説明

有機溶液を用いた廃印刷回路基板から金属を回収する方法

【課題】本発明は廃電子機器の印刷回路基板に含有されている有価金属の回収方法に関するものであって、詳しくは廃印刷回路基板を、有機溶剤を用いて積層されている多重のプラスチック層を分離させた後、静電選別を通じてプラスチック成分と金属成分を分離回収する方法に関するものである。
【解決手段】本発明の回収方法は、廃印刷回路基板を単純切削した後、有機溶剤を用いて前処理する簡単な工程を通じて積層されている多重のプラスチック層を分離させプラスチック成分を含んでいる非金属と金属成分を分離させるという長所があり、有機溶剤による分離及び静電選別を通じて99.99%の金属回収率を持つという長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃電子機器の印刷回路基板に含有されている有価金属の回収方法に関するものであって、詳しくは廃印刷回路基板を、有機溶剤を用いて積層されている多重のプラスチック層を分離させた後、静電選別を通じて酸物でプラスチック成分と金属成分を分離回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に廃印刷回路基板には、金、銀などの貴金属と鉄、銅、ニッケルなどのような有価金属が多量含有されている。
【0003】
最近、消費者の要求による電子機器の性能と模様の変化が早く進行されていて電子機器の使用期間が短くなっている。従って、廃印刷回路基板の発生量が増加している。生産業体では、これにより廃電子機器の処理に負担が加重されており、環境汚染も社会問題として台頭されている。一方、廃印刷回路基板には多量の有価金属が含有されていて適切な処理を通じて有価金属を回収して再利用することができ、これは資源の活用と環境汚染の予防側面から非常に有用であると言える。
【0004】
廃印刷回路基板から有価金属を回収するためには、廃印刷回路基板の約40〜60%を占める非金属成分を除去しなければならない。廃印刷回路基板から金属成分とプラスチック成分を分離する方法としては、大きく物理的選別法と湿式法に大別される。
【0005】
詳細な従来の技術には、廃印刷回路基板から有価金属を回収する方法に関するものであって、廃印刷回路基板の粉砕、風力選別、静電選別及び磁力選別後、硫酸と過酸化水素水を用いて銅、鉄、亜鉛、ニッケル及びアルミニウム成分を溶解分離させ、(NH、CuSO及びNHOH溶液を用いて金及び銀を溶解分離させ、塩水を用いて鉛を溶解分離させ、硫黄数を用いてパラジウムを溶解分離させる技術が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
転炉及び電気炉スラグを用いた廃印刷回路基板の貴金属元素の抽出方法に関するものであって、鉄鋼製錬の時発生する転炉及び電気炉スラグを用いて廃印刷回路基板から金、銀、白金族元素のような貴金属元素を抽出する技術が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
廃印刷回路基板の有価金属を回収する方法に関するものであって、ハンマーミルによる粉砕後、振動傾斜板を用いる物理的選別方法を用いて廃印刷回路基板から有価金属を回収する技術が記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
キレート(Chelate)樹脂を用いた廃印刷回路基板から貴金属元素を回収する方法に関するものであって、廃印刷回路基板の粉砕後、金属成分を溶解させてキレート樹脂に吸着させ、キレート樹脂に吸着された貴金属を溶離液を用いて脱着させることにより貴金属元素を回収する技術が記載されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
加熱溶融及び酒石除去溶液を用いて酒石を回収し、強酸溶液を用いて銅を溶解分離させ、硝酸ナトリウムを用いた熱化学反応により臭素化エポキシ樹脂をガラス繊維から分離させ、水洗浄を用いて炭化されたガラス繊維と銅薄片を分離回収する技術が記載されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
廃印刷回路基板のリサイクルに関するものであって、熱可塑性樹脂から製造された廃印刷回路基板を加熱して熱可塑性樹脂の粘度を低めた後、圧力をかける強制濾過方式で金属材料と絶縁材料を分離回収する技術が記載されている(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
廃印刷回路基板のリサイクルに関するものであって、廃印刷回路基板を粉砕して溶融された酒石に含浸させた後、撹拌及び炭化させ銅薄板、熱硬化性樹脂及びガラス繊維を分離回収する技術が記載されている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
上述した従来の技術の中で、特許文献1、特許文献4及び特許文献7のように湿式法を使う場合、酸を用いて金属成分を廃印刷回路基板から浸出させ回収する方法であるため、浸出割合を判断できる基準がなくて経験に依存するしかないし、廃水が過多に発生するという短所があって、まだ商業化が難しいという問題点がある。
【0013】
一方、特許文献3及び特許文献6のように物理的選別法を使う場合、工程が簡単で廃水発生がないという長所を持っているが、廃印刷回路基板から物理的選別法を用いた金属成分と非金属成分の分離はその分離効率が低いという短所がある。それだけでなく、プラスチック成分の間に存在する金属成分は事実上その回収が不可能であり、これにより金属成分の損失率が高くなるという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特開2003‐0006792号
【特許文献2】韓国特開1999‐0070807号
【特許文献3】韓国特開1998‐068762号
【特許文献4】韓国特開2001‐0067641号
【特許文献5】韓国特開2007‐0077114号
【特許文献6】日本特開2005‐324176号
【特許文献7】米国特開5979033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した問題点を解決するための本発明の目的は、廃印刷回路基板から金属成分と非金属成分の分離効率を増大させ、特に、プラスチック成分の間に存在する金属成分を回収することができる、簡単で、経済的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の廃印刷回路基板から金属を回収する方法は(a)破鎖された廃印刷回路基板を有機溶剤に投入した後、撹拌して金属とプラスチックを単体分離(Liberation)する段階;(b)前記金属とプラスチックをフィルタリング(filtering)して分離した後、洗浄及び乾燥する段階;及び(c)前記乾燥した金属とプラスチックとの混合物を静電選別して金属を分離回収する段階;とを含んで行われる特徴がある。
【0017】
本発明は廃印刷回路基板から金属を分離回収するため、廃印刷回路基板を破鎖(crashing 又は cutting)した後、有機溶剤を用いて優先的にプラスチックと金属を単体分離(Liberation)させ前処理を最小化し、効率的に金属とプラスチックを分離させる方法であり、設備及び装置の設置空間を最小化し、不必要な工程を除去したスマート工法を提供したものである。
【0018】
この時、(a)段階の前記有機溶剤はN,N‐ジメチルホルムアミド(N,N‐Dimethyformamide,HCON(CH3)2)、メチルエチルケトン(Methylethylketone、CH3COC2H5)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、C4H8O)、ストリポキシ(Stripoxy)またはこれらの混合物を使用する特徴があり、好ましくは N、N‐ジメチルホルムアミドを使用する。
【0019】
廃印刷回路基板の金属成分とプラスチック成分の単体分離のために、前記有機溶剤1L(リットル)当たり、70乃至120gの切削された廃印刷回路基板が投入されることが好ましい。
【0020】
(a)段階の前記撹拌は110乃至140℃の温度で800乃至1200rpmの回転速度で撹拌されることが好ましく、前記撹拌は30分乃至2時間間行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回収方法は、廃印刷回路基板を単純切削した後、有機溶剤(N、N‐Dimethyformamide;HCON(CH32)を用いて前処理する簡単な工程を通じて積層されている多重のプラスチック層を分離させプラスチック成分を含んでいる非金属と金属成分を分離させるという長所があり、有機溶剤による分離及び静電選別を通じて99.99%の金属回収率を持つという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の廃印刷回路基板から金属を回収する方法を図示した一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して本発明の回収方法を詳しく説明する。次に紹介される図面は当業者に本発明の思想が充分に伝達できるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は以下に提示される図面に限定されなく、他の形態に具体化されることもできる。また、明細書の全体にかけて同一の参照番号は等しい構成要素を示す。
【0024】
この時、使われる技術用語及び科学用語において他の定義がなければ、この発明が属する技術分野で通常の知識を持った者が通常的に理解している意味を持ち、下記の説明及び添付図面で本発明の要旨を不必要に濁す恐れがある公知機能及び構成に対する説明は略する。
【0025】
図1は、本発明の廃印刷回路基板から金属を回収する方法を図示した一例であり、図1に示したように切削工具を使って廃印刷回路基板を1mm乃至20mmで切削した後、切削された廃印刷回路基板を有機溶剤に投入及び撹拌して廃印刷回路基板の金属成分と非金属成分を単体分離(Liberation)させる。前記金属成分は有機接着剤によりプラスチック板に付けられた金属板であってもよく、電気化学的メッキ、蒸着又は、はんだ付け、圧延等のように熱的、機械的圧力を用いてプラスチック板上に存在する金属層、金属薄片または金属体である。前記非金属成分はプラスチック板またはガラス繊維板である。
【0026】
有機接着剤によって前記プラスチック板と前記金属成分が結合されている場合、前記有機溶剤に前記有機接着剤が溶解され単体分離(Liberation)が行われるようになり、前記プラスチック板と前記金属成分が有機接着剤なしに結合されている場合、前記プラスチック板と前記金属成分との間に形成された界面を通じて有機溶剤が浸透して界面を形成する有機物を溶解させ単体分離(Liberation)が行われるようになる。
【0027】
前記有機溶剤はN,N‐ジメチルホルムアミド(N、N‐Dimethyformamide、HCON(CH32)、メチルエチルケトン(Methylethylketone、CH3COC2H5)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、C4H8O)、ストリポキシ(Stripoxy)またはこれらの混合物を使う特徴があり、好ましくはN,N‐ジメチルホルムアミドを使う。
【0028】
前記の有機溶剤による単体分離をより効果的に行うために、廃印刷回路基板は1mm乃至20mmの長さに切削されることが好ましい。切削される長さが1mm以下の場合、通常の切削工具を用いた切削の遂行が難しくて、切削工程に所要される時間があまりにも長いという短所があり、切削される長さが20mm以上の場合、前記有機溶剤による単体分離が容易に行われないという短所がある。
【0029】
前記の有機溶剤による単体分離をより効果的に行うために、前記有機溶剤1L当たり切削された廃印刷回路基板70乃至120gが投入されることが好ましい。70g以下で廃印刷回路基板を投入する場合、同一の撹拌時間で分離効果の増大は微々であり、120g以上を投入する場合、効果的な撹拌が行われなくて分離効果が減少するという短所がある。
【0030】
前記の有機溶剤による単体分離をより効果的に行うために、前記撹拌は110乃至140℃の温度で800乃至1200rpmの回転速度で撹拌されることが好ましい。前記の温度範囲で撹拌を行うことにより有機溶剤の活性度(activity)を増加させ、揮発による有機溶剤の損失を最小化することができる。また、前記撹拌は800乃至1200rpmの回転速度で行われるが、マグネットバー(magneticbar)を使っても良く、適切な容器に前記有機溶剤と前記廃印刷回路基板を投入した後、前記容器を通常のボルミリング装置を用いて回転させ行われることができる。前記800乃至1200rpmの回転は前記切削された廃印刷回路基板に物理的衝撃を加えて分離効果を増大させ、有機溶剤の溶解能力を均一化させることができるように最適化された撹拌条件である。
【0031】
前記の条件により行われる撹拌は30分乃至2時間間行われることが好ましい。30分より短い場合、有機溶剤による単体分離が行われない危険があり、2時間以上行われた場合、分離効率の増大が微々である。
【0032】
前記撹拌が行われた後、通常のふるう・こすことを通じて前記有機溶剤と分離された金属及びプラスチック成分を分離して回収するのが好ましい。回収された有機溶剤は図1に示したように切削された廃印刷回路基板に再投入されてリサイクルされることが好ましい。
【0033】
ふるう・こすことを通じて回収された金属及びプラスチック成分は洗浄及び乾燥段階を経った後、静電選別を用いて金属成分が非金属成分と分離して回収されるようになる。前記静電選別は静電誘導型、コロナ放電型または摩擦荷電型である。
【実施例1】
【0034】
7mm、5mm、3mmでそれぞれ切断した廃印刷回路基板を切断した長さ別にN、N‐ジメチルホルムアミド1L当たり100gずつビーカーに投入した。温度を130℃に保持しながら長さが5cmであるマグネットバー(magneticbar)を用いて900rpmの回転速度で1時間間撹拌した。撹拌が終わった後、単体分離された非金属成分と金属成分を篩にかけて有機溶液と分離させた後、80℃の温度で乾燥した。次に、乾燥した試料は静電選別(HighTensionSeparator,CarpcoModelHT;Carpco,Inc.Jacksonville,Florida,USA 32206,20kV,40rpm,1stage)を行って99.99%の金属回収率を得た。
【0035】
下記表1は、廃印刷回路基板の切断した長さ別に回収された金属回収率を整理したものである。
【表1】

【0036】
以上のように、本発明では具体的な切断長さ、有機溶剤物質のように特定された事項と限定された実試例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたことであるだけで、本発明は前記実試例に限定されるものではなくて、本発明が属する分野で通常の知識を持っている者ならこのような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0037】
したがって、本発明の思想は説明された実施例に限って決められてはいけなく、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものは本発明の思想の範疇に属すると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)破鎖された廃印刷回路基板を有機溶剤に投入した後、撹拌して金属とプラスチックを単体分離(Liberation)する段階;
(b)前記金属とプラスチックをフィルタリング(filtering)して分離した後、洗浄及び乾燥する段階;及び
(c)前記乾燥した金属とプラスチックとの混合物を静電選別して金属を分離回収する段階;
とを含んで行われる廃印刷回路基板から金属を回収する方法。
【請求項2】
前記(a)段階の前記有機溶剤は、N,N‐ジメチルホルムアミド(N,N‐Dimethylformamide,HCON(CH3)2)、メチルエチルケトン(Methylethylketone、CH3COC2H5)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、C4H8O)、ストリポキシ(Stripoxy)またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の廃印刷回路基板から金属を回収する方法。
【請求項3】
前記有機溶剤1リットル当たり、70乃至120gの切削された廃印刷回路基板が投入されることを特徴とする請求項2に記載の廃印刷回路基板から金属を回収する方法。
【請求項4】
前記(a)段階の前記撹拌は、110乃至140℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の廃印刷回路基板から金属を回収する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502034(P2010−502034A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541240(P2009−541240)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004391
【国際公開番号】WO2009/064063
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(506081530)コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ (21)
【Fターム(参考)】