説明

有機太陽電池及びその製造方法

【課題】優秀な光電変換効率を有しつつ、低コストで製作可能な有機太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1電極101と、第2電極108と、第1電極101および第2電極108の間に介在された光活性層104と、光活性層104および第2電極108の間に介在された電子抽出層106と、を含み、電子抽出層106は、極性高分子を含んだ有機太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に新・再生エネルギーへの関心が高まっている現時点で、未来エネルギーとしての可能性と多様な長所とを有した有機太陽電池が注目を集めている。
シリコンを利用した無機太陽電池に比べ、有機太陽電池は、薄膜化及び低コスト製造が可能であり、今後各種フレキシブル素子に多様に適用されるであろう。
尚、このような従来技術は広く一般に公知であるため、先行技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、有機太陽電池の特性改善のために、多様な研究及び開発が進められている。例えば、光活性層材料の熱処理、光活性層の表面処理のような光活性層の改善が試みられている。
しかし、有機太陽電池の光電変換効率の向上、製造コスト節減などの必要性は、依然として要求されている。
【0004】
従って、本発明の目的は、優秀な光電変換効率を有しつつ、低コストで製作可能な有機太陽電池及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る有機太陽電池の第一特徴構成は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に介在された光活性層と、前記光活性層および前記第2電極の間に介在された電子抽出層と、を含み、前記電子抽出層は、極性高分子を含んだ点にある。
【0006】
本発明に係る有機太陽電池の第二特徴構成は、前記極性高分子の双極子モーメントを0.3デバイ以上とした点にある。
【0007】
本発明に係る有機太陽電池の第三特徴構成は、前記極性高分子が下記化学式1Aで表示される置換基を少なくとも一つ含む点にある。
【0008】
[化1A]

【0009】
前記化学式1Aで、aは、0ないし10の整数であり、Lは、置換または非置換のC−C10アルキレン基、置換または非置換のC−C10アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、あるいは置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基であり、pは、1ないし10の整数であり、Aは、−OH、−NH及び下記化学式2Aの群れから選択される極性基である。
【0010】
[化2A]

【0011】
前記化学式2Aで、B及びBは、互いに独立して、単一結合、二重結合、置換または非置換のC−Cアルキレン基、あるいは置換または非置換のC−Cアルケニレン基であり、Xは、CまたはNである。
【0012】
本発明に係る有機太陽電池の第四特徴構成は、前記化学式1Aにおいて、Lをフェニレン基、ナフチレン基またはアントリレン基とした点にある。
【0013】
本発明に係る有機太陽電池の第五特徴構成は、前記化学式2Aにおいて、B及びBが互いに独立した単一結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基とした点にある。
【0014】
本発明に係る有機太陽電池の第六特徴構成は、前記化学式2Aにおいて、XをNとした点にある。
【0015】
本発明に係る有機太陽電池の第七特徴構成は、前記極性高分子が、下記化学式3Aで表示される反復単位を有する点にある。
【0016】
[化3A]

【0017】
前記化学式3Aで、RないしRは、互いに独立して、水素(H)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アリールオキシ基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルエステル基、置換または非置換のC−C30アリールエステル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールエステル基、−N(Q)(Q)、または前記化学式1Aで表示される置換基であるが(ここで、QないしQは、互いに独立して、水素、C−C30アルキル基、C−C30アリール基またはC−C30ヘテロアリール基である)、前記RないしRのうち少なくとも一つは、前記化学式1Aで表示される置換基である。
【0018】
本発明に係る有機太陽電池の第八特徴構成は、前記化学式3Aにおいて、前記RないしRを水素とし、前記Rを前記化学式1Aで表示される置換基とした点にある。
【0019】
本発明に係る有機太陽電池の第九特徴構成は、前記極性高分子を、化学式4Aのポリ(4−ビニルフェノール)(PHS)、化学式4Bのポリビニルアルコール(PVA)または化学式4Cのポリビニルピロリドンとした点にある。
【0020】
[化4A]

【0021】
[化4B]

【0022】
[化4C]

【0023】
前記化学式4Aないし化学式4Cで、nないしnは互いに独立した10ないし1,000,000の整数である。
【0024】
本発明に係る有機太陽電池の第十特徴構成は、前記極性高分子の重量平均分子量(Mw)を、1,000ないし90,000,000とした点にある。
【0025】
本発明に係る有機太陽電池の第十一特徴構成は、前記電子抽出層の厚みを、0.1nmないし10nmとした点にある。
【0026】
本発明に係る有機太陽電池の第十二特徴構成は、前記電子抽出層の一面と、前記第2電極の一面とが互いに接触した点にある。
【0027】
本発明に係る有機太陽電池の製造方法の第一特徴手段は、基板上に第1電極を形成する段階と、前記第1電極上に光活性層を形成する段階と、前記光活性層上に極性高分子を含んだ電子抽出層を形成する段階と、前記電子抽出層上に第2電極を形成する段階と、を含み、前記電子抽出層の形成段階は、前記極性高分子及び溶媒を含んだ混合物からなる第1層を形成する工程と、前記第1層で、前記溶媒の一部以上を除去し、前記電子抽出層を収得する工程と、を含む点にある。
【0028】
本発明に係る有機太陽電池の第二特徴手段は、前記電子抽出層の形成段階において、前記第1層形成工程を、スピンコーティング法、インクジェット・プリンティング法、ノズルプリンティング法、ディップコーティング法、電気泳動蒸着法、テープキャスティング法、スクリーンプリンティング法、ドクターブレード・コーティング法、グラビアプリンティング法、グラビアオフセット・プリンティング法、LB(Langmuir-Blodgett)法または多層薄膜自己組立法を利用して行う点にある。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有機太陽電池は、優秀な光電変換効率を有しつつ、同時に、低コストで容易に薄膜として製作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の有機太陽電池の断面図の概略図である。
【図2】図1の有機太陽電池の各層のエネルギー準位を示した図である。
【図3】比較例1及び実施例1の有機太陽電池の電圧−電流特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例について詳細に説明すれば、次の通りである。
【0032】
図1は、本発明の有機太陽電池の一具現例の断面を概略的に示した図である。図1の有機太陽電池は、第1電極101、正孔抽出層102、光活性層104、電子抽出層106及び第2電極108が順に積層された構造を有する。
【0033】
第1電極101は、基板(図示せず)上に形成されうる。基板としては、一般的な半導体工程に使われる基板(例えば、シリコン基板など)、または太陽光などの外部光を入射させることができる、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)である物質からなる基板などを利用することができる。例えば基板としては、各種ガラス材料、各種金属酸化物、高分子基板などを利用することができる。金属酸化物の例としては、アルミニウム酸化物、モリブデン酸化物、酸化インジウムスズ(ITO)などを挙げることができ、高分子基板の例としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(polyallylate)、ポリイミド(polyimide)、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板は、互いに異なる1以上の物質の混合物からなる単一層でもあり、互いに異なる2以上の物質からなる個別層が積層された多層構造でもある。
【0034】
第1電極101は、アノードでありうる。第1電極101の材料は、大きい仕事関数を有する物質のうちから選択される。例えば第1電極101は、透明であって伝導性にすぐれるITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ATO(antimony tin oxide)などを利用することができる。または、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタル、及びそれらのうち2以上の組み合わせ(例えば、合金、またはアルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)またはマグネシウム−銀(Mg−Ag)の共蒸着層)、黒鉛などの各種炭素系材料などを利用することができる。第1電極101は、互いに異なる2種の物質を含むことができる。例えば第1電極101を、互いに異なる2種の物質を含んだ2層構造で形成することができるなど多様な変形例が可能である。第1電極101は、選択された材料によって、スパッタリング法、蒸着法(気相蒸着法または熱蒸着法など)、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD)、各種湿式コーティング法など公知の多様な方法を利用して形成されうる。
【0035】
第1電極101上には、正孔抽出層102が形成されている。正孔輸送層102は、光活性層104で生成された正孔を捕捉及び輸送し、第1電極101に伝達する役割を行う。
【0036】
正孔抽出層102の材料として、伝導性高分子を使用することができる。伝導性高分子の例として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン、ポリジフェニル、アセチレン、ポリ(t−ブチル)ジフェニルアセチレン、ポリ(トリフルオロメチル)ジフェニルアセチレン、銅フタロシアニン(Cu−PC)、ポリ(ビストリフルオロメチル)アセチレン、ポリビス(T−ブチルジフェニル)アセチレン、ポリ(トリメチルシリル)ジフェニルアセチレン、ポリ(カルバゾール)ジフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリピリジンアセチレン、ポリメトキシフェニルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレン、ポリ(t−ブチル)フェニルアセチレン、ポリニトロフェニルアセチレン、ポリ(トリフルオロメチル)フェニルアセチレン、ポリ(トリメチルシリル)フェニルアセチレン、それらの誘導体、及びそれらのうち2以上の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
例えば正孔抽出層102の材料として、PEDOT:PSSを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
正孔抽出層102は、選択された材料によって、蒸着法(気相蒸着法または熱蒸着法など)、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD)、各種湿式コーティング法など公知の多様な方法を利用して形成されうる。
【0039】
正孔抽出層102の厚みは、1nmないし500nmでありうる。正孔抽出層102の範囲が前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔抽出性能を示す。
【0040】
光活性層104は正孔抽出層102上に形成されている。光活性層104は、太陽光などの外部光を吸収し、それから正孔と電子とを生成させる役割を行う。
【0041】
光活性層104は、電子供与物質と、電子受容物質とを含んだ単一層構造、または電子供与物質を含んだ層と、電子受容物質を含んだ層とを含んだ複層構造であるなど多様な構造を有することができる。
【0042】
電子供与物質としては、π電子を含むp型伝導性高分子物質を利用することができる。電子供与物質として利用される伝導性高分子の具体的な例としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリシロキサンカルバゾール、ポリアニリン、酸化ポリエチレン、(ポリ(1−メトキシ−4−(0−ディスパースレッド1)−2,5−フェニレン−ビニレン)、ポリ−[2−メトキシ−5−(2’−エトキシヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[2−メトキシ−5−3(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MDMO−PPV)、ポリ(2,7−(9,9−ジオクチル)−フルオレン−alt−5,5−(4’,7’−ジ−2−チエニル−2’,1’,3’−ベンゾチアジアゾール))(PFDTBT)、ポリ[N’,0’−ヘプタデカニル−2,7−カルバゾール−alt−5,5−(4’,7’−ジ−2−チエニル−2’,1’,3’−ベンゾチアゾール](PCPDTBT)、ポリ[N’,9’−ヘプタデカニル−2,7−カルバゾール−alt−5,5−(4’,7’−ジ−2−チエニル−2’,1’,3’−ベンゾチアゾール](PCDTBT),ポリインドール、ポリカルバゾール、ポリピリジアジン、ポリイソチアナフタレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルピリジン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリピリジン、それらの誘導体などを含むが、これらに限定されるものではない。電子供与物質の具体例のうち、2以上の組み合わせ(ブレンド、共重合体などをいずれも含む)の使用ももちろん可能である。
【0043】
電子受容物質の具体例としては、フルオレンまたはその誘導体(例えば、フルオレン誘導体であるフェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)、CdSeなどのナノ結晶、炭素ナノチューブ、ナノロッド・ポリベンズイミダゾール(PBI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシル−ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
光活性層104は、電子供与物質としてP3HTと、電子受容物質としてフルオレン誘導体であるPCBMとを含んだ単一層であるが、これに限定されるものではない。
【0045】
光活性層104が電子供与物質と電子受容物質との混合物を含む場合、電子供与物質と電子受容物質との重量比は、10:1ないし10:100であるが、これに限定されるものではない。
【0046】
光活性層104の厚みは、例えば10nmないし2,000nmでありうる。光活性層104は、選択された材料によって、一般的な蒸着法またはコーティング法、例えば、スプレー、スピンコーティング、ディッピング、プリンティング、ドクターブレード、スパッタリングなどの方法を利用したり、または電気泳動法を利用して形成することができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
電子抽出層106は、光活性層104上に形成されている。電子抽出層106は、光活性層104で生成された電子を捕捉及び輸送し、第2電極108に伝達する役割を行う。
【0048】
電子抽出層106は、極性高分子を含む。これにより、第1電極101と第2電極108との仕事関数の差が大きくなり、電子有機太陽電池の開放電圧(VOC:open circuit voltage)が増大し、光活性層104から第2電極108への電子移動が促進され、短絡電流(JSC)が増大しうる。従って、前記極性高分子を含んだ電子抽出層106を含んだ有機太陽電池の光電変換効率が向上しうる。
【0049】
図2は、図1に図示された有機太陽電池の各層のエネルギー準位を図示したダイヤグラムであり、第1電極101のエネルギー準位201、光活性層104のうち電子供与物質204aのHOMO(highest occupied molecular orbital)214、光活性層104のうち電子受容物質204bのLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)224、第2電極108のエネルギー準位208が図示されている(ちなみに、図2には、電子供与物質204aと電子受容物質204bとのエネルギー準位が区分されて図示されているだけであり、図2の光活性層104が、電子供与物質204aを含んだ層と、電子受容物質204bを含んだ層とを個別的に含んだ二重層構造を有するものであると限定されるものではなく、便宜上、図2には、正孔抽出層102のエネルギー準位は図示していない)。
【0050】
図1及び図2を参照すれば、太陽光などの外部光に露出された有機太陽電池の光活性層104で生成された正孔は、電子供与物質204aのHOMO214から第1電極101に移動し、光活性層104で生成された電子は、電子受容物質204bのLUMO224から電子抽出層106を経て、第2電極108に移動する。
【0051】
ここで、電子抽出層106は、極性高分子を含むので、図2に図示されているように、正電荷領域(δ+)及び負電荷領域(δ−)を含んだ「双極子層」になるが、真空エネルギー準位206(点線部分)は、上側にシフトされる。その結果、第1電極101の仕事関数と第2電極108の仕事関数との差が大きくなり、有機太陽電池の開放電圧が増大しうる。例えば、真空エネルギー準位は、0.05eV以上ほど上側にシフトされるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、前述のような真空エネルギー準位206のシフトは、光活性層104のLUMO224と第2電極108の仕事関数との差を低減させ、光活性層104で生成された電子を第2電極108にさらに容易に伝える。従って、有機太陽電池の短絡電流が増大しうる。
【0053】
電子抽出層106に含まれた極性高分子の双極子モーメントは、0.3デバイ以上、例えば、0.36デバイないし12デバイ(溶媒としてトルエンを使用し、38.4℃で測定したデータ基準である)でありうる。前記範囲を満足させる極性高分子を採用した電子抽出層106は、図2に図示されたような真空エネルギー準位206のシフトを容易に達成することができる。
【0054】
極性高分子は、下記化学式1Aで表示される置換基を少なくとも一つ含むことができる。
【0055】
[化1A]

【0056】
化学式1Aで、aは、互いに独立した0ないし10の整数である。例えばaが0である場合、Aは極性高分子の主鎖に直接連結される。aは、0、1または2でありうる。
【0057】
化学式1Aで、Lは、置換または非置換のC−C10アルキレン基、置換または非置換のC−C10アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、あるいは置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基である。具体的には、Lは、C−Cアルキレン基、C−Cアルケニレン基、C−C14アリーレン基またはC−C14 ヘテロアリーレン基である。例えばLは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エテニレン基、プロペニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピリジニレン基、ピラジニレン基などであるが、これらに限定されるものではない。一具現例でLは、フェニレン基、ナフチレン基またはアントリレン基である。
【0058】
化学式1Aでpは1ないし10の整数である。pは、Lによって異なりうる。例えばpは、1、2、3または4であるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
化学式1Aで、Aは、−OH、−NH及び下記化学式2Aのうち一つである極性基である。
【0060】
[化2A]

【0061】
化学式2Aで、B及びBは、互いに独立して、単一結合、二重結合、置換または非置換のC−Cアルキレン基、あるいは置換または非置換のC−Cアルケニレン基である。ここで、BまたはBが単一結合または二重結合である場合、化学式2AでXとCは、単一結合または二重結合で連結されている。B及びBは、単一結合、C−Cアルキレン基またはC−Cアルキレン基である。例えばB及びBは、単一結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基であるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
化学式2AでXは、CまたはNである。例えばXはNであるが、これに限定されるものではない。
【0063】
化学式1Aでaが2以上である場合、2以上のLは、互いに同一であるか、あるいは異なり、pが2以上である場合、2以上のAは、互いに同一でもあり、あるいは異なることもある。
【0064】
一具現例によれば、化学式1Aで、a=1、L=フェニレン基、p=1、A=−OH;a=0、p=1、A=−OH;a=0、A=化学式2A、B=単一結合、B=プロピレン、X=N;であるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
一方、電子抽出層106に含まれた極性高分子は、下記化学式3Aで表示される反復単位を有することができる。
【0066】
[化3A]

【0067】
化学式3Aで、RないしRは、互いに独立して、水素(H)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アリールオキシ基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルエステル基、置換または非置換のC−C30アリールエステル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールエステル基、−N(Q)(Q)、または化学式1Aで表示される置換基であるが(ここで、QないしQは、互いに独立して、水素、C−C30アルキル基、C−C30アリール基またはC−C30ヘテロアリール基である)、RないしRのうち少なくとも一つは、化学式1Aで表示される置換基である。ここで、化学式1Aに係わる説明は、前述のところを参照する。
【0068】
化学式3Aで、RないしRは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、前記化学式1Aで表示される置換基であるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
例えば化学式3Aで、RないしRは水素であり、Rは、化学式1Aで表示される置換基である。
【0070】
極性高分子の一具現例によれば、極性高分子は、下記化学式4Aのポリ(4−ビニルフェノール)、下記化学式4Bのポリビニルアルコールまたは下記化学式4Cのポリビニルピロリドンであるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
[化4A]

【0072】
[化4B]

【0073】
[化4C]

【0074】
化学式4Aないし化学式4Cで、nないしnは、10ないし1,000,000の整数でありうる。
【0075】
極性高分子の重量平均分子量(Mw)は、1,000ないし90,000,000、例えば10,000ないし100,000でありうる。極性高分子の重量平均分子量の範囲が、前述のような範囲を満足する場合、電子抽出層106を含んだ混合物のコーティング性、粘度、フロー性などが向上し、優秀な界面特性を有する電子抽出層106を形成することができる。
【0076】
電子抽出層106の厚みは、0.1nmないし10nm、例えば1nmないし4nmでありうる。電子抽出層106の厚み範囲が前述のところを満足するならば、駆動電圧の上昇なしに、図2に図示されたような真空エネルギー準位シフト効果を得ることができる。
【0077】
電子抽出層106は、極性高分子及び溶媒を含んだ混合物からなる第1層を形成する工程と、前記第1層で、前記溶媒の一部以上を除去して電子抽出層を収得する工程とによって形成されうる。すなわち、電子抽出層106は、いわゆる「湿式工程」によって形成されうる。
【0078】
前記溶媒は、前述のような電子抽出層106に含まれる極性高分子と反応性はないが、混和性があり、熱などによって容易に除去されうる物質である。例えば溶媒は、アルコール類(エチルアルコール)であるが、これに限定されるものではない。
【0079】
極性高分子及び溶媒を含んだ混合物からなる第1層は、電子抽出層106が形成される領域上に形成されるが、例えば光活性層104上に形成されうる。
【0080】
第1層は、公知の多様な方法、例えば、スピンコーティング法、インクジェット・プリンティング法、ノズルプリンティング法、ディップコーティング法、電気泳動蒸着法、テープキャスティング法、スクリーンプリンティング法、ドクターブレード・コーティング法、グラビアプリンティング法、グラビアオフセット・プリンティング法、LB(Langmuir-Blodgett)法または多層薄膜自己組立法(layer-by-layer self-assembly)を利用して形成されうるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
極性高分子及び溶媒を含んだ混合物からなる第1層のうち溶媒の一部以上は、公知の多様な方法を利用して除去されうる。例えば第1層に対する熱処理、真空乾燥、UV(ultraviolet)処理などを行うことによって、第1層のうち溶媒の一部以上が除去され、その結果、第1層は、極性高分子を含んだ電子抽出層106に変換されうる。
【0082】
このように電子抽出層106は、湿式工程に基づいた工程によって形成されうるので、前述のような電子抽出層106を具備した有機太陽電池は、高価な真空チャンバ、真空化装備などを要する蒸着法を利用して電子抽出層を形成する有機太陽電池に比べ、製造コストを節減することができる。また、湿式工程を利用して電子抽出層106を形成する場合、電子抽出層106下部の光活性層104の損傷を最小化させたり、防止することができるので、有機太陽電池のフィルファクタ(fill factor)が増大しうる。
【0083】
電子抽出層106上には、第2電極108が形成されている。一具現例によれば、電子抽出層106上には、第2電極108が「直接」形成され、電子抽出層106の一面と、第2電極108の一面とが互いに接触しうる(図1参照)。すなわち、電子抽出層106と第2電極108との間に、他の電子輸送層、例えば蒸着法を利用して形成されるLiF層が介在されない。
【0084】
第2電極108は、カソードでありうる。第2電極108は、光活性層104での電子移動が容易になるように、仕事関数が小さい物質を利用することができる。例えば第2電極108の材料としては、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、インジウム、イットリウム、リチウム、銀、鉛、セシウムなどの金属、またはそれらの2種以上の組み合わせを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本明細書で、「*」及び「*’」は、隣接した元素または反復単位との結合サイトを示したものであり、当業者に容易に周知されている。
本発明は、図面に図示された実施例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【実施例】
【0086】
〔実施例1〕
ITO基板(ITOがコーティングされたガラス基板)を準備した後、PEDOT:PSS(H.C.Starck社のCLEVIOS PH)をスピンコーティングした後、200℃で10分間熱処理し、35nm厚の正孔抽出層を形成した。1,2−ジクロロベンゼン、PCBM及びP3HT(PCBM及びP3HTの重量比は、1:1である)を含んだ混合物を60℃で13時間撹拌した後、常温に冷却して得た混合物を、当該正孔抽出層上にスピンコーティングした後、150℃で50分間熱処理し、210nm厚の光活性層を形成した。次に、当該光活性層上に、化学式4Aのポリ(4−ビニルフェノール)(PHS)及びエチルアルコールを含んだ混合物をスピンコーティングした後、50℃で10分間熱処理し、2.7nm厚のPHS含有電子抽出層を形成した。当該電子抽出層上に、Alを100nm厚に蒸着させて第2電極を形成することによって、有機太陽電池を製作した。
【0087】
〔比較例1〕
PHS含有電子抽出層を形成していないという点を除いては、実施例1と同じ方法で有機太陽電池を製作した。
【0088】
〔評価例1〕
実施例1及び比較例1の有機太陽電池の電圧−電流密度特性を評価し、その結果を図3に示した。電圧−電流密度特性の評価時、光源としては、キセノンランプを使用(キセノンランプの太陽条件(AM1.5)は、標準太陽電池を使用して補正する)し、100mW/cmの光をそれぞれの有機太陽電池に照射した。
【0089】
一方、測定された電圧−電流グラフから計算された短絡電流(JSC)、開放電圧(VOC)、咲くフィルファクタ(FF)から光電変換効率(PCE)(%)を計算し、下記表1に整理した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から、電子抽出層に極性高分子を採用した実施例1の有機太陽電池が、比較例1の有機太陽電池に比べ、優秀な特性を有するということを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、有機太陽電池及びその製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
101 第1電極
102 正孔抽出層
104 光活性層
106 電子抽出層
108 第2電極
201 第1電極のエネルギー準位
204a 電子供与物質
204b 電子受容物質
206 真空エネルギー準位
208 第2電極のエネルギー準位
214 電子供与物質のHOMO
224 電子受容物質のLUMO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に介在された光活性層と、前記光活性層および前記第2電極の間に介在された電子抽出層と、を含み、前記電子抽出層は、極性高分子を含んだ有機太陽電池。
【請求項2】
前記極性高分子の双極子モーメントは、0.3デバイ以上である請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項3】
前記極性高分子が下記化学式1Aで表示される置換基を少なくとも一つ含む請求項1に記載の有機太陽電池。
[化1A]

(前記化学式1Aで、
aは、0ないし10の整数であり、
は、置換または非置換のC−C10アルキレン基、置換または非置換のC−C10アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、あるいは置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基であり、
pは、1ないし10の整数であり、
は、−OH、−NH及び下記化学式2Aの群れから選択される極性基である。
[化2A]

前記化学式2Aで、
及びBは、互いに独立して、単一結合、二重結合、置換または非置換のC−Cアルキレン基、あるいは置換または非置換のC−Cアルケニレン基であり、
Xは、CまたはNである。)
【請求項4】
前記化学式1Aにおいて、Lがフェニレン基、ナフチレン基またはアントリレン基である請求項3に記載の有機太陽電池。
【請求項5】
前記化学式2Aにおいて、B及びBが互いに独立した単一結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基である請求項3に記載の有機太陽電池。
【請求項6】
前記化学式2Aにおいて、XがNである請求項3に記載の有機太陽電池。
【請求項7】
前記極性高分子が、下記化学式3Aで表示される反復単位を有する請求項1に記載の有機太陽電池。
[化3A]

(前記化学式3Aで、
ないしRは、互いに独立して、水素(H)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、ハロゲン原子、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30アリールオキシ基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のC−C30アルキルエステル基、置換または非置換のC−C30アリールエステル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリールエステル基、−N(Q)(Q)、または下記化学式1Aで表示される置換基であるが(ここで、QないしQは、互いに独立して、水素、C−C30アルキル基、C−C30アリール基またはC−C30ヘテロアリール基である)、前記RないしRのうち少なくとも一つは、下記化学式1Aで表示される置換基である。
[化1A]

前記化学式1Aで、
aは、0ないし10の整数であり、
は、置換または非置換のC−C10アルキレン基、置換または非置換のC−C10アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、あるいは置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基であり、
pは、1ないし10の整数であり、
は、−OH、−NH及び下記化学式2Aのうち一つである極性基である。
[化2A]

前記化学式2Aで、
及びBは、互いに独立して、単一結合、二重結合、置換または非置換のC−Cアルキレン基、あるいは置換または非置換のC−Cアルケニレン基であり、
Xは、CまたはNである。)
【請求項8】
前記化学式3Aにおいて、前記RないしRが水素であり、前記Rが前記化学式1Aで表示される置換基である請求項7に記載の有機太陽電池。
【請求項9】
前記極性高分子が、化学式4Aのポリ(4−ビニルフェノール)(PHS)、化学式4Bのポリビニルアルコール(PVA)または化学式4Cのポリビニルピロリドンである請求項1に記載の有機太陽電池:
[化4A]

[化4B]

[化4C]

(前記化学式4Aないし化学式4Cで、nないしnは互いに独立した10ないし1,000,000の整数である。)
【請求項10】
前記極性高分子の重量平均分子量(Mw)は、1,000ないし90,000,000である請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項11】
前記電子抽出層の厚みが、0.1nmないし10nmである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項12】
前記電子抽出層の一面と、前記第2電極の一面とが互いに接触している請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項13】
基板上に第1電極を形成する段階と、
前記第1電極上に光活性層を形成する段階と、
前記光活性層上に極性高分子を含んだ電子抽出層を形成する段階と、
前記電子抽出層上に第2電極を形成する段階と、を含み、
前記電子抽出層の形成段階は、前記極性高分子及び溶媒を含んだ混合物からなる第1層を形成する工程と、前記第1層で、前記溶媒の一部以上を除去し、前記電子抽出層を収得する工程と、を含む有機太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記電子抽出層の形成段階において、前記第1層形成工程を、スピンコーティング法、インクジェット・プリンティング法、ノズルプリンティング法、ディップコーティング法、電気泳動蒸着法、テープキャスティング法、スクリーンプリンティング法、ドクターブレード・コーティング法、グラビアプリンティング法、グラビアオフセット・プリンティング法、LB(Langmuir-Blodgett)法または多層薄膜自己組立法を利用して行う請求項13に記載の有機太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−84889(P2012−84889A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224143(P2011−224143)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(508355493)浦項工科大學校 産學協力團 (14)
【Fターム(参考)】