説明

有機廃棄物処理剤並びに該有機廃棄物処理剤を用いた有機性廃棄物の処理方法

【課題】 バイオ式の処理方法における処理能力を向上させるべく、微生物による有機廃棄物の分解を促進させることができ、また、処理時に生じる悪臭を抑制できる有機廃棄物処理剤及びその有機廃棄物処理剤を用いた処理方法を提供する。
【解決手段】 有機廃棄物処理剤の主材としてバーミキュライト45〜55重量%とコークス45〜55重量%とを混合物したものを用いて、該有機廃棄物処理剤と有機廃棄物(生ゴミなど)とを混合し、50℃〜65℃の温暖雰囲気中にて一定期間毎に撹拌して有機廃棄物を微生物により分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物処理剤並びに該有機廃棄物処理剤を用いた有機性廃棄物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、近年、コンパクトサイズの有機廃棄物処理機に関する開発が進み、その価格が低下したことから、食料品店又は飲食店などの店舗や家庭において徐々に導入され始めており、各自治体が抱える廃棄物処理問題の解決に貢献している。
【0003】
前記有機廃棄物処理機は、有機廃棄物の処理方法によって乾燥式とバイオ式との二種類に分類できる。乾燥式は、有機廃棄物を熱によって乾燥して減量させる有機廃棄物の処理方法を採用したものであり、バイオ式は、有機廃棄物に対して有機廃棄物処理剤を混入し、有機廃棄物を微生物によって分解して減量させる有機廃棄物の処理方法を採用したものである。
【0004】
いずれの処理方法を採用した有機廃棄物処理機も、有機廃棄物を大幅に減量できる点については相違ないが、乾燥式の処理方法を採用したものは、処理後の残留物を廃棄物として処理しなければならないのに対し、バイオ式の処理方法を採用したものは、処理後の残留物を肥料としてリサイクルできるというメリットがある。また、有機廃棄物の水分含有量は約80%と言われており、乾燥式の処理方法を採用したものでは、有機廃棄物を20%の量にまで減量することが限界であるのに対し、バイオ式の処理方法を採用したものは、微生物による分解によって有機廃棄物を20%以下の量にまで減量することができるというメリットがある。
【0005】
ところが、現在市販されているバイオ式の処理方法を採用した有機廃棄物処理機は、バイオ式の処理方法において最も重要となる微生物を担持する有機廃棄物処理剤の研究開発が進んでおらず、乾燥式の処理方法を採用した有機廃棄物処理機と大差ができるほどの処理能力を有しておらず、また、微生物による有機廃棄物の分解に伴って悪臭が発生するため、特に、飲食店や食料品店などの店舗においては、来店者に対して不快感を与える恐れがあり、積極的に導入されるには至っていない。
【0006】
そこで、バイオ式の処理方法を採用した有機廃棄物処理剤の性能を向上させるべく、有機廃棄物処理剤の研究開発が進められている。例えば、後出特許文献1には、セルロース分解能及びリグニン分解酵素活性を備えた植物系廃棄物分解微生物を鋸屑、籾殻、蕎麦殻、トウモロコシ外皮、米糠、落葉、腐葉土、珪藻土、バーミキュライト、バーライト、ベントナイト、ゼオライト、赤玉土、土、砂、泥炭、木炭、活性炭、石炭又はコークスからなる基材に担持させた植物系廃棄物処理剤が開示されている。また、後出特許文献2には、生ゴミを、コーヒー粕と高炉水砕スラグと蛭石焼成粉末を混合して収容する暖温雰囲気条件のゴミ撹拌処理槽内に投入した後、撹拌しながら、分解消滅処理する生ゴミの消滅処理方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−159603 第1頁
【特許文献2】特開2002−136947 第1頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者も、バイオ式の処理方法における処理能力を向上させるべく、微生物による有機廃棄物の分解をより促進させることができ、かつ、処理時に生じる悪臭を抑制できる有機廃棄物処理剤を得ることを技術的課題とし、試行錯誤的な実験を繰り返した結果、有機廃棄物処理剤の主材として所定の割合にて混合したバーミキュライトとコークスとの混合物を配合すれば、バイオ式の処理方法によって有機廃棄物を処理した際に、微生物による有機廃棄物の分解が促進され、有機廃棄物の減量率が格段に向上すると共に悪臭の発生を抑制できるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0009】
即ち、本発明に係る有機廃棄物処理剤は、バーミキュライトとコークスとを混合してなる混合物が主材として配合されているものである。
【0010】
また、本発明に係る有機廃棄物処理剤は、主材としてバーミキュライト45重量%〜55重量%とコークス45重量%〜55重量%との混合物が配合されているものである。
【0011】
また、本発明に係る有機廃棄物の処理方法は、前記有機廃棄物処理剤を有機性廃棄物に混合し、温暖雰囲気中にて撹拌するものである。
【0012】
また、本発明は、前記有機廃棄物の処理方法において、温暖雰囲気が50℃〜65℃のものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機廃棄物処理剤の主材として所定の割合にて混合したバーミキュライトとコークスとの混合物を配合しているので、当該有機廃棄物処理剤を用いてバイオ式の処理方法により有機廃棄物を処理すると、微生物による有機廃棄物の分解が促進されて有機廃棄物の減量率が格段に向上し、また、処理時に生じる悪臭も抑制される。
【0014】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る有機廃棄物処理剤は、バーミキュライトとコークスとの混合物が主材として配合されたものである。バーミキュライトは、主材全体に対して45重量%〜55重量%の割合で配合すればよく、また、コークスは、主材全体に対して45重量%〜55重量%の割合で配合すればよい。なお、両物質の主材全体に対する割合が前記範囲を満足しない場合には、微生物による有機廃棄物の分解が促進されず、有機廃棄物の減量率が低下し、また、有機廃棄物処理剤が飛散し易くなって有機廃棄物と混合し難くなる。さらに、バーミキュライトの主材全体に対する割合が45重量%を下回ると、処理時に悪臭が発生し易くなる。
【0017】
有機廃棄物処理剤には、主材の外に処理対象となる有機廃棄物の種類によって市販の天然系植物活性剤、硫酸アンモニウム(硫安)、畜糞堆肥又は有機汚泥などの添加剤やセルラーゼ、リパーゼ、アミラーゼ又はプロテアーゼなどの酵素剤が配合される。なお、添加剤の具体例としては、HB-101(商品名;株式会社フローラ製)などがある。
【0018】
次に、前記有機廃棄物処理剤を用いた有機廃棄物の処理方法を説明する。
【0019】
先ず、有機廃棄物処理剤を有機廃棄物に混合した処理物を50℃〜65℃、より好ましくは55℃〜60℃の温暖雰囲気中にて保持する。そして、一定期間毎に撹拌して微生物に酸素を供給することにより、微生物によって有機廃棄物が徐々に分解され、所定期間経過後には有機廃棄物が堆肥化された状態となる。
【0020】
なお、処理雰囲気が65℃よりも高温になると、微生物が死滅してしまう恐れがあり、また、50℃よりも低温になると、微生物の活性が低下して有機廃棄物が分解され難くなる。
【0021】
前記有機廃棄物の処理方法は、ガスや電力によって駆動する市販の有機廃棄物処理機を用いれば容易に行うことができる。
【0022】
また、有機廃棄物処理剤の使用量は用いる有機廃棄物処理機の処理槽(発酵槽)の容積に応じて定まり、通常、処理槽の容積1l当たり0.1kg程度用いるのが好ましい。
【0023】
実施例1.
【0024】
先ず、有機廃棄物処理機として天然ガスを燃料として駆動する処理槽容積約90lの有機廃棄物処理機(型式:GMR-2G;日立ホーム・アンド・ソリューション株式会社製)を用意した。なお、当該有機廃棄物処理機は、天然ガスによって加熱した温水によって処理槽内を約60℃に保つことができる共に、撹拌装置によって処理槽に投入された有機廃棄物(生ゴミ)を一定期間毎に撹拌できるようになっており、さらに、除湿装置によって処理槽に投入された有機廃棄物を乾燥するようになっている。また、バーミキュライトとコークスとをそれぞれ50重量%の割合で混合してなる10kgの主材に、顆粒状の硫酸アンモニウム200gと市販の天然系植物活性剤(商品名:HB-101;株式会社フローラ製)10ccとを配合した有機廃棄物処理剤を用意した。
【0025】
次に、有機廃棄物処理機の処理槽に用意した有機廃棄物処理剤の全量(処理槽の容積1l当たり約0.1kg)を投入し、続いて、食堂から平日(5日/週)に排出される生ゴミ(約11kg/日)を8週間累積的に投入し、処理槽に累積的に投入される生ゴミの重量を測定すると共に、1週間毎に処理槽に残存する残留物の重量を測定した。なお、残留物は、除湿装置によって十分に乾燥された状態となっている。
【0026】
そして、生ゴミの乾燥に伴う減量を除外した生ゴミの分解に伴う減量を確認するため、生ゴミの水分含有量を80%と仮定して処理槽に累積的に投入された生ゴミを乾燥させた重量、即ち、処理槽に累積的に投入された生ゴミの20%の重量(以下、「生ゴミの乾燥重量」という)を算出し、生ゴミの乾燥重量と残留物の重量との時間的推移を図1のグラフに示した。なお、図1において、生ゴミの乾燥重量の推移を実線にて示し、残留物の重量の推移を点線にて示している。
【0027】
図1より、4週間後において、生ゴミの乾燥重量は44.7kgであり、残留物の重量は23.6kgであるため、生ゴミの分解に伴う減量率は47.2%となり、また、生ゴミの乾燥に伴う減量も含めた総減量率は89.2%であることが分かる。また、8週間後において、生ゴミの乾燥重量は90.5kgであり、生ゴミの残留重量は39.1kgであるため、生ゴミの分解に伴う減量率は56.8%となり、また、生ゴミの乾燥に伴う減量も含めた総減量率は91.0%であることが分かる。
【0028】
実施例2,3及び比較例1〜6
【0029】
有機廃棄物処理剤の主材に対するバーミキュライトとコークスとの配合割合を変更した外は、前記実施例1と同様にして処理を行い、4週間後に測定した生ゴミの分解に伴う減量率を表1に示す。なお、表1中において×印は、有機廃棄物処理剤の飛散によって有機廃棄物処理機が故障して処理を続行できなくなった場合を示している。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、主材に対してバーミキュライト又はコークスの配合割合が45重量%〜55重量%の範囲から外れると(比較例1〜6)、有機廃棄物が微生物によって分解され難くなり、また、有機廃棄物処理が飛散し易くなって有機廃棄物処理機の故障の原因となる。また、バーミキュライトの配合割合が前記範囲を下回ると(比較例1〜3)、生ゴミの分解に伴って悪臭が生じ易くなった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係る生ゴミの乾燥質量と残留物の質量との時間的推移を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーミキュライトとコークスとの混合物が主材として配合されていることを特徴する有機廃棄物処理剤。
【請求項2】
バーミキュライト45重量%〜55重量%とコークスを45重量%〜55重量%との混合物が主材として配合されていることを特徴とする有機廃棄物処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機廃棄物処理剤を有機廃棄物に対して混入し、温暖雰囲気中にて撹拌することを特徴とする有機廃棄物の処理方法。
【請求項4】
温暖雰囲気が50℃〜65℃である請求項3記載の有機廃棄物の処理方法。

【図1】
image rotate