説明

有機系消臭成分の効力増強剤、ならびにこれを配合した消臭剤

【課題】有機系消臭成分の効力を有効的に増強する化合物であって、かつ安心して使用できる有機系消臭成分の効力増強剤の提供。
【解決手段】青葉アルコールを有機系消臭成分の消臭効果を増強する化合物として含有し、さらに前記有機系消臭成分が植物性ポリフェノールを含む柿抽出物、茶抽出物、及びグレープフルーツ種子抽出物から選ばれた植物抽出物の一種又は二種であり、しかも青葉アルコールの前記植物抽出物に対する配合比率が0.01/1〜0.25/1であることを特徴とする有機系消臭成分の効力増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青葉アルコールからなる有機系消臭成分の効力増強剤、ならびにこれを配合した消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの消臭剤が使用されている。例えば、消臭剤として、活性炭、ゼオライト、光触媒酸化チタンや銀イオンなどの無機系材料を使用したものや、ポリフェノールやフィトンチッド、カテキン、ヒノキチオールなどの植物由来のもの、あるいはオゾンを用いた空気清浄機などが知られている。
【0003】
ところで、青葉アルコールや青葉アルデヒドは、葉っぱから放散される「緑の香り」と呼ばれる香りの成分で、従来、芳香成分の一種として汎用されてきたものであるが、最近、青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分が、ストレス軽減や疲労回復、更に集中力を高めるなどの精神的作用を示すことが実証され注目を浴びている。
また、青葉アルコールや青葉アルデヒドに関しては、例えば、ドウガネブイブイ誘引剤の誘引効果増強剤(特許第3085894号公報参照)、犬、猫及び鳥類の嫌忌避剤組成物の嫌忌避効果増強剤(特公昭57−25521号公報参照)、あるいは「わさび香味」の改質剤(特許第3553283号公報参照)としての使用例も知られている。
このように、青葉アルコールや青葉アルデヒドの作用効果に関する文献はいくつかあるが、消臭成分との組み合わせを試験し、その消臭効果の増強作用について記載した文献は未だない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3085894号公報
【特許文献2】特公昭57−25521号公報
【特許文献3】特許第3553283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機系消臭成分の効力を有効的に増強する化合物であって、かつ安心して使用できる有機系消臭成分の効力増強剤、ならびにこれを配合した有用な消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)青葉アルコールを有機系消臭成分の消臭効果を増強する化合物として含有し、さらに前記有機系消臭成分が植物性ポリフェノールを含む柿抽出物、茶抽出物、及びグレープフルーツ種子抽出物から選ばれた植物抽出物の一種又は二種であり、しかも青葉アルコールの前記植物抽出物に対する配合比率が0.01/1〜0.25/1であることを特徴とする有機系消臭成分の効力増強剤。
(2)除菌成分をさらに含む(1)に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。
(3)前記除菌成分がグルコン酸クロルヘキシジル、ε−ポリリジン、キトサン、及びテトラヒドロリナロールからなる群から選択される少なくとも一つである(2)に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。
(4)前記除菌成分がε−ポリリジンである(2)に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機系消臭成分の効力を有効的に増強する化合物であって、かつ安心して使用できる有機系消臭成分の効力増強剤が提供される。そして、これを配合した消臭剤は、優れた消臭効果のみならず、リラックス、リフレッシュ感を与え、ストレス軽減や疲労回復、集中力向上を促すなどの効果も具備するので、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、有機系の消臭成分が用いられる。その理由は、無機系消臭成分と青葉アルコールや青葉アルデヒドを併用しても構わないが、この場合、後者による効力増強作用が期待できないからである。
本発明で用いる有機系消臭成分としては、安全性等を考慮して、植物性ポリフェノールやテルペノイドなどを含む植物由来のもの、あるいはアルキルカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミドカルボベタインなどのベタイン系等の両性界面活性剤、グラフト重合型高分子化合物等があげられるがこれらに限定されない。
【0009】
ここで、植物性ポリフェノールとは、植物内で二次代謝物として広く分布するものであり、例えばフラボノール類、イソフラボン類、タンニン、カテキン類、ケルセチン類、アントシアニン類などやその誘導体類、フェノール性酸及びその誘導体類などの単一もしくは混合物で代表される。それらは、柿、茶、グレープフルーツ、アジサイ、ヨモギ、ホオノキ、レンギョウなどの植物からの抽出物であってよく、特に柿抽出物、茶抽出物、グレープフルーツ種子抽出物から選ばれた一種又は二種が本発明に好適である。
【0010】
また、テルペノイドも植物精油中に広く存在し、例えばヒノキチオール、テルピネオール、リナロールなどのテルペンアルコール、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−メンタン、α−テルピネン、テルピノーレン、カレン、カンフェン、エレメン、ミルセン、カルボンなどのテルペン系環式炭化水素化合物を消臭成分として使用できる。これらの化合物は、植物精油から単離したものでも合成したものでもよく、さらにこれらが複合された植物精油の形態で利用することもできる。
前記植物性ポリフェノールやテルペノイド含有物は、青葉アルコールや青葉アルデヒドによる消臭効果の増強が特に顕著で本発明の趣旨に照らして好ましい。
【0011】
青葉アルコールや青葉アルデヒドは、葉っぱから放散される「緑の香り」と呼ばれる香りの成分で、その化学構造は、それぞれ(3Z)−ヘキセノール、及び(2E)−ヘキセナールである。これらの化合物は食品添加物として認められており、その安全性は高い。
青葉アルコールや青葉アルデヒド自体は、相当量でも僅かな消臭効果しか示さず、有機系消臭成分と組み合わせた時に顕著な効力増強作用を奏する理由は明確に解明されたわけではないが、低分子の不飽和化学構造が関与しているものと推定される。
【0012】
有機系消臭成分として植物抽出物を用いる場合、植物抽出物中の例えばポリフェノール類は変動しうるのであるが、青葉アルコールは、植物抽出物に対して0.01/1〜0.25/1程度の比率で配合すればよい。この範囲であれば、有効な効力増強作用が期待でき、コスト面でも有利となる。一方、配合量が多いと、青葉アルコール自体の臭いが強くなりすぎるきらいがある。
【0013】
本発明では、安全性と消臭効果に支障を来たさない限りにおいて、前記有機系消臭成分と、青葉アルコールに加え、除菌成分を配合してもよい。このような除菌成分としては、エタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリリジンやキトサン、テトラヒドロリナロール等を例示できる。
【0014】
また、他の香料成分、例えばメントール、シトロネラール、ゲラニオール、オイゲノール、カラン−3,4−ジオール、あるいはユーカリ、シトロネラ、ニーム、ラベンダー、レモングラス、クローバ、ベルガモット等植物由来の精油、抽出液、更にサリチル酸エステル類、ジャスモン酸エステル類等を添加してもよく、これらの香料の添加により、害虫やダニの忌避効果等を付与することもできる。
また、殺虫剤、殺菌剤、防黴剤など、他種の有効成分を適宜配合することによって多目的組成物とすることも可能である。
【0015】
本発明は、青葉アルコールからなる消臭効果を増強する化合物と、有機系消臭成分との混合物を含有する消臭剤をも提供する。
その剤型としては、目的や使用場所に応じて任意に設計すればよく、例えば衣類や家具等を対象としたトリガースプレー、室内空間用エアゾール剤、あるいは置き型の放香剤などがあげられる。
【0016】
上記剤型を調製するに際して用いられる液状の担体としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール等)、多価アルコール類(ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(エチルエーテル、ジオキサン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、脂肪族炭化水素類(ケロシン、鉱油、灯油類等)、芳香族炭化水素類(キシレン、メチルナフタレン等)、エステル類、酸アミド類、ニトリル類等の溶剤が適当であり、そしてこれらの一種又は二種以上の混合物が使用される。
【0017】
更に、必要に応じて、噴射ガス(液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガス、圧縮空気等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類など)、ゲル化剤、分散剤、展着剤、浸透剤、安定剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
また、本発明では、ホルムアルデヒド捕捉剤、セスキテルペンアルコール等のアレルゲン低減化剤、環状シリコーン等の繊維保護剤などを添加して、他の効能効果を付与し付加価値を高めることもできる。
【0018】
トリガースプレーは、青葉アルコールと有機系消臭成分、ならびに所望の補助剤をエタノール等の液状担体と混合し、得られた薬液を適当なボトルに充填して製することができ、また、エアゾール剤は、そのような薬液を耐圧容器に入れた後、通常の方法に従い噴射ガスを充填して製すればよい。
また、置き型の放香剤には、薬液を吸液芯を用いて蒸散部材に導き、揮散成分を放散させるタイプや、薬液の替わりにゲル形成体を調製しこれから揮散成分を放散させるタイプがあるが、本発明の消臭剤はいずれの剤型にも適用されうるものである。
【0019】
こうして得られた本発明の消臭剤は、リビングルームや居室、寝室、玄関、車内、タンス、クローゼット等で、環境空間、衣類、寝具、家具等に対して安心して施用できる。そして、環境空間の空気や施用対象物に消臭作用をもたらして清潔環境づくりに役立ち、しかも居住する人間に対して、リラックス、リフレッシュ感を与え、ストレス軽減や疲労回復、集中力向上を促すなどの効果も具備するので、その実用性は極めて高い。
【0020】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の有機系消臭成分の効力増強剤、ならびにこれを配合した消臭剤について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
[消臭試験]
表1に示す消臭剤を調製してタバコ臭及び焼肉臭に対する消臭効果の評価を行った。有機系消臭成分としては、柿抽出物(製品名:パンシルFG50)を用いた。タバコ臭又は焼肉臭を付着させた綿布(5×10cm)を半分に切断し、消臭剤をトリガースプレーで20cmの距離から2回スプレー(付着量:約0.04g)し、1000mLの三角フラスコに入れ、直後及び60分後に8人のパネラーによって以下の評価基準で評価を行った。
(評価基準)
臭気強度0:タバコ臭又は焼肉臭を感じない。
臭気強度1:タバコ臭又は焼肉臭と断定できない。
臭気強度2:タバコ臭又は焼肉臭とわかるが弱い。
臭気強度3:タバコ臭又は焼肉臭と明らかにわかる。
臭気強度4:タバコ臭又は焼肉臭を強く感じる。
臭気強度5:タバコ臭又は焼肉臭を強烈に感じる。
【0022】
【表1】

【0023】
試験の結果、有機系消臭成分としての柿抽出物に青葉アルコールを配合することによって、消臭効果が著しく増強することが認められた。
なお、その添加量は増強効果の点で柿抽出物に対して0.01/1以上が好ましかったが、0.5/1を超えて配合すると、青葉アルコール自体の臭いが強くなりすぎるきらいがあった。
【実施例2】
【0024】
有機系消臭成分としての柿抽出物(製品名:パンシルFG50)0.5重量%、青葉アルコール及び青葉アルデヒドの混合物0.08重量%、エタノール6.0重量%、乳酸ナトリウム0.4重量%、アルキル酢酸ベタイン型両性界面活性剤0.3重量%、及びイオン交換水を混合して、本発明で用いる薬液を調製した。この薬液300mLをプラスチックボトルに充填して、本発明のトリガースプレー型消臭剤を得た。
この消臭剤を、室内でタバコ、ペットなどの臭いのついた衣類や布製品に、20〜30cm離して3回スプレーした。その結果、青葉アルコール及び青葉アルデヒドは、柿抽出物の消臭効果を高めることができ、また室内空間に放散された青葉アルコール及び青葉アルデヒドの効果で、居住者はリラックス気分を体感することができた。
【実施例3】
【0025】
有機系消臭成分としてのグレープフルーツ種子抽出物0.6g(エアゾール内容物全体量に対して0.2w/v%)、青葉アルコール0.15g(エアゾール内容物全体量に対して0.05w/v%)、除菌成分としてのε−ポリリジン0.6g(エアゾール内容物全体量に対して0.2w/v%)、エタノール42mL(エアゾール内容物全体量に対して14容量%)、及び精製水76mL(エアゾール内容物全体量に対して25.3容量%)を含有するエアゾール原液120mLをエアゾール容器に入れ、該容器にバルブ部分を取り付け、該バルブ部分を通じて噴射剤としてのジメチルエーテル180mLを加圧充填して、本発明のエアゾール剤タイプの消臭剤を得た。なお、容器内圧は0.4MPaであった。
この消臭剤を室内空間に噴霧したところ、青葉アルコールの作用でグレープフルーツ種子抽出物の消臭効果が顕著に高まるとともに、除菌成分の効果と相まって室内空気の清潔化に役立った。また、青葉アルコールは気持ちを安らげ、リラックス空間を造成した。
【実施例4】
【0026】
有機系消臭成分としてのリモネン0.3gならびに緑茶精油0.5g、青葉アルコール及び青葉アルデヒドの混合物0.1g、ノニオン系界面活性剤1.6g、及び水117.5gを含む水溶液120gを透明ポリエステル容器に充填した。容器上部の開口部に冠着される中栓を介して、外径7mmで棒状のフェルト製吸液芯を装着し、この吸液芯の頂面に当接するように円盤状のフェルト製蒸発部材を支持体とともに取り付けた。更に、蒸発部材の上方に装飾部材(造花)を装填して本発明の置き型タイプの消臭剤を得た。
この消臭剤をリビングルームのサイドボードの上に置いて使用した。その結果、2ケ月間にわたり、嫌な臭いが消臭されるとともに、疲労回復感を促す「緑の香り」が漂った。また、インテリアにマッチした造花も気分を安らげ、快適空間の造成に役だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青葉アルコールを有機系消臭成分の消臭効果を増強する化合物として含有し、さらに前記有機系消臭成分が植物性ポリフェノールを含む柿抽出物、茶抽出物、及びグレープフルーツ種子抽出物から選ばれた植物抽出物の一種又は二種であり、しかも青葉アルコールの前記植物抽出物に対する配合比率が0.01/1〜0.25/1であることを特徴とする有機系消臭成分の効力増強剤。
【請求項2】
除菌成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。
【請求項3】
前記除菌成分がグルコン酸クロルヘキシジル、ε−ポリリジン、キトサン、及びテトラヒドロリナロールからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。
【請求項4】
前記除菌成分がε−ポリリジンであることを特徴とする請求項2に記載の有機系消臭成分の効力増強剤。

【公開番号】特開2012−40417(P2012−40417A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240770(P2011−240770)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【分割の表示】特願2006−30516(P2006−30516)の分割
【原出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】