説明

有機堆肥の製造方法および温度管理プログラム並びに有機堆肥の製造装置

【課題】有機性廃棄物の発酵状態を管理して所定の発酵ステップを経て完熟堆肥を得ることができる有機堆肥の製造技術を確立する。
【解決手段】温度管理プログラム7により制御された制御部6を介して各装置およびセンサを制御して、有機性廃棄物の一次発酵プロセスと二次発酵プロセスの温度管理を自動化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の製造技術に関し、さらに詳しく言えば、有機性廃棄物の投入から完熟に至るまでの一連の温度管理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物を発酵処理して有機堆肥を製造する方法としては、例えば特許文献1がある。特許文献1では、処理ピットに搬送された廃棄物におが屑や米ぬかなどを混入攪拌して水分量を調節したのち、一定温度で保温して発酵を促進させることにより、効率的に有機堆肥を製造することができる方法が開示されている。
【0003】
ところで、この種の有機性廃棄物の発酵処理中には、アンモニアなどを含む激しい臭気性の発酵ガスが発生する。そこで、特許文献1では、処理ピットの下から空気を送り込んで、発酵ガスを天井に設けられた排気ダクトで吸い込んだのち、排ガス処理施設へと送り出すようにしている。
【0004】
また別の方法として、特許文献2においては、アンモニアとアンモニウムイオンを吸着する添加剤を有機性廃棄物に添加することにより、発酵時に発生するアンモニアを固化して除去することができるようになっている。
【0005】
ところで、非特許文献1の図1に示すように、有機性廃棄物が完熟堆肥に至るまでには、一次発酵と二次発酵の2段階の発酵ステップがあることが分かっている。一次発酵は、堆肥化開始から微生物による分解活動が活発化して、約70℃の高温で発酵する初期分解段階であり、この一次発酵ステップで、有害な病原菌などが死滅する。
【0006】
次に、二次発酵は、一時発酵後に残った有機物を分解するステップであり、発酵温度が約50℃程度まで上昇する。このとことから有機性廃棄物は、2段階の発酵ステップを経て完全に分解されるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−171191号公報
【特許文献2】特開2004−051472号公報
【非特許文献1】日緑工誌,J.Jpn.Soc.Reveget.Tech.,32(1),270−273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来よりこれらの発酵処理は、作業者が経験則に基づいて原料となる有機性廃棄物の水分量などの目視で見極めながら水分量を調節したのち、発酵状態を監視しながら、必要に応じて切り返しと呼ばれる攪拌作業を行っていたため、作業完了までの時間にバラツキがあった。
【0009】
また、発酵温度が高くなりすぎると、有機物の分解を促す好気性菌が死滅してしまい、二次発酵が行われず、未熟な堆肥ができてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は上述した課題を解決するため、本発明は、有機性廃棄物の発酵状態を管理して所定の発酵ステップを経て完熟堆肥を得ることができる有機堆肥の製造技術の確立を目的としている。
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の製造方法において、上記有機性廃棄物を攪拌する攪拌手段と、上記有機性廃棄物に向けて空気を送り込む送風手段と、上記有機性廃棄物の温度および大気温度ならびに湿度を測定する温湿度測定手段と、上記各手段を運転を制御するとともに、所定の温度管理プログラムに基づいて上記有機性廃棄物の温度制御を行う制御手段とを含み、上記制御手段は、上記温度測定手段を介して上記有機性廃棄物の温度および上記大気温度ならびに湿度を測定する温湿度測定工程と、上記温湿度測定工程にて計測された温湿度データに基づき、上記有機性廃棄物の温度が基準温度よりも低いと判断した場合に、上記攪拌手段および/または上記送風手段を駆動して、上記有機性廃棄物の温度を上げる昇温工程と、上記有機性廃棄物の温度が基準温度よりも高いと判断した場合に、上記攪拌手段および/または上記送風手段を停止して、上記有機性廃棄物の温度を下げる降温工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入する促進剤投入手段をさらに含み、上記制御手段は、上記昇温工程において、促進剤投入手段を駆動して、上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分測定手段と、上記有機性廃棄物に散水するための散水手段とをさらに含み、上記制御手段は、上記水分測定手段を介して上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分計測工程と、上記水分計測工程にて計測された水分量データに基づき、上記有機性廃棄物の水分量が低いと判断した場合に、上記散水手段および/または上記攪拌手段を駆動して上記有機性廃棄物の水分量を増加させる加水工程をさらに備えることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記温湿度測定手段は、上記有機性廃棄物の表面温度を測定する表面温度センサと、大気温湿度を測定する大気温湿度センサとを含み、上記制御手段は、上記有機性廃棄物の表面温度データおよび大気温湿度データに基づいて、上記有機性廃棄物の内部温度を算出する内部温度算出工程をさらに備えることを特徴としている。
【0015】
本発明には、これら有機堆肥を自動で作るための温度管理プログラムも含まれる。すなわち、請求項5に記載の発明は、生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌し、上記有機性廃棄物の発酵温度を管理して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の温度管理プログラムにおいて、上記有機性廃棄物を所定の一次発酵温度まで昇温する第1フェーズと、上記第1フェーズの後に、上記有機性廃棄物を上記一次発酵における上記発酵促進剤の発酵促進効果が停止する温度まで降温する第2フェーズと、上記有機性廃棄物を上記一次発酵温度よりも低い二次発酵温度まで昇温する第3フェーズと、上記有機性廃棄物を常温まで降温する第4フェーズとを有することを特徴としている。
【0016】
本発明には、この制御方法および温度管理プログラムを用いた製造装置も含まれる。すなわち、請求項6に記載の発明は、生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の製造装置において、上記有機性廃棄物を貯留しておく複数の貯留ピットと、上記各貯留ピット間を往復的に移動可能な移動手段を有し、上記有機性廃棄物を攪拌する攪拌手段とを備え、上記各貯留ピットには、上記有機性廃棄物に向けて空気を送り込む送風手段と、上記有機性廃棄物から発生した発酵ガスを排気する廃棄手段とを有し、上記攪拌手段には、上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入する促進剤投入手段と、上記有機性廃棄物に水を散水する散水手段と、上記有機性廃棄物の温度ならびに大気温度および湿度を測定する温湿度測定手段と、上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分測定手段とをさらに備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、有機性廃棄物の発酵温度が低い場合には、有機性廃棄物を攪拌しながら、送風を行うことにより、好気性細菌の働きを活性化して、発酵温度を所定の設定温度まで上昇させる。また、温度が高い場合には、攪拌と送風を停止して、好気性細菌の働きを弱めて、温度上昇を抑えることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入する促進剤投入手段を介して有機性廃棄物に発酵促進剤を投入する工程を備えていることにより、温度が低い場合は、発酵促進剤を投入してより昇温速度を高めることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、水分測定手段を介して有機性廃棄物の水分量を測定し、所定の設定水分量に応じて散水手段により有機性廃棄物に散水して、攪拌する加水工程を有することにより、温度条件に合わせてもっとも好ましい発酵状態を作ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、有機性廃棄物の表面温度を測定する表面温度センサと、大気温湿度を測定する大気温湿度センサとによって得られた表面温度データおよび大気温湿度データに基づいて有機性廃棄物の内部温度を算出する内部温度算出工程を備えることにより、有機性廃棄物の内部温度を推定して、より発酵温度を細かく管理することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、有機性廃棄物を所定の一次発酵温度まで昇温する第1フェーズと、第1フェーズの後に有機性廃棄物を一次発酵における発酵促進剤の発酵促進効果が停止する温度まで降温する第2フェーズと、有機性廃棄物を一次発酵温度よりも低い二次発酵温度まで昇温する第3フェーズと、有機性廃棄物を常温まで降温する第4フェーズとを備えた温度管理プログラムにより、発酵開始から堆肥の完成までの温度管理を確実に行うことができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、複数の貯留ピットの間を1台の攪拌手段が移動しながら、攪拌と温度管理を同時に行うことができることにより、各貯留ピットの有機性廃棄物の発酵状態に応じて最適の温度管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る有機堆肥の製造装置を模式的に示した平面図であり、図1(b)はその側面図である。
【0024】
図1(a),(b)に示すように、この有機堆肥の製造装置1は、所定の図示しない屋内処理施設に設置される複数、この例では8カ所の貯留ピット2a〜2hを有し、各貯留ピット2a〜2hには有機性廃棄物Dが貯留されている。各貯留ピット2a〜2hの間には、攪拌手段100を各貯留ピット2a〜2hに移動させるための一対のレール3,3が敷設されている。
【0025】
この例において、有機性廃棄物Dは、家畜などの糞尿のほか、生ゴミや野菜クズなどの生ゴミ類などの原料におが屑や米ぬかなどを混ぜ合わせたものからなるが、微生物や酵素によって分解可能な有機物であれば、その材料は任意である。
【0026】
各貯留ピット2a〜2hの底部には、有機性廃棄物Dに向けて下方から空気を送り込むための風洞21が設けられている。各風洞21の側面には、風洞21内に空気を送り込むための送風手段としての送風機4が設けられている。
【0027】
各貯留ピット2a〜2hの床面には、グレーチングパネルなどの通気性パネル22がスリット状に配置されており、通気性パネル22を介して風洞21に送り込まれた空気が有機性廃棄物Dに向けて供給されるようになっている。
【0028】
各貯留ピット2a〜2hの上部には、有機性廃棄物Dから発生するアンモニアなどを拭くんだ発酵ガスを回収、排気するための排気ダクト5が設けられている。排気ダクト5は、所定のダクト配管によって集められ、処理施設の内外に設けられた図示しない排気処理施設へと送り出されるようになっている。
【0029】
送風機4および排気ダクト5は、制御手段6(図4参照)によって運転を管理されており、所定の設定条件によって駆動されるようになっている。なお、本発明において、排気処理施設は任意的構成要素である。
【0030】
次に、図2,3を参照して、攪拌手段100は、図示しないレール移動手段を介してレール3,3上を往復的に移動可能に設置される攪拌機本体110を有し、同攪拌機本体110内には、有機性廃棄物Dを攪拌する攪拌ユニット120が設けられている。この攪拌手段100は、制御部6(図4参照)によって管理されている。
【0031】
この例において、攪拌機本体110は、進行方向の両側面と底面が開口されたコ字状の筐体からなり、レール3,3に沿って車輪111,111を介して移動可能に設けられている。この例において、攪拌機本体110は自走式であるが、ワイヤーやチェーンなどを介して移動させる他走式であってもよい。
【0032】
攪拌ユニット120は、図示しない駆動モータに連結された攪拌シャフト121と、攪拌シャフト121の軸線方向に沿って多数配置される攪拌ロッド122とを有し、各攪拌ロッド122は攪拌シャフト121の半径方向に向けて放射状に突設されている。
【0033】
この例において、攪拌ロッド122は攪拌シャフト121の半径方向に沿って櫛刃状に突設されているが、例えば、スコップ状の攪拌子を設けてもよく、有機性廃棄物Dをまんべんなく攪拌できる構造を備えていれば、その仕様は任意であってよい。
【0034】
攪拌機本体110の進行方向の両側面には、有機性廃棄物Dの発酵状態など監視し、発酵状態を管理するための管理ユニット200が設けられている。この例において、管理ユニット200は、攪拌機本体100の側面から突設されたコ字状のフレーム201の先端側に所定間隔をもって一方の側面に5カ所づつ、合計10カ所配置されている。
【0035】
フレーム201の内部には、図示しない電源ケーブルや制御ケーブルのほか、各種配管類が内蔵されており、それらが各管理ユニット200に接続されている。この例において、
管理ユニット200は、攪拌機本体110の側面に5カ所設けられているが、設置箇所や設置個数などは仕様に応じて任意に変更可能であり、有機性廃棄物Dの状態を把握可能であればよい。
【0036】
図3を参照して、管理ユニット200は、有機性廃棄物Dに向けて好気性菌や酵素などの発酵促進剤を投与するための促進剤投入手段300と、有機性廃棄物Dに向けて水を散水するための散水手段400と、有機性廃棄物Dの表面温度および大気温度ならび大気湿度を測定する温湿度測定手段500と、有機性廃棄物Dの水分量を計測する水分測定手段600とを備えている。各管理ユニット200は同一のため、いずれか1つを例にとって説明する。
【0037】
この例において、促進剤投入手段300は、図示しない発酵促進剤供給手段により供給される好気性菌や分解酵素などの発酵促進剤を有機性廃棄物Dの表面に散布可能な散布ノズルからなる。なお、発酵促進剤は固形状であってもよいし、液状であってもよく、それに応じて促進剤投入手段300の仕様は変更される。
【0038】
この例において、散水手段400は、図示しない水供給手段から供給された水を有機性廃棄物Dの表面に散水するスプリンクラーからなり、各貯留ピット2a〜2hに貯留された有機性廃棄物Dの全範囲にまんべんなく水を散布可能なものが用いられている。
【0039】
この例において、促進剤投入手段300と散水手段400とは別々に設けられているが、この2つを一体化して、図示しないミキサーを介して所定の水分量内に発酵促進剤を配合したのち、有機性廃棄物Dに同時散布できるようにしてもよい。
【0040】
温湿度測定手段500は、表面温度センサと温湿度センサとを組み合わせたものからなる。表面温度センサとしては、例えば日置電機社製の放射温度ハイテスタ3444などが用いられる。温湿度センサとしては日置電機社製の温湿度ロガー3670などが用いられる。なお、発酵ガスにはアンモニアが含まれ、また多湿環境であることからも、これらの各センサ類を腐食から保護するための耐候処理を施すことが好ましい。
【0041】
水分測定手段600は、有機性廃棄物D内に含有される水分量を測定する測定器からなり、この例では、ケツトー科学研究所社製の土壌水分計HJ−530が用いられている。同水分計は、計測用の測定ロッドを検体に差し込む必要があるため、水分測定手段600には、測定ロッドを上下に昇降させるための図示しない昇降手段が設けられている。
【0042】
この例において、促進剤投入手段300、散水手段400、温湿度測定手段500および水分測定手段600は、管理ユニット200内においてボックス化されているが、各手段をそれぞれ別々に切り離して、個別に設置してもよいことは、言うまでもない。
【0043】
これら各手段およびセンサは制御部6によって一括管理されている。図4のブロック図に示すように、制御部6は、例えばコンピュータなどの演算機能を備えた演算処理装置からなり、所定の温度管理プログラム7が格納された記憶領域を備えている。制御部6は、発酵時間などを測定および記録するためのタイマー8も備えている。
【0044】
この例において、制御部6は、コンピュータ内に内蔵される制御プログラムを用いて運転を制御しているが、これ以外に、専用の制御用コンソールなどを用いてもよい。なお。制御部6の仕様や設置場所は仕様に応じて任意である。さらには、各手段とセンサと制御手段6は、バスケーブルなどの有線接続以外に、無線接続であってもよい。
【0045】
本発明には、有機堆肥を自動で作るための温度管理プログラムも含まれる。すなわち、図5に示すように、この温度管理プログラム7は、有機性廃棄物Dを所定の一次発酵温度まで昇温する第1フェーズと、第1フェーズの後に有機性廃棄物Dを一次発酵における発酵促進剤の発酵促進効果が停止する温度まで降温する第2フェーズと、有機性廃棄物Dを一次発酵温度よりも低い二次発酵温度まで昇温する第3フェーズと、有機性廃棄物Dを常温まで降温する第4フェーズとを備えている。
【0046】
第1フェーズは、有機性廃棄物Dを所定の温度および湿度で管理することにより、有機性廃棄物Dの内部温度を約70℃まで昇温させる過程であり、これにより、有機性廃棄物D内に含まれるタンパク質、糖分、ヘミセルロースおよびセルロースが分解されるとともに、アンモニアや炭酸ガスなどが放出される。
【0047】
第2フェーズは、有機性廃棄物Dの一次発酵を停止させる過程であり、内部温度を約30℃まで降温させる。この第2フェーズになると、有機性廃棄物D内の雑草種子や害虫卵、病原菌などが死滅する。この過程においても、発酵ガスは発生する。
【0048】
第3フェーズは、一次発酵を終えた有機性廃棄物D内に残ったリグニンなどを分解する際に再発熱する過程であり、内部温度が約45〜50℃まで上昇する。第4フェーズは、二次発酵を終えた有機性廃棄物Dを室温まで戻す、いわゆるベンチレーション過程であり、これにより、有機物は全て分解されて完熟堆肥が完成する。
【0049】
次に、図1および図6〜図9を参照しながら、この有機性廃棄物の製造工程についてステップ順に説明する。なお、この製造工程においては、1カ所の貯留ピット2aにおける一連の製造工程を例にとって説明する。
【0050】
まず、初期工程として、糞尿や生ゴミなどからなる原料におが屑や米ぬかなどを加えて、約70%程度の水分量になるように調節したのち、好気性細菌を加えて攪拌した有機性廃棄物Dを貯留ピット2aに投入する。
【0051】
貯留ピット2aに有機性廃棄物Dを投入したのち、図示しないコンピュータの温度管理プログラム7によって有機性廃棄物Dの温度管理およびタイマー記録が開始される。まず、第1フェーズの温度管理が開始されると、制御部6は、攪拌装置100に移動指令を出し、これに伴い、攪拌装置100が貯留ピット2a上に移動して、その上で待機する。
【0052】
図6に示すように、攪拌装置100からの待機報告を受け取ると、制御部6は、温湿度センサ500に温湿度測定の指令を出し、これに伴い、温湿度センサが大気中の温湿度および有機性廃棄物Dの表面温度を測定したのち、その温湿度データを制御部6に送信する(ステップST101)。
【0053】
併せて、制御部6は水分センサ600にも指令を出す。指令を受けた水分センサ600は、図示しない昇降手段を介してセンサロッドを有機性廃棄物Dの内部に差し込み、有機性廃棄物Dの水分量W1cを計測したのち、その水分量データを制御部6に送信する(ステップST101)。
【0054】
制御部6は、受け取った温湿度データに基づき、温度管理プログラム7内に格納される図示しない内部温度算出プログラムを起動して、有機性廃棄物Dの内部温度T1cを算定する(ステップST102)。
【0055】
制御部6は、算定された内部温度T1cとあらかじめ設定された理想温度T1、および、理想水分量W1と実際の水分量W1cとを比較検討し、第1フェーズの終了温度ならびに水分量に達している、すなわちYESの場合は、次の第2フェーズへ移行する(ステップST104)。
【0056】
第1フェーズの終了温度ならびに水分量に達していない、すなわちNOの場合は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における内部温度T1cと理想温度T1とを比較して、あらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST105,ST106)。
【0057】
ここで、理想温度T1とは、理想温度T1=室温+Mf1×時間の等式で表される。Mf1は、第1フェーズにおける温度勾配の傾きであり、この傾き係数Mf1は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0058】
内部温度T1cと理想温度T1との関係がT1c<T1(有機性廃棄物Dの内部温度が低い)と判断された場合(ステップST106でYESの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300に「噴霧開始」の指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300は、有機性廃棄物Dに発酵促進剤を投入する。
【0059】
発酵促進剤の投与中において、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、噴霧された発酵促進剤を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布して、これらを均等にかき混ぜる。
【0060】
さらに、制御部6は、送風手段4にも「送風開始」指令を出し、これを受けて、送風装置4は送風を開始して、有機性廃棄物Dに空気を送り込む(ステップST107)。なお、同時に排気手段5に対しても排気指令が出され、発酵ガスを強制排気することが好ましい。
【0061】
内部温度T1cと理想温度T1との関係がT1c>T1(有機性廃棄物Dの内部温度が高い)と判断された場合(ステップST106でNOの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300と送風手段4に待機指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300および送風手段4は停止状態を維持して、有機性廃棄物Dの発酵促進を是正して、温度上昇を抑制する(ステップST108)。
【0062】
次に、制御部6は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における理想水分量W1と計測水分量W1cとを比較して、水分量W1cがあらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST109,ST110)。
【0063】
ここで、理想水分量W1とは、理想水分量W1=70%+Nf1×時間の等式で表される。Nf1は、第1フェーズにおける水分量勾配の傾きであり、この傾き係数Nf1は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0064】
計測水分量W1cが、W1c<W1と判断された場合(すなわち、ステップST110のYESの場合)、制御部6は、散水手段400に「散水開始」の指令を出し、これを受け、散水手段400は、スプリンクラーを起動させて、有機性廃棄物Dに散水を行う。
【0065】
散水中、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、水を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布するとともに、これらを均等にかき混ぜる(ステップST111)。
【0066】
計測水分量W1cが、W1c>W1と判断された場合(すなわちステップST110のNOの場合)、制御部6は、「適切水分量以上」と判断して、各手段に待機命令を出し、待機状態となる。
【0067】
しかるのち、タイマー8によって一定時間が経過すると、制御部6は、再度ステップST101から一連の作業工程を繰り返して、ステップST103にて「YES」の判断が出るまで、各ステップを繰り返す。
【0068】
次に、図7に示すように、一次発酵のピーク温度を経て第2ステップに移行すると、制御部6は、温湿度センサ500に温湿度測定の指令を出し、これに伴い、温湿度センサが大気中の温湿度および有機性廃棄物Dの表面温度を測定したのち、その温湿度データを制御部6に送信する(ステップST121)。
【0069】
併せて、制御部6は水分センサ600にも指令を出す。指令を受けた水分センサ600は、図示しない昇降手段を介してセンサロッドを有機性廃棄物Dの内部に差し込み、有機性廃棄物Dの水分量W2cを計測したのち、その水分量データを制御部6に送信する(ステップST121)。
【0070】
制御部6は、受け取った温湿度データに基づき、温度管理プログラム7内に格納される図示しない内部温度算出プログラムを起動して、有機性廃棄物Dの内部温度T2cを算定する(ステップST122)。
【0071】
制御部6は、算定された内部温度T2cとあらかじめ設定された理想温度T2、および、理想水分量W2と実際の水分量W2cとを比較検討し、第1フェーズの終了温度ならびに水分量に達している、すなわちYESの場合は、次の第2フェーズへ移行する(ステップST124)。
【0072】
第2フェーズの終了温度ならびに水分量に達していない、すなわちNOの場合は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における内部温度T2cと理想温度T2とを比較して、あらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST125,ST126)。
【0073】
ここで、理想温度T2とは、理想温度T2=室温+Mf2×時間の等式で表される。Mf2は、第2フェーズにおける温度勾配の傾きであり、この傾き係数Mf2は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0074】
内部温度T2cと理想温度T2との関係がT2c<T2(有機性廃棄物Dの内部温度が低い)と判断された場合(ステップST126でYESの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300に「噴霧開始」の指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300は、有機性廃棄物Dに発酵促進剤を投入する。
【0075】
発酵促進剤の投与中において、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、噴霧された発酵促進剤を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布して、これらを均等にかき混ぜる。
【0076】
さらに、制御部6は、送風手段4にも「送風開始」指令を出し、これを受けて、送風装置4は送風を開始して、有機性廃棄物Dに空気を送り込む(ステップST127)。なお、同時に排気手段5に対しても排気指令が出され、発酵ガスを強制排気することが好ましい。
【0077】
内部温度T2cと理想温度T2との関係がT2c>T2(有機性廃棄物Dの内部温度が高い)と判断された場合(ステップST126でNOの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300と送風手段4に待機指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300および送風手段4は停止状態を維持して、有機性廃棄物Dの発酵促進を是正して、温度上昇を抑制する(ステップST128)。
【0078】
次に、制御部6は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における理想水分量W2と計測水分量W2cとを比較して、水分量W2cがあらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST129,ST130)。
【0079】
ここで、理想水分量W2とは、理想水分量W2=70%+Nf2×時間の等式で表される。Nf2は、第2フェーズにおける水分量勾配の傾きであり、この傾き係数Nf2は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0080】
計測水分量W2cが、W2c<W2と判断された場合(すなわち、ステップST130のYESの場合)、制御部6は、散水手段400に「散水開始」の指令を出し、これを受け、散水手段400は、スプリンクラーを起動させて、有機性廃棄物Dに散水を行う。
【0081】
散水中、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、水を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布しするとともに、これらを均等にかき混ぜる(ステップST131)。
【0082】
計測水分量W2cが、W2c>W2と判断された場合(すなわちステップST130のNOの場合)、制御部6は、「適切水分量以上」と判断して、ステップST121へ戻される。しかるのち、タイマー8によって一定時間が経過すると、制御部6は、再度ステップST121から一連の作業工程を繰り返して、ステップST123にて「YES」の判断が出るまで、各ステップを繰り返す。
【0083】
図8に示すように、一次発酵の終えて、二次発酵の第3ステップに移行すると、制御部6は、温湿度センサ500に温湿度測定の指令を出し、これに伴い、温湿度センサが大気中の温湿度および有機性廃棄物Dの表面温度を測定したのち、その温湿度データを制御部6に送信する(ステップST141)。
【0084】
併せて、制御部6は水分センサ600にも指令を出す。指令を受けた水分センサ600は、図示しない昇降手段を介してセンサロッドを有機性廃棄物Dの内部に差し込み、有機性廃棄物Dの水分量W3cを計測したのち、その水分量データを制御部6に送信する(ステップST141)。
【0085】
制御部6は、受け取った温湿度データに基づき、温度管理プログラム7内に格納される図示しない内部温度算出プログラムを起動して、有機性廃棄物Dの内部温度T3cを算定する(ステップST142)。
【0086】
制御部6は、算定された内部温度T3cとあらかじめ設定された理想温度T3、および、理想水分量W3と実際の水分量W3cとを比較検討し、第3フェーズの終了温度ならびに水分量に達している、すなわちYESの場合は、次の第4フェーズへ移行する(ステップST144)。
【0087】
第3フェーズの終了温度ならびに水分量に達していない、すなわちNOの場合は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における内部温度T3cと理想温度T3とを比較して、あらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST145,ST146)。
【0088】
ここで、理想温度T3とは、理想温度T3=室温+Mf3×時間の等式で表される。Mf3は、第3フェーズにおける温度勾配の傾きであり、この傾き係数Mf3は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0089】
内部温度T3cと理想温度T3との関係がT3c<T3(有機性廃棄物Dの内部温度が低い)と判断された場合(ステップST146でYESの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300に「噴霧開始」の指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300は、有機性廃棄物Dに発酵促進剤を投入する。
【0090】
発酵促進剤の投与中において、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、噴霧された発酵促進剤を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布して、これらを均等にかき混ぜる。
【0091】
さらに、制御部6は、送風手段4にも「送風開始」指令を出し、これを受けて、送風装置4は送風を開始して、有機性廃棄物Dに空気を送り込む(ステップST147)。なお、同時に排気手段5に対しても排気指令が出され、発酵ガスを強制排気することが好ましい。
【0092】
内部温度T3cと理想温度T3との関係がT3c>T3(有機性廃棄物Dの内部温度が高い)と判断された場合(ステップST146でNOの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300と送風手段4に待機指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300および送風手段4は停止状態を維持して、有機性廃棄物Dの発酵促進を是正して、温度上昇を抑制する(ステップST148)。
【0093】
次に、制御部6は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における理想水分量W3と計測水分量W3cとを比較して、水分量W3cがあらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST149,ST150)。
【0094】
ここで、理想水分量W3とは、理想水分量W3=70%+Nf3×時間の等式で表される。Nf3は、第3フェーズにおける水分量勾配の傾きであり、この傾き係数Nf3は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0095】
計測水分量W3cが、W3c<W3と判断された場合(すなわち、ステップST150のYESの場合)、制御部6は、散水手段400に「散水開始」の指令を出し、これを受け、散水手段400は、スプリンクラーを起動させて、有機性廃棄物Dに散水を行う。
【0096】
散水中、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、水を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布しするとともに、これらを均等にかき混ぜる(ステップST151)。
【0097】
計測水分量W3cが、W3c>W3と判断された場合(すなわちステップST150のNOの場合)、制御部6は、「適切水分量以上」と判断して、ステップST141へ戻される。しかるのち、タイマー8によって一定時間が経過すると、制御部6は、再度ステップST141から一連の作業工程を繰り返して、ステップST143にて「YES」の判断が出るまで、各ステップを繰り返す。
【0098】
次に、図9に示すように、二次発酵の最終工程である第4ステップに移行すると、制御部6は、温湿度センサ500に温湿度測定の指令を出し、これに伴い、温湿度センサが大気中の温湿度および有機性廃棄物Dの表面温度を測定したのち、その温湿度データを制御部6に送信する(ステップST161)。
【0099】
併せて、制御部6は水分センサ600にも指令を出す。指令を受けた水分センサ600は、図示しない昇降手段を介してセンサロッドを有機性廃棄物Dの内部に差し込み、有機性廃棄物Dの水分量W4cを計測したのち、その水分量データを制御部6に送信する(ステップST161)。
【0100】
制御部6は、受け取った温湿度データに基づき、温度管理プログラム7内に格納される図示しない内部温度算出プログラムを起動して、有機性廃棄物Dの内部温度T4cを算定する(ステップST162)。
【0101】
制御部6は、算定された内部温度T4cとあらかじめ設定された理想温度T4、および、理想水分量W4と実際の水分量W4cとを比較検討し、第4フェーズの終了温度(常温)ならびに水分量に達している、すなわちYESの場合は、有機性廃棄物Dが堆肥へと完熟したと見なして温度管理を完了する(ステップST164)。
【0102】
第4フェーズの終了温度ならびに水分量に達していない、すなわちNOの場合は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における内部温度T4cと理想温度T4とを比較して、あらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST165,ST166)。
【0103】
ここで、理想温度T4とは、理想温度T4=室温+Mf4×時間の等式で表される。Mf4は、第4フェーズにおける温度勾配の傾きであり、この傾き係数Mf4は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0104】
内部温度T4cと理想温度T4との関係がT4c<T4(有機性廃棄物Dの内部温度が低い)と判断された場合(ステップST166でYESの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300に「噴霧開始」の指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300は、有機性廃棄物Dに発酵促進剤を投入する。
【0105】
発酵促進剤の投与中において、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、噴霧された発酵促進剤を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布して、これらを均等にかき混ぜる。
【0106】
さらに、制御部6は、送風手段4にも「送風開始」指令を出し、これを受けて、送風装置4は送風を開始して、有機性廃棄物Dに空気を送り込む(ステップST167)。なお、同時に排気手段5に対しても排気指令が出され、発酵ガスを強制排気することが好ましい。
【0107】
内部温度T4cと理想温度T4との関係がT4c>T4(有機性廃棄物Dの内部温度が高い)と判断された場合(ステップST166でNOの場合)、制御部6は、促進剤投入手段300と送風手段4に待機指令を出す。これを受けて、促進剤投入手段300および送風手段4は停止状態を維持して、有機性廃棄物Dの発酵促進を是正して、温度上昇を抑制する(ステップST168)。
【0108】
次に、制御部6は、現在までの経過時間をタイマー8から呼び出し、経過時間における理想水分量W4と計測水分量W4cとを比較して、水分量W4cがあらかじめ設定されたしきい値の範囲内であるかどうかを確認する(ステップST169,ST170)。
【0109】
ここで、理想水分量W4とは、理想水分量W4=70%+Nf4×時間の等式で表される。Nf4は、第4フェーズにおける水分量勾配の傾きであり、この傾き係数Nf4は、あらかじめ温度管理プログラム7によって規定されているものとする。
【0110】
計測水分量W4cが、W4c<W4と判断された場合(すなわち、ステップST170のYESの場合)、制御部6は、散水手段400に「散水開始」の指令を出し、これを受け、散水手段400は、スプリンクラーを起動させて、有機性廃棄物Dに散水を行う。
【0111】
散水中、制御部6は、攪拌手段100に対しても同時に「攪拌移動開始」指令を出し、これを受けて、攪拌手段100は、攪拌シャフトを回転させながら、貯留ピット2aを往復に移動させて、水を有機性廃棄物Dにまんべんなく散布しするとともに、これらを均等にかき混ぜる(ステップST171)。
【0112】
計測水分量W3cが、W3c>W3と判断された場合(すなわちステップST170のNOの場合)、制御部6は、「適切水分量以上」と判断して、ステップST161へ戻される。しかるのち、タイマー8によって一定時間が経過すると、制御部6は、再度ステップST161から一連の作業工程を繰り返して、ステップST163にて「YES」の判断が出るまで、各ステップを繰り返す。
【0113】
以上の一連の作業工程を繰り返し実行し、制御部6が「完熟」と判断した場合、制御部6は、各手段およびセンサに待機指令を出すとともに、図示しない画面モニタなどの表示部に「貯留ピット1番・堆肥化完了」などといった表示を行うことで、管理者に作業完了を告知する。
【0114】
なお、上述した堆肥化ステップは、貯留ピット2aのみ一連の作業ステップについて説明したが、実際の堆肥化ステップは、攪拌手段100がレール3,3上を移動しながら、各貯留ピット2a〜2hにおいて同時並行で行われる。
【0115】
この例において、各貯留ピット2a〜2hは直線状に配置されているが、これ以外に円状に配置されていてもよく、貯留ピット2a〜2hの配置形態や数、大きさなどは処理施設の仕様に応じて任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機堆肥の製造装置の模式的な(a)平面図および(b)側面図。
【図2】攪拌手段の(a)平面図および(b)側面図。
【図3】管理ユニット200の構造を模式的に説明する側面図。
【図4】有機堆肥の製造装置の構成を説明するブロック図。
【図5】温度管理プログラムによって管理される各フェーズの模式図。
【図6】第1フェーズの流れを示す管理フローチャート。
【図7】第2フェーズの流れを示す管理フローチャート。
【図8】第3フェーズの流れを示す管理フローチャート。
【図9】第4フェーズの流れを示す管理フローチャート。
【符号の説明】
【0117】
1 有機堆肥の製造装置
2a〜2h 貯留ピット
3,3 レール
4 送風装置
5 排気ダクト
6 制御部
7 温度管理プログラム
8 タイマー
100 攪拌手段
200 管理ユニット
300 促進剤投入手段
400 散水手段
500 温湿度測定手段
600 水分測定手段
D 有機性廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の製造方法において、
上記有機性廃棄物を攪拌する攪拌手段と、上記有機性廃棄物に向けて空気を送り込む送風手段と、上記有機性廃棄物の温度および大気温度ならびに湿度を測定する温湿度測定手段と、上記各手段を運転を制御するとともに、所定の温度管理プログラムに基づいて上記有機性廃棄物の温度制御を行う制御手段とを含み、
上記制御手段は、上記温度測定手段を介して上記有機性廃棄物の温度および上記大気温度ならびに湿度を測定する温湿度測定工程と、上記温湿度測定工程にて計測された温湿度データに基づき、上記有機性廃棄物の温度が基準温度よりも低いと判断した場合に、上記攪拌手段および/または上記送風手段を駆動して、上記有機性廃棄物の温度を上げる昇温工程と、上記有機性廃棄物の温度が基準温度よりも高いと判断した場合に、上記攪拌手段および/または上記送風手段を停止して、上記有機性廃棄物の温度を下げる降温工程とを備えることを特徴とする有機堆肥の製造方法。
【請求項2】
上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入する促進剤投入手段をさらに含み、上記制御手段は、上記昇温工程において、促進剤投入手段を駆動して、上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入することを特徴とする請求項1に記載の有機堆肥の製造方法。
【請求項3】
上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分測定手段と、上記有機性廃棄物に散水するための散水手段とをさらに含み、上記制御手段は、上記水分測定手段を介して上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分計測工程と、上記水分計測工程にて計測された水分量データに基づき、上記有機性廃棄物の水分量が低いと判断した場合に、上記散水手段および/または上記攪拌手段を駆動して上記有機性廃棄物の水分量を増加させる加水工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の有機堆肥の製造方法。
【請求項4】
上記温湿度測定手段は、上記有機性廃棄物の表面温度を測定する表面温度センサと、大気温湿度を測定する大気温湿度センサとを含み、上記制御手段は、上記有機性廃棄物の表面温度データおよび大気温湿度データに基づいて、上記有機性廃棄物の内部温度を算出する内部温度算出工程をさらに備えることを特徴とする請求項1,2または3に記載の有機堆肥の製造方法。
【請求項5】
生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌し、上記有機性廃棄物の発酵温度を管理して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の温度管理プログラムにおいて、
上記有機性廃棄物を所定の一次発酵温度まで昇温する第1フェーズと、上記第1フェーズの後に、上記有機性廃棄物を上記一次発酵における上記発酵促進剤の発酵促進効果が停止する温度まで降温する第2フェーズと、上記有機性廃棄物を上記一次発酵温度よりも低い二次発酵温度まで昇温する第3フェーズと、上記有機性廃棄物を常温まで降温する第4フェーズとを有することを特徴とする有機堆肥の温度管理プログラム。
【請求項6】
生ゴミや家畜糞尿などの有機性廃棄物に発酵促進剤を投入して攪拌して、上記有機性廃棄物を有機堆肥へと生成する有機堆肥の製造装置において、
上記有機性廃棄物を貯留しておく複数の貯留ピットと、上記各貯留ピット間を往復的に移動可能な移動手段を有し、上記有機性廃棄物を攪拌する攪拌手段とを備え、
上記各貯留ピットには、上記有機性廃棄物に向けて空気を送り込む送風手段と、上記有機性廃棄物から発生した発酵ガスを排気する廃棄手段とを有し、
上記攪拌手段には、上記有機性廃棄物に上記発酵促進剤を投入する促進剤投入手段と、上記有機性廃棄物に水を散水する散水手段と、上記有機性廃棄物の温度ならびに大気温度および湿度を測定する温湿度測定手段と、上記有機性廃棄物の水分量を測定する水分測定手段とをさらに備えていることを特徴とする有機堆肥の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−13007(P2009−13007A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175934(P2007−175934)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(507110084)株式会社エコ・デザイン (1)
【Fターム(参考)】