Ω/□未満であり、光源D65下での光透過率は85%より大きい。
【0103】
導電性有機膜16は、第2の電極6と光能動媒体10との接触面積を増加させる。それは電荷の抽出を向上させる。
【0104】
電池1は、もう一つ別の実施形態では、アノード4と光能動媒体10との間に電子遮断材料の1以上の膜(例えばPEDOT:PSS又はMoO3を基礎材料とする)を含み、及び/又はカソード6と光能動媒体10との間に正孔遮断材料の1以上の膜(例えばTiO2又はZnOを基礎材料とする)を含む。しかし、第2の電極6と光能動媒体との間に遮断膜を挿入することは、光能動媒体10が導電性メッシュ14と接触しない場合にだけ予想されることに注目すべきである。
【0105】
正孔遮断膜と電子遮断膜とが挿入される場合、光能動媒体10は第1の電極4及び第2の電極6と直接接触しない。一般には、上で説明したように、電池1を、電子が光能動媒体10からカソードに向かって流れてそこに入り込むのを可能にするように、そして正孔が光能動媒体10からアノードに向かって流れてそこに入り込むのを可能にするように、すなわち光能動媒体が第1及び第2の電極と「電気的に連絡」するように、構成することが単純に必要である。
【0106】
別の実施形態としては、第1の電極4がアノードであり、第2の電極6がカソードである。この場合、アノードは、例えば透明であり、光が例えば基材側から電池に入るように選ばれる。この実施形態によれば、第1の電極は好ましくは、例えばITO又はZnO:Alなどの、膜又は、最後の膜が高い仕事関数を有するような多層である。電極はまた、Ag(又は任意の他の導電性金属)を基礎材料とし前記高仕事関数の膜で終えていて、Ag膜と高仕事関数膜との間の膜が全て導電性である多層からなることができる。
【0107】
この実施形態によると、第2の電極は、例えばAl又はMgなどの低仕事関数の金属からなることができる。この場合、光電池は、カソードとして働く金属メッシュの被覆度が光が通過することができるのに十分低いので、半透明となる。
【0108】
更に別の実施形態として、メッシュ8と14の少なくとも一方は、マスクを通しての被着では得られない。例えば、絶縁性メッシュ8に対応する材料と導電性メッシュ14に対応する材料を表面全体に被着させ、そして次に例えばスクリーン印刷により、絶縁性メッシュ8の材料と導電性メッシュ14の材料により覆われない領域にエッチャントペーストを被着させるというものであるスクリーン印刷エッチング技術を使用することができる。
【0109】
やはり別の実施形態として、第1の電極の導電性膜12は連続でない。
【0110】
本発明のもう一つの対象は、光電池を製造するための方法である。
【0111】
図2〜9に例示したように、この方法は、基材2を所定の位置に配置し、電気伝導性材料製の導電性膜12を基材2上に被着させて第1の電極4を形成する第1の工程(図2)を含む。この膜は、基材2の上面2Aに直接被着させるか、あるいは基材2と第1の電極4との間に膜を挿入する。
【0112】
次に、安定化コロイド粒子が溶媒中に分散した液剤をベースとする膜を液剤塗布により被着させ、この膜はマスクを通しての被着によりメッシュを形成するのを可能にするマスク20を形成するように設計される。
【0113】
これは、例えばスピンコーティング、カーテン塗布、浸漬塗布又はスプレーコーティングでよく、例として安定化したアクリルコポリマーベースのコロイド粒子の単純な水中エマルジョンのスピンコーティングでよい。これらは、例えば、特性寸法が80〜100nmであるコロイド粒子でよく、例としてDSM社によりNeocryl XK 52のブランド名で販売されているものでよい。
【0114】
例えば国際公開第2008/132397号パンフレットを参照することができ、それには好適なマスクの例が記載されている。
【0115】
次に、コロイド粒子が混入している膜を、溶媒を蒸散させるよう乾燥させる(図4)。この乾燥は、任意の好適な方法(例えば温風乾燥)を使って行われる。
【0116】
この乾燥工程の間に、系は自己組織化して、その具体例を図4aと4bに示したパターンを形成する。ストランドの幅とストランド間の空間とにより特徴づけられる構造を有する安定したマスク20が、アニールなしに得られる。ストランドのパターンは不規則で且つランダムである。
【0117】
次に、本方法は、マスク20を通して、すなわちマスク20の割れ目により画定される隙間22に、絶縁性メッシュ8を被着させる工程(図5)を含む。これらの隙間22は、例えば、マスク20の厚さの50%まで、あるいはそれ未満まで、充填される。
【0118】
この被着工程は、例えばマグネトロンスパッタリングにより、例として反応性マグネトロンスパッタリングにより、あるいは蒸着により、行うことができる。
【0119】
マスク20の上に被着した材料の部分はマスクとともに除去され、従って絶縁性メッシュ8の一部を形成しない。
【0120】
次に、本方法は、第2の電極6の第1の部分を形成するため、絶縁性メッシュ8と同じように、マスク20を通して導電性材料製の第2の導電性膜15を被着させる工程(図6)を含む。
【0121】
次に、絶縁性メッシュ8と導電性メッシュ14のメッシュ構造をあらわにするため、マスク20をリフトオフする(図7)。
【0122】
この作業は、弱いファンデルワールス力(アニールの結果として生じるバインダー又は結合がない)の結果としてコロイドが凝集していることによってより容易にされる。この場合、コロイドのマスク20を水とアセトンとを含有している溶液(コロイド粒子の特性に応じて選定される洗浄液)中に浸漬し、コロイドで被覆された全ての部分をきれいにするようリンスする。この工程は、超音波振動を使ってコロイド粒子のマスクを崩壊させ、そしてメッシュ8、14がそれに従う相補的部分(材料が充填された隙間22の網状組織)が現れるのを可能にすることにより加速することができる。
【0123】
マスク20を除去後、一緒になった絶縁性メッシュ8と導電性メッシュ14とにより画定される開口部を少なくとも部分的に充填するように、液剤塗布により光能動媒体10を被着させる(図8)。これは、例えばスピンコーティングでよい。
【0124】
次に、本方法は、第2の電極6の第2の部分を形成するように、光能動媒体10と導電性メッシュ14の上に導電性有機材料製の導電性有機膜16を被着させる工程を含む。
【0125】
次に、電池1を、例えば、それ自体は周知であるように、1以上の熱硬化した酢酸ビニル(EVA)膜とともに積層してカプセル封入する。
【0126】
本発明のもう一つの対象は、上述のように、直列に接続した複数の光電池1を含む光起電力モジュールと、その製造方法である。
【0127】
図10〜15は、本発明によるモジュール30を製造するための方法における様々な工程を例示している。
【0128】
最初に、図2〜7に示した工程を、第1の電極4、絶縁性メッシュ8及び導電性メッシュ14を形成するよう、単一の基材2の上で実施する(図10参照)。
【0129】
例えば、この方法は、
・基材2上に、第1の電極4を形成するよう、電気伝導性材料製の導電性膜12を被着させる工程、
・第1の膜12の上にマスク20を形成する工程、
・絶縁性メッシュ8を形成するよう、マスク20を通して誘電体製の絶縁性膜13を被着させる工程、
・導電性メッシュ14を形成するよう、マスク20を通して導電性材料製の膜15を被着させる工程、及び
・マスク20を除去する工程、
を連続して含む。
【0130】
次に、本方法は、モジュール30を分割して複数の光電池1にするため、事前に被着させた膜12、13、15を、例えばレーザーを使用して基材2の長さに沿った複数の第1の平行線に沿ってアブレーションする第1のアブレーション工程を含む(図11と12参照)。
【0131】
レーザーは、第1の線に沿って、第1の電極4、絶縁性メッシュ8及び導電性メッシュ14の種々の層12、13、15を除去するように設定される。これは、例えば、532nmで放射する1064nm Nd:YAGの倍周波数レーザーでよい。
【0132】
次に、絶縁性メッシュ8の開口部8Aと導電性メッシュ14の開口部14Aとが一緒になって画定される受け入れ用開口部を少なくとも部分的に充填するよう、光能動媒体10を液剤塗布により被着させる(図12)。光能動媒体10は、第1の線に沿っての第1のレーザーアブレーションにより第1の電極4に形成されたスリットを充填する。
【0133】
次に、第1の線に隣接した第2の平行な線に沿って、第2のレーザーアブレーションを行う(図12と13)。
【0134】
レーザーは、第2の線に沿って光能動媒体10、絶縁性メッシュ8及び導電性メッシュ14の種々の膜を除去するが、第1の導電性膜12は除去しないように設定される。これは、例えば、532nm Nd:YAGレーザーでよい。
【0135】
次に、導電性メッシュ14とともに第2の電極を形成するように、光能動媒体10と導電性メッシュ14の上に導電性有機膜16を被着させる。
【0136】
導電性有機膜16は、第2の線に沿っての第2のレーザーアブレーションによって形成されたスリットを充填する。
【0137】
次に、本方法は、第1の線と反対側の、第2の線に隣接した第3の平行な線に沿っての第3のレーザーアブレーションを含む。
【0138】
レーザーは、第3の線に沿って導電性有機膜16、光能動媒体10、そして導電性メッシュ4と絶縁性メッシュ8の種々の膜13、15を除去するが、第1の導電性膜12は除去しないように、第2のレーザーアブレーションと同じように設定される(例えば532nm Nd:YAGレーザー)。
【0139】
本発明による方法には、様々な光電池1をモジュール30上で、それらを直列に接続しながら、低いコストで製造するのを可能にするという利点がある。
【0140】
こうして製造される光起電力モジュール30は、直列に接続した複数の光電池を含み、そのモジュールでは光電池kの第2の電極が直接隣接した光電池k+1の第1の電極と電気的に連絡し、光電池k+1の第2に電極が直接隣接した光電池k+2の第1の電極と電気的に連絡していて、kは1〜N−2の数であり、Nはモジュール中の光電池の数である。
【0141】
本発明によるモジュールは、電池1について上で説明したのと同じ利点を有する。
【0142】
本発明によるモジュールと電池は更に、ロール・ツー・ロール法を使用する製造に適しており、すなわちそれらをロールに巻取ることができる軟質の基材上で製造することができる。これは、生産速度と物流の容易さの点からみて重要な利点である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・基材(2)、
・前記基材(2)上に形成した第1の電極(4)、
・電子ドナーと電子アクセプターとを含む有機光能動媒体(10)、及び、
・導電性メッシュ(14)を含む第2の電極(6)、
を含み、前記第1の電極(4)が前記基材(2)と前記第2の電極(6)との間に位置している有機光電池(1)であって、当該電池(1)は前記第1の電極(4)の上に形成された絶縁性メッシュ(8)を含むこと、この絶縁性メッシュ(8)の上に前記導電性メッシュ(14)が形成されていて、前記絶縁性メッシュ(8)と前記導電性メッシュ(14)は一緒になって前記光能動媒体(10)を受け入れるための開口部(8A、14A)を画定し、当該開口部は前記第1の電極(4)、前記絶縁性メッシュ(8)及び前記導電性メッシュ(14)を前記基材(2)上に被着後に前記光能動媒体(10)を受け入れることができることを特徴とする有機光電池(1)。
【請求項2】
前記受け入れのための開口部(8A、14A)が、前記第1の電極(4)により、又は前記第1の電極(4)と前記絶縁性メッシュ(8)との間に挿入された膜により、閉じられている、請求項1記載の光電池(1)。
【請求項3】
前記絶縁性メッシュ(8)と前記導電性メッシュ(14)とが、それらを同じマスク(20)を介しての被着により得るのを可能にする形態を有する、請求項1又は2記載の光電池(1)。
【請求項4】
前記絶縁性メッシュ(8)と前記導電性メッシュ(14)とが、不規則でランダムな開口部(8A、14A)のパターンを画定している、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光電池(1)。
【請求項5】
前記絶縁性メッシュ(8)及び前記導電性メッシュ(14)の開口部(8A、14A)が5〜100μm、好ましくは6〜20μmの平均径を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の光電池(1)。
【請求項6】
前記絶縁性メッシュ(8)及び前記導電性メッシュ(14)の開口部(8A、14A)を画定しているストランド(8B、14B)が500nm〜10μm、好ましくは600nm〜2μmの平均幅を有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電池(1)。
【請求項7】
前記第2の電極(6)が電気伝導性有機材料製の少なくとも1つの導電性有機膜(16)を含み、当該導電性有機膜(16)が前記光能動媒体(10)を覆っている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の光電池(1)。
【請求項8】
前記導電性有機膜(16)が前記導電性メッシュ(14)の前記開口部(14A)を少なくとも部分的に充填している、請求項7記載の光電池(1)。
【請求項9】
前記導電性有機膜(16)が前記絶縁性メッシュ(8)の前記開口部(8A)を少なくとも部分的に充填している、請求項8記載の光電池(1)。
【請求項10】
前記光能動媒体(10)が前記絶縁性メッシュ(8)の前記開口部(8A)を少なくとも部分的に充填している、請求項1〜9のいずれか1つに記載の光電池(1)。
【請求項11】
前記光能動媒体(10)が前記導電性メッシュ(14)の前記開口部(14A)を部分的にも充填していない、請求項10記載の光電池(1)。
【請求項12】
前記光能動媒体(10)と前記導電性メッシュ(14)との間に、前記第2の電極(6)がカソードである場合は正孔遮断膜を含み、あるいは前記第2の電極(6)がアノードである場合は電子遮断膜を含む、請求項11記載の光電池(1)。
【請求項13】
直列に接続した複数の光電池(1)を含む光起電力モジュール(30)であって、前記光電池(1)が請求項1〜12のいずれか1つに記載したとおりのものであり、光電池kの第2の電極(6)が直接隣接した光電池k+1の第1の電極(4)と電気的に連絡し、そして光電池k+1の第2の電極(6)が直接隣接した光電池k+2の第1の電極(4)と電気的に連絡しており、kは1〜N−2の数、Nは当該モジュール(30)中の光電池の数であることを特徴とする光起電力モジュール(30)。
【請求項14】
次の工程、すなわち、
・第1の電極(4)を形成するよう、基材(2)上に電気伝導性材料製の少なくとも1つの第1の導電性膜(12)を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの第1の膜(12)上にマスク(20)を形成する工程、
・絶縁性メッシュ(8)を形成するよう、前記マスク(20)を介して誘電体製の少なくとも1つの絶縁性膜(13)を被着させる工程、
・第2の電極(6)の導電性メッシュ(14)を形成するよう、前記マスク(20)を介して導電性材料製の少なくとも1つの第2の導電性膜(15)を被着させる工程、
・前記マスク(20)を除去する工程、及び、
・前記絶縁性メッシュ(8)と前記導電性メッシュ(14)とで画定される開口部(8A、14A)を少なくとも部分的に充填するよう、液剤塗布により光能動媒体(10)を被着させる工程、
を連続して含む、光電池(1)の製造方法。
【請求項15】
前記マスク(20)を形成する工程が、
・安定コロイド粒子が溶媒中に分散した液剤を基礎材料とする膜を被着させる工程、及び、
・メッシュを被着させるためのマスク(20)を形成する間隙(22)の網状組織が得られるまで、前記膜を乾燥させる工程、
を含む、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記コロイド粒子の液剤を浸漬塗布により被着させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記第2の電極を前記少なくとも1つの第2の導電性膜(15)で形成するよう、前記光能動媒体(10)上及び前記導電性メッシュ(14)上に導電性材料製の少なくとも1つの導電性有機膜(16)を被着させる工程を含む、請求項14〜16のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項18】
次の工程、すなわち、
・第1の電極(4)を形成するよう、基材(2)上に電気伝導性材料製の少なくとも1つの第1の導電性膜(12)を被着させる工程、
・前記少なくとも1つの第1の導電性膜(12)上にマスク(20)を形成する工程、
・絶縁性メッシュ(8)を形成するよう、前記マスク(20)を介して誘電体製の少なくとも1つの絶縁性膜(13)を被着させる工程、
・第2の電極(6)の導電性メッシュ(14)を形成するよう、前記マスク(20)を介して導電性材料製の少なくとも1つの第2の導電性膜(15)を被着させる工程、
・前記マスク(20)を除去する工程、及び、
・前記絶縁性メッシュ(8)と前記導電性メッシュ(14)とで画定される開口部(8A、14A)を少なくとも部分的に充填するよう、液剤塗布により光能動媒体(10)を被着させる工程、
を連続して含む、光起電力モジュール(30)の製造方法。
【請求項19】
前記第2の電極(6)を前記導電性メッシュ(14)で形成するよう、前記光能動媒体(10)上に、そして任意選択的に前記導電性メッシュ(14)上に、導電性材料製の少なくとも1つの導電性有機膜を被着させる工程を更に含む、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
・前記少なくとも1つの第2の導電性膜(15)を被着後且つ前記光能動媒体(10)の被着前に、前記モジュール(30)を複数の光電池(1)に分割するため、事前に被着させた膜(12、13、15)を前記基材(2)の長さに沿った複数の第1の平行な線に沿ってレーザーアブレーションし、前記少なくとも1つの第1の導電性膜(12)、前記少なくとも1つの絶縁性膜(13)、及び前記少なくとも1つの第2の導電性膜(15)を、前記第1の線に沿って除去するようレーザーを設定し、前記第1の線に沿っての第1のレーザーアブレーションにより形成したスリットを前記光能動媒体(10)で充填する第1のレーザーアブレーション工程、
・前記光能動媒体(10)を被着後且つ前記少なくとも1つの導電性有機膜(16)の被着前に、前記第1の線に隣接した第2の平行な線に沿って行う第2のレーザーアブレーション工程であり、前記光能動媒体(10)、前記少なくとも1つの絶縁性膜(13)、及び前記少なくとも1つの第2の導電性膜(15)を、前記第2の線に沿って除去するが、前記少なくとも1つの第1の導電性膜(12)は除去しないようレーザーを設定し、前記第2の線に沿っての第2のレーザーアブレーションにより形成したスリットを前記少なくとも1つの導電性有機膜(16)で充填する第2のレーザーアブレーション工程、及び、
・前記少なくとも1つの導電性有機膜(16)の被着後、前記第1の線の反対側の前記第2の線に隣接した第3の平行な線に沿って行う第3のレーザーアブレーション工程であり、前記少なくとも1つの導電性有機膜(16)、前記光能動媒体(10)、前記少なくとも1つの第2の導電性膜(15)、及び前記少なくとも1つの絶縁性膜(13)を、前記第3の線に沿って除去するが、前記少なくとも1つの第1の導電性膜(12)は除去しないようレーザーを設定する第3のレーザーアブレーション工程、
を含む、請求項19記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4bis】
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【図4ter】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−516756(P2013−516756A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546489(P2012−546489)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052877
【国際公開番号】WO2011/080470
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】