説明

有機無機複合材料、成形体、光学部品およびレンズ

【課題】特定のサイズの無機微粒子を含有し、高屈折率かつ低いアッベ数を有する有機無機複合材料、ならびに、これを用いたレンズ基材等の光学部品を提供する。
【解決手段】式(1)、(2)または(3)で表される単位構造を有する熱可塑性樹脂と数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有する有機無機複合材料。


〔式中、R1〜R10は水素原子、ハロゲン原子、アリール基またはアルキル基を表し、L1〜L3は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X1〜X3は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−またはアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y1〜Y3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機複合材料、並びに、これを成形した成形体、レンズ基材(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ、マイクロレンズアレイ等を構成するレンズ)等の光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の研究が盛んに行われており、特にレンズ材料の分野においては高屈折性、耐熱性、透明性、易成形性、軽量性、耐薬品性・耐溶剤性等に優れた材料の開発が強く望まれている。
【0003】
プラスチックレンズは、ガラスなどの無機材料に比べ軽量で割れにくく、様々な形状に加工できるため、眼鏡レンズのみならず近年では携帯カメラ用レンズやピックアップレンズ等の光学材料にも急速に普及しつつある。
【0004】
それに伴い、レンズの薄肉化や撮像素子の小型化を目的として、素材自体を高屈折率化することが求められるようになっている。しかし、ある程度高い屈折率を有しており、かつ低いアッベ数を有しているガラスの代替となるようなプラスチック材料は未だ開発されるに至っていない。
【0005】
有機物のみで屈折率を高めることは難しいことから、プラスチック材料に代えて、高屈折率を有する無機物を樹脂マトリックス中に分散させることによって樹脂を高屈折率化する手法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。一方、レイリー散乱による透過光の減衰を低減するためには、粒子サイズが15nm以下の無機微粒子を樹脂マトリックス中に均一に分散させることが好ましい。しかし、粒子サイズが15nm以下の1次粒子は非常に凝集しやすいために、樹脂マトリックス中に均一に分散させることは極めて難しい。そのため、高い屈折率を有しており、かつ低いアッベ数を有している有機無機複合材料は未だ開発されるに至っていない。
【0006】
また、特定の数式で示される屈折率およびアッベ数を有する熱可塑性樹脂と、特定の平均粒子直径と屈折率とを有する無機微粒子とからなる熱可塑性材料組成物およびこれを用いた光学部品が報告されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらも高い屈折率と低いアッベ数とを同時に達成する観点からは十分な性能を発揮するものではなかった。
【0007】
なお、側鎖にカルボキシル基などの官能基を導入した樹脂に無機微粒子を分散した組成物に関する技術が特許文献4に開示されているが、高屈折率かつ低いアッベ数のレンズに関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−73559号公報
【特許文献2】特開2003−73563号公報
【特許文献3】特開2003−73564号公報
【特許文献4】特開2007−238929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、高屈折率かつ低いアッベ数の有機無機複合材料、およびそれを含んで構成される光学部品は未だ見出されておらず、開発が望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定のサイズの無機微粒子を含有し、高屈折率かつ低いアッベ数を有する有機無機複合材料、これを用いた成形体、光学部品およびレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、特定の構造の樹脂を含むことで屈折率の波長依存性を制御できることを見出し、さらに該樹脂と無機微粒子を原料とした有機無機複合材料が高屈折率かつ低いアッベ数を達成できることを見出し、以下に記載する本発明の完成に至った。
【0011】
[1] 下記一般式(1)、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される単位構造を有する熱可塑性樹脂と、数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有することを特徴とする有機無機複合材料。
【化1】

〔一般式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L1は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X1は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【化2】

〔一般式(2)中、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L2は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X2は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【化3】

〔一般式(3)中、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L3は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X3は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
[2] 下記一般式(4)で表される単位構造を有することを特徴とする[1]に記載の有機無機複合材料。
【化4】

〔一般式(4)中、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L4は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X4は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y4は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
[3] 前記熱可塑性樹脂の波長589nmにおける屈折率が1.58以上であり、前記熱可塑性樹脂のアッベ数が30以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の有機無機複合材料。
[4] 前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が10000〜200000であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[5] 前記一般式(1)、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される単位構造を前記熱可塑性樹脂中に5〜100質量%含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[6] 前記熱可塑性樹脂が下記から選ばれる1以上の官能基を有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機無機複合材料。
【化5】

[R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−Si(OR17m183-m[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、mは1〜3の整数を表す。]
[7] 前記熱可塑性樹脂が前記官能基をポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個有していることを特徴とする[6]に記載の有機無機複合材料。
[8] 前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[9] 前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[10] 波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、アッベ数が25以下であり、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする成形体。
[12] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする光学部品。
[13] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とするレンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高屈折率かつ低いアッベ数を達成できる有機無機複合材料、これを用いた成形体、光学部品およびレンズを得ることができる。さらに、本発明の好ましい態様によれば、無機微粒子の分散性がよく、光線透過率も改善される。また、本発明のより好ましい態様によれば、耐光性も改善される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の有機無機複合材料および光学部品について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[有機無機複合材料]
本発明の有機無機複合材料は、下記一般式(1)、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される単位構造を有する熱可塑性樹脂と、数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有することを特徴とする。以下、本発明の有機無機複合材料の好ましい態様を説明する。
【0015】
【化6】

〔一般式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L1は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X1は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【0016】
【化7】

〔一般式(2)中、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L2は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X2は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【0017】
【化8】

〔一般式(3)中、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L3は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X3は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【0018】
(物性)
本発明の有機無機複合材料の屈折率は波長589nmにおいて1.63以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましく、1.67以上であることがさらに好ましく、1.69以上であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、レンズ用途に用いる場合は色収差を補正する観点からアッベ数νDが25以下であることが好ましく、23以下であることがより好ましく、21以下であることが特に好ましい。
本明細書中、アッベ数νDは、波長589nm、486nm、656nmにおけるそれぞれの屈折率nD、nF、nCを測定することで、下記式(A)により算出される。
【数1】

【0020】
本発明の有機無機複合材料の光線透過率は、波長589nmにおいて厚さ1mm換算で70%以上であることが光学部品へ用いる観点から好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であればより好ましい性質を有するレンズ基材を得やすい。なお、本発明における厚さ1mm換算の光線透過率は、有機無機複合組成物を成形して厚さ1.0mmの基板を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定した値である。
【0021】
本発明の有機無機複合材料は、波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、アッベ数が25以下であり、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であることが、特に光学部品用途で使用する観点から好ましい。
【0022】
本発明の有機無機複合材料は、ガラス転移温度が80℃〜400℃であることが好ましく、100℃〜380℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が80℃以上であれば十分な耐熱性が得られやすく、ガラス転移温度が400℃以下であれば成形加工を行いやすくなる傾向がある。
【0023】
本発明の有機無機複合材料は、固体であることが好ましい。溶媒含有量は5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、溶媒を含まないことが最も好ましい。
【0024】
以下において、本発明の有機無機複合材料の必須構成成分である特定の構造の熱可塑性樹脂と無機微粒子について順に説明する。本発明の有機無機複合材料には、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、これらの必須構成成分以外に本発明の条件を満たさない樹脂、分散剤、可塑剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
(熱可塑性樹脂)
<一般式(1)で表される単位構造>
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される単位構造を有している。まず、一般式(1)で表される単位構造について、説明する。
【0026】
【化9】

【0027】
一般式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L1は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X1は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。
【0028】
前記R1は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましく、複数のR1がすべて水素原子であることがより特に好ましい。
【0029】
前記R2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはハロゲン原子であることがより好ましく、複数のR2のうち1つがハロゲン原子で残りのR2が水素原子であることが特に好ましい。
【0030】
前記R3は水素原子または炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0031】
前記L1は単結合または炭素数1〜10の2価の連結基であることが好ましく、単結合または炭素数1〜5の2価の連結基であることがより好ましく、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であることが特に好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基であることがより特に好ましい。
【0032】
前記X1は単結合、−CO2−、−OCO−、−O−、−S−から選ばれる2価の連結基であることが好ましく、単結合、−CO2−、−OCO−であることがより好ましく、単結合または−CO2−であることが特に好ましく、−CO2−であることがより特に好ましい。
【0033】
前記Y1は水素原子またはメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0034】
<一般式(2)で表される単位構造>
一般式(2)で表される単位構造について、説明する。
【0035】
【化10】

【0036】
一般式(2)中、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L2は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X2は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。
【0037】
前記R4は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0038】
前記R5はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましく、複数のR5がすべて水素原子であることが特に好ましい。
【0039】
前記R6は水素原子または炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0040】
前記L2は単結合または炭素数1〜10の2価の連結基であることが好ましく、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であることがより好ましく、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0041】
前記X2は単結合、−CO2−、−OCO−、−O−、−S−から選ばれる2価の連結基であることが好ましく、単結合または−CO2−であることがより好ましく、−CO2−であることが特に好ましい。
【0042】
前記Y2は水素原子またはメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0043】
<一般式(3)で表される単位構造>
一般式(3)で表される単位構造について、説明する。
【0044】
【化11】

【0045】
一般式(3)中、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L3は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X3は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。
【0046】
前記R7は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましく、複数のR7のうち1つがメチル基で残りのR7が水素原子であることが特に好ましい。
【0047】
前記R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはハロゲン原子であることがより好ましく、複数のR8がすべて水素原子であることが特に好ましい。
【0048】
前記L3は単結合または炭素数1〜10の2価の連結基であることが好ましく、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であることがより好ましく、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基であることが特に好ましく、単結合であることがより特に好ましい。
【0049】
前記X3は単結合、−CO2−、−OCO−、−O−、−S−から選ばれる2価の連結基であることが好ましく、単結合または−CO2−であることがより好ましく、−CO2−であることが特に好ましい。
【0050】
前記Y3は水素原子またはメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0051】
<熱可塑性樹脂の好ましい単位構造>
前記一般式(1)、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される単位構造を形成することができるモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、下記一般式(4)で表される単位構造を少なくとも1種有することが好ましい。
【0052】
【化12】

【0053】
一般式(4)中、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L4は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X4は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y4は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。
【0054】
前記R9は、それぞれ独立に前記R1の好ましい範囲と同様である。
前記R10は、それぞれ独立に前記R2の好ましい範囲と同様である。
前記L4は、前記L1の好ましい範囲と同様である。
前記X4は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
前記Y4は、前記Y1の好ましい範囲と同様である。
【0055】
以下に、重合することによって前記一般式(1)、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される単位構造を形成することができるモノマーの具体例を以下にA−1〜A−30として挙げるが、本発明で採用することができるモノマーはこれらの具体例に限定されるものではない。
【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂を共重合により合成する際には、前記一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される単位構造を形成することができるモノマーをモノマー組成物中に5〜100質量%使用することが熱可塑性樹脂の屈折率とその波長依存性、および、有機無機複合材料の屈折率とその波長依存性を改善する観点から好ましく、10〜100質量%使用することがより好ましく、10〜90質量%使用することがさらに好ましい。
【0059】
<共重合可能なモノマー>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、重合することによって前記一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される単位構造を形成することができるモノマーとともに、他のモノマーを共重合させることにより製造することができる。そのような他のモノマーとして、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience (1975) Chapter 2 Page 1〜483に記載のものなどを用いることができる。
【0060】
具体的には、例えば、スチレン誘導体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0061】
前記スチレン誘導体としては、スチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、2−フェニルスチレン、4−クロロスチレン等が挙げられる。
【0062】
前記アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert−ブチル、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0063】
前記メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0064】
前記アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
前記メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
前記アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0067】
前記ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0068】
前記ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0069】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられ、前記フマール酸のジアルキルエステル類またはモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等が挙げられる。
【0070】
その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等も挙げることができる。
【0071】
重合することによって一般式(1)で表される単位構造を形成することができるモノマーとともに共重合することができるモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられるが、本発明で採用することができるモノマーはこれらの具体例に限定されるものではない。なお、以下においてnは1以上の整数を表す。
【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
これらの共重合可能な例示モノマーの中でも、スチレン誘導体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アクリロニトリル類またはアクリル酸エステル類もしくはメタクリル酸エステル類の誘導体であることが好ましく、具体的には、B−2、B−7、B−8、B−10、C−3またはC−11が好ましい。
また、これらの共重合可能な例示モノマーがヘテロ原子を連結主鎖に2以上有している場合、それらのヘテロ原子間は炭素原子数2以下の連結基で連結されていることが好ましく、炭素原子数2以下の置換または無置換のアルキレン基で連結されていることが好ましく、炭素原子数2の無置換のアルキレン基で連結されていることが好ましい。
【0075】
<熱可塑性樹脂の主鎖および側鎖の構造>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、無機微粒子と結合可能な官能基を少なくとも一種有することが好ましい。
ここで、「無機微粒子と結合しうる官能基」とは、無機微粒子と共有結合、イオン結合、配位結合および水素結合のいずれかが可能な官能基であり、官能基が複数存在する場合は、それぞれ無機微粒子と異なる化学結合を形成しうるものであってもよい。本発明の有機無機複合材料中において、熱可塑性樹脂の官能基は、そのすべてが無機微粒子と化学結合を形成していてもよいし、一部が無機微粒子と化学結合を形成していてもよい。
【0076】
前記無機微粒子と結合しうる官能基は、無機微粒子と化学結合を形成することによって、無機微粒子を熱可塑性樹脂中に安定に分散させる機能を有する。前記無機微粒子と結合しうる官能基は、無機微粒子と化学結合を形成しうるものであればその構造に特に制限されない。
このような官能基としては特に制限は無く公知の無機微粒子と結合可能な官能基を用いることができるが、下記から選ばれる官能基であることが好ましい。
【化17】

[R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−OH、もしくは−Si(OR17m183-m[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、mは1〜3の整数を表す。]
【0077】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、前記官能基群の中でも、下記から選ばれる1以上の官能基(以下、官能基Kと言う)を有することが、得られる有機無機複合材料の光線透過率を改善する観点から、より好ましい。
【化18】

[R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−Si(OR17m183-m[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、mは1〜3の整数を表す。]
【0078】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、前記官能基(官能基K)をポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個有していることが好ましく、0.5〜10個であることがより好ましく、1〜5個であることが特に好ましい。前記官能基の含有量がポリマー鎖一本あたり平均20個以下であれば、熱可塑性樹脂が複数の無機微粒子に配位して溶液状態で高粘度化やゲル化が起こるのを防ぎやすい傾向がある。また、ポリマー鎖一本あたり平均官能基の数が0.1個以上であれば、無機微粒子を安定に分散させやすい傾向がある。
【0079】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、前記一般式(1)〜(3)で表される単位構造を有する以外に側鎖の構造に特に制限はないが、前記官能基Kを含ませる観点から側鎖にカルボキシル基を有することが好ましい。このように側鎖にカルボキシル基を有することで、光線透過率を改善し、かつ屈折率を改善することができる。
【0080】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、前記一般式(1)〜(3)で表される単位構造を有する以外に主鎖の構造に特に制限はないが、主鎖に用いられるポリマーの種類としては、ビニルモノマーの重合によって得られるビニルポリマー、ポリエーテル、開環メタセシス重合ポリマーおよび縮合ポリマー(ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなど)など従来公知のポリマーのいずれからでも選択可能であり、ビニルポリマー、開環メタセシス重合ポリマー、ポリカーボネートまたはポリエステルが好ましく、製造適性の点からビニルポリマーがより好ましい。
【0081】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、製造適性の点からランダム共重合体であることが好ましい。
【0082】
<熱可塑性樹脂の具体例>
以下の表1に、本発明で用いられる熱可塑性樹脂の好ましい具体例を挙げる。表1に記載される種類のモノマーを表1に記載される質量割合で混合して共重合することにより、本発明で用いられる熱可塑性樹脂を製造することができる。ただし、本発明で用いられる熱可塑性樹脂はこれらに限定されるものではない。なお、本発明で用いられる熱可塑性樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の重合法または共重合法を採用することができる。また、これらのモノマーを共重合させる場合、各モノマーを添加する順番に特に制限はないが、全てのモノマーを同時に添加して共重合させることも好ましい。
【0083】
【表1】

【0084】
本発明の有機無機複合材料中、本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の有機無機複合材料には、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、本発明の熱可塑性樹脂以外の樹脂を含有させてもよい。
【0085】
<熱可塑性樹脂の物性>
本発明でいられる熱可塑性樹脂は、波長589nmにおける屈折率が1.58以上であることが無機微粒子を分散させた後の有機無機複合材料の屈折率を向上させる観点から好ましく、1.60以上であることがより好ましく、1.61以上であることが特に好ましい。
【0086】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、アッベ数が30以下であることがレンズ用途において色収差を補正させる観点から好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることが特に好ましい。
【0087】
本発明でいられる熱可塑性樹脂は、波長589nmにおける屈折率が1.58以上であり且つアッベ数が30以下であることが光学部品用途に使用する観点から好ましく、屈折率が1.60以上であり且つアッベ数が28以下であることがより好ましく、屈折率が1.61以上であり且つアッベ数が25以下であることが特に好ましい。
【0088】
本発明でいられる熱可塑性樹脂は、数平均分子量が10000〜200000であることが無機微粒子の分散性を改善し、得られた有機無機複合材料の光線透過率を改善する観点から好ましく、15000〜180000であることがより好ましく、20000〜160000であることが特に好ましい。
【0089】
(無機微粒子)
本発明の有機無機複合材料に用いられる無機微粒子は、数平均粒子径(数平均1次粒子径)が1nm〜15nmである。その他としては特に制限はなく、例えば特開2002−241612号公報、特開2005−298717号、特開2006−70069号各公報等に記載の微粒子を用いることができる。
本発明で用いられる無機微粒子としては、例えば、酸化物微粒子、硫化物微粒子等が挙げられる。より具体的には酸化ジルコニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子、酸化錫微粒子、硫化亜鉛微粒子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも特に、金属酸化物微粒子が好ましく、中でも酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましく、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることがより好ましく、さらには可視域透明性が良好で光触媒活性の低い酸化ジルコニウム微粒子を用いることが特に好ましい。本発明では、屈折率や透明性や安定性の観点から、これらの無機物の複合物を用いてもよい。またこれらの微粒子は光触媒活性低減、吸水率低減など種々の目的から、異種元素をドーピングしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面修飾したものであってもよい。
【0090】
本発明に用いられる無機微粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。具体的には、特開2007−238929号公報の[0078]〜[0082]に記載される方法を用いることができる。
【0091】
本発明で用いられる無機微粒子の数平均1次粒子径(以下、数平均粒子サイズとも言う)は、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する場合があり、逆に大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となり、有機無機複合組成物の透明性が極端に低下する場合がある。従って、本発明で用いられる無機微粒子の数平均粒子サイズの下限値は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、上限値は好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下、さらにより好ましくは7nm以下である。すなわち、本発明における無機微粒子の数平均粒子サイズとしては、1nm〜15nmであり、2nm〜10nmがより好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。
ここで、上述の数平均粒子サイズとは例えば、X線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
【0092】
本発明で用いられる無機微粒子の屈折率の範囲は、22℃で589nmの波長において1.9〜3.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜2.7であり、特に好ましくは2.1〜2.5である。微粒子の屈折率が3.0以下であれば熱可塑性樹脂との屈折率差がさほど大きくないためレイリー散乱を抑制しやすい傾向がある。また、屈折率が1.9以上であれば高屈折率化を図りやすい傾向がある。
【0093】
無機微粒子の屈折率は例えば本発明で用いられる熱可塑性樹脂と複合化した複合物を透明フィルムとして、アッベ屈折計(例えば、アタゴ社製「DR−M4」)で屈折率を測定し、別途測定した樹脂成分のみの屈折率とから換算する方法、あるいは濃度の異なる微粒子分散液の屈折率を測定することにより微粒子の屈折率を算出する方法などによって見積もることができる。
【0094】
本発明の有機無機複合組成物における無機微粒子の含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、20〜95質量%が好ましく、25〜70質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。また、本発明における前記無機微粒子と熱可塑性樹脂(分散ポリマー)との質量比は、分散性の点から、1:0.01〜1:100が好ましく、1:0.05〜1:10がさらに好ましく、1:0.05〜1:5が特に好ましい。
【0095】
[添加剤]
本発明の有機無機複合組成物には、上記の熱可塑性樹脂や無機微粒子以外に、均一分散性、成形時の流動性、離型性、耐候性等観点から適宜各種添加剤を配合してもよい。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、前記無機微粒子および熱可塑性樹脂の合計量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
添加剤の具体例については、特開2007−238929号公報の[0088]〜[0101]に記載される表面処理剤や可塑剤などを挙げることができ、本発明においても適宜選択して用いることができる。
【0096】
(有機無機複合材料の製造方法)
本発明に用いられる無機微粒子は、側鎖に前記官能基を有する熱可塑性樹脂と化学結合して樹脂中に分散され、本発明の有機無機複合材料を得ることができる。
本発明に用いられる無機微粒子は粒子サイズが小さく、表面エネルギーが高いため、固体で単離すると再分散させることが難しい。よって、無機微粒子は溶液中に分散された状態で熱可塑性樹脂と混合し安定分散物とすることが好ましい。複合物の好ましい製造方法としては、(1)無機粒子を上記分散剤の存在下に表面処理を行い、表面処理された無機微粒子を有機溶媒中に抽出し、抽出した該無機微粒子を前記熱可塑性樹脂と均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法、(2)無機微粒子と熱可塑性樹脂の両者を均一に分散あるいは溶解できる溶媒を用いて両者を均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法が挙げられる。
【0097】
上記(1)の方法によって有機無機複合材料を製造する場合には、有機溶媒としてトルエン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性の溶媒が用いられる。無機微粒子の有機溶剤への抽出に用いられる分散剤と前記熱可塑性樹脂は同種のものであっても異種のものであってもよいが、好ましく用いられる分散剤については、前述<分散剤>の欄で述べたものが挙げられる。
有機溶媒中に抽出された無機微粒子と熱可塑性樹脂を混合する際に、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマー等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0098】
上記(2)の方法を採用する場合は、溶剤として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシー2−プロパノール、tert−ブタノール、酢酸、プロピオン酸等の親水的な極性溶媒の単独または混合溶媒、あるいはクロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒が好ましく用いられる。この際、前述の熱可塑性樹脂とは別に分散剤、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマーを必要に応じて添加してもよい。水/メタノールに分散された無機微粒子を用いる際には、水/メタノールより高沸点で熱可塑性樹脂を溶解する親水的な溶媒を添加した後、水/メタノールを濃縮留去することによって、無機微粒子の分散液を極性有機溶媒に置換した後、樹脂と混合することが好ましい。この際、前記分散剤を添加してもよい。
【0099】
上記(1)または(2)の方法によって得られた有機無機複合材料は、そのままキャスト成形して成形体を得ることもできるが、本発明では特に、該溶液を濃縮(スプレイドライ、減圧濃縮など)、凍結乾燥、あるいは適当な貧溶媒から再沈澱させる等の手法により溶剤を除去した後、粉体化した固形分を射出成形、圧縮成形等の手法によって成形することが好ましい。
【0100】
[成形体]
本発明の有機無機複合材料を成形することにより、本発明の成形体を製造することができる。本発明の成形体は、有機無機複合材料の説明の欄で前記した屈折率と光学特性を示すため、有用である。
【0101】
[光学部品]
本発明の有機無機複合材料を成形することにより、高屈折率、高光線透過性、低アッベ数を併せ持ち、光学特性に優れた本発明の光学部品を得ることができる。本発明の光学部品の種類は、特に制限されない。具体的には、特開2007−238929号公報の[0108]〜[0109]に記載される光学部品にすることができる。
【0102】
[レンズ]
本発明の有機無機複合材料を用いた光学部品は、特にレンズ基材に好適である。本発明の有機無機複合材料を用いて製造されたレンズ基材は、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、有機無機複合材料を構成するモノマーの種類や分散させる無機微粒子の量を適宜調節することにより、レンズ基材の屈折率およびアッベ数を任意に調節することが可能である。
本発明における「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、本発明でいうレンズ基材に付加される部材であり、本発明でいうレンズ基材そのものとは区別される。
本発明におけるレンズ基材をレンズとして利用するに際しては、本発明のレンズ基材そのものを単独でレンズとして用いてもよいし、前記のように膜や枠などを付加してレンズとして用いてもよい。本発明のレンズ基材を用いたレンズの種類や形状は、特に制限されない。本発明のレンズ基材は、例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ、マイクロレンズアレイ等)に使用される。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0104】
[分析および評価方法]
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
日立製作所(株)社製H−9000UHR型透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV、観察時の真空度約7.6×10-9Pa)にて行った。
【0105】
(2)光線透過率測定
測定する樹脂を成形して厚さ1.0mmの基板を作成し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置UV−3100(島津製作所製)で波長589nmの光について測定した。
【0106】
(3)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
【0107】
(4)アッベ数(νD)測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長486nm、589nm、656nmの光についてそれぞれの屈折率を測定した。波長486nmにおける屈折率をnF、波長589nmにおける屈折率をnD、波長656nmにおける屈折率をnCとした場合に、アッベ数(νD)を下記の式より算出した。
【0108】
【数2】

【0109】
(5)耐光性評価
測定する有機無機複合材料を成形して厚さ0.2mmの基板を作成し、耐光試験機(スガ試験機(株)製300サンシャインウェザーメーター)にて、放射照度255W/m2、照射時間24時間の条件で光照射した。照射前後の波長450nmにおける透過率の減少幅が10%以上のものを×、5〜10%のものを△、1〜5%のものを○、0〜1%のものを◎とした。
【0110】
(6)分子量測定
各熱可塑性樹脂の分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、GPC測定を行うことにより、ポリスチレン換算で表した数平均分子量として求めた。
【0111】
(7)ガラス転移温度測定
各熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC6200、セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分の条件で測定した。
【0112】
(8)熱可塑性樹脂における高分子鎖一本当たりの、官能基の数の測定
高分子鎖一本当たりの、官能基の数の測定方法を、官能基含有ユニット中の官能基数が1である場合について示す。なお、官能基含有ユニットが2以上の場合も、同様の手法を利用できる。
まず、ポリマーの酸価aを測定により求めた。ここで酸価とは、ポリマー1gの滴定に必要なKOHのmg量を指す。得られたポリマーの酸価a[mg/g]、KOHの分子量m=56.1を利用して、高分子1g中の官能基含有ユニット数Xを、
【数3】

で求めた。
次に、GPCを用いて測定し、ポリマーの分子量Mを求めた。これらの値を利用して下記式より、高分子鎖一本当たりの官能基の数を定量的に求めた。
【数4】

【0113】
[材料の調製]
(1)チタニア微粒子の合成
0.1モル/Lの硫酸チタニル水溶液を攪拌しながら、同容量の1.5モル/Lの炭酸ナトリウム水溶液を室温で10分かけて滴下した。こうして得た白色の超微粒子の懸濁液を、3500rpmで遠心分離し、上澄み液のデカンテーションによる除去および水洗の工程を繰り返すことにより精製した。こうして得た白色沈殿を0.3モル/Lの希塩酸中に攪拌分散しながら50℃で約1時間加熱して、透明感のある酸性ヒドロゾルを得た。この酸性ヒドロゾルを氷冷し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液を加えたところ白色沈殿を生じたので、次いでトルエンで抽出し、乾燥後濃縮した。この濃縮残渣のXRDとTEMより、アナタース型チタニア微粒子(数平均粒子径は約5nm)の生成を確認した。
【0114】
(2)ジルコニア微粒子の合成
50g/Lの濃度のオキシ塩化ジルコニウム溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水和ジルコニウム懸濁液を得た。この懸濁液をろ過した後、イオン交換水で洗浄し、水和ジルコニウムケーキを得た。このケーキを、イオン交換水で溶媒としてジルコニア換算で濃度15質量%に調整して、オートクレーブに入れ、圧力150気圧、150℃で24時間水熱処理してジルコニア微粒子懸濁液を得た。TEMより数平均粒子径が5nmのジルコニア微粒子の生成を確認した。
【0115】
(3)ジルコニア微粒子トルエン分散液の調製
前記(2)で合成したジルコニア微粒子懸濁液と東京化成製のp−プロピル安息香酸を溶解させたトルエン溶液を混合し、50℃で8時間攪拌した後、トルエン溶液を抽出し、ジルコニア微粒子トルエン分散液を作製した。
他の分散剤を用いる場合にも、同様の方法により調製できる。
【0116】
(4)熱可塑性樹脂の合成
還流冷却器、ガス導入コックを付した500ml三口フラスコに、RUVA−93(大塚化学株式会社製;A−5)200.0g、トルエン200.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601(商品名)0.6gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下80℃で3時間加熱した。さらにV−601(商品名)0.3gを添加し3時間加熱した。室温に戻した後、トルエン200mlを添加後、10分間攪拌し、メタノール2Lに投入し、再沈殿した。沈殿を濾取した後、大量のメタノールで洗浄し、80℃で3時間真空乾燥することによりP−1を得た(収率81%、数平均分子量59,000、重量平均分子量121,000)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調製できる。
【0117】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
(有機無機複合材料の製造)
実施例1〜15と比較例1〜5の有機無機複合材料を下記の手順で製造した。使用した熱可塑性樹脂の種類と各種物性無機微粒子の種類と無機成分としての使用量は表2に示す通りとした。また、熱可塑性樹脂および無機微粒子の物性を測定し、下記表2に記載した。
実施例1では、上記材料の調製(3)で調製したジルコニア微粒子のトルエン分散液(ジルコニア:p−プロピル安息香酸=10:1)を樹脂P−1および株式会社松村石油研究所製S−3103(商品名)を溶解させたトルエン溶液に5分かけて滴下し、これを1時間攪拌した後、溶媒を除去することにより、有機無機複合材料を粉体として得た。但し、p−プロピル安息香酸を8.3質量%およびS−3103を4.2質量%含み、残りを樹脂が占めるものである。他の実施例および比較例の有機無機複合材料についても、同様の方法で調製した。
なお、比較例1では、樹脂としてポリメチルメタクリレート(アルドリッチ社製、製品番号44,574−6、分子量350000)を用い、比較例2では樹脂としてQ−1(構成モノマーはB−1を95質量%、C−2を5質量%であり、数平均分子量は34000)を用い、比較例3では樹脂としてQ−2(構成モノマーはB−1を95質量%、C−1を5質量%であり、数平均分子量は31000)を用い、比較例4では樹脂としてQ−3(構成モノマーはB−1を99質量%、C−3を1質量%であり、数平均分子量は32000)を用い、比較例5ではポリスチレン(アルドリッチ社製、製品番号18,242−7、分子量280000)を用いた。
【0118】
(加熱成形による光学部品の製造)
各実施例および比較例の各レンズを下記の手順で製造した。製造した各有機無機複合材料を180℃で加熱成形し、厚さ1mmのレンズ用成形体を作成した。このとき金型からの離型性を評価した。成形体を切削し、断面をTEMで観察して、無機微粒子が熱可塑性樹脂中に均一に分散しているか否かを確認した。さらに光線透過率測定、耐光性評価、屈折率測定、アッベ数測定を行った。これらの結果は以下の表2に記載した。その後、レンズ用成形体をレンズの形状に成形して、光学部品であるレンズを得た。
【0119】
【表2】

【0120】
表2から明らかなように、本発明により屈折率が1.63以上であり、アッベ数が25以下であり、無機微粒子の分散性および透明性が良好であり、耐光性の高い光学部品が得られた(実施例1〜15)。詳しくは、実施例1はA−5由来の構造のみを単位構造として含む熱可塑性樹脂を用いたものである。実施例2は実施例1に対してカルボキシル基を有するC−3由来の構造をさらに単位構造として含ませた熱可塑性樹脂を用いたものであり、実施例1よりも光線透過率が向上した。実施例3〜7は、A−5、B−7およびC−3由来の単位構造を含む熱可塑性樹脂においてA−5由来の成分の重量比を順に減少させた際の影響を検討したものであり、順に屈折率が向上し、順にアッベ数は上がった。実施例9は実施例4においてA−5をA−8に変更してハロゲン原子を置換基として有する際の影響を検討したものであり、屈折率が向上し、アッベ数も下がった。実施例8は実施例9においてB−7をB−2に変更した際の影響を検討したものであり、実施例9(さらに実施例4)よりも屈折率が低下し、アッベ数は上がった。実施例10は実施例2においてA−5をA−23に変更した際の影響を検討したものであり、実施例2よりも屈折率が低下し、アッベ数は上がった。実施例11は実施例10においてC−3をC−11に変更した際の影響を検討したものであり、実施例10よりも屈折率が改善してアッベ数も低下したが、実施例2に対しては屈折率が改善したもののアッベ数は上がった。実施例12〜15はそれぞれ実施例3、5、6および10に対して無機微粒子の種類と添加量を変更したものであり、いずれも光線透過率の低下を僅かに抑えつつ、屈折率が大きく改善され、アッベ数も低下されていた。
一方、熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレートを用いた比較例1では、熱可塑性樹脂自体の有する分散性が低いために無機微粒子を均一に分散することができず、無機微粒子が凝集しており、光線透過率が低いためにアッベ屈折率計での屈折率測定を行えなかった。また、熱可塑性樹脂として比較用の熱可塑性樹脂Q−1〜3を用いた比較例2〜4ではアッベ数が25を超え、30以上と大きく、耐光性が不十分であった。さらに、熱可塑性樹脂としてポリスチレンを用いた比較例5では、熱可塑性樹脂自体の有する分散性が低いために無機微粒子を均一に分散することができず、無機微粒子が凝集しており、光線透過率が低いためにアッベ屈折率計での屈折率測定を行えなかった。
【0121】
なお、実施例1〜15の有機無機複合材料は、いずれも耐電圧が−1.0〜7.0kVの範囲内であり、250℃で2時間保持した際の揮発成分が2質量%以下であり、飽和吸水率は2質量%以下であった。また、実施例1〜15の有機無機複合材料は、生産性よくかつ型の形状に合わせて正確に凹凸レンズ形状を形成することができるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される単位構造を有する熱可塑性樹脂と、数平均粒子径が1〜15nmの無機微粒子を含有することを特徴とする有機無機複合材料。
【化1】

〔一般式(1)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L1は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X1は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【化2】

〔一般式(2)中、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L2は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X2は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【化3】

〔一般式(3)中、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L3は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X3は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【請求項2】
下記一般式(4)で表される単位構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合材料。
【化4】

〔一般式(4)中、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、L4は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表し、X4は単結合、あるいは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−OCONH−、−OCOO−、−O−、−S−または置換もしくは無置換のアリーレン基から選ばれる2価の連結基を表し、Y4は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。〕
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の波長589nmにおける屈折率が1.58以上であり、前記熱可塑性樹脂のアッベ数が30以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機複合材料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が10000〜200000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項5】
前記一般式(1)、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される単位構造を前記熱可塑性樹脂中に5〜100質量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が下記から選ばれる1以上の官能基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機無機複合材料。
【化5】

[R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SO3H、−OSO3H、−CO2H、−Si(OR17m183-m[R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、mは1〜3の整数を表す。]
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が前記官能基をポリマー鎖1本あたり平均0.1〜20個有していることを特徴とする請求項6に記載の有機無機複合材料。
【請求項8】
前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項9】
前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項10】
波長589nmにおける屈折率が1.63以上であり、アッベ数が25以下であり、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする成形体。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とする光学部品。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を成形したことを特徴とするレンズ。

【公開番号】特開2010−189562(P2010−189562A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36248(P2009−36248)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】