説明

有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法

【課題】有機塩素化合物で汚染された土壌や地下水を、微生物よって浄化するバイオレメディエーション法では、微生物活性化のための炭素源を地盤中に注入して処理しているが、土質の違いによって効果が異なり、また有機塩素化合物の分解生成物までは分解できない問題や、微生物に最適なpHを維持できない等の問題があった。
【解決手段】本発明の有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法は、液体油脂と、液体油脂重量の0.5〜50重量%のノニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤重量の50〜400重量%の多価アルコールと水とを、油滴の平均粒径50μm以下、液体油脂の配合割合が5〜90重量%となるように水中油型に乳化した油脂乳化物と、コーンスティープリカーを、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水に注入し、有機塩素化合物及び有機塩素化合物の分解生成物を浄化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機械産業等において使用されたテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物による土壌、地下水の汚染が大きな社会問題となっている。地下水中に含まれる揮発性有機塩素化合物等の汚染物質を低減化する方法としては、地下水をポンプで汲み上げて曝気処理する方法がある。しかしながら汚染物質は土粒子にも吸着され易く、この方法では土壌に吸着されている汚染物質までは処理できないため、汚染物質濃度を環境基準値以下とすることが困難であるとともに、処理コストも高くつくという問題があった。一方、土壌中の微生物を活性化して汚染物質を分解するバイオレメディエーション法は、処理コストが低く済むとともに、土壌中に含まれる汚染物質の低減化も図ることができる方法であり、土壌中の微生物を活性化させるための種々の方法が提案されている。たとえば微生物を活性化するために炭素源として作用するエタノールを浄化剤として添加する方法(特許文献1)、炭素数10以上の脂肪酸を浄化剤として土壌中に添加する方法(特許文献2)、炭素数が14以上の脂肪酸やアルコールと、界面活性剤とを含む浄化剤を土壌に添加する方法(特許文献3)等が提案されている。また浄化剤としてコーンスティープリカーを地下水や土壌に添加する方法(特許文献4、5)も提案されており、本願出願人等も、液体油脂、ノニオン系界面活性剤、多価アルコール、水を水中油型に乳化した乳化物よりなる浄化剤を先に提案した(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−90484号公報
【特許文献2】特開2002−370085号公報
【特許文献3】特開2005−66425号公報
【特許文献4】特開2008−36538号公報
【特許文献5】特開2007−222823号公報
【特許文献6】特開2007−83169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載されている方法では、炭素源として添加するエタノールは引火点が低く安全性の問題があり、地下水中や土壌中で広い範囲に容易に拡散してしまうため、エタノールを大量に添加しないと所望の効果が得られ難く、コスト高になるという問題がある。また特許文献2に記載されている炭素数10以上の脂肪酸は、一般に常温で固体であるため土粒子間への浸透性が低く、このため特許文献2に記載の方法では広範囲の処理をするために注入用の井戸を多数掘らなくてはならないという問題がある。更に、常温で固体の脂肪酸やアルコールと界面活性剤とを土壌に添加し、土壌中で固体状の脂肪酸やアルコールを乳化させる特許文献3に記載の方法では、乳化状態を制御できないため乳化粒子の径が不均一となって凝集し易く、広範囲の処理は行い難かった。
【0005】
一方、特許文献4、5に記載されているコーンスティープリカーを添加する方法は、微生物の増殖、活性化を促進することはできるが、揮発性有機塩素化合物が分解により生成された分解生成物まで完全に分解浄化することは困難であった。微生物による有機塩素化合物の分解は、還元的脱塩素化反応によって塩素が水素と置換されて進行し、たとえばテトラクロロエチレンは、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、塩化ビニルモノマーを経て最終的にエチレンへと分解されるが、コーンスティープリカーのみでは、テトラクロロエチレンあるいはトリクロロエチレンを塩化ビニルモノマーやエチレンにまで分解することは確認されていない。更にコーンスティープリカーのpHは酸性であり、土壌、地下水のpHが低下し微生物の活動低下により、有機塩素化合物を分解浄化することが困難となる虞があるため、pH調整剤を添加すると共に、pHの変化を観察する必要があった。また特許文献6に記載されている方法は、土質の違いによって効果が異なり、表1に示すように、粘土質の土壌の場合には高い効果が得られるが、砂質及び礫質の土壌の場合には効果が発現し辛いという問題があった。
【0006】
【表1】

【0007】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意研究した結果、本願出願人等が先に提案した浄化剤と、コーンスティープリカーとを特定の割合で、特定の量を用いることにより、従来の欠点を解消でき、優れた浄化作用が発現されることを見出し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、液体油脂と、液体油脂重量の0.5〜50重量%のノニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤重量の50〜400重量%の多価アルコールと水とを、油滴の平均粒径50μm以下、液体油脂の配合割合が5〜90重量%となるように水中油型に乳化した油脂乳化物と、コーンスティープリカーを、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水に注入し、有機塩素化合物及び有機塩素化合物の分解生成物を浄化することを特徴とする有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法は、土質の違いによる浄化効果のバラツキがなく、どのような土壌に対しても優れた浄化作用が発現されるとともに、土壌、地下水のpH変動による微生物の増殖阻害、活動低下のリスクを排除しているため、処理過程においてpH調整剤を添加する手間が不要であり、効率良い作業、浄化を行うことができる。また本発明の浄化方法は、有機塩素化合物が分解して生成した分解生成物を、塩化ビニルモノマーを経てエチレンにまで分解できるため、汚染された土壌や地下水を安全に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の試験における有機塩素化合物濃度の経時変化を示すグラフである。
【図2】比較例1の試験における有機塩素化合物濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の浄化方法は、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水に、浄化剤として水中油型に乳化した油脂乳化物とコーンスティープリカーとを添加し、土壌、地下水中に生息する微生物が浄化剤を栄養物質として、増殖、活性化して汚染物質を分解するバイオスティミュレーション法である。
【0012】
本発明の浄化方法が処理対象とする汚染物質である有機塩素化合物としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニルモノマー、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタンなどが挙げられる。
【0013】
本発明の浄化方法において用いる油脂乳化物における液体油脂としては、融点15℃以下の油脂が挙げられ、例えばオリーブ油、ナタネ油、サフラワー油、大豆油、ごま油、ぬか油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまし油、つばき油、ひまわり油、ホホバ油等が挙げられる。特に酸化安定性に優れるオリーブ油、ナタネ油、ひまし油、ごま油、コーン油が好ましい。液体油脂は油脂乳化物中の配合量が5〜90重量%となるように配合する。油脂乳化物中の液体油脂が5重量%未満では、乳化物の安定性が低下し保存中に不均一となるため好ましくない。また、油脂乳化物中の液体油脂の配合量が90重量%を超えると、水中油型の乳化物を得ることが難しくなり、水中油型の乳化物が得られてもほとんど流動性を有しないため、取扱い性が低下すると共にそのままでは地盤に注入することが困難となる。油脂乳化物中の液体油脂の配合量が少ないと、油脂乳化物の使用量が多くなり、施工現場までの輸送コストが増加すると共に作業性が低下し、配合量が多いと乳化物の粘度が高くなり、供給設備に問題が生じる虞があるため、より好ましい液体油脂の配合量は50〜80重量%である。
【0014】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステルアルコキシレート、ポリオキシアルキレンアルケニルエステルアルコキシレート、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては0.5%水溶液の曇点が30℃以上のものが水中油型の乳化物の安定性をより良好なものとすることができる点で好ましい。多価アルコールとしては、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトールや、これらの化合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した化合物、グルコース等の糖類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールの1種又は2種以上の重合体等の化合物が挙げられる。これらの化合物のなかでも、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ポリグリセリンが乳化物の油滴の粒径をより小さくすることができる点で好ましい。上記ノニオン界面活性剤及び多価アルコールは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
ノニオン界面活性剤は、前記液体油脂重量の0.5〜50重量%、多価アルコールはノニオン界面活性剤重量の50〜400重量%配合されるが、好ましくはノニオン界面活性剤は前記液体油脂重量の2〜10重量%、多価アルコールはノニオン界面活性剤重量の100〜200重量%である。ノニオン界面活性剤の割合が液体油脂重量の0.5重量%未満であると、油滴平均粒径50μm以下に安定乳化することが困難となり、液体油脂重量の50重量%を超えると油滴平均粒径50μm以下の安定した乳化物を得ることはできるが、油脂乳化物中のノニオン界面活性剤濃度が高くなり、地下水のTOCが増加すると共に微生物活動を阻害する虞が生じ、汚染物の効果的な浄化作用が期待できなくなる。また多価アルコールの割合がノニオン界面活性剤重量の50重量%未満であると、油滴平均粒径50μm以下で安定な水中油型乳化物とすることができない。また多価アルコール量がノニオン界面活性剤重量の400重量%を超えても50重量%未満の場合と同様に油滴平均粒径50μm以下で安定な水中油型乳化物とすることができない。尚、上記、油滴平均粒径は株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910により測定した値である。
【0016】
液体油脂が、油滴平均粒径50μm以下の水中油型に乳化されている油脂乳化物は、ノニオン界面活性剤と多価アルコールを用いて水中油型に乳化して得ることができるが、ノニオン界面活性剤と多価アルコールの混合物をゲル化し得る少量の水(ノニオン界面活性剤に対し50〜300重量%程度の水)を添加後、攪拌下に液状油脂を添加し、次いで残りの水を添加して攪拌下に乳化するD相法によって得ることができる。液体油脂が、油滴平均粒径50μm以下に乳化されている油脂乳化物は、乳化物の安定性に優れ、土壌、地下水中での適度な拡散性を発揮し、汚染物質を効果的に浄化できる。
【0017】
本発明の浄化方法において、上記油脂乳化物とともに用いるコーンスティープリカーは、コーンスターチを製造する際に、とうもろこしを希薄な亜硫酸水に浸漬する工程で、とうもろこしから溶出した可溶成分を含み、乳酸発酵が生じた浸漬液を濃縮して得られる。コーンスティープリカーは、主として低分子のペプチド、アミノ酸、ミネラル、乳酸などを含んでいる。コーンスティープリカーは、澱粉メーカーなどから市販されているものをそのまま使用することができる。また、コーンスティープリカーの固形分は、常圧加熱乾燥法などにより測定した水分を100から差し引くことで求められる。
【0018】
本発明の浄化方法において、上記油脂乳化物中の液体油脂の重量と、コーンスティープリカー中の固形分の重量比率および浄化剤添加量の特定方法は、事前のトリータビリティ試験(浄化能力適用性評価試験)結果に基づき、最適な条件を決定する。トリータビリティ試験は、汚染状況にもよるが、通常、上記油脂乳化物中の液体油脂の重量と、コーンスティープリカー中の固形分の重量比率を75〜25:25〜75、汚染された土壌、地下水に対する浄化剤添加量を0.01〜1.0(w/v)%で実施する。トリータビリティ試験は、対象とする汚染物質濃度とその分解生成物濃度および水素イオン濃度(pH)のそれぞれの経時的推移により確認する。コーンスティープリカーの配合比率が高い場合において、浄化剤の添加量が多いと、有機塩素化合物の初期の分解は速いが、土壌のpHが低下し微生物の活動低下により、分解浄化することが困難となる虞があり、浄化剤の添加量が少ないと、塩化ビニルモノマーをエチレンにまで完全に分解浄化することが困難となる虞がある。一方、コーンスティープリカーの配合比率が低い場合においては、浄化剤の添加量が多いと、有機塩素化合物の分解速度の低下により、浄化期間が長期に及ぶ虞があり、浄化剤の添加量が少ないと、浄化効果が低下し、有機塩素化合物の分解浄化が困難となる虞がある。トリータビリティ試験では、油脂乳化物中の液体油脂の重量と、コーンスティープリカー中の固形分の重量比率および浄化剤添加量の異なる条件で評価を行い、最適な重量比率、添加量を決定することにより、早期浄化並びに浄化剤の使用量低減に繋がり、経済的かつ効率的な浄化が実現できる。
【0019】
本発明の浄化方法において、上記油脂乳化物とコーンスティープリカーは同時、あるいは混合後必要に応じて水で希釈してから土壌、地下水中に添加することで効率的に浄化が行われる。また個別にいずれかを先に有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水中に添加することもできるが、土壌、地下水中での油脂乳化物とコーンスティープリカーとの相乗的な浄化効果が充分に発揮されない虞があるため、油脂乳化物とコーンスティープリカーを添加後、土壌、地下水の一部あるいは全部と浄化剤を混合するような作業工程を導入することが好ましい。有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水に浄化剤を添加するには、地盤に井戸を掘削し、この井戸に浄化剤を注入する方法や地盤を掘削し、掘削底面に散布する方法が挙げられる。また、掘削した土壌に浄化剤を添加・混合する方法が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
ナタネ油(融点0℃以下)70.0重量部、ノニオン界面活性剤として油脂重量の3重量%のポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテル(0.5%水溶液の曇点100℃以上)、ノニオン界面活性剤重量の100重量%のグリセリン及び水25.8重量部を用い、ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテルとグリセリンを撹拌・混合してから、4.2重量部の水を添加後、引き続き撹拌しながらナタネ油を添加し、均一となってから21.6重量部の水を添加することにより、油滴の平均粒径10μmの水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物とコーンスティープリカー(日本食品化工株式会社製、固形分50%)を浄化剤として用いた。トリクロロエチレン(TCE)で汚染された現場から空気と触れないように採取した砂礫土壌と地下水を、窒素雰囲気下で重量比1:1の割合で混合し、5mm以上の礫を取り除いた後、培養用のフレキシブルアルミバック(容積10L)内に6L注入し、更に浄化剤として上記水中油型乳化物3gとコーンスティープリカー1.8gを添加した後、20℃のインキュベーター内で保持した。浄化の進行状況を観察するため、浄化剤添加直後及び7日〜10日毎にアルミバック内から試料30mlを採取し、トリクロロエチレン(TCE)、1,1−ジクロロエチレン(1,1−DCE)、シス−1,2−ジクロロエチレン(c−1,2−DCE)及び塩化ビニルモノマー(VC)等の有機塩素化合物濃度をヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析法により測定した。また採取した試料の水素イオン濃度(pH)、溶存酸素濃度(DO)、酸化還元電位(ORP)を測定した。各有機塩素化合物濃度の経時変化を図1に示す。また、133日経過後の各有機塩素化合物の濃度を「地下水の水質汚濁について(平成9年3月13、環境庁告示第10号)」による基準値(VCについては「要監視項目指針値(平成16年3月31日付け環境省環境管理局水環境部長通達)」、初期値とあわせて表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
比較例1
実施例1の浄化剤の代わりに、実施例1の浄化剤に用いた乳化物6gを添加した他は、実施例1と同様の試験を行った。ただし、同一場所の試料であるが、汚染された現場から採取する際及び浄化実験時の試料取扱いの際に、空気との接触を避けるために行う減圧及び不活性ガス充填の操作により、TCE濃度等が変化するため、実施例1の初期濃度とは異なっている。試料中の有機塩素化合物濃度の経時変化を図2に示す。また、133日経過後の各有機塩素化合物の濃度を表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】
DOとORPは微生物活動に深く関わっているため、採取した試料の状況及び変化の把握を目的に測定を行った。DO及びORPが高い環境(0mV以上)では好気性微生物が活性化しているが、徐々にDO及びORPが低下し、ORPが−200〜−300mVとなると、有機塩素化合物の分解に関わる嫌気性微生物が活性化する。図1、図2に示す実施例及び比較例のDO及びORPの測定結果から、実施例、比較例ともに実験開始後7日程度で、嫌気性微生物が活性化する浄化に適した環境となっていることが確認され、TCE濃度は30日目以降には基準値以下となった。実施例では、pHの影響も認められず、比較例に比べ実験開始後7日のTCEの分解率は高く、TCEの分解に伴い増加したc−1,2−DCE濃度は、50日目以降から低下し、60日目には基準値以下となった。また、c−1,2−DCEの分解に伴い増加したVC濃度は、135日目には基準値付近まで低下しており、グラフの変化から150日目以降には基準値以下となることが示唆された。一方、比較例ではc−1,2−DCE濃度が21日目まで増加し、それ以降はほぼ一定の値で推移し、VC濃度も僅かずつ増減したに過ぎず、分解が停滞していることが確認された。このように、比較例のTCE濃度は基準値以下となったが、21日目以降のTCE分解生成物の濃度変化は、実施例とは全く異なった挙動を呈しており、砂礫土壌では、従来の油脂乳化物のみでは一定期間で完全に分解浄化することが困難であり、油脂乳化物とコーンスティープリカーを使用することで、完全に分解浄化出来ることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体油脂と、液体油脂重量の0.5〜50重量%のノニオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤重量の50〜400重量%の多価アルコールと水とを、油滴の平均粒径50μm以下、液体油脂の配合割合が5〜90重量%となるように水中油型に乳化した油脂乳化物と、コーンスティープリカーを、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水に注入し、有機塩素化合物及び有機塩素化合物の分解生成物を浄化することを特徴とする有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水の浄化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−25105(P2011−25105A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170503(P2009−170503)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【Fターム(参考)】